(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】包装用袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20220907BHJP
B29C 55/28 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B29C55/28
(21)【出願番号】P 2016099076
(22)【出願日】2016-05-17
【審査請求日】2019-05-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591012392
【氏名又は名称】日本マタイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【氏名又は名称】松本 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100198605
【氏名又は名称】岡地 優司
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰里
(72)【発明者】
【氏名】石渡 応元
(72)【発明者】
【氏名】中林 正勝
(72)【発明者】
【氏名】松下 貢
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-118340(JP,U)
【文献】特開2008-13203(JP,A)
【文献】特開2011-25678(JP,A)
【文献】特開2005-47533(JP,A)
【文献】特開2001-31111(JP,A)
【文献】特開2012-121607(JP,A)
【文献】特開2008-12700(JP,A)
【文献】特開2008-213877(JP,A)
【文献】特許第6804867(JP,B2)
【文献】特開2009-78498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00- 33/38
B65D 75/62
B31B 50/20
B29C 55/28
B31B 70/81
B31B 70/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンを主原料とする原料から成る袋本体を有する包装用袋の製造方法であって、前記原料
を筒状に加工した後に折り畳んで、折り目状の端部を有する前記袋本体を形成した後、前記袋本体を巻き取る前に
そのまま、前記袋本体に張力を加えながら前記袋本体の折り目状の端部を刃を有する加工ロールと前記刃を受け入れることができる軟式ロールとの間を通過させて、
当初から筒状に形成された前記袋本体の折り目状の端部から成る側面部分から前記包装用袋を開封するための切り口を形成する加工を前記端部に連続的に又は周期的に施すことを特徴とする包装用袋の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された包装用袋の製造方法であって、前記袋本体の折り目状の端部に切り口を形成する加工を前記端部の全長にわたって施すことを特徴とする包装用袋の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された包装用袋の製造方法であって、前記折り目状の端部に、複数の前記切り口を周期的に又は連続して形成することを特徴とする包装用袋の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至
請求項3のいずれかに記載された包装用袋の製造方法であって、少なくとも一部の前記切り口を前記袋本体
の外縁に面して形成し、前記袋本体の外縁に切れ目を設けることを特徴とする包装用袋の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至
請求項4のいずれかに記載された包装用袋の製造方法であって、前記切り口を、孔状若しくは線状又は凹状の形状に形成することを特徴とする包装用袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ポリエチレンの粒等の化成品の原材料や食品添加物等の化学原料や、肥料、培養土、砂利等の土木園芸品、塩、砂糖、精米等の食料品、医薬品等の多様な製品の保存や輸送等に用いられる包装用袋及びその製造方法の改良に関し、特に、効率良く製造することができると共に、簡易に開封することができる取扱い性を向上させることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、化学原料や、肥料等の土木園芸品、食料品、医薬品等を工場等から出荷する際に大量に包装して運搬等に使用される幅約600mm、高さ約800mm~1000mm程度の比較的大型のプラスチック製の包装用袋においては、インフレーション成形やラミネート加工によって得られたプラスチックフィルムを筒状に加工し、その上端(トップ)及び下端(ボトム)をシールすることにより製造される。
【0003】
この場合、このプラスチックフィルムとして、環状オレフィンポリマー(Cyclo-Olefin Polymer:COP)や環状オレフィンコポリマー(Cyclo-Olefin Copolymer:COC)等の環状オレフィン系樹脂を使用することにより、簡易なカット性を得ることができる(例えば、特許文献1参照)。これらの環状オレフィン系樹脂のフィルムは、MD方向(Machine Direction(マシンダイレクション):樹脂の流れ方向)、TD方向(Transverse Direction(トランスバースダイレクション):樹脂の幅方向)のいずれの方向においても、優れた直進カット性を有し、小さな力でも引き裂くことができるため、簡易開封が必要な包装用袋の製造等の用途に展開されている。
【0004】
もっとも、この環状オレフィン系樹脂の簡易カット性を発現させるためには、フィルムに切り口加工を施すことが必要であり、この切り口加工によって形成された切り口以外から、カットすることは困難であるのが実際である。即ち、簡易カット性を発現させるためには、剪断力を付与する端緒となる切り口が必要であるが、この切り口を形成する切り口加工としては、一般的に、フィルムの一部にV字型の切り欠きを設けるノッチ加工や(例えば、特許文献2参照)、レーザーマーカーを使用してフィルムの厚み方向の途中にまで切り込みを入れるハーフカット加工(例えば、特許文献3参照)等が行われてきた。
【0005】
しかし、ノッチ加工については、筒状のプラスチックフィルムを所定の長さ毎に切断して袋状とした場合に、袋毎に同じ位置にノッチが形成されるように、プラスチックフィルムを袋状に加工する段階で、ノッチが一定の位置に形成されるように調整する必要があり、また、このノッチの位置を袋の高さによって相対的に変更する必要も生じるため、その調整が困難で、切り口加工に非常に手間と時間を要する問題があった。この場合、最終製品である包装用袋の高さに関係なく、一定の位置にノッチを形成して、筒状のプラスチックフィルムの切断段階で、必要な長さに切断して、種々の寸法の包装用袋において、同じ位置にノッチを設けることも考えられるが、その分、プラスチックフィルムに無駄が生じ、コスト的にも環境的にも好ましものとはいえない。
【0006】
また、完成品としての包装用袋においても、このノッチ部分のみから開封することしかできないため、とりわけノッチが目立ちにくい箇所に付されていた場合には、使用者にノッチの位置を探す作業を強いると共に、包装用袋の内容物の使用による減少に伴い上方に内容物と接していない余剰部分が生じても、当該余剰部分を折り畳んだり、結んだり、すぼめたりする作業が必要となり、また、余剰部分が内容物の取り出し作業において支障となることもあった。
【0007】
一方、ハーフカット加工においても、上記と同様の問題に加え、当該加工をするためのレーザーの使用にコストを要し、また、適切な深さでカットを入れる調整作業が困難であると共に、プラスチックフィルムの厚みに応じて、適切なカット深さも変わるため、その調整により一層の困難性が伴う問題を有していた。
【0008】
更には、袋本体が、複数枚のプラスチックフィルムを重ね合わせて端部をシールすることにより形成されたものである場合には、当該シール後端部に、これらの切り口加工を施す際に、表裏のフィルムがずれて所定外の位置に切り口が形成されてしまうことはないが、筒状のプラスチックフィルムを単に折り畳んで、しかも、特に、端部をシールしない状態で切り口加工を施す場合には、加工の仕方によっては、切り口の位置にズレが生じるおそれがある。
【0009】
また、従来の切り口は、包装用袋のうち、トップシール部又はボトムシール部よりも中央側、即ち、内容物が充填される側に形成されていたため、内容物の粒径が細かい場合には、この切り口部分から内容物が漏れ出るおそれがあった。また、内容物が、この切り口を介して外気に触れるため、酸化や吸湿等によって、内容物の変質や劣化を引き起こすおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2015-123642号公報
【文献】特開2007-55234号公報
【文献】特開2006-312495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、簡易な作業で効率良く製造することができつつ、使用者が任意の箇所から簡易にカットすることができると共に、袋本体が有する簡易カット性を発現させつつ内容物の漏れや変質を防止することができる包装用袋及びそのような包装用袋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1.包装用袋の製造方法)
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、オレフィンを主原料とする原料から成る袋本体を有する包装用袋の製造方法であって、原料を筒状に加工した後に折り畳んで、折り目状の端部を有する袋本体を形成した後に、袋本体を巻き取る前にそのまま、この袋本体に張力を加えながら袋本体の折り目状の端部を刃を有する加工ロールと刃を受け入れることができる軟式ロールとの間を通過させて、当初から筒状に形成された袋本体の折り目状の端部から成る側面部分から包装用袋を開封するための切り口を形成する加工を端部に連続的に又は周期的に施すことを特徴とする包装用袋の製造方法を提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、袋本体の折り目状の端部に切り口を形成する加工を端部の全長にわたって施すことを特徴とする包装用袋の製造方法を提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、折り目状の端部に、複数の切り口を周期的に又は連続して形成することを特徴とする包装用袋の製造方法を提供するものである。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第1乃至第3のいずれかの解決手段において、少なくとも一部の切り口を袋本体の外縁に面して形成し、袋本体の外縁に切れ目を設けることを特徴とする包装用袋の製造方法を提供するものである。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第4のいずれかの解決手段において、切り口を、孔状若しくは線状又は凹状の形状に形成することを特徴とする包装用袋の製造方法を提供するものである。
【0017】
(2.包装用袋)
なお、本発明は、その他、上記第1乃至第5の解決手段により製造される下記の包装用袋をも提供するものである。即ち、上記の課題を解決するための第6の手段として、オレフィンを主原料とする原料から成り筒状に加工された原料を折り畳んでなる袋本体を有する包装用袋であって、当初から筒状に形成された袋本体の折り目状の端部から成る側面部分から包装用袋を開封するための切り口を形成する加工が端部に連続的に又は周期的に施されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第6の解決手段において、袋本体の折り目状の端部に切り口を形成する加工が折り目状の端部の全長にわたって施されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0019】
本発明は、上記の課題を解決するための第8の手段として、上記第6又は第7のいずれかの解決手段において、折り目状の端部に、複数の切り口が周期的に又は連続して形成されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するための第9の手段として、上記第6乃至第8のいずれかの解決手段において、少なくとも一部の切り口が袋本体の外縁に面して形成されて、袋本体の外縁に切れ目が設けられていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0021】
本発明は、上記の課題を解決するための第10の手段として、上記第6乃至第9のいずれかの解決手段において、切り口は、孔状若しくは線状又は凹状の形状を有することを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0022】
本発明は、上記の課題を解決するための第11の手段として、上記第6乃至第10のいずれかの解決手段において、袋本体の端部は端部に沿って形成されたシール部を有し、切り口はシール部に形成されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0023】
本発明は、上記の課題を解決するための第12の手段として、上記第6乃至第11のいずれかの解決手段において、主原料であるオレフィンが、環状オレフィンポリマー又は環状オレフィンコポリマー等の環状オレフィン系樹脂であることを特徴とする袋物の包装用袋を提供するものである。
【0024】
本発明は、上記の課題を解決するための第13の手段として、上記第6乃至第12のいずれかの解決手段において、袋本体はトップシール部又はボトムシール部を有し、これらのトップシール部又はボトムシール部よりも上端側又は下端側から開始し、これらのトップシール部又はボトムシール部よりも袋本体の中央側には延びないノッチが形成されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0025】
本発明は、上記の課題を解決するための第14の手段として、上記第13の解決手段において、ノッチは袋本体の折り目状の端部と平行に又は袋本体の折り目状の端部に対して斜めに傾斜して形成されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0026】
本発明は、上記の課題を解決するための第15の手段として、上記第6乃至第14のいずれかの解決手段において、袋本体はトップシール部又はボトムシール部を有し、これらのトップシール部又はボトムシール部よりも中央側に形成されたノッチを有し、このノッチの周囲がシールされていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上記のように、袋本体の折り目状の端部に端部から袋本体を横切るように開封するための切り口を形成する加工が端部に連続的に又は周期的に施されているため、連続する筒状のプラスチックフィルムを所定の長さ毎に切断して袋状とする場合に、切り口の位置調整を行う必要がなく、切り口加工に手間と時間と無駄な資源とを要することなく効率的に処理をすることができる実益がある。
【0028】
また、この場合、本発明によれば、上記のように、袋本体の折り目状の端部に切り口を形成する加工が折り目状の端部の全長にわたって施されているため、袋本体の折り目状の端部(袋本体の側部)のいずれの箇所からも開封することができ、使用者が、切り口を探す必要がなくなると共に、包装用袋の内容物の使用による減少に伴い上方に内容物と接していない余剰部分が生じた場合には、当該余剰部分を折り畳んだり、結んだり、すぼめたりすることなく、余剰部分を切り取って必要な高さとすることができ、余剰部分が内容物の取り出し作業において支障となることなく、円滑に取り出し作業を行うことができる実益がある。なお、この場合「加工が全長にわたって施されている」とは、加工処理が全長に対して施されていることを意味し、切り口自体が、全長にわたって連続して存在している必要はない。
【0029】
本発明によれば、上記のように、折り目状の端部に、複数の切り口を周期的に又は連続して形成することにより、切り口加工を連続的に又は周期的に切り口加工を施しているため、使用者が袋本体の折り目状の端部(袋本体の側部)の任意の位置から簡易に開封することができる実益がある。
【0030】
本発明によれば、上記のように、切り口加工が連続的又は周期的に施された結果、複数形成された切り口のうち、少なくとも一部の切り口が、例えば、線状の切り口であれば袋本体の外縁に面して、又は、孔状若しくは凹状の切り口であれば袋本体の外縁に面して形成されて、袋本体の外縁に切れ目が設けられているため、袋本体の端部に開封の契機となる切れ目が必ず臨むように存在し、使用者がこの切れ目から袋本体に確実に剪断力を付加することができ、容易にかつ確実に袋本体を開封することができる実益がある。この場合、上記のように、切り口は、孔状若しくは線状又は凹状の形状等の、製造状況等に応じた適宜の形状の切り口とすることができる実益がある。
【0031】
本発明によれば、上記のように、袋本体の端部は端部に沿って形成されたシール部を有し、切り口はこのシール部に形成されているため、必要に応じて気密性を保持しつつ、簡易カット性を発現させることができる実益がある
【0032】
更に、本発明によれば、上記のように、主原料であるオレフィンが、環状オレフィンポリマー又は環状オレフィンコポリマー等の環状オレフィン系樹脂であるため、切り口によって切断(開封)の契機が付与されることにより、簡易カット性を発現することができる実益がある。
【0033】
加えて、本発明によれば、上記のように、この切り口加工を施す際に、この袋本体に張力を加えながら袋本体の折り目状の端部を刃を有する加工ロールと刃を受け入れることができる軟式ロールとの間を通過させているため、特に、筒状のプラスチックフィルムの折れ目状の端部をシールすることなく袋本体とする場合においても、表裏のプラスチックが相互に滑って位置ずれを起こし、所定外の位置に切り口が形成されるのを防止することができると共に、このように原料を筒状に形成して折り畳んで袋本体を形成しても適切に切り口加工を施すことができるため、複数枚のプラスチックフィルムを重ね合わせた上で端部をシールして袋本体を形成する場合に比べて、フィルムの重ね合わせ及びシールという工程を省略して袋本体を形成することができ、効率的に袋本体を形成することができる実益がある。
【0034】
また、本発明によれば、上記のように、トップシール部又はボトムシール部を有する袋本体において、これらのトップシール部又はボトムシール部よりも上端側又は下端側から開始し、これらのトップシール部又はボトムシール部よりも中央側には延びないノッチが形成されているため、又は、これらのトップシール部又はボトムシール部よりも中央側に形成されたノッチを有し、このノッチの周囲がシールされているため、このノッチによって、開封の契機を付与して袋本体が有する簡易カット性を発現させつつ、内容物が、これらのノッチにまで達することがないため、内容物の粒径が細かい場合であっても、内容物が外部に漏れ出るのを防止することができると同時に、内容物が外気に触れて酸化や吸湿等により変質や劣化をすることを防止することができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】本発明の包装用袋の切り口か施された端部の拡大図である。
【
図3】本発明の包装用袋を製造する状態の概略側面図である。
【
図4】本発明の包装用袋の他の実施の形態の概略正面図である。
【
図5】本発明の包装用袋の更に他の実施の形態の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明すると
図1は、本発明の包装用袋10を示し、この包装用袋10は、例えば、ポリエチレンの粒等の化成品の原材料や食品添加物等の化学原料や、肥料、培養土、砂利等の土木園芸品、塩、砂糖、精米等の食料品、医薬品等の多様な製品を工場等から出荷する際に大量に包装して運搬等に使用される幅約600mm、高さ約800mm~1000mm程度の比較的大型の袋である。この包装用袋10は、
図1に示すように、袋本体12を有し、この袋本体12には、
図1及び
図2に示すように、その折り目状の端部12aに切り口14aを形成する加工14が施されている。
【0037】
(1.袋本体)
袋本体12は、オレフィンを主原料とする原料から成り、
図3に示すように、この原料を主にインフレーション成形により筒状に加工した後に折り畳んで、折り目状の端部12a(両側端)を有する袋本体12の原型とした上で、必要な長さに裁断し、その後、上端や下端をトップシール又はボトムシールすることにより製造される。
【0038】
この主原料であるオレフィンとしては、環状オレフィン系樹脂を使用することができ、具体的には、環状オレフィンポリマー(Cyclo-Olefin Polymer:COP)又は環状オレフィンコポリマー(Cyclo-Olefin Copolymer:COC)を挙げることができる。これらの環状オレフィン系樹脂は、MD方向(Machine Direction(マシンダイレクション):樹脂の流れ方向)、TD方向(Transverse Direction(トランスバースダイレクション):樹脂の幅方向)のいずれの方向においても、優れた直進カット性を有し、切り口によって切断(開封)の契機が付与されることにより、小さな力でも引き裂くことができ、包装用袋10において簡易なカット性を発現させることができるためである。
【0039】
この場合、これらの環状オレフィン系樹脂を単体で用いて単層のインフレーションチューブフィルムとすることもできるが、必要に応じて、ポリエチレン等の他の樹脂と組み合わせて多層インフレーション成形により、多層状の袋本体12とすることもできる。このポリエチレンとしては、具体的には、特にJIS K7210に準拠するメルトフローレート(以下、単にMFRという。)が0.03g/10min~4.0g/10minであり、C(炭素数)4~C8の側鎖を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を挙げることができる。このような直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、その製造時に、ブテン―1、ヘキセンー1、4メチルペンテン-1、オクテン-1などの炭素数4~8のαオレフインを添加することにより製造することができる。この直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いて、例えば、中間層に環状オレフィン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とをブレンドした層を有し、その両面の最外層及び最内層に更に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を有する多層状の袋本体12とすることができる。
【0040】
なお、このように、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンと併用する場合には、環状オレフィン系樹脂のうち、環状オレフィンコポリマー(COC)を使用することが望ましい。環状オレフィンコポリマー(COC)の方が、環状オレフィンポリマー(COP)よりも、ポリエチレンと混合する上で相性が良く、加工性が高いためである。一方で、環状オレフィンコポリマー(COC)を使用するとコストも上昇するため、包装用袋10の用途等の必要に応じて、比較的柔軟な環状オレフィンポリマー(COP)を単体で使用することもできる。
【0041】
また、この袋本体12の原料には、さらに包装用袋10の改質を目的として、必要に応じて耐候剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤等の添加剤を、包装用袋10としての性状に影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
【0042】
上記のようにして調製された原料は、
図3に示すように、インフレーション成形機1のホッパーから加熱されたシリンダー内に投入され、完全に溶融した状態で混練されながらスクリューで送られ、環状ダイを通過して、空気を吹き込みながらそのリップ部から円筒状に押し出された後、エアリングで冷却され、ピンチロール2で引っ張り上げられて、袋本体12の原形である筒をつぶした状態のポリエチレン原反(筒状のフィルム)に連続的に成形される。このときの空気吹き込みによる膨張の程度であるブロー比は、この筒状のフィルムの配向バランス、ひいては、強度、透明性、成膜安定性に影響する重要な要素であり、本発明においては、1.0~3.0に設定するのが好ましい。
【0043】
この場合、袋本体12の原形である筒状のフィルムは、用途や必要に応じて、400mm~600mmの幅に調整して成形される。袋本体12は、この所定の幅に成形された筒状のフィルムを、
図1及び
図2に示すように、用途や必要に応じた800mm~1000mmの長さにて裁断して、製造される。
【0044】
加えて、本発明においては、袋本体12は、50μm~300μmの厚みに形成される。この場合、300μmとの上限を設けたのは、300μmを超える厚みとすると、包装用袋10として柔軟性に欠け、折り畳みや包装のための作業に、却って悪影響を与えるからである。従って、300μm以下の厚みとすることにより、必要以上の剛性も有さず、折り畳み等の際にも良好な取扱い性を発揮することができる。もっとも、一方で、特に150μmを超える厚みに形成するためには、ブロー比を含めインフレーション成形機1の設定を適切に調整することが必要となる。また、本発明の包装用袋10を、それ自体を単体で使用する場合には、100μm~150μm程度の厚みとして、強度を確保する一方、例えば、クラフト紙から成るクラフト袋等の内袋として使用する場合には、70μm~80μmの厚みとすることができる。
【0045】
なお、原料を袋本体12の原形である筒状のフィルムに成形する方法としては、必ずしも、上記のインフレーション成形に限定されるものではなく、上記の条件を充足する袋本体12とすることができれば、他に、例えば、T-ダイ成形法、カレンダー成形法又は延伸法により先にフィルムに成形し、続いてこのフィルムの長さ方向又は幅方向の両端を合わせて熱シールするラミネート加工によって、筒状のフィルムとすることもできる。
【0046】
また、この袋本体12の端部12aには、収容物によって、特に気密性が必要な場合には端部に沿って(帯状に連続して袋本体12の左右両端に)シール部を形成し、このシール部に後述する切り口14aを形成することができ、一方、高い気密性が要求されない場合あるいは通気性が要求される場合には、特にシール部を形成することなく、後述する切り口14aを形成することもできる。
【0047】
(2.切り口加工)
本発明においては、この袋本体12の折り目状の端部12aに形成される切り口14aは、
図1及び
図2に示すように、端部12aから袋本体12を横切るように開封するための切り口である。即ち、本発明における切り口14aは、必要な長さに裁断された袋本体12の切断面から成る上端又は下端から他端に向けて開封するためのものではなく、当初から筒状に形成された袋本体12の折り目状の端部12aから成る側面部分から包装用袋10を開封するための切り口14aである。従って、この切り口14aは、袋本体12のうち、元来は筒状に連続している一部分であって、加工14がなされていなければ開封が困難である箇所から開封するための切り口14aとなる。
【0048】
本発明においては、この切り口14aを形成する加工14が、
図1乃至
図3に示すように、折り目状の端部12aに連続的に又は周期的に施されている。ここに、連続的に、とは、
図1に示すように、加工14処理自体が連続的に施されていればよく、切り口14a自体が連続している必要はない。また、周期的に、とは、僅かな一部に加工がされていない部分が存在してもよいことを意味し、基本的には、加工14がされている部分がそれ以外の部分よりも格段に多く、加工14がされている部分が折り目状の端部12aのほぼ全域を占めることが望ましい。これにより、連続する筒状のプラスチックフィルムを所定の長さ毎に切断して袋状とする場合に、複数の同一製品としての包装用袋10間で同じ箇所に切り口14aが形成されるように切り口14aの位置調整を行う必要がなくなるため、切り口加工14に手間と時間と無駄な資源とを要することなく効率的に処理をすることができる。
【0049】
従って、より望ましくは、袋本体12の折り目状の端部12aに切り口14を形成する加工14は、
図1に示すように、折り目状の端部12の全長にわたって施されていることが望ましい。これにより、袋本体12の折り目状の端部12a(袋本体12の側部)のいずれの箇所からも開封することができ、使用者が、切り口14aを探す必要がなくなると共に、包装用袋10の内容物の使用による減少に伴い上方に内容物と接していない余剰部分が生じた場合には、当該余剰部分を折り畳んだり、結んだり、すぼめたりすることなく、余剰部分を切り取って必要な高さとすることができ、余剰部分が内容物の取り出し作業において支障となることなく、円滑に取り出し作業を行うことができる。なお、この場合「加工が全長にわたって施されている」とは、加工14処理が全長に対して施されていることを意味し、必ずしも、切り口14a自体が、全長にわたって連続して存在する必要はない。
【0050】
(2-1.切り口)
この切り口14aは、例えば、
図2(A)に示すように、折り目状の端部12aにおいて多列多段にわたって円弧状に複数形成された線状の形状とすることができる。このような単なる切れ目としての切り口14aとする場合は、その形状に特に限定はなく、図示した円弧状に限らず、直線状、波線状等の任意の形状とすることができる。
【0051】
また、切り口14aは、例えば、
図2(B)に示すように、折り目状の端部12aにおいて多列多段にわたって円形に複数形成された孔状の形状とすることもできる。この場合、孔の形状に特に限定はなく、図示した円形のほかに、三角形、四角、楕円形、菱形等の任意の形状とすることができる。
【0052】
更に、この切り口14aは、例えば、
図2(C)(D)に示すように、折り目状の端部12aに臨むようにして形成された横向きの「V」字状の凹状の形状(即ち、<状又は>状)とすることもできる。この場合、「凹状」とは、折り目状の端部12aから見て袋本体12の内部に向かって形成された切り欠きであることを意味し、
図2(C)に示すように、複数の切り欠きを所定の間隔を開けて配置することもできるし、
図2(D)に示すように、複数の切り欠きを間隔を開けずに連続して形成することもできる。但し、後者の場合には、折り目状の端部12aに上述したシール部を形成する場合に限り、適用することができる。なお、この凹状の形状も特に限定はなく、図示したV字状のほか、U字状等の任意の形状とすることができる。
【0053】
この場合、
図2(A)乃至
図2(C)に示すように、複数の切り口14aを周期的に形成することができ、特に、凹状の切り口14aにあっては、上記の通り、
図2(D)に示すように、複数の切り口14aを連続して配置することもできる。このため、使用者が袋本体12の折り目状の端部12a(袋本体12の側部)の任意の位置から簡易に開封することができる。
【0054】
但し、これらのいずれの形態の切り口14aにおいても、線状又は孔状の切り口14aにあっては、
図2(A)(B)に示すように、複数の切り口14aのうち少なくとも一部の切り口14aが袋本体12の外縁に
面して、また、凹状の切り口14aにあっては、
図2(C)(D)に示すように、袋本体12の外縁に面して形成されて、いずれにしろ、袋本体12の外縁に切れ目が設けられていることが必要である。これは、上述したように、環状オレフィンポリマー(COP)又は環状オレフィンコポリマー(COC)を使用した場合でも、その簡易なカット性を発現させるためには、開封の契機となる切れ目が必要だからである。これにより、特に
図2に示すように、袋本体12の端部12aに開封の契機となる切れ目が必ず臨むように存在し、使用者がこの切れ目から袋本体12に確実に剪断力を付加することができ、容易にかつ確実に袋本体12を開封することができる。
【0055】
(2-2.加工方法)
このような切り口14aは、
図3に示すように、袋本体12の折り目状の端部12aを刃3aを有する加工ロール3と、この刃3aを受け入れることができる軟式ロール4との間を通過させることにより、形成することができる。切り口14aの形状や位置、個数、ひいては、加工14が施される幅は、この加工ロール3の刃3aの形状や位置、個数、幅によって決定される。
【0056】
この場合、この切り口加工14を施す際に、
図3に示すように、袋本体12に張力を加えながら、加工ロール3と軟式ロール4との間を通過させることが望ましい。これにより、特に、筒状のプラスチックフィルムの折れ目状の端部12aをシールすることなく袋本体12とする場合においても、表裏のプラスチックが相互に滑って位置ずれを起こし、所定外の位置に切り口14aが形成されるのを防止することができると共に、このように原料を筒状に形成して折り畳んで袋本体12を形成しても適切に切り口加工14を施すことができるため、複数枚のプラスチックフィルムを重ね合わせた上で端部をシールして袋本体12を形成する場合に比べて、フィルムの重ね合わせ及びシールという工程を省略して袋本体12を形成することができ、効率的に袋本体12を形成することができる。
【0057】
なお、この切り口加工14を施す工程は、
図3に示すように、袋本体12を形成した後、巻き取る前にそのまま加工ロール3と軟式ロール4との間を通過させることにより、行うこともできる。この場合には、図示の実施の形態と異なり、ピンチロール2の代わりに、加工ロール3及び軟式ロール4を使用することもできる。また、袋本体12を一旦巻き取った後、別の工程へ送り出す際等に、切り口加工14を行うこともできる。なお、図示の実施の形態では、
図33に示すように、両方の折り目状の端部12aに加工14を施したが、いずれか一方の端部12aのみに加工を施すことも本発明の範囲に含まれる。
【0058】
(3.ノッチ)
また、本発明においては、上述した切り口加工14とは別に、開封を補助するための手段として、
図4及び
図5に示すように、ノッチ16を形成することもできる。具体的には、まず、
図4に示すように、袋本体12の上端に施されたトップシール部18よりも上端側から開始し、このトップシール部18よりも中央側には延びないノッチ16を形成することができる。この実施の形態においては、ノッチ16は、トップシール部18よりも上端側に、あるいは、トップシール部18内に留まる位置にまでしか形成されず、内容物が収納されるトップシール部18よりも中央側にまで達することがない。
【0059】
このため、このノッチ16によって、開封の契機を付与して袋本体12が有する簡易カット性を発現させつつ、内容物が、これらのノッチ16にまで達することがないため、内容物の粒径が細かい場合であっても、内容物が外部に漏れ出るのを防止することができると同時に、内容物が外気に触れて酸化や吸湿等により変質や劣化をすることを防止することができる。
【0060】
なお、この
図4に示す実施の形態においては、ノッチ16は、袋本体12の折り目状の端部12aに対して斜めに傾斜して形成されている。これは、斜めに形成した方が、
図4に示すように、その後、袋本体を横切る方向に円滑に開封するのに適しているからである。従って、このノッチ16は、
図4に示すように、袋本体12の上端の一方の端部付近に形成されて、他方の端部に向けて傾斜するノッチ16とすることが望ましい。但し、この傾斜するノッチ16に限定されるものではなく、袋本体12の折り目状の端部12aと平行にノッチ16を形成することもできる。同様に、
図4では、トップシール部18側にノッチ16を形成したが、図示しないボトムシール部側にノッチ16を形成して、このボトムシール部よりも下端側から開始し、ボトムシール部よりも中央側には延びないノッチ16とすることもでき、更には、トップシール部18及びボトムシール部のいずれにもノッチ16を形成することもできる。
【0061】
更に、このノッチ16の他の形態として、
図5に示すように、トップシール部18又はボトムシール部よりも中央側にノッチ16形成した上で、このノッチ16の周囲が囲みシール20によりシールされている包装用袋10とすることもできる。この場合も、ノッチ16は、内容物側に存在しつつ、その周囲が囲みシール20によりシールされているため、
図4に示す実施の形態と同様に、内容物の流出や変質を防止することができる。
【0062】
この
図5に示す実施の形態のノッチ16は、囲みシール20と同時に形成することができる。具体的には、例えば、中央に突起を有する半円状等の形状を有する図示しない金型を袋本体12のトップシール部18近傍に押し当てて、囲みシール20を形成すると同時に金型の突起によって切り込みを入れてノッチ16とすることができる。勿論、その形成方法に限定はなく、囲みシール20を形成した後に、当該囲みシール20内にノッチ16を形成することもできる。また、その囲みシール20も
図5の実施の形態では、略半円状に形成しているが、内容物の流出や変質を防止することができれば、その形状にも特に限定はなく、他の形状とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、ポリエチレンの粒等の化成品の原材料や食品添加物等の化学原料や、肥料、培養土、砂利等の土木園芸品、塩、砂糖、精米等の食料品、医薬品等の多様な製品の保存や輸送等に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 インフレーション成形機
2 ピンチロール
3 加工ロール
3a 刃
4 軟式ロール
10 包装用袋
12 袋本体
12a 折り目状の端部
14 切り口を形成する加工
14a 切り口
16 ノッチ
18 トップシール部
20 囲みシール