(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】人形の関節構造
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
A63H3/36 C
(21)【出願番号】P 2017193308
(22)【出願日】2017-10-03
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391053917
【氏名又は名称】株式会社オビツ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】尾櫃 充代
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一裕
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0043269(US,A1)
【文献】特開2001-096072(JP,A)
【文献】特開2002-227829(JP,A)
【文献】特開2012-232021(JP,A)
【文献】実開昭61-045991(JP,U)
【文献】登録実用新案第3171931(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の頭部と胴部とを可動するように連結する関節構造であって、
胴部を構成する胸骨格に対して一端側が連結される第一可動部と、
頭部に対して一端側が連結されるとともに、他端側が前記
第一可動部と連結される第二可動部と、で構成され、
前記第一可動部は、前記一端側に備えられ、前記胸骨格に対して、前後方向に傾動可能に連結する第一連結部と、他端側に備えられ、前記第二可動部の他端側を回動可能に連結する上端を開放した球状の凹面領域からなる被ジョイント部と、を備え、
前記第二可動部は、前記一端側に備えられ、前記頭部を連結する第二連結部と、前記他端側に備えられ、前記第一可動部の前記被ジョイント部の凹面領域に回動可動に連結する球状ジョイント部と、を備え、
前記被ジョイント部の上端の開放領域は、少なくとも前記球状ジョイント部の最大径部よりも小径に形成された開放周面部を備え、
前記開放周面部は、相対向する左右位置に最大高さ部位を有し、前記相対向する最大高さ部位を結ぶ第一仮想対向線と直交する第二仮想対向線上には、前部領域と後部領域とが、前記最大高さ部位よりもそれぞれ深く切り込まれた前後の傾動許容部位を有し、
前記開放周面部は、前記左右の最大高さ部位から前後の傾動許容部位まで、なだらかな曲面をもって形成されており、
前記球状ジョイント部の外周面と前記被ジョイント部の凹面領域とには、前記第二可動部の第二連結部と球状ジョイント部とを同一線上に結ぶ仮想中心線を軸として左右方向への回転を阻止する阻止構造を備え、
前記第二連結部と前記球状ジョイント部との間には棒状部を備え、前記棒状部は短尺円柱状に形成されており、
前記棒状部と前記球状ジョイント部との境界領域は、前記球状ジョイント部が前記被ジョイント部に収容された際に、前記被ジョイント部の開放周面部の最大高さ部位と略同一平面位置となるように形成されていることを特徴とする人形の関節構造。
【請求項2】
前記胸骨格の上面部には、前記第一連結部が当接して前記第一可動部の前方への所定角度以上の傾動を阻止する凸状に突設形成された第一抑止部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の人形の関節構造。
【請求項3】
前記胸骨格の上面部で、前記第一抑止部の後方には、前記第一連結部が当接して前記第一可動部の後方への所定角度以上の傾動を阻止する第二抑止部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の人形の関節構造。
【請求項4】
前記胸骨格は、前部材と後部材とで構成されており、
前記第一抑止部は、前記前部材の上面部の略中央位置に突設され、
前記後部材の前面略中央領域には、リブが突設され、
前記リブの上端は、前記第一抑止部及び前記後部材の上端よりも鉛直方向で低く構成され、
前記リブの上端には、左右方向に所定の間隔をあけると共に、前記後部材の上端よりも鉛直方向で上方に向けて立ち上る一対の支持片が一体に突設されており、
前記一対の支持片間の後方に位置する前記後部材の上端が前記第二抑止部として機能することを特徴とする請求項3に記載の人形の関節構造。
【請求項5】
前記第一可動部は、略
対称形状に形成された第一構成体と第二構成体とで分離連結可能な分割構成とし、
前記第一構成体と前記第二構成体の内面側上端には、それぞれ半球部が凹設されており、それぞれの半球部を突き合わせることにより、前記凹面領域からなる被ジョイント部が形成され、
前記第一構成体と前記第二構成体の下端には、それぞれの下端から平板部が一体に突設されており、それぞれの平板部を突き合わせることにより、前記第一連結部が形成され、
前記胸骨格は、鉛直方向で上方に向けて立ち上る一対の支持片が相対向して一体に突設されており、
前記第一連結部は、水平方向の軸心を中心として前記一対の支持片間にて前後方向に傾動可能に連結されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の人形の関節構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節部位で可動する、いわゆる可動人形の関節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
首、膝、肘、股などの所定の関節部位で可動する可動人形が、性別や年齢を問わず広く需要者に受け入れられている。
特に、頭の傾き(首の傾き)加減の微調整が図り得るか否かにあっては、リアルな人間の微妙な表情をフィギュア人形に作り出せるかという点において、人間に中実なリアルな可動人形(フィギュア人形)を求める愛好者達にとっては商品選択要件の一つとして大変重要である。
例えば、人間における頭(首)の前後方向の傾きは、左右方向の傾きと比して、その傾き加減が大きいものであるが、頭部と胴部との間を単一のボールジョイントで連結する関節構造を有する従来の可動人形(フィギュア)では、前後方向の傾きと左右方向の傾きとが同じであったため、その微調整などが上手く調整(表現)できていなかった。
このような頭の傾き(首の傾き)加減を大きく調整し得る首関節構造として、例えば特許文献1に開示の構造が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示の首関節構造は、上端側が頭部側と連結される上方側関節部と、下端側が胴部側と連結される下方側関節部と、これら上方側関節部の下端側と下方側関節部の上端側をそれぞれ摺動可能に連結する上下の軸受部を備えた筒状の首部と、で構成されている。
前記上下の軸受部に連結される上方側関節部の下端と、前記下方側関節部の上端には、それぞれ円柱部を介して球状の連結部(ボールジョイント)が備えられており、前記上下の軸受部は、前記球状の連結部を収納し、かつ摺動可能な球状内面を有する凹状空間をもって形成されている。すなわち、それぞれの連結部(ボールジョイント)は、それぞれの軸受部内に収納され、それぞれの円柱部が、それぞれの軸受部の開放周面部から外方に突出している。
このような構成からなる特許文献1の首関節構造にあっては、上方側関節部の球状の連結部と軸受部との間、下方側関節部の球状の連結部と軸受部との間で、頭(首)の前後方向と左右方向の傾斜動作を付与していた。すなわち、前後方向の傾斜も左右方向の傾斜もそれぞれ首の長さ方向二箇所での傾斜動作で表現することが可能である。これによれば、単一のボールジョイント構造をもって構成されていた従前の関節構造と比して、頭(首)の前後方向の傾斜も大きく表現することができた。
【0004】
しかし、このように首の長さ方向二箇所で傾斜動作する関節構造を有していると、頭の傾斜動作(首の傾斜動作)にリアルな人間の動作にはない動きをしてしまう場合があり、違和感を感じ、リアル感を損なう虞があった。
また、軸受部の開放周面部が円周方向で同一平面上にあることから、最大傾斜角度は前後方向・左右方向を含む360度全てにおいて同一であった。すなわち、それぞれの円柱部が開放周面部に接する状態が360度にわたって全て同じに設定されている。従って、左右方向の頭の傾き(首の傾き)加減に比して前後方向への頭の傾き(首の傾き)加減を大きくするなど、リアルな人間の微妙な表情をフィギュア人形に作り出すことができず、人間に中実なリアルな可動人形(フィギュア人形)を得ることは困難であった。
そこで本願の発明者は、単一のボールジョイント構造を採用しつつもリアルな人間の微妙な表情をフィギュア人形に作り出すことができ、人間に中実なリアルな可動人形(フィギュア人形)を提供することに成功した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の有するこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、単一のボールジョイント構造を採用しつつもリアルな人間の微妙な表情をフィギュア人形に作り出すことが可能な人形の関節構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、第1の本発明がなした技術的手段は、人形の頭部と胴部とを可動するように連結する関節構造であって、
胴部を構成する胸骨格に対して一端側が連結される第一可動部と、
頭部に対して一端側が連結されるとともに、他端側が前記第一可動部と連結される第二可動部と、で構成され、
前記第一可動部は、前記一端側に備えられ、前記胸骨格に対して、前後方向に傾動可能に連結する第一連結部と、他端側に備えられ、前記第二可動部の他端側を回動可能に連結する上端を開放した球状の凹面領域からなる被ジョイント部と、を備え、
前記第二可動部は、前記一端側に備えられ、前記頭部を連結する第二連結部と、前記他端側に備えられ、前記第一可動部の前記被ジョイント部の凹面領域に回動可動に連結する球状ジョイント部と、を備え、
前記被ジョイント部の上端の開放領域は、少なくとも前記球状ジョイント部の最大径部よりも小径に形成された開放周面部を備え、
前記開放周面部は、相対向する左右位置に最大高さ部位を有し、前記相対向する最大高さ部位を結ぶ第一仮想対向線と直交する第二仮想対向線上には、前部領域と後部領域とが、前記最大高さ部位よりもそれぞれ深く切り込まれた前後の傾動許容部位を有し、
前記開放周面部は、前記左右の最大高さ部位から前後の傾動許容部位まで、なだらかな曲面をもって形成されており、
前記球状ジョイント部の外周面と前記被ジョイント部の凹面領域とには、前記第二可動部の第二連結部と球状ジョイント部とを同一線上に結ぶ仮想中心線を軸として左右方向への回転を阻止する阻止構造を備え、
前記第二連結部と前記球状ジョイント部との間には棒状部を備え、前記棒状部は短尺円柱状に形成されており、
前記棒状部と前記球状ジョイント部との境界領域は、前記球状ジョイント部が前記被ジョイント部に収容された際に、前記被ジョイント部の開放周面部の最大高さ部位と略同一平面位置となるように形成されていることを特徴とする人形の関節構造。
【0008】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記胸骨格の上面部には、前記第一連結部が当接して前記第一可動部の前方への所定角度以上の傾動を阻止する凸状に突設形成された第一抑止部を備えていることを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【0009】
第3の本発明は、第2の本発明において、前記胸骨格の上面部で、前記第一抑止部の後方には、前記第一連結部が当接して前記第一可動部の後方への所定角度以上の傾動を阻止する第二抑止部を備えていることを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【0010】
第4の本発明は、第3の本発明において、前記胸骨格は、前部材と後部材とで構成されており、
前記第一抑止部は、前記前部材の上面部の略中央位置に突設され、
前記後部材の前面略中央領域には、リブが突設され、
前記リブの上端は、前記第一抑止部及び前記後部材の上端よりも鉛直方向で低く構成され、
前記リブの上端には、左右方向に所定の間隔をあけると共に、前記後部材の上端よりも鉛直方向で上方に向けて立ち上る一対の支持片が一体に突設されており、
前記一対の支持片間の後方に位置する前記後部材の上端が前記第二抑止部として機能することを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【0011】
第5の本発明は、第1の本発明乃至第4の本発明のいずれかにおいて、前記第一可動部は、略対称形状に形成された第一構成体と第二構成体とで分離連結可能な分割構成とし、
前記第一構成体と前記第二構成体の内面側上端には、それぞれ半球部が凹設されており、それぞれの半球部を突き合わせることにより、前記凹面領域からなる被ジョイント部が形成され、
前記第一構成体と前記第二構成体の下端には、それぞれの下端から平板部が一体に突設されており、それぞれの平板部を突き合わせることにより、前記第一連結部が形成され、
前記胸骨格は、鉛直方向で上方に向けて立ち上る一対の支持片が相対向して一体に突設されており、
前記第一連結部は、水平方向の軸心を中心として前記一対の支持片間にて前後方向に傾動可能に連結されることを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単一のボールジョイント構造を採用しつつもリアルな人間の微妙な表情をフィギュア人形に作り出すことが可能な人形の関節構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の関節構造を備えた人形の概略全体正面図である。
【
図2】
図1に示す人形の上胴外皮を取り外すと共に、頭部を仮想線にて示す概略全体正面図である。
【
図3】上胴外皮内に内装される胴部骨格と本実施形態の首関節構造の連結状態を示す概略正面図である。
【
図4】胴部骨格に本実施形態の首関節構造を備えた概略斜視図である。
【
図5】本実施形態の首関節構造と胴部骨格との分解斜視図である。
【
図6】本実施形態の首関節構造の概略斜視図である。
【
図7】本実施形態の首関節構造の分解斜視図である。
【
図8】本実施形態の首関節構造における第一可動部の概略平面図である。
【
図9】本実施形態の首関節構造であって、第一可動部を分離させた状態を示す概略正面図である。
【
図10】本実施形態の首関節構造であって、第一可動部の凹部に第二可動部の凸部が隙間をもって収容されている状態を示す概略断面図である。
【
図11】本実施形態の首関節構造を示し、(a)は概略正面図、(b)は概略側面図である。
【
図12】本実施形態の首関節構造を示し、(a)は第二可動部の棒状部が前方の傾動許容部位に当接するまで第二可動部を前方に傾動させて頭部を前傾させた状態、(b)は第二可動部の棒状部が後方の傾動許容部位に当接するまで第二可動部を後方に傾動させて頭部を後傾させた状態である。
【
図13】本実施形態の首関節構造を示し、(a)は
図7(a)の状態から第一可動部を前方に傾動させて頭部をさらに前傾させた状態、(b)は
図7(b)の状態から第一可動部を後方に傾動させて頭部をさらに後傾させた状態、(c)は第二可動部は傾動させず第一可動部のみを前方に傾動させて頭部を前傾し、第一抑止部に第一可動部の第一連結部が当接した状態を部分的に示す図である。
【
図14】本実施形態の首関節構造を示し、(a)は第二可動部を向かって左方向に傾動させて頭部を向かって左方向に傾斜させた状態、(b)は第二可動部を向かって右方向に傾動させて頭部を向かって右方向に傾斜させた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎず、何等これらに限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計可能である。
本実施形態では、胴部と、胴部に着脱可能に連結される左右の腕部と、胴部に着脱可能に連結される左右の脚部と、胴部に着脱可能に連結される頭部を備えてなる、いわゆる人形素体と称されるものにおける、胴部と頭部とを連結する首関節構造を本発明の人形の関節構造の一実施形態として説明する。
また、本実施形態では、本発明の人形の関節構造の一実施形態として、首関節構造を用いて以下に説明するが、本発明の人形の関節構造は、腰部の股間位置と大腿部の付根部との間に備えられる股関節構造や、足首の関節構造に採用することも可能である。
【0015】
[定義]
本発明において、「人形」とは、胴部と脚部と腕部と頭部を備えた人形全般に限らず、頭部を備えていない所謂人形用素体といわれるものをも含む概念とする。また、少なくとも脚部や腕部などの所要箇所が可動する人形であれば全てが対象とされる。例えば人間の男性・女性を模写した人形に限らず、動物や空想上の生物若しくはロボットなどを模写した人形であってもよい。
「胴部(胴体)」とは、一般的には人形の腕部と脚部と頭部を除いた部分とされるが、胴部は、頭部を備える概念としても、脚部や腕部を備える概念としてもよく、少なくとも頭部は除かれているものであればよい。
「脚部」とは、足部、脛部、膝部、太腿部の付根部(腰部の股間位置と連結される部分)あたりまでをいい、「大腿部」とは、付根部から膝上あたりまでをいい、「脛部」とは、膝下あたりから足首あたりまでをいい、「膝部」とは、大腿部と脛部とを連結する部分をいい、「足部」とは足首から先端(指先)までをいうものとする。
「腕部」とは、胴部に連結される上腕と、上腕と肘部を介して屈曲可能に連結する下腕と、下腕に連結する手部とからなり、「上腕」とは、腕部付根位置(肩位置との連結部)あたりから肘上あたりまでをいい、「下腕」とは、肘下あたりから手首あたりまでをいい、「手部」とは手首あたりから先端(指先)までをいうものとする。
【0016】
図1及び
図2は、本発明の人形の関節構造を採用した人形の全体概要を示し、
図1は正面側から見た概略正面図で、
図2は、頭部7と、胴部1を構成する上胴外皮19と下胴外皮21を取り外した状態の概略正面図である。なお、頭部7は仮想線にて示す。
【0017】
本実施形態で図示した人形は、胴部(一方の構成部材)1と、胴部1に首関節構造59を介して連結される頭部(他方の構成部材)7と、胴部1に連結される左右の脚部5と、胴部1に連結される左右の腕部3とを含んで構成されている、いわゆる人形用素体と称される人形を一実施形態として採用している。また、本実施形態では、女性の裸体を忠実に模写した外観形態を有している。
以下、まず、本実施形態の人形の胴部(一方の構成部材)1と、頭部(他方の構成部材)7との概略構成について簡単に説明した後、本発明の人形の関節構造の一実施形態である首関節構造59について説明する。なお、左右の脚部5と左右の腕部3との詳細な説明は省略する。
【0018】
胴部(一方の構成部材)1は、本実施形態では胸部9を含む上胴11と、上胴11よりも下位の部分で腹部13と腰部15を含む下胴17との二分割構成で形成されている(
図1参照。)。
【0019】
胴部1は、上胴11を構成する上胴外皮19と、下胴17を構成する下胴外皮21と、上胴外皮19と下胴外皮21によって覆われる硬質合成樹脂製の胴部骨格23とで構成されている(
図1及び
図2参照。)。
【0020】
上胴外皮19と下胴外皮21は、それぞれソフトビニル樹脂にて、人間の女性裸体の外観形態を忠実に模写した中空体に形成されている。
なお、上胴外皮19と下胴外皮21のそれぞれの外観形態は任意であって特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0021】
なお、本実施形態の胴部1は、上述のとおり、胸部9を含む上胴11と、上胴11よりも下位の部分で腰部15を含む下胴17との二分割構成としたが、胸部と腹部を一体として上胴を構成し、下胴が腰部のみである二分割構成とすることも可能で、二分割する位置は胴部の長さ方向で任意に設計変更可能である。
また、下胴を腹部と腰部とにさらに分割した三分割構成とする胴部であっても本発明の範囲内である。さらに、全く分割しない胴部(一体の胴部外皮)であっても本発明の範囲内である。
また、本実施形態の胴部1は、ソフトビニル製の外皮(上胴外皮19、下胴外皮21)と硬質合成樹脂製の胴部骨格23とで構成しているが、外皮が硬質合成樹脂製であっても本発明の範囲内である。さらに、硬質合成樹脂製で中実体(無垢)に形成された一体若しくは複数分割の胴部を採用することも可能で本発明の範囲内である。なお、硬質合成樹脂製で中実体(無垢)に形成された胴部の場合、骨格は備えていなくてもよい。
【0022】
本実施形態では、上胴外皮19と下胴外皮21内に収容される胴部骨格23を有している。胴部骨格23は、胸骨格25と腹骨格51と腰骨格105とからなる(
図2参照。)。
【0023】
胸骨格25は、前部材27と、後部材43と、前部材27と後部材43とで挟持され、前部材27と後部材43とを直交する軸を中心として回動可能に備えられる左右の腕連結部45と、首関節構造59を構成する第一可動部61の第一連結部63を軸支可能な一対の支持片47と、で構成されている(
図3乃至
図5参照。)。
【0024】
前部材27は、正面視で、下辺29aよりも上辺29bのほうが長い台形状を有している第一面部29と、第一面部29の上辺29bから後方に向けて昇り傾斜状に形成された正面視横長矩形状の第二面部31と、第二面部31の上辺31aから後方に向けて水平方向に突設される細幅矩形状の上面部33と、第一面部29の下辺29aから後方に向けて水平方向に突設され、その後辺35aが上面部33の後辺33aと同一位置にくるような矩形状に形成される底面部35と、上面部33と底面部35とにわたって鉛直方向に架け渡されている背面部37と、第一面部29、第二面部31、上面部33及び底面部35のそれぞれの側辺によって囲まれた領域を覆うように一体成形されてなる左右の側面部39と、で所定厚みを有する中実状に形成されている(
図3乃至
図5参照。)。
【0025】
背面部37には、左右の腕連結部45のそれぞれの第一突部45aを回動可能に嵌合する二つの嵌合孔部37aが上端寄りに形成され、下端寄りには、前部材27と後部材43との間に架け渡されるスペーサ81の一端を嵌合する二つの嵌合孔部37bが形成されている(
図4及び
図5参照。)。
スペーサ81は、本実施形態ではネジ41により固定される円筒状に形成されているが、特に本実施形態に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0026】
また、底面部35には、腹骨格51の第三骨格57の嵌合突部57aが差し込み嵌合される嵌合孔部35bが形成されている。
【0027】
後部材43は、平板状に形成されるとともに、上端寄りには腕連結部45の第二突部45dを回動可能に嵌合する二つの嵌合孔部43aが形成され、下端寄りには前部材27と後部材43との間に架け渡されるスペーサ81の他端を嵌合する二つの嵌合孔部43bが形成されている(
図4及び
図5参照。)。
また、後部材43の前面略中央領域には、前部材27の背面部37に当接する縦長板状のリブ43cが突設されている。
そして、本実施形態では、リブ43cの上端に平板状の底面47dを介して左右方向に所定の間隔をあけて一対の支持片47が突設されている。
【0028】
腕連結部45は、腕部3の連結軸(図示省略)を差し込み嵌合可能な嵌合孔部45bを有する横向き円筒状に本体45aが形成され、本体45aの周面の前後方向同軸位置には、嵌合孔部45bに直交するように第一突部45cと第二突部45dとが突設されている。第一突部45cと第二突部45dとが前部材27の嵌合孔部37aと後部材43の嵌合孔部43aとにそれぞれ回動可能に嵌合することにより、腕連結部45は、第一突部45cと第二突部45dの回動軸を中心として上下方向に回動可能に配設される。
【0029】
一対の支持片47は、それぞれ上端を面取りして円弧状とした平板状に形成するとともに、同軸上にそれぞれ軸孔47aが形成されている。そして、これら軸孔47aと、第一可動部61の第一連結部63の軸孔64とを連通させるとともに、軸49を通して首関節構造59を前後傾動可能に軸着する。
【0030】
腹骨格51は、それぞれが鉛直方向で可動自在に連結される第一骨格53と第二骨格55と第三骨格57とで構成されている(
図2及び
図3参照。)。
【0031】
第一骨格53は、腰骨格105の上端に開口して設けられている嵌合穴(図示省略)に、鉛直方向軸心を中心に左右方向に回動可能に差し込み嵌合される嵌合突部53aと、嵌合突部53aの上端に一体成形され、第二骨格55の下方駒部55dと水平方向軸心を中心に上下方向に回動可能に連結される二股状の連結部53bと、で構成されている。
【0032】
第二骨格55は、上端と下端にそれぞれ二股状に形成された上端支持部55aと下端支持部55bに軸支されて水平方向軸心を中心にそれぞれ上下方向に回動可能に備えられる上方駒部55cと下方駒部55dとを備えている。
【0033】
第三骨格57は、第二骨格55の上方駒部55cと水平方向軸心を中心に上下方向に回動可能に連結される二股状の連結部57bと、この連結部27bの上端から鉛直方向で上方に向けて一体成形され、胸骨格25(前部材27)の底面部35の嵌合孔部35bに差し込み嵌合される嵌合突部57aと、で構成されている。
【0034】
従って、本実施形態では、上述の通りの胴部骨格23を有しているため、第一骨格53の嵌合突部53aと腰骨格105の嵌合孔部(図示省略)との間で鉛直方向の軸心を中心として左右方向に回動することができる。また、第一骨格53の連結部53bと、第二骨格55の下方駒部55dとの間で上下方向と左右方向に回動することができる。また、第三骨格57の連結部57bと、第二骨格55の上方駒部55cとの間で上下方向と左右方向に回動することができる。そして、第三骨格57の嵌合突部57aと胸骨格25(前部材27)の底面部35の嵌合孔部35bとの間で鉛直方向の軸心を中心として左右方向に回動することができる。
【0035】
頭部(他方の構成部材)7は、任意の形状でよく、特に限定解釈されるものではないが、少なくとも、首関節構造59を構成している第二可動部80の一端側が連結可能な構成を有している。例えば、本実施形態では、図示省略するが、頭部7内に中空部を形成するとともに、第二可動部80のヘッドジョイント(頭部連結部)88を嵌合して連結可能な嵌合孔部を、中空部と連通させて頭部下端側に設けている。嵌合孔部は、頭部連結部を嵌合するものであるため、頭部連結部の最大径部よりも小径に形成され、頭部連結部が嵌合孔部を拡開し、頭部連結部の最大径部が嵌合孔部を通過して中空部内に入り込んだ後に、最大径部が嵌合孔部に引っ掛かり連結される。
【0036】
首関節構造59は、胴部骨格(一方の構成部材)23、具体的には胸骨格25に対して一端側が連結される第一可動部61と、頭部(他方の構成部材)7に対して一端側が連結されるとともに、他端側が第一可動部61と連結される第二可動部80と、で構成されている(
図2乃至
図5参照。)。
【0037】
第一可動部61は、円筒部62と、円筒部62の一端側に備えられる第一連結部63と、円筒部62の他端側に備えられる被ジョイント部65と、を備えて構成されている(
図3乃至
図5参照。)
【0038】
第一連結部63は、円筒部62の一端側(下端側)から突出して平板状に形成されると共に、軸孔64が形成されてなり、軸孔64を、胸骨格25の一対の支持片47の軸孔47aと連通させると共に、軸49を挿通させ、水平方向の軸心を中心として前後方向に傾動可能に連結される。
第一連結部63の軸孔64は先端側に形成されており、また、第一連結部63の先端面は面取りされて円弧状に形成されている。
【0039】
被ジョイント部65は、円筒部62の他端側(上端側)にて、第二可動部80の他端側に形成されている球状ジョイント部91を回動可能に連結(収容)する上端を開放した球状の凹面領域66を内面に有している。
被ジョイント部65の上端の開放領域は、少なくとも球状ジョイント部91の最大径部よりも小径に形成された開放周面部67を備えている。
【0040】
開放周面部67は、凹面領域66から連続して外方に向けて拡開するように形成され、相対向する左右位置に最大高さ部位68a,68bを有し、相対向する最大高さ部位68a,68bを結ぶ第一仮想対向線L1と直交する第二仮想対向線L2上には、前部領域69aと後部領域69bとが、最大高さ部位68a,68bよりもそれぞれ深く切り込まれた前後の傾動許容部位70a,70bを有している(
図3乃至
図9参照。)。
また、開放周面部67は、左右の最大高さ部位68a,68bから前後の傾動許容部位70a,70bまで、なだらかな曲面をもって形成されている。
【0041】
前側の傾動許容部位70aと後側の傾動許容部位70bとは、本実施形態では、同一の深さをもって形成されている。なお、例えば、前側の傾動許容部位70aに比して後側の傾動許容部位70bを浅く形成することも可能で本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0042】
本実施形態の第一可動部61は、ほぼ対称形状に形成された第一構成体71と第二構成体75で、分離連結可能な二分割構成としている(
図5乃至
図9参照。)。
【0043】
第一構成体71、第二構成体75ともに、半円筒部72,76と、半円筒部72,76の下端から一体に突出する先端を円弧状とした平板部73,77と、半円筒部72,76の上端に一体に成形される半球状の内面を有する半球部74,78と、を備えて構成されている。
そして、半円筒部72,76の外面から内面にわたってネジ孔93が形成されており、第一構成体71と第二構成体75とを突き合わせてネジ孔93にネジ94を螺合させることにより第一可動部61が一体化される。これにより、第一構成体71と第二構成体75のそれぞれの半円筒部72,76により円筒部62が形成され、それぞれの平板部73,77により第一連結部63が形成され、それぞれの半球部74,78により球状の凹面領域66を有する被ジョイント部65が形成される。
【0044】
第二可動部80は、一端側に備えられ、頭部7に連結する第二連結部82と、他端側に備えられ、第一可動部61の被ジョイント部65の凹面領域66に回動可動に連結する球状ジョイント部91と、を備え、第二連結部82と球状ジョイント部91との間には、円柱状の棒状部90が備えられている。
【0045】
第二連結部82は、球面部84と平面部85とからなる第一受け部83と、第一受け部83の平面部85上にて、第一受け部83よりも小径の短尺円柱状に一体に突出形成される第二受け部86と、第二受け部86の上面にて、第二受け部86よりも小径の円柱状に一体に突出形成されるヘッドジョイント固定部87と、ヘッドジョイント固定部87の上方の一部を嵌合するとともに、ネジ89により固定されるヘッドジョイント(頭部連結部)88とで構成されている。
棒状部90は、第二連結部82を構成する第一受け部83の球面部84の中心から下方に向けて一体に短尺円柱状に突出形成される。
【0046】
球状ジョイント部91は、棒状部90の下端から、棒状部90よりも大径の球状をもって一体形成されている。また、球状ジョイント部91は、第一連結部63を構成する被ジョイント部65の球状の凹面領域66に収容され、球状の凹面領域66内でガタつくことなくスムーズに摺動可能な径を持って形成され、かつ被ジョイント部65の開放周面部67の径よりも大径に形成され、被ジョイント部65から抜け落ちないように構成されている。
【0047】
本実施形態では、被ジョイント部65に球状ジョイント部91が収容された際に、球状ジョイント部91と棒状部90との境界領域92と、被ジョイント部65の開放周面部67の最大高さ部位68a,68bとが略同一平面位置となるように設計されている(
図3参照。)。
なお、球状ジョイント部91と棒状部90との境界領域92と、被ジョイント部65の開放周面部67の最大高さ部位68a,68bとは、略同一平面位置になくてもよく本発明の範囲内で設計変更可能である。
また、本実施形態では、第一可動部61を、ネジ止めして一体化可能な第一構成体71と第二構成体75とからなる二分割構成としているため、被ジョイント部65を構成する第一構成体71の半球部74と第二構成体75の半球部78との間に球状ジョイント部91を挟んだ状態で、ネジ孔93にネジ94を螺合することにより、第一可動部61と第二可動部80とが一体化される。
【0048】
本実施形態の首関節構造59にあっては、第一可動部61の球状ジョイント部91の外周面と、第二可動部80の被ジョイント部65の凹面領域66と、において、第二可動部80の第二連結部82と球状ジョイント部91とを同一線上に結ぶ仮想中心線L3を軸として左右方向への回転を阻止する阻止構造100を備えている(
図5乃至
図7、
図9乃至
図10参照。)。
【0049】
阻止構造100は、第一可動部61に設けた凹部101,102と、第二可動部80に設けた凸部103,104とによって構成されている。
【0050】
第一可動部61は、被ジョイント部65の球状の凹面領域66に、第二可動部80の球状ジョイント部91の外面に設けた凸部103,104を収容可能な凹部101,102が設けられている。
【0051】
凹部101,102は、第一構成体71の半球部74の内面と、第二構成体75の半球部78の内面と、の相対向する位置に、それぞれ所定大きさの円柱状に凹設されている。
本実施形態では、第一構成体71の半球部74に設けられる凹部101より、第二構成体75の半球部78に設けられる凹部102の方が大径の球面状に凹設されている(
図9乃至
図10参照。)。
【0052】
第二可動部80は、球状ジョイント部91の外面の相対向する位置、本実施形態では、球状ジョイント部91の最大径位置で相対向して同軸上に、短尺円柱状の凸部103,104がそれぞれ突設されている。
【0053】
凸部103,104は、第一可動部61の一方の凹部101に収容される凸部103と、他方の凹部102に収容される凸部104とで構成され、凸部103よりも、凸部104の方が大径の短尺円柱状に突設されている(
図9乃至
図10参照。)。
また、凸部103は、凹部101の内底面及び内側面との間に、それぞれ所定の隙間A1を形成するようにして収容されている(
図10参照。)。凸部104も、凹部102の内底面及び内側面との間に、それぞれ所定の隙間A2を形成するようにして収容されている(
図10参照。)。
また、本実施形態では、凸部103は、その先端縁が面取りされているが、凸部104は面取りされていない(
図9乃至
図10参照。)。
【0054】
従って、本実施形態によれば、凸部103,104は凹部101,102内において隙間A1,A2をもって収容される構成を採用しているため、次のような作用効果を発揮し得る。
例えば、第一可動部61の凹部101,102内に、第二可動部80の凸部103,104が隙間なく収容されている構造であると、頭部7を前後方向に傾動することしか動作できないが、本実施形態によれば、凸部103,104の外面と凹部101,102の内面との間に形成される隙間A1,A2の領域内で凸部103,104が自由に可動できる。
従って、頭部7を前後方向に傾動させる動きの他に、左右方向に回動させる動きも可能であるため、第一実施形態の首関節構造59の動きと変わらない自由でかつ様々な動き(表現)が提供し得る。
【0055】
本実施形態によれば、凹部101,102と凸部103,104との組合せによって、第二可動部80の第二連結部82と球状ジョイント部91とを同一線上に結ぶ仮想中心線L3を軸として、第二可動部80の左右方向(
図6、
図10にて矢印Rで示す方向)への回転を阻止することができる。
このように、第二可動部80の左右方向への回転を阻止することができるため、第二可動部80を構成している第二連結部82の第二受け部86のヘッドジョイント固定部87に、ヘッドジョイント(頭部連結部)88をネジ89を介して固定したり、あるいはネジ89を外したりする際に、第二可動部80が不用意に回ってしまったりすることもなく、ヘッドジョイント(頭部連結部)88の着脱作業にストレスを感じることがない。
【0056】
本実施形態によれば、このように首関節構造59を構成したため、本実施形態の首関節構造59を備えた人形は、例えば次のように頭部を可動させることができる。
【0057】
まず、
図11は第一可動部61と第二可動部80のいずれも動作させていない状態を示している。すなわち、第一可動部61と第二可動部80は鉛直方向で同軸に並んでおり、そして頭部7は顔正面を前方に向けている状態である。
そして、
図11の状態から、例えば、第二可動部80を、前方に回動(傾動)させると、頭部7が前方に少し傾いて、うつむいた状態(斜め下方を見下ろしている状態)を表現することができる(
図12(a)。)。このとき、第二可動部80の棒状部90は、前側の傾動許容部位70aに摺接している(
図12(a)。)。
第二可動部80を、後方に回動(傾動)させると、頭部7が少し後方に傾いて、斜め上方を見上げている状態を表現することができる(
図12(b)。)。このとき、第二可動部80の棒状部90は、後側の傾動許容部位70bに摺接している(
図12(b)。)。
【0058】
次に、
図12の状態、すなわち、第二可動部80の棒状部90を前側の傾動許容部位70aに摺接させた状態から、例えば、第一可動部61の第一連結部63を、軸49を中心として前方に回動(傾動)させると、頭部7がさらに前方にうつむいた状態を表現することができる(
図13(a)。)。あるいは、軸49を軸心として後方に回動(傾動)させると、頭部7がさらに後方に傾いて上を見上げている状態を表現することができる(
図13(b)。)。また、
図13(a)の状態から、第二可動部80を上方に向けて回動させ、第一可動部61の円筒部62と同軸上にすれば(第二可動部80のみ
図11の状態に戻す)、うつむき状態を少し起こすことも可能で様々な表現が可能である(
図13(c)。)。
【0059】
さらに、
図11の状態から第二可動部80を、第一可動部61の開放周面部67の左右の最大高さ部位68a,68bの方向へと回動(傾動)させると、頭部7を左右方向に傾動させることができる(
図14(a)(b)参照。)。
【0060】
単一のボールジョイント構造を採用した首関節構造であっても、このような表現が可能なのは、前部領域69aと後部領域68bとを、開放周面部67の最大高さ部位68a,68bからなだらかな曲面をもって深く切り込まれた傾動許容部位70a,70bとして構成したためである。すなわち本実施形態によれば、第一可動部61による前後方向への回動(傾動)と、第二可動部80による前後方向への回動(傾動)、左右方向への回動(傾動)、及び円を描くような回動(傾動)と、を任意に組み合わせて動作させることにより、様々な頭の傾き動作を得ることができるため、頭の傾き加減の微調整を図れ、需要者の興趣の向上が図れる。
【0061】
そして、本実施形態によれば、球状ジョイント部91と第二連結部82との間の棒状部90が短尺状に一体的に形成されているため、頭部連結領域における外観的な見栄えを損なう虞もない。
【0062】
仮に、第二可動部80を回動自在に連結する第一可動部61の被ジョイント部65の開放周面部67が、周方向にわたって同一高さ、すなわち同一平面上に位置するように構成されていた場合、頭の傾き加減を大きく表現しようとすると、棒状部90を長尺状に形成しなければ、頭の傾きを大きく表現することができない。また、左右方向への傾動と前後方向への傾動が同じ加減でしか表現することができない。
本実施形態によれば、第二可動部80を回動自在に連結する第一可動部61の被ジョイント部65の開放周面部67が、相対向する左右の最大高さ部位68a,68bと、最大高さ部位68a,68bからなだらかな曲面をもって、最大高さ部位68a,68bよりもそれぞれ深く切り込まれた前後の傾動許容部位70a,70bを有している構成としているため、棒状部90を長くしなくとも(短尺状であっても)、前後方向への傾動を大きく表現することができるとともに、棒状部90が外方から直視される虞も少なく外観的な美観を向上させることができる。
さらに、本実施形態によれば、最大高さ部位68a,68bからなだらかな曲面をもって、最大高さ部位68a,68bよりもそれぞれ深く切り込まれた前後の傾動許容部位70a,70bを有している構成としているため、斜め下向き状態や斜め上向き状態の微妙な角度を、前記なだらかな曲面に沿って表現することが可能となった。
【0063】
また、本実施形態において、胴部骨格23には、首関節構造59の第一可動部61の所定角度以上の前後傾動を抑止する抑止部79を備えている。所定角度以上の傾動作動によって、軸に負荷が掛かり過ぎ、軸の破損を招かないようにしている。
【0064】
抑止部79は、前方への所定角度以上の傾動を抑止する第一抑止部79aと、後方への所定角度以上の傾動を抑止する第二抑止部79bと、をそれぞれ備えている。
【0065】
第一抑止部79aは、胸骨格25の前部材27を構成する上面部33に備えられている。第一抑止部79aは、上面部33の略中央位置にて、第二面部31側から背面部37側にわたって断面視で半円形状の凸条に突設されている。
頭部7を前方に傾動させる際に、所定角度以上に傾動させると、この第一抑止部79aに第一可動部61の第一連結部63が当接するように構成した(
図13(c)参照。)ため、必要以上の前方への頭部7の傾動を抑えることができる(
図13(a)の状態を越えた傾動を抑制する。)。
【0066】
第二抑止部79bは、胸骨格25の後部材43の上端43dを、一対の支持片47間に存する底面47dの位置よりも鉛直方向で高く設定することにより、第一部材61の軸着片63が所定角度以上後方に傾動した際に、第一連結部63がこの上端43d領域に当接してそれ以上の傾動を抑えることができるため、この上端43d領域が第二抑止部79bとして機能する。
なお、少なくとも底面47dに対向する上端43d領域のみを高く設定しているものであればよい。
頭部7を後方に傾動させる際に、この第二抑止部79bに第一可動部61の第一連結部63が当接するように構成したため、必要以上の前方への頭部7の傾動を抑えることができる(
図13(b)の状態を越えた傾動を抑制する。)。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、腰部の股間位置と大腿部の付根部との間に備えられる股関節構造や、足首の関節構造など、人形の構成部材同士を可動するように連結する関節構造であれば全てに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 胴部
7 頭部
59 首関節構造
61 第一可動部
63 第一連結部
65 被ジョイント部
67 開放周面部
68a,68b 最大高さ部位
70a 前側の傾動許容部位
70b 後側の傾動許容部位
80 第二可動部
90 棒状部
91 球状ジョイント部
100 阻止構造
101,102 凹部
103,104 凸部
A1,A2 隙間