(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】小動物実験用迷路組立キット
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20220907BHJP
A01K 15/02 20060101ALI20220907BHJP
A01K 67/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A01K29/00 C
A01K15/02 E
A01K67/00 Z
(21)【出願番号】P 2017252076
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-11-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 晋
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-032959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0303508(US,A1)
【文献】特開2003-289750(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0248696(US,A1)
【文献】実開昭54-032278(JP,U)
【文献】特開2011-036204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/00
A01K 11/00 -29/00
A01K 33/00 -37/00
A01K 41/00 -59/06
A01K 67/00
A01K 67/033-67/04
G01N 33/48 -33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小動物が通行可能な複数の形状の異なる通路(100)と、複数の差込み穴(210)を有するボード床(200)と、各々の通路(100)を支える支持部(310)、及び、前記差込み穴(210)に差込み可能な突起部(321)を備える底部(320)を有する複数の台座(300)と、を備え、自在に前記通路(100)を再配置することができる小動物実験用迷路組立キット(900)
であって、
前記複数の形状の異なる通路は、下記ストレート通路(101)、エンドレフトターン通路(102)、及び、エンドライトターン通路(103)を含むことを特徴とする小動物実験用迷路組立キット。
・板体(110)と、前記板体(110)の幅方向両端部側に板体(110)の長さ方向全体にわたり設けられた全側壁(120)と、を有するストレート通路(101)
・板体(110)と、前記板体(110)の幅方向一端部側に板体の長さ方向全体にわたり設けられた全側壁(120)と、前記板体(110)の長さ方向一端部に、前記板体(110)の幅の長さ方向全体にわたり設けられた端壁(130)と、前記板体(110)の幅方向他端部側に、前記板体(110)の長さ方向他端部から板体(110)の長さ方向の所定長距離にわたり設けられた長側壁(140)と、を有するエンドレフトターン通路(102)
・板体(110)と、前記板体(110)の長さ方向一端部に、前記板体(110)の幅の長さ方向全体にわたり設けられた端壁(130)と、前記板体(110)の幅方向一端部側に、前記板体(110)の長さ方向他端部から板体(110)の長さ方向の所定長距離にわたり設けられた長側壁(140)と、前記板体(110)の幅方向他端部側に板体(110)の長さ方向全体にわたり設けられた全側壁(120)と、を有するエンドライトターン通路(103)
【請求項2】
前記エンドレフトターン通路(102)及び前記エンドライトターン通路(103)において、板体(110)の長さをLx、板体(110)の幅をLy、長側壁(140)の長さをLzとすると、(Lx-Ly)>Lzであることを特徴とする請求項
1に記載の小動物実験用迷路組立キット。
【請求項3】
前記複数の形状の異なる通路は、更に、下記通路を含むことを特徴とする請求項
1に記載の小動物実験用迷路組立キット。
・板体(110)と、前記板体(110)の長さ方向一端部に、前記板体(110)の幅の長さ方向全体にわたり設けられた端壁(130)と、前記板体(110)の幅方向一端部側に、前記板体(110)の長さ方向他端部から板体(110)の長さ方向の所定長距離にわたり設けられた第1の長側壁(141)と、前記板体(110)の幅方向他端部側に、前記板体(110)の長さ方向他端部から板体(110)の長さ方向の所定長距離にわたり設けられた第2の長側壁(142)と、を有するエンドティ通路(104)
【請求項4】
前記エンドティ通路(104)において、板体(110)の長さをLx、板体(110)の幅をLy、第1の長側壁(141)及び第2の長側壁(142)の長さをLz’とすると、(Lx-Ly)>Lz’であることを特徴とする請求項
3に記載の小動物実験用迷路組立キット。
【請求項5】
前記複数の形状の異なる通路は、更に、下記通路を含むことを特徴とする請求項
2に記載の小動物実験用迷路組立キット。
・板体(110)と、前記板体(110)の幅方向一端部側に、前記板体(110)の長さ方向一端部から板体(110)の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第1の短側壁(151)と、前記板体(110)の幅方向一端部側に、前記板体(110)の長さ方向他端部から板体(110)の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第2の短側壁(152)と、前記板体(110)の幅方向他端部側に、前記板体(110)の長さ方向一端部から板体(110)の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第3の短側壁(153)と、前記板体(110)の幅方向他端部側に、前記板体(110)の長さ方向他端部から板体(110)の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第4の短側壁(154)と、を有するセンター十字通路(105)
【請求項6】
前記センター十字通路(105)において、板体(110)の長さをLx、板体(110)の幅をLy、第1の短側壁(151)、第2の短側壁(152)、第3の短側壁(153)及び第4の短側壁(154)の長さをLwとすると、0.5(Lx-Ly)>Lwであることを特徴とする請求項
5に記載の小動物実験用迷路組立キット。
【請求項7】
前記複数の形状の異なる通路は、更に、下記通路を含むことを特徴とする請求項
3に記載の小動物実験用迷路組立キット。
・板体(110)と、前記板体(110)の幅方向一端部側に、前記板体(110)の長さ方向一端部から板体(110)の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第1の短側壁(151)と、前記板体(110)の幅方向一端部側に、前記板体(110)の長さ方向他端部から板体(110)の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第2の短側壁(152)と、前記板体(110)の幅方向他端部側に板体(110)の長さ方向全体にわたり設けられた全側壁(120)と、を有するセンターティ通路(106)
【請求項8】
前記センターティ通路(106)において、板体(110)の長さをLx、板体(110)の幅をLy、第1の短側壁(151)及び第2の短側壁(152)の長さをLwとすると、0.5(Lx-Ly)>Lwであることを特徴とする請求項
7に記載の小動物実験用迷路組立キット。
【請求項9】
一方の通路の板体の長さ方向一端部と、他方の通路の板体の長さ方向他端部との間に設置され、垂直方向に上下移動することで一方の通路と他方の通路との間を開放又は閉鎖するドアユニットを有することを特徴とする請求項1乃至
8の何れか1項に記載の小動物実験用迷路組立キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物実験用迷路組立キットに関する。
【背景技術】
【0002】
動物の認知機能を評価するために、様々な迷路が考案されている。例えば高架式十字迷路は、床面より高い位置に壁に囲まれた走路と壁のない走路とで構成されており、抗不安薬の評価に使用される。実験動物をニュートラルゾーンに置くと、殆どの場合壁のある走路に進入しますが、抗不安薬を投与することにより壁のない走路に滞在する時間が延長されるようになる(非特許文献1,2)。
【0003】
また例えばY字迷路試験では、手前側のアームをA、左奥をB、右奥をCとするY字状の走路を用いて、Aにマウスを置き自由に数分間移動させ、マウスのアームへの進入回数を記録することにより、マウスの自発行動量と空間作業記憶(ワーキングメモリー)について評価する(非特許文献3)。
【0004】
また例えば8方向放射状迷路試験では、中央部から8方向放射状に設けられた走路を用いて、8つの走路のうち4つの走路の先に餌を置き、その後迷路の中央に空腹状態のマウスを置き、餌のない走路への侵入回数及び全ての餌を食べ終わる時間を空間認知機能の指標として、空間作業記憶(短期記憶)と空間参照記憶(長期記憶)の評価を行う(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Yamada, K., Santo-Yamada, Y., Wada, E., & Wada, K. (2002). Role of bombesin (BN)-like peptides/receptors in emotional behavior by comparison of three strains of BN-like peptide receptor knockout mice. Mol Psychiatry, 7(1), 113-117.
【文献】Murata, N., Murakami, K., Ozawa, Y., Kinoshita, N., Irie, K., Shirasawa, T., & Shimizu, T. (2010). Silymarin attenuated the amyloid β plaque burden and improved behavioral abnormalities in an Alzheimer’s disease mouse model. Biosci Biotechnol Biochem, 74(11), 2299-2306.
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 14731-14736 (2000)
【文献】Yamaguchi Y,. Higashi M,. & Kobayashi, H. (1996). Effects of oral and intraventricular administration of ginsenoside Rg1on the performance impaired by scopolamine in rats. Biomedcal Research, (6), 487-490.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の小動物実験用迷路は、通路配置構成を変更することができない。これでは実験条件を変更して小動物の認知機能等を詳細に検討することが困難となる。迷路は小動物の認知機能を評価するために使用されるが、評価対象となる認知機能にあわせて特殊形状の迷路をそれぞれ用意する必要がある。特に病態モデル動物の表現型を同定するためには、複数の迷路課題を実施するテストバッテリーを実施する必要があるが、そのためには高価な迷路を多数購入するコストの問題と同時に、大きな迷路を複数設置するスペース利用の問題がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、通路配置構成を自在に変更可能な小動物実験用迷路組立キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる小動物実験用迷路組立キットは、小動物が通行可能な複数の形状の異なる通路と、複数の差込み穴を有するボード床と、各々の通路を支える支持部、及び、前記差込み穴に差込み可能な突起部を備える底部を有する複数の台座と、を備え、自在に前記通路を再配置することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通路配置構成を自在に変更できるため、実験スペースを有効利用しつつ小動物の認知機能等を安価且つ詳細に検討することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態にかかる小動物実験用迷路組立キットの概略を説明する図である。
【
図2】
図2(a)は本実施形態にかかるストレート通路の概略を説明する図であり、
図2(b)は本実施形態にかかるエンドレフトターン通路の概略を説明する図であり、
図2(c)は本実施形態にかかるエンドライトターン通路の概略を説明する図であり、
図2(d)は本実施形態にかかるエンドティ通路の概略を説明する図であり、
図2(e)は本実施形態にかかるセンター十字通路の概略を説明する図であり、
図2(f)は本実施形態にかかるセンターティ通路の概略を説明する図である。
【
図3】
図3(a)は平面視八角形の連結テーブルを説明する図であり、
図3(b)は平面視五角形の連結テーブルを説明する図である。
【
図4】格子状迷路の一具体例を示すものであり、そのうち(a)は平面図であり、(b)は斜視図である。
【
図5】
図5(a)(b)(c)(d)は、八の字迷路に2つの光源を設置し、左右いずれかの光点が点灯する使用態様を説明する図である。
【
図6】
図6は他の格子状迷路の一具体例の平面図である。
【
図7】
図7(a)は平面視正八角形のテーブル部に6個のストレート通路が接続されている迷路の説明図であり、
図7(b)は平面視正八角形のテーブル部に5個のストレート通路が接続されている迷路の説明図であり、
図7(c)は平面視五角形のテーブル部に3個のストレート通路が接続されている迷路の説明図である。
【
図8】平面視正八角形のテーブル部を有する連結テーブルを使用して、迷路を作成する場合を説明する図である。
【
図9】
図9は試作した四角形の迷路を写真図である。
【
図10】
図10は試作した連結テーブルを使用した迷路の写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当前記実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0012】
図1は本実施形態にかかる小動物実験用迷路組立キット900の概略を説明する図である。
図1に示されるように、小動物実験用迷路組立キット900は、小動物が通行可能な複数の形状の異なる通路100と、ボード床200と、台座300とを備える。実験用の小動物は、特に限定されるものではないが、例えばマウス、ラット、ウサギ等が挙げられる。なお
図1には通路100が8個記載されているが、これは小動物実験用迷路組立キット900には形状の異なる通路100が複数含まれることを例示しているにすぎず、また
図1には台座300が8個記載されているが、これは小動物実験用迷路組立キット900には台座300が複数含まれることを例示しているにすぎない。
【0013】
ボード床200には複数の差込み穴210がもうけられている。差込み穴210は、例えば、正方形を仮定し得るように正方格子状に配置されており、差込み穴210の間隔は例えば隣接する正方形の一辺が23mm~27mmであり、好ましくは25mmである。差込み穴210の形状は、特に限定されるものではないが例えば平面視円形であり、その直径は例えば5mm~7mmであり、好ましくは6mmである。ボード床200の材質は滑りにくいゴム製であり、例えば硬質のNBRゴムである。
【0014】
台座300は、各々の通路100を支える支持部310、及び、差込み穴210に差込み可能な突起部321を備える板状の底部320を有する。支持部310は、通路100に当接する平板部311とこの平板部311の下方に設けられ板状の底部320まで延伸する支持棒312とを有する。平板部311は通路100の下面にあてがわれる。支持棒312の高さは例えば450mm~650mmであり好ましくは550mmである。450mmよりも低ければ小動物が迷路からの脱出を試みる可能性があり、一方650mmよりも高ければ小動物が高さを恐れて行動を萎縮する可能性があるからである。底部320に設けられた複数の突起部321は例えば4つであり、正方形又は長方形の各頂点を形成するように配置される。突起部321の形状は差込み穴210に差込みできるように、差込み穴210に対応する形状である。
【0015】
図2に示されるように、複数の形状の異なる通路100には、例えば、ストレート通路101、エンドレフトターン通路102、エンドライトターン通路103、エンドティ通路104、センター十字通路105、及び、センターティ通路106が含まれる。なお複数の形状の異なる通路100には、
図2に示されたこれらに限定されるものではなく、その他種々の形状の通路が包含される。
【0016】
図2(a)は本実施形態にかかるストレート通路101の概略を説明する図である。
図2(a)に示されるように、ストレート通路101は、板体110と、この板体110の幅方向両端部側に板体110の長さ方向全体にわたり設けられた全側壁120と、を有する。板体110の長さは、例えば480mm~500mmであり好ましくは490mmである。板体110の幅は、例えば90mm~110mmであり好ましくは100mmである。全側壁120の高さは、例えば25mm~35mmであり好ましくは30mmである。
【0017】
図2(b)は本実施形態にかかるエンドレフトターン通路102の概略を説明する図である。
図2(b)に示されるように、エンドレフトターン通路102は、板体110と、この板体110の幅方向一端部側に板体110の長さ方向全体にわたり設けられた全側壁120と、板体110の長さ方向一端部に、板体110の幅の長さ方向全体にわたり設けられた端壁130と、板体110の幅方向他端部側に、板体110の長さ方向他端部から板体110の長さ方向の所定長距離にわたり設けられた長側壁140と、を有する。端壁130の長さは、板体110の幅の長さ方向全体にわたり設けられているため、例えば90mm~110mmであり好ましくは100mmである。
【0018】
ここで板体110の長さをLx、板体110の幅をLy、長側壁140の長さをLzとすると、(Lx-Ly)>Lzである。そのため、例えばエンドレフトターン通路102のコーナーターン部分にストレート通路101を接続した場合、エンドレフトターン通路102の長側壁140の端部と、ストレート通路101の全側壁120の端部と間に、(Lx-Ly)-Lzの長さの隙間があることになる。これは(Lx-Ly)=Lzとすると、例えばエンドレフトターン通路102のコーナーターン部分にストレート通路101を接続した場合、小動物がそのコーナーをターンする際にコーナーの壁面の上部分に乗っかることでショートカットする虞があるからである。長側壁140の長さは、例えば305mm~325mmであり好ましくは315mmである。
【0019】
図2(c)は本実施形態にかかるエンドライトターン通路103の概略を説明する図である。
図2(c)に示されるように、エンドライトターン通路103は、板体110と、この板体110の長さ方向一端部に、板体110の幅の長さ方向全体にわたり設けられた端壁130と、板体110の幅方向一端部側に、板体110の長さ方向他端部から板体110の長さ方向の所定長距離にわたり設けられた長側壁140と、板体110の幅方向他端部側に板体110の長さ方向全体にわたり設けられた全側壁120と、を有する。なおエンドライトターン通路103はエンドレフトターン通路102の対称形であるため、その寸法も対称に考慮される。
【0020】
図2(d)は本実施形態にかかるエンドティ通路104の概略を説明する図である。
図2(d)に示されるように、エンドティ通路104は、板体110と、この板体110の長さ方向一端部に、板体110の幅の長さ方向全体にわたり設けられた端壁130と、板体110の幅方向一端部側に、板体110の長さ方向他端部から板体110の長さ方向の所定長距離にわたり設けられた第1の長側壁141と、板体110の幅方向他端部側に、板体110の長さ方向他端部から板体110の長さ方向の所定長距離にわたり設けられた第2の長側壁142と、を有する。
【0021】
ここで第1の長側壁141及び第2の長側壁142の長さも長側壁140と同じように設定され、板体110の長さをLx、板体110の幅をLy、第1の長側壁141及び第2の長側壁142の長さをLz’とすると、(Lx-Ly)>Lz’である。そのため第1の長側壁141及び第2の長側壁142の長さは、例えば305mm~325mmであり好ましくは315mmである。
【0022】
図2(e)は本実施形態にかかるセンター十字通路105の概略を説明する図である。
図2(e)に示されるように、センター十字通路105は、板体110と、この板体110の幅方向一端部側に、板体110の長さ方向一端部から板体110の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第1の短側壁151と、板体110の幅方向一端部側に、板体110の長さ方向他端部から板体110の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第2の短側壁152と、板体110の幅方向他端部側に、板体110の長さ方向一端部から板体110の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第3の短側壁153と、板体110の幅方向他端部側に、板体110の長さ方向他端部から板体110の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第4の短側壁154と、を有する。
【0023】
ここで板体110の長さをLx、板体110の幅をLy、第1の短側壁151、第2の短側壁152、第3の短側壁153及び第4の短側壁154の長さをLwとすると、0.5(Lx-Ly)>Lwである。そのため、例えばセンター十字通路105の両中央部にそれぞれストレート通路101を接続した場合、センター十字通路105の短側壁の端部と、ストレート通路101の全側壁120の端部と間に、0.5(Lx-Ly)-Lwの長さの隙間があることになる。これは0.5(Lx-Ly)=Lwとすると、例えばセンター十字通路105の両中央部にそれぞれストレート通路101を接続した場合、小動物がそのコーナーをターンする際にコーナーの壁面の上部分に乗っかることでショートカットする虞があるからである。第1の短側壁151、第2の短側壁152、第3の短側壁153及び第4の短側壁154の長さは、例えば125mm~145mmであり好ましくは135mmである。
【0024】
図2(f)は本実施形態にかかるセンターティ通路106の概略を説明する図である。
図2(f)に示されるように、板体110と、この板体110の幅方向一端部側に、板体110の長さ方向一端部から板体110の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第1の短側壁151と、板体110の幅方向一端部側に、板体110の長さ方向他端部から板体110の長さ方向の所定短距離にわたり設けられた第2の短側壁152と、板体110の幅方向他端部側に板体110の長さ方向全体にわたり設けられた全側壁120と、を有する。上記と同様に、板体110の長さをLx、板体110の幅をLy、第1の短側壁151及び第2の短側壁152の長さをLwとすると、0.5(Lx-Ly)>Lwであり、第1の短側壁151及び第2の短側壁152の長さは、例えば125mm~145mmであり好ましくは135mmである。
【0025】
通路100に当接する平板部311と板状の底部320まで延伸する支持棒312とは回転連結部により接続されることが可能である。これにより、平板部311は支持棒312に対して回転可能となる。
【0026】
本実施形態にかかる小動物実験用迷路組立キット900は、平面視八角形の連結テーブル400を有することが可能である(
図3(a))。連結テーブル400は、通路100の板体110と同じ高さに位置して板体110の長さ方向の一端部を接続可能な平面視八角形のテーブル部410と、正方格子状に配置されている差込み穴210に差込み可能な突起部421を備える板状の底部420と、平面視八角形のテーブル部410の下方に設けられ板状の底部420まで延伸する支持棒412とを有する。支持棒412は平面視八角形のテーブル部410の中央部を支える。
【0027】
テーブル部410は平面視正八角形であることが好ましく、平面視正八角形のテーブル部410の一辺の長さは板体110の幅に等しい。テーブル部410が平面視正八角形である場合、テーブル部410は、平面視が頂角45度の二等辺三角形の8個のテーブル片411から構成される。そしてテーブル部は、例えば3個のテーブル片411を二等辺三角形の等辺どうしが隣り合うように組み合わせた平面視五角形のテーブル部とすることも可能である(
図3(b))。なお
図3(a)及び(b)では、テーブル部には実線にて記載された複数のテーブル片411が記載されているが、この実線は理解促進のための仮想的に記載された線である。
【0028】
本実施形態にかかる小動物実験用迷路組立キット900は、上述した通路100、ボード床200及び台座300以外にも、例えば、ドアユニット、給餌器、トレッドミル、又は、光源(ライト)等を有することが可能である。
【0029】
ドアユニットは、例えばアクリル樹脂等の透明な板体から形成され、一方の通路の板体の長さ方向一端部と、他方の通路の板体の長さ方向他端部との間に設置される。そしてドアユニットは、垂直方向に上下移動することで一方の通路と他方の通路との間を開放又は閉鎖する。ドアユニットの上下移動動作は手動によるものも、コンピュータプログラムにより自動的に制御されるものも可能である。
【0030】
給餌器は、容器に貯蔵された小動物用の餌を通路に供給するものである。容器には複数のペレット状の餌が充填されており、手動又はコンピュータプログラムによる自動制御により通路に1個ずつ供給される。なお容器中に充填されたペレット状の餌が湿気によりスクラム状態となることを防止するために、容器中にシリカゲル等の乾燥剤を入れることが可能である。
【0031】
トレッドミルは、無限軌道回転走行面を有して小動物の強制運動を可能とするものであり、前後に間隔をあけて平行に配置した駆動ローラと従動ローラとにエンドレスベルトを巻掛け、電動モータにより駆動ローラを駆動回転する。なおトレッドミルの前後にドアユニットを設けて小動物をトレッドミルに閉じ込めて運動させることも可能である。
【0032】
光源(ライト)は、手動又はコンピュータプログラムによる自動制御により自在にオンオフ可能である。
【0033】
更に、本実施形態にかかる小動物実験用迷路組立キット900は、例えば、赤外線照射により小動物の位置を把握できるフォトビームセンサー、通路に行き止まりを設置できる塩化ビニール製の固定ドアユニット、小動物に圧搾空気を吹き付けることができる電磁弁式の圧搾空気排出ユニット、I/Oボックス等を包含することができる。I/Oボックスは、迷路中に配置された各デバイス(例えば上述したトレッドミルの駆動、ドアユニットの上下移動、給餌器の餌の供給等である。)とコンピュータ及びソフトウエアとを接続して各デバイスを制御しつつ、フォトビームセンサーからの信号を受けてソフトウエアに連絡する。
【0034】
次に本実施形態にかかる小動物実験用迷路組立キット900の使用態様について説明する。
【0035】
本実施形態にかかる小動物実験用迷路組立キット900は、複数の形状の異なる通路(100)、例えば、複数のストレート通路(101)、複数のエンドレフトターン通路(102)、複数のエンドライトターン通路(103)、複数のエンドティ通路(104)、複数のセンター十字通路(105)及び複数のセンターティ通路(106)と、一つのボード床(200)と、複数の台座(300)と、を備えるものであり、例えば、ストレート通路(101)、エンドレフトターン通路(102)、エンドライトターン通路(103)、エンドティ通路(104)、センター十字通路(105)及びセンターティ通路(106)を自在に組み合わせて多数パターンの迷路を構成できる。その際には全ての種類の通路を使用する必要はなく、実験目的に沿った迷路を構成するために必要な通路を適宜選択して使用すれば良い。
【0036】
図4は格子状迷路の一具体例を示すものであり、そのうち(a)は平面図であり、(b)は斜視図である。
図4(a)に示されるように、この迷路は、平面視にてディジタル数字の8に見えることから八の字迷路と呼ばれる迷路である。なお
図3(b)では図面簡略化による理解促進のため通路のみを記載しており、ボード床200及び台座300は省略されている。
図4(a)に示されるように、格子状迷路は4つのストレート通路(101)、2つのエンドレフトターン通路(102)、2つのエンドライトターン通路(103)及び2つのエンドティ通路(104)を使用して構成されており、センター十字通路(105)もセンターティ通路(106)も使用されていない。
【0037】
図5(a)(b)(c)(d)に示されるように、構成した八の字迷路に2つの光源を設置し、左右いずれかの光点が点灯するものとする。
図5(a)は、小動物が図面右下コーナーから左上コーナーの点灯した光源へ到達できた例である。
図5(b)は、小動物が図面左下コーナーから左上コーナーの点灯した光源へ到達できた例である。
図5(c)は、小動物が図面左下コーナーから右上コーナーの点灯した光源へ到達できた例である。
図5(d)は、は、小動物が図面右下コーナーから右上コーナーの点灯した光源へ到達できた例である。小動物が点灯している方向へ行くと餌が得られる。これにより視覚弁別課題の試験が可能となる。
【0038】
図6は他の格子状迷路の一具体例を示す平面図である。ボード床200及び台座300は省略されている。
図6に示されるように、格子状迷路は18個のストレート通路(101)、2個のエンドレフトターン通路(102)、2個のエンドライトターン通路(103)、2個のエンドティ通路(104)、2個のセンターティ通路(106)及び1つのセンター十字通路(105)を使用して構成されている。このように
図3に示した八の字迷路よりも更に複雑な形状の迷路を構成することができる。
【0039】
図7(a)は、平面視正八角形のテーブル部410を有する連結テーブル400を使用して作成した迷路の一具体例の平面図である。平面視正八角形のテーブル部410には6個のストレート通路101が接続されている。なお、接続される通路はストレート通路101に限定されるものではない。
【0040】
図7(b)は、平面視正八角形のテーブル部410を有する連結テーブル400を使用して作成した迷路の別の具体例の平面図である。平面視正八角形のテーブル部410には5個のストレート通路101が接続されている。なお、接続される通路はストレート通路101に限定されるものではない。
【0041】
図7(c)は、3個のテーブル片411を二等辺三角形の等辺どうしが隣り合うように組み合わせた平面視五角形のテーブル部を有する連結テーブルを使用して作成した迷路の別の具体例の平面図である。このテーブル部には3個のストレート通路101が接続されている。なお、接続される通路はストレート通路101に限定されるものではない。また、
図7(a)(b)(c)では図面簡略化による理解促進のため通路のみを記載しており、ボード床200及び台座300等は省略されている。
図7(a),(b)及び(c)では、テーブル部には実線にて記載された複数のテーブル片411が記載されているが、この実線は理解促進のための仮想的に記載された線である。
【0042】
図8は、平面視正八角形のテーブル部410を有する連結テーブル400を使用して、迷路を作成する場合を説明する図である。ボード床200の複数の差込み穴210は正方格子状に配置するものとする。連結テーブル400は、平面視正八角形のテーブル部410の一辺L1及びその辺に対向する辺L1’が、差込み穴210の形成する正方形の辺に平行であり、且つ、平面視正八角形のテーブル部410の別の一辺L2及びその辺に対向する辺L2’が、差込み穴210の形成する正方形の辺に斜め45度であるように、配置される。差込み穴210が形成する正方形の辺の方向に対して45度斜めの方向である通路101は、平板部311を支持棒312に対して45度回転させることにより設けられる。
図8では、テーブル部には実線にて記載された複数のテーブル片411が記載されているが、この実線は理解促進のための仮想的に記載された線である。
【0043】
図7に戻り、
図7(a)に示した迷路では、差込み穴210が形成する正方形の辺の方向に対して45度斜めの方向である通路101が2個と、差込み穴210が形成する正方形の辺の方向である通路101が4個とを有する。
図7(b)に示した迷路では、差込み穴210が形成する正方形の辺の方向に対して45度斜めの方向である通路101が1個と、差込み穴210が形成する正方形の辺の方向である通路101が4個とを有する。
図7(c)に示した迷路では、差込み穴210が形成する正方形の辺の方向に対して45度斜めの方向である通路101が1個と、差込み穴210が形成する正方形の辺の方向である通路101が2個とを有する。
【0044】
小動物実験用迷路は数百万円程度のコストがかかるものであり、複数の迷路課題を実施するその都度ごとに注文及び購入をするのでは研究部門における人的及び物的資産の消耗が著しいが、本発明によれば複数の迷路課題を実施する場合、自在に迷路を設計できるため非常に効果的であり、また小動物実験用迷路は例えば5メートル四方程度の大きなスペースを占有するものであるが、本発明によれば一つのボード床だけで複数の迷路課題を実施することができるためスペース利用において有利である。
【実施例】
【0045】
小動物実験用迷路組立キット900を試作した。ボード床200はNBRゴム製で1200mm×1200mmであり、直径6mmの円形差込み穴が正方形を仮定し得るように正方格子状に配置されており、差込み穴210の間隔は隣接する正方形の一辺が25mmであった。
【0046】
ストレート通路101は、板体110の長さは490mmであり、板体110の幅は100mmであり、全側壁120の高さは30mmであった。支持部310における支持棒312の高さは550mmであった。エンドレフトターン通路102は、板体110の長さは490mmであり、板体110の幅は100mmであり、長側壁140の長さは315mmであった。エンドライトターン通路103は、板体110の長さは490mmであり、板体110の幅は100mmであり、長側壁140の長さは315mmであった。エンドティ通路104は、板体110の長さは490mmであり、板体110の幅は100mmであり、第1の長側壁141及び第2の長側壁142の長さは315mmであった。センター十字通路105は、板体110の長さは490mmであり、板体110の幅は100mmであり、第1の短側壁151、第2の短側壁152、第3の短側壁153及び第4の短側壁154の長さは135mmであった。センターティ通路106、板体110の長さは490mmであり、板体110の幅は100mmであり、第1の短側壁151及び第2の短側壁152の長さは135mmであった。
【0047】
図9は試作した四角形の迷路を写真図である。
図9に示されるように、5つのストレート通路101、2つのエンドレフトターン通路102、2つのエンドライトターン通路103、及び1つのトレッドミルを使用して四角形の迷路を構成した。
【0048】
図10は試作した連結テーブル400を使用する迷路の写真図である。
図10に示されるように、ボード床200には複数の差込み穴210が正方格子状に配置され、差込み穴210が形成する正方形の辺の方向に対して45度斜めの方向に通路が1個と、差込み穴210が形成する正方形の辺の方向に通路が4個設けられて迷路が構成された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
小動物実験用迷路に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
100:通路
101:ストレート通路
102:エンドレフトターン通路
103:エンドライトターン通路
104:エンドティ通路
105:センター十字通路
106:センターティ通路
110:板体
120:全側壁
130:端壁
140:長側壁
141:第1の長側壁
142:第2の長側壁
151:第1の短側壁
152:第2の短側壁
153:第3の短側壁
154:第4の短側壁
200:ボード床
210:差込み穴
300:台座
400:連結テーブル
410:テーブル部
411:テーブル片
900:小動物実験用迷路組立キット