(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】除水または除塵装置
(51)【国際特許分類】
F26B 15/00 20060101AFI20220907BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F26B15/00 C
B08B5/02 Z
(21)【出願番号】P 2018137162
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】特許業務法人アイリンク国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝喜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 政浩
(72)【発明者】
【氏名】稲村 達也
(72)【発明者】
【氏名】梶原 薫
(72)【発明者】
【氏名】小出 涼
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-277639(JP,A)
【文献】実開平05-039262(JP,U)
【文献】特開平08-136128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 15/00
B08B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円形の処理対象物を搬送する搬送手段と、
搬送手段の搬送面に対して、少なくとも上下いずれか一方から圧縮エアを吹き付ける噴射手段と、
上記搬送手段の搬送面の上方であって少なくとも上記圧縮エアの噴射領域には、上記搬送面と対向して、上記搬送面との間に、処理対象物の上記断面円の直径よりも小さな間隔を保つとともに、上記間隔内に上記処理対象物が導入されたとき
、上記処理対象物に押し上げられ、上記処理対象物の外周面に接触する接触手段
と
が設けられ、
上記搬送面の移動速度と
上記接触手段の移動速度との合成速度の方向を搬送面の移動方向と一致させながら、上記接触手段の移動速度と上記搬送面の移動速度との間に速度差を保ち、
上記搬送面と上記接触手段との間に上記処理対象物を介在させて上記搬送面と接触手段とを相対移動させたとき、上記処理対象物が上記搬送面上を回転しながら搬送方向に搬送される除水または除塵装置であって、
上記接触手段は、
上記搬送面上の処理対象物の外周形状に沿って変形可能な柔軟性と弛みとを備え、
上記搬送面で連続的に搬送される1の処理対象物とこれに後続する処理対象物との間では、
上記接触手段が上記前後の処理対象物の頂点よりも下方に弛むとともに、上記搬送面との非接触状態を保つことを特徴とする除水または除塵装置。
【請求項2】
上記接触手段を上記搬送面に沿って移動させる駆動手段が設けられ、
この駆動手段は、上記接触手段の移動速度を調整可能にした請求項1に記載の除水または除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理対象物の表面に付着している水滴または塵などを圧縮エアで吹き飛ばす除水装置または除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品の製造工程などで、食品を充填した容器を水洗した後に、容器の表面に付着した水滴を、圧縮エアで吹き飛ばして除水する除水装置が用いられている。
もし、除水が不十分で、水滴が付着したままの容器が段ボール箱などに詰められると、箱に水のシミができたり、カビが発生したりしてしまって、商品価値が落ちてしまい、時には返品の原因になってしまうことがある。そのため、除水装置には確実な除水機能が望まれている。
【0003】
この種の除水装置として、例えば
図9に示すものが知られている。
この除水装置は、本体1の上部にネットコンベア2を設け、このネットコンベア2上に上記食品容器などの除水対象物を乗せて搬送するようにしている。
また、本体1の上面には、ネットコンベア2の搬送面を覆ったり解放したりできるユニットカバー3を設け、このユニットカバー3内に、エア噴射ユニット4を装着している。このエア噴射ユニット4には、複数のエア噴射ノズル6が取り付けられ、このエア噴射ノズル6は、図示しない圧縮エア源から導かれる圧縮エアを噴射しながら、その噴射反力で噴射口が旋回する。
なお、この上側のエア噴射ユニット4は、ユニットカバー3に対し、図示しない支持機構によって上下位置を調整可能に支持されている。
【0004】
また、ネットコンベア2の下方には、エア噴射ユニット5が設けられ、このエア噴射ユニット5にも、図示していないが複数のエア噴射ノズル6が設けられている。
そして、ユニットカバー3を閉じた状態でこの装置を作動させれば、上下のエア噴射ユニット4,5のエア噴射ノズル6からネットコンベア2上の処理対象物に向かって圧縮エアが噴射され、除水対象物の表面に付着している水滴を吹き飛ばすことができる。
【0005】
そして、除水精度を上げるため、様々な処理対象物の形状や大きさに合わせて、エア噴射ノズルの位置を設定したり、案内部材などを設けたものが知られている。
例えば、特許文献1に記載の除水装置は、ネットコンベア2の移動方向に対して斜めになった案内棒を設けて、缶詰めのような円柱形の処理対象物を起立させた状態で回転させながら搬送し、上側のエア噴射ユニット4に設けた図示しない側面用のエア噴射ノズルから、処理対象物の全側面に向かって圧縮エアが噴射されるようにしたものである。
【0006】
なお、上記エア噴射ノズル6から噴射される圧縮エアは、ネットコンベア2で搬送される物体の表面に付着した塵などを吹き飛ばすこともできる。つまり、
図9に示す除水装置と同様の構成は、除塵装置としても利用できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-238946号公報
【文献】特開2000-042451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、斜めの案内棒を備えた除水装置では、円柱状の処理対象物を回転させることによって、その側面に付着している水滴を確実に吹き飛ばすことができるようにしている。
ところが、処理対象物によってはネットコンベア2上に起立させることができないことがある。例えば、ソーセージのように両端が絞られた円柱は、起立させることができないため、横たえた状態で搬送しなければならない。このように横たえた状態で搬送される円柱状の処理対象物は、特許文献1のような案内棒を用いて回転させながら搬送することができない。
【0009】
そして、
図10に示すように、搬送面2aに横たえた円柱状の処理対象物Aは、移動方向xにおける前後端部a1,a2が、上下のエア噴射ノズル6から噴射される圧縮エアが届きにくいか届いたとしてもその圧力が弱くなってしまう部分になる。
特に、処理対象物Aの直径が大きくなれば、その分、上側の噴射ユニット4の位置を相対的に高くせざるを得ない。噴射ユニット4の位置が高くなれば、上側のエア噴射ノズル6から噴射される圧縮エアが前後端部a1,a2に届いたときには、その勢いが弱くなってしまう。
【0010】
その結果、水滴を吹き飛ばす力が不足して、確実な除水ができないことがあった。
一方、ネットコンベア2の搬送速度を遅くすれば、処理対象物Aの上記前後端部a1,a2に圧縮エアが届く時間が長くなるため、除水残しを少なくできる。しかし、除水速度が極端に遅くなり、この除水装置を組み込んだ製造ラインでの生産効率が低下してしまうという問題が発生する。
【0011】
上記のような問題は、中間が円柱状であって両端が平坦ではなく、起立させて搬送することができない処理対象物Aに付着した塵を吹き飛ばすための除塵装置においても同様に発生するものである。
この発明の目的は、断面形状が円形の処理対象物を、確実に除水または除塵できる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、断面が円形の処理対象物を搬送する搬送手段と、搬送手段の搬送面に対して、少なくとも上下いずれか一方から圧縮エアを吹き付ける噴射手段と、上記搬送手段の搬送面の上方であって少なくとも上記圧縮エアの噴射領域には、上記搬送面と対向して、上記搬送面との間に、処理対象物の上記断面円の直径よりも小さな間隔を保つとともに、上記間隔内に上記処理対象物が導入されたとき、上記処理対象物に押し上げられ、上記処理対象物の外周面に接触する接触手段とが設けられ、上記搬送面の移動速度と上記接触手段の移動速度との合成速度の方向を搬送面の移動方向と一致させながら、上記接触手段の移動速度と上記搬送面の移動速度との間に速度差を保ち、上記搬送面と上記接触手段との間に上記処理対象物を介在させて上記搬送面と接触手段とを相対移動させたとき、上記処理対象物が上記搬送面上を回転しながら搬送方向に搬送される除水または除塵装置であって、上記接触手段が、上記搬送面上の処理対象物の外周形状に沿って変形可能な柔軟性と弛みとを備え、上記搬送面で連続的に搬送される1の処理対象物とこれに後続する処理対象物との間では、上記接触手段が上記前後の処理対象物の頂点よりも下方に弛むとともに、上記搬送面との非接触状態を保つことを特徴とする。
【0013】
なお、「圧縮エアの噴射領域」とは、噴射手段から噴射された圧縮エアが届く範囲のことである。
また、上記搬送面の移動速度と接触手段の移動速度との合成速度とは、両速度の合計のことである。そして、搬送面の移動方向を正とし、その逆方向を負として演算するものとする。
そして、上記合成速度の方向が搬送面の移動方向と一致し、搬送面と接触手段とが速度差を保っていれば、接触手段の移動方向は搬送面と同方向でも逆方向でも構わない。なお、両者が速度差を保った状態には、接触手段が停止している場合も含まれる。
【0014】
なお、搬送面の移動速度と接触手段の移動速度との合成速度が、搬送面の移動方向と一致しない場合とは、次のような場合である。接触手段の移動方向が搬送手段の移動方向逆方向であって、その絶対値が搬送面の移動速度の絶対値よりも大きい場合である。その場合には、搬送面と接触手段とに挟まれた処理対象物は、絶対値が大きい接触手段の移動方向に移動する。この移動方向は搬送面の移動方向と逆方向である。搬送面と逆方向に搬送された処理対象物が接触手段から開放されると、搬送手段によって接触手段側に戻されることになる。実際には、搬送面の移動方向上流側から搬送される処理対象物を接触手段との間に導入することができない。つまり、処理対象物を搬送できなくなってしまう。したがって、上記合成速度の方向が搬送面の移動方向と一致しない場合はこの発明には含まれない。
【0017】
第2の発明は、上記接触手段を上記搬送面に沿って移動させる駆動手段が設けられ、この駆動手段が上記接触手段の移動速度を調整可能にしている。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、相対移動する搬送手段と接触手段との間に挟まれた、断面円形の処理対象物を回転させながら搬送することができる。そのため、搬送手段の上または下から噴射する圧縮エアを、処理対象物の側面にまんべんなく当てることができ、水滴や塵を確実の取り除くことができる。
この発明では、処理対象物が回転するので、噴射手段が上下いずれか一方のみであっても、側面全体に圧縮エアを当てることが可能である。ただし、上下両方に噴射手段を設ければ、上下いずれか一方のみの場合と比べて、処理対象物の回転数を少なくしても全面の除水または除塵ができる。回転数を少なくすれば、その分搬送速度が速くなり、処理時間を短縮できる。
【0020】
また、搬送手段と接触手段との間隔に処理対象物を導入すると接触手段が押し上げられるので、処理対象物の大きさに対応した接触手段の高さ位置の調整をラフにしたり、省略したりできる。接触手段の高さ位置を厳密に調整しなくても、搬送手段と接触手段との間に導入した処理対象物には接触手段が確実に接触して、処理対象物を回転させながら搬送することができる。
したがって、処理対象物のロットが変わってその直径が変わっても、そのたびに接触手段の高さ位置を厳密に調整しなくてもよい場合がある。
【0021】
さらに、接触手段が処理対象物の外周形状に沿って変形し、処理対象物間にも弛みができるので、この弛みの範囲であれば、高さ位置調整をしなくても、様々な直径の処理対象物に接触手段を接触させることができる。したがって、直径が異なる処理対象物が混ざって搬送されても、それらを連続処理することができる。
【0022】
第2の発明によれば、接触手段の移動速度を調整して、搬送手段との速度差を調整することができる。搬送手段と接触手段との速度差によって、処理対象物の回転数や搬送速度が変化するので、処理対象物の直径などに応じて、適切な回転数を選択して、除水効率や除塵効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の搬送手段付近の正面図で、本体の前面カバーを外した状態である。
【
図2】第1実施形態の接触ネットのテンションを調整する機構の部分拡大図である。
【
図3】第1実施形態の接触ネットの部分平面図である。
【
図4】第1実施形態の処理対象物の搬送状態を示す図である。
【
図5】第2実施形態の搬送手段付近の正面図である。
【
図6】第2実施形態の上側のエア噴射ユニットを下方から見た図である。
【
図7】第2実施形態において、接触手段の押さえ力を調整する機能を説明するための図である。
【
図10】従来の除水装置における処理対象物の搬送状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本願発明の実施形態である第1実施形態と、参考例としての第2、3実施形態について説明する。
図1~4に示す第1実施形態は、
図9に示す従来の除水装置に、無端状のネット7を設けた除水装置である。この第1実施形態において、従来の除水装置と同じ構成要素には
図9と同じ符号を用いるとともに、以下の説明にも
図9を参照する。
なお、上記無端状のネット7のうち、搬送面2aに対向する下側部分が、この発明の接触手段である。以下の説明では、上記ネット7全体に対して、ネット7の下側部分を接触ネット7aとして区別する。
図1は、この発明の搬送手段であるネットコンベア2付近の正面図であるが、上下のエア噴射ユニット4,5の位置を分かりやすくするため、本体1の前面カバーを取り除き、ユニットカバー3の輪郭を二点鎖線で示している。なお、上記エア噴射ユニット4,5がこの発明の噴射手段である。
【0026】
また、
図1,2では当該装置の一方の側面だけを表現しているので、組を構成する一対の部材のうち、他方の側にある部材は表現されていない。ただし、
図1,2に表現されていない他方の部材であっても、以下には一方の側の部材と同一符号を付してそれらが存在することを示す。
【0027】
図1に示すように、本体1の上面1aであって、ネットコンベア2の搬送方向xを基準として、ユニットカバー3の上流側には、一対の支持板8,8が、ユニットカバー3より下流側には一対の支持板9,9が、それぞれネットコンベア2を介して対向する位置に固定されている。
【0028】
上流側の支持板8,8には、一対のスプロケット10,10を備えた駆動軸11の両端が回転可能に支持されるとともに、上記ネット7全体や接触ネット7aのテンションを調整するための、上側のテンションローラ12,12を回転可能に支持した支持軸14と、下側のテンションローラ13,13を回転可能に支持した支持軸15の両端が固定されている。また、本体1にはこの発明の駆動手段であるモーターMが取り付けられ、その駆動力が上記駆動軸11に伝達されるようにしている。このモーターMによってネット7aの移動速度を調整可能にしている。
なお、駆動軸11に設けられるスプロケット10の数は、ネット7の幅などに応じて設定すればよい。
【0029】
また、上記支持板8,8には、上下方向に長い長穴16,16及び17,17が形成され、上記支持軸14,15の両端が、この長穴16,16及び17,17を貫通するボルト18,18及び19,19で支持板8,8に固定されている。したがって、この長穴16,16及び17,17の範囲で、上記テンションローラ12及び13の高さ位置を調整できる(
図2参照)とともに、ボルト18,18及び19,19の締め付け力で調整高さを固定できる。
【0030】
そして、上記テンションローラ12,12及び13,13を下方に移動させることで、ネット7のテンションを大きくし、上方へ移動させることでネット7のテンションを小さくすることができる。
ただし、下側のテンションローラ13,13と搬送面2aとの間隔は、処理対象物Aの断面円の直径よりも大きくしなければならない。そのため、テンションローラ13の下方への移動には限界があるが、上下のテンションローラ12,13の位置によって接触ネット7aのテンションを調整するようにしている。
なお、
図2中の符号30は支持軸14,15に固定されたカラーで、上記ガイドローラ12及びテンションローラ13の軸方向の移動を規制している。
【0031】
また、上記下流側の支持板9,9間には、上記駆動側のスプロケット10,10との間でネット7を架け回す従動側のスプロケット20,20を備えた従動軸21の両端が回転可能に支持されるとともに、テンションローラ22,22を回転可能に支持する支持軸24とテンションローラ23,23を回転可能に支持する支持軸25の両端が固定されている。
上記支持板9,9にも、上記支持軸24,25を固定するための長穴26,26及び27,27が形成され、この長穴26,26及び27,27の範囲内で、ボルト28,28及び29,29を締め付けることで、上下のテンションローラ22,22及び23,23の高さ位置を調整可能にしているとともに、ボルト28,28及び29,29の締め付け力で調整高さを固定できる。
【0032】
そして、上記テンションローラ22,22及び23,23を下方に移動させることで、ネット7のテンションを大きくし、上方へ移動させることでネット7のテンションを小さくすることができる。
また、図示していないが、支持板9,9側においても、
図2に示す支持板8側と同様に、上記支持軸24,25に回転可能にされたテンションローラ22及び23の軸方向の移動を規制するカラー30が固定されている。
【0033】
なお、支持軸14,15に取り付けられるテンションローラ12及び13や、支持軸24,25に取り付けられるテンションローラ22及び23の数は、ネット7の大きさなどに応じて決めればよく、特に限定されない。そして、上記テンションローラローラ12,13及び22,23の高さ位置調整によって、接触ネット7aのテンションを調整するようにしている。
【0034】
一方、上記ネット7は、
図3に示すように、矩形波状に曲げられた線材7bを、複数組みあわせ、長さ方向の両端を連結して無端状に構成されている。
このネット7は、搬送方向xに直交する幅方向線部7cが等間隔に配置され、全体として凹凸が少なく表面を平滑にしたものである。
そして、上記スプロケット10,20の外周面には、上記幅方向線部7cがはまる線状溝(図示していない)を形成し、この線状溝に上記幅方向線部7cを嵌め込んでいる。したがって、ネット7がスプロケット10,20上を滑ることなく、駆動軸11に供給された移動力が従動軸21まで伝達される。
【0035】
ただし、接触手段を構成するネットの構成は
図3に示すものに限らない。
上側のエア噴射ユニット4から噴射される圧縮エアが、処理対象物Aに到達できるものならどのようなネットでも構わない。また、ネットを駆動するために上記線状溝を備えたスプロケットを用いないで、チェーンなどによって駆動されるものでもよい。そのうえで、線材の連結部分などに大きな凹凸がなくて全体として平滑で、かつ、柔軟性のあるものが、処理対象物Aの上部を均等に押さえることができるという点で好ましい。
【0036】
上記のように設けられた駆動側のスプロケット10,10と従動側のスプロケット20,20とにネット7を架け回し、その上側部分をテンションローラ12,12及び22,22の下側を通し、下側部分をテンションローラ13,13及び23,23の下側を通している。
そして、上記各ガイドローラ12,12,22,22、及びテンションローラ13,13,23,23の高さ位置を調整し、接触ネット7aの高さ位置及びテンションを適切に調整している。
【0037】
この第1実施形態では、接触ネット7aを十分に弛ませて搬送面2aに接触するようにしている。
このように接触ネット7aを弛ませて搬送面2aに接触させているので、処理対象物Aは、接触ネット7aと搬送面2aとの間に導入されると、上記接触ネット7aを持ち上げ、接触ネット7aの重量を受けることになる。
また、ネット7は、上記したように複数の線材7bの組み合わせで構成され、線材7bの連結部分で隣り合う線材7b同士がずれることで、線材7bを含む面を曲面状に変形することができる。このようにネット7を面として見たときに曲面状に変形可能な構造を、この発明の柔軟性を有する構造という。つまり、接触ネット7aは柔軟性を有する。
【0038】
この第1実施形態では、接触ネット7aのテンションを特に弱く設定しているので、接触ネット7aは十分な柔軟性を備え、曲面に沿って変形しやすくなっている。したがって、接触ネット7aは、
図4のように断面が円形の処理対象物Aを覆うように接触すると、各処理対象物Aの上部外周面に沿って変形する。
【0039】
そして、
図4において搬送面2a上の処理対象物Aをその進行方向前方から、A1,A2,・・・,とすると、処理対象物A1とこれに後続する処理対象物A2との間では、接触ネット7aは処理対象物A1,A2の頂点a3,a3よりも下方に弛んでいる。
このように、接触ネット7aが十分な弛みを備えているので、接触ネット7aと搬送面2aとの間に導入された処理対象物Aの断面円の直径が異なっていても、全ての処理対象物Aに接触ネット7aを確実に接触させることができる。
【0040】
そして、この第1実施形態の除水装置では、接触ネット7aの移動速度v2を、ネットコンベア2の搬送面2aの移動速度v1と同方向でその絶対値をv1よりも小さくして両者の速度差を保つようにしている。つまり、ネットコンベア2の搬送面2aと、搬送面2aに対向する接触ネット7aとが、相対移動するように上記モーターMが制御される。
【0041】
上記のように構成された第1実施形態の除水装置では、上記支持板8,8の上流側でネットコンベア2上に載せられた処理対象物Aは、上記テンションローラ13,13の真下に達すると、上記搬送面2aと接触ネット7aとの間に進入し、搬送面2aと接触ネット7aとに挟まれた状態で搬送される。
このとき、搬送面2aと接触ネット7aとには速度差があり、接触ネット7aの速度v2が搬送面の速度v1に比べて小さいので、これらに挟まれた処理対象物Aの上部には、搬送面2aの移動速度v1(または移動方向x)と逆方向の力が作用し、処理対象物Aには
図4に示す矢印r方向の回転力が発生する。したがって、処理対象物Aは、矢印r方向に回転しながらx方向に搬送され、ユニットカバー3内に進む。
【0042】
上記ユニットカバー3内では、上下のエア噴射ユニット4,5のエア噴射ノズル6から圧縮エアが噴射されるが、処理対象物Aは上記のように搬送面2a上を回転しながら搬送されるので、その全側面が上下のエア噴射ユニット4,5と対向することになる。
したがって、起立させることができない処理対象物Aの外周面全体に圧縮エアがまんべんなく当たって、確実に除水できる。
なお、処理対象物Aが回転する際には、搬送面2a上を滑るので、処理対象物Aの搬送速度は搬送面2aの移動速度v1よりは小さくなる。
【0043】
また、処理対象物Aは、ユニットカバー3から外に排出されて下流側のテンションローラ23,23の位置まで達すれば、接触ネット7aから開放されるので、回転せずに次工程へ搬送される。接触ネット7aから開放される位置は、ユニットカバー3の外であって、圧縮エアの噴射領域外なので、処理対象物Aが無回転で搬送されても除水に影響はない。そして、接触ネット7aの影響がなくなった処理対象物Aは、搬送面2aの移動速度v1で搬送される。
【0044】
このように、第1実施形態では、圧縮エアの噴射領域内で、処理対象物Aが回転しながら搬送されるので、その外周面を確実に除水することができる。
また、無端状のネット7の下側部分である接触ネット7aには十分な弛みと柔軟性があり、処理対象物Aの形状に沿って変形可能なので、上記弛みの範囲であれば、断面円の直径が異なる処理対象物Aを連続的に搬送する場合にも、接触ネット7aの高さ位置を調整することなく、全ての処理対象物Aに接触ネット7aを接触させることができる。つまり、全ての処理対象物Aを回転させながら搬送して確実な除水ができる。
【0045】
なお、この第1実施形態では、ユニットカバー3の上流側から、ネットコンベア2とネット7とで処理対象物Aが挟まれるようにしているが、この発明の接触手段は、少なくとも圧縮エアの噴射領域に対応する部分に設けられればよい。圧縮エアの噴射領域とは、圧縮エアが届く領域である。この第1実施形態では、上下のエア噴射ユニット4,5から圧縮エアが噴射されるユニットカバー3内を、圧縮エアの噴射領域としている。
【0046】
また、この第1実施形態では接触ネット7aが搬送面2aに接触しているが、接触手段である接触ネット7aは、必ずしも、接触ネット7aを搬送面2aに接触するまで弛ませなくてもよい。接触ネット7aに弛みがあって、搬送面2aとの対向間隔が処理対象物Aの断面円の直径より小さくなっていれば、その間に導入された処理対象物Aに接触ネット7aが確実に接触し、弛みの範囲内で直径の異なる処理対象物Aにも対応できる。
【0047】
接触ネット7aと搬送面2aとが接触した状態で相対移動すれば、その接触部分が摩耗してしまう可能性がある。このような摩耗を防止するためには、接触ネット7aと搬送面2aとが接触しない程度に接触ネット7aを弛ませればよい。接触ネット7aの弛み量は処理対象物Aの直径やそのバラつきなどに応じて設定することが好ましい。
ただし、処理対象物Aの断面円の直径が一定で、その直径に合わせて接触ネット7aの厳密な高さ位置管理が可能なら、接触ネット7aのテンションを高くしてほとんど弛ませなくても構わない。
【0048】
また、接触ネット7aの移動速度v2は、搬送面2aの移動速度v1に対して速度差があり、移動速度v1との合成速度が搬送面2aの移動方向xと一致すれば、その方向は問わない。
もし、上記移動速度v1とv2とに差が無ければ、処理対象物は搬送面2aと接触ネット7aとに挟まれて搬送されるが回転しない。つまり、移動速度v1とv2とに速度差があることが、処理対象物Aを回転させるための必要条件である。
【0049】
なお、上記合成速度とは、ネットコンベア2の移動方向xの方向を正とした移動速度v1,v2の合計速度のことである。そして、搬送面2aと接触ネット7aとに挟まれた処理対象物Aはこの合成速度の方向へ搬送される。したがって、搬送面2aの移動方向xに処理対象物Aを搬送するためには、上記合成速度の方向とx方向とが一致、すなわち合成速度の値が正でなければならない。
【0050】
そして、上記したこの発明の移動速度v1,v2の条件を満足しない例は次の通りである。
もし、接触ネット7aの移動方向と搬送面2aの移動方向とが反対で、その絶対値が等しいと、両者の合成速度がゼロとなるが、この場合には処理対象物Aはその場で回転してしまい搬送されない。したがって、処理対象物Aを搬送しながら除水することができない。
また、接触ネット7aと搬送面2aとが逆方向に移動し、接触ネット7aの移動速度v2の絶対値の方が搬送面2aの速度v1の絶対値より大きい場合には、その合成速度の方向が搬送面2aの移動方向xと逆方向になる。この場合には、処理対象物Aは接触ネット7aの移動方向に移動するので、ネットコンベア2では搬送できないことになる。
【0051】
また、搬送面2aと接触ネット7aとの速度差や合成速度によって、両者に挟まれた処理対象物の搬送速度や回転数が変わる。
同じ処理対象物Aでも、搬送面2aと接触ネット7aとの速度差が大きいほど、処理対象物Aの上部に作用する逆方向の力が大きくなるため、回転数が多くなり、その分、搬送速度は遅くなる。
上記ユニットカバー3内での処理対象物Aの移動速度が遅くなれば、それだけ圧縮エアが長時間当たることになるので除水精度は上がるが、処理時間がかかってしまう。
【0052】
さらに、移動速度v1,v2の条件が同じならば、断面円の直径が小さい処理対象物Aほど単位時間当たりの回転数が多くなって、全側面にまんべんなく圧縮エアを当てることができる。
したがって、上記移動速度v1,v2は処理対象物Aの大きさや初期の濡れ具合などによって設定することが好ましい。
【0053】
例えば、断面円の直径が大きい処理対象物Aは表面積が大きいうえ、1回転するのに時間がかかるので、上記速度差を大きくして、回転しながらゆっくり搬送されるようにすれば、確実に除水ができる。
反対に、断面円の直径が小さい処理対象物Aは、直径が大きい処理対象物Aと比べて1回転に要する時間が短いので、上記速度差を小さくして回転数を少なくしても、十分に除水できる。
【0054】
また、処理対象物Aの搬送速度は、上記速度差だけでなく、当然、搬送面2aの移動速度v1にも依存する。したがって、直径が小さくて1回転する時間が短い処理対象物の場合には、移動速度v1を上げて高速処理を可能にすることもできる。
処理対象物に応じて搬送面2aの移動速度v1及び接触ネット7aの移動速度v2を選択すれば、除水処理効率を上げることができる。
【0055】
さらに、上記したようにこの装置では、上記テンションローラ12,12,22,22、及びテンションローラ13,13,23,23の上下位置を調整することで、接触ネット7aのテンションを調整し、処理対象物Aに対する押さえ力が調整できる。
接触ネット7aのテンションが小さく大きく弛んだ場合には、その重量が処理対象物に作用するので、押さえ力が大きくなり、ネット7aのテンションが大きければ、弛みが少なくなり押さえ力も小さくなる。
【0056】
そして、上記押さえ力は、処理対象物Aがスムーズに回転しながら搬送される範囲で調整することが好ましい。
例えば、処理対象物Aの上部をあまり強い力で押さえつけると、処理対象物Aと搬送面2a及びネット7との間の摩擦抵抗が大きくなって、処理対象物Aが回転しなくなったり、スムーズに搬送できなくなったりしてしまう。
また、押さえ力が弱すぎると、接触ネット7に対して処理対象物Aが滑ってしまって、回転しないまま搬送されてしまうこともあるので、適切な押さえ力が必要である。
【0057】
図5~7に示す第2実施形態は、この発明の接触手段を構成する長尺部材である接触バー31を用いた除水装置で、それ以外の構成は
図9に示す従来の装置と同じである。したがって、従来と同じ構成要素には
図9と同じ符号を用い、以下の説明にも
図9を参照する。
図5は、第2実施形態の搬送手段であるネットコンベア2付近の正面図であるが、ネットコンベア2の搬送面2aを一点鎖線で示し、その下方を省略している。
また、
図6は、上側のエア噴射ユニット4の底面側から、接触バー31を取り付けたフレーム32を見た図であるが、エア噴射ユニット4に取り付けられているエア噴射ノズル6は省略している。
【0058】
この第2実施形態では、
図5,6に示すように上側のエア噴射ユニット4の底面に、フレーム32が固定されている。このフレーム32は、
図6に示すように、棒状の一対の第1フレーム部材33,33と、チャネル状の一対の第2フレーム部材39,39とが組み合わされて長方形に構成されたもので、この長方形の長手方向を搬送方向と平行にしている。
また、各第1フレーム部材33の両端には支持片34a,35aを設け、これら支持片34a,35aには、
図5に示すように、上記第2フレーム部材39,39がその断面が下方向内向きになるように固定されている。
このようにした第2フレーム部材39,39間には、複数の接触バー31の両端が固定されている。
【0059】
なお、一対の第1フレーム部材33,33は、同じ構成を備えているので、以下では、特に必要がない限り、一方の第1フレーム部材33のみを説明する。
上記第1フレーム部材33は、長手方向において分断された第1チャネル部材34及び第2チャネル部材35からなり、第1チャネル部材34に対して、第2チャネル部材35の長さを短くしている。
また、上記のように分断された第1チャネル部材34及び第2チャネル部材35は、それらの対向面間に間隔を保つようにしている。そして、それら対向面側をチャネル状の連結部材36に挿入している。
【0060】
上記第1フレーム部材33では、上記連結部材36に対して上記第1チャネル部材34は固定されるが、第2チャネル部材35は摺動可能に挿入される。そして、第2チャネル部材35は、上記第1チャネル部材34との対向間隔、及び連結部材36に形成された長穴36a,36b(
図5参照)の範囲内でフレーム32の長手方向に移動可能であるとともに、その移動位置をボルト37,38で固定できるようにしている。
【0061】
上記ボルト37,38は、連結部材36及び第2チャンネル部材35を貫通し、その先端に図示しないナットを締め付けることによって、連結部材36に第2チャネル部材35を固定するようにしている。ただし、第2チャネル部材35の一方の片にねじ穴を形成し、そのねじ穴で上記ボルト37,38の先端をねじ込むようにしてもよい。
このようにした連結部材36の長穴36a,36bを、ユニットカバー3よりも搬送方向上流側に位置させている。つまり、上記長穴36a,36bは、ユニットカバー3の外側に位置することになる。
【0062】
上記接触バー31は、例えば直径が2[mm]のステンレス製ワイヤーの芯材31aに、滑性に優れたフッ素系樹脂製のチューブ31bを被せたものである。芯材31aの長さを、チューブ31bの長さよりも長くして、チューブ31bから芯材31aの両端を突出させている。この突出部分を、上記第2フレーム部材39,39に固定している。
なお、上記接触バー31の全長を、フレーム32の長手方向の長さよりも長くしている。
したがって、接触バー31は直線状の第1フレーム部材33に対して撓んだ状態で第2フレーム部材39,39間に固定されることになる。
【0063】
また、上記第2フレーム部材39は一対の支持片39a,39bを備え、これら支持片39a,39bには図示しない小孔が形成されている。上記接触バー31の端部に突出させた芯材31aを、上記支持片39a,39bに形成された2つの小孔に挿入することによって、接触バー31の両端を第2フレーム部材39,39に結合している。このように、芯材31aを上記支持片39a,39bの小孔に挿入すれば、撓み状態の接触バー31はその弾性によって伸びる方向の力を発揮し、その力によって芯材31aが小孔から抜けるのを防止できる。
【0064】
上記のように、接触バー31は、両端に突出した芯材31a,31aが上記小孔に挿入されて一対の第2フレーム部材39,39間に固定されているので、その中間部分を強制的に撓ませれば、第2フレーム部材39,39から引き抜いてフレーム32から取り外すことができる。
フレーム32から取り外した接触バー31は、洗浄したり交換したりすることができる。また、フレーム32から外した接触バー31のチューブ31bだけを洗浄したり、チューブ31bを交換したりすることもできる。
【0065】
また、この第2実施形態のように接触バー31を交換可能にする場合にも、第2フレーム部材39,39は図示のようなチャネル状に限定されない。第2フレーム部材39は、棒部材やパイプ状であっても、上記芯材31aを挿入する2つの小孔を設ければ、これらの小孔に対して芯材31aを抜き差しすることで接触バー31の着脱を容易にできる。
ただし、接触バー31とフレーム32とは、着脱可能にされなくてもよい。例えば、上記芯材31aを、溶接などで第2フレーム部材39,39に結合してもよい。
なお、この第2実施形態では、第1フレーム部材33及び第2フレーム部材39にチャネル状の部材を用いることでフレーム32の軽量化を図っている。
【0066】
また、先に説明した上側のエア噴射ユニット4は、ハンドル40を回すことによって、ユニットカバー3に対する上下位置を調整可能にしている(
図5参照)。そして、上記したようにエア噴射ユニット4にはフレーム32が固定されている。そのため、エア噴射ユニット4の上下移動によって、フレーム32及び接触バー31も上下に移動する。
したがって、ハンドル40を介してエア噴射ユニット4を上下に移動させれば、接触バー31と搬送面2aとの間隔dを調整できる。この間隔dは、処理対象物Aの断面円の直径に合わせて調整され、搬送面2a上の処理対象物Aの上部に上記接触バー31を確実に接触させるようにする。
【0067】
実際には、上記間隔dと処理対象物Aの直径とをぴったり一致させることは難しいので、上記間隔dを上記直径よりもわずかに小さく設定する。そして、この間隔d内に処理対象物Aが導入されれば、接触バー31が上方にわずかに押し上げられ、撓んだ状態で処理対象物Aに接触するようにしている。
【0068】
さらに、接触バー31は、搬送方向xの上流側から順にP1,P2,P3の3つの角が形成されている。上記角P2,P3間は、搬送面2aとほぼ平行に保たれ、この部分で搬送面2a上の処理対象物Aの上部に接触するようにしている。
また、上記ユニットカバー3の上流側に位置する接触バー31の端部が第2フレーム部材39に固定されることによって、接触バー31の上記端部側が上方へ向かって傾斜している。このように接触バー31が傾斜しているので、搬送面2aとの間隔が上流に向かって拡大する。したがって、搬送面2aに導かれる処理対象物は、上記傾斜部から搬送面2aとの間隔dにスムーズに導入されることになる。
【0069】
ただし、上記角P1,P2間を進入ガイド部31cとし、この進入ガイド部31cの搬送面2aに対する傾斜角度θを角P1の上流側の傾斜角度よりも小さくして、処理対象物Aがよりスムーズに導入されるようにしている。
この進入ガイド部31cの傾斜角度θが大き過ぎた場合、接触バー31に衝突した処理対象物Aにそれを押し戻す方向の力が大きく作用してしまう。反対に角度θが小さすぎた場合にも、処理対象物Aが狭い間隔dに進入しにくくなってしまう。そのため、上記角度θを適切に設定する必要があるが、進入ガイド部31cの角度θを適切に設定するため、ユニットカバー3の上流側においては、接触バー31に二つの角P1,P2を形成しているのである。
【0070】
また、ユニットカバー3より下流側においても、上流側と同じように接触バー31の端部側が上方に向かって傾斜し、搬送面2aとの間隔が下流に向かって拡大している。したがって、接触バー31の押さえ範囲から出て行く処理対象物の姿勢が安定する。
そして、処理対象物が出て行く側では、接触バー31の傾斜角度が、処理対象物の移動に影響を与えないので、その角度を調整する必要はなく、下流側では1つの角P3のみを形成している。
【0071】
なお、この第2実施形態では、上記進入ガイド部31cと搬送面2aとの角度θを調整できるようにしているが、その具体的な構成は
図7の模式図に示したとおりである。
図7において、点P4,P5を、第1フレーム部材33の両端と接触バー31との結合点とする。
【0072】
この
図7に示す状態から、結合点P4を点P5側に移動させると、接触バー31に対して第1フレーム部材33の長さが短くなるので、進入ガイド部31cが搬送面2aに対して立ち上がり、角度θが大きくなる。
なお、結合点P4を点P5側へ移動させるとは、
図5に示す連結部材36のボルト37,38を緩めて、第2チャネル部材35を第1チャネル部材34に近づけることである。
【0073】
また、上記連結部材36のボルト37,38を緩めて第2チャネル部材35を第1チャネル部材34から離して第1フレーム部材33の長さを長くすれば、上記進入ガイド部31cと搬送面2aとの角度θは小さくなる。
このように、上記連結部材36の長穴36a,36bの部分で第1フレーム部材33の全長を調整することによって上記進入ガイド部31cの角度θを調整することができる。そして、上記角度θを、処理対象物の形状や大きさに応じて設定すれば、処理対象物Aをよりスムーズに接触バー31と搬送面2aとの間に進入させることができる。
【0074】
なお、上記長穴36a,36bでの調整範囲は、第1フレーム部材33の全長に比べればわずかであり、上記角度調整によって接触バー31の上記角P2,P3間と搬送面2aとの平行が崩れることはほとんどない。そして、この平行部分の高さ位置を、上記ハンドル40によって調整し、搬送面2a上を連続的に搬送される複数の処理対象物A全てに接触バー31を接触させるようにする。
また、この第2実施形態では、上記したように連結部材36の長穴36a,36bの部分をユニットカバー3の外側に設けているので、進入ガイド部31cの角度調整の際に、いちいちユニットカバー3を開けなくてもよい。
【0075】
このような第2実施形態では、接触手段である接触バー31が停止しているので、速度v1で移動する搬送面2aとの間に速度差v1が保たれるとともに、搬送面2aの移動速度v1と接触バー31の移動速度との合成速度は、搬送面2aの移動速度v1となる。
このような第2実施形態の除水装置において、断面形状が円の処理対象物Aが搬送面2aに乗せられると、処理対象物Aは上流側から搬送され、接触バー31と搬送面2aとの間隔d内に進入する。搬送面2aと接触バー31とに挟まれた処理対象物Aは、上記接触バー31と搬送面2aとの速度差によって矢印のように回転しながらユニットカバー3内に進入する。
【0076】
したがって、この第2実施形態でも、圧縮エアの噴射領域であるユニットカバー3内で、処理対象物Aが回転しながら搬送され、上下のエア噴射ユニット4,5から噴射される圧縮エアが処理対象異物Aの全側面に吹き付けられて確実に除水される。
また、接触バー31の表面を、滑性に優れたフッ素系樹脂製のチューブ31bで構成し、処理対象物Aとの間の摩擦抵抗がそれほど大きくならないようにしているが、接触バー31の表面を特に滑性に優れた材質にする必要はないし、チューブで覆う必要もない。
ただし、この第2実施形態のように芯材31aに対して取り外し可能なチューブ31bを設けるようにすれば、チューブ31bを交換するだけで接触バー31の表面を清潔に保つことができるというメリットがある。
【0077】
図8は、第3実施形態の概略図である。
この第3実施形態は、第2実施形態の接触バー31の代わりに、樹脂製あるいは金属製などの接触バー41を接触手段としている。そして、第2実施形態と同様の構成要素には
図5,6と同じ符号を用い、以下の説明にも
図5,6を参照する。
第3実施形態の接触バー41は、直線状の棒状部材であって、その両端41a,41bそれぞれが、ばね部材42,43を介してフレーム32を構成する第2フレーム39,39(
図5,6参照)に連結されている。
図8には表れていないが、複数の接触バー41が、それぞればね部材42,43を介して第2フレーム39,39に支持されている。
【0078】
そして、上記ばね部材42,43が接触バー41の重量を支えている状態で、接触バー41と搬送面2aとの間隔を当該装置の処理対象物Aの断面円の直径より小さく設定している。したがって、ネットコンベア2で搬送された処理対象物Aは、接触バー41を押し上げて搬送面2aと接触バー41との間に導入される。このとき、上記ばね部材42,43は撓み、その弾性力で接触バー41が処理対象物Aの上部に押し付けられることになる。
このように、接触バー41が押し付けられた処理対象物Aは搬送面2aと接触バー41との速度差によって、上記した他の実施形態と同様に回転しながら搬送される。
処理対象物Aは回転しながらユニットカバー3内を通過するので、その間で上下のエア噴射ユニット4,5から噴射される圧縮エアが全側面にまんべんなく当たって確実な除水ができる。
【0079】
さらに、この第3実施形態は、上記ばね部材42,43の変位範囲内であれば、直径の異なる処理対象物Aを回転させながら搬送することができる。
なお、処理対象物Aで接触バー41を押し上げ可能にするためなら、弾性変形可能なばね部材42,43を用いずに、可撓性のある紐などで接触バー41を支持することも考えられる。ただし、紐などで接触バー41を支持する場合には、接触バー41の重量のみで処理対象物Aを押さえることになるので、接触バー41の重量が小さすぎた場合には、移動する処理対象物Aの上で接触バー41がはねてしまうこともある。接触バー41がはねてしまえば、処理対象物Aが回転不足になったり、搬送が不安定になったりしてしまう。
【0080】
これに対し、第3実施形態のように、ばね部材42,43で接触バー41を支持している場合には、接触バー41の重量を小さくしてもばね部材42,43の弾性力で接触バー41を処理対象物Aに押し付けることができる。したがって、ばね部材を用いた方が、処理対象物Aの安定した回転や搬送を可能にする接触バーの材質などの選択の自由度が増す。
【0081】
なお、第2,3実施形態では、接触手段として、ワイヤー状の接触バー31や棒状の接触バー41を用いているが、搬送方向に長さを有する長尺部材の形態はこれに限らない。
上側のエア噴射ユニット4の噴射エアが通過する隙間が確保されれば、ワイヤー状や棒状の部材に替えて、帯状や板状の部材を用いてもよい。
【0082】
また、上記第1~3実施形態では搬送面2aの上下にエア噴射ユニット4,5を設けているが、上下いずれか一方のみにエア噴射ユニットを設けて、他方を省略してもよい。処理対象物Aがユニットカバー3内を通過する際に回転するので、上下いずれか一方のみから噴射される圧縮エアによって除水できるからである。
ただし、上下両方から圧縮エアが噴射されれば、処理対象物Aの表面に圧縮エアがより確実に届くので、搬送速度を速くして処理速度を上げることもできる。
【0083】
もし、上側のエア噴射ユニット4を省略した場合には、接触手段は圧縮エアを通過させない部材、例えば幅広の帯状部材などで構成してもよい。
また、下側のエア噴射ユニット5を省略して、上側のエア噴射ユニット4からのみ圧縮エアを噴射させる場合には、搬送手段が圧縮エアを通過させないもの、例えばベルトコンベアなどでもよい。
【0084】
上記のように第1~3実施形態は、いずれも断面円形で、しかも搬送面2a上に起立させることができない処理対象物Aを確実に除水できる装置であるが、缶詰のように起立させることができる物体を横たえて搬送するようにしてもよい。
また、上記実施形態の除水装置は塵を吹き飛ばす除塵装置としても用いることができる。その場合も、処理対象物Aが、搬送面上を回転しながら搬送されるので、確実な除塵ができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
ソーセージなどの表面に付着した水滴や塵を取り除くのに最適である。
【符号の説明】
【0086】
A 処理対象物
1 本体
2 (搬送手段)ネットコンベア
2a 搬送面
3 (エアの噴射領域)ユニットカバー
4 エア噴射ユニット
5 エア噴射ユニット
7 (接触手段)ネット
7a (接触手段)接触ネット
v1 接触面の移動速度
v2 接触手段の移動速度
A 処理対象物
a3 処理対象物の頂点
M (駆動手段)モーター
31,41 (接触手段、長尺部材)接触バー
P4,P5 (長尺部材の両異端)結合点
41a,41b (長尺部材の)端部