(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】育苗部材洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/06 20060101AFI20220907BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20220907BHJP
A01G 31/04 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A01G9/06
A01G9/00 C
A01G31/04 Z
(21)【出願番号】P 2018190832
(22)【出願日】2018-10-09
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一夫
(72)【発明者】
【氏名】宮前 志基
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正樹
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216142(JP,A)
【文献】特開2000-350520(JP,A)
【文献】特開平05-277594(JP,A)
【文献】特開平10-118583(JP,A)
【文献】特開2015-223136(JP,A)
【文献】特開平07-039255(JP,A)
【文献】特開平04-045726(JP,A)
【文献】実開平01-167853(JP,U)
【文献】特開平08-053228(JP,A)
【文献】実開昭57-046551(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 31/00 - 31/06
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を水耕栽培する略四角形の育苗部材を洗浄する育苗部材洗浄装置において、
ストックエリア
と待機エリアと洗浄エリアと横送り手段を有し、
ストックエリア
には、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持し、育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す
送り出し手段があり、
待機エリアは、ストックエリアに隣接し、ストックエリアから送り出された育苗部材を縦姿勢を維持したままで受け入れる領域であって、前記育苗部材を検知する育苗部材検知センサーを有し、
洗浄エリアは
、洗浄水噴射手段を有し、
前記横送り手段は、
前記待機エリアから前記洗浄エリアに跨がる位置に配置され、前記待機エリアの育苗部材を縦姿勢を維持した状態で側方側に移動
させて洗浄エリアに導入し、洗浄水噴射手段の前を通過させる
ものであり、
前記送り出し手段は、前記待機エリアが空き状態になると、前記待機エリアに前記育苗部材を送り出し、前記待機エリアに前記育苗部材が導入されると、送り出しを停止することを特徴とする育苗部材洗浄装置。
【請求項2】
育苗部材を倒す倒し手段を有し、洗浄エリアを通過した縦姿勢の育苗部材を倒し手段で倒して平置き姿勢にすることが可能であることを特徴とする請求項
1に記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項3】
前記ストックエリアには、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持する縦姿勢維持手段と、育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す送り出し手段があり、
前記縦姿勢維持手段は下支持部と倒れ防止手段を有し、前記下支持部は育苗部材の一辺を保持し、倒れ防止手段は前記下支持部よりも上部にあって、育苗部材の表裏の少なくともいずれか一方の少なくとも一部を保持するものであり、
送り出し手段は、前記下支持部と前記倒れ防止手段を同期的に移動させるものであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項4】
前記ストックエリアには、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持する縦姿勢維持手段と、育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す送り出し手段があり、
縦姿勢維持手段及び送り出し手段は、下部側ベルト機構と上部側ベルト機構によって構成され、下部側ベルト機構は動力によって走行する下部側ベルトを有し、当該下部側ベルトは少なくとも一部の走行経路においてベルトの外周面が上方に向き、下部側ベルトには複数の下部側桟部材が取り付けられていて下部側ベルトの走行にともなって下部側桟部材が移動し、
上部側ベルト機構は、動力によって走行する上部側ベルトを有し、当該上部側ベルトは少なくとも一部の走行経路においてベルトの外周面が側方に向き、上部側ベルトには複数の上部側桟部材が取り付けられていて上部側ベルトの走行にともなって上部側桟部材が移動し、
育苗部材を縦姿勢とした際に下辺に相当する辺が下部側ベルトのベルト上であって下部側桟部材同士の間に保持され、
育苗部材の上部側が上部側ベルトの上部側桟部材同士の間で保持されることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項5】
洗浄エリアには、育苗部材の表面又は裏面の少なくともいずれかに面する内壁があり、当該内壁の表面に流体が流されることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項6】
前記ストックエリアは、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持し、育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出すベルト機構を備え、
前記ベルト機構は、動力によって走行するベルトと、前記ベルトの外周面から立設した複数の立設部材を有し、前記ベルトの走行にともなって前記複数の立設部材が移動するものであり、
前記ベルトは、少なくとも一部の走行経路においてベルトの外周面が側方に向いており、
前記育苗部材が前記ベルトの前記立設部材同士の間で保持されることを特徴とする請求項
1に記載の育苗部材洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を水耕栽培する際に使用する育苗部材を洗浄する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物を建屋内で連続的に栽培する植物栽培装置が知られている。植物栽培装置は、作物工場と通称される栽培形態に使用されるものである。即ち植物栽培装置は、人工照明を使用して作物に適度の日照を与えると共に、建屋内や室内を生育に適した温度や湿度に保って作物を育成する装置である。
植物栽培装置によると、日照や温度、水分、肥料濃度等が適度に制御された環境で作物を作ることができるので、露地栽培に比べて収穫に要する期間が短い。
また植物栽培装置の多くは水耕栽培によって作物を育成するものであり、露地栽培に比べて清潔である。さらに室内で作物を栽培するので害虫が付かず、無農薬で作物を栽培することができる。そのため植物栽培装置は、レタス等の皮を剥いたりせずに食する野菜を栽培するのに好適である。
【0003】
植物栽培装置には大きく分けて固定式のものと移動式のものがある。
固定式の植物栽培装置は、棚等に培養液が満たされた栽培トレイを設置し、栽培トレイに苗を保持する苗保持部材に取り付け、人口照明等を苗保持部材に保持された苗に照射して苗を育てる。固定式の植物栽培装置では、幼苗から収穫直後まで、同じ位置に置かれた栽培トレイ上で生育される。
【0004】
移動式の植物栽培装置には、養液が満たされた栽培トレイに苗保持部材を装着し、コンベヤ装置等によって栽培トレイを移動させる形式のもの(特許文献1)と、大型の水槽に苗保持部材を浮かべ、苗保持部材を人力等で押し動かす形式のもの(特許文献2)がある。
前者のコンベヤ装置等を備えたものでは、装置の始端に幼苗を植えた栽培トレイを導入し、10日から30日程度の日数をかけて栽培トレイを始端から終端に送る。その間、苗保持部材に保持された苗に照射して苗を育てる。
そして終端で栽培トレイを取り出し、成長した植物を収穫するか、あるいは栽培トレイを再度他の植物栽培装置に搬入して苗をより大きく成長させる。
後者の苗保持部材を人力等で押し動かす形式のものについても、装置の始端に幼苗を植えた苗保持部材を導入し、苗保持部材を始端から終端に流す。その間、苗保持部材に保持された苗に照射して苗を育てる。
収穫を終えると、栽培トレイや苗保持部材を回収し、新たに苗を植えつけて栽培を行う。
【0005】
固定式であっても移動式であっても、栽培期間中、栽培トレイは培養液で満たされているから、収穫を終えた栽培トレイは苔や水垢で汚れている。苗保持部材についても同様であり、苔や水垢で汚れている。
そのため栽培トレイ等を再使用する場合には、栽培トレイや苗保持部材等の育苗部材を洗浄することが望ましい。
従来技術における育苗部材の洗浄は原始的であり、栽培トレイ等を作業場の床に平置き状に配置し、高圧洗浄装置から高圧水や蒸気を噴霧し、ブラシで擦る等の作業によって実施されていた。
また特許文献3、4には、栽培トレイ等を洗浄する装置が提案されている。
特許文献3、4に開示された洗浄装置では、栽培トレイ等を平置きした状態で移動させつつ洗浄を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-150001号公報
【文献】特開2017-158437号公報
【文献】特開平6-303848号公報
【文献】特開平6-303849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
栽培トレイ等を作業場の床に平置き状に配置して手作業で洗浄する方法は、作業者に水がかかる作業であり、作業者が汚れる仕事であるため、改善が望まれている。
特許文献に開示された装置は、栽培トレイ等を平置き状にして移動させるものであり、装置が専有する面積が大きいという不満がある。
【0008】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、栽培トレイや苗保持部材等の育苗部材を洗浄する新たな育苗部材洗浄装置を開発することを課題とするものである。より詳細には、専有する床面積が従来よりも小さい育苗部材洗浄装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するための本発明の一つの態様は、植物を水耕栽培する略四角形の育苗部材を洗浄する育苗部材洗浄装置において、ストックエリアと待機エリアと洗浄エリアと横送り手段を有し、ストックエリアには、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持し、育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す送り出し手段があり、待機エリアは、ストックエリアに隣接し、ストックエリアから送り出された育苗部材を縦姿勢を維持したままで受け入れる領域であって、前記育苗部材を検知する育苗部材検知センサーを有し、洗浄エリアは、洗浄水噴射手段を有し、前記横送り手段は、前記待機エリアから前記洗浄エリアに跨がる位置に配置され、前記待機エリアの育苗部材を縦姿勢を維持した状態で側方側に移動させて洗浄エリアに導入し、洗浄水噴射手段の前を通過させるものであり、前記送り出し手段は、前記待機エリアが空き状態になると、前記待機エリアに前記育苗部材を送り出し、前記待機エリアに前記育苗部材が導入されると、送り出しを停止することを特徴とする育苗部材洗浄装置である。
上記した課題を解決するための態様は、植物を水耕栽培する略四角形の育苗部材を洗浄する育苗部材洗浄装置において、ストックエリアと洗浄エリアと横送り手段を有し、ストックエリアには、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持する縦姿勢維持手段と、育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す送り出し手段があり、洗浄エリアは洗浄水噴射手段を有し、前記横送り手段は、ストックエリアから送り出された育苗部材を縦姿勢を維持した状態で側方側に移動して洗浄エリアに導入し、洗浄水噴射手段の前を通過させるものであることを特徴とする育苗部材洗浄装置である。
【0010】
本態様の育苗部材洗浄装置は、育苗部材を縦姿勢の状態で、ストックエリアにストックし、縦姿勢のままで移動させ、洗浄するものである。
上記した態様の育苗部材洗浄装置で採用するストックエリアにおいては、縦姿勢維持手段によって複数の育苗部材が、縦姿勢であって隣接する育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態で保持される。
そのため、限られた床面積に多数の育苗部材をためおくことができる。
またストックエリア内の育苗部材は、送り出し手段によって育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出される。育苗部材は、ストックエリア内を姿勢変更することなく移動するので、場所をとらない。
ストックエリアから送り出された育苗部材は、横送り手段によって縦姿勢を維持した状態で側方側に移動して洗浄エリアに送られて洗浄される。
【0011】
上記した態様において、待機エリアを有し、待機エリアはストックエリアに隣接し、ストックエリアから送り出された育苗部材を縦姿勢を維持したままで受け入れる領域であり、前記横送り手段は、待機エリアの育苗部材を縦姿勢を維持した状態で側方側に移動して洗浄エリアに導入することが望ましい。
【0012】
本態様では、ストックエリアから送り出された育苗部材は、受け入れる領域(待機エリア)に送られ、横送り手段によって縦姿勢を維持した状態で側方側に移動して洗浄エリアに送られて洗浄される。
【0013】
上記した態様において、育苗部材を倒す倒し手段を有し、洗浄エリアを通過した縦姿勢の育苗部材を倒し手段で倒して平置き姿勢にすることが可能であることが望ましい。
【0014】
本態様によると、洗浄を終えた育苗部材を平置き姿勢にすることができる。
【0015】
上記した各態様において、前記縦姿勢維持手段は下支持部と倒れ防止手段を有し、前記下支持部は育苗部材の一辺を保持し、倒れ防止手段は前記下支持部よりも上部にあって、育苗部材の表裏の少なくともいずれか一方の少なくとも一部を保持するものであり、送り出し手段は、前記下支持部と前記倒れ防止手段を同期的に移動させるものであることが望ましい。
【0016】
本態様によると、育苗部材を立てた姿勢にしたまま、移動させることができる。
【0017】
上記した各態様において、縦姿勢維持手段及び送り出し手段は、下部側ベルト機構と上部側ベルト機構によって構成され、下部側ベルト機構は動力によって走行する下部側ベルトを有し、当該下部側ベルトは少なくとも一部の走行経路においてベルトの外周面が上方に向き、下部側ベルトには複数の下部側桟部材が取り付けられていて下部側ベルトの走行にともなって下部側桟部材が移動し、上部側ベルト機構は、動力によって走行する上部側ベルトを有し、当該上部側ベルトは少なくとも一部の走行経路においてベルトの外周面が側方に向き、上部側ベルトには複数の上部側桟部材が取り付けられていて上部側ベルトの走行にともなって上部側桟部材が移動し、育苗部材を縦姿勢とした際に下辺に相当する辺が下部側ベルトのベルト上であって下部側桟部材同士の間に保持され、
育苗部材の上部側が上部側ベルトの上部側桟部材同士の間で保持されることが望ましい。
【0018】
本態様によると、育苗部材を立てた姿勢にしたまま、移動させることができる。
【0019】
上記した各態様において、洗浄エリアには、育苗部材の表面又は裏面の少なくともいずれかに面する内壁があり、当該内壁の表面に流体が流されることが望ましい。
【0020】
本態様によると、洗浄エリア内で育苗部材が止まってしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の育苗部材洗浄装置は、専有する床面積が小さく、場所をとらない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の育苗部材洗浄装置の斜視図である。
【
図2】
図1の育苗部材洗浄装置の縦姿勢維持手段、送り出し手段、及び横送り手段の斜視図である。
【
図3】
図1の育苗部材洗浄装置をA方向から観察した斜視図である。
【
図4】
図1の育苗部材洗浄装置の洗浄エリア内の構造を示す斜視図である。
【
図5】(a)は、
図1の育苗部材洗浄装置の洗浄エリアに設置された前面側洗浄ノズルの斜視図であり、(b)(c)は前面側洗浄ノズルが首振り動作を行う様子を示す斜視図である。
【
図6】
図1の育苗部材洗浄装置のストックエリア及び待機エリアを側面側から観察した説明図であり、(a)はストックエリアに栽培トレイが配置された状態を示し、(b)はストックエリアから待機エリアに栽培トレイが排出された状態を示す。
【
図7】
図1の育苗部材洗浄装置の動作を説明する栽培トレイと育苗部材洗浄装置の斜視図であり、ストックエリアに栽培トレイが載置された状態を示す。
【
図8】
図7の状態に続く栽培トレイと育苗部材洗浄装置の斜視図であり、栽培トレイがストックエリアを前進する状態を示す。
【
図9】
図8の状態に続く栽培トレイと育苗部材洗浄装置の斜視図であり、栽培トレイがストックエリアから待機エリアに送りだされた状態を示す。
【
図10】
図9の状態に続く栽培トレイと育苗部材洗浄装置の斜視図であり、栽培トレイが横送り手段によって洗浄エリアに導入される状態を示す。
【
図11】
図10の状態に続く栽培トレイと育苗部材洗浄装置の斜視図であり、栽培トレイが洗浄エリアの洗浄ノズルを通過した状態を示す。
【
図12】
図11の状態に続く栽培トレイと育苗部材洗浄装置の斜視図であり、栽培トレイが洗浄エリアを出た状態を示す。
【
図13】
図12の状態に続く栽培トレイと育苗部材洗浄装置の斜視図であり、栽培トレイが洗浄エリアを出て、倒しバーによって倒され、落下した状態を示す。
【
図15】
図14の植物栽培装置で使用する栽培トレイ及び苗保持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
図1に示す育苗部材洗浄装置1は、栽培トレイ(育苗部材)100及び苗保持部材(育苗部材)101を洗浄する装置である。栽培トレイ100及び苗保持部材101については後記する。
【0024】
育苗部材洗浄装置1は、ストックエリア2と待機エリア3と洗浄エリア5、落下準備エリア7を有している。また待機エリア3と洗浄エリア5の各底部に跨がる位置に横送り手段6がある。
ストックエリア2は、フレーム10に下部側ベルト機構11と上部側ベルト機構12が設けられたものである。
フレーム10は、
図1の示す様に4本の脚部13によって中空状に支持された略四角形のテーブル部15と、テーブル部15の一辺から垂直上方に立設された支持部材16を有している。フレーム10の脚部13にはキャスター17が取り付けられている。
【0025】
下部側ベルト機構11は、栽培トレイ100の下部を支持する下支持部と、栽培トレイ100を育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す送り出し手段として機能するものであり、テーブル部15に設けられている。
下部側ベルト機構11は、駆動ローラ20と従動ローラ21の間に歯付きベルト(以下 下側歯付きベルト)25、26が懸架されたものである。
駆動ローラ20は、モータ内蔵ローラであり、ローラ本体内に図示しないモータと減速機が内蔵され、ローラ本体に内蔵されたモータによって回転するものである。
従動ローラ21は空転ローラである。
駆動ローラ20及び従動ローラ21には、それぞれ2個づつ歯付きプーリ(図示せず)が装着されている。駆動ローラ20及び従動ローラ21に設けられた2個の歯付きプーリは各ローラの両端近傍に取り付けられている。
【0026】
下側歯付きベルト25、26は、特殊ベルトであり、環状の歯付きベルト本体28に桟部材(以下 下部側桟部材)27が複数設けられたものである。
歯付きベルト本体28は、公知の歯付きベルトであり、外周面に歯が設けられ、内周面は平滑である。
下部側桟部材27は、小型の板状である。下部側桟部材27は、歯付きベルト本体28の外周面にあり、下側歯付きベルト25、26の走行方向に一定間隔を開けて平行に並べられている。下部側桟部材27は、歯付きベルト本体28の外周面から垂直に立設しており、高さの低い壁状を呈している。
一方の下側歯付きベルト25に設けられた複数の下部側桟部材27の内、一つの下部側桟部材27Aには、ドグ30が取り付けられている。
【0027】
駆動ローラ20と従動ローラ21は、一定の間隔を開けてテーブル部15に取り付けられており、前記した様に駆動ローラ20と従動ローラ21の間に下側歯付きベルト25、26が懸架されている。
図1の様に、下側歯付きベルト25は、駆動ローラ20と従動ローラ21の一端側に懸架されており、下側歯付きベルト26は、駆動ローラ20と従動ローラ21の他端側に懸架されているから、2条の下側歯付きベルト25、26は、相当の間隔を開けて平行に配列されている。
【0028】
下部側ベルト機構11は、一種のベルトコンベヤであり、下側歯付きベルト25、26は、駆動ローラ20のモータに通電することによって走行する。駆動ローラ20と従動ローラ21の軸線は水平方向に向いている。下部側ベルト機構11の行き側走行経路は、懸架経路の上側であり、下側が戻り側となる。行き側走行経路は、テーブル部15の図面手前側から奥側に向かって移動する経路である。行き側走行経路は、下側歯付きベルト25、26の外周面が上方に向き、走行にともなって下部側桟部材27が移動する。
【0029】
一方、上部側ベルト機構12は、倒れ防止手段と、栽培トレイ100を育苗部材を縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す送り出し手段として機能するものであり、フレーム10の支持部材16に設けられている。上部側ベルト機構12についても駆動ローラ31と従動ローラ32の間に歯付きベルト(以下 上側歯付きベルト)33が懸架されたものである。
上部側ベルト機構12自体の構造は、懸架された上側歯付きベルト33が1条である点を除いて、概ね前記した下部側ベルト機構11と同じである。
即ち駆動ローラ31は、モータ内蔵ローラであり、従動ローラ32は空転ローラである。
駆動ローラ31及び従動ローラ32には、それぞれ1個づつ歯付きプーリ(図示せず)が装着されている。
【0030】
上側歯付きベルト33は、特殊ベルトであり、環状の歯付きベルト本体35に桟部材(以下 上部側桟部材)37が複数設けられたものである。
上部側桟部材37は、小型の板状である。上部側桟部材37は、歯付きベルト本体35の外周面にあり、上側歯付きベルト33の走行方向に一定間隔を開けて平行に並べられている。上部側桟部材37は、歯付きベルト本体35の外周面から垂直に立設しており、高さの低い壁状を呈している。一つの上部側桟部材37Aには、ドグ38が取り付けられている。
【0031】
駆動ローラ31と従動ローラ32は、一定の間隔を開けて支持部材16に取り付けられており、前記した様に駆動ローラ31と従動ローラ32の間に上側歯付きベルト33が懸架されている。
駆動ローラ31と従動ローラ32の軸線は天地方向に向いている。上側歯付きベルト33の外周面は側方に向いている。
上側歯付きベルト33の高さは、テーブル部15よりも相当に高い。
上部側ベルト機構12は、駆動ローラ31のモータに通電することによって走行する。上部側ベルト機構12の行き側走行経路は、テーブル部15側に向いた面であり、テーブル部15の図面手前側から奥側に向かって移動する経路である。
【0032】
テーブル部15及び支持部材16には、原点調整用のリミットスイッチ40、41が設けられている。
下側歯付きベルト25が一定の走行位置にあるときに、ドグ30が、テーブル部15に設けられたリミットスイッチ40と接触する。
同様に上側歯付きベルト33が一定の走行位置にあるときに、ドグ38が、支持部材16に設けられたリミットスイッチ41と接触する。
【0033】
待機エリア3は、テーブル部15の一端側にある細長い領域である。待機エリア3は、溝状部43と、ガイドバー45によって構成されている。
溝状部43は、水平姿勢であり、下部側ベルト機構11の搬送方向に対して垂直方向にのびている。
溝状部43の底部は、下部側ベルト機構11の走行面よりもやや低い位置にある。
ガイドバー45は、溝状部43よりも上部であって溝状部43に対して平行にのびている。
待機エリア3には、栽培トレイ100等の育苗部材の有無を検知する育苗部材検知センサー46が設けられている。育苗部材検知センサー46は光電センサーである。
【0034】
洗浄エリア5は、架台53によって所定の高さに支持され、溝状部43と連続する位置にある。架台53にはキャスター55が設けられている。
洗浄エリア5は、表面壁50、裏面壁51、天面壁52で覆われた領域であり、左右の側面は開放されている。ただし、水が飛び散らない様にカーテン状の部材(図示せず)が取り付けられている。
【0035】
洗浄エリア5の内部は
図3、
図4の様に空洞であり、細長い通過経路56がある。
洗浄エリア5の入り口部分には、一対のノズル列(洗浄水噴射手段)60、61がある。より詳細には、前方側ノズル列60と、後方側ノズル列61がある。
前方側ノズル列60は、共通配管たるマニホールド管62に噴射ノズル63が複数個、取り付けられたものである。
【0036】
前方側マニホールド管62は、図示しない軸受けによって垂直姿勢に保持されている。前方側マニホールド管62は、軸受けで支持されているので、揺動可能である。
前方側マニホールド管62の頂部には、円盤状部材65が取り付けられている。またマニホールド管62の近傍にはギャードモータ66があり、ギャードモータ66の出力軸に取り付けられた円盤67との間がリンク73で結合されている。ギャードモータ66側の円盤67の径は、マニホールド管62側の円盤状部材65の径よりも小さい。
前方側マニホールド管62の円盤状部材65とギャードモータ66側の円盤67は、いずれも揺動機構の一つのリンクとして機能する。そのためギャードモータ66が回転すると、
図5の様にマニホールド管62が揺動する。
【0037】
後方側ノズル列61についても共通配管たる後方側マニホールド管68に噴射ノズル77が複数個、取り付けられたものである。後方側ノズル列61は固定はされていて揺動しない。
前方側ノズル列60を構成する前方側マニホールド管62には、図示しない高温高圧洗浄機が接続されており、前方側ノズル列60からは高温水が噴射される。
後方側ノズル列61を構成する後方側マニホールド管68は、水道管が接続されており、常温水が噴射される。
洗浄エリア5には、栽培トレイ100等の育苗部材の有無を検知する育苗部材検知センサー47が設けられている。育苗部材検知センサー47は光電センサーである。
【0038】
洗浄エリア5の内壁85の上部には
図4の様に複数のノズル81が設けられており、内壁85の表面に水(流体)を流すことができる。
【0039】
横送り手段6は、幅の狭い横送りベルト78を使用したベルトコンベヤである。横送り手段6には、桟部材80が設けられている。横送り手段6は、待機エリア3から洗浄エリア5に跨がる位置に配置されている。
即ち横送り手段6は、待機エリア3の溝状部43から洗浄エリア5の下部に至る位置に配置されており、洗浄エリア5内においては洗浄エリア5の底を構成している。
横送り手段6の長さは、待機エリア3の端部から洗浄エリア5の入り口部分を通過し、洗浄エリア5の出口に至っている。
【0040】
落下準備エリア7は、洗浄エリア5の出口側に隣接した位置にある。落下準備エリア7の底には走行路71がある。また落下準備エリア7の上部には、倒しバー(倒し手段)72がある。倒しバー72は、水平方向に設置された棒であるが、先端側が
図1の様に図面手前側に向かって傾斜している。
【0041】
本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、
図1の様に構成機器が「L」字状のレイアウトに配置されている。
即ち待機エリア3、洗浄エリア5及び落下準備エリア7が一列に繋がって奥側装置75を構成している。育苗部材洗浄装置1は、奥側装置75に対してストックエリア2が直角に接続されている。
そのため奥側装置75とストックエリア2に囲まれた領域があり、当該領域が作業者の作業空間76となる。
【0042】
次に育苗部材洗浄装置1で洗浄する栽培トレイ(育苗部材)100及び苗保持部材(育苗部材)101について説明する。
栽培トレイ(育苗部材)100及び苗保持部材(育苗部材)101は、例えば
図14に示す様な植物栽培装置200で使用されるものである。植物栽培装置200は、照明装置(図示せず)が設置された筒状のドーム201を有し、当該ドーム201の中にトレイ設置台202と、搬送装置203と給排水設備205が設けられている。
植物栽培装置200では、栽培トレイ100をトレイ設置台202上に載せ、搬送装置203によって直線方向に移動する。
また栽培トレイ100には苗保持部材101が装着され、当該苗保持部材101に苗が固定される。
【0043】
図15に示す様に栽培トレイ100は、平面視が長方形であり、深さの浅い容器である。栽培トレイ100は樹脂で作られており、底部にオーバーフロー管102が設けられている。また栽培トレイ100には、流路形成壁103によって迷路状の流路が形成されている。
苗保持部材101は、複数の開口105を有する樹脂板である。
植物栽培装置200は、給排水設備205によって栽培トレイ100に培養液が供給される。余剰の培養液は、オーバーフロー管102から排出される。
【0044】
次に育苗部材洗浄装置1の動作について説明する。
栽培トレイ100を縦姿勢の状態でストックし、移動させて洗浄するものである。以下の説明でストックエリア2から奥側装置75に向かう方向を前後方向と称し、待機エリア3、洗浄エリア5及び落下準備エリア7が並んだラインに沿った方向を横(左右)方向と称する。
作業者は、作業空間76に立ち、使用済みの栽培トレイ100等をストックエリア2に設置する。
栽培トレイ100は、ストックエリア2に縦姿勢で前後方向に並べられる。本実施形態では、栽培トレイ100の裏面側(
図15のA面側)を奥側装置75側に向けて並べられる。
栽培トレイ100は、平面視が四角形であり、その一辺をストックエリア2の下部側ベルト機構11の下側歯付きベルト25、26に載せる。
下側歯付きベルト25、26には、下部側桟部材27が設けられており、栽培トレイ100を縦姿勢とした際に下辺に相当する辺が下部側桟部材27で区切られた隙間に置かれる。
【0045】
また栽培トレイ100の縦辺に相当する辺は、上部側ベルト機構12の上側歯付きベルト33の近傍にあり、上側歯付きベルト33に設けられた上部側桟部材37で保持されている。即ち栽培トレイ100の一面の一部が、下部側桟部材27と接し、栽培トレイ100の一面の一部が上部側桟部材37にもたれかかる様に保持される。
本実施形態では、栽培トレイ100は、
図6(a)の様に、上部側が待機エリア3側に傾斜する姿勢にしてストックエリア2に縦姿勢で並べられる。
ストックエリア2にセットされた複数の栽培トレイ100は、栽培トレイ100の表裏面の投影面が重なる状態となって前後に保持される。
【0046】
以下の動作は、
図7乃至
図13を参照しつつ行うが、説明を容易にするために、各図には栽培トレイ100を一基だけ図示している。実際には、育苗部材洗浄装置1に複数の栽培トレイ100が搭載される。
図6(a)の様に、ストックエリア2に栽培トレイ100がセットされ、この状態で図示しない起動スイッチをONすると、ストックエリア2の下部側ベルト機構11と、上部側ベルト機構12が起動し、下側歯付きベルト25、26と上側歯付きベルト33が同じ速度で走行する。
即ち走行面が待機エリア3側に向かって同期的に走行する。
【0047】
その結果、ストックエリア2に準備された栽培トレイ100が
図7、
図8の様に待機エリア3側に向かって移動する。移動中、各栽培トレイ100は縦姿勢を維持し、
図6(a)、
図7の様に表(B面)裏(A面)に面する方向に前進する。
そして先頭の栽培トレイ100aが下部側ベルト機構11の端部に至り、
図6(b)、
図9の様に下部側ベルト機構11から更に先に押し出される。
栽培トレイ100aは、
図6(b)、
図9の様に、押し出される際にも縦姿勢を保ち、縦姿勢のままの状態で、待機エリア3に至る。そして栽培トレイ100aの下辺部が待機エリア3の溝状部43に入り込む。
図6(b)、
図9の様に、栽培トレイ100aの一面(A面)側は、ガイドバー45と接する。そのため栽培トレイ100aは、下辺が溝状部43で保持され、裏面(A面)がガイドバー45にもたれ掛かる状態となって縦姿勢を維持する。
【0048】
次に、待機エリア3に栽培トレイ100aが存在し、洗浄エリア5に他の栽培トレイ100aが無いことが、育苗部材検知センサー46、47によって確認される。
即ち待機エリア3に設けられた育苗部材検知センサー46が栽培トレイ100aを検知し、栽培トレイ100aが待機エリア3に存在することが確認される。また洗浄エリア5の育苗部材検知センサー47が他の栽培トレイ100を検知せず、洗浄エリア5に栽培トレイ100が存在しないことが確認される。
【0049】
この二つの条件が充足されると、横送り手段6が自動的に起動する。
横送り手段6は、幅の狭いベルトコンベヤであり、待機エリア3から洗浄エリア5に跨がる位置に配置されているので、
図10の様に栽培トレイ100は、縦姿勢を維持したままの状態で、洗浄エリア5に引き入れられる。
これと前後して、洗浄エリア5の内部に設けられた一対のノズル列60、61から水又は高温水が噴射される。
即ち前方側ノズル列60は、図示しない高温高圧洗浄機に接続されており、高温水が噴射される。
後方側ノズル列61からは常温の水が噴射される。
また複数のノズル81から洗浄エリア5の内壁85に水が流される。
【0050】
本実施形態では、栽培トレイ100は縦姿勢で洗浄エリア5を通過する。洗浄エリア5を通過する際に、栽培トレイ100は一対のノズル列60、61の間を通り、噴射される高温水等によって洗浄される。
本実施形態では、栽培トレイ100の裏面側(
図15のA面側)を奥側装置75側に向けて並べられていたから、栽培トレイ100の裏面側(平面側
図15のA面側)が後方側ノズル列61と面することとなる。
また栽培トレイ100の表面側(凹面側
図15のB面側)が前方側ノズル列60に面することとなる。
【0051】
前方側ノズル列60からは高温水が噴射され、栽培トレイ100の凹面側を洗浄する。また、洗浄に際して
図5の様にマニホールド管62が揺動し、高温水の噴射角度が変化する。
本実施形態で例示する栽培トレイ100は、凹面側の底に流路形成壁103があり、凹凸形状となっているが、栽培トレイ100の底に対して噴射される高温水は、目まぐるしく噴射角度が変化するので、流路形成壁103の側面や角の部分にも高温水が行き渡る。そのため流路形成壁103についてもきれいに洗浄される。
栽培トレイ100の裏面側(A面側)には一定角度で常温水が噴射されるが、栽培トレイ100の裏面側は平坦面であるから、実用上、問題なく洗浄される。なお後方側ノズル列61から高温水を噴射させてもよい。また後方側ノズル列61を揺動させてもよい。
【0052】
栽培トレイ100は前方側ノズル列60及び後方側ノズル列61から水が噴射され、傾き姿勢が変化する。また前方側ノズル列60が揺動するので栽培トレイ100は不規則に姿勢変化することとなる。そのため栽培トレイ100の角や辺、面が洗浄エリア5の内壁85と擦れる。特に栽培トレイ100の裏面側は平坦面であるから、洗浄エリア5の内壁に押しつけられて貼り付いた状態となってしまい、栽培トレイ100を横送りすることができなくなってしまう懸念がある。
【0053】
本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、この問題を内壁85に水を流すことによって解消している。
即ち本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、栽培トレイ100が洗浄エリア5を通過する間、ノズル81によって洗浄エリア5の内壁85に水が流される。そのため栽培トレイ100と洗浄エリア5の内壁85の間に動きのある流体膜が形成され、洗浄エリア5の内壁に栽培トレイ100が貼りついてしまうことが防止される。
【0054】
洗浄エリア5を通過した栽培トレイ100は、
図12の様に縦姿勢を保った状態で落下準備エリア7に押し出される。
栽培トレイ100は、落下準備エリア7の底の走行路71に沿って移動する。ここで落下準備エリア7には、倒しバー72が設けられている。倒しバー72は、水平方向に設置された棒であるが、先端側が
図12の様に図面手前側に向かって傾斜している。そのため落下準備エリア7を横方向に向かって移動する内に、倒しバー72によって背面側(A面)が押され、
図13の様に栽培トレイ100は、前向きに倒れて床面に落下する。
栽培トレイ100は、略同じ位置に平置き状に落下するので、当該部位に台車等を設置しておけば、台車上に栽培トレイ100が積み重ねられることとなる。
【0055】
以上、理解を容易にするために、一基の栽培トレイ100に注目して一連の動作を説明したが、実際には、連続的に栽培トレイ100が洗浄エリア5に導入され、連続的に洗浄される。本実施形態の育苗部材洗浄装置1によると、自動制御により栽培トレイ100の洗浄を連続で運転(自動搬送)することができる。
即ち、
図6(a)の様に複数の栽培トレイ100がストックエリア2にセットされる。前方(後段)の待機エリア3が空き状態になれば、ストックエリア2の下部側ベルト機構11と、上部側ベルト機構12が起動し、全ての栽培トレイ100を前進させる。先頭の栽培トレイ100が待機エリア3に導入されればストックエリア2の下部側ベルト機構11は一旦停止する。
【0056】
待機エリア3内の栽培トレイ100が横方向に移動して洗浄エリア5に導入され、待機エリア3が空になれば、再度ストックエリア2の下部側ベルト機構11等が起動し、新たな栽培トレイ100が待機エリア3に導入される。
待機エリア3に導入された栽培トレイ100は、洗浄エリア5が空きになりしだい、次々と洗浄エリア5に導入されて洗浄される。
【0057】
本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、下部側ベルト機構11と上部側ベルト機構12によって縦姿勢維持手段及び送り出し手段が構成されている。本実施形態では、下部側ベルト機構11と上部側ベルト機構12がそれぞれ独立した動力源で駆動される。そのため下側歯付きベルト25、26と、上側歯付きベルト33の原点を合わせる必要がある。
本実施形態では、下側歯付きベルト25と、上側歯付きベルト33にドグ30、38が設けられている。また下側歯付きベルト25と、上側歯付きベルト33の近傍にリミットスイッチ40、41が設けられている。
【0058】
本実施形態では、図示しない原点調整スイッチを操作すると、下部側ベルト機構11と上部側ベルト機構12がそれぞれ別個に動作し、ベルトが走行する。そして各ベルト25、33のドグ30、38がリミットスイッチ40、41に触れると、各ベルト25、33が停止する。
以後、この停止位置を原点として、下部側ベルト機構11と上部側ベルト機構12が同期的に駆動する。
下部側ベルト機構11と上部側ベルト機構12を一つの動力源によって動作させることもでき、この構成を採用する場合には、原点調整を行う手段は必ずしも必要ではない。
【0059】
本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、高圧洗浄装置やボイラー等から分離独立した装置である。そのため設置場所を選ばず、高圧洗浄装置等からホースを繋ぐことができる場所があればどこにでも設置して洗浄作業を行うことができる。例えば高圧洗浄装置を屋外に設置し、育苗部材洗浄装置1を屋内に設置することもできる。
【0060】
本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、育苗部材を自動的に洗浄し、洗浄を終えた育苗部材を積み重ねることができる。
また本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、比較的狭い場所にも設置することができる。
【0061】
本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、キャスター17、55が設けられているので容易に移動させることができる。キャスター17、55は、必須ではなく省略してもよい。
【0062】
以上説明した実施形態では、栽培トレイ100を育苗部材洗浄装置1にかけて洗浄する例を説明したが、苗保持部材101を洗浄する用途にも育苗部材洗浄装置1を使用することができる。大型の水槽に苗保持部材を浮かべる構造で採用する苗保持部材を育苗部材洗浄装置1で洗浄してもよい。
さらに固定式の植物栽培装置の育苗部材を洗浄する用途にも使用することができる。
【0063】
以上説明した実施形態では、前方側ノズル列60をリンク機構を利用して揺動させている。前方側ノズル列60を揺動させる手段は任意であり、例えばステッビングモータを利用したり、シリンダ等を利用することもできる。
また前方側ノズル列60の揺動角度や揺動速度を選択できる様にすることも推奨される。例えば、栽培トレイ100を洗浄する場合と、苗保持部材101を洗浄する場合で揺動角度や揺動速度を変えることも推奨される。栽培トレイ100の大きさや深さに応じて揺動角度や揺動速度を変えることも推奨される。
栽培トレイ100等の汚れの程度に応じて揺動角度や揺動速度を変えることも推奨される。同様に横送り手段6の速度についても変更できることが望ましい。
【0064】
本実施形態では、洗浄エリア5及び落下準備エリア7が一列に繋がって奥側装置75を構成している。即ち洗浄エリア5及び落下準備エリア7がユニット化されていて一つのブロックを構成している。同様にストックエリア2もユニット化されていて一つのブロックを構成している。
大きさの異なる奥側装置75やストックエリア2を用意し、洗浄対象の大きさや形状に応じて組み合わせを変更する使用方法も考えられる。
またストックエリア2を複数、一列に繋げて使用してもよい。
【0065】
上記した実施形態では待機エリア3を設け、ストックエリア2の栽培トレイ100を一旦、待機エリア3に落とし込んだが、ストックエリア2の末端に栽培トレイ100を停止し、プッシャー等で栽培トレイ100を横方向に押し出して洗浄エリア5に導入してもよい。
【0066】
以上説明した実施形態では、前方側ノズル列60及び後方側ノズル列61は、いずれも一本のマニホールド管62、68によって構成されていてノズル63、77が線状に分布しているが、ノズル63、77をより平面的に配置してもよい。例えば複数のマニホールド管62、68を有していてもよい。
ノズル63、77が揺動するだけでなく、移動してもよい。
洗浄エリア5の側面側からだけでなく、天面壁52側や下部側等から洗浄水等を噴射させてもよい。
【0067】
以上説明した実施形態では、洗浄エリア5の表面側の内壁と、裏面側の内壁の双方に水を流したが、一方だけでもよい。また空気を流してエアーカーテンを作ったり、洗浄エリア5の内壁が圧縮空気を噴射して洗浄エリア5等の貼り付きを防いでもよい。
洗浄エリア5の内壁に凹凸を設けて、洗浄エリア5等の貼り付きを防いでもよい。
【0068】
安全対策として、モータ内蔵ローラやギャードモータの電流に上限を設け、モータに上限を超える電流が流れると、直ちにモータを停止する回路を採用することが望ましい。
即ち本実施形態の育苗部材洗浄装置1は、複数のモータ内蔵ローラやギャードモータを使用しているが、いずれも想定される負荷は小さく、且つ負荷の変動要因も少ない。
モータに上限を超える電流が流れる要因としては、作業者の手指が挟まれた場合が想定される。モータに上限を超える電流が流れると、直ちにモータを停止する回路を採用れば、仮に手指が挟まれても、装置が停止し、大事故には至らない。
【符号の説明】
【0069】
1 育苗部材洗浄装置
2 ストックエリア
3 待機エリア
5 洗浄エリア
6 横送り手段
7 落下準備エリア
11 下部側ベルト機構
12 上部側ベルト機構
25、26 下側歯付きベルト
27 下部側桟部材
37 上部側桟部材
60 前方側ノズル列
61 後方側ノズル列
100 栽培トレイ(育苗部材)
101 苗保持部材(育苗部材)