(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】卵の処理装置
(51)【国際特許分類】
B65B 23/06 20060101AFI20220907BHJP
G01N 33/08 20060101ALI20220907BHJP
B65B 35/56 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
B65B23/06
G01N33/08
B65B35/56
(21)【出願番号】P 2018196605
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】元村 忠行
(72)【発明者】
【氏名】大橋 豊昭
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-090684(JP,A)
【文献】特開昭48-032093(JP,A)
【文献】特開2001-206309(JP,A)
【文献】特表2018-507828(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108248923(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B19/00-23/22
B65B35/00-35/58
G01N33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵の長軸を横向きにした状態で搬送する搬送部と、
前記搬送部に載せられた卵の向きを特定する方向特定部と、
卵を前記搬送部の進行方向の右側に傾けて落下させる第1の放出部と、
卵を前記搬送部の進行方向の左側に傾けて落下させる第2の放出部と、
前記方向特定部で特定された卵の向きに基づいて、第1の放出部または第2の放出部のいずれを作動させるかを選択する制御部とを備える、卵の処理装置。
【請求項2】
前記第1の放出部および第2の放出部は、卵に接触して卵の一方の端部を持ち上げる可動板を備える請求項1記載の卵の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵の処理装置に関するものである。特に、卵の長軸がほぼ水平な横向きの状態から、卵の長軸がほぼ鉛直な縦向きの状態へと卵の姿勢を変更する卵の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
卵には鋭端と鈍端があり、卵の選別装置において、コンベヤ上で卵が搬送される過程で卵の向きを揃えるための装置が知られている。例えば、特許文献1の
図24に開示された卵の処理装置は、卵を自転させながら搬送方向および長軸方向に移動させて、卵の向きを揃えるものである。他には、特許文献1の
図6に開示された卵の処理装置のように、水平方向に回転可能なトレイを用いて、トレイに卵を個別に載せた状態で所望の向きにトレイを回転させるものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者は、搬送方向および長軸方向の両方に適当な距離が必要となり、比較的大きな空間を占有してしまう。後者は、特殊なトレイの機構が必要となり、卵の大量処理にもあまり向かない。
【0005】
本発明は、今までとは異なる方法で、卵の方向を確実に揃えることができる卵の処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の卵の処理装置は、搬送部と、方向特定部と、第1の放出部と、第2の放出部と、制御部とを備える。搬送部は、卵の長軸を横向きにした状態で搬送する。方向特定部は、搬送部に載せられた卵の向きを特定する。第1の放出部は、卵を搬送部の進行方向の右側に傾けて落下させる。第2の放出部は、卵を搬送部の進行方向の左側に傾けて落下させる。制御部は、方向特定部で特定された卵の向きに基づいて、第1の放出部または第2の放出部のいずれを作動させるかを選択する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、卵の方向を確実に揃えることができる卵の処理装置を提供できる。
【0008】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態にかかる卵の処理装置の平面図である。
【
図2】同実施形態にかかる卵の処理装置を搬送部の上流側から観察した側面図である。
【
図3】同実施形態にかかる卵の処理装置を搬送部の上流側から観察した側面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態にかかる卵の処理装置の平面図である。
【
図5】同実施形態にかかる卵の処理装置を搬送部の上流側から観察した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第一実施形態について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0011】
本実施形態の卵の処理装置10は、卵Eを卵パックPなどの容器に詰める際に用いられるものであり、本発明を卵の選別装置の一部に適用した場合について説明する。卵の処理装置10は、搬送部1と、方向特定部2と、第1の放出部3と、第2の放出部4と、制御部5とを備える。
【0012】
搬送部1は、
図1~
図3に示すように、卵Eの長軸E1を横向きにした状態で搬送する。搬送部1は、1列に並んだ複数のキャリア11で構成される。各キャリア11は、卵Eを進行方向Dに押す傾斜面12を備える。卵Eは、傾斜面12と、この傾斜面12に対向する面13との間で横向きのまま進行方向Dに沿って運ばれる。各キャリア11は、卵Eの中央部分を下から支持し、卵Eの鋭端と鈍端が左右にはみ出すような幅寸法を備える。搬送部1には、複数の分配放出場所14が設定されている。搬送部1で搬送される卵Eは、サイズ情報などに基づいて、各分配放出場所14に放出される。本実施形態では、同じサイズに対して、2つの分配放出場所14が設定されている。
【0013】
方向特定部2は、
図1~
図3に示すように、搬送部1に載せられた卵Eの向きを特定する。卵Eの端部に存在する気室E2を上にした状態で縦向きに収容したいという要望があり、そのために、方向特定部2は、卵Eの気室E2を検出する。卵Eの気室E2を検出する方法は、この分野で知られた種々の方法を適用できる。方向特定部2は、分配放出場所14よりも上流側に設けられている。方向特定部2は、搬送部1に設けられている。
【0014】
第1の放出部3は、
図1および
図2に示すように、卵Eを搬送部1の進行方向Dの右側に傾けて落下させる。第1の放出部3は、卵Eに接触して卵Eの一方の端部を持ち上げる可動板(以下、「シャッター31」と記す。)を備える。第1の放出部3は、シャッター31と、シャッター31が設けられたロータリーソレノイド32を複数組備える。卵Eを放出する際には、ロータリーソレノイド32の作動によりシャッター31が卵Eの気室E2がある側の端部を持ち上げ、搬送部1を挟んで第1の放出部3の反対側に落下させる。卵Eを落下させた先には、蓋P1を開けた状態の卵パックPが待機している。第1の放出部3は、搬送部1の進行方向Dの左側に配置されており、卵パックPは搬送部1の進行方向Dの右側に配置されている。
【0015】
第2の放出部4は、
図1および
図3に示すように、卵Eを搬送部1の進行方向Dの左側に傾けて落下させる。第2の放出部4は、卵Eに接触して卵Eの一方の端部を持ち上げる可動板(シャッター41)を備える。第2の放出部4は、シャッター41と、シャッター41が設けられたロータリーソレノイド42を複数組備える。卵Eを放出する際には、ロータリーソレノイド42の作動によりシャッター41が卵Eの気室E2がある側の端部を持ち上げ、搬送部1を挟んで第2の放出部4の反対側に落下させる。卵Eを落下させた先には、蓋P1を開けた状態の卵パックPが待機している。第2の放出部4は、搬送部1の進行方向Dの右側に配置されており、卵パックPは搬送部1の進行方向Dの左側に配置されている。
【0016】
制御部5は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェースなどを有したマイクロコンピュータシステムである。そして、内部メモリに格納されたプログラムにしたがって、CPUやその他の周辺機器が協働することによって、制御部5としての機能が発揮される。制御部5は、方向特定部2で特定された卵Eの向きに基づいて、第1の放出部3または第2の放出部4のいずれを作動させるかを選択する。制御部5は、方向特定部2において、搬送部1の進行方向Dの左側に気室E2が検出され、その位置に気室E2があることが特定されると、第1の放出部3を作動させる。一方、制御部5は、方向特定部2において、搬送部1の進行方向Dの左側に気室E2が検出され、その位置に気室E2があることが特定されると、第2の放出部4を作動させる。なお、第1の放出部3のうちどのシャッター31が作動するか、第2の放出部4のうちどのシャッター41が作動するかについては、この分野で知られた方法で実施できる。
【0017】
以上に説明したように、本実施形態の卵の処理装置10は、搬送部1と、方向特定部2と、第1の放出部3と、第2の放出部4と、制御部5とを備える。搬送部1は、卵Eの長軸E1を横向きにした状態で搬送する。方向特定部2は、搬送部1に載せられた卵Eの向きを特定する。第1の放出部3は、卵Eを搬送部1の進行方向Dの右側に傾けて落下させる。第2の放出部4は、卵Eを搬送部1の進行方向Dの左側に傾けて落下させる。制御部5は、方向特定部2で特定された卵Eの向きに基づいて、第1の放出部3または第2の放出部4のいずれを作動させるかを選択する。このようなものであるため、向きがランダムに運ばれてきた卵Eを、卵Eの気室E2を上側にした状態で落下させることができる。
【0018】
第1の放出部3および第2の放出部4は、それぞれ卵Eに接触して卵Eの一方の端部を持ち上げるシャッター31、41を備える。そのため、搬送部1に特別な部品を用いることなく、搬送部1の進行方向Dの両側に卵Eを振り分けることができる。
【0019】
次に、本発明の第二実施形態について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0020】
本実施形態の卵の処理装置10は、種卵Eとして使用される卵EをセッタートレイT1などの容器に詰める際に用いられるものであり、本発明を卵の選別装置の一部に適用した場合について説明する。卵の処理装置10は、搬送部1と、方向特定部2と、第1の放出部3と、第2の放出部4と、制御部5とを備える。本実施形態では、第一実施形態と同一(またはこれに準ずる)の部分は同じ符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0021】
第1の放出部3は、
図4および
図5に示すように、卵Eを搬送部1の進行方向Dの右側に傾けて落下させる。卵Eを落下させた先には、セッタートレイT1に入れる前に一時保管しておくための仮容器T2が待機している。仮容器T2は、各分配放出場所14に固定されている。仮容器T2の下方には、セッタートレイT1が待機している。仮容器T2に所定個数の卵Eが収容された段階で、吸着部を備えた移載装置(図示しない)などにより卵Eを仮容器T2からセッタートレイT1に移載する。第1の放出部3は、搬送部1の進行方向Dの左側に配置されており、仮容器T2およびセッタートレイT1は搬送部1の進行方向Dの右側に配置されている。
【0022】
第2の放出部4は、
図4に示すように、卵Eを搬送部1の進行方向Dの左側に傾けて落下させる。卵Eを落下させた先には、セッタートレイT1に入れる前に一時保管しておくための仮容器T2が待機している。仮容器T2は、各分配放出場所14に固定されている。仮容器T2の下方には、セッタートレイT1が待機している。仮容器T2に所定個数の卵Eが収容された段階で、吸着部を備えた移載装置(図示しない)などにより卵Eを仮容器T2からセッタートレイT1に移載する。第2の放出部4は、搬送部1の進行方向Dの右側に配置されており、仮容器T2およびセッタートレイT1は搬送部1の進行方向Dの左側に配置されている。
【0023】
本実施形態の卵の処理装置10を用いれば、向きがランダムに運ばれてきた卵Eを、卵Eの気室E2を上側にした状態で落下させることができ、孵化率の向上に寄与できる。
【0024】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0025】
卵の処理装置10は、卵Eのサイズが計測された後に分配放出場所14が決められる卵の選別装置(いわゆるグレーダー)に適用する場合の他に、卵Eのサイズを計測しないいわゆるファームパッカーに適用してもよい。
【0026】
方向特定部2は、搬送部1に卵Eが乗り移る前の他の搬送部に設けられていてもよい。方向特定部2は、卵Eの気室E2を検査するものの他に、卵Eの外形状を観察するものであってもよい。方向特定部2は、卵Eの向きを特定するための専用の装置でなくてもよく、他の汚卵/異常卵/ひび卵などの検査で得られた画像などを利用するものであってもよい。
【0027】
第1の放出部3または第2の放出部4は、一つの搬送部1に対して複数設けられてもよい。第1の放出部3または第2の放出部4は、卵Eを傾けて落下させるものであればどのようなものであってもよく、例えば、搬送部1のキャリア11を傾けるものであってもよい。
【0028】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、卵の長軸がほぼ水平な横向きの状態から、卵の長軸がほぼ鉛直な縦向きの状態へと卵の姿勢を変更する卵の処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…卵の処理装置
1…搬送部
2…方向特定部
3…第1の放出部
4…第2の放出部
5…制御部
D…進行方向
E…卵