(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】プロペラ、モータ部品及びこれを備えた飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 11/06 20060101AFI20220907BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20220907BHJP
B64C 27/10 20060101ALI20220907BHJP
B64C 11/08 20060101ALI20220907BHJP
B64D 25/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B64C11/06
B64C27/08
B64C27/10
B64C11/08
B64D25/00
(21)【出願番号】P 2019229034
(22)【出願日】2019-12-19
(62)【分割の表示】P 2018120220の分割
【原出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0002014(US,A1)
【文献】特表2002-531313(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084261(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 11/06
B64C 27/08
B64C 27/10
B64C 11/08
B64D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1翅の固定ピッチブレードと、少なくとも1翅の可変ピッチブレードを同一のモータ
に対して備えるモータ部品と、当該モータ部品を支持するフレームと、を備える飛行体であって、
前記飛行体に備えられる複数のモータ部品の全ては同じ構成である、
飛行体。
【請求項2】
請求項1に記載の
飛行体であって、
前記モータ部品は、前記固定ピッチブレードの数と、前記可変ピッチブレードの数とが同一である、
飛行体。
【請求項3】
請求項1に記載の
飛行体であって、
前記モータ部品は、前記固定ピッチブレードの数と、前記可変ピッチブレードの数とが異なる、
飛行体。
【請求項4】
請求項3に記載の
飛行体であって、
前記モータ部品は、前記固定ピッチブレードの数が、前記可変ピッチブレードの数よりも多い、
飛行体。
【請求項5】
請求項3に記載の
飛行体であって、
前記モータ部品は、前記固定ピッチブレードの数が、前記可変ピッチブレードの数よりも少ない、
飛行体。
【請求項6】
請求項
1乃至請求項5のいずれかに記載の飛行体であって、
さらに前記モータ部品を制御するための制御部を備え、
前記制御部は、前記可変ピッチブレードの異常を知らせる異常信号を受信すると、揚力を補うために前記モータ部品の回転数を制御する、
飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラ、モータ部品及びこれを備えた飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に利用されるドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの回転翼機(以下、単に「回転翼機」と総称する)を利用した様々なサービスが提供されている。かかる回転翼機のプロペラは、機構の簡素化、低価格化のため、固定ピッチプロペラが採用されている機種が多い。
【0003】
一方、特許文献1には、複数のスラスタのいずれかに異常が生じても他のスラスタを停止することなく安定した飛行の継続が図られる飛行装置を提供する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の飛行装置は、ピッチ変更機構部によってプロペラのピッチが変更される。特に、飛行装置が有する姿勢制御部は、複数のスラスタのうちスラスタで異常が検出されると、正常なスラスタを停止することなく、プロペラのピッチを変更する。これにより、常なスラスタで飛行の継続に必要な推進力を確保しつつ、トルクの不均衡にともなう姿勢の変化が低減されるものである。
【0006】
しかしながら、可変ピッチプロペラはその機構が複雑であることから固定ピッチプロペラよりも故障率が多く飛行効率が悪い。
【0007】
そこで、本発明は、飛行効率を向上し得るプロペラ及びそれを用いた飛行体を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、飛行効率を向上し得るプロペラ及びそれを用いた飛行体を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飛行効率を向上し得る回転翼機を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】本発明によるプロペラの更に他の上面図である。
【
図4】本発明によるプロペラの更に他の上面図である。
【
図5】
図1のプロペラを備えた回転翼機の側面図である。
【
図7】本発明による回転翼機の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態によるプロペラ、モータ部品及びこれを備えた飛行体は、以下のような構成を備える。
[項目1]
少なくとも1翅の固定ピッチブレードと、少なくとも1翅の可変ピッチブレードを備えるプロペラ。
[項目2]
項目1に記載のプロペラであって、
前記固定ピッチブレードの数と、前記可変ピッチブレードの数とが同一である、
プロペラ。
[項目3]
項目1に記載のプロペラであって、
前記固定ピッチブレードの数と、前記可変ピッチブレードの数とが異なる、
プロペラ。
[項目4]
項目3に記載のプロペラであって、
前記固定ピッチブレードの数が、前記可変ピッチブレードの数よりも多い、
プロペラ。
[項目5]
項目3に記載のプロペラであって、
前記固定ピッチブレードの数が、前記可変ピッチブレードの数よりも少ない、
プロペラ。
[項目6]
項目1乃至項目5のいずれかに記載のプロペラと、当該プロペラを回転させるためのモータとを備えるモータ部品。
[項目7]
項目6に記載のモータ部品と、当該モータ部品を支持するフレームと、当該モータ部品を制御するための制御部を備える飛行体。
[項目8]
項目7に飛行体であって、
前記制御部は、前記可変ピッチブレードの以上を知らせる異常信号を受信すると、揚力を補うために前記モータの部品の回転数を制御する、
飛行体。
【0012】
<本発明による実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態によるプロペラ、モータ部品及びこれを備えた飛行体について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
<本発明による実施の形態の詳細>
図2に示されるように、本発明の実施の形態によるプロペラ2は、少なくとも1翅の固定ピッチブレード20と、少なくとも1翅の可変ピッチブレード30を備えている。
【0014】
プロペラ2は、モータ10からの出力を受けて回転する。プロペラ2が回転することによって、回転翼機200(
図5及び
図6参照)を出発地から離陸させ、水平移動させ、目的地に着陸させるための推進力が発生する。なお、プロペラ2は、右方向への回転、停止及び左方向への回転が可能である。
【0015】
図2乃至
図5に示されるように、本発明のプロペラ2が備えるブレードは、2以上の任意の数(例えば、2、3、4、またはそれ以上のブレード)でよい。羽根の形状は、平らな形状、曲がった形状、よじれた形状、テーパ形状、またはそれらの組み合わせ等の任意の形状が可能である。
【0016】
なお、羽根の形状は変化可能である(例えば、伸縮、折りたたみ、折り曲げ等)。羽根は対称的(同一の上部及び下部表面を有する)または非対称的(異なる形状の上部及び下部表面を有する)であってもよい。
【0017】
ブレードはエアホイル、ウイング、または羽根が空中を移動される時に動的空気力(例えば、揚力、推力)を生成するために好適な幾何学形状に形成可能である。羽根の幾何学形状は、揚力及び推力を増加させ、抗力を削減する等の、羽根の動的空気特性を最適化するために適宜選択可能である。
【0018】
モータ10は、プロペラ2の回転を生じさせるものであり、例えば、駆動ユニットは、電気モータ又はエンジン等を含むことが可能である。ブレードは、モータによって駆動可能であり、時計方向に及び/または反時計方向に、モータの回転軸12(例えば、モータの長軸)の周りに回転する。
【0019】
ブレードは、すべて同一方向に回転可能であるし、独立して回転することも可能である。羽根のいくつかは一方の方向に回転し、他の羽根は他方方向に回転する。羽根は、同一回転数ですべて回転することも可能であり、夫々異なる回転数で回転することも可能である。回転数は移動体の寸法(例えば、大きさ、重さ)や制御状態(速さ、移動方向等)に基づいて自動又は手動により定めることができる。
【0020】
回転翼機200の飛行時において、固定ピッチブレードのみを備えていた場合、上昇気流発生時の垂直下降などの際、姿勢を保つための最低限のプロペラ回転数を下回り、回転翼機の姿勢が乱れる、あるいは落下することがある。特許文献1では、これに対応するため、回転翼機の飛行に可変ピッチブレードを用いている。可変ピッチブレードを用いる際、固定ピッチプロペラと比較して構造が複雑であることから、故障率は高くなり、飛行効率は悪化する。
【0021】
しかしながら、本実施のプロペラ形態においては、固定ピッチブレード20と可変ピッチブレード30を両方備えることにより、飛行効率を向上し得る。
【0022】
プロペラ2が備えるブレードにおいて、固定ピッチブレード20と、可変ピッチブレード30の数は、同一でもよい。なぜなら、固定ピッチブレード20と、可変ピッチブレード30の大きさや重量が大きく異なる場合でも、モータ部品1全体のバランスをとることが容易となる効果がある。モータ部品1全体のバランスをとることは、モータ部品1を備える飛行体が不都合なく飛行するために重要であり、また、飛行時の振動を防ぎ、飛行体の運用において好適な効果を得ることが可能である。
【0023】
プロペラ2が備えるブレードにおいて、固定ピッチブレード20と、可変ピッチブレード30の数は、異なっていてもよい。固定ピッチブレード20の数が、前記可変ピッチブレード30の数よりも多い場合、飛行効率のよい固定ピッチブレードにより回転翼機200の飛行時における燃費が向上するとともに、可変ピッチブレードによりトルクの不均衡にともなう姿勢の変化が低減される。
【0024】
また、固定ピッチブレード20の数が、前記可変ピッチブレードの数30よりも少ない場合、従来可変ピッチブレードのみを備えたプロペラでなければ対応できなかった乱流、上昇気流などを想定した運用を可能にし、かつ、ピッチ制御モータ32や制御34などの可変ピッチ機構に障害が発生した際の信頼性を確保する。
【0025】
以上説明したように、プロペラ2は、少なくとも1翅の固定ピッチブレード20と、少なくとも1翅の可変ピッチブレード30を備えていればよい。固定ピッチブレード20と可変ピッチブレード30との数、割合、個々のブレードの大きさ、配置については、所望とする用途や目的に応じて適宜最適なものを採用することができる。
【0026】
なお、推力の調整は、同一のモータを使いつつプロペラのダイヤを変えること、同一のプロペラを使用しつつ低出力のモータと高出力のモータとを区別して用いることとしてもよい。また、プロペラのピッチを変更することとしてもよいし、ブレードの枚数を変更する等が例示できる。
【0027】
上述した回転翼機は、
図7に示される機能ブロックを有している。なお、
図10の機能ブロックは最低限の参考構成である。フライトコントローラは、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。処理ユニットは、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。メモリは、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0028】
処理ユニットは、回転翼機の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する回転翼機の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために回転翼機の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0029】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部は、センサ類で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0030】
本実施の形態によるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0031】
本発明の回転翼機は、宅配業務専用の回転翼機としての利用、及び倉庫、工場内における産業用の回転翼機としての利用が期待できる。また、本発明の回転翼機は、マルチコプター・ドローン等の飛行機関連産業において利用することができ、さらに、本発明は、カメラ等を搭載した空撮用の回転翼機としても好適に使用することができる他、セキュリティ分野、農業、インフラ監視等の様々な産業にも利用することができる。
【0032】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 モータ部品
2 プロペラ
10 モータ
12 軸
20 固定ピッチブレード
30 可変ピッチブレード
32 ピッチ制御モータ
34 制御ロッド
100 本体部
120 アーム
200 回転翼機