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特許7137241絶縁膜形成用の樹脂組成物、絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法、ドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】絶縁膜形成用の樹脂組成物、絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法、ドライフィルム、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220907BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220907BHJP
   C08G 59/16 20060101ALI20220907BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20220907BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220907BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 515
C08G59/16
H01L21/312 D
H05K3/28 C
H05K3/28 F
H05K1/03 610L
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020524427
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2019041443
(87)【国際公開番号】W WO2020090565
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2018203557
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 壯一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124561(JP,A)
【文献】特開2014-235376(JP,A)
【文献】特表2016-513268(JP,A)
【文献】特開2018-045030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂(A)、ベントナイト(E)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)を含有する絶縁膜形成用の樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂(A)は、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)の一部のエポキシ基にモノカルボン酸(b1)を、別の一部のエポキシ基に多価カルボン酸(b2)をそれぞれ付加反応させたカルボキシル基含有樹脂(A1-1)を含み、
前記第一の溶剤(F1)の20℃における水1Lに対する溶解度は1g以上であり、前記第二の溶剤(F2)の20℃における水1Lに対する溶解度は1g未満であり、
前記樹脂組成物全量に対する前記第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量は、15質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の溶剤(F1)と前記第二の溶剤(F2)との合計量に対する前記第二の溶剤(F2)の量は、15質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の溶剤(F1)と前記第二の溶剤(F2)との合計量に対する前記ベントナイト(E)の量は、1.5質量%以上12質量%以下である、
絶縁膜形成用の樹脂組成物。
【請求項2】
前記モノカルボン酸(b1)は、アクリル酸を含む、
請求項1に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物。
【請求項3】
前記多価カルボン酸(b2)は、テトラヒドロフタル酸を含む、
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有樹脂(A1-1)のエポキシ当量は、8000g/eq.以上である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物。
【請求項5】
前記第一の溶剤(F1)は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物。
【請求項6】
前記第二の溶剤(F2)は、芳香族系炭化水素を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物。
【請求項7】
前記絶縁膜形成用の樹脂組成物全量に対する前記ベントナイト(E)の量は、0.5質量%以上5質量%以下である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物。
【請求項8】
絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂組成物は、硬化性樹脂(A)、ベントナイト(E)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)を含有し、
前記第一の溶剤(F1)の20℃における水1Lに対する溶解度は1g以上であり、前記第二の溶剤(F2)の20℃における水1Lに対する溶解度は1g未満であり、
前記樹脂組成物全量に対する前記第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量は、15質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の溶剤(F1)と前記第二の溶剤(F2)との合計量に対する前記第二の溶剤(F2)の量は、15質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の溶剤(F1)と前記第二の溶剤(F2)との合計量に対する前記ベントナイト(E)の量は、1.5質量%以上12質量%以下であり、
前記製造方法は、
前記第一の溶剤(F1)と、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)と、モノカルボン酸(b1)とを含有する溶液中で、前記ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)と前記モノカルボン酸(b1)とを反応させて中間体を合成し、
前記溶液に多価カルボン酸(b2)を加えて前記中間体と前記多価カルボン酸(b2)とを反応させ、
前記中間体と前記多価カルボン酸(b2)との反応途中に、前記溶液に前記第二の溶剤(F2)を加えることで、前記硬化性樹脂(A)に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A1-1)を製造することを含む、
絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物の乾燥物である、
ドライフィルム。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物の硬化物を含む絶縁膜を備える、
プリント配線板。
【請求項11】
前記絶縁膜が、層間絶縁層又はソルダーレジスト層である、
請求項10に記載のプリント配線板。
【請求項12】
導体配線と、この導体配線に重なる絶縁膜とを備えるプリント配線板の製造方法であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用の樹脂組成物から前記絶縁膜を作製することを含む、
プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜形成用の樹脂組成物、この絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法、ドライフィルム、プリント配線板、及びこのプリント配線板の製造方法に関する。詳しくは、プリント配線板における絶縁膜を形成するために使用される樹脂組成物、この樹脂組成物から形成されるドライフィルム、及びこの樹脂組成物の製造方法、並びにこの樹脂組成物から形成された絶縁膜を備えるプリント配線板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板におけるソルダーレジスト層を形成するため、種々の感光性樹脂組成物が使用されている。ソルダーレジスト層は、感光性樹脂組成物の塗膜に紫外線(以下、UVともいう)等を照射して硬化させることによって形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、プリント配線板等における硬化膜を形成するための感光性樹脂組成物として、カルボキシル基含有樹脂、光重合開始剤、染料、反応性希釈剤、熱硬化性成分を含んでなる光硬化性熱硬化性樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、基材上に塗布してから、硬化させ、プリント配線板等における硬化膜として使用される。また、組成物から作製される未硬化の塗膜にチクソ性を付与するために、チクソ剤を配合することも開示されている。
【0004】
チクソ剤は、例えば組成物から形成される塗膜の膜厚を均一化したり、塗膜のタレを抑制したりするために、必要に応じて使用される。
【0005】
しかし、チクソ剤は、組成物の粘度上昇を招きやすく、そのため組成物の成膜性が悪化したり、組成物から作製される塗膜の膜厚の均一性をむしろ低下させたりすることがある。また、チクソ剤が絶縁膜の絶縁信頼性を低下させることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-53215号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、チクソ剤による粘度上昇が生じにくく、かつ絶縁膜の絶縁信頼性を低下させにくい樹脂組成物、この樹脂組成物の乾燥物であるドライフィルム、及び絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、上記の絶縁膜形成用の樹脂組成物から形成される層間絶縁層を備えるプリント配線板、及び上記の樹脂組成物から形成されるソルダーレジスト層を備えるプリント配線板、並びにこれらのプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の一実施形態に係る絶縁膜形成用の樹脂組成物は、硬化性樹脂(A)、ベントナイト(E)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)を含有する絶縁膜形成用の樹脂組成物である。前記第一の溶剤(F1)の20℃における水1Lに対する溶解度は、1g以上である。前記第二の溶剤(F2)の20℃における水1Lに対する溶解度は、1g未満である。前記樹脂組成物全量に対する前記第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量は、15質量%以上50質量%以下である。前記第一の溶剤(F1)と前記第二の溶剤(F2)との合計量に対する前記第二の溶剤(F2)の量は、15質量%以上50質量%以下である。
【0010】
本発明の一実施形態に係る絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法は、前記第一の溶剤(F1)と、前記ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)と、前記モノカルボン酸(b1)とを含有する溶液中で、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)と前記モノカルボン酸(b1)とを反応させて中間体を合成する。前記溶液に前記多価カルボン酸(b2)を加えて前記中間体と前記多価カルボン酸(b2)とを反応させる。前記中間体と前記多価カルボン酸(b2)との反応途中に、前記溶液に前記第二の溶剤(F2)を加えることで、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)を製造することを含む。
【0011】
本発明の一実施形態に係るドライフィルムは、前記絶縁膜形成用の樹脂組成物の乾燥物である。
【0012】
本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、前記絶縁膜形成用の樹脂組成物の硬化物を含む絶縁膜を備える。
【0013】
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、導体配線と、この導体配線に重なる絶縁膜とを備えるプリント配線板の製造方法であり、前記絶縁膜形成用の樹脂組成物から前記絶縁膜を作製することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aから図1Eは、本発明の一実施形態に係るプリント配線板を製造する工程の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」とのうち少なくとも一方を意味する。例えば(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとのうち少なくとも一方である。また、本実施形態において、「層」には、フィルム及びシート等の、膜状に形成された皮膜、及び塗膜といった膜も含まれる。
【0016】
本実施形態に係る絶縁膜形成用の樹脂組成物は、硬化性樹脂(A)、ベントナイト(E)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)を含有する。第一の溶剤(F1)の20℃における水1Lに対する溶解度は、1g以上である。第二の溶剤(F2)の20℃における水1Lに対する溶解度は、1g未満である。絶縁膜形成用の樹脂組成物全量に対する第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量は、15質量%以上50質量%以下である。第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対する溶剤(F2)の量は、15質量%以上50質量%以下である。
【0017】
ベントナイト(E)はチクソ剤である。樹脂組成物がベントナイト(E)を含有することで、樹脂組成物から作製される未硬化の塗膜のチクソ性を高めることができる。それにより、塗膜にタレを生じにくくできる。また、ベントナイト(E)は、塗膜を硬化させて得られる絶縁膜の絶縁信頼性を低下させにくく、むしろ絶縁信頼性を高めることができる。さらに、樹脂組成物が第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)とを上記の比率で含有することで、ベントナイト(E)を含有することに伴う樹脂組成物の粘度上昇が起こりにくくなり、さらに、塗膜の膜厚を均一化させやすくできる。
【0018】
したがって、本実施形態によれば、チクソ剤による樹脂組成物の粘度上昇が生じにくく、かつ樹脂組成物から作製される絶縁膜の絶縁信頼性を低下させにくい。
【0019】
上記の作用が生じる理由は明らかになっていないが、以下のことが考えられる。
【0020】
ベントナイト(E)による粘度上昇は、ベントナイト(E)と溶剤との相互作用に起因すると考えられる。ベントナイト(E)は層状の結晶構造を有し、この結晶構造の層間に溶剤が取り込まれやすいため、ベントナイト(E)と溶剤との間で大きな相互作用を生じやすく、そのための粘度上昇が引き起こされると考えられる。しかし、本実施形態の絶縁膜形成用の樹脂組成物では、樹脂組成物全体の合計量に対する第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量を15質量%以上50質量%以下とし、更に第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対する第二の溶剤(F2)の量を15質量%以上50質量%以下とすることで、溶剤とベントナイト(E)との相互作用が粘度上昇を引き起こしにくいように調整されるものと考えられる。すなわち、ベントナイト(E)と溶剤との相互作用は、組成物中の溶剤の量及び溶剤の親水性の程度に影響を受け、この溶剤の量及び溶剤の親水性の程度が上記のように調整されることで、相互作用による粘度上昇が生じにくくなると考えられる。
【0021】
また、ベントナイト(E)は、その結晶構造の層間に陽イオンを取り込みやすいため、絶縁膜中で陽イオンを取り込むことでマイグレーションを起こりにくくし、これにより絶縁膜の絶縁信頼性を高めることができる、と考えられる。
【0022】
以下、本実施形態において、絶縁膜形成用の樹脂組成物(以下、樹脂組成物(P)ともいう)に含まれる各成分について、詳しく説明する。
【0023】
1.硬化性樹脂(A)
硬化性樹脂(A)は、例えば光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂成分を含む。
【0024】
熱硬化性樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケイ素樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、及びこれら樹脂を変性させた樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。なお、熱硬化性樹脂については、後述の『1-3.熱硬化性樹脂(C)』にて詳細に説明する。
【0025】
光硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性不飽和結合を有するモノマー及びプレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0026】
硬化性樹脂(A)は、光硬化性樹脂を含むことが好ましい。この場合、硬化性樹脂(A)は、樹脂組成物(P)に紫外線及び電子線等の活性エネルギー線に対する感光性を付与することができる。
【0027】
光硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を含有することが好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、樹脂組成物(P)にアルカリ溶液による現像性を付与できる。このため、樹脂組成物(P)を用い、フォトリソグラフィ法により、適宜のパターンを有する絶縁膜を作製できる。
【0028】
1-1.カルボキシル基含有樹脂(A1)
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、分子内に少なくとも一つのカルボキシル基を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、樹脂組成物(P)にアルカリ現像性を付与することができる。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、例えばエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを備える樹脂であれば特に制限されない。
【0029】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、例えばエポキシ化合物における少なくとも一部のエポキシ基に、カルボキシル基を備えるエチレン性不飽和化合物が反応し、更に多価カルボン酸及びその無水物から選択される少なくとも一種からなる群から選択される化合物が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂ともいう)を含有できる。
【0030】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、カルボキシル基を備える化合物を含むエチレン性不飽和化合物の重合体に、エポキシ基を備えるエチレン性不飽和化合物が反応することで得られる樹脂(以下、第二の樹脂ともいう)を含有してもよい。
【0031】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エポキシ化合物における一部のエポキシ基にモノカルボン酸が、別の一部のエポキシ基に多価カルボン酸から選択される少なくとも一種からなる群から選択される化合物が、それぞれ反応することで得られる樹脂(以下、第三の樹脂ともいう)を含有してもよい。
【0032】
第三の樹脂は、その構造中に、二級の水酸基と、構造中の側鎖の末端にあるカルボキシル基と、を備える。このことが、カルボキシル基含有樹脂(A1)がアルカリ性溶液を現像液として用いられた場合に、優れた現像性を発揮し得ることの理由であると推察される。また、モノカルボン酸がエチレン性不飽和基を有する場合、第三の樹脂は、その構造中の側鎖の末端にあるエチレン性不飽和基と、構造中の側鎖の末端にあるカルボキシル基とを有する。このことが、カルボキシル基が高い反応性を有することができることの理由であると推察される。そのため、樹脂組成物(P)から作製される層間絶縁層、及びソルダーレジスト層は、高い電気絶縁信頼性を有することができる。
【0033】
樹脂組成物(P)の固形分量に対するカルボキシル基含有樹脂(A1)の割合は、例えば20質量%以上60重量%以下の範囲内であり、好ましくは25質量%以上55重量%以下の範囲内である。
【0034】
次に、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)について説明する。
【0035】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、上記の第三の樹脂のうち、特にノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)の一部のエポキシ基にモノカルボン酸(b1)が、別の一部のエポキシ基に多価カルボン酸(b2)が、それぞれ付加反応した構造を有する、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)を、含有することが好ましい。すなわち、硬化性樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)を含有することが好ましい。この場合、ベントナイト(E)は、樹脂組成物(P)の未硬化の塗膜のチクソ性を更に高めることができる。これは、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)が、エポキシ基とモノカルボン酸(b1)との反応で生じた二級の水酸基と、多価カルボン酸(b2)に由来するカルボキシル基とを有し、このエポキシ基、水酸基及びカルボキシル基がベントナイト(E)と相互作用するためであると考えられる。これにより、樹脂組成物(P)から形成される塗膜の膜厚安定性をより向上させることができる。さらに、この樹脂組成物(P)の硬化物から形成される絶縁層は、より優れた絶縁信頼性を有することができる。
【0036】
カルボキシル基含有樹脂(A1-1)のエポキシ当量は、6000g/eq.以上であることが好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)をゲル化させにくく、このことは樹脂組成物(P)のアルカリ現像性を低下させにくくすることに寄与できる。カルボキシル基含有樹脂(A1-1)のエポキシ当量は、8000g/eq.以上であることがより好ましい。この場合、樹脂組成物(P)の粘度の過度の増粘がより生じにくくすることができ、かつ樹脂組成物(P)から形成される塗膜のチクソ性を良好に維持することができる。さらに、樹脂組成物(P)の硬化物を含む絶縁膜の絶縁信頼性をより低下させにくくすることに寄与できる。これは、エポキシ当量が8000g/eq.以上であれば、エポキシ樹脂(a1)におけるエポキシ基の大部分が、二級の水酸基とカルボキシル基とを有する側鎖に変換されることで、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)と、ベントナイト(E)及び水溶性の溶剤(F1)との相互作用が大きくなるためであると考えられる。カルボキシル基含有樹脂(A1-1)のエポキシ当量は、8500g/eq.以上であれば更に好ましく、9000g/eq.以上であれば特に好ましい。また、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)のエポキシ当量の上限は、特に制限はないが、例えば100000g/eq.である。
【0037】
続いて、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の原料、及びカルボキシル基含有樹脂(A1-1)の合成時の反応条件について詳しく説明する。
【0038】
ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)は、例えば下記式(1)に示す構造を有する。式(1)中のXは二価の炭化水素基であり、Rは水素又はアルキル基である。エポキシ樹脂(a1)は、例えば下記のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(a11)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(a12)、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(a13)の少なくとも一つを含有する。
【0039】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(a11)は、例えば式(1)中のR及びXがそれぞれメチル基及びメチレン基である構造を有する。
【0040】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(a12)は、例えば式(1)中のR及びXがそれぞれ水素及びメチレン基である構造を有する。
【0041】
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(a13)は、例えば式(1)中のR及びXがそれぞれ水素及びビフェニル基である構造を有していてもよく、R及びXがそれぞれ水素及びビフェニル基とその両端にそれぞれ接続された二つのメチレン基からなる構造を有していてもよい。
【0042】
【化1】
【0043】
エポキシ樹脂(a1)は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(a11)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(a12)、及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a13)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することがより好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(a11)を含有することが更に好ましい。なお、エポキシ樹脂(a1)は、上記式(1)に示す構造を有する樹脂に限定されず、例えば、シクロペンタジエン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、及びナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0044】
モノカルボン酸(b1)は、エチレン性不飽和結合を有することが好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、モノカルボン酸(b1)に由来するエチレン性不飽和結合を有することで、光硬化性を有することができる。モノカルボン酸(b1)に含まれる成分の例は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物、及びエチレン性不飽和基を複数有する化合物を含む。エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-プロペノイックアシッド,3-(2-カルボキシエトキシ)-3-オキシプロピルエステル、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレートを含む。エチレン性不飽和基を複数有する化合物の例は、ヒドロキシル基を有する多官能のアクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物、及びヒドロキシル基を有する多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含む。より具体的には、エチレン性不飽和基を複数有する化合物の例は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートを含む。モノカルボン酸(b1)は、これらの成分のうち1種又は2種以上を含有できる。特にモノカルボン酸(b1)は、アクリル酸、及びメタクリル酸からなる群から選択される一種以上の成分を含むことが好ましい。この場合、樹脂組成物(P)から形成される湿潤塗膜のベタ付きが充分に抑制され、かつ層間絶縁層及びソルダーレジスト層等の絶縁層の耐メッキ性、はんだ耐熱性、及び絶縁信頼性を向上させうる。
【0045】
多価カルボン酸(b2)に含まれる成分の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びテトラヒドロフタル酸等を含む。多価カルボン酸(b2)は、これらの成分のうち1種又は2種以上を含有できる。特に多価カルボン酸(b2)は、マロン酸、グルタル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸、及びフタル酸からなる群から選択される一種以上の成分を含むことが好ましく、テトラヒドロフタル酸を含むことがより好ましい。この場合、樹脂組成物(P)から形成される層間絶縁層及びソルダーレジスト層等の吸水性が低減することで、絶縁層の耐メッキ性、及び絶縁信頼性を向上させうる。
【0046】
カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、上記で説明したようにノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)と、モノカルボン酸(b1)及び多価カルボン酸(b2)との反応物である。このカルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、エポキシ樹脂(a1)の複数あるエポキシ基のうちの一部のエポキシ基にモノカルボン酸(b1)が付加し、複数あるエポキシ基のうちの別の一部のエポキシ基に多価カルボン酸(b2)が付加した構造を有する。
【0047】
カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、例えば以下の方法によって製造されうる。
【0048】
まず、エポキシ樹脂(a1)にモノカルボン酸(b1)を反応させる。これにより、下記式(2)に示すように、エポキシ樹脂(a1)の複数のエポキシ基のうち、一部のエポキシ基にモノカルボン酸(b1)が付加して、中間体(以下、第一の中間体という)が生成する。このため、第一の中間体は、下記式(3)に示す構造と、未反応のエポキシ基と、を有する。第一の中間体が下記式(3)に示す構造を有するため、第一の中間体は、側鎖に2級の水酸基を有する。下記式(2)の付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0049】
【化2】
【0050】
【化3】
【0051】
上記式(2)、(3)中のXは不飽和カルボン酸残基を示す。また、式(2)、(3)中、Rは水素又はアルキル基である。
【0052】
次に、第一の中間体と多価カルボン酸(b2)とを反応させる。これにより、下記式(4)に示すように、第一の中間体が有する未反応のエポキシ基に、多価カルボン酸(b2)が付加して、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)が生成する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、下記式(5)に示す構造を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、側鎖に2級の水酸基を有するとともに、側鎖の末端にカルボキシル基を有する。
【0053】
【化4】
【0054】
【化5】
【0055】
式(4)、(5)中のYは多価カルボン酸残基を示す。また、式(4)、(5)中のRは水素又はアルキル基である。
【0056】
なお、第一の中間体と多価カルボン酸(b2)との反応時には、多価カルボン酸(b2)は、中間体の有する二級の水酸基ではなく、中間体の有する未反応のエポキシ基と優先的に反応する。そのため、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、式(3)に示す構造と式(5)に示す構造とを有する。
【0057】
カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、上記式(3)、及び上記式(5)に示す構造中の二級の水酸基と、上記式(5)に示す構造中の側鎖の末端にあるカルボキシル基と、を備える。このことが、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)がアルカリ性溶液を現像液として用いられた場合に、優れた現像性を発揮し得ることの理由であると推察される。また、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、上記式(3)に示す構造中の側鎖の末端にあるエチレン性不飽和基と、上記式(5)に示す構造中の側鎖の末端にあるカルボキシル基とを有する。このことが、カルボキシル基が高い反応性を有することができることの理由であると推察される。そのため、樹脂組成物(P)から作製される層間絶縁層及びソルダーレジスト層等の絶縁膜は、より高い電気絶縁信頼性を有することができる。
【0058】
カルボキシル基含有樹脂(A1-1)を合成するに当たり、エポキシ樹脂(a1)にモノカルボン酸(b1)と同時に多価カルボン酸(b2)を反応させてもよく、エポキシ樹脂(a1)に多価カルボン酸(b2)を反応させた後に、モノカルボン酸(b1)を反応させてもよい。
【0059】
カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の合成時に使用される触媒の例は、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、及びナフテン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸やオクトエン酸のリチウム、クロム、ジルコニウム、カリウム、ナトリウム等の有機酸の金属塩を含む。これらの触媒のうち一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0060】
カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の合成時に使用される重合禁止剤の例は、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、及びフェノチアジンを含む。これらの重合禁止剤のうち一種のみが使用されても二種以上が併用されてもよい。
【0061】
カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の合成時に使用される溶媒は、特に制限されず、後述の『4.溶剤』で説明する第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)を含んでもよい。例えば、合成時に第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)を使用する場合は、得られたカルボキシル基含有樹脂(A1-1)の樹脂溶液中の溶剤の含有量に応じて、本実施形態の樹脂組成物(P)の組成における条件を満たすように、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)の量を適宜調整すればよい。カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の合成時に使用される溶媒の具体的な例は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;及び石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤を含む。これらの有機溶剤のうち一種のみが使用されても、2種類以上が併用されてもよい。カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の合成時に使用される溶媒は、上記の芳香族炭化水素類、石油系溶剤、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0062】
エポキシ樹脂(a1-1)とモノカルボン酸(b1)とを反応させる際のエポキシ樹脂(a1-1)のエポキシ基1molに対するモノカルボン酸(b1)の量は、0.2mol以上0.8mol以下の範囲内であることが好ましく、0.3mol以上0.7mol以下の範囲内であることがより好ましい。また、第一の中間体と多価カルボン酸(b2)を反応させる際のエポキシ樹脂(a1-1)のエポキシ基1molに対する多価カルボン酸(b2)の量は、0.2mol以上0.8mol以下の範囲内であることが好ましく、0.3mol以上0.7mol以下の範囲内であることがより好ましい。すなわち、エポキシ樹脂(a1-1)のエポキシ基1molに対して、モノカルボン酸(b1)が0.2mol以上0.8mol以下の範囲内であり、多価カルボン酸(b2)が0.2mol以上0.8mol以下の範囲内であることが好ましい。また、エポキシ樹脂(a1-1)のエポキシ基1molに対して、モノカルボン酸(b1)が0.3mol以上0.7mol以下の範囲内であり、多価カルボン酸(b2)が0.3mol以上0.7mol以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、絶縁膜形成用の樹脂組成物のUV感度の向上と、アルカリ現像性の確保と、を容易に両立させることができる。
【0063】
カルボキシル基含有樹脂(A1)全体に対するカルボキシル基含有樹脂(A1-1)の割合は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上であり、特に好ましくは45質量%以上である。カルボキシル基含有樹脂(A1)全体に対するカルボキシル基含有樹脂(A1-1)の割合の上限は、特に限定されないが、例えば、92質量%以下であり、好ましくは84質量%以下である。
【0064】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量は4000以上30000以下であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、樹脂組成物(P)から形成される硬化物に絶縁信頼性及び耐メッキ性を付与できる。また、重量平均分子量が上記範囲内であると、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量測定結果から算出される。ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィでの分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
【0065】
GPC装置:昭和電工社製SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF-800P,KF-005,KF-003,KF-001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0066】
1-2.光重合性化合物(B)
樹脂組成物(P)は、光重合性化合物(B)を含有することも好ましい。光重合性化合物(B)は、樹脂組成物(P)に光硬化性を付与できる。なお、光重合性化合物(B)は、上述の通り、光硬化性樹脂に含まれる成分であり、硬化性樹脂(A)にも含まれる成分である。
【0067】
光重合性化合物(B)は、エチレン性不飽和二重結合を一分子中に少なくとも一つ有する化合物である。光重合性化合物(B)は、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0068】
光重合性化合物(B)は、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含有してもよい。この場合、樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上すると共に、樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート及びε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0069】
光重合性化合物(B)は、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有してもよい。この場合、樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2-メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP-1M、及びライトエステルP-2M)、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP-1A)、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR-260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド)との付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA-6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA-6127等)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0070】
光重合性化合物(B)は、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させた後にエチレン性不飽和基を付加することで得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。
【0071】
硬化性樹脂(A)が、カルボキシル基含有樹脂(A1)と光重合性化合物(B)と含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)に対する光重合性化合物(B)の割合は、好ましくは5質量%以上50質量%以下の範囲内であり、より好ましくは7質量%以上40質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは9質量%以上35質量%以下の範囲内である。
【0072】
1-3.熱硬化性樹脂(C)
樹脂組成物(P)は、熱硬化性樹脂(C)を含有することも好ましい。この場合、樹脂組成物(P)に熱硬化性を付与することができる。熱硬化性樹脂(C)は、エポキシ化合物(C1)を含有することが好ましい。なお、エポキシ化合物(C1)は、上述の通り、硬化性樹脂(A)にも含まれる成分である。特に樹脂組成物(P)が、上記のカルボキシル基含有樹脂(A1)と、エポキシ化合物(C1)とを含む場合には、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、加熱によりエポキシ化合物(C1)と反応しうる。
【0073】
エポキシ化合物(C1)も、樹脂組成物(P)に熱硬化性を付与できる。エポキシ化合物(C1)は、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有することが好ましく、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有することも好ましい。エポキシ化合物(C1)は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物であってもよい。エポキシ化合物(C1)の種類は特に限定されない。エポキシ化合物(C1)は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールA-ノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-865)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA-1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC-3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST-4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-4032、EPICLON HP-4700、EPICLON HP-4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP-7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X-E-201)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-80DE、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175-500、及びYL7175-1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR-960、EPICLON TER-601、EPICLON TSR-250-80BX、EPICLON 1650-75MPX、EPICLON EXA-4850、EPICLON EXA-4816、EPICLON EXA-4822、及びEPICLON EXA-9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-120TE)、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、及び前記以外のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0074】
本実施形態では、エポキシ化合物(C1)が結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、樹脂組成物(P)から形成される塗膜のアルカリ性水溶液による現像性を向上させることができ、樹脂組成物(P)をアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ水溶液で現像することができる。結晶性エポキシ樹脂の例には、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC-1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX-4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR-1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として式(7)に示す構造を有するエポキシ樹脂)が含まれる。
【0075】
樹脂組成物(P)がカルボキシル基含有樹脂(A1)とエポキシ化合物(C1)とを含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)に対するエポキシ化合物(C1)の割合は、好ましくは3質量%以上70質量%以下の範囲内であり、より好ましくは5質量%以上60質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは10質量%以上50質量%以下の範囲内である。また、エポキシ化合物(D1)が、結晶性エポキシ樹脂を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)に対する結晶性エポキシ樹脂の割合は、1質量%以上70質量%以下の範囲内であることが好ましく、3質量%以上60質量%以下の範囲内であることがより好ましく、5質量%以上50質量%以下の範囲内であることが更に好ましく、10質量%以上40質量以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0076】
熱硬化性樹脂(C)は、上記エポキシ化合物(C1)以外の熱硬化性の化合物を含有してもよい。熱硬化性樹脂(C)以外の熱硬化性の化合物は、例えばエポキシ化合物(C1)以外の熱硬化性のモノマー、プレポリマー等の化合物を含有してもよい。熱硬化性樹脂(C)は、例えばポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケイ素樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、オキセタン樹脂並びにこれらの樹脂の変性物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0077】
2.光重合開始剤(D)
硬化性樹脂(A)が感光性の成分、すなわち光硬化性樹脂を含有する場合には、樹脂組成物(P)は、光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。光重合開始剤(D)は、紫外線又は電子線が照射されることで、ラジカル、カチオン、あるいはアニオン等を生成し、重合反応のきっかけになる化合物である。光重合開始剤(D)は、紫外線が照射されることで、ラジカルを生成する化合物であることが好ましい。光重合開始剤(D)は、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4-ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等の窒素を含む開始剤;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類;2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のα-アミノアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-ホスフィネート等のモノアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;並びに、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。光重合開始剤(D)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有することが好ましい。この場合、絶縁膜形成用の樹脂組成物から形成されるソルダーレジスト層の絶縁信頼性を向上させることができるとともに、絶縁膜形成用の樹脂組成物のUV感度を向上させることができる。特に光重合開始剤(D)が、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することがより好ましい。この場合、絶縁膜形成用の樹脂組成物のUV感度を特に向上させることができる。
【0078】
カルボキシル基含有樹脂(A)に対する光重合開始剤(D)の割合は、好ましくは0.01~50質量%の範囲内であり、より好ましくは0.1~25質量%の範囲内であり、さらに好ましくは1~20質量%の範囲内である。
【0079】
3.ベントナイト(E)
本実施形態では、樹脂組成物(P)は、ベントナイト(E)を含有する。ベントナイト(E)は、上述の通り、層状の結晶構造を有する成分である。ベントナイト(E)の具体的な構造は、ケイ素に酸素イオンが配位して構成される四面体構造、アルミニウムイオンに酸素イオンが配位して構成される四面体構造、アルミニウム、マグネシウム、鉄イオン等に酸素、水酸イオン等が配位して構成される八面体構造等を備え、この四面体構造と八面体構造と四面体構造とが順に層状に重なっている。ベントナイト(E)は、例えば負に帯電した厚み約1nmのケイ酸塩シートと、正電荷を有するナトリウムイオン等の陽イオンとが、規則正しく層状に積み重なった結晶構造を有する。ベントナイト(E)は、例えばミクロンサイズの粒径を有する。本実施形態では、上記で説明したとおり、樹脂組成物(P)がベントナイト(E)を含有しても、ベントナイト(E)に起因する樹脂組成物(P)の粘度上昇が起こりにくい。
【0080】
ベントナイト(E)は、有機ベントナイト(E1)を含むことが好ましい。有機ベントナイト(E1)は、無機陽イオンだけでなく、第4級アンモニウムイオンなどの有機陽イオンを取り込むことも可能であり、かつ炭化水素などの有機溶媒と親和性を示す特徴を持つ。ベントナイト(E)が有機ベントナイト(E1)を含有すると、塗膜のチクソ性を特に向上しやすく、かつベントナイト(E)に起因する樹脂組成物(P)の粘度上昇が特に起こりにくい。また、樹脂組成物(P)から作製される絶縁膜の絶縁信頼性を特に高めることができる。
【0081】
有機ベントナイト(E1)の具体的な市販品の例は、レオックス社製の有機ベントナイト(ベントンシリーズ(ベントンSD-1、ベントンSD-2、ベントン27、ベントン34、ベントン38))、株式会社ホージュン製の有機ベントナイト(エスベンシリーズ(エスベン、エスベンC、エスベンE、エスベンW、エスベンWX)、オルガナイトシリーズ(オルガナイト、オルガナイトT)、エスベンNシリーズ(エスベンN-400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNTO、エスベンNZ、エスベンNZ70、エスベンNE、エスベンNEZ、エスベンNO12S、エスベンNO12))、白石工業株式会社製の有機ベントナイト(オルベンシリーズ(オルベンD、NewDオルベン))、クニミネ工業株式会社製の有機ベントナイト(クニビスシリーズ(クニビス-110、117)、モイストナイト-WO)である。
【0082】
樹脂組成物(P)の全量に対するベントナイト(E)の量は、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。この場合、塗膜のチクソ性を特に向上しやすく、かつベントナイト(E)に起因する樹脂組成物(P)の粘度上昇が特に起こりにくい。また、樹脂組成物(P)の硬化物から形成される絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させることができる。
【0083】
また、樹脂組成物(P)における第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対するベントナイト(E)の量は、1.5質量%以上12質量%以下であることが好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。この場合、塗膜のチクソ性を特に向上しやすく、かつベントナイト(E)に起因する樹脂組成物(P)の粘度上昇が特に起こりにくい。
【0084】
4.溶剤
本実施形態の樹脂組成物(P)は、上記のとおり、第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)とを含有する。上記のとおり、第一の溶剤(F1)の20℃における水1Lに対する溶解度は、1g以上であり、第二の溶剤(F2)の20℃における水1Lに対する溶解度は、1g未満である。
【0085】
第一の溶剤(F1)は、20℃における水1Lに対する溶解度が20g以上である溶剤を含むことが好ましい。この場合、樹脂組成物(P)から作製される未硬化の塗膜のチクソ性を特に高めることができ、それにより樹脂組成物(P)からなる塗膜のタレを防ぐことができる。
【0086】
第一の溶剤(F1)の例は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(水溶解度:∞/L)、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート(水溶解度:160g/L)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(水溶解度:∞/L)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(水溶解度:∞/L)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(水溶解度:190g/L)、及びメチルエチルケトン(水溶解度:29g/L)等を含む。第一の溶剤(F1)は、これらからなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。第一の溶剤(F1)は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを含むことが好ましい。この場合、樹脂組成物(P)から作製される塗膜を、特にムラなく均一にできる。
【0087】
第二の溶剤(F2)は、20℃における水1Lに対する溶解度は、500mg未満である溶剤を含むことが好ましい。この場合、樹脂組成物(P)の粘度上昇を更に抑えることができ、樹脂組成物(P)から作製される塗膜の膜厚安定性を更に向上させることができる。
【0088】
第二の溶剤(F2)の例は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤、ヘキサン等の直鎖状アルカン、シクロヘキサン等のシクロアルカン等を含む。第二の溶剤(F2)は、これらからなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。芳香族系炭化水素とは、芳香環を有する炭化水素であり、炭化水素とは、炭素と水素からなる一般式Cn2(n-3)で表される化合物である。芳香族系炭化水素は、例えばトルエン、キシレン、ナフタレン、インデン、1,4-ジエチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、ブチルベンゼン、メチルエチルベンゼン類、プロピルベンゼン類、メチルプロピルベンゼン類、ジメチルエチルベンゼン類、C10アロマティック、C11アロマティック、C12アロマティック等が挙げられる。第二の溶剤(F2)は、これらの芳香族系炭化水素からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0089】
上記の第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)の例において、括弧書きで示す「水溶解度」とは、20℃における水1Lに対する溶解量を示し、また「∞/L」とは、水1Lと特に良好に相溶して混ざり合い、分離がほとんど生じていない状態の溶解度であることを意味する。
【0090】
本実施形態では、樹脂組成物(P)の全体の合計量に対する第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)の合計量は、15質量%以上50質量%以下である。この場合、樹脂組成物(P)の増粘を抑制できることで粘度安定性を向上させるのに寄与でき、樹脂組成物(P)から塗膜を形成するにあたって、塗膜の膜厚の均一性を向上させることができる。樹脂組成物(P)の全体の合計量に対する第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量は、18質量%以上45質量%以下であればより好ましく、20質量%以上40質量%以下であれば更に好ましい。
【0091】
また、樹脂組成物(P)において、第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対する、第二の溶剤(F2)の含有量は、15質量%以上50質量%以下である。このため、樹脂組成物(P)におけるベントナイト(E)との良好な相互作用を形成することができ、この樹脂組成物(P)から形成される硬化膜に、より優れた絶縁信頼性を付与することができる。第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対する第二の溶剤(F2)の量は、18質量%以上48質量%以下であればより好ましく、20質量%以上46質量%以下であれば更に好ましく、22質量%以上44質量%以下であれば特に好ましい。この場合、樹脂組成物(P)の粘度安定性、チクソ性、及び印刷塗布性が向上し、樹脂組成物(P)を安定した膜厚で塗布することが可能となる。また、樹脂組成物(P)のアルカリ現像性が向上する。さらに、樹脂組成物(P)から形成される硬化膜に、より優れた絶縁信頼性を付与することが可能となる。なお、溶剤の好適な割合は、塗膜の形成方法によって異なるため、塗膜の形成方法に応じて、上記の範囲を満たすように適宜調整することが好ましい。例えば、樹脂組成物(P)からドライフィルムを形成する場合には、樹脂組成物(P)の塗膜を乾燥させる際に、有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち溶剤が皮膜に残存しないように、調整されることが好ましい。また、樹脂組成物(P)をスクリーン印刷法で塗布して塗膜を形成する場合には、第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対して、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)のうち沸点が160℃以上である溶剤は、70質量%以上含有することが好ましい。
【0092】
また、上述したように、溶剤は、上記で説明したカルボキシル基含有樹脂(A1-1)等を合成する際の反応溶剤として使用されてもよい。
【0093】
樹脂組成物(P)は、上記で説明した硬化性樹脂(A)、光重合開始剤(D)、ベントナイト(E)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)以外の成分を含んでいてもよい。すなわち、樹脂組成物(P)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)、光重合性化合物(B)、エポキシ化合物(C)、光重合開始剤(D)、ベントナイト(E)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)以外の成分を含有できる。上記以外の成分の例としては、着色剤、密着性付与剤、有機溶剤、無機充填材、硬化剤、その他の樹脂、及び添加剤が挙げられる。
【0094】
樹脂組成物(P)は、着色剤を含有してもよい。この場合、樹脂組成物(P)から形成される皮膜に色を付与できる。着色剤は、例えば、青色着色剤及び黄色着色剤を含有してもよい。この場合、樹脂組成物(P)から形成される皮膜の色を緑色にすることができる。着色剤は、顔料と染料のいずれも含み得る。このため、青色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。また黄色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。また緑色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料は、無機粒子や有機金属粒子などであってもよい。顔料は、ソルダーレジスト組成物中に分散されるものであってもよい。染料は、有機化合物であってもよい。染料は、ソルダーレジスト組成物中で溶解するものであってもよい。
【0095】
着色剤は、目的とする皮膜の色味や、プリント配線基板の絶縁層の色などに応じて適宜される。着色剤は、例えば青色着色剤、黄色着色剤、黒色着色剤、白色着色剤、赤色着色剤、緑色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、及び茶色着色剤からなる群から選択される一種以上の材料を含んでいてもよい。
【0096】
樹脂組成物(P)は、密着性付与剤を含んでいてもよい。密着性付与剤の例には、メラミン、アナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、並びに2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体が含まれる。この場合、樹脂組成物(P)から形成されるソルダーレジスト層の基板との密着性を向上できる。
【0097】
樹脂組成物(P)は、無機充填材を含有してもよい。この場合、樹脂組成物(P)から形成される塗膜の硬化収縮を低減できる。無機充填材の例には、硫酸バリウム、結晶性シリカ、微粉シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト、クレー、珪酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チッ化アルミニウム、チッ化硼素、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、モンモリロナイト、セピオライトが含まれる。無機充填材に酸化チタン、酸化亜鉛等の白色の材料を含有させることで、樹脂組成物(P)及びその硬化物を白色化してもよい。
【0098】
樹脂組成物(P)は、エポキシ樹脂のための硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤の例には、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、UCAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
【0099】
樹脂組成物(P)は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n-ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
【0100】
また、樹脂組成物(P)は、上記以外の添加剤、例えば硬化促進剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の添加剤を含有してもよい。
【0101】
5.絶縁膜形成用の樹脂組成物の調製方法
本実施形態の絶縁膜形成用の樹脂組成物(P)は、上記で説明した硬化性樹脂(A)、ベントナイト(E)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)と、必要に応じて、光重合開始剤(D)を混合することによって製造できる。
【0102】
具体的には、上記のような樹脂組成物(P)の原料を配合し、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる適宜の混練方法によって混練することにより、樹脂組成物(P)を調製できる。保存安定性等を考慮して、樹脂組成物(P)の成分の一部を混合することで第一剤を調製し、成分の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。
【0103】
特に樹脂組成物(P)がカルボキシル基含有樹脂(A1-1)を含有する場合は、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)と第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)とを含有する溶液を調製してから、樹脂組成物(P)を調製することが好ましい。
【0104】
具体的には、まず、第一の溶剤(F1)と、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)と、モノカルボン酸(b1)とを含有する溶液中で、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)とモノカルボン酸(b1)とを反応させて中間体を合成する(第一反応工程)。続いて、溶液に多価カルボン酸(b2)を加えて中間体と多価カルボン酸(b2)とを反応させる(第二反応工程)。この中間体と多価カルボン酸(b2)との反応途中(すなわち反応終了前)に、溶液に第二の溶剤(F2)を加える。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の溶液を製造する。
【0105】
このようにカルボキシル基含有樹脂(A1-1)を合成することで、ノボラック型エポキシ樹脂(a1)とモノカルボン酸(b1)との反応、及び中間体と多価カルボン酸(b2)との反応を促進でき、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)における未反応のエポキシ基を低減できる。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)のエポキシ当量が8000g/eq.以上であることを実現しやすい。
【0106】
第一反応工程では、溶液は第一の溶剤(F1)とともに第二の溶剤(F2)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。溶液が第二の溶剤(F2)を含む場合、溶液中での第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対する第一の溶剤(F1)の量は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の合成時にカルボキシル基含有樹脂(A1-1)のゲル化を生じにくくすることができる。
【0107】
第二反応工程では、溶液に第二の溶剤(F2)を加えることで、溶液中での第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対する第一の溶剤(F1)の量は、50質量%以上95質量%以下になることが好ましい。この場合、中間体と多価カルボン酸(b2)との反応を特に促進できる。
【0108】
このように調製されたカルボキシル基含有樹脂(A1-1)と第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)とを含有する溶液と、樹脂組成物(P)におけるカルボキシル基含有樹脂(A1-1)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)以外の成分を混合する。必要により、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)のうち少なくとも一方を更に混合して第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)の量を調整する。これにより、樹脂組成物(P)を調製できる。
【0109】
なお、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)と第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)とを含有する溶液を精製するなどしてカルボキシル基含有樹脂(A1-1)を抽出してもよい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)と、樹脂組成物(P)におけるカルボキシル基含有樹脂(A1-1)以外の成分とを混合することで、樹脂組成物(P)を調製できる。
【0110】
なお、このようにして製造されるカルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、上記以外の方法で、同一の原料から製造されたカルボキシル基含有樹脂(A1-1)よりも、大きなエポキシ当量を有する。したがって、上記の製造方法は、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)の構造を特定する。
【0111】
本実施形態の絶縁膜形成用の樹脂組成物(P)は、プリント配線板用の電気絶縁性材料として適している。特に樹脂組成物(P)は、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の、絶縁膜を形成するために適している。
【0112】
6.プリント配線板の製造方法
以下に、本実施形態による樹脂組成物(P)から形成された層間絶縁層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を、図1Aから図1Eを参照して説明する。本方法では、層間絶縁層にフォトリソグラフィ法でスルーホールを形成しているが、これに限定されない。
【0113】
まず、図1Aに示すようにコア材1を用意する。コア材1は、例えば少なくとも一つの絶縁膜2と少なくとも一つの導体配線3とを備える。コア材1の一面上に設けられている導体配線3を、以下、第一の導体配線3という。図1Bに示すように、コア材1の一面上に、樹脂組成物(P)から皮膜4を形成する。皮膜4の形成方法は、例えば、塗布法とドライフィルム法とがある。
【0114】
塗布法では、例えばコア材1上に樹脂組成物(P)を塗布して湿潤塗膜を形成する。樹脂組成物(P)の塗布方法は、適宜の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、樹脂組成物中(P)の有機溶剤を揮発させるために、例えば60~120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させ、これによって、皮膜4を得ることができる。
【0115】
ドライフィルム法では、まずポリエステルなどでできた適宜の支持体上に樹脂組成物(P)を塗布してから乾燥することで、支持体上に樹脂組成物(P)の乾燥物であるドライフィルムを形成する。これにより、ドライフィルムと、ドライフィルムを支持する支持体とを備える積層体(支持体付きドライフィルム)が得られる。この積層体におけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、ドライフィルムとコア材1に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上からコア材1上へ転写する。これにより、コア材1上に、ドライフィルムからなる皮膜4が設けられる。
【0116】
皮膜4を露光することで図1Cに示すように皮膜4を部分的に硬化させる。そのために、例えばネガマスクを皮膜4に当ててから、皮膜4に紫外線を照射する。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部はスルーホール10の位置と合致する位置に設けられる。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。紫外線の光源はこれらに限定されず、樹脂組成物(P)を硬化させうる紫外線を照射できる光源であればよい。
【0117】
なお、露光方法は、ネガマスクを用いる方法以外の方法であってもよい。例えば光源から発せられる紫外線を皮膜4の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で皮膜4を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。紫外線の光源はこれらに限定されず、樹脂組成物(P)を硬化させうる紫外線を照射できる光源であればよい。
【0118】
また、ドライフィルム法では、積層体におけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、支持体を剥離することなく、支持体を通して紫外線をドライフィルムからなる皮膜4に照射することで皮膜4を露光し、続いて現像処理前に皮膜4から支持体を剥離してもよい。
【0119】
続いて、皮膜4に現像処理を施すことで、図1Cに示す皮膜4の露光されていない部分5を除去し、これにより、図1Dに示すようにスルーホール10が形成される位置に穴6を設ける。現像処理では、樹脂組成物(P)の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0120】
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
【0121】
続いて、皮膜4を加熱することで硬化させる。加熱の条件は、例えば加熱温度120~200℃の範囲内、加熱時間30~120分間の範囲内である。このようにして皮膜4を熱硬化させると、層間絶縁層7の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
【0122】
必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜4に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜4の光硬化を更に進行させることができる。
【0123】
層間絶縁層7の厚みは、特に限定されないが、3μm以上100μm以下の範囲内であってよい。
【0124】
以上により、コア材1上に、樹脂組成物(P)の硬化物からなる層間絶縁層7が設けられる。この層間絶縁層7上に、アディティブ法などの適宜の方法で、第二の導体配線8及びホールめっき9を設けることができる。これにより、図1Eに示すように、第一の導体配線3、第二の導体配線8、第一の導体配線3と第二の導体配線8との間に介在する層間絶縁層7、並びに第一の導体配線3と第二の導体配線8とを電気的に接続するスルーホール10を備えるプリント配線板11が得られる。なお、図1Eにおいて、ホールめっき9は穴6の内面を覆う筒状の形状を有するが、穴6の内側全体にホールめっき9が充填されていてもよい。
【0125】
また、図1Eのようなホールめっき9を設ける前に、穴6の内側面全体と層間絶縁層7の外表面の一部とを粗化することができる。このようにして、層間絶縁層7の外表面の一部と、穴6の内側面とを粗化することでコア材1とホールめっき9との密着性を向上することができる。
【0126】
層間絶縁層7の外表面の一部と穴6の内側面全体とを粗化するにあたって、酸化剤を用いた一般的なデスミア処理と同じ手順で行うことができる。例えば、層間絶縁層7の外表面に酸化剤を接触させて層間絶縁層7に粗面を付与する。しかし、これに限らず、プラズマ処理、UV処理やオゾン処理等の硬化物に粗面を付与する手法を適宜採用することができる。
【0127】
酸化剤は、デスミア液として入手可能な酸化剤であってもよい。たとえば、市販のデスミア用膨潤液とデスミア液とにより、酸化剤が構成され得る。このような酸化剤は、例えば過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムの群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸塩を含有することができる。
【0128】
ホールめっき9を設けるにあたって、粗化された外表面の一部と、穴6の内側面とに無電解金属メッキ処理を施して初期配線を形成することができる。その後、電解金属メッキ処理で初期配線に電解質メッキ液中の金属を析出させることでホールめっき9を形成することができる。
【0129】
本実施形態による樹脂組成物(P)から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
【0130】
まず、コア材を用意する。コア材は、例えば少なくとも一つの絶縁層と少なくとも一つの導体配線とを備える。コア材の導体配線が設けられている面上に、樹脂組成物(P)から皮膜を形成する。皮膜の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。塗布法とドライフィルム法としては、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。皮膜を露光することで部分的に硬化させる。露光方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。続いて、皮膜に現像処理を施すことで、皮膜の露光されていない部分を除去し、これにより、コア材上に、皮膜の露光された部分が残存する。続いて、コア材上の皮膜を加熱することで熱硬化させる。現像方法及び加熱方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜の光硬化を更に進行させることができる。
【0131】
ソルダーレジスト層の厚みは、特に限定されないが、3μm以上100μm以下の範囲内であってよい。
【0132】
以上により、コア材上に、樹脂組成物(P)の硬化物からなるソルダーレジスト層が設けられる。これにより、絶縁層とその上の導体配線とを備えるコア材、並びにコア材における導体配線が設けられている面を部分的に覆うソルダーレジスト層を備える、プリント配線板が得られる。なお、ソルダーレジスト層には、上記で説明した層間絶縁層と同様に粗面が付与されてもよい。
【0133】
本実施形態では、樹脂組成物(P)の塗膜、又は樹脂組成物(P)の乾燥物であるドライフィルムから、ソルダーレジスト層及び層間絶縁層等の電気絶縁性の絶縁膜を特に良好に形成することができる。この電気絶縁性の層に粗面を付与しても、電気絶縁性の層と導体配線等との金属材料との密着性を有しつつ、優れた電気絶縁信頼性を有することができる。
【実施例
【0134】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、本発明は実施例のみに制限されない。
【0135】
(1)カルボキシル基含有樹脂の合成
(合成例A-1)
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN-700-5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート106質量部を、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸43.2質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、加熱温度100℃、加熱時間4時間の条件で加熱した。
【0136】
続いて、混合物にテトラヒドロフタル酸68質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、トリフェニルホスフィン0.5質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート65質量部を加えてから、加熱温度90℃、加熱時間18時間の条件で加熱した。さらに、その後ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート34質量部を加え、加熱温度90℃、加熱時間5時間の条件で加熱した。これにより、エポキシ当量が6840g/eq.であるカルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A-1)を得た。
【0137】
(合成例A-2)
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN-700-5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート106質量部を、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸43.2質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、加熱温度100℃、加熱時間4時間の条件で加熱した。
【0138】
続いて、混合物にテトラヒドロフタル酸68質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、トリフェニルホスフィン0.5質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート29質量部を加えてから、加熱温度90℃、加熱時間18時間の条件で加熱した。さらに、その後石油ナフサ(スワゾール1500)34質量部を加え、加熱温度90℃、加熱時間5時間の条件で加熱した。これにより、エポキシ当量が9871g/eq.であるカルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A-2)を得た。
【0139】
(合成例A-3)
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN-700-5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート87質量部を、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸43.2質量部、及びトリフェニルホスフィン1質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、加熱温度100℃、加熱時間4時間の条件で加熱した。
【0140】
続いて、混合物にテトラヒドロフタル酸68質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、トリフェニルホスフィン0.5質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート29質量部を加えてから、加熱温度90℃、加熱時間18時間の条件で加熱した。さらに、その後石油ナフサ(スワゾール1500)53質量部を加え、加熱温度90℃、加熱時間5時間の条件で加熱した。これにより、エポキシ当量が10305g/eq.であるカルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A-2)を得た。
【0141】
(合成例B-1)
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN-700-5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118質量部を、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を、加熱温度110℃、加熱時間15時間の条件で加熱した。
【0142】
続いて、混合物にテトラヒドロフタル酸61.6質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート64質量部を加えてから、加熱温度90℃、加熱時間5時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液B-1)を得た。
【0143】
(2)樹脂組成物の調整
後掲の表に示す成分を三本ロールで混錬してから、フラスコ内で撹拌することで、実施例1~8及び比較例1~7の樹脂組成物を製造した。なお、表に示す「溶剤(F)」とは、溶剤(F1)と溶剤(F2)とを含む成分であり、表中の有機溶剤B~Dは溶剤(F1)に含まれ、有機溶剤Aは、溶剤(F2)に含まれる。また、溶剤は、樹脂組成物において、樹脂組成物全量に対する含有量が、表中の(F1)の欄及び(F2)の欄に示す量(質量部)となるように、希釈溶剤を添加した。また、表に示される成分の詳細は次の通りである。
・光重合性化合物:ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート混合物、日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPHA。
・光重合開始剤A:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、BASF社製、品番IRGACURE TPO。
・光重合開始剤B:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、BASF社製、品番IRGACURE 184。
・光重合開始剤C:2,4-ジエチルチオキサントン、日本化薬株式会社製、品番カヤキュアDETX-S。
・エポキシ化合物A:ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、品番YX4000Kをジェットミルで最大粒子径10μm未満に粉砕。
・エポキシ化合物溶液B:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製の品名EPICLON N-695を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート/スワゾール1500(石油ナフサ)=1:1に溶解した溶液。
・エポキシ化合物溶液C:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製の品名EPICLON N-695を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解した溶液。
・有機ベントナイト:レオックス社製、品番ベントンSD-2。
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製、品番MT-10。
・陰イオン吸着性層状複水酸化物:ハイドロタルサイト。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番バリエースB30。
・青色顔料:フタロシアニンブルー。
・黄色顔料:1,1’-[(6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(イミノ)]ビス(9,10-アントラセンジオン)。
・メラミン:日産化学工業株式会社製、品番メラミンHM。
・消泡剤:シメチコン(ジメチコンとケイ酸の混合物)、信越シリコーン株式会社製、品番KS-66。
[希釈溶剤]
・有機溶剤A:芳香族系混合溶剤(石油ナフサ)、丸善石油化学株式会社製、品名スワゾール1500。
・有機溶剤B:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
・有機溶剤C:メチルエチルケトン。
・有機溶剤D:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0144】
(3)テストピースの作製
テストピースを以下の手順で作製した。なお、フィルムの形成方法に関しては、実施例1~5及び比較例1~5では、下記(3-1)で示すようにスクリーン印刷法によりフィルムを形成し、実施例6~8及び比較例6~7では、(3-2)で示すようにドライフィルムを形成して、それぞれテストピースとなるプリント配線板を作製した。
【0145】
(3-1)テストピースの作製(スクリーン印刷法:実施例1~5及び比較例1~5) 各実施例及び比較例の絶縁膜形成用の樹脂組成物を用いて、次のようにしてテストピースを作製した。
【0146】
まず、厚み17.5μmの銅箔を備えるガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板にエッチング処理を施すことで銅箔をパターニングし、これによりプリント配線板を得た。このプリント配線板の導体配線における厚み1μm程度の表層部分を、エッチング液(メック株式会社製の品番CZ-8101)で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。
【0147】
このプリント配線板上に、各実施例及び比較例で得られた絶縁膜形成用の樹脂組成物をスクリーン印刷法で塗布することで、プリント配線板上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を、加熱温度80℃、加熱時間30分の条件で加熱することで予備乾燥した。これにより銅箔上において厚み20μmの皮膜を形成した。
【0148】
この皮膜上にネガマスクを直接当てがい、このネガマスクを介して皮膜にメタルハライドランプにより、400mJ/cmの紫外線を照射した。これにより、皮膜を選択的に露光した。続いて、露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で60秒間噴射した後、皮膜に純水を0.2MPaの噴霧圧で60秒間噴射した。これにより、皮膜のうち露光により硬化した部分(硬化膜)をプリント配線板上に残存させた。この硬化膜を、更に150℃で60分間加熱して熱硬化させた後、高圧水銀灯により、1000mJ/cmの紫外線を照射した。これにより、プリント配線板上にソルダーレジスト層を形成し、このソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を、テストピースとした。
【0149】
(3-2)テストピースの作製(ドライフィルム法:実施例6~8及び比較例6~7) 各実施例及び比較例の絶縁膜形成用の樹脂組成物を用いて、次のようにしてテストピースを作製した。
【0150】
絶縁膜形成用の樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケーターで塗布してから、加熱温後80℃、加熱時間30分で加熱することにより、乾燥させ、フィルム上に厚み25μmのドライフィルムを形成した。
【0151】
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板を用意した。このガラスエポキシ樹脂銅張積層板にエッチング処理を施すことで銅箔をパターニングし、これにより、プリント配線板(コア材)を得た。続いて、このプリント配線板の導体配線における厚み1μm程度の表面部分を、エッチング剤(メック株式会社製の品番CZ-8101)で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。このプリント配線板の一面全面に上記のドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は0.5MPa、80℃、1分間とした。これにより、プリント配線板4上に、上記ドライフィルムからなる皮膜を形成した。
【0152】
この皮膜に、ネガマスクを用いて、400mJ/cm2の条件でメタルハライドランプにより、紫外線を照射した。続いて、露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で60秒間噴射した後、皮膜に純水を0.2MPaの噴霧圧で60秒間噴射した。これにより、皮膜のうち露光により硬化した部分(硬化膜)をプリント配線板上に残存させた。なお、露光後、現像前に、ドライフィルム(皮膜)から、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。
【0153】
続いて、この硬化膜を更に150℃で60分間加熱して熱硬化させた後、高圧水銀灯により、1000mJ/cmの紫外線を照射した。これにより、プリント配線板上にソルダーレジスト層を形成し、このソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を、テストピースとした。
【0154】
(4)評価試験
絶縁膜形成用の樹脂組成物、又はテストピースに対して、以下に示した評価を行った。なお、(4-1)~(4-5)の評価においては、実施例1~5及び比較例1~5と、実施例6~8と比較例6~7とで評価方法及び評価基準が異なるが、(4-6)~(4-13)の評価においては、各実施例及び比較例で同様の評価方法及び評価基準で評価を行っている。
【0155】
(4-1)粘度安定性
[実施例1~5及び比較例1~5:スクリーン印刷用に調整した樹脂組成物]
調製した各絶縁膜形成用の樹脂組成物について、希釈溶剤を混合した直後に測定した粘度(v)と、希釈溶剤を混合してから静置させ10時間経過後に測定した粘度(v10)とを測定し、各樹脂組成物について、次のように評価をした。なお、粘度は、東機産業株式会社製の3度×R14ローターを装備した粘度計TVE-35Hを用い、恒温槽の設定温度25℃、ローターの回転速度5rpmの条件で測定した。
A:(v10-v)<350dPa・s。
B:350dPa・s≦(v10-v)<500dPa・s。
C:500dPa・s<(v10-v)。
【0156】
[実施例6~8及び比較例6~7:ドライフィルム作製用に調整した樹脂組成物]
上記と同様に、各絶縁膜形成用の樹脂組成物について、各粘度を測定し、次に示すように、樹脂組成物の評価を評価した。なお、粘度は、東機産業株式会社製の1度34分×R24ローターを装備した粘度計TVE-35Hを用い、恒温槽の設定温度25℃、ローターの回転速度20rpmの条件で測定した。
A:(v10-v)<500mPa・s。
B:500mPa・s≦(v10-v)<1000mPa・s。
C:1000mPa・s<(v10-v)。
【0157】
(4-2)膜厚安定性
[実施例1~5及び比較例1~5:スクリーン印刷用に調整した樹脂組成物]
調整した各絶縁膜形成用の樹脂組成物について、希釈溶剤を混合してから静置し10分経過した後、厚み17.5μmの銅箔上にスクリーン印刷により塗膜を形成し乾燥させることで、試験塗膜を作製した。試験塗膜における銅箔上の膜厚を5点測定し、平均値を算出し、これを「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」とした。
【0158】
同様に、調整した各絶縁膜形成用の樹脂組成物について、希釈溶剤を混合してから静置し40分経過した後、厚み17.5μmの銅箔上にスクリーン印刷により塗膜を形成し乾燥させることで、試験塗膜を作製した。試験塗膜における銅箔上の膜厚を5点測定し、平均値を算出し、これを「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」とした。
【0159】
得られた「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」と、「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」とにより、各樹脂組成物について、次のように評価した。
A:「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」と「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」との膜厚の差が2μm以下であった。
B:「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」と「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」との膜厚の差が2μmより大きく4μm以下であった。
C:「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」と「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」との膜厚の差が4μmより大きかった。
【0160】
[実施例6~8及び比較例6~7:ドライフィルム作製用に調整した樹脂組成物]
調整した各絶縁膜形成用の樹脂組成物について、希釈溶剤を混合してから静置し10分経過した後、厚み19μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケーターで塗膜を形成し乾燥させることで、試験塗膜を作製した。試験塗膜における銅箔上の膜厚を5点測定し、平均値を算出し、これを「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」とした。
【0161】
同様に、調整した各絶縁膜形成用の樹脂組成物について、希釈溶剤を混合してから静置し40分経過した後、厚み19μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケーターで塗膜を形成し乾燥させることで、試験塗膜を作製した。試験塗膜における銅箔上の膜厚を5点測定し、平均値を算出し、これを「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」とした。
【0162】
得られた「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」と、「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」とにより、各樹脂組成物について、次のように評価した。
A:「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」と「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」との膜厚の差が2μm以下であった。
B:「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」と「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」との膜厚の差が2μmより大きく3μm以下であった。
C:「希釈溶剤混合10分後の試験塗膜の膜厚」と「希釈溶剤混合40分後の試験塗膜の膜厚」との膜厚の差が3μmより大きかった。
【0163】
(4-3)印刷塗布性
[実施例1~5及び比較例1~5:スクリーン印刷用に調整した樹脂組成物]
上記(3-1)におけるテストピースの作製時における、樹脂組成物のスクリーン印刷による塗布を行った後の塗膜を観察し、目視により、樹脂組成物の印刷塗布性を、以下のような基準で評価した。
A:レベリング性が良く、きれいに塗布ができている。
B:Aよりもレベリング性が悪いが、塗布ができている。
C:レベリング性が悪く、きれいに塗布できていない。
【0164】
[実施例6~8及び比較例6~7:ドライフィルム作製用に調整した樹脂組成物]
上記(3-2)におけるテストピースの作製時における、樹脂組成物のアプリケーター印刷による塗布を行い作製したドライフィルムを観察し、目視により、樹脂組成物の印刷塗布性を、以下のような基準で評価した。
A:レベリング性が良く、きれいに塗布ができている。
B:Aよりもレベリング性が悪いが、塗布ができている。
C:レベリング性が悪く、きれいに塗布できていない。
【0165】
なお、比較例3及び7では、上記(4-3)印刷塗布性が著しく悪かったため、「(4-6)密着性」以降の評価は行っていない。
【0166】
(4-4)チクソ性
[実施例1~5及び比較例1~5:スクリーン印刷用に調整した樹脂組成物]
上記(3-1)で作製したテストピースを観察し、目視により、樹脂組成物のチクソ性を、以下のような基準で評価した。
A:導体配線箇所にソルダーレジストの垂れ(タレ)の発生が見られなかった。
B:導体配線箇所にソルダーレジストの僅かなタレの発生が見られた。
C:導体配線箇所にソルダーレジストの大きなタレの発生が見られた。
【0167】
[実施例6~8及び比較例6~7:ドライフィルム作製用に調整した樹脂組成物]
上記(3-2)におけるテストピースの作製時における、樹脂組成物のアプリケーター印刷による塗布を行い作製したドライフィルムを観察し、目視により、樹脂組成物のチクソ性を、以下のような基準で評価した。
A:ドライフィルム中に垂れ(タレ)の発生が見られなかった。
B:ドライフィルム中に僅かなタレの発生が見られた。
C:ドライフィルム中に大きなタレの発生が見られた。
【0168】
(4-5)溶剤乾燥条件幅
各実施例及び比較例において、平板状の銅基板上に、乾燥後の絶縁膜形成用の樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布した後、乾燥温度80℃、乾燥時間60分の条件で乾燥させることで乾燥塗膜を作製した後、上記(3-1)又は(3-2)で説明した現像処理を行った。
【0169】
また、各実施例及び比較例において、乾燥時間80℃に変更した以外は、上記と同様に乾燥塗膜を作製してから、現像処理を行った。
【0170】
上記の各乾燥温度(60分及び80分)における、現像後の乾燥塗膜の現像残渣を観察し、以下の基準で評価した。
A:80℃で60分乾燥させた乾燥塗膜、及び80℃で80分乾燥させた乾燥塗膜のいずれにおいても現像残渣は確認されなかった。
B:80℃で60分乾燥させた乾燥塗膜においては、現像残渣は確認されなかったが、80℃で80分乾燥させた乾燥塗膜においては現像残渣が確認された。
C:80℃で60分乾燥させた乾燥塗膜、及び80℃で80分乾燥させた乾燥塗膜のいずれにおいても現像残渣が確認された。
【0171】
(4-6)密着性
JIS D0202で規定される試験方法に従って、上記(3)で作製したテストピースのソルダーレジスト層に碁盤目状にクロスカットを入れ、続いてセロハン粘着テープを用いたピーリング試験をおこなった。試験後の剥がれの状態を目視により観察した。その結果を次に示すように評価した。
A:100個のクロスカット部分のうち全てに全く変化がみられない。
B:100個のクロスカット部分のうち1~10箇所に剥がれを生じた。
C:100個のクロスカット部分のうち11~100箇所に剥がれを生じた。
【0172】
(4-7)鉛筆硬度
上記(3)で作製したテストピースのソルダーレジスト層の鉛筆硬度を、JIS K5400の規定に準拠して、鉛筆として三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて測定した。
【0173】
(4-8)耐酸性
上記(3)で作製したテストピースを、室温下で、10%の硫酸水溶液に30分間浸漬した後、このテストピースのソルダーレジスト層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
A:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
B:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
C:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
【0174】
(4-9)はんだ耐熱性
上記(3)で作製したテストピースのソルダーレジスト層に、水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355-11)を塗布し、続いてソルダーレジス層を260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬してから水洗した。この処理を3回繰り返してから、ソルダーレジスト層の外観を観察し、その結果を次に示すように評価した。
A:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
B:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
C:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
【0175】
(4-10)耐メッキ性
上記(3)で作製したテストピースに、市販のメッキ液を用いて、無電解ニッケルメッキと無電解金メッキを順次施してから、メッキ層及びソルダーレジスト層の外観を目視で確認した。続いて、このテストピースのソルダーレジスト層に対してセロハン粘着テープ剥離試験を行うことで、メッキ後のソルダーレジスト層の密着状態を確認した。その結果を、次のようにして評価した。
A:メッキ層の形成前後でソルダーレジスト層に外観の変化が認められず、めっきの潜り込みも認められず、かつセロハン粘着テープ剥離試験でソルダーレジスト層の剥離は認められなかった。
B:メッキ層の形成前後でソルダーレジスト層に外観の変化が認められないが、セロハン粘着テープ剥離試験でソルダーレジスト層の一部剥離が認められる。
C:メッキ層の形成後でソルダーレジスト層の浮き上がりが認められ、セロハン粘着テープ剥離試験でソルダーレジスト層の剥離が認められる。
【0176】
(4-11)PCT耐性
上記(3)で作製したテストピースを、温度121℃の飽和水蒸気中に50時間放置した後、このテストピースのソルダーレジスト層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
A:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常は認められない。
B:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
C:ソルダーレジスト層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
【0177】
(4-12)電気絶縁性
FR-4タイプの銅張積層板に、ライン幅/スペース幅が100μm/100μmである櫛形電極を形成することで、評価用のプリント配線板を得た。このプリント配線板上に、上記(3)と同様の作製方法及び条件で、ソルダーレジスト層を形成した。続いて、櫛形電極にDC30Vのバイアス電圧を印加しながら、プリント配線板を121℃、97%R.H.の試験環境下に100時間暴露した。この試験環境下におけるソルダーレジスト層の電気抵抗値を常時測定した。その結果を次の評価基準により評価した。
A:試験開始時から100時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に10Ω以上であった。
B:試験開始時から少なくとも70時間経過するまでは、電気抵抗値が10Ω以上であったが、100時間経過するまでに電気抵抗値が106Ω未満となった。
C:試験開始時から70時間経過する以前に、電気抵抗値が10Ω未満となった。
【0178】
以上の評価試験の結果を下記の表1及び表2に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
(まとめ)
以上から明らかなように、本開示に係る第一の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、 硬化性樹脂(A)、ベントナイト(E)、第一の溶剤(F1)及び第二の溶剤(F2)を含有する。第一の溶剤(F1)の20℃における水1Lに対する溶解度は1g以上であり、第二の溶剤(F2)の20℃における水1Lに対する溶解度は1g未満である。樹脂組成物全量に対する第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量は、15質量%以上50質量%以下である。第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対する第二の溶剤(F2)の量は、15質量%以上50質量%以下である。
【0182】
第一の態様によれば、絶縁膜形成用の樹脂組成物では、チクソ剤による樹脂組成物の粘度上昇が生じにくく、かつ樹脂組成物から作製される絶縁膜の絶縁信頼性を低下させにくい。
【0183】
第二の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第一の態様において、硬化性樹脂(A)は、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)の一部のエポキシ基にモノカルボン酸(b1)を、別の一部のエポキシ基に多価カルボン酸(b2)をそれぞれ付加反応させたカルボキシル基含有樹脂(A1-1)を含む。
【0184】
第二の態様によれば、樹脂組成物から形成される塗膜の膜厚安定性をより向上させることができる。さらに、この樹脂組成物の硬化物から形成される絶縁層は、より優れた絶縁信頼性を有することができる。
【0185】
第三の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第二の態様において、モノカルボン酸(b1)は、アクリル酸を含む。
【0186】
第三の態様によれば、樹脂組成物から形成される湿潤塗膜のベタ付きが充分に抑制され、かつ層間絶縁層及びソルダーレジスト層等の絶縁層の耐メッキ性、はんだ耐熱性、及び絶縁信頼性を向上させうる。
【0187】
第四の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第二又は第三の態様において、多価カルボン酸(b2)は、テトラヒドロフタル酸を含む。
【0188】
第四の態様によれば、樹脂組成物から形成される層間絶縁層及びソルダーレジスト層等の吸水性が低減することで、絶縁層の耐メッキ性、及び絶縁信頼性を向上させうる。
【0189】
第五の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第二から第四のいずれか一つの態様において、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)は、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)とモノカルボン酸(b1)とを反応させた中間体と、多価カルボン酸(b2)とを、溶剤(F2)の存在下で反応させて得られる反応物である。
【0190】
第五の態様によれば、樹脂組成物の粘度の過度の増粘がより生じにくくすることができ、かつ樹脂組成物から形成される塗膜のチクソ性を良好に維持することができる。また、この態様によれば、樹脂組成物から作製される塗膜の現像性を向上できる。
【0191】
第六の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第二から第五のいずれか一つの態様において、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)のエポキシ当量は、8000g/eq.以上である。
【0192】
第六の態様によれば、樹脂組成物の粘度の過度の増粘がより生じにくくすることができ、かつ樹脂組成物から形成される塗膜のチクソ性を良好に維持することができる。さらに、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁膜の絶縁信頼性をより低下させにくくすることに寄与できる。
【0193】
第七の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第一から第六のいずれか一つの態様において、第一の溶剤(F1)は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを含む。
【0194】
第七の態様によれば、樹脂組成物から作製される塗膜を、特にムラなく均一にできる。
【0195】
第八の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第一から第七のいずれか一つの態様において、第二の溶剤(F2)は、芳香族系炭化水素を含む。
【0196】
第八の態様によれば、樹脂組成物の増粘を抑制できることで粘度安定性を向上させるのに寄与できる。また、樹脂組成物から塗膜を形成するにあたって、塗膜の膜厚の均一性をより向上させることができる。
【0197】
第九の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第一から第八のいずれか一つの態様において、絶縁膜形成用の樹脂組成物全量に対するベントナイト(E)の量は、0.5質量%以上5質量%以下である。
【0198】
第九の態様によれば、塗膜のチクソ性を特に向上しやすく、かつベントナイト(E)に起因する樹脂組成物の粘度上昇が特に起こりにくい。また、樹脂組成物の硬化物から形成される絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させることができる。
【0199】
第十の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物は、第一から第九のいずれか一つの態様において、第一の溶剤(F1)と第二の溶剤(F2)との合計量に対するベントナイト(E)の量は、1.5質量%以上12質量%以下である。
【0200】
第十の態様によれば、塗膜のチクソ性を特に向上しやすく、かつベントナイト(E)に起因する樹脂組成物の粘度上昇が特に起こりにくい。
【0201】
第十一の態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法は、第一から第十のいずれか一つの態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物の製造方法であり、第一の溶剤(F1)と、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)と、モノカルボン酸(b1)とを含有する溶液中で、ノボラック構造を有するエポキシ樹脂(a1)とモノカルボン酸(b1)とを反応させて中間体を合成し、溶液に多価カルボン酸(b2)を加えて中間体と多価カルボン酸(b2)とを反応させ、中間体と前記多価カルボン酸(b2)との反応途中に、溶液に第二の溶剤(F2)を加えることで、カルボキシル基含有樹脂(A1-1)を製造することを含む。
【0202】
第十一の態様によれば、チクソ剤による樹脂組成物の粘度上昇が生じにくく、かつ樹脂組成物から作製される絶縁膜の絶縁信頼性を低下させにくい絶縁膜形成用の樹脂組成物が得られる。
【0203】
第十二の態様のドライフィルムは、第一から第十のいずれか一つの態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物の乾燥物である。
【0204】
第十二の態様によれば、硬化物を作製しても絶縁膜の絶縁信頼性を低下させにくい。また、このドライフィルムからソルダーレジスト層及び層間絶縁層等の電気絶縁性の絶縁膜を特に良好に形成することができる。
【0205】
第十三の態様のプリント配線板は、第一から第十のいずれか一つの態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物の硬化物を含む絶縁膜を備える。
【0206】
第十三の態様によれば、プリント配線板は、優れた電気絶縁信頼性を有する。
【0207】
第十四の態様のプリント配線板は、第十三の態様において、前記絶縁膜が、層間絶縁層又はソルダーレジスト層である。
【0208】
第十四の態様によれば、プリント配線板は、より優れた電気絶縁信頼性を有する。
【0209】
第十五の態様のプリント配線板の製造方法は、導体配線と、この導体配線に重なる絶縁膜とを備えるプリント配線板の製造方法であって、第一から第十のいずれか一つの態様の絶縁膜形成用の樹脂組成物から前記絶縁膜を作製することを含む。
【0210】
第十五の態様によれば、優れた絶縁信頼性を有するプリント配線板が得られる。
図1