(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/64 20060101AFI20220907BHJP
B64G 1/00 20060101ALI20220907BHJP
B64G 1/40 20060101ALI20220907BHJP
B64G 1/26 20060101ALI20220907BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B64G1/64 500
B64G1/00 C
B64G1/40 100
B64G1/40 200
B64G1/26 A
B64G1/66 B
(21)【出願番号】P 2021502937
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2019092206
(87)【国際公開番号】W WO2020073683
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】201811187339.1
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514112868
【氏名又は名称】北京理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】林徳福
(72)【発明者】
【氏名】師興偉
(72)【発明者】
【氏名】王偉
(72)【発明者】
【氏名】王江
(72)【発明者】
【氏名】王輝
(72)【発明者】
【氏名】裴培
(72)【発明者】
【氏名】林時尭
(72)【発明者】
【氏名】程文伯
(72)【発明者】
【氏名】趙健廷
(72)【発明者】
【氏名】紀毅
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-228400(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106406344(CN,A)
【文献】特開平07-334244(JP,A)
【文献】特開2004-211992(JP,A)
【文献】特開2011-247520(JP,A)
【文献】特開2009-257629(JP,A)
【文献】特開2008-261529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0145996(US,A1)
【文献】米国特許第05487322(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00-99/00
F42B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の協調に動作可能な航続距離延長モジュールを含むことにより、飛翔体の射程を向上させ、
複合航続距離延長システムは、ロール航続距離延長モジュールを含み、
前記ロール航続距離延長モジュールは、飛翔体本体の側部に設置されて尾翼と間隔を置いて設置されたパルスジェット装置(5)を含み、
前記パルスジェット装置(5)は、ジェット推進力の作用により、飛翔体の揺動幅を低下させ、飛翔体の射程を向上させ、
前記パルスジェット装置(5)は、動作を開始した後、一定時間ごとに尾翼の左側に、飛翔体本体に垂直する方向に気体を噴射することにより、飛翔体の回転速度を向上させ、飛翔体の揺動幅を低下させ、
前記尾翼が8枚設置されており、これに対応して、前記パルスジェット装置も8つ設置されている
ことを特徴とする
飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システム。
【請求項2】
前記複合航続距離延長システムは、ロケット航続距離延長モジュールを含み、
前記ロケット航続距離延長モジュールは、飛翔体の尾部に設けられたロケットエンジン(1)を含み、
前記ロケットエンジン(1)は、飛翔体の上昇段階において動作を開始し、飛翔体の速度及び最大高さを向上させるために用いられ、
前記ロケットエンジン(1)の動作時間が5~10秒であることを特徴とする請求項1に記載の複合航続距離延長システム。
【請求項3】
前記飛翔体の尾部には、前記ロケットエンジン(1)と接続されているロケット燃料タンク(2)が設置されており、
前記飛翔体の尾部は、飛翔体本体から分離可能であり、
前記飛翔体の尾部は、飛翔体が最高点付近にあるときに飛翔体本体から分離することを特徴とする請求項2に記載の複合航続距離延長システム。
【請求項4】
前記複合航続距離延長システムは、最下段航続距離延長モジュールを含み、
前記最下段航続距離延長モジュールは、飛翔体の尾部側方に設置された排気装置(3)及びそれと接続する燃焼室(4)を含み、
前記燃焼室(4)における燃料が燃焼した後に発生する高温気体が前記排気装置から排出された後、飛翔体底部の空気の温度を上昇させ、空気流れ場を変化させることにより、飛翔体底部の抵抗力を低下させ、飛翔体の射程を向上させることを特徴とする請求項1に記載の複合航続距離延長システム。
【請求項5】
前記最下段航続距離延長モジュールは、飛翔体が最高点に到達する前に燃焼室(4)における燃料が消耗し尽くすまで動作し続け、
好ましくは、前記燃焼室(4)における燃料の燃焼時間が15~25秒であることを特徴とする請求項4に記載の複合航続距離延長システム。
【請求項6】
前記複合航続距離延長システムは、グライド航続距離延長モジュールを含み、
前記グライド航続距離延長モジュールは、グライド傾斜角調節モジュールを含み、前記グライド傾斜角調節モジュールは、グライドセクションにおいて飛翔体の傾斜角を制御するためであり、
好ましくは、前記グライド傾斜角調節モジュールは、グライドセクションにおいて飛翔体傾斜角の角度を20度以下に制御することを特徴とする請求項1に記載の複合航続距離延長システム。
【請求項7】
前記グライド航続距離延長モジュールは、飛翔体本体の底部に設置されているターミナル誘導増速ノズル(7)をさらに含み、
前記ターミナル誘導増速ノズル(7)は、飛翔体がターミナル誘導段階に入って所定時間経過した後に動作を開始し、前記ターミナル誘導増速ノズル(7)から噴射してきた高温高圧気体により、飛翔体の落下速度を向上させ、これにより、飛翔体はグライド角度が20度未満の条件を満足する場合でも300メートル/秒より大きい落下速度を有し、
好ましくは、ターミナル誘導増速ノズル(7)は、飛翔体がターミナル誘導段階に入って3秒経過した後に動作を開始し、動作時間が2~3秒であることを特徴とする請求項6に記載の複合航続距離延長システム。
【請求項8】
飛翔体が打ち上げられた後、最下段航続距離延長モジュールが最初に動作を開始し、
尾翼がはじき出し、機体の回転速度が低下し、姿勢が徐々に安定化した後、ロケット航続距離延長モジュールが動作を開始し、この時、ロケット航続距離延長モジュールが最下段航続距離延長モジュールと同期的に動作し、
飛翔体が飛行軌跡の頂点に接近するときに、飛翔体の尾部が飛翔体本体から分離、
飛翔体の尾部と飛翔体本体との分離が完成した後、ロール航続距離延長モジュールが動作を開始し、パルスジェット装置により飛翔体の揺動幅を低下させ、
飛翔体が起動した後、グライド航続距離延長モジュールが動作を開始し、グライド傾斜角調節モジュールにより飛翔体を、20度未満の傾斜角でグライドするように制御し、ターミナル誘導段階に入って3秒経過した後、ターミナル誘導増速ノズルが動作を開始し、その内部の燃料が燃焼した後に気体を噴射し、飛翔体の落下速度を向上させることにより、飛翔体が所定の落下速度で目標場所に到達し、
前記パルスジェット装
置が動作を開始した後に、前記パルスジェット装
置は、特定の時間ごとに尾翼左側に、飛翔体本体に垂直する方向にガスを噴射し、前記特定の時間を3秒とするこれにより、飛翔体の回転速度を向上させ、飛翔体の揺動幅を低下させることを特徴とする飛翔体上の複合航続距離延長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体制御分野に関し、具体的に飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システム及び方法。
【背景技術】
【0002】
現代の戦場では、誘導飛翔体の射程に対してより高く要求され、射程の増加は戦闘員の生存確率を高め、より豊富な戦略及び戦術を生み出すことができる。しかし、従来技術において、飛翔体の射程を向上させる方法が幾つかがあり、例えば、ロケットエンジンによるブーストにより、高さ及び速度をさらに増加させる方法、最下段インジェクター方法により飛翔体の尾部の空気温度を上昇させて抵抗力を低下させる方法等が挙げられ、これらの方法は協調的に統一されず、同一飛翔体に集積することができない。その他の解決策において、グライドセクションのグライド角度を調整するが、このグライド角度を過度に調節すると、飛翔体が目標を命中する時の速度値が低下し、即ち、落下速度が低下してしまうので、ほとんどの場合、この航続距離延長方案を放棄せざるを得なくなった。なお、従来技術における航続距離延長効果は依然として日増しに増加する高射程の要求を満足することができず、より多くのより良い航続距離延長方案の考案及び設計がさらに要求されている。
【0003】
上記の原因により、本発明者は従来の飛翔体航続距離延長システム及び方法を鋭意に研究し、上記課題を解決できる航続距離延長システム及び方法を設計し、飛翔体の射程を最大限に増加することを望んでいる。
【発明の概要】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意に研究した上、飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システム及び方法を設計し、該システムにおいて、ロケット航続距離延長モジュール、最下段航続距離延長モジュール、ロール航続距離延長モジュール及びグライド航続距離延長モジュールが同時に設置されており、各モジュール同士が協調に動作し、所定の順序に従い、異なる飛行段階で交互に動作し、互いに妨害せずに、飛翔体の射程を向上させることができ、これにより、飛翔体の最終射程を最大限に向上させる。なお、前記ロケット航続距離延長モジュールは、燃料を充填するために体積の大きい収納空間が必要とされ、該ロケット燃料タンクは、飛翔体の後続の飛行に大きな負担を増加させるので、ロケットエンジンの動作が完成した後、該ロケット燃料タンクをそれが位置する飛翔体の尾部とともに飛翔体本体から脱離させることにより、飛翔体の射程をさらに向上させ、本発明に至った。
【0005】
具体的に、本発明の目的は、複数種の協調に動作可能な航続距離延長モジュールを含むことにより、飛翔体の射程を向上させる飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システムを提供することにある。
【0006】
その中、前記複合航続距離延長システムは、ロケット航続距離延長モジュールを含み、前記ロケット航続距離延長モジュールは、飛翔体の尾部に設けられたロケットエンジン1を含み、前記ロケットエンジン1は、飛翔体の上昇段階において動作を開始し、飛翔体の速度及び最大高さを向上させるために用いられ、好ましくは、前記ロケットエンジン1の動作時間が5~10秒である。
【0007】
その中、前記飛翔体の尾部には、前記ロケットエンジン1と接続されているロケット燃料タンク2が設置されており、好ましくは、前記飛翔体の尾部は、飛翔体本体から分離可能であり、より好ましくは、前記飛翔体の尾部は、飛翔体が最高点付近にあるときに飛翔体本体から分離する。
【0008】
前記複合航続距離延長システムは、最下段航続距離延長モジュールを含み、前記最下段航続距離延長モジュールは、飛翔体の尾部側方に設置された排気装置3及びそれと接続する燃焼室4を含み、前記燃焼室4における燃料が燃焼した後に発生する高温気体が前記排気装置から排出された後、飛翔体底部の空気の温度を上昇させ、空気流れ場を変化させることにより、飛翔体底部の抵抗力を低下させ、飛翔体の射程を向上させる。
【0009】
その中、前記最下段航続距離延長モジュールは、飛翔体が最高点に到達する前に燃焼室4における燃料が消耗し尽くすまで動作し続け、好ましくは、前記燃焼室4における燃料の燃焼時間が15~25秒である。
【0010】
その中、前記複合航続距離延長システムは、ロール航続距離延長モジュールを含み、前記ロール航続距離延長モジュールは、飛翔体本体の側部に設置されて尾翼と間隔を置いて設置されたパルスジェット装置5を含み、前記パルスジェット装置5は、ジェット推進力の作用により、飛翔体の揺動幅を低下させ、飛翔体の射程を向上させる。
【0011】
その中、前記パルスジェット装置5は、動作を開始した後、一定時間ごとに尾翼の左側に、飛翔体本体に垂直する方向に気体を噴射することにより、飛翔体の回転速度を向上させ、飛翔体の揺動幅を低下させ、好ましくは、前記尾翼が8枚設置されており、これに対応して、前記ジェット装置も8つ設置されている。
【0012】
その中、前記複合航続距離延長システムは、グライド航続距離延長モジュールを含み、前記グライド航続距離延長モジュールは、グライド傾斜角調節モジュールを含み、前記グライド傾斜角調節モジュールは、グライドセクションにおいて飛翔体の傾斜角を制御するためであり、好ましくは、前記グライド傾斜角調節モジュールは、グライドセクションにおいて飛翔体傾斜角の角度を20度以下に制御する。
【0013】
その中、前記グライド航続距離延長モジュールは、飛翔体本体の底部に設置されているターミナル誘導増速ノズル7をさらに含み、前記ターミナル誘導増速ノズル7は、飛翔体がターミナル誘導段階に入って所定時間経過した後に動作を開始し、前記ターミナル誘導増速ノズル7から噴射してきた高温高圧気体により、飛翔体の落下速度を向上させ、これにより、飛翔体はグライド角度が20度未満の条件を満足する場合でも300メートル/秒より大きい落下速度を有し、好ましくは、ターミナル誘導増速ノズル7は、飛翔体がターミナル誘導段階に入って3秒経過した後に動作を開始し、動作時間が2~3秒である。
【0014】
本発明は、飛翔体上の複合航続距離延長方法をさらに提供し、該方法において、飛翔体が打ち上げられた後、最下段航続距離延長モジュールが最初に動作を開始し、尾翼がはじき出し、機体の回転速度が低下し、姿勢が徐々に安定化した後、ロケット航続距離延長モジュールが動作を開始し、この時、ロケット航続距離延長モジュールが最下段航続距離延長モジュールと同期的に動作し、飛翔体が飛行軌跡の頂点に接近するときに、飛翔体の尾部が飛翔体本体から分離し、飛翔体の尾部と飛翔体本体との分離が完成した後、ロール航続距離延長モジュールが動作を開始し、パルスジェット装置により飛翔体の揺動幅を低下させ、飛翔体が起動した後、グライド航続距離延長モジュールが動作を開始し、グライド傾斜角調節モジュールにより飛翔体を、20度未満の傾斜角でグライドするように制御し、ターミナル誘導段階に入って3秒経過した後、ターミナル誘導増速ノズルが動作を開始し、その内部の燃料が燃焼した後に気体を噴射し、飛翔体の落下速度を向上させることにより、飛翔体が所定の落下速度で目標場所に到達する。
【0015】
本発明は、下記の有益な効果を有する。
【0016】
(1)本発明が提供する飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システムには、少なくとも4種類の航続距離延長モジュールが設置されており、飛翔体が飛行する各段階において飛行速度を増加させ、抵抗力を低下させ、エネルギー損失を低下させ、最後に飛翔体の射程を増加させることができる。
【0017】
(2)本発明が提供する飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システムにおいて、ロケット航続距離延長モジュール及び最下段航続距離延長モジュールが取り付けられた飛翔体の尾部は、動作を完成した後に飛翔体本体から分離、飛翔体の負担を軽減し、飛翔体の射程をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システムの全体構造概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システムの動作過程において対応する飛翔体軌跡を示す図である。
【
図3】
図3は、実験例において複数種の飛翔体の飛行軌跡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面及び実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。これらの説明により、本発明の特徴及び利点がより明瞭かつ明確になる。
【0020】
ここで専用する「例示的」という用語の意味は、「例、実施例又は説明的に用いる」ことである。ここで「例示的」に説明するあらゆる実施例は、その他の実施例より好ましいと解釈される必要はない。図面において実施例の各種の態様を示しているが、特に指摘がない限り、図面を縮尺して描く必要はない。
【0021】
飛翔体は、打ち上げ点から打ち上げられて最終に目標に命中する過程において、一般的に、以下の過程を含み、
図2に示すように、飛翔体は、打ち上げ装置から飛び出した後、まず、尾翼が弾き出され、飛翔体の上昇過程において、もうすぐ頂点に到達する時に、プログラム起動を開始し、ジャイロスコープをアンロックし、制御開始の準備を行い、制御開始した後、最高点を経過し、飛翔体がグライド段階に入り、なるべく平滑な曲線で目標にグライドし、目標に近づく時にターミナル誘導段に入り、操舵装置によって最終に目標に命中できるように飛翔体の姿勢及び方向を調整する。
【0022】
本発明が提供する飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システムによれば、
図1及び
図2に示すように、該システムは、複数種の協調に動作可能な航続距離延長モジュールを含むことにより、飛翔体の射程を向上させる。前記複数種の航続距離延長モジュールは、ロケット航続距離延長モジュール、最下段航続距離延長モジュール、ロール航続距離延長モジュール及びグライド航続距離延長モジュールを含み、飛翔体が飛行する各段階において飛翔体に動力を提供する、あるいはエネルギー損失を低減し、航続距離延長の目的を達成する。
【0023】
1つの好適な実施形態において、
図1、
図2に示すように、前記ロケット航続距離延長モジュールは、飛翔体の尾部に設置されたロケットエンジン1を含み、前記ロケットエンジン1は、飛翔体の上昇段階で動作を開始し、飛翔体の速度及び最大高さを向上させるために用いられ、好ましくは、前記ロケットエンジン1の動作時間が5~10秒であり、この時間内に、飛翔体に全力積が100000~130000(ニュートン・秒)のエネルギーを提供し、飛翔体の速度を200~400メートル/秒から900~1300メートル/秒に向上させることができる。
【0024】
より好ましくは、前記飛翔体の尾部には、前記ロケットエンジン1に接続するロケット燃料タンク2が設置されており、その動作過程は、ロケットエンジンが前記ロケット燃料タンク2に収納される燃料を燃焼し、燃焼により得られた高温気体を飛翔体の尾部から迅速に排出することにより、極めて大きい反作用力を有し、飛翔体の加速に助力を提供し、この過程において、飛翔体が上昇段階にあり、その速度が大きいほど、打ち上げの高さが遠くなり、後続にグライド可能な距離も遠くなり、当然、その射程を延長することができる。
【0025】
好ましくは、前記飛翔体の尾部は、飛翔体本体から分離可能であり、該分離は、砲弾ロケット分離とも称され、分離により、飛翔体本体の体積及び重量を低下させることができ、後続のエネルギー損失を低下させ、飛翔体の飛行距離を延長し、即ち、射程を向上させることができる。
【0026】
より好ましくは、前記飛翔体の尾部は、飛翔体が最高点近傍にあるときに飛翔体本体から分離し、この時、飛翔体の尾部に取り付けられた最下段航続距離延長モジュールも動作内容を完成し、携帯した燃料を使い果たし、航続距離延長に助力を提供できなくなるので、この時に分離することで、ロケット航続距離延長モジュールと最下段航続距離延長モジュールとを共に脱離させ、さらに飛翔体本体の底部を外部に露出させ、後続の更なる航続距離延長作業に十分な作業空間を残す。
【0027】
本発明において、前記飛翔体の尾部と飛翔体本体との間に、爆発ボルトにより接続され、飛翔体の速度又は飛翔体の飛行時間により砲弾ロケット分離のタイミングを選択することができ、飛翔体打ち上げ後に内蔵のタイマーが時間を計り、時間が分離時間に達する、あるいは飛翔体速度が分離速度に達する時に、内蔵電池が電力供給を開始し、爆発ボルトを起爆させることにより、飛翔体の尾部を飛翔体本体から分離させ、通常、分離時間が3~5秒であり、分離速度が500~1100メートル/秒であり、即ち、分離時間又は分離速度のうちのいずれかが所定値に達した場合、砲弾ロケット分離作業が実行される。本発明に記載の爆発ボルト等の接続/分離構造は、本分野で常用される構造であり、具体的には、「低荷重ロケット砲の砲弾ロケット分離機構の改進及び設計」,張世林,王剛『砲弾ロケットと誘導学報』,2017を参照することができる。
【0028】
1つの好適な実施形態において、
図1、
図2に示すように、前記最下段航続距離延長モジュールは、飛翔体の尾部側方に設置された排気装置3及びそれと接続する燃焼室4を含み、前記燃焼室4における燃料が燃焼した後に発生する高温気体は、前記排気装置から排出された後に飛翔体底部の空気の温度を上昇させ、空気の流れ場を変化させることにより、飛翔体底部の抵抗力を低下させ、飛翔体の射程を高めることができる。該高温気体は、排気装置において遅い速度で排出され、それとロケットエンジンとは動作目的が異なり、ジェットの反作用力による加速が必要とされず、飛翔体底部の温度をのみ上昇させればよい。
【0029】
前記排気装置が飛翔体の尾部側方に位置し、飛翔体の尾部に取り付けられたロケットエンジン1と互いに妨害しないので、協調に共存でき、ひいては同時に動作することができる。
【0030】
好ましくは、前記最下段航続距離延長モジュールは、飛翔体が最高点に到達する前に、燃焼室4における燃料が消耗しつくすまで動作し、前記最下段航続距離延長モジュールは、尾翼が弾き出された後に動作を開始し、具体的な動作時間が装薬量により決められ、燃料が消耗しつくす前にずっと動作することができる。
【0031】
好ましくは、前記燃焼室4における燃料の燃焼時間が15~25秒であり、即ち、携帯する燃料は、最下段航続距離延長モジュールを15~25秒、より好ましくは20~25秒動作させることができる。
【0032】
1つの好適な実施形態において、
図1、
図2に示すように、前記ロール航続距離延長モジュールは、飛翔体本体の側部に設置され、尾翼と間隔を置いて設置されたパルスジェット装置5を含み、前記パルスジェット装置5は、ジェット推進力の作用により、飛翔体の揺動幅を低下させ、飛翔体の飛行過程におけるエネルギー損失を低下させることにより、飛翔体の射程を向上させる。パルスジェット装置5は、パルス燃料タンク6に接続され、パルス燃料タンク6は、前記パルスジェット装置5に燃料を提供し、前記パルスジェット装置5は、飛翔体の尾部が飛翔体本体から分離した後に動作を開始し、主にグライドセクションで動作し、前記パルスジェット装置5の動作時間が70~100秒であり、この動作時間がグライドセクションの時間長さにより決められ、グライドセクションの時間長さに応じて対応する動作時間を選択する必要がある。
【0033】
前記パルスジェット装置5が動作を開始した後に、前記パルスジェット装置5は、特定の時間ごとに尾翼左側に、飛翔体本体に垂直する方向にガスを噴射し、その中、前記特定の時間を3秒とすることが好ましく、これにより、飛翔体の回転速度を向上させ、飛翔体の揺動幅を低下させる。
【0034】
好ましくは、前記尾翼が8枚設けられており、これに対応して、前記ジェット装置も8個設けられている。従来の4枚の尾翼の飛翔体と比べて、本願では8枚の尾翼を設置することにより、飛翔体の安定性を向上させ、飛翔体の揺動幅を低下させ、飛行過程におけるエネルギー損失を低下させ、これに基づき、ジェット装置を設置して、エネルギー損失をさらに低下させ、飛翔体の射程を向上させることができる。
【0035】
複数のパルスジェット装置が動機に動作し、全体の応力を均一にさせる。
【0036】
1つの好適な実施形態において、
図1、
図2に示すように、前記グライド航続距離延長モジュールは、グライド傾斜角調節モジュールを含み、前記グライド傾斜角調節モジュールは、グライドセクションにおいて飛翔体の傾斜角を制御するために用いられ、好ましくは、前記グライド傾斜角調節モジュールは、グライドセクションにおいて飛翔体の傾斜角度を20度以下、好ましくは15~20度に制御する。従来技術において、飛翔体は、通常、グライド段階でのグライド傾斜角を30~50度の範囲内に維持することにより、十分な落下速度を取得し、そのグライド距離が当然短くなる。
【0037】
具体的に言えば、グライド傾斜角調節モジュールは、操舵装置の操舵を制御することにより、飛翔体の方向及び姿勢を調整し、飛翔体をこの特定の速度及び傾斜角でグライドさせ、即ち、20度の傾斜角、好ましくは15~20度の傾斜角を選択する。
【0038】
前記グライド傾斜角調節モジュールとしては、TI社のDSP28335のワンチップコンピュータを使用することができる。
【0039】
好ましくは、前記グライド航続距離延長モジュールは、飛翔体本体の底部に設置されたターミナル誘導増速ノズル7をさらに含む。
【0040】
前記ターミナル誘導増速ノズル7は、飛翔体がターミナル誘導段階に入って所定時間経過した後に動作を開始し、前記ターミナル誘導増速ノズル7から高温高圧気体を噴射することにより飛翔体の落下速度を向上させ、飛翔体のグライド角度が20度未満の条件を満足する場合でも300メートル/秒超えの落下速度を有することとなる。従来技術においてグライド傾斜角を30~50度の範囲以内に制御することにより、飛翔体の落下速度が200~240メートル/秒に到達することができ、ほとんど最も基本的な使用要求を満足でき、もちろん、落下速度を向上させることができれば、飛翔体の作用効果をさらに向上させることができる。
【0041】
前記ターミナル誘導増速ノズル7がターミナル誘導増速燃料タンク8に接続され、ターミナル誘導増速燃料タンク8はターミナル誘導増速ノズル7に燃料を提供し、燃料が燃焼して発生する高温高圧気体がターミナル誘導増速ノズル7から噴射され、反作用力の作用により、飛翔体本体に前進の動力を提供し、飛翔体本体の速度を向上させ、即ち、飛翔体の落下速度を増加させる。
【0042】
好ましくは、ターミナル誘導増速ノズル7は、飛翔体がターミナル誘導段階に入って3秒経過した後に動作を開始し、動作時間が2~3秒である。この時間帯において、飛翔体に全力積が18000~32000(ニュートン・秒)のエネルギーを提供し、飛翔体の速度を100~150メートル/秒から300~500メートル/秒に向上させることができる。
【0043】
本発明において、飛翔体上の複合航続距離延長方法をさらに提供し、該方法において、以下のステップを含む。
【0044】
飛翔体が打ち上げられた後、最下段航続距離延長モジュールがまず動作を開始し、飛翔体の尾部における空気を加熱し、空気抵抗力を低下させ、尾翼が弾き出され、機体の回転速度が低下し、姿勢が徐々に安定化した後、ロケット航続距離延長モジュールが動作を開始し、この時、ロケット航続距離延長モジュールが最下段航続距離延長モジュールと同期に動作し、飛翔体の速度を迅速に向上させ、飛翔体がより高い高度位置に到達することができ、飛翔体が飛行軌跡の頂点に近づく時に、飛翔体の尾部が飛翔体本体から分離し、飛翔体の尾部の飛翔体本体からの分離が完成した後、ロール航続距離延長モジュールが動作を開始し、パルスジェット装置により飛翔体の揺動幅を低下させ、飛翔体制御開始した後に、グライド航続距離延長モジュールが動作を開始し、グライド傾斜角調節モジュールにより飛翔体を15~20度の傾斜角でグライドさせるように制御し、ターミナル誘導段階に入って3秒経過した後、ターミナル誘導増速ノズルが動作を開始し、その中の燃料が燃焼した後に気体を噴射し、飛翔体の落下速度を向上させ、飛翔体を所定の落下速度で目標点に到達させる。
【0045】
実験例
飛翔体シミュレーションシステムにより、飛翔体の飛行軌跡をシミュレーションし、シミュレーション実験において、同一打ち上げ場所で、同一方向に同一型番の5枚の飛翔体を打ち上げ、各々の飛翔体についてなるべく遠い目標を選択し、もって飛翔体が落下速度の制約を満足する場合に命中可能な最も遠い目標を判断し、その中、本実験において落下速度制約が300メートル/秒より大きい。
【0046】
1枚目の飛翔体中に本発明に記載の飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システムが実装されており、
図1に示すように、該飛翔体にはロケット航続距離延長モジュール、最下段航続距離延長モジュール、ロール航続距離延長モジュール及びグライド航続距離延長モジュールが設置されており、かつ、上記航続距離延長モジュールが協調に動作し、飛翔体の射程を最大限に向上させる。該飛翔体の飛行軌跡が
図3における方案一に示すように、落下速度が300メートル/秒超えの条件を満足する場合、113キロメートル以外の目標を命中でき、かつ、円公算誤差を15米以内に確保することができる。
【0047】
2枚目の飛翔体には、本発明におけるロケット航続距離延長モジュールのみ実装されており、すなわち、ロケットエンジン及びロケット燃料タンクが実装されており、かつ、該飛翔体の尾部が飛翔体本体から分離できず、該飛翔体の飛行軌跡は、
図3における方案二に示すように、落下速度が300メートル/秒超えの条件を満足する場合、42キロメートルの距離以外の目標を命中することができ、かつ、円公算誤差を15米以内に確保することができる。
【0048】
3枚目の飛翔体には、本発明に記載のロケット航続距離延長モジュール及び最下段航続距離延長モジュールのみ実装されており、即ち、ロケットエンジン、ロケット燃料タンク、排気装置及び燃焼室が実装されており、かつ、該飛翔体の尾部が飛翔体本体から分離できず、該飛翔体の飛行軌跡は、
図3における方案三に示すように、落下速度が300メートル/秒の条件を満足する場合、53キロメートルの距離以外の目標を命中することができ、かつ、円公算誤差を15米以内に確保することができる。
【0049】
4枚の飛翔体には、本発明に記載のロケット航続距離延長モジュール及び最下段航続距離延長モジュールのみ実装されており、即ち、ロケットエンジン、ロケット燃料タンク、排気装置及び燃焼室が実装されており、かつ、該飛翔体の尾部が飛翔体本体から分離可能であり、飛翔体が最高点位置付近に到達する時に、飛翔体の尾部が飛翔体本体から分離し、該飛翔体の飛行軌跡は、
図3における方案四に示すように、落下速度が300メートル/秒超えの条件を満足する場合、162キロメートルの距離以外の目標を命中することができ、かつ、円公算誤差を15米以内に確保することができる。
【0050】
5枚目の飛翔体には、いかなる航続距離延長モジュールも実装されておらず、該飛翔体の飛行軌跡は、
図3における方案五に示すように、落下速度が300メートル/秒の条件を満足する場合、29キロメートルの距離以外の目標を命中することができ、かつ、円公算誤差を15米以内に確保することができる。
【0051】
上記実験の比較からわかるように、本願が提供する飛翔体から分離可能な複合航続距離延長システムは、飛翔体の射程を有効に向上させることができる。
【0052】
以上、好適な実施形態を参照しながら本発明を説明したが、これらの実施形態は例示的なものに過ぎず、説明的作用だけである。これに基づき、本発明に対して種々の置き換え及び改進を行うことができ、これらはいずれも本発明の保護範囲内に入っている。
【符号の説明】
【0053】
1-ロケットエンジン
2-ロケット燃料タンク
3-排気装置
4-燃焼室
5-パルスジェット装置
6-パルス燃料タンク
7-ターミナル誘導増速ノズル
8-ターミナル誘導増速燃料タンク