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特許7137276血清型A口蹄疫ウイルス用モザイクワクチン
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  • 特許-血清型A口蹄疫ウイルス用モザイクワクチン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】血清型A口蹄疫ウイルス用モザイクワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/42 20060101AFI20220907BHJP
   A61K 39/135 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220907BHJP
   C07K 14/09 20060101ALI20220907BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
C12N15/42
A61K39/135
A61K39/39
A61P31/14
A61P37/04
C07K14/09 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N15/85 Z
C12N7/01
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019523051
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 US2017058295
(87)【国際公開番号】W WO2018081274
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】62/415,124
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/785,875
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500228193
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ、アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ アグリカルチュアー
(73)【特許権者】
【識別番号】317013991
【氏名又は名称】ロスアラモス ナショナル セキュリティー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーダー アイダ イー.
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー ウィリアム エム.
(72)【発明者】
【氏名】ライ デヴェンドラ ケー.
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516086(JP,A)
【文献】Mohapatra J. K. et al., “P1, partial [Foot-and-mouth disease virus - type A]”, GenBank [online], 2015年3月4日, Accession No.AHW42559.1, [2021年9月3日検索], インターネット< https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AHW42559.1/>
【文献】Mohapatra J. K. et al., “P1, partial [Foot-and-mouth disease virus - type A]”, GenBank [online], 2015年3月4日, Accession No. AHW42489.1, [2021年9月3日検索], インターネット< https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ahw42489.1>
【文献】Jamal S. M. et al., “polyprotein, partial [Foot-and-mouth disease virus - type A]”, GenBank [online], 2011年11月29日, Accession No. AEB02101.1, [2021年9月3日検索], インターネット< https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/aeb02101.1>
【文献】Ludi A. B. et al., “capsid protein, partial [Foot-and-mouth disease virus - type A]”, GenBank [online], 2014年2月25日, Accession No. AGO58323.1, [2021年9月3日検索], インターネット< https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ago58323.1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4のアミノ酸配列を含む、合成ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の合成ポリペプチドを含み、薬学的に許容される担体を更に含む、組成物。
【請求項3】
配列番号2のアミノ酸配列を含む第1の合成ポリペプチドと、配列番号4のアミノ酸配列を含む第2の合成ポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
アジュバントを更に含む、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
配列番号4のアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを含む、組換え口蹄疫ウイルス(FMDV)。
【請求項6】
配列番号2のアミノ酸配列を含む合成ポリペプチドおよび配列番号4のアミノ酸配列を含む合成ポリペプチドを含む、請求項5に記載の組換えFMDV。
【請求項7】
請求項1に記載の合成ポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
【請求項8】
配列番号3の塩基配列を含む、請求項7に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
請求項7に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターであって、FMDVのLタンパク質、野性型VP4タンパク質、P2タンパク質及びP3タンパク質のコード配列を更に含み、許容宿主細胞に前記ベクターをトランスフェクトすることにより、感染性FMDVが生産される、ベクター。
【請求項11】
被験体において血清型Aの口蹄疫ウイルス(FMDV1)に対する免疫応答を惹起する医薬の製造における請求項1に記載の合成ポリペプチドの使用であって、前記医薬の前記被験体に対する投与によって、血清型AのFMDVに対する免疫応答が惹起される、使用。
【請求項12】
前記医薬が、薬学的に許容される担体を更に含む、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬が、アジュバントを更に含む、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬が第1の組成物と第2の組成物とを含み、前記第1の組成物が配列番号2のアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを含み、前記第2の組成物が配列番号4のアミノ酸配列を有する第2の合成ポリペプチドを含む、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記第1及び第2の組成物が前記被験体の異なる解剖学的部位への投与用に処方されている、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
被験体において血清型Aの口蹄疫ウイルス(FMDV)に対する免疫応答を惹起する医薬の製造における請求項2に記載の組成物の使用であって、前記医薬の前記被験体に対する投与によって、血清型AのFMDVに対する免疫応答が惹起される、使用。
【請求項17】
被験体において血清型Aの口蹄疫ウイルス(FMDV)に対する免疫応答を惹起する医薬の製造における請求項5に記載のウイルスの使用であって、前記医薬の前記被験体に対する投与によって、血清型AのFMDVに対する免疫応答が惹起される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口蹄疫ウイルス(FMDV)の合成ポリペプチド及び核酸、並びに血清型AのFMDVに対して広範な免疫応答を誘導するためのこれらの使用に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許法第119(e)の下で、2016年10月31日出願の米国特許仮出願第62/415,124号の優先権を主張するものであり、本参照をもって、当該仮出願の内容全体を本願の一部を構成するものとして援用する。
【0003】
[政府支援に関する承認]
本発明は、米国エネルギー省による契約番号DE-AC52-06NA25396の下、米国政府支援によりなされたものである。米国政府は本発明に対し一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
FMDVは家畜疾病をもたらし、FMDV流行地域に深刻な経済的影響を及ぼす。更に、FMDVが流行していない地域でFMDVが発病すれば、大きな経済的損害となる可能性がある。現在、アウトブレイク(outbreak)のコントロール戦略としての「殺処分、焼却、埋める」は、経済、動物への慈悲及び戦略に関する理由から満足いくものではない(Breeze, Biosecur Bioterro 2(4): 254-264, 2004)。ワクチン接種はアウトブレイクの管理に不可欠な要素となり得るが、入手可能なワクチンは不活化ウイルスに基づくため、費用、製造安全性、免疫期間、防御の程度に関して満足いくものではない(Rodriguez and Gay, Expert Rev Vaccines 10(3):377-387, 2011; Robinson et al., Transbound Emerg Dis 63(Suppl 1):30-41, 2016)。北米以外では、EU、オーストラリア及びニュージーランドでFMDVは広く流行している。FMDVは自然環境に耐性があり、感染力が高い。米国におけるFMDVのアウトブレイクの直接の経済的影響は数百億ドルから数千億ドルと見積もられるが、迅速かつ広範なワクチン接種によりこのコストを半分に減らせる可能性がある(Schroeder et al., Journal of Agricultural and Applied Economics 47:47-76, 2015)。
【0005】
FMDVには7種の主たる血清型があり、うち4種(A、O、C及びAsia-1)は広く分布し、3種(SAT-1、SAT-2及びSAT-3)は主にサハラ以南のアフリカで見出される。血清型内での多様性が高いため、同一血清型の単離体の間ですらクロス防御性は低い。この多様性の観点から、個々のアウトブレイクについて、多くのワクチン株の内の一株をフィールドに適合させる必要がある。FMDVワクチンの最近の発展により、多くの分野で改善がなされたものの(Robinson et al., Transbound Emerg Dis 63(Suppl 1):30-41, 2016)、防御の程度は限定的である。即ち、多くのワクチンは、そのワクチン株に密接に関連するアウトブレイクのみを防御するものであり、全ての起こり得るアウトブレイクの防御に対しては莫大なワクチンの備蓄が必要となるであろう。
【0006】
従って、異なるFMDV株に対するワクチン誘導型防御の程度を改善する必要が未だ存在する。
【発明の概要】
【0007】
天然のFMDVポリペプチドに比べ、高レベルのT細胞エピトープカバレージを提供し、且つ最小限の非天然エピトープやレアエピトープしか有さないFMDVモザイクポリペプチドを開示する。ここに開示されるモザイクポリペプチドと核酸組成物は、広範な血清型AのFMDV株に対する防御を提供する免疫応答の惹起に使用することができる。
【0008】
モザイクポリペプチドVP4.2.1(配列番号2)又はモザイクポリペプチドVP4.2.2(配列番号4)に対して少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を有する合成FMDVポリペプチドを提供する。前記モザイクポリペプチドを含む組換えFMDVも提供する。
【0009】
更に、モザイクVP4.2.1ポリペプチド及びVP4.2.2ポリペプチドをコードする核酸分子及びベクターを提供する。幾つかの実施形態において、前記ベクターは、前記ベクターが許容宿主細胞にトランスフェクトされた際に感染性FMDVが生産されるよう、残りのFMDVタンパク質をコードする配列を含む。
【0010】
本開示により、一種若しくは両種のモザイクFMDVポリペプチド、又は一種若しくは両種のモザイクFMDVポリペプチドをコードする核酸分子を含む組成物も提供される。幾つかの実施例において、前記組成物は、前記モザイクポリペプチドを含む、或いはそれぞれが異なるモザイクFMDVポリペプチドを有する2種の組換えFMDVを含む。
【0011】
また、被験体においてFMDVに対する免疫応答を惹起する方法、及び本明細書に開示するモザイクFMDVポリペプチド、核酸分子、ベクター、組換えFMDV又は組成物を被験体に投与することにより、前記被験体をFMDVに対し免疫化する方法を提供する。
【0012】
本発明の前述及びそれ以外の目的、特徴及び利点は、添付の図面に参照する次の詳細な説明により一層明らかとなろう。
【0013】
[参照による援用]
本明細書で言及する刊行物、特許及び特許出願の全てを、参照をもって本願に援用するが、それぞれの刊行物、特許及び特許出願が特定的且つ個別に本明細書の一部を構成するものとして援用すると記載されているがごとく、ここに本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0014】
本特許出願は一以上のカラー図面を含む。カラー図面を含む本特許公報及び特許出願公報のコピーは、米国特許商標庁に請求の上、必要な費用を支払うことにより提供される。
【0015】
本発明の新規な特徴は、それらの詳細と共に請求の範囲に示される。本発明の特徴と利点は、次の詳細な説明および添付の図面において言及される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1はモザイク免疫原の設計方法の概略図である。図1は本方法を概念的に表したものである。これにより、天然のタンパク質配列が(検査による)選択され、Fischer et al. (Nat Med 13:100-106, 2007)に記載されるモザイクアルゴリズムによる処理がなされて、高カバレージの合成配列が創出される。
図2A図2A~2Cは、異なる候補ワクチンによる潜在的FMDVカプシドエピトープのカバレージを示す。(図2A)同サイズの天然配列カクテルと比較した1-、2-及び3-モザイクカクテルのカバレージ。
図2B図2A~2Cは、異なる候補ワクチンによる潜在的FMDVカプシドエピトープのカバレージを示す。(図2B)FMDV血清型Aのカプシドタンパク質の系統発生分布であって、天然株A24/クルゼイロによるカバレージ(左)、又は本明細書に開示する2-配列モザイクカクテルによるカバレージ(右)。
図2C図2A~2Cは、異なる候補ワクチンによる潜在的FMDVカプシドエピトープのカバレージを示す。(図2C)単離年毎のウイルス変異体のカバレージ。天然株A24ワクチンに比べ、モザイクは最近の単離体をより良好にカバーする。青線は10年平均値を示す。
図3図3は感染性核酸モザイク構築物の組織培養増殖及びプラークモルフォロジーを表す。ウイルスプラーク(ウイルス複製の中心)は、プレート中の未感染細胞の暗背景において明スポットとして視認される。
図4図4はA型モザイクFMDVワクチンの誘導を示す。FMDVゲノム構成及びA型モザイクFMDV突然変異体のダイアグラムを示す。ウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)にコードされるタンパク質の位置と5’及び3’未翻訳領域(UTR)にコードされる要素の位置を示した、基本的なFMDVゲノムの構成を示す。モザイク突然変異ウイルスは、Rieder et al.(J Virol. 79:12989-12998, 2005)に記載される、FMDVアウトブレイク株A24クルゼイロの全長クローンpA24Cruをバックボーンとして用いるDNA合成により創出された。
【0017】
[配列]
【0018】
配列番号1はモザイクFMDV-VP4.2.1カプシドの塩基配列である。
GGGGCCGGCCAATCCAGTCCGGCGACCGGCTCGCAGAACCAATCTGGCAACACTGGCAGCATAATTAACAACTACTACATGCAGCAATACCAGAACTCCATGGACACACAGTTGGGAGACAATGCCATCAGTGGAGGCTCCAACGAGGGCTCCACGGACACAACTTCAACACACACAACCAACACTCAAAACAATGACTGGTTCTCGAAGCTCGCCAGTTCAGCTTTTACCGGTCTGTTCGGTGCACTGCTCGCCGACAAGAAGACAGAGGAAACGACACTTCTTGAGGACCGCATCCTCACCACCCGCAACGGGCACACCACCTCGACGACCCAATCGAGTGTGGGTGTCACATACGGGTACTCCACAGGGGAGGACCACGTTTCTGGGCCCAACACATCGGGCCTGGAGACGCGAGTGGTGCAGGCAGAGAGATTCTTCAAAAAGTTCTTGTTTGACTGGACAACGGACAAGCCATTTGGACACCTGGAAAAGCTGGAGCTCCCGACCGACCACAAGGGTGTCTACGGACACTTGGTGGACTCGTTCGCCTATATGAGAAATGGCTGGGATGTTGAGGTGTCCGCTGTTGGCAACCAGTTCAACGGCGGGTGCCTCCTGGTGGCCATGGTACCTGAATGGAAGAAATTTACAACACGGGAGAAATACCAACTCACCCTTTTCCCGCACCAGTTTATTAACCCCAGAACTAACATGACTGCCCACATCGTGGTCCCCTACCTTGGTGTGAACAGGTATGATCAGTACAAGAAGCATAAGCCCTGGACATTGGTTGTCATGGTCGTGTCGCCACTTACGACCACAAGCATTGGTGCGACACAAATCAAGGTCTACGCCAACATAGCTCCGACCTATGTTCACGTGGCCGGTGAACTCCCCTCGAAAGAGGGGATTGTCCCGGTTGCATGTGCGGACGGTTACGGAGGATTGGTGACGACAGACCCGAAGACAGCTGACCCTGTTTATGGCATGGTGTACAACCCGCCTAGGACTAACTTCCCTGGGCGCTTCACCAACCTGTTGGACGTGGCCGAAGCGTGTCCCACTTTCCTCTGCTTTGACAACGGGAAACCGTACGTCGTCACGCGGACGGATGAACAGCGACTTTTGGCCAAGTTTGACCTTTCCCTTGCCGCAAAACATATGTCCAACACATACCTGTCAGGGATTGCTCAGTACTACGCACAGTACTCTGGCACCATCAATTTGCATTTCATGTTCACAGGTTCCACTGATTCAAAGGCCCGATACATGGTGGCCTACGTCCCACCTGGGGTGGAGACACCACCGGACACACCTGAAAGGGCTGCCCACTGCATTCACGCTGAATGGGACACTGGACTAAACTCCAAATTCACTTTCTCAATCCCGTACATGTCCGCCGCGGATTACGCGTACACAGCGTCTGACACGGCAGAAACAACCAACGTACAGGGATGGGTCTGCGTCTACCAAATTACACACGGGAAGGCTGAAAATGACACCTTGGTCGTGTCGGCCAGCGCCGGCAAAGACTTTGAGTTGCGCCTCCCGATTGACCCCCGCGCGCAGACCACCGCTACCGGGGAATCAGCAGACCCGGTCACCACCGCCGTGGAGAACTACGGCGGTGAGACACAAGTCCAGAGACGTCACCACACGGACGTTAGTTTCATCATGGACAGATTTGTGAAGATCGGAACCACTAACCCAACACATGTCATTGACCTCATGCAGACTCACCAACACGGTCTGGTGGGTGCCTTGCTGCGTGCAGCCACGTACTACTTTTCTGACCTGGAAATTGTTGTACGGCACGAAGGCAATCTGACCTGGGTGCCCAACGGCGCCCCTGAAGCAGCCCTGTCCAACACAGGAAACCCCACTGCCTACAACAAGGCACCATTCACGAGACTCGCTCTCCCCTACACTGCGCCGCACCGTGTGCTGGCAACAGTGTACAACGGGACGAACAAGTACTCCGCGGCCAGTGGGCGCACAAGAGGCGACTTGGGGCAACTCGCGGCGCGAATCGCGGCACAGCTTCCTGCTTCATTTAACTTCGGTGCAATCAAGGCCGACGCCATCCACGAACTTCTCGTGCGCATGAAACGGGCCGAGCTCTACTGCCCCAGACCGCTGTTGGCAATAGAGGTGTCTTCGCAAGACAGGTACAAGCAAAAGATCATTGCACCAGCAAAGCAG
【0019】
配列番号2はモザイクFMDV-VP4.2.1カプシドのアミノ酸配列である。
GAGQSSPATGSQNQSGNTGSIINNYYMQQYQNSMDTQLGDNAISGGSNEGSTDTTSTHTTNTQNNDWFSKLASSAFTGLFGALLADKKTEETTLLEDRILTTRNGHTTSTTQSSVGVTYGYSTGEDHVSGPNTSGLETRVVQAERFFKKFLFDWTTDKPFGHLEKLELPTDHKGVYGHLVDSFAYMRNGWDVEVSAVGNQFNGGCLLVAMVPEWKKFTTREKYQLTLFPHQFINPRTNMTAHIVVPYLGVNRYDQYKKHKPWTLVVMVVSPLTTTSIGATQIKVYANIAPTYVHVAGELPSKEGIVPVACADGYGGLVTTDPKTADPVYGMVYNPPRTNFPGRFTNLLDVAEACPTFLCFDNGKPYVVTRTDEQRLLAKFDLSLAAKHMSNTYLSGIAQYYAQYSGTINLHFMFTGSTDSKARYMVAYVPPGVETPPDTPERAAHCIHAEWDTGLNSKFTFSIPYMSAADYAYTASDTAETTNVQGWVCVYQITHGKAENDTLVVSASAGKDFELRLPIDPRAQTTATGESADPVTTAVENYGGETQVQRRHHTDVSFIMDRFVKIGTTNPTHVIDLMQTHQHGLVGALLRAATYYFSDLEIVVRHEGNLTWVPNGAPEAALSNTGNPTAYNKAPFTRLALPYTAPHRVLATVYNGTNKYSAASGRTRGDLGQLAARIAAQLPASFNFGAIKADAIHELLVRMKRAELYCPRPLLAIEVSSQDRYKQKIIAPAKQ
【0020】
配列番号3はモザイクFMDV-VP4.2.2カプシドの塩基配列である。
GGGGCCGGCCAATCCAGTCCGGCGACCGGCTCGCAGAACCAATCTGGCAACACTGGCAGCATAATTAACAACTACTACATGCAGCAATACCAGAACTCCATGGACACACAGTTGGGAGACAATGCCATCAGTGGAGGCTCCAACGAGGGCTCCACGGACACAACTTCAACACACACAACCAACACTCAAAACAATGACTGGTTCTCGAAGCTCGCCAGTTCAGCTTTTACCGGTCTGTTCGGTGCACTGCTCGCCGACAAGAAGACAGAGGAAATCACACTTCTTGAGGACCGCATCCTCACCACCCGCAACGGGCACACCATCTCGACGACCCAATCGAGTGTGGGTGTCACATACGGGTACTCCACAGAGGAGGACCACGTTGCTGGGCCCAACACATCGGGCCTGGAGACGCGAGTGGTGCAGGCAGAGAGATTCTTCAAAAAGCACTTGTTTGACTGGACAACGGACAAGGCATTTGGACACCTGGAAAAGCTGGAGCTCCCGACCGAACACAAGGGTGTCTACGGACACTTGGTGGACTCGTACGCCTATATGAGAAATGGCTGGGATGTTGAGGTGACCGCTGTTGGCAACCAGTTCAACGGCGGGTGCCTCCTGGTGGCCATGGTACCTGAATGGAAGGAATTTACCCCACGGGAGAAATACCAACTCACCCTTTTCCCGCACCAGTTTATTAGCCCCAGAACTAACATGACTGCCCACATCACGGTCCCCTACCTTGGTGTGAACAGGTATGATCAGTACAAGCAGCATAAGCCCTGGACATTGGTTGTCATGGTCGTGTCGCCACTTACGACCAGCAGCATTGGTGCGTCACAAATCAAGGTCTACGCCAACATAGCTCCGACCCATGTTCACGTGGCCGGTGAACTCCCCTCGAAAGAGGGGATTGTCCCGGTTGCATGTTCGGACGGTTACGGAGGATTGGTGACGACAGACCCGAAGACAGCTGACCCTGCTTATGGCAAGGTGTACAACCCGCCTAGGACTAACTACCCTGGGCGCTTCACCAACCTGTTGGACGTGGCCGAAGCGTGTCCCACTTTCCTCTGCTTTGACGACGGGAAACCGTACGTCGTCACGCGGACGGATGACCAGCGACTTTTGGCCAAGTTTGACGTTTCCCTTGCCGCAAAACATATGTCCAACACATACCTGGCAGGGCTTGCTCAGTACTACACACAGTACTCTGGCACCATCAATTTGCATTTCATGTTCACAGGTTCCACTGAGTCAAAGGCCCGATACATGGTGGCCTACATCCCACCTGGGGTGGAGACACCACCGGACACACCTGAAAAGGCTGCCCACTGCATTCACGCTGAATGGGACACTGGACTAAACTCCAAATTCACTTTCTCAATCCCGTACGTATCCGCCGCGGATTACGCGTACACAGCGTCTGACGTGGCAGAAACAACCAACGTACAGGGATGGGTCTGCATCTACCAAATTACACACGGGAAGGCTGAACAAGACACCTTGGTCGTGTCGGTTAGCGCCGGCAAAGACTTTGAGTTGCGCCTCCCGATTGACCCCCGCACGCAGACCACCACTGCCGGGGAATCAGCAGACCCGGTCACCACCACCGTGGAGAACTACGGCGGTGAGACACAAGCCCAGAGACGTCACCACACGGACGTTGGTTTCATCATGGACAGATTTGTGAAGATCGGAAACACGAGCCCAACACATGTCATTGACCTCATGCAGACTCACCAACACGCTCTGGTGGGTGCCTTGCTGCGTGCAGCCACGTACTACTTTTCTGACCTGGAAATTGTTGTACGGCACGACGGCAATCTGACCTGGGTGCCCAACGGCGCCCCTGTAGAAGCTCTGGCGAACACCAGCAACCCCACTGCCTACCACAAGCAACCATTCACGAGACTCGCTCTCCCCTACACTGCGCCGCACCGTGTGCTGGCAACAGTGTACAACGGGACGAGTAAGTACTCCGCGCCTGCTACAAGAAGAGGCGACTTGGGGTCTCTCGCGGCGCGAGTCGCGGCACAGCTTCCTTCTTCATTTAACTTCGGTGCAATCAGGGCCACCACCATCCACGAACTTCTCGTGCGCATGAGACGGGCCGAGCTCTACTGCCCCAGACCGCTGTTGGCAGTAGAGGTGTCTTCGCAAGACAGGCACAAGCAAAAGATCATTGCACCAGCAAGGCAG
【0021】
配列番号4はモザイクFMDV-VP4.2.2カプシドのアミノ酸配列である。
GAGQSSPATGSQNQSGNTGSIINNYYMQQYQNSMDTQLGDNAISGGSNEGSTDTTSTHTTNTQNNDWFSKLASSAFTGLFGALLADKKTEEITLLEDRILTTRNGHTISTTQSSVGVTYGYSTEEDHVAGPNTSGLETRVVQAERFFKKHLFDWTTDKAFGHLEKLELPTEHKGVYGHLVDSYAYMRNGWDVEVTAVGNQFNGGCLLVAMVPEWKEFTPREKYQLTLFPHQFISPRTNMTAHITVPYLGVNRYDQYKQHKPWTLVVMVVSPLTTSSIGASQIKVYANIAPTHVHVAGELPSKEGIVPVACSDGYGGLVTTDPKTADPAYGKVYNPPRTNYPGRFTNLLDVAEACPTFLCFDDGKPYVVTRTDDQRLLAKFDVSLAAKHMSNTYLAGLAQYYTQYSGTINLHFMFTGSTESKARYMVAYIPPGVETPPDTPEKAAHCIHAEWDTGLNSKFTFSIPYVSAADYAYTASDVAETTNVQGWVCIYQITHGKAEQDTLVVSVSAGKDFELRLPIDPRTQTTTAGESADPVTTTVENYGGETQAQRRHHTDVGFIMDRFVKIGNTSPTHVIDLMQTHQHALVGALLRAATYYFSDLEIVVRHDGNLTWVPNGAPVEALANTSNPTAYHKQPFTRLALPYTAPHRVLATVYNGTSKYSAPATRRGDLGSLAARVAAQLPSSFNFGAIRATTIHELLVRMRRAELYCPRPLLAVEVSSQDRHKQKIIAPARQ
【0022】
配列番号5はSanDIフォワードプライマーの塩基配列である。
AGCGGAGCATGACGGCCGTGGGACCC
【0023】
配列番号6はVP4リバースプライマーの塩基配列である。
TGTTCGGTGCACTGCTCGCCG
【0024】
配列番号7はVP4フォワードプライマーの塩基配列である。
TGTTCGGTGCACTGCTCGCCG
【0025】
配列番号8はNheIリバースプライマーの塩基配列である。
TCAACGTCTCCGGCTAGCTTAAGCAGGTCAAAATTC
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施形態を説明する。この種の実施形態が例示的に示されることは当業者にとって明白であろう。当業者は、本発明を逸脱することなく種々の変形、変更及び置換をなし得る。本発明の実施にあたり、本明細書に記載する実施形態の種々の変更例を採用することができる。請求項は本発明の範囲を定義し、これら請求項の範囲に属する方法及び構造並びにこれらの等価物も本発明の範囲にあることを意図している。
【0027】
略語
BEI バイナリーエチレンイミン
FMDV 口蹄疫ウイルス
IC 感染性cDNAクローン
ORF オープンリーディングフレーム
PFU プラーク生成ユニット
UTR 未翻訳領域
VP ウイルスタンパク質
WT 野性型
【0028】
用語及び方法
特段に断らない限り、各技術用語は通常の用法にて使用する。分子生物学における一般的用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, published by Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9); Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9); and Robert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)を参照することができる。
【0029】
本開示における様々な実施形態の説明を容易とするため、具体的用語について次に説明する。
【0030】
アジュバント:抗原に対する免疫応答を非特異的に向上させる物質又は溶媒。アジュバントは、抗原が吸着される無機物(ミョウバン、水酸化アルミニウム又はホスフェート)のサスペンジョン、或いは抗原溶液が鉱物油に乳化した油中水型(WO)乳剤(例えば、フロイントの不完全アジュバント)、場合によっては死菌マイコバクテリアを加えて抗原性を更に高めたWO乳剤(フロイントの完全アジュバント)を含んでもよい。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド等)をアジュバントとすることもできる(例えば米国特許番号第6,194,388号、第6,207,646号、第6,214,806号、第6,218,371号、第6,239,116号、第6,339,068号、第6,406,705号、及び第6,429,199号)。アジュバントは共刺激分子等の生物学的分子も含む。生物学的アジュバントの例としては、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L及び41BBLが挙げられる。
【0031】
投与:被験体に治療剤(例えば組換えウイルス)等の試薬をを有効ないずれかの経路で供与すること。投与経路の例としては、注射(皮下、筋内、皮内、腹腔内、静注等)、経口、管内、舌下、直腸内、経皮、鼻腔内、経膣、吸引の各径路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
抗体:B型リンパ球から生産され、特異的なアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子。抗体は、ヒト又は他の動物中、特異的な抗原(免疫原)によって発生する。抗体は、明確な様式で抗原と特異的なに反応することを特徴とし、抗体と抗原のそれぞれが互いに定義される。「抗体応答の惹起」とは、抗原又は他の分子が抗体生産を誘起する能力を意味する。
【0033】
縮重変種:本開示の文脈において「縮重変種」とは、遺伝情報により縮重した配列を含むペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。20の天然アミノ酸が存在するが、多くは2以上のコドンによって特定される。従って、塩基配列によりコードされるペプチドのアミノ酸配列が変わらない限り、そのペプチドをコードする全ての縮重塩基配列が含まれる。
【0034】
異種:異種タンパク質又は異種ポリペプチドとは、異なる原料又は種から誘導したタンパク質又はポリペプチドを意味する。
【0035】
免疫応答:抗原又はワクチン等の刺激に対するB細胞、T細胞、マクロファージ、多核白血球等の免疫系細胞の応答。免疫応答は、例えば、インターフェロンやサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、ホストの防衛的応答に関連するいかなる生体細胞をも含むことができる。免疫応答には、先天免疫応答や炎症が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において、防御的免疫応答とは、被験体を感染から防御する(感染を防ぐ、或いは感染関連の疾病の進行を防ぐ)免疫応答を意味する。免疫応答の測定方法は当技術分野でよく知られており、例えばリンパ球(B細胞又はT細胞等)の増殖及び/又は活性、サイトカインやケモカインの分泌、炎症、抗体の産生等を測定することを含む。
【0036】
免疫原:適切な条件下で動物において、抗体の産生又はT細胞の応答といった免疫応答を刺激することができる化合物、組成物又は物質。動物に注入又は吸収される組成物も含まれる。
【0037】
免疫化:ワクチン接種等により被験体を感染性疾患から防御すること。
【0038】
単離された:「単離された」生物学的成分(核酸分子、タンパク質、ウイルス又は細胞等)は、生物の細胞や組織中の生物学的成分、または生物そのものから実質的に分離精製されるものであり、上記成分とは、他の染色体DNA、染色体外DNA及びRNA、タンパク質、細胞等の自然に存在しているものである。「単離された」核酸分子及びタンパク質には、標準的な精製方法によって精製されたものが含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え体の発現によって調製された核酸分子及びタンパク質、並びに化学合成された核酸分子及びタンパク質も包含する。
【0039】
発現可能に連結:第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的関係にある場合、第一の核酸配列は第二の核酸配列に発現可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼすとすれば、そのプロモーターはコード配列に発現可能に連結されている。通常、発現可能に連結されたDNA配列は連続し、必要な場合には、2個のタンパク質コード領域は同一のリーディングフレーム内で連結されている。
【0040】
薬学的に許容される担体:本開示において有用な薬学的に許容される担体(賦形剤・溶媒)は通常のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、1以上の治療化合物、分子又は試薬(例えば、本明細書に開示されるモザイクポリペプチドや組換えウイルス)の医薬送達に適した組成物及び処方を記載している。
【0041】
通常、担体の性質は、使用する個々の投与形式に依存する。例えば、非経口製剤は通常、薬学的且つ生理学的に許容される液体である、水、生理食塩水、緩衝化塩類溶液、デキストロースやグリセロールの水溶液等をベヒクルとして含む、注射可能な液体を含む。固形組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、カプセル剤等)については、通常の無毒性固体担体、例えば薬学グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン又はステアリン酸マグネシウム等が含まれ得る。投与される医薬組成物は、生物学的中性担体に加え、湿潤剤又は乳化剤、保存料、pH緩衝剤等(酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート等)の無毒補助物質を少量含むことができる。
【0042】
ポリペプチド、ペプチド又はタンパク質:モノマーがアミノ酸残基であり、アミド結合で結合しているポリマー。アミノ酸がα-アミノ酸の場合、L光学異性体もD光学異性体も用いることができる。本明細書において「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」の各用語は交換可能に用いられる。これら用語は、1以上のアミノ酸残基が、天然のアミノ酸に対応する人工的化学ミメティックであるアミノ酸ポリマーにも、また、天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーにも適用される。用語「残基」又は「アミノ酸残基」は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに組み込まれたアミノ酸への言及を含む。
【0043】
ポリペプチドにおける保存的置換とは、タンパク質配列内の1アミノ酸残基の、同様の生化学的性質を有する他のアミノ酸残基への置換である。典型的な保存的置換では、置換後に得られるポリペプチドの活性への影響は少ないか、又影響は無い。例えば、1以上の保存的置換(例えば1、2、3、4又は5以下の置換)を含むタンパク質又はペプチドにおいて、野性型タンパク質又はペプチドの構造と機能は保持される。ポリペプチドをコードする塩基配列を、例えば部位特異的変異誘発やPCR等の標準的の手段を利用して操作する事により、ポリペプチドに1以上の保存的置換が含まれるように製造することができる。一例において、このような変異体は、抗体交差反応性又は免疫応答誘起能を試験することにより容易に選択することができる。保存的置換の例を以下に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
保存的置換では通常、(a)例えばシート配座又はらせん状配座等の、置換領域のポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、或いは(c)側鎖の大きさが保存される。
【0046】
通常、タンパク質の性質に最大の変化をもたらすと期待される置換は非保存的であろう。これらの例としては、(a)親水性残基(セリルやスレオニル等)の疎水性残基(ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、アラニル等)との置換;(b)システイン又はプロリンの他の残基との置換;(c)正電荷の側鎖を有する残基(リシル、アルギニル、ヒスチジル(histadyl)等)の負電荷を有する残基(グルタミル、アスパルチル等)との置換;或いは(d)嵩高い側鎖を有する残基(フェニルアラニン等)と側鎖を持たない残基(グリシン等)との置換が挙げられる。
【0047】
疾病の予防、治療又は改善:疾病を「予防」するとは、疾病の完全な発症を防ぐことを意味する。「治療する」とは、一旦発症した疾病や病態の兆候や症状を改善する治療的介入を意味する。「改善する」とは、疾病の兆候や症状の数や程度を減じることを意味する。
【0048】
精製された:用語「精製された」は、必ずしも絶対的な純度を必要とせず、相対的な用語を意図している。例えば、精製されたポリペプチド、タンパク質、核酸、ウイルス又は他の活性化合物の各々は、天然の関連タンパク質及び他の不純物からその全体又は一部が単離されたものである。幾つかの実施形態において、用語「実質的に精製された」とは、細胞、細胞培養物又は他の粗調製物から単離され、初期の調製物に含まれていた種々の成分(タンパク質、細胞残片及び他の成分等)を除去するために分画化に付されたポリペプチド、タンパク質、核酸、ウイルス又は他の活性化合物について用いる。
【0049】
組換え:組換え核酸分子、組換えタンパク質又は組換えウイルスとは、天然ではない配列、或いは組換えなければ分離している2つの配列セグメントの人工的な組み合わせによる配列である。この人工的な組み合わせは、化学合成又は核酸分子の単離セグメントの人工的操作(遺伝子工学的技法等)により達成し得る。用語「組換え体」は、天然の核酸分子、タンパク質又はウイルスの一部の付加、置換、欠失のみによる変更を受けた核酸分子、タンパク質又はウイルスも含む。
【0050】
配列の同一性:2以上の核酸配列の間、或いは2以上のアミノ酸配列の間の同一性又は類似性を、配列間の同一性又は類似性として表現する。配列の同一性は、同一度(%)として測定することができ、同一度が高いほど、配列同士はより同一である。配列の類似性は類似度(%)(これにはアミノ酸の保存的置換も考慮に入れる)として測定することができ、類似度が高いほど、配列同士はより類似している。核酸配列やアミノ酸配列のホモログやオルソログは、標準的方法でアラインされた場合、比較的高い配列の同一性/類似性を有する。オルソロガスなタンパク質やcDNAが、より近縁な種(ヒト配列やマウス配列等)から誘導される場合、疎遠な種(ヒト配列とC.elegans配列)の場合と比べて、この相同性はより顕著となる。
【0051】
比較のために配列をアラインする方法は、当技術分野でよく知られている。種々のプログラムとアラインメント用アルゴリズムが次の文献に記載されている。Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981; Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970; Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988; Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988; Higgins & Sharp, CABIOS 5:151-3, 1989; Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16:10881-90, 1988; Huang et al. Computer Appls. in the Biosciences 8, 155-65, 1992; and Pearson et al., Meth. Mol. Bio. 24:307-31, 1994。Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990は、配列アラインメント方法とホモロジー計算についての詳細な考察を提供する。
【0052】
NCBIベーシックローカルアラインメントサーチツール(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)は、国立生物工学情報センター(National Center for Biological Information)(NCBI)を含む複数のソース及びインターネットから入手可能であり、配列分析プログラムであるblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxと関連して使用することができる。付加情報についてはNCBIのウェブサイトを参照することができる。
【0053】
血清型:特徴的な抗原セットによって区別される、近い関係にある微生物(ウイルス等)のグループ。
【0054】
被験体:生きている多細胞脊椎生物であって、ヒトとヒト以外の哺乳類を含むカテゴリーである。本明細書のいくつかの実施形態において、被験体はウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ、レイヨウ、スイギュウ、バイソン等の双蹄類であるが、これらに限定されない。
【0055】
合成の:実験室において人工的手段によって製造されるものである。例えば、合成核酸や合成タンパク質は、実験室において化学的に合成することができる。
【0056】
ワクチン:感染性疾病等の疾病の予防、改善又は治療のために投与して、免疫応答を刺激することができる免疫原材料の調製物。免疫原材料としては、例えば、弱毒化微生物や死微生物(弱毒化ウイルス等)や、感染性微生物から誘導された抗原性のタンパク質、ペプチド又はDNAが挙げられる。ワクチンは予防的応答及び治療的応答の両方を惹起することができる。投与方法はワクチンにより異なるが、注入、摂取、吸入及び他の投与形態が挙げられる。注入は、非経口(静注、皮下又は筋内等)を含む多くの投与経路のいずれかによって行うことができる。ワクチンは、アジュバントと共に投与して、免疫応答を促進することができる。
【0057】
ベクター:ベクターは、ベクターが宿主細胞において複製する及び/又は統合される能力を妨げることなく、異種の核酸を挿入可能な核酸分子である。ベクターは、宿主細胞においてその複製を可能とする核酸配列(複製源等)を含むことができる。ベクターは1以上の選択可能なマーカ-遺伝子及び他の遺伝子要素も含むことができる。発現ベクターとは、挿入される遺伝子の転写及び翻訳を可能とするのに必要な調節配列を含むベクターである。
【0058】
特に説明しない限り、本明細書に用いられる全ての技術的・科学的用語は、本開示が属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解されるのと同様の意味を有する。単数を示す語“a”、“an”及び“the”は、文脈上特に示さない限り、複数の指示対象を包含する。“comprising A or B”は「A」、「B」又は「A及びB」を意味する。更に、核酸又はポリペプチドについて示した、全ての塩基数とアミノ酸数、及び全ての分子量と分子質量値は概算であり、説明のために提供したものと解釈されたい。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は等価なものを本開示の実施又は試験に利用することができるが、適切な方法と材料は以下に記載する。本明細書で参照される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献の内容全体を、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。相反が生じた際は、用語の説明を含む本明細書が支配する。更に、これら材料、方法及び実例は説明に過ぎず、本発明を限定することを意図しない。
【0059】
序論
ウイルスワクチンの開発にとって、「多様性」は大きな問題である(Gaschen et al., Science 296(5577):2354-2360, 2002)。免疫原の設計のための「モザイク」という概念は、HIV-1ワクチンへの応答度を改善するために開発された(Fischer et al., Nat Med 13:100-106, 2007)。この方法は、例えば共投与のための、合成ウイルスタンパク質配列の最適なカクテルを創出することを含み、こうすることで、ワクチン中に、集団頻度で加重した最大数の潜在的エピトープが存在するようにする。(図1)。この方法で設計されたHIV-1ワクチンは動物実験では実質的に有望な結果を示し(Kong et al., J Virol 83(5):2201-2215, 2009; Barouch et al., Nat Med 16(3):319-323, 2010; Santra et al., Virology 428(2):121-127, 2012)、これには悪性サルヒト免疫不全ウイルス(SHIV)の攻撃からの防御(Barouch et al., Cell 155(3):531-539, 2013)も含まれる。モザイクHIV-1ワクチンを評価するために、ヒトにおける幾つかの第I相臨床試験が進行中である。モザイクワクチンは他のウイルスに対する効果も約束するものであり、これにはC型肝炎ウイルス(HCV)(Yusim et al., J Gen Virol 91:1194-1206, 2010; Yusim et al., Clin Vaccine Immunol 20(2):302-305, 2013)、フィロウイルス(エボラウイルス、マールブルグウイルス等)(Fenimore et al., PLoS ONE 7(10):e44769, 2012)及びインフルエンザウイルス(Kamlangdee et al., J Virol 88(22):13300-13309, 2014)が含まれる。この方法で設計された免疫原は直鎖状エピトープのカバレージに最適化されるが、多くの場合、高次構造エピトープを維持する。
【0060】
本明細書に開示されるFMDVモザイクポリペプチド組成物及び核酸組成物は、非天然エピトープ及びレアエピトープの発生を最小としつつ、天然FMDVポリペプチド配列及びコンセンサスFMDV配列に比べ、高レベルのT細胞エピトープカバレージを提供する。
【0061】
幾つかの実施形態の概観
本明細書が開示する合成FMDVモザイクポリペプチドは、天然FMDVポリペプチドよりも、T細胞エピトープカバレージが大きい。この合成FMDVモザイクポリペプチドは、天然ウイルスの変異性を取り込み、通常のFMDVエピトープは含むが、FMDVのレアエピトープは排除する。このモザイクポリペプチドは、FMDVゲノムの一部として含まれる場合、ウイルスの複製及び、本来のFMDV粒子に非常に類似した構築物又は同一な構築物へのウイルスの集合を可能とする。本明細書に開示されるモザイクポリペプチド組成物及び核酸組成物は、広範な血清型AのFMDV株に対しての防御を提供する免疫応答を惹起するため使用することができる。
【0062】
モザイクポリペプチドVP4.2.1(配列番号2)又はモザイクポリペプチドVP4.2.2(配列番号4)に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する合成FMDVポリペプチドを提供する。幾つかの実施形態において、この合成FMDVポリペプチドは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む。具体例では、合成FMDVポリペプチドは配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列からなる。
【0063】
ここで、モザイクポリペプチドを含む組換えFMDVも提供する。幾つかの実施形態において、この組換えFMDVは、モザイクポリペプチドVP4.2.1(配列番号2)又はモザイクポリペプチドVP4.2.2(配列番号4)に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する合成FMDVポリペプチドを含む。幾つかの実施形態において、この組換えFMDVは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む合成ポリペプチドを含む。具体例では、組換えFMDVは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列からなる合成FMDVポリペプチドを含む。幾つかの実施形態において、この組換えFMDVは、野性型FMDV株から得られるFMDVのLタンパク質、VP4タンパク質、P2タンパク質及びP3タンパク質を含む。非限定的な一具体例では、野性型FMDV株はA24クルゼイロである。
【0064】
ここで更に、モザイクFMDVポリペプチドをコードする核酸分子も提供する。幾つかの実施形態において、この核酸は、モザイクポリペプチドVP4.2.1(配列番号2)又はモザイクポリペプチドVP4.2.2(配列番号4)に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する合成FMDVポリペプチドをコードする。幾つかの実施形態において、この核酸分子は、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む合成FMDVポリペプチドをコードする。具体例では、この核酸分子は、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列からなる合成FMDVポリペプチドをコードする。幾つかの実施形態において、この核酸分子は、配列番号1又は配列番号3に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な塩基配列を有する。幾つかの具体例において、この核酸分子は配列番号1又は配列番号3を含む塩基配列を有する。特定の非限定的な一例で、この核酸分子は配列番号1又は配列番号3からなる塩基配列を有する。
【0065】
本開示は、モザイクFMDVポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターをも提供する。幾つかの実施形態において、このベクターはFMDVのLタンパク質、VP4タンパク質、P2タンパク質及びP3タンパク質のコード配列を更に含み、許容宿主細胞にこのベクターをトランスフェクトすることにより、感染性FMDVが生産される。幾つかの実例において、FMDVのLタンパク質、VP4タンパク質、P2タンパク質及びP3タンパク質は野性型FMDVのアミノ酸配列を有する。特定の非限定的な一例では、野性型FMDVはA24クルゼイロである。
【0066】
ここでまた、少なくとも1種のモザイクFMDVポリペプチド、少なくとも1種の組換えFMDV又は少なくとも1種のモザイクFMDVポリペプチドをコードする核酸若しくは少なくとも1種のベクターを含む組成物を提供する。
【0067】
幾つかの実施形態において、モザイクポリペプチドVP4.2.1(配列番号2)に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有するモザイクFMDVポリペプチド、配列番号2を含むモザイクFMDVポリペプチド、又は配列番号2からなるモザイクFMDVポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。幾つかの実施形態において、モザイクポリペプチドVP4.2.2(配列番号4)に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有するモザイクFMDVポリペプチド、配列番号4を含むモザイクFMDVポリペプチド、又は配列番号4からなるモザイクFMDVポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。幾つかの実例においては、配列番号2(又は配列番号2に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な配列)を含むか、からなるモザイクFMDVポリペプチド、配列番号4(又は配列番号4に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な配列)を含むか、上記配列からなるモザイクFMDVポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0068】
幾つかの実施形態において、配列番号2(又は配列番号2に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な配列)を含むか、或いは上記配列からなるアミノ酸配列を有するモザイクFMDVポリペプチドを含む組換えFMDVと、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。幾つかの実施形態において、配列番号4(又は配列番号4に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な配列)を含むか、上記配列からなるアミノ酸配列を有するモザイクFMDVポリペプチドを含む組換えFMDVと、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。幾つかの実例においては、配列番号2の(又は配列番号2に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な)アミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを含む第1の組換えFMDVと、配列番号4の(又は配列番号4に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な)アミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを含む第2の組換えFMDVと、及び薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0069】
更にここで、開示されるモザイクFMDVポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含む組成物を提供する。幾つかの実施形態において、配列番号1の(又は配列番号1に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な)配列を有する核酸分子を含むベクターと、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。幾つかの実施形態において、配列番号3の(又は配列番号3に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な)配列を有する核酸分子を含むベクターと、及び薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。幾つかの実例では、本組成物は、配列番号1の(又は配列番号1に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な)配列を有する核酸分子を含む第1のベクターと、配列番号3の(又は配列番号3に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一な)配列を有する核酸分子を含む第2のベクターと、薬学的に許容される担体とを含む。
【0070】
本明細書の幾つかの実施形態において、この組成物はアジュバントを更に含む。
【0071】
ここで更に、被験体における血清型AのFMDVに対する免疫応答を惹起する方法を提供する。幾つかの実施形態において、この方法は、本明細書に開示される合成FMDVモザイクポリペプチド、組換えFMDV、核酸分子、ベクター又は組成物を被験体に投与することを含む。幾つかの実例で、被験体はウシである。
【0072】
また、被験体を血清型AのFMDVに対して免疫化する方法も提供する。幾つかの実施形態において、本方法は本明細書に開示される合成FMDVモザイクポリペプチド、組換えFMDV、核酸分子、ベクター又は組成物を被験体に投与することを含む。組換えFMDVを投与する幾つかの実例では、組換えFMDVは投与前に不活化(BEI等にて)される。
【0073】
本明細書に開示される方法の幾つかの実施形態において、被験体は双蹄類である。幾つかの実例で、この双蹄類はウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ、レイヨウ、スイギュウ又はバイソンである。
【0074】
モザイクFMDVワクチン組成物の投与
本明細書に開示するFMDVモザイクポリペプチド組成物及びポリヌクレオチド組成物は、適切な送達手段のいずれかにより被験体に投与することができる。例えば、FMDVポリヌクレオチド又はポリペプチドは、注射、皮下、筋内又は経皮により非経口投与することができる。ある種のアジュバント、例えばLTK63、LTR72又はPLG製剤を鼻腔内投与又は経口投与することができる。他の投与形態に適した更なる製剤としては座薬が挙げられる。座薬用の通常のバインダーや担体には、例えばポリアルキレングリコールやトリグリセリドが含まれ、このような座薬は、有効成分の値が0.5%~10%(例えば1%~2%)の混合物から形成することができる。他の経口製剤は通常使用される賦形剤を含み、例としては医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これら組成物の剤形は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤又は粉末であり、当該組成物は有効成分を10%~95%(例えば25%~70%)含む。
【0075】
本明細書に開示されるFMDVモザイクワクチンは通常、液体又は懸濁液として注射可能に調製される。注射前に溶液や懸濁液とするための固形剤も調製できる。このような製剤は、乳化することやリポソームカプセルとすることができる。幾つかの場合、ワクチンは薬学的に許容される担体も含む。薬学的に許容される担体は当技術分野で良く知られたものであり、特に限定されない。例としては、嵩高な低速代謝性高分子(タンパク質等)、多糖類、官能化セファロース、アガロース、セルロース、セルロースビーズ等、更にポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー(ポリグルタミン酸、ポリリシン等)等が挙げられる。
【0076】
本明細書に開示されるFMDVモザイクワクチンは、中性又は塩の形態の免疫原性化合物に処方することができる。薬学的に許容される塩の例としては、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と生成)、無機酸(塩酸、リン酸等)塩及び有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸等)塩が挙げられる。遊離カルボキシル基と生成した塩は、無機塩基(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄等)及び有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等)からも誘導できる。
【0077】
ワクチン組成物は液体又は賦形剤も含むことができ、これらの例としては水、食塩水、グリセロール、デキストロース、エタノール等が挙げられ、これらは単独或いは組み合わせる。更に、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤も挙げられる。本開示の組成物には、リポソームを担体とすることもできる。
【0078】
種々の共刺激分子をワクチン調製物又は送達プロトコールに含ませることができる。この分子はリンパ球への免疫原の提示を改善することができ、これにはタンパク質(B7-1、B7-2等)及びサイトカイン(GM-CSF、IL-2、IL-12等)が含まれる。アジュバントも任意で組成物に含ませることができる。種々のアジュバントを使用することができ、これらには次のものが含まれる。(1)水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩(ミョウバン);(2)OWエマルジョン製剤(場合によって、他の特定のムラミルペプチド等の免疫刺激剤又は微生物細胞壁成分を含む);(3)サポニンアジュバント、又は免疫刺激コンプレックス(ISCOM)等のサポニンアジュバントから得られる粒子;(4)フロイントの完全アジュバント(CFA)及びフロイントの不完全アジュバント(IFA);(5)インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7又はIL-12)、インターフェロン(例えばγ-インターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍ネクローシス因子(TNF)等のサイトカイン類;(6)コレラトキシン(CT)、百日咳トキシン(PT)、E.coli 熱活性トキシン(LT)等のバクテリアADPリボシル化トキシンの無毒化変異体;(7)組成物の効力を向上させる免疫刺激剤として作用する他の物質;及び(8)吸着高分子を有する微粒子。
【0079】
本明細書に開示されるFMDVモザイクワクチン組成物は、投与製剤に適合した方法で投与することができ、予防及び/又は治療に有効となる量を投与する。投与量は治療対象の被験体、被験体の免疫系の能力、所望の防御程度に依存する。投与に必要とされる有効成分の正確な量は医師の判断とし、各被験体に特定的とすることができる。
【0080】
ワクチン製剤は単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールで導入することができる。複数回投与スケジュールでは、第1コースのワクチン接種を1~10回の別々な用量で行うことができ、続いて免疫応答を維持及び/又は強化するのに必要な時間間隔で他の用量を提供する。例えば、第2回目の投与を1~4ヶ月で行い、必要であれば数ヶ月後に次の投与を行う。
【0081】
投与は、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの同時の投与か、或いは連続的投与(例えば、ポリヌクレオチド組成物を初期免疫とし、ポリペプチド組成物を追加免疫とする)を含むことができる。投与計画(少なくとも一部分)は個体における必要性により決定されるか、医師の判断に従うことになる。
【0082】
FMDVモザイクタンパク質コードする発現可能なポリヌクレオチドを含む核酸分子及びベクターは、DNAワクチン調剤薬として処方・利用することができる。このようなFMDVモザイクDNAワクチンは、標準的な遺伝子デリバリープロトコールを利用したFMDV特異的T細胞の活性化に利用することができる。遺伝子デリバリーの方法は当技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,399,346号、第5,580,859号、第5,589,466号明細書(これら全体を本明細書の一部を構成するものとして援用する)参照)。遺伝子は脊椎動物被験体に直接送達できる。或いはex vivoで被験体から得られた細胞に送達し、その細胞を被験体に再移植することもできる。例えば、この構成物は、プラスミドDNA又はウイルスベクターDNAとして送達することができる。
【0083】
DNAワクチンは、種々の異なる方法で導入することができる。これら方法には、標準的な皮下注射針でDNAの塩水溶液を注射することが含まれる。通常、塩水注射は骨格筋への筋内注射か皮内注射で行われ、DNAが細胞外スペースに到達される。この操作は、エレクトロポレーション、ミオトキシン(例えばブピヴァカイン)による筋繊維の一時的損傷、或いは食塩水又はスクロースの高張液を用いることにより促進することができる。この送達方法における免疫応答は多くの要因により影響を受ける。これらには、注射針のタイプ、注射針のアラインメント、注射速度、注射体積、筋肉の種類、及び注射対象の個体の年齢、性別、生理的状態が含まれる。
【0084】
遺伝子銃は、圧縮ヘリウムを加速媒体として用い、金微粒子又はタングステン微粒子の吸着されたプラスミドDNA(pDNA)の標的細胞への送達を弾丸様に加速する。他の送達方法としては、鼻粘膜や肺粘膜等の粘膜表面の裸の(ネイキッド)DNAのエアロゾル点滴や、pDNAの眼や膣粘膜への局所投与が挙げられる。粘膜表面送達は、カチオン性リポソームDNA調製物、生分解性ミクロスフェアー、腸粘膜への経口投与用の弱毒化Shigellaベクター又はListeriaベクター、及びアデノウイルスベクター等の組換えウイルスベクターを用いることによって達成される。
【0085】
有効な免疫応答を上昇させるのに必要なDNA用量は送達方法により決定される。有効な免疫応答を上昇させるために、塩水注射では10μg~1mgの種々のDNA量が必要であるが、遺伝子銃による送達では、筋内塩水注射に比べ100倍~1000倍少ないDNA量でよい。最低16ngの量が使われるが、通常0.2μg~20μgが必要とされる。塩水注射では、DNAが標的組織(通常、筋肉組織)の細胞外スペースに送達されるため、より多くのDNAを必要とする。ここでは、DNAが細胞に取り込まれる前に基底層及び大量の結合組織等の物理的バリアを弱めなくてはならない。一方、遺伝子銃ではボンバードのDNAが直接細胞に送達される。
【0086】
FMDVモザイク核酸ワクチンは細胞に送達される前にリポソームでパッケージすることができる。通常、脂質によるカプセル化は、核酸に安定的に結合して補足・保持できるリポソームを使用して達成される。脂質調製物に対するカプセル化(condensed)DNAの比は変化し得るが、脂質に対し通常およそ1:1(mgDNA:μmol脂質)以上である。
【0087】
開示されるFMDVワクチンと共に使用するリポソーム調製物には、カチオン性(正帯電)、アニオン性(負帯電)及び中性の各調製物がある。
【0088】
FMDVモザイク核酸ワクチンはまた、カプセル化したり、粒子状担体に吸着又は会合させたりすることができる。このような担体は、選択された分子の多数のコピーを免疫系に対して提示し、局所リンパ節中の分子の補足と保持を促進する。この粒子はマクロファージにより食細胞化され、サイトカインの放出による抗原提示を向上させることができる。粒子状担体の例としては、ポリメチルメタクリレート重合体から誘導された粒子状担体や、ポリ(ラクチド)やPLGとして知られるポリ(ラクチド-co-グリコシド)から誘導された微粒子状担体が挙げられる(例えば、Jeffery et al., Pharm Res 10:362-368, 1993を参照)。
【0089】
FMDVモザイクワクチンの効果の評価
特定のモザイクタンパク質又はワクチン組成物が細胞を介しての免疫応答を刺激する能力は、各種アッセイのいずれかにより決定することができる。このアッセイは、例えば、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、サイトトキシックTリンパ球(CTL)アッセイ、感作被験体における抗体に特異的なTリンパ球のアッセイ等である。この種のアッセイは当技術分野で良く知られている(Erickson et al., J Immunol 151:4189-4199, 1993; Doe et al., Eur J Immunol 24:2369-2376, 1994)。従って、免疫応答はCTLの産生及び/又はヘルパーT細胞の産生又は活性化を刺激する免疫応答であることができる。目的とする抗原は、防御的免疫性を誘起するのに重要な、抗体を介しての免疫応答を惹起することもできる。このようなアッセイはOIEマニュアルに良く記載されている(Manual of diagnostic test and vaccines for terrestrial animals, 2004 (5thedition)), Office International des Epizooties, Paris (2004))及び文献(例えばTekleghiorghis et al., Clin Vaccine Immunol 21(5): 674-683, 2014))。従って、免疫応答は、B細胞による抗体の産生及び/又はサプレッサーT細胞の活性化の一以上の効果を含むことができる。
【0090】
開示されるFMDVモザイクワクチン調製物によってもたらされる防御的免疫応答の推算或いは実測のために種々の手段が利用できる。この手段には、特定のモザイクタンパク質により提供されるT細胞エピトープカバレージの程度を決定するためのin silico分析法又はこれらの組み合わせ、及び畜牛等の動物におけるFMDVモザイクワクチン調製物評価のin vivo方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
FMDV活性化T細胞においてT細胞レセプターにより認識されるエピトープは、例えば51Cr放出アッセイやリンパ球増殖アッセイ等、当技術分野で良く知られた方法で同定することができる。51Cr放出アッセイにおいては、目的のエピトープを提示する標的細胞は、例えば、エピトープをコードするポリヌクレオチドを発現ベクターにクローニングし、この発現ベクターで標的細胞を形質転換することにより調製される。標的細胞はラベルとなる51Crと共にインキュベートし、被験体から誘導されたT細胞と混合する。その後、T細胞の細胞溶解能を、51Cr結合タンパク質の培地への放出に基づき測定する。
【実施例
【0092】
以下、実施例によって、特定の性質及び/又は実施形態を説明するが、これら実施例は本開示を明細書記載の特定の性質や態様に限定するとは解釈されない。
【0093】
実施例1:ワクチン免疫原の設計と構築
配列1、2及び3のモザイクカクテルを、異なる血清型AのFMDV天然配列データセットに対して構築した。FMDVカプシド配列は、国立生物光学情報センター(NCBI)によって維持される、GENBANK(登録商標)データベースから得た。得られた配列は、標準的方法(Edgar, BMC Bioinformatics 5:113, 2004; Katoh et al., Nucleic Acids Res 33(2):511-518, 2005; Larsson, Bioinformatics 30(22):3276-3278, 2014))によって互いにアラインされ、Fischer et al(Nat Med 13:100-106, 2007)に基づくモザイク設計ウェブツール(Thurmond et al., Bioinformatics 24(14):1639-1640, 2008)への入力データとして使用した。この結果として得られたアミノ酸配列を精査し、そのカバレージ度を調べた。モザイク核酸をコードする配列は、新規な配列にコードされるアミノ酸がモザイク配列に適合するよう、FMDVのA24クルゼイロ株の配列に対して塩基変化を適用することによって誘導した。
【0094】
カバレージの比較では、配列1と配列2のカクテル間では実質的な増加、配列2と配列3のカクテル間ではより少ない増加がみられた。従って、更なる検討は配列2について進めた。エピトープのカバレージに関しては、モザイクタンパク質の利用の利点は顕著である。ワクチン学的に見れば、これらカクテルは天然配列や天然配列のカクテルに比べはるかに優れていた(図2A)。更に、これらカクテルは系統学的多様性に対して広範なカバレージを有しており(図2B)、更に最近のFMDV単離物に対するカバレージが良好であった(図2C)。モザイクワクチンの塩基配列は商業ベースで合成され、実施例2に記載のようにA24クルゼイロの主鎖に基づきcDNA構築物にクローニンングされた(図4)。モザイク配列はVP2、VP3及びVP1各遺伝子に使用され、ゲノム残部(5’UTR、レーダー配列、VP4及び非構造タンパク質)はA24主鎖から誘導した。感染性ウイルスが得られるまで、これらcDNA構築物をウシ組織培養(数代に亘る)において増殖させた(図3)。
【0095】
実施例2:モザイクウイルスのクローンニングと増殖
テンプレートとして、アウトブレイク株A24クルゼイロ(pA24Cru、Rieder et al., J Virol 79(2):12989-12998, 2005)の感染性cDNAの全長クローン(IC)を用いた。A24クルゼイロのカプシドコード領域を、対応するモザイクカプシド配列で置換した。モザイクP1-2A配列はバイオベーシックカナダ社が合成した。PCRを連続して2回行い、野性型FMDVA24クルゼイロ由来のVP4及び2Aと、モザイクデザイン由来のVP2-VP3-VP1とを含むモザイクウイルスを創出した。第1のPCRにおいては、SanDIフォワードプライマーAGCGGAGCATGACGGCCGTGGGACCC(配列番号5)とVP4リバースプライマーTGTTCGGTGCACTGCTCGCCG(配列番号6)とを用いて、野性型FMDVA24クルゼイロから5’UTR-VP4フラグメントを増幅した。また、VP4フォワードプライマーTGTTCGGTGCACTGCTCGCCG(配列番号7)とNheIリバースプライマーTCAACGTCTCCGGCTAGCTTAAGCAGGTCAAAATTC(配列番号8)を用いて、モザイク2.1及び2.2の各構築物のモザイクVP2-VP3-VP1-2APCRフラグメントを創出した。続いて、これら2フラグメントをエンドオーバラップPCRで結合した。このアンプリコンをゲルから抽出し、5’UTR及び2A各コード領域にそれぞれ存在するSanDI制限部位及びNheI制限部位を利用して、野性型(WT)感染性cDNAクローンDNAプラスミド(pA24WT)にクローニングした(図4)。モザイクウイルスVP4.2.1及びVP4.2.2の各配列(配列番号1及び配列番号3)はシーケンシングにより確認した。
【0096】
モザイクウイルスcDNAクローンはSwaI酵素による消化で直線化し、ウイルスのポジティブセンスゲノムを表すRNA転写産物を、MEGASCRIPT(登録商標)キット(アンビオン)を用いて、製造社の使用説明書に従い創出した。RNA転写反応の汚染物質は、RNEASY(登録商標)キットヴァイラルRNAピューリフィケーションを用い、製造社の使用説明書に従って除去した。約10μgのRNAを用いて、成長直後(logフェーズ)のBHK-21細胞のエレクトロポレーションを行った。サンプルを一晩インキュベートした後冷凍し、1/10接種源を次代に用いる継代培養を続けた。細胞変性効果を記録した後、各モザイクウイルスの大バッチを作り、生育の特性化及びこれらウイルスとWTFMDVA24クルゼイロとの比較のため前述のようなプラークアッセイを行った(Rieder et al., J Virol 67(9):5139-5145, 1993)。即ち、ウイルスの系列希釈液をBHK-21細胞単層に吸着させた後、0.6%トラガカントゴムの上掛けを添加し、37℃で48時間インキュベートした。プレートを固定し、クリスタルバイオレット(0.3%/ヒストチョイス;オハイオ州、ソロン、アムレスコ社)で染色し、プラーク数をカウントした。力価はミリリットル当たりのプラーク生成単位(PFU/ml)で表し、本実験は2群で実施した(図3)。
【0097】
実施例3:ウイルスの中和力価とr1値
2種のモザイクウイルス(VP4.2.1及びVP4.2.2)を試験した。ワクチン接種動物又はFMDV回復期動物から得られたウシ血清により中和される能力を計算することによって抗原カバレージを求めた。前述(Rweyemamu et al., J Hyg (Lond) 81(1):107-123, 1978)のように、50%のウエルの同種FMDVの100組織培養感染量を中和する最後の血清希釈液の逆数(TCID)50として中和力価を報告する。A24 FMDV WT親ウイルスに対するモザイクウイルスの一方向抗原関係(r1値)を、異種及び同種の血清力価の間の比として計算し、Samuel et al. (Vaccine 8(4):390-396, 1990))の記載に従って解釈した。ウイルス中和は、VP4.2.1及びVP4.2.2モザイクワクチンを接種された動物から得た血清を用いて、種々の異種のA型FMDVについて行い、本ワクチンと標的ウイルスとの抗原的関係を推測するためにr1値を計算した。
【0098】
実施例4:抗原産生とワクチン処方
BHK-21単層をA24 WT、モザイクVP4.2.1及びVP4.2.1ウイルスに感染させた。完全な細胞変性効果を観察した後、ウイルスを凍結融解にて細胞から遊離した。SORVALL(登録商標)で短時間8000g及び4℃で遠心して、細胞残渣のワクチン抗原を除去した。ワクチン抗原を含む上清を5mMBEI(pH:8.0±0.2)で25℃、24時間不活化した。続いて、この不活化抗原を濃縮し、部分的に8%のポリエチレングリコール8000で精製した。このワクチンを、モンタニド ISA 201 VG(フランス国、パリ、セピック社)を用い、製造社の使用説明書に従いウオーター・イン・オイル・イン・ウオーター(WOW)エマルジョンとして調製した。具体的には、油性アジュバントを水性抗原相に30℃で15分間混合(50:50)し、4℃で24時間保存し、更に10分の短時間混合サイクルを繰り返した。140S粒子の完全性(Grubman et al., J. Virol., (1985) 56:120-26)及び実験に供したワクチンの抗原濃度(15μg/化学的不活化抗原量)を、15~45%のショ糖密度勾配による分画、その画分の259nmでの吸光度、及び酢酸ウラニルで染色した140Sプレパレーションの透過電子顕微鏡(TEM)観察に従って決定した。
【0099】
実施例5:動物への攻撃
FMDVモザイクウイルスVP4.2.1及びVP4.2.2を、野性型ウイルスの攻撃に対する防御を提供する能力に関して畜牛にて試験した。この検討では畜牛21頭を3つの治療群に用いて、ワクチンの効力を評価した。この検討では、3種の異なる血清型AのFMDV攻撃ウイルス(A24クルゼイロ(1995)、野性型単離A(サウジアラビア95;A/Sau/16/95;GenBankアクセッション番号EU553874)及び野性型単離B(イラン05;A/IRN/1/2005;GenBankアクセッション番号EF208769))のそれぞれに対するプラシーボ/ワクチン動物ペアを対象とした。各動物にFMDVモザイクワクチン(VP4.2.1及びVP4.2.2モザイクウイルスから誘導し、BEIで不活化したタンパク質。首左右それぞれに筋内投与で用量10μg/2mL)又はプラシーボを投与した。21日後、1動物群をA24クルゼイロで攻撃し、残り2動物群に第2回免疫(ブースト)を施した。追加ブースト14日目の動物群をFMDVAサウジアラビア95又はFMDVAイラン05で攻撃した。全ての攻撃は舌皮内投与で行い、攻撃ウイルスのウシ舌感染用量50(BTID50)を1×10とした。
【0100】
攻撃材料(FMDV血清型A24クルゼイロ;FMDVAサウジアラビア95;FMDVAイラン05)。ウイルスのストックをDMEM/1x抗生物質で希釈し、最終濃度を1x10BID50/0.4mLとした。接種後14日目、又ブースト後、各動物に攻撃ウイルスを舌皮内(IDL)投与した。一ヶ所あたり0.1mLで計四ヶ所接種した(計0.4mL/動物)。接種、ブースト及び攻撃スケジュールを表1に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
まず(0日目)、各動物からベースライン血清サンプルを採取した。表1に示すように、子牛全頭にワクチンを接種した。攻撃後3日目、7日目、10日目及び14日目(dpc)、畜牛全頭を鎮静させ、FMD全身疾患の臨床的兆候(足病変)を検査した。足病変の臨床スコアを標準的臨床スコアリングシステム(陰性=足の小水疱性病変が見られない、陽性=一ヶ所以上の足の小水疱性病変が見られる。障害陽性足の数と舌病変の有無も記録した)。FMDV攻撃後の発熱を、攻撃後のいずれかの時点(攻撃後1~10日目)の直腸体温が103.5°F以上と定義した。各治療群について、発熱に対する防御程度を次の式から計算した:(発熱陰性の数)/(攻撃対象畜牛数)×100%。
【0103】
抗体価
FMDV血清型A24クルゼイロ、Aサウジアラビア95及びAイラン05に対する抗体価を、0日目、7日目、14日目、22日目、29日目、36日目、43日目及び50日目に採取した血清サンプルについてウイルス中和をすることによって決定した。BHK-21細胞培養物において定常的ウイルス減少血清中和アッセイにより、FMDV血清ウイルス中和(SVN)抗体価を決定した。この際、FMDV血清型A24クルゼイロ、Aサウジアラビア95及びAイラン05の100~150TCID50を利用した。SVN力価は、細胞変性効果(CPE)を基にシュピアマン-ケルバー(Spearman-Kaerber)の方法を利用して計算した。このアッセイの検出下限は0.6log10であった。
【0104】
各治療群について、FMDV血清型A24クルゼイロ、Aサウジアラビア95及びAイラン05に対する、個々のSVN力価及び治療群の平均SVN力価(幾何平均力価[GMT])±標準偏差(S.D.))を血清採取の各日について決定した。ワクチン接種前の畜牛は全頭FMDVSVN陰性であった。対照の全ては、攻撃の前にFMDVSVN陰性であった。
【0105】
FMDVのELISA
PrioCHECK(登録商標)FMDVNSELISA(サーモフィッシャー)を用い、製作者の使用説明書に従い、FMDV3ABC非構造タンパク質に対する抗体を検出した。阻害率が50%以上であれば、そのサンプルは陽性と考えられた。
【0106】
ウイルスの単離
畜牛全頭から0~5dpcに採取した血漿サンプルを試験した。LFBKαβ細胞単層を含む24ウエルプレートの各ウエルに、未希釈サンプル(20μL)を加えた。この細胞系は、FMDVの単離に最も良く使われる親LFBK細胞系に比べ、FMDVの複製により許容性を示した。ウエル(1代目)は3~4日目にCPEで評価した。CPEを示さないウエルは全て更に試験した。試験では、陰性の各ウエルから細胞ライゼートを調製し、続いて新たなLFBKαβ細胞単層を含む24ウエルプレートに接種(20μL)した。ウエル(2代目)は3~4日目にCPEで評価した。CPEを示さないウエルは全て上述のように更に試験した。試験では、新たな細胞に接種した。ウエル(3代目)は3~4日目にCPEで評価した。同様の分析を行うことにより、0~5日目(dcp)の鼻腔用綿棒による採取物における生存FMDVを検出した。[鼻腔用綿棒(ダクロンポリエステル)は冷やした輸送媒体に入れ、混合し、除去した後、-70℃でサンプルを冷凍した。サンプルは解凍後に遠心し、清澄したサンプル(スピン-X遠心管フィルター)を試験した]。
【0107】
ウイルスのrRT-PCRによる検出
畜牛全頭から0~5dpcに採取したヘパリン血(血漿)サンプルを、FMDV核酸の存在下又は非存在下、rRT-PCRで分析した。アプライドバイオシステムズABI7500プラットフォームを利用したrRT-PCRの熱プロファイルは、60℃で10分間保持、95℃で30秒の変性を45サイクルの後、60℃で1分のポリメリゼーションサイクル、であった。治療群それぞれについて、0~5dpcの個々のrRT-PCRCt値を決定した。このアッセイにおいて、40以下のC値をもって陽性(POS)とし、40超のC値をもって陰性(NEG)とした。
【0108】
ウイルス血症
各治療群について、FMDV攻撃後のウイルス血症の陽性又は陰性を決定した。陽性:細胞培養物中のCPE、及び/又は採取・試験した(攻撃後1~5日目)攻撃後サンプルのいずれかにおいてrRT-PCRのC値が40以下。陰性:細胞培養物中のCPE未検出、及び採取・試験した(攻撃後1~5日目)攻撃後サンプルの全てにおいてrRT-PCRのC値が40超。鼻腔用綿棒からのウイルス単離については、培養物中のCPEの有無のみを決定し、その後上に挙げた分析を行った。各治療群について、ウイルス血症に対する防御程度を次の式から計算した:(ウイルス陰性の畜牛数)/(攻撃対象畜牛数)×100%。
【0109】
まとめ
各治療群について、FMD全身疾患(足の小水疱性病変)に対する防御の程度を決定した。評価4時点でのFMD臨床的疾患スコア(足の小水疱性病変)を、各動物毎、各治療毎にまとめた。各治療群について、全身FMD(足病変)対する防御率を次の式から計算した:(足病変陰性の畜牛数)/(攻撃対象畜牛数)×100%。ワクチン接種の畜牛の75%以上が全身疾患を示さない一方、プラシーボ対照の100%がFMDV血清型Aの攻撃後に全身疾患を発症した場合、VP4.2.1/VP4.2.2ビバレントワクチンが有効であると考えた。全ての分析結果を表2にまとめる。
【0110】
【表3】
【0111】
プラシーボ動物2頭が、攻撃5日後に死亡した(心筋炎と推定)。他、上にまとめたように、全プラシーボ動物が疾患を発症した。しかし、本モザイクワクチンで免疫化した動物はいずれも疾患を示さなかった(カウントデータについてのフィッシャーの正確検定p値:1.323×10-5)。これらの結果、本FMDVモザイクワクチンが広範な野性型血清型AのFMDV株に対して非常に有効であることがわかる。
【0112】
具体的な実施形態の詳細に参照しながら本発明を説明したが、これら詳細は、請求の範囲によって定義される発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の実施形態の内、独占的所有権又は独占権を主張するものは請求の範囲で定義した。
【配列表フリーテキスト】
【0113】
配列番号1: 化学合成物
配列番号2: 化学合成物
配列番号3: 化学合成物
配列番号4: 化学合成物
配列番号5: 化学合成物
配列番号6: 化学合成物
配列番号7: 化学合成物
配列番号8: 化学合成物
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
【配列表】
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