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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】電子部品装着装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20220907BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20220907BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20220907BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H01L21/68 E
H05K13/02 D
H05K13/04 B
H01L21/60 311T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017236778
(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2019106418
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】河口 浩二
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-103795(JP,A)
【文献】特開平03-229441(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083606(WO,A1)
【文献】特開平10-041695(JP,A)
【文献】特開2006-004956(JP,A)
【文献】特開2016-195194(JP,A)
【文献】特開2013-105773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
H05K 13/02
H05K 13/04
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートに貼着された複数のダイの少なくとも1つを突き上げる突上部と、
前記突上部が突き上げたダイをピックアップし、基板の装着位置まで搬送して該基板に装着する装着部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記突上部がダイを突き上げ、前記突上部が突き上げたダイを前記装着部がピックアップする第1作業と、
前記装着部がピックアップしたダイを装着位置まで搬送して基板に装着する第2作業と、
前記第2作業の作業期間に、前記突上部が後行の前記第1作業の対象となるダイを事前突き上げして、前記ダイと粘着シートとの接着面積について少なくとも前記ダイの中央部分を残して減少させる第3作業と、を実行させ
前記突上部は、1つのピンを有し、
前記制御部は、
前記第3作業にて、1つのダイに対して前記1つのピンにて複数個所を順々に突き上げさせる電子部品装着装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第3作業にて、
先行の前記第1作業の対象とされたダイに隣接するダイを後行の前記第1作業の対象となるダイとして選択させ、
選択されたダイに対して、先行の前記第1作業にて既にピックアップされたダイの位置に近い側から遠い側に向かって順に突き上げさせる請求項に記載の電子部品装着装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第3作業にて、1つの前記ダイに対して当該ダイの少なくとも4隅を事前突上げさせる請求項1または2に記載の電子部品装着装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1作業における突き上げ量と前記第3作業における突き上げ量とを個別に調整可能な請求項1からの何れかに記載の電子部品装着装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1作業における突き上げ量よりも前記第3作業における突き上げ量を多くする請求項に記載の電子部品装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品装着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粘着シート(貼付シート)に貼付されたダイ(チップ)を突き上げるための筒体を複数備え、外側の筒体から順に突き上げることで、ダイの外周部から順次粘着シートからダイを剥離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-5030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、剥離の際にダイへかかる負荷を低減できるものの、突き上げる工程に要する時間が長くなってしまうという課題があった。
ところで、ダイを粘着シートから剥離する作業と、剥離したダイを基板まで搬送して基板に装着する作業とを一連に行うことができる装置がある。このような装置においては、剥離の際にダイへの負荷を低減しつつ、装着作業を効率化することに関して改善の余地があった。
【0005】
本願は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、剥離の際のダイへの負荷を低減しつつ、ダイの基板への装着作業を効率化することができる電子部品装着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、粘着シートに貼着された複数のダイの少なくとも1つを突き上げる突上部と、突上部が突き上げたダイをピックアップし、基板の装着位置まで搬送して該基板に装着する装着部と、制御部と、を備え、制御部は、突上部がダイを突き上げ、突上部が突き上げたダイを装着部がピックアップする第1作業と、装着部がピックアップしたダイを装着位置まで搬送して基板に装着する第2作業と、第2作業の作業期間に、突上部が後行の第1作業の対象となるダイを事前突き上げして、前記ダイと粘着シートとの接着面積について少なくとも前記ダイの中央部分を残して減少させる第3作業と、を実行させ、前記突上部は、1つのピンを有し、前記制御部は、前記第3作業にて、1つのダイに対して前記1つのピンにて複数個所を順々に突き上げさせる電子部品装着装置を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、第1作業および第3作業によりダイと粘着シートとの接着面積が低減され、第3作業は第2作業の作業期間に実施されるため、剥離の際のダイへの負荷を低減しつつ、ダイの基板への装着作業を効率化することができる電子部品装着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電子部品装着装置の斜視図である。
図2】カバーを除いて示す電子部品装着装置の平面図である。
図3】突き上げ装置の斜視図である。
図4】突き上げ装置の断面構造を示す模式図である。
図5】電子部品装着装置の制御系統を示すブロック図である。
図6】装着作業の流れを示すフロー図である。
図7】ダイに対して複数個所を突き上げる際の突き上げ順を説明する図である。
図8】ダイが突き上げられる度にダイとダイシングシートとの接着面積が減少する様子を示す模式図であり、(a)は1回目の突き上げ、(b)は2回目の突き上げ、(c)は5回目の突き上げ、(d)は吸着の際の突き上げの様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電子部品装着装置の構成
図1に示すように、電子部品装着装置10は、本体部11、ダイ供給装置30、フラックス供給装置26、および操作装置180を備えている。以下の説明には、図1に示す方向を用いる。電子部品装着装置10の幅方向がX軸方向であり、X方向に直角な水平の方向をY軸方向である。電子部品装着装置10は、例えばプリント基板などの基板に対してダイを装着する作業を実施する。
【0010】
本体部11はベース46、デバイスパレット70およびカバー12などを有する。本体部11は略箱形状であり、ベース46の上方に、図2に示す搬送装置20、装着ヘッド移動装置22、および装着ヘッド24などを収納している。ベース46の前側下方には、ダイ供給装置30の一部が差し込まれる空間である収納部86(図2)が設けられている。本体部11の上面の一部にカバー12が取り付けられている。フラックス供給装置26は、ベース46に固定されたデバイスパレットに70の上方に固定されている。ダイ供給装置30はメインフレーム100およびウエハ収容装置102などを有する。ウエハ収容装置102の内部には、複数のウエハ90が、面をXY平面と略平行な状態にされて収納されている。ダイ供給装置30は、ウエハ収容装置102に収納された複数のウエハ90のうちの一枚を取り出し、メインフレーム100の上方に送り出す。操作装置180は、本体部11の前面に取り付けられている。作業者は、操作装置180の表示画面に表示された、例えば電子部品装着装置10の動作状況などの情報を確認することができる。また、作業者は、電子部品装着装置10に必要な操作や設定を操作装置180の操作スイッチを介して行うことができる。
【0011】
図2に示すように、ダイ供給装置30は、上記の構成の他に、ピックアップヘッド移動装置106、ピックアップヘッド105、ウエハ保持フレーム118、およびダイ突上装置(図3)103などをメインフレーム100の上方に有している。ダイ供給装置30は、ウエハ90が有するダイ92をピックアップし、ダイ92の基板への装着作業を行う装着ヘッド24へ渡す装置である。尚、ここでのウエハ90とは、ダイシングシート93が貼着された後ダイシングされたものであり、複数のダイ92がダイシングシート93に貼着された状態であるものというものとする。
【0012】
ピックアップヘッド移動装置106は、Y軸方向に延びるY軸方向ガイドレール134,134、X軸方向に延びるX軸方向ガイドレール135、およびクランプ146などを
有する。Y軸方向ガイドレール134,134は対をなし、X軸方向に所定間隔離間して
配置されている。X軸方向ガイドレール135は、Y軸方向ガイドレール134,134の上に架け渡されている。X軸方向ガイドレール135は、Y軸方向ガイドレール134,134に案内されて、不図示の電磁モータを駆動源として、Y軸方向の任意の位置に移動する。X軸方向ガイドレール135には、ピックアップヘッド105が取り付けられたスライダ138が取り付けられている。スライダ138およびピックアップヘッド105は、不図示の電磁モータを駆動源として、X軸方向ガイドレール135に案内されて、X軸方向の任意の位置に移動する。
【0013】
ピックアップヘッド105は、ノズルホルダ162(図4)、吸着ノズル163(図4)、ノズル昇降装置(不図示)、および反転装置(不図示)を有する。ノズルホルダ162は、棒状であり、先端に吸着ノズル163を保持する。吸着ノズル163は、正負圧供
給装置(不図示)から負圧が供給されることでダイ92を吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持したダイ92を離脱する。以下の説明において、ピックアップヘッド105が、ダイ92を吸着保持することをピックアップと記載する場合がある。ノズル昇降装置は、ノズルホルダ162および吸着ノズル163を上下方向に昇降させる。反転装置は、ノズルホルダ162をXY平面方向に延びる回転軸(不図示)回りに上下方向に反転させる。
【0014】
図2に戻り、クランプ146は、ピックアップヘッド移動装置106のX軸方向ガイドレール135の前面に取り付けられている。クランプ146は、ウエハ収容装置102に収容されたウエハ90を把持するものである。ウエハ保持フレーム118は、メインフレーム100の上面に配設されている。ウエハ収容装置102に収納された複数のウエハ90のうち、クランプ146と上下方向の位置が同等とされたウエハ90がクランプ146により把持される。その後、X軸方向ガイドレール135が後方へ移動することにより、クランプ146により把持されたウエハ90が後方へ移動する。ウエハ保持フレーム118まで移動したウエハ90は、クランプ146による把持が解除され、ウエハ保持フレーム118の内側に載置される。ウエハ保持フレーム118の内側に載置されたウエハ90は、不図示の固定機構により固定される。ダイ突上装置103は、ウエハ保持フレーム118の下方に配設されている。尚、ダイ突上装置103の詳細については後述する。
【0015】
搬送装置20は、コンベア装置40,42を有する。コンベア装置40,42は、X軸方向に延びるように所定間隔離間して配設されている。コンベア装置40,42の各々は、不図示の電磁モータを駆動源として基板をX軸方向に搬送する。
【0016】
装着ヘッド移動装置22は、ピックアップヘッド移動装置106と同様の構成を有している。装着ヘッド移動装置22は、Y軸方向に延びるY軸方向ガイドレール50,50お
よびX軸方向に延びるX軸方向ガイドレール52などを有している。Y軸方向ガイドレール50,50は対をなし、X軸方向に所定間隔離間して配置されている。X軸方向ガイド
レール52は、Y軸方向ガイドレール50,50の上に架け渡されている。X軸方向ガイドレール52は、Y軸方向ガイドレール50,50に案内されてY軸方向の任意の位置に移動する。X軸方向ガイドレール52には、装着ヘッド24が取り付けられたスライダ54が取り付けられている。スライダ54および装着ヘッド24は、X軸方向ガイドレール52に案内されて、X軸方向の任意の位置に移動する。装着ヘッド24は、不図示のノズルホルダ、吸着ノズル、およびノズル昇降装置などを有する。ノズルホルダは、棒状であり、先端に吸着ノズルを保持する。吸着ノズルは、正負圧供給装置(不図示)により負圧を供給されてダイ92を吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持したダイ92を離脱する。
【0017】
フラックス供給装置26は、後方端部にフラックストレイ74を有する。フラックストレイ74には、フラックスが貯留されている。ノズルステーション76は、搬送装置20とデバイスパレット70との間に配置されている。ノズルステーション76には、替えの吸着ノズル163が収納されている。
【0018】
ここで、電子部品装着装置10による装着作業の概要について説明する。
基板はコンベア装置40,42により所定の位置まで搬送され、基板保持装置(不図示)により固定される。一方、ウエハ90は、ダイ供給装置30によりメインフレーム100上に固定される。ウエハ90の1つのダイ92がダイ突上装置103により上方へ突き上げられ、突き上げられたダイ92は、ピックアップヘッド105の吸着ノズル163により、吸着保持される。次に、ピックアップヘッド105が上下方向に反転され、装着ヘッド24は、ピックアップヘッド105からダイ92を受け取る。次に、装着ヘッド24はフラックストレイ74の上方に移動し、ダイ92のバンプ(不図示)にフラックスが塗
布される。次に、装着ヘッド24は、基板の装着位置まで移動し、吸着ノズルが下降され、基板にダイ92が装着される。
【0019】
次に、図3、4を用いて、ダイ突上装置103について詳述する。ダイ突上装置103は、ベース151、Y軸方向ガイドレール152,152、Y移動テーブル153、X軸
方向ガイドレール154,154、X移動テーブル156、およびダイ突上本体部157
などを有する。ベース151は、メインフレーム100に固定されている。Y軸方向ガイドレール152,152は対をなし、Y軸方向に所定間隔離間して配置されている。Y移
動テーブル153は、Y軸方向ガイドレール152,152に案内されて、不図示の電磁
モータを駆動源として、Y軸方向の任意の位置に移動する。Y移動テーブル153の上面には、X軸方向ガイドレール154,154が対をなし、Y軸方向に所定間隔離間して固
定されている。X移動テーブル156は、X軸方向ガイドレール154,154に案内さ
れて、不図示の電磁モータを駆動源として、X軸方向の任意の位置に移動する。上面157aを有する円筒状のダイ突上本体部157はX移動テーブル156に固定されている。
【0020】
図4に示すように、ダイ突上装置103は、上記した構成の他に、1つの突き上げピン158を有する。ダイ突上本体部157の上面157aには、複数の上下方向に貫通する孔159が形成されている。突き上げピン158は、平面視でダイ突上本体部157の略中心に配置され、孔159を突き抜けて、上面157aから上方に突出することができる。ダイ突上本体部157の内部空間には、正負圧供給装置(不図示)から負圧が供給される。ダイ突上本体部157の内部空間に負圧が供給されると、孔159を介してダイシングシート93が下方に吸引される。
【0021】
電子部品装着装置の制御システム構成
次に、図5を用いて、電子部品装着装置10の制御システムの構成について説明する。電子部品装着装置10は、上記した構成の他に、制御装置200を備える。制御装置200は、CPU201、RAM202、ROM203、記憶部204などを有する。CPU201はROM203および記憶部204に記憶されている各種のプログラムを実行することによって、電気的に接続されている各部を制御する。ここで各部とはダイ供給装置30、搬送装置20、装着ヘッド移動装置22、装着ヘッド24などである。詳しくは、CPU201は、各部に命令し、各部は命令に応じた動作が完了すると、完了した旨の信号をCPU201へ出力する。RAM202はCPU201が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。
【0022】
次に、図6を用いて、CPU201が実行する装着作業処理について説明する。尚、ここでは、ピックアップヘッド105はノズルホルダ162および吸着ノズル163を各々4つ備え、装着ヘッド24も同様にノズルホルダおよび吸着ノズルを各々4つ備えているものとする。CPU201は、例えば操作装置180により作業者からの装着作業の開始命令を受け付けると、装着作業処理を開始する。まず、CPU201は、ダイ供給装置30に1枚のウエハ90をメインフレーム100上に固定させる。次に、4つのダイ92を対象として、ダイ突上装置103に事前突き上げ作業を実施させる。事前突き上げ作業については、図7、8を用いて説明する。
【0023】
ピックアップヘッド105および装着ヘッド24は、一度に4個のダイ92を吸着保持することができるため、4個のダイ92を対象として事前突上作業が実施される。図7は、ウエハ90が有する複数のダイ92のうち、1回の事前突上作業が実施される4個のダイ92が抜き出されて描かれた図である。事前突上作業において、4個のダイ92の各々がウエハ90に並ぶ順に順々に突き上げられる。また、1つのダイ92に付き、互いに位置が異なる5か所、突き上げピン158にて突き上げられる。突き上げられる5か所の位置は、例えば、図7に示す様な、ダイ92の4隅と中央である。図7のダイ92毎に描か
れた数字は、突き上げられる順番を示している。
【0024】
図4に示すように、ダイ92は突き上げピン158により上方に突き上げられると、突き上げピン158に突き上げられる部分の周囲のダイシングシート93はダイ突上本体部157により吸引されているため、ダイシングシート93において突き上げられた点から吸引されている部分に向かって応力が生じる。このため、ダイ92の縁部からダイシングシート93が剥がれていく。事前突き上げ作業における、1つのダイ92に対する1回目の突き上げにより、図8(a)に示すように、突き上げピン158の近傍のダイシングシート93が剥がれる。さらに、1つのダイ92に対する2回目の突き上げにより、図8(b)に示すように、突き上げピン158の近傍のダイシングシート93が剥がれる。さらに、1つのダイ92に対する3,4回目の突き上げがなされ、5回目の突き上げがなされることにより、図8(c)に示すように、ダイ92とダイシングシート93との接着面積は僅かな状態とされる。尚、ここで、突き上げピン158の先端からダイ突上本体部157の上面157aまでの距離を突き上げ量と称する。事前突き上げ作業における5回の突き上げにおける突き上げ量は、互いに同じであり、突き上げ量h1であるものとする。
【0025】
図6に戻り、CPU201は、事前突き上げ作業を実施させた4個のダイ92の各々を対象として、ダイ突上装置103に突き上げピン158で突き上げさせて、突き上げられたダイ92をピックアップヘッド105にピックアップさせるピックアップ作業を実施させる。詳しくは、1つのダイ92の略中央部をダイ突上装置103が突き上げ、ピックアップヘッド105がピックアップするステップと、隣のダイ92の位置へピックアップヘッド105およびダイ突上本体部157が移動するステップとが繰り替えされて、4個のダイ92がピックアップヘッド105にピックアップされる。
【0026】
ここで、図8(d)に示すように、ピックアップ作業における突き上げ量h2は、事前突き上げ作業における突き上げ量h1よりも少ない突き上げ量h2とされる。事前突き上げ作業により、ダイ92とダイシングシート93との接着面積は僅かな状態とされているため、突き上げ量h2が事前突き上げ作業よりも少なくても、ピックアップヘッド105はピックアップすることができる。また、少ない突き上げ量h2とされることにより、突き上げ作業の作業期間を短くすることができる。
【0027】
図6に戻り、次に、CPU201は、ピックアップヘッド105を反転させ、装着ヘッド24に4個のダイ92を受け渡たさせる。次に、CPU201は、装着ヘッド移動装置22に装着ヘッド24をフラックストレイ74の上方に移動させ、装着ヘッド24にダイ92へのフラックスの塗布をさせ、装着ヘッド移動装置22に装着ヘッド24を基板のダイ92の装着位置に移動させる移動作業を実施させる。次に、装着ヘッド24にダイ92を基板に装着させる装着作業を実施させる。ここで、上記のピックアップ作業から装着作業までの一連の作業を1PP作業と称する。また、事前突き上げ作業が実施される期間を第1期間、ピックアップ作業が実施される期間を第2期間、移動作業および装着作業が実施される期間を第3期間と便宜上、称する。尚、図6は、各期間において、対応する作業が期間の開始から終了まで継続して実施される事を限定するものではなく、各期間のうち所定時間、対応する作業が実施される場合もある。CPU201は、第3期間の後の第4期間において、2回目の1PP作業を開始させる。このように、計画されているすべての装着作業が終了するまで、CPU201は1PP作業を繰り返し実施させ、計画されているすべての装着作業が終了すると装着作業処理を終了する。
【0028】
また、CPU201は、第3期間において、第4期間においてピックアップ作業の対象となる4個のダイ92に対して、事前突き上げ作業を実施させる。このように、2回目以降の事前突き上げ作業は1PP作業期間内に行われるので、全体のタクトタイムを延長することなく、事前突き上げ作業は実施されることができる。
【0029】
ここで、電子部品装着装置10は電子部品装着装置の一例であり、ダイシングシート93は粘着シートの一例であり、ダイ突上装置103は突上部の一例である。また、ピックアップヘッド105および装着ヘッド24は装着部の一例である。また、CPU201は制御部の一例である。ピックアップ作業は第1作業の一例であり、移動作業および装着作業は第2作業の一例であり、事前突き上げ作業は第3作業の一例である。また、突き上げピン158はピンの一例である。
【0030】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
ダイシングシート93に貼着されたダイ92は、まず事前突き上げ作業において突き上げられることにより、ダイ92とダイシングシート93との接着面積が小さくされる。続いて、ピックアップ作業において突き上げられることにより、接着面積はさらに小さくされるため、ダイ92はダイシングシート93から容易に剥がされることができ、ピックアップヘッド105はダイ92をピックアップすることができる。このように、段階的に接着面積は減らされるため、各作業における突き上げ量h1,h2は、1回突き上げられて剥がされる場合よりも、少なくすることができる。突き上げ量h2は少ないため、ピックアップ作業における突き上げ時間は、1回突き上げられて剥がされる場合よりも、短くすることができる。また、段階的に接着面積が小さくされるため、ダイ92へのダメージを軽減することができる。さらに、2回目以降の事前突き上げ作業は移動作業およびピックアップの作業期間内に行われるので、ピックアップ作業の際にだけ突き上げられる場合よりも、装着作業全体のタクトタイムを短縮することができる。
【0031】
また、ダイ突上装置103は1つの突き上げピン158を有し、CPU201は、事前突き上げ作業にて、1つのダイ92に対して複数個所を順々に突き上げさせる。ダイ突上装置103は、ダイ92を順々に突くことで、ダイ92はダイシングシート93から徐々に剥がされるため、ダイ92へのダメージを減らすことができる。
【0032】
また、CPU201は、事前突き上げ作業における突き上げ量h1とピックアップ作業における突き上げ量h2とを個別に調整可能であり、ピックアップ作業における突き上げ量h2よりも事前突き上作業における突き上げ量h1を多くする。このようにすると、事前突き上げ作業にてダイ92とダイシングシート93との接着面積を十分に小さくすることができるため、ピックアップ作業における突き上げ量h2は相対的に少なくすることができる。突き上げ量h2は少ないため、ピックアップ作業の作業時間は低減し、全体のタクトタイムを低減することができる。
【0033】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記では、事前突き上げ作業にて、1つのダイ92に対して5か所突き上げると説明したが、回数および位置を限定するものではない。また、事前突き上げ作業において、CPU201は、先行のピックアップ作業の対象とされたダイ92に隣接するダイ92を後行のピックアップ作業の対象となるダイ92として選択させ、選択されたダイ92に対して、先行のピックアップ作業にて既にピックアップされたダイ92の位置に近い側から遠い側に向かって順に突き上げさせる構成としても良い。既にピックアップされたダイ92の近傍は、ダイ突上装置103による突き上げなどにより、ダイシングシート93は既に引っ張られた状態とされており、他の部分よりもダイ92が剥がれやすい状態となっている。このため、ダイ突上装置103は、既にピックアップされたダイ92の近い側から遠い側に向かって突き上げることで、ダイ92をダイシングシート93から容易に剥がすことができる。
【0034】
また、上記では、ピックアップ作業において、ダイ突上装置103は1つのダイ92の
1か所を突き上げると説明したが、これに限定されない。事前突き上げ作業のように、1つのダイ92に対して位置が互いに異なる複数個所を突き上げる構成としても良い。この構成の場合には、上記のように、既にピックアップされたダイ92の近い側から遠い側に向かって突き上げる構成としても良い。
【0035】
また、上記では、CPU201は、ピックアップ作業における突き上げ量h2よりも事前突き上作業における突き上げ量h1を多くすると説明したが、これに限定されない。ダイシングシート93の例えば粘着力などの特性により適切な突き上げ量は異なるため、ピックアップ作業における突き上げ量h2よりも事前突き上作業における突き上げ量h1を多くするのが最適であるとは限らない。そこで、事前突き上げ作業における突き上げ量h1とピックアップ作業における突き上げ量h2とを個別に調整可能である構成とすると良い。個別に調整可能な構成にすることによって、ダイシングシート93の特性に応じて、各作業における突き上げ量について自由度を高く調整することができる電子部品装着装置10とすることができる。
【0036】
また、CPU201はダイ92とダイシングシート93との接触面積が所定面積以下となるまで減少させるのに要するダイ92へ加える力の総量をピックアップ作業と事前突き上げ作業とで分配して発生させる構成としても良い。所定面積は、例えば、ピックアップヘッド105がダイ92を吸着保持可能な程度の面積である。このようにすると、所定面積以下となるまで減少させるのに要するダイ92へ加える力の総量をピックアップ作業のみで発生させる場合よりも、ピックアップ作業および事前突き上げ作業の各々で発生させる力を小さくすることができる。力の大きさは、上記の突き上げ量に限らず、例えば突き上げピン158を突き上げる速度によっても調整されることができる。力を小さくすることができるため、ダイ92へのダメージを減らすことができる。
【0037】
また、上記では、ダイ突上装置103が1つの突き上げピン158を備える構成を説明したが、突き上げピン158は1つに限定されず、複数の突き上げピン158を備え、事前突き上げ作業にて、1つのダイに対して複数の突き上げピン158にて同時に突き上げさせる構成としても良い。これによれば、突き上げられる箇所が分散されるので、ダイ92へのダメージを減らすことができる。また、この構成の場合、事前突き上げ作業およびピックアップ作業にて、同時に突き上げるダイ92の個数は1個に限らず、隣接する複数のダイ92を突き上げる構成としても良い。
【0038】
また、上記では、事前突き上げ作業は、次のピックアップ作業の対象となるダイ92に対して実施されると説明したが、これに限定されない。さらに後の、後行のピックアップ作業の対象となるダイ92に対して実施される構成としても良い。また、上記では、事前突き上げ作業は1期間に付き1回実施される構成を説明したが、事前突き上げ作業が複数回実施される構成としても良い。また、上記では、装着作業処理の開始後、事前突き上げ作業が実施されると説明した。事前突き上げ作業は、ウエハの払い出し、各吸着ノズルの交換などの段取り替えの時間に実施される構成としても良い。また、吸着ノズル163の先端を撮像するカメラを備え、例えばピックアップ作業の後にダイ92が確実に吸着されていることを判定するなどの画像処理を実行する構成としても良い。また、ピックアップヘッド105および装着ヘッド24の各々は吸着ノズルを4個備えると説明したが、数を限定するものではない。また、ピックアップヘッド105を備える電子部品装着装置10を例に説明したが、ピックアップヘッド105を備えず、ダイ92のバンプ面を上にして基板に装着する電子部品装着装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 電子部品装着装置
24 装着ヘッド
92 ダイ
93 ダイシングシート
103 ダイ突上装置
105 ピックアップヘッド
158 突き上げピン
201 CPU
図1
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図8