(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】流体荷役継手
(51)【国際特許分類】
F16L 27/08 20060101AFI20220907BHJP
F16L 39/04 20060101ALI20220907BHJP
F16L 59/075 20060101ALI20220907BHJP
B67D 9/00 20100101ALN20220907BHJP
【FI】
F16L27/08 Z
F16L39/04
F16L59/075
B67D9/00 A
(21)【出願番号】P 2017254140
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-12-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508173901
【氏名又は名称】TBグローバルテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 友章
(72)【発明者】
【氏名】河合 務
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019531(JP,A)
【文献】仏国特許発明第01399258(FR,A)
【文献】実開昭55-018443(JP,U)
【文献】米国特許第06134893(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/08
F16L 39/04
F16L 59/075
B67D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重管同士を回転可能に接続する流体荷役継手であって、
第1フランジが設けられた第1内管、前記第1内管を収容する第1外管、および前記第1外管を回転可能に保持するホルダ、を含む第1ハーフと、
前記第1フランジと対向する摺動面を有する第2ハーフであって、第2フランジが設けられた第2内管、および前記第2内管を収容する、前記ホルダに締結される外側フランジが設けられた第2外管、を含む第2ハーフと、
前記第1フランジと前記摺動面との間に配置された内側シール部材および外側シール部材と、
前記第2フランジに設けられた、前記内側シール部材と前記外側シール部材の間のリーク流体を前記第2フランジの外周面へ導く内側流路と、
前記外側フランジに設けられた、前記リーク流体を前記第2外管の内側から外側へ導く外側流路と、
前記第2フランジと前記外側フランジとの間で前記内側流路と前記外側流路とを接続するリーク配管と、
を備え、
前記外側流路は、周方向において前記内側流路と異なる位置に位置しており、
前記リーク配管は、折れ曲がりながら前記内側流路と前記外側流路とを接続する、流体荷役継手。
【請求項2】
前記第1ハーフは、前記第1内管と前記第1外管との間を閉塞する第1閉塞部材を含み、
前記第2ハーフは、前記第2内管と前記第2外管との間を閉塞するとともに前記第1閉塞部材との間にガスが充填されるガス空間が形成される第2閉塞部材、を含み、
前記リーク配管は、前記ガス空間内に配置されている、請求項
1に記載の流体荷役継手。
【請求項3】
前記第2ハーフは、前記第1フランジと前記第2フランジとの間に介在する、前記摺動面を構成する環状のスペーサと、前記スペーサと前記第2フランジとに挟持される環状の絶縁材を含み、
前記絶縁材には、前記内側流路と連通する貫通穴が設けられており、
前記スペーサには、前記内側シール部材と前記外側シール部材の間で前記摺動面に開口し、かつ、前記貫通穴と連通する導入路が設けられている、請求項1
または2に記載の流体荷役継手。
【請求項4】
二重管同士を回転可能に接続する流体荷役継手であって、
第1フランジが設けられた第1内管、前記第1内管を収容する第1外管、および前記第1外管を回転可能に保持するホルダ、を含む第1ハーフと、
前記第1フランジと対向する摺動面を有する第2ハーフであって、第2フランジが設けられた第2内管、前記第2内管を収容する、前記ホルダに締結される外側フランジが設けられた第2外管、前記第1フランジと前記第2フランジとの間に介在する、前記摺動面を構成する環状のスペーサ、および前記スペーサと前記第2フランジとに挟持される環状の絶縁材を含む第2ハーフと、
前記第1フランジと前記摺動面との間に配置された内側シール部材および外側シール部材と、
前記第2フランジに設けられた、前記内側シール部材と前記外側シール部材の間のリーク流体を前記第2フランジの外周面へ導く内側流路と、
前記外側フランジに設けられた、前記リーク流体を前記第2外管の内側から外側へ導く外側流路と、
前記第2フランジと前記外側フランジとの間で前記内側流路と前記外側流路とを接続するリーク配管と、を備え、
前記絶縁材には、前記内側流路と連通する貫通穴が設けられており、
前記スペーサには、前記内側シール部材と前記外側シール部材の間で前記摺動面に開口し、かつ、前記貫通穴と連通する導入路が設けられている、流体荷役継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管同士を回転可能に接続する低温流体用の流体荷役継手に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾などに設置される、低温流体用の流体荷役装置(ローディングアーム)には、二重管同士を回転可能に接続する流体荷役継手が組み込まれることがある。例えば、特許文献1には、
図5に示すような真空二重管同士を接続する、液化水素用の流体荷役継手100が開示されている。
【0003】
具体的に、流体荷役継手100は、第1真空二重管101の先端に設けられる可動側の第1ハーフ110と、第2真空二重管102の先端に設けられる固定側の第2ハーフ120を含む。第1ハーフ110は、第1内管111およびこれを収容する第1外管112を含み、第2ハーフ120は、第2内管121およびこれを収容する第2外管122を含む。
【0004】
第1内管111と第1外管112の間には第1真空空間113が形成されており、第1内管111と第1外管112の間が第1閉塞部材114で閉塞されている。同様に、第2内管121と第2外管122の間には第2真空空間123が形成されており、第2内管121と第2外管122の間が第2閉塞部材124で閉塞されている。
【0005】
また、第1ハーフ110は、第1外管112をベアリングを介して回転可能に保持するホルダ116を含む。一方、第2外管122の末端には外側フランジ126が設けられており、この外側フランジ126がボルト130によってホルダ116に締結されている。
【0006】
第1内管111の末端には第1フランジ115が設けられており、第2内管121の末端には第2フランジ125が設けられている。第2フランジ125の末端側端面は、第1フランジ115と対向する摺動面である。
【0007】
第1フランジ115と第2フランジ125の間には、それらの間の隙間を通じた液化水素のリークを防止するための内側シール部材141および外側シール部材142が配置されている。
【0008】
第1フランジ115には、内側シール部材141を超えてリークしたリーク流体を内側シール部材141と外側シール部材142の間から第1フランジの外周面へ導く内側流路が設けられている。一方、第1外管112には、リーク流体を第1外管112の内側から外側へ導く外側流路が設けられている。そして、内側流路と外側流路とがリーク配管150によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、
図5に示す流体荷役継手100のようにリーク流体の排出ルートが可動側の第1ハーフ110に形成されている場合には、ベアリングを内蔵する第1ハーフ110の構造が複雑になる。
【0011】
そこで、本発明は、第1ハーフの構造がシンプルな流体荷役継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明の流体荷役継手は、二重管同士を回転可能に接続する流体荷役継手であって、第1フランジが設けられた第1内管、前記第1内管を収容する第1外管、および前記第1外管を回転可能に保持するホルダ、を含む第1ハーフと、前記第1フランジと対向する摺動面を有する第2ハーフであって、第2フランジが設けられた第2内管、および前記第2内管を収容する、前記ホルダに締結される外側フランジが設けられた第2外管、を含む第2ハーフと、前記第1フランジと前記摺動面との間に配置された内側シール部材および外側シール部材と、前記第2フランジに設けられた、前記内側シール部材と前記外側シール部材の間のリーク流体を前記第2フランジの外周面へ導く内側流路と、前記外側フランジに設けられた、前記リーク流体を前記第2外管の内側から外側へ導く外側流路と、前記第2フランジと前記外側フランジとの間で前記内側流路と前記外側流路とを接続するリーク配管と、を備える、ことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、リーク流体の排出ルートが固定側の第2ハーフに形成されているので、ベアリングを内蔵する可動側の第1ハーフの構造をシンプルにすることができる。
【0014】
前記外側流路は、周方向において前記内側流路と異なる位置に位置しており、前記リーク配管は、折れ曲がりながら前記内側流路と前記外側流路とを接続してもよい。第1内管および第2内管の内部を流れる流体が液化水素のように極めて低温である場合には、第1内管および第2内管が大きく熱収縮する。これに対し、前記の構成では、リーク配管が折れ曲がっているので、折れ曲がり部を支点とする曲げ変形で第2内管の熱収縮を吸収することができる。
【0015】
例えば、前記第1ハーフは、前記第1内管と前記第1外管との間を閉塞する第1閉塞部材を含み、前記第2ハーフは、前記第2内管と前記第2外管との間を閉塞するとともに前記第1閉塞部材との間にガスが充填されるガス空間が形成される第2閉塞部材、を含み、前記リーク配管は、前記ガス空間内に配置されていてもよい。
【0016】
前記第2ハーフは、前記第1フランジと前記第2フランジとの間に介在する、前記摺動面を構成する環状のスペーサと、前記スペーサと前記第2フランジとに挟持される環状の絶縁材を含み、前記絶縁材には、前記内側流路と連通する貫通穴が設けられており、前記スペーサには、前記内側シール部材と前記外側シール部材の間で前記摺動面に開口し、かつ、前記貫通穴と連通する導入路が設けられていてもよい。この構成によれば、第1フランジと第2フランジとの間で電気的絶縁を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1ハーフの構造がシンプルな流体荷役継手が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流体荷役継手の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図3に、本発明の一実施形態に係る低温流体用の流体荷役継手1を示す。流体荷役継手1は、例えば、港湾などに設置されて液化ガス運搬船などと接続される流体荷役装置(ローディングアーム)に組み込まれる。
【0020】
本実施形態では、流体荷役継手1が対象とする低温流体が液化水素である。ただし、低温流体は、LNGなどの他の低温液体であってもよいし、低温気体であってもよい。
【0021】
流体荷役継手1は、第1真空二重管11と第2真空二重管14とを回転可能に接続する。具体的に、流体荷役継手1は、第1真空二重管11の先端に設けられる可動側の第1ハーフ2と、第2真空二重管14の先端に設けられる固定側の第2ハーフ3を含む。
【0022】
第1真空二重管11は、内部に液化水素が流れる第1導管12と、この第1導管12を収容する第1収容管13を含み、第1導管12と第1収容管13の間の空間が真空引きされる。同様に、第2真空二重管14は、内部に液化水素が流れる第2導管15と、この第2導管15を収容する第2収容管16を含み、第2導管15と第2収容管16の間の空間が真空引きされる。
【0023】
第1ハーフ2は、第1内管21と、この第1内管21を収容する第1外管22を含む。第1内管21の基端(第2ハーフ3と反対側の端)には第1導管12が溶接などにより接合され、第1外管22の基端には第1収容管13が溶接などにより接合される。第1内管21と第1外管22との間には、第1真空空間23が形成される。なお、第1内管21の基端と第1外管22の基端の位置は軸方向にずれていてもよい。
【0024】
同様に、第2ハーフ3は、第2内管31と、この第2内管31を収容する第2外管32を含む。第2内管31の基端(第1ハーフ2と反対側の端)には第2導管15が溶接などにより接合され、第2外管32の基端には第2収容管16が溶接などにより接合される。第2内管31と第2外管32との間には、第2真空空間33が形成される。なお、第2内管31の基端と第2外管32の基端の位置は軸方向にずれていてもよい。
【0025】
さらに、第1ハーフ2は、第1外管22をベアリング26を介して回転可能に保持する筒状のホルダ25を含む。一方、第2ハーフ3の第2外管32の末端(第1ハーフ2側の端)には、径方向外向きに広がる外側フランジ35が設けられている。そして、外側フランジ35がボルト91によりホルダ25に締結されている。つまり、ホルダ25にはボルト91と螺合するネジ穴が設けられている。ただし、ネジ穴の代わりにホルダ25にボルト91用の挿通穴が設けられ、ナットが用いられてもよい。
【0026】
第1内管21の末端(第2ハーフ3側の端)には、径方向外向きに広がる第1フランジ24が設けられており、第2内管31の末端には、径方向外向きに広がる第2フランジ34が設けられている。
【0027】
第1外管22および第2外管32のそれぞれは、基端側部分を除いて拡径されている。ただし、第2外管32は、当該第2外管32の末端側の内径がホルダ25の内径とほぼ一致するように、第1外管22よりも大きく拡径されている。
【0028】
第1内管21と第1外管22との間は、環状の第1閉塞部材41により閉塞されている。本実施形態では、第1閉塞部材41が、第1フランジ24の末端側端面およびホルダ25の末端側端面よりも奥まった位置に位置している。また、本実施形態では、第1閉塞部材41の内側の端部が、第1フランジ24の基端側端面に接合されており、第1閉塞部材41の外側の端部が、第1外管22の末端よりも僅かに基端側で第1外管22の内周面に接合されている。
【0029】
第1閉塞部材41は、第1内管21に沿って第1真空空間23内に窪む少なくとも1つの環状溝42を有する。ただし、第1閉塞部材41が断面視で蛇腹状となるように同心状の複数の環状溝42が設けられることが望ましい。本実施形態では、第1閉塞部材41が、同心状の2つの環状溝42を有する。
【0030】
第1閉塞部材41と第1内管21の間、第1閉塞部材41と第1外管22の間、および第1閉塞部材41の環状溝42同士の間は、上述した第1真空空間23である。一方、環状溝42の内部には、後述するようにヘリウムガスが充填される。このため、第1閉塞部材41によって、径方向に真空層とヘリウムガス層が交互に形成される。
【0031】
同様に、第2内管31と第2外管32との間は、環状の第2閉塞部材43により閉塞されている。本実施形態では、第2閉塞部材43が、第2フランジ34の末端側端面および外側フランジ35の末端側端面よりも奥まった位置に位置している。また、本実施形態では、第2閉塞部材43の内側の端部が、第2フランジ34の基端側端面に接合されており、第2閉塞部材43の外側の端部が、第2外管32の末端よりも僅かに基端側で第2外管32の内周面に接合されている。
【0032】
第2閉塞部材43は、第2内管31に沿って第2真空空間33内に窪む少なくとも1つの環状溝44を有する。ただし、第2閉塞部材43が断面視で蛇腹状となるように同心状の複数の環状溝44が設けられることが望ましい。本実施形態では、第2閉塞部材43が、同心状の3つの環状溝44を有する。
【0033】
第2閉塞部材43と第2内管31の間、第2閉塞部材43と第2外管32の間、および第2閉塞部材43の環状溝44同士の間は、上述した第2真空空間33である。一方、環状溝44の内部には、後述するようにヘリウムガスが充填される。このため、第2閉塞部材43によって、径方向に真空層とヘリウムガス層が交互に形成される。
【0034】
さらに、本実施形態では、第2ハーフ3が、第1真空二重管11と第2真空二重管14とを電気的に絶縁するように構成されている。具体的に、第2ハーフ3は、第1フランジ24と第2フランジ34との間に介在する環状の内側スペーサ61および内側絶縁材51を含むとともに、ホルダ25と外側フランジ35との間に介在する環状の外側スペーサ62および外側絶縁材52を含む。
【0035】
内側絶縁材51は、第2フランジ34と内側スペーサ61とに挟持されている。本実施形態では、内側スペーサ61が摺動面3aを構成している。つまり、内側スペーサ61の末端側端面が、第1フランジ24と対向する摺動面3aである。内側スペーサ61は、ボルト92により第2フランジ34に締結されている。内側絶縁材51には、ボルト92用の挿通穴が設けられている。
【0036】
外側絶縁材52は、外側フランジ35と外側スペーサ62とに挟持されている。外側絶縁材52および外側スペーサ62には、上述したボルト91用の挿通穴が設けられている。
【0037】
内側絶縁材51の厚さは外側絶縁材52の厚さと同じであり、それらの間には隙間が形成されている。同様に、内側スペーサ61の厚さは外側スペーサ62の厚さと同じであり、それらの間には隙間が形成されている。ただし、内側絶縁材51と外側絶縁材52の厚さは異なっていてもよいし、内側スペーサ61と外側スペーサ62の厚さは異なっていてもよい。内側絶縁材51および外側絶縁材52は絶縁材料(例えば、汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックなどの樹脂)からなり、内側スペーサ61および外側スペーサ62は金属からなる。
【0038】
第1フランジ24と内側スペーサ61(摺動面3a)との間には、それらの間の隙間を通じた液化水素のリークを防止するための内側シール部材71および外側シール部材72が配置されている。
【0039】
本実施形態では、内側シール部材71と外側シール部材72の双方が第1フランジ24に保持されているが、内側シール部材71と外側シール部材72の一方または双方が内側スペーサ61に保持されてもよい。
【0040】
第1フランジ24と内側スペーサ61との間には僅かなクリアランスが確保されており、第1フランジ24に保持された内側シール部材71および外側シール部材72が内側スペーサ61上を摺動する。また、本実施形態では、内側シール部材71を内側から覆い隠すようにリング46が第1内管21の末端に嵌め込まれている。
【0041】
内側スペーサ61と内側絶縁材51の間および内側絶縁材51と第2フランジ34との間には、それらの間の隙間を通じた液化水素のリークを防止するためのシール部材73,74が配置されている。
【0042】
内側スペーサ61と外側スペーサ62の間の隙間および内側絶縁材51と外側絶縁材52の間の隙間は、第1内管21と第1外管22の末端同士の間の第1閉塞部材41を底とする空間、および第2内管31と第2外管32の末端同士の間の第2閉塞部材43を底とする空間と連通している。これらの隙間および空間は、ガス空間45を構成する。換言すれば、第1閉塞部材41と第2閉塞部材43との間にはガス空間45が形成されている。
【0043】
ガス空間45には、ヘリウムガスが充填される。ホルダ25には、第1外管22とホルダ25の間の隙間を通じてガス空間45へヘリウムガスを供給するためのポート部材27が取り付けられている。
【0044】
第1外管22とホルダ25の間には、外部からの水分の侵入を防止するためのシール部材75が配置されている。また、ホルダ25、外側スペーサ62、外側絶縁材52および外側フランジ35の間には、万が一に液化水素がシール部材71~74を超えてガス空間45へリークしたとしても水素ガスが外部へリークするのを防止するためのシール部材76~78が配置されている。これらのシール部材75~78は、ヘリウムガスの外部へのリークを防止する役割も果たす。
【0045】
外側フランジ35をホルダ25に締結する上述したボルト91は金属製である。従って、外側絶縁材52および外側スペーサ62に設けられた、上述したボルト91用の挿通穴には、絶縁材料からなるスリーブ93が挿入されている。また、ボルト91の頭部と接するワッシャ95と外側フランジ35との間には、絶縁材料からなるシート(seat)94が配置されている。
【0046】
一方、内側スペーサ61を第2フランジ34に締結する上述したボルト92は絶縁材料からなる。ただし、ボルト92が金属からなり、ボルト91と同様の絶縁対策がボルト92に対しても採用されてもよい。
【0047】
さらに、本実施形態では、第1フランジ24と内側スペーサ61(摺動面3a)との間の摺動部における内側シール部材71と外側シール部材72の間のリーク流体を外部へ排出するための構成が採用されている。リーク流体は、内側シール部材71を超えてリークした液化水素またはこの液化水素が気化した水素ガスである。
【0048】
具体的に、
図2に示すように、内側スペーサ61に導入路63が設けられ、内側絶縁材51に貫通穴53が設けられ、第2フランジ34に内側流路36が設けられている。また、外側フランジ35には外側流路37が設けられている。そして、第2フランジ34と外側フランジ35との間では、リーク配管8によって内側流路36と外側流路37とが接続されている。リーク配管8は、ガス空間45内に配置されている。
【0049】
内側スペーサ61に設けられた導入路63は、内側シール部材71と外側シール部材72の間で摺動面3aに開口し、摺動面3aから第2内管31の軸方向に延びている。すなわち、導入路63は、内側シール部材71を超えてリークしたリーク流体を内側シール部材71と外側シール部材72の間から内側スペーサ61の基端側端面へ導く。内側絶縁材51に設けられた貫通穴53は、導入路63と連通している。
【0050】
第2フランジ34に設けられた内側流路36は、貫通穴53と連通しており、リーク流体を第2フランジ34の外周面へ導く。より詳しくは、内側流路36は、第2フランジ34の先端側端面から第2内管31の軸方向に延びた後に、第2フランジ34の外周面に向かって90度折れ曲がっている。本実施形態では、
図4に示すように、第2フランジ34の外周面に凹部34aが設けられており、この凹部34aの底に内側流路36の下流端が開口している。
【0051】
外側流路37は、リーク流体を第2外管32の内側から外側へ導く。外側流路37の上流端は外側フランジ35の内周面に開口しており、外側流路37の下流端は外側フランジ35の外周面に開口している。ただし、外側流路37の下流端は外側フランジ35の基端側端面に開口してもよい。外側流路37の下流端には、図略の排出配管が接続される。
【0052】
図4に示すように、本実施形態では、外側流路37が、周方向において内側流路36と異なる位置に位置している。具体的に、外側流路37は、周方向において内側流路36から90度ずれた位置に位置している。また、本実施形態では、
図2に示すように、外側流路37が第2内管31の軸方向においても内側流路36と異なる位置に位置している。そして、リーク配管8は、折れ曲がりながら内側流路36と外側流路37とを接続している。
【0053】
リーク配管8は、少なくとも1つのL字状部を含むことが望ましい。本実施形態では、リーク配管8が、第2フランジ34に接続された第1L字状部81と、外側フランジ35に接続された第2L字状部83と、それらの間に位置する直線状の移行部82を含む。
【0054】
第1L字状部81では、2つの直線部の間に90度折れ曲がる第1の折れ曲がり部が在り、第1L字状部81と移行部82の接続部が約45度折れ曲がる第2の折れ曲がり部である。また、移行部82と第2L字状部83の接続部が約45度折れ曲がる第3の折れ曲がり部であり、第2L字状部83では、2つの直線部の間に90度折れ曲がる第4の折れ曲がり部が在る。
【0055】
本実施形態では、
図4に示すように、第2フランジ34の外周面における外側流路37と対応する位置にも凹部34bが設けられている。また、第2フランジ34の外周面には、凹部
34aと凹部34bとの間に、移行部82との干渉を回避するための切欠き34cが設けられている。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の流体荷役継手1では、リーク流体の排出ルートが固定側の第2ハーフ3に形成されているので、ベアリング26を内蔵する可動側の第1ハーフ2の構造をシンプルにすることができる。
【0057】
本実施形態では、第1内管21および第2内管31の内部を流れる流体が極めて低温の液化水素である。これに対し、本実施形態では、リーク配管8が折れ曲がっているので、折れ曲がり部を支点とする曲げ変形で第2内管31の熱収縮を吸収することができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、第2ハーフ3が導入路63が設けられた内側スペーサ61と貫通穴53が設けられた内側絶縁材51を含むので、第1フランジ24と第2フランジ34との間で電気的絶縁を確保することができる。
【0059】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、外側スペーサ62が省略され、第1外管22と第2外管32のどちらか一方が外側スペーサ62の厚さ分だけ長くなっていてもよい。
【0061】
あるいは、第1真空二重管11と第2真空二重管14とを電気的に絶縁する必要がない場合は、内側および外側スペーサ61,62ならびに内側および外側絶縁材51,52が省略され、第2フランジ34の末端側端面が摺動面3aとなっていてもよい。
【0062】
また、ガス空間45に充填されるガスは、流体荷役継手1が対象とする低温流体に応じて適宜選定可能である(例えば、窒素ガスなど)。さらに、流体荷役継手1は、必ずしも真空二重管同士を接続する必要はなく、その他の二重管同士を接続してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 流体荷役継手
2 第1ハーフ
21 第1内管
22 第1外管
23 第1真空空間
24 第1フランジ
25 ホルダ
3 第2ハーフ
31 第2内管
32 第2外管
33 第2真空空間
34 第2フランジ
35 外側フランジ
36 内側流路
37 外側流路
41 第1閉塞部材
42 環状溝
43 第2閉塞部材
44 環状溝
45 ガス空間
51 内側絶縁材
53 貫通穴
61 内側スペーサ
63 導入路
71 内側シール部材
72 外側シール部材
8 リーク配管