(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】放射線硬化型粘着剤組成物および粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 133/24 20060101AFI20220907BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220907BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20220907BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220907BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220907BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C09J133/24
C09J11/06
C09J4/00
C09J7/38
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
H01L21/304 622J
(21)【出願番号】P 2018027582
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 孝徳
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183309(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018270(WO,A1)
【文献】特開2007-297591(JP,A)
【文献】特開2015-124300(JP,A)
【文献】特開2002-371262(JP,A)
【文献】特開2016-183276(JP,A)
【文献】国際公開第2010/073649(WO,A1)
【文献】特開2008-231243(JP,A)
【文献】特開2016-98360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H01L 21/304
H01L 21/463
H01L 21/78- 21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位(a-1)と、架橋性官能基を有する構造単位(a-2)とを含む(メタ)アクリル系共重合体(A)と、架橋剤(B)と、放射線重合性化合物(C)とを含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、重量平均分子量が20万~200万、分子量分布(PDI)が2.5以下であり、
前記構造単位(a-2)の含有率が、(メタ)アクリル系共重合体(A)全体100質量%中において0.1質量%~10質量%であり、
前記放射線重合性化合物(C)は、一分子中に放射線重合性基を2個~6個有し、重量平均分子量が100~30,000の化合物であり、
放射線硬化型粘着剤組成物が有する固形分中の放射線重合性基の含有量が0.1mmol/g~10mmol/gであることを特徴とする放射線硬化型粘着剤組成物。
【化1】
[式(1)において、R
11は水素原子または置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R
12は置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R
11およびR
12が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R
13は水素原子またはメチル基を示す。]
【請求項2】
前記構造単位(a-1)の含有率が、(メタ)アクリル系共重合体(A)全体100質量%中において5質量%~40質量%である請求項1に記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記放射線重合性化合物(C)として、重量平均分子量が100以上1000未満である放射線重合性化合物と、重量平均分子量が1,000以上10,000以下である放射線重合性化合物とを含有する請求項1または2に記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、モノマー組成物をリビングラジカル重合することで得られたものである請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項5】
前記架橋剤(B)が、イソシアネート系架橋剤である請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線硬化型粘着剤組成物。
【請求項6】
基材フィルムと、請求項1~5のいずれか一項に記載の放射線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層とを有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層のゲル分率が20質量%以上である請求項6に記載の粘着テープ。
【請求項8】
半導体加工用である請求項6または7に記載の粘着テープ。
【請求項9】
半導体ウエハまたは基板とリングフレームとに、請求項8に記載の粘着テープを貼りつける貼付工程と、
前記半導体ウエハまたは基板をダイシングして半導体チップまたは半導体部品にするダイシング工程と、
前記粘着テープに放射線を照射する照射工程と、
前記半導体チップまたは半導体部品同士の間隔を広げるため前記粘着テープを引き延ばすエキスパンド工程と、
前記粘着テープから半導体チップまたは半導体部品をピックアップするピックアップ工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型粘着剤組成物、および、この組成物から形成された粘着剤層を有する粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、半導体ウエハ表面に回路パターンを形成後、回路パターン形成後の半導体ウエハ裏面を薄く研削するバックグラインド工程、所定の厚さに仕上げられた半導体ウエハの裏面に伸縮性のある粘着テープを張り合わせた後に半導体ウエハを個々のチップサイズにカットするダイシング工程、粘着テープをエキスパンドしチップ分割するエキスパンド工程、分割された半導体ウエハ(半導体チップ)をピックアップするピックアップ工程が実施される。ピックアップされた半導体チップは、実装後、樹脂封止によりパッケージ化される。
【0003】
前記バックグラインド工程とダイシング工程では、放射線硬化型粘着テープが使用されている。具体的には、バックグラインド工程では、研削時に回路パターン表面を保護するために放射線硬化型粘着テープ(バックグラインドテープ)が貼付される。バックグラインドテープを剥離する際には、バックグラインドテープに放射線照射を行ってバックグラインドテープの粘着剤層を硬化し、粘着力を低下させ、バックグラインドテープを剥離する。
【0004】
ダイシング工程では、分割された半導体チップを固定するために、放射線硬化型粘着テープ(ダイシングテープ)が使用される。ダイシング工程後は、チップ分割し、ダイシングテープに放射線照射を行ってダイシングテープの粘着剤層を硬化し、粘着力を低下させる。次に、テープ基材側からウエハ切断物をニードルで突き上げ、ダイシングテープからウエハ切断物を脱離または剥離させ、半導体チップとして分離し、それをピックアップする。
【0005】
バックグラインドテープ、ダイシングテープ等の半導体加工用テープとして用いることができる放射線硬化型粘着テープとしては、例えば、放射線硬化型(メタ)アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着テープ(特許文献1(実施例3、5、6)、特許文献2(実施例1)参照)が知られている。
【0006】
ところで、近年の半導体装置の小型化、高密度化等に伴って、半導体ウエハは、その表面における回路パターン表面の凹凸高さがより大きく、凹凸ピッチが小さくなりつつある。また、従来の電子・電気機器に用いる半導体装置の製造方法では、基板上に設置した半導体チップをワイヤボンディングにより導電接続することが行われていた。しかし、近年の機器のさらなる小型化・薄型化・軽量化の要求に対して、これらの機器の内部に使用される半導体装置をはじめとする電子部品についても同様の要求がなされている。
【0007】
そこで、電子部品の小型化・高密度実装化への取り組みの一つとして、例えば半導体チップを積層して高密度実装を実現する三次元実装技術(特許文献3(段落0076)参照)が提案されている。また、例えば半導体チップの内部に貫通電極を形成し、インターポーザと呼ばれる実装用のチップに積層した半導体パッケージ構造(特許文献4(段落0043~0045)参照)が提案されている。このような貫通電極が設けられた半導体ウエハでは、通常、一方または両方の面に貫通電極が10μm~15μm程度の高さに突出した突起部分が存在し、凹凸がより大きくなる。さらに、貫通電極には銅等の導電体が用いられており、このような導電体に対する放射線硬化型粘着テープの糊残りも問題となる。
【0008】
上述のように、近年では、バックグラインドテープ、ダイシングテープ等の半導体加工用テープは、段差の大きい凹凸面を有する被着体に貼付することが求められる。凹凸面のような粘着剤層に応力がかかるような被着体に対しては、通常の粘着テープに要求される粘着力の他に、高い定荷重剥離性も要求される。すなわち、凹凸面を有する被着体では粘着テープの浮き剥がれが発生しやすいことから、テープ固定面に小さい応力が長時間にわたり負荷された場合でも、浮き剥がれ箇所を起点に加速的に剥離されたり、ズレが生じたりすることが抑制される特性も要求される。
【0009】
さらに放射線硬化後においては、微細な加工や薄い薄膜が表面に形成された壊れやすい半導体ウエハからであっても、容易に剥離できるように粘着力が十分に低下していることが求められている。
【0010】
またさらに、粘着テープを用いると、剥離後、転写汚染物(糊残り)が発生することがある。特に、凹凸面を有する半導体ウエハにおいては、凸部が粘着剤層に埋め込まれるため糊残りが更に発生しやすい。糊残りは、回路の導通不良や、パッケージ工程でのパッケージクラック等の問題を引き起こすことが知られている。そのため、糊残りの発生の少ないことも求められている。
【0011】
ここで、従来の放射線硬化型粘着テープは、放射線照射しても半導体ウエハから剥離するときの粘着力が十分に低下せず、糊残り生じ易い。そこで、例えば、特許文献5では、分子量分布1.05~2.5の(メタ)アクリル系共重合体の側鎖に放射線硬化が可能な重合性基を導入することで、粘着剤層の放射線硬化性を高め、粘着力の十分な低下と、糊残りが低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開昭60-223139号公報
【文献】特開平5-32946号公報
【文献】特開2002-50738号公報
【文献】特開2005-236245号公報
【文献】特開2015-124300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献5には、放射線硬化前の定荷重剥離性および粘着力を向上させる方法については検討されていない。また、粘着テープが圧着される面の凹凸が大きい場合、粘着剤層を硬化後に剥離した際に、凸部側面や凹部に粘着剤が残留し、糊残りが発生することがある。このような糊残りは、粘着テープのテンションコントロール時に、粘着テープから粘着剤が脱離し、凸部側面に付着または凹部に入り込むことも要因であると考えられる。そのため、粘着テープは、放射線硬化前に剥離しても糊残りが少ないことが重要となる。しかし、特許文献5は、放射線硬化前の剥離における糊残りを低減する方法については検討されていない。
【0014】
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、放射線硬化前は剥がれにくく、被着体に対して高い定荷重剥離性と粘着力を発揮でき、かつ、放射線硬化後は被着体から容易に剥離することができ、凹凸を有する被着体においても糊残りを少なくすることができる粘着剤層を形成できる放射線硬化型粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決することができた本発明の放射線硬化型粘着剤組成物は、下記一般式(1)で表される構造単位(a-1)と、架橋性官能基を有する構造単位(a-2)とを含む(メタ)アクリル系共重合体(A)と、架橋剤(B)と含有し、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、重量平均分子量が20万~200万、分子量分布(PDI)が2.5以下であり、放射線硬化型粘着剤組成物が有する固形分中の放射線重合性基の含有量が0.1mmol/g~10mmol/gであることを特徴とする。
【0016】
【化1】
[式(1)において、R
11は水素原子または置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R
12は置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R
11およびR
12が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R
13は水素原子またはメチル基を示す。]
【0017】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物は、主原料となる(メタ)アクリル系共重合体(A)が一般式(1)で表される構造単位(a-1)を有し、所定の重量平均分子量および分子量分布を有するため、被着体に対して高い定荷重剥離性と粘着力を発揮し、かつ、凹凸を有する被着体においても糊残りが低減された粘着剤層を形成できる。また、固形分中の放射線重合性基の含有量が所定量に調整されているため、放射線を照射することで、粘着剤層の粘着力を十分に低下させることができる。
【0018】
本発明には、基材フィルムと、前記放射線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層とを有する粘着テープも含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着テープは、放射線硬化前は定荷重剥離性と粘着集力が高く、放射線硬化後は被着体から容易に剥離することができ、かつ、凹凸を有する被着体においても糊残りが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1.粘着剤組成物>
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」と称する場合がある。)は、一般式(1)で表される構造単位(a-1)と、架橋性官能基を有する構造単位(a-2)とを含む(メタ)アクリル系共重合体(A)(以下、単に「共重合体(A)」と称する場合がある。)と、架橋剤(B)と含有する。そして、前記共重合体(A)は、重量平均分子量20万~200万、分子量分布(PDI)が2.5以下である。また、放射線硬化型粘着剤組成物が有する固形分中の放射線重合性基の含有量が0.1mmol/g~10mmol/gである。
【0021】
前記放射線硬化型粘着剤組成物は、基材フィルム上に組成物を塗布し、共重合体(A)が有する架橋性官能基と、架橋剤(B)が有する官能基とを反応させることで、粘着剤層を形成できる。また、前記放射線硬化型粘着剤組成物は、固形分(例えば、共重合体(A)、後述する放射線重合性化合物(C))中に放射線重合性基を有している。そのため、形成後の粘着剤層に放射線を照射することで、粘着剤層を硬化させ、粘着力を低下させることができる。本発明において「放射線」とは、例えば、電離放射線、すなわち、X線、紫外線、電子線等が挙げられる。
【0022】
本発明において「放射線重合性化合物」とは放射線の照射により重合し得る官能基を有する化合物のことをいい、放射線照射により重合し得る官能基を「放射線重合性基」という。放射線重合性基としては、(メタ)アクリロリル基、ビニル基、炭素-炭素二重結合等が挙げられ、放射線重合性化合物の重合とは前記官能基における炭素-炭素二重結合の付加反応を意味する。即ち、「放射線重合性基」とは、エチレン性不飽和結合を有する官能基を意味する。
【0023】
前記粘着剤組成物が有する固形分中の放射線重合性基の含有量は、0.1mmol/g以上が好ましく、より好ましくは0.2mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上であり、10mmol/g以下が好ましく、より好ましくは5mmol/g以下、さらに好ましくは2mmol/g以下である。前記放射線重合性基の含有量が前記範囲内であれば、放射線を照射することで、粘着剤層の粘着力が十分に低下し粘着テープを容易に剥離させることができる。固形分中の放射線重合性基の含有量は、使用する化合物や重合原料の量で求めることができる。
【0024】
前記放射線重合性基の含有量は、粘着剤組成物が有する固形分(溶剤を除いた成分)中に含まれる放射線重合性基の総和であり、粘着剤組成物の単位g当たりの放射線重合性基の総モル数である。例えば、粘着剤組成物に放射線重合性基を導入する方法としては、共重合体(A)の主鎖または側鎖に放射線重合性基を導入する方法、粘着剤組成物に後述する放射線重合性化合物(C)を配合する方法等が挙げられる。粘着剤組成物に導入された放射線重合性基は、粘着剤層を硬化させる際の架橋点となる。
【0025】
本発明の粘着剤組成物の各構成成分について以下説明する。
【0026】
(1-1.(メタ)アクリル系共重合体(A))
前記共重合体(A)は、重量平均分子量20万~200万、分子量分布(PDI)が2.5以下であり、一般式(1)で表される構造単位(a-1)と、架橋性官能基を有する構造単位(a-2)とを含む(メタ)アクリル系共重合体である。
【0027】
(メタ)アクリル系共重合体とは、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を主成分(50質量%以上)とする共重合体であればよく、(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーに由来する構造単位を含有することができる。前記共重合体(A)中の(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位の含有率は、共重合体全体において、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。なお、前記共重合体(A)は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位のみから構成されていてもよい。
【0028】
本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリルモノマー」は、分子中に「(メタ)アクリロイル基」を有するモノマーをいう。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよびメタクロイル少なくとも一方」をいう。「ビニルモノマー」とは分子中にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーのことをいう。「(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位」とは、(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。「ビニルモノマーに由来する構造単位」とは、ビニルモノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。
【0029】
(1-1-1 構造単位(a-1))
一般式(1)で表される構造単位(a-1)は、1種のみであってもよいし、2種以上を有していてもよい。構造単位(a-1)を有することで、共重合体(A)を粘着剤組成物に用いたときに定荷重剥離性および粘着力を高めることができる。
【0030】
【化2】
[式(1)において、R
11は水素原子または置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R
12は置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R
11およびR
12が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R
13は水素原子またはメチル基を示す。]
【0031】
前記R11で表される鎖状の炭化水素基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基等を挙げることができる。前記直鎖状アルキル基の炭素数としては、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~10がより好ましく、炭素数1~5がさらに好ましい。前記直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ラウリル基等が挙げられる。前記分岐鎖状アルキル基の炭素数としては、炭素数3~20が好ましく、炭素数3~10がより好ましく、炭素数3~5がさらに好ましい。前記分岐鎖状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ネオペンチル基、イソオクチル基等が挙げられる。
【0032】
前記R11で表される鎖状の炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、ベンゾイル基(-COC6H5)等が挙げられる。
【0033】
前記R11で表される環状の炭化水素基としては、環状アルキル基、芳香族基等が挙げられ、環状アルキル基および芳香族基は鎖状部分を有していてもよい。前記環状アルキル基の炭素数としては、炭素数4~18が好ましく、炭素数6~12がより好ましく、炭素数6~10がさらに好ましい。前記環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。前記芳香族基の炭素数としては、炭素数6~18が好ましく、炭素数6~12がより好ましく、炭素数6~8がさらに好ましい。前記芳香族基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。鎖状部分を有する環状アルキル基および鎖状部分を有する芳香族基の鎖状部分の例としては、炭素数1~12のアルキレン基、好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~3のアルキレン基が挙げられる。
【0034】
前記R11で表される環状の炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、鎖状のアルキル基等が挙げられる。
【0035】
前記R12で表される鎖状の炭化水素基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基等を挙げることができる。前記直鎖状アルキル基の炭素数としては、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~10がより好ましく、炭素数1~5がさらに好ましい。前記直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ラウリル基等が挙げられる。前記分岐鎖状アルキル基の炭素数としては、炭素数3~20が好ましく、炭素数3~10がより好ましく、炭素数3~5がさらに好ましい。前記分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ネオペンチル基、イソオクチル基等が挙げられる。
【0036】
前記R12で表される鎖状の炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、ベンゾイル基(-COC6H5)等が挙げられる。
【0037】
前記R12で表される環状の炭化水素基としては、環状アルキル基、芳香族基等が挙げられ、環状アルキル基および芳香族基は鎖状部分を有していてもよい。前記環状アルキル基の炭素数としては、炭素数4~18が好ましく、炭素数6~12がより好ましく、炭素数6~10がさらに好ましい。前記環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。前記芳香族基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。前記芳香族基の炭素数としては、炭素数6~18が好ましく、炭素数6~12がより好ましく、炭素数6~8がさらに好ましい。鎖状部分を有する環状アルキル基および鎖状部分を有する芳香族基の鎖状部分の例としては、炭素数1~12のアルキレン基、好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~3のアルキレン基が挙げられる。
【0038】
前記R12で表される環状の炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、鎖状のアルキル基等が挙げられる。
【0039】
前記R11またはR12で表される基の特に好ましい一例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基(-CH2C6H5)等を挙げることができる。
【0040】
前記R11およびR12が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば、5員環~7員環の含窒素ヘテロ環またはこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素ヘテロ環は芳香族性を有しないものが好ましく、飽和環がより好ましい。具体的には下記式(1-1)、(1-2)、(1-3)で表される構造が挙げられる。
【0041】
【化3】
[一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)において、R
14は、炭素数1~6のアルキル基を示す。lは0~5の整数を表す。mは0~4の整数を表す。nは0~4の整数を表す。*は結合手を表す。lが2~5、mが2~4、nが2~4の場合、複数存在するR
14は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0042】
一般式(1)で表される構造単位を形成するビニルモノマーの具体例としては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリイルモルフォリン等の環状アミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド等のアルコキシアルキルアクリルアミド等が挙げられる。これらの中でもN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリンが好ましい。
【0043】
構造単位(a-1)の含有率は、共重合体全体100質量%中において5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、40質量%以下が好ましく、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。構造単位(a-1)の含有率が5質量%以上であれば被着材との接着力を向上させることができ、40質量%以下であれば被着体との濡れ性が良好となり、粘着力が向上する。
【0044】
(1-1-2 構造単位(a-2))
架橋性官能基を有する構造単位(a-2)は、1種のみであってもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0045】
架橋性官能基とは、後述する架橋剤(B)が有する反応性基と反応し得る官能基である。前記架橋性官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、エポキシ基よりなる群から選択される1種以上が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基および/またはカルボキシ基である。
【0046】
前記共重合体(A)の架橋性官能基の含有量は、0.005mmol/g以上が好ましく、より好ましくは0.05mmol/g以上、さらに好ましくは0.1mmol/g以上、特に好ましくは0.15mmol/g以上であり、1.5mmol/g以下が好ましく、より好ましくは1.0mmol/g以下、さらに好ましくは0.7mmol/g以下、特に好ましくは0.5mmol/g以下である。架橋性官能基量の含有量が、0.005mmol/g以上であれば放射線照射前の粘着剤組成物の耐久性が優れ、1.5mmol/g以下であれば被着体に対する放射線照射前の密着性が優れる。前記架橋性官能基の含有量は、共重合体(A)が有する全ての架橋性官能基の総和であり、共重合体(A)の単位g当たりの架橋性官能基の総モル数である。
【0047】
前記架橋性官能性基は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位、(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーに由来する構造単位いずれに有していてもよい。前記構造単位を形成するモノマーは、架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー、および架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーである。
【0048】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー、カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー、スルホン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー、リン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーとしては、ヒドロキシ基を有するビニルモノマー、カルボキシ基を有するビニルモノマー、エポキシ基を含有するビニルモノマー等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー、カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
【0049】
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物;等が挙げられる。これらの中でもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1~5がヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0050】
前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレアート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0051】
前記スルホン酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、スルホン酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
前記リン酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル等が挙げられる。
【0053】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
前記ヒドロキシ基を有するビニルモノマーとしては、p-ヒドロキシスチレン、アリルアルコール等が挙げられる。
前記カルボキシ基を有するビニルモノマーとしては、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸等が挙げられる。
前記エポキシ基を含有するビニルモノマーとしては、2-アリルオキシラン、グリシジルビニルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0055】
構造単位(a-2)の含有率は、共重合体全体100質量%中において0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、10質量%以下が好ましく、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。構造単位(a-2)の含有率が0.1質量%以上であれば粘着剤の凝集破壊が抑制され、10質量%以下であれば被着体との濡れ性が良好となり、粘着力が向上する。
【0056】
(1-1-3 構造単位(a-3))
前記共重合体(A)は、構造単位(a-1)および構造単位(a-2)以外に他の構造単位(a-3)を有していてもよい。構造単位(a-3)は、構造単位(a-1)および構造単位(a-2)を形成するモノマーの両方と共重合し得るビニルモノマーにより形成されるものであれば特に制限はなく、1種のみであってもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0057】
構造単位(a-3)を形成し得るビニルモノマーとしては、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、多環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレート、三級アミノ基を有する(メタ)アクリルレート等の(メタ)アクリルモノマー;芳香族ビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、ビニルアミド、カルボン酸ビニル、三級アミノ基を含有するビニルモノマー、四級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマー、α-オレフィン、ジエン類等の(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマー;を挙げることができる。これらの中でも、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび芳香族基を有する(メタ)アクリレートよるなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0058】
前記直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、直鎖状アルキル基の炭素数が1~20である直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、直鎖状アルキル基の炭素数が1~10である直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。前記直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
前記分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、分岐鎖状アルキル基の炭素数が3~20である分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、分岐鎖状アルキル基の炭素数が3~10である分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。前記分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
前記環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、環状アルキル基の炭素数が6~12の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。環状アルキル基としては、単環構造を有する環状アルキル基(例えば、シクロアルキル基)が挙げられ、また鎖状部分を有していてもよい。単環構造の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
前記多環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、多環式構造の炭素数が6~12の多環式構造を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。多環式構造としては、橋かけ環構造を有する環状アルキル基(例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基)が挙げられ、また鎖状部分を有していてもよい。多環式構造を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、芳香族基の炭素数が6~12の芳香族基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。芳香族基としては、アリール基等を挙げることができ、またアルキルアリール基、アラルキル基、アリールオキシアルキル基等のように鎖状部分を有していてもよい。芳香族基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
前記ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコール(重合度=1~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=1~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=1~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=1~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=1~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=1~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
前記アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
前記含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートとしては、4員環~6員環の含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2-〔(2-テトラヒドロピラニル)オキシ〕エチル(メタ)アクリレート、1,3-ジオキサン-(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
前記三級アミノ基を有する(メタ)アクリルレートとしては、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、2-ヒドロキシメチルスチレン、1-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0068】
前記ヘテロ環を含有するビニルモノマーとしては、2-ビニルチオフェン、N-メチル-2-ビニルピロール、1-ビニル-2-ピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0069】
前記ビニルアミドとしては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-ε-カプトラクタム等が挙げられる。
【0070】
前記カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0071】
前記三級アミノ基を含有するビニルモノマーとしては、N,N-ジメチルアリルアミン等が挙げられる。
【0072】
前記四級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマーとしては、N-メタクリロイルアミノエチル-N,N,N-ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0073】
前記α-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。
【0074】
前記ジエン類としては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等が挙げられる。
【0075】
構造単位(a-3)の含有率は、共重合体全体100質量%中において50質量%以上が好ましく、より好ましくは57質量%以上、さらに好ましくは64質量%以上であり、94.9質量%以下が好ましく、より好ましくは89.5質量%以下、さらに好ましくは84質量%以下である。
【0076】
前記構造単位(a-3)は、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび芳香族基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構造単位を含有することが好ましい。
【0077】
また、共重合体全体100質量%中において、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび芳香族基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構造単位の含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは57質量%以上、さらに好ましくは64質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
【0078】
(1-1-4 共重合体(A))
前記共重合体(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体の何れでもよく、好ましくはランダム共重合体である。前記共重合体(A)は、放射線重合性基が導入されていてもよい。共重合体(A)に放射線重合性基を導入する方法としては、構造単位(a-3)を構成するモノマーとしてジエン類を使用する方法、予め重合した共重合体に、放射線重合性基を有する化合物をグラフトする方法等が挙げられる。また、前記共重合体(A)は、放射線重合性基を有さないことが好ましい。放射線重合性基を有さないことで所望する粘着力、定荷重剥離性を得やすい。
【0079】
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、20万以上、好ましくは40万以上、より好ましくは50万以上、さらに好ましくは60万以上であり、200万以下、好ましくは180万以下、より好ましくは150万以下、さらに好ましくは130万以下である。前記共重合体(A)のMwが20万未満では、凝集力が不足し耐熱性の低下や、被着体表面を汚染するおそれがあり、200万を超えると粘着剤組成物の塗工作業性が悪くなるおそれがある。重量平均分子量(Mw)の測定方法は後述する。
【0080】
前記共重合体(A)の分子量分布(PDI)は2.5以下であり、好ましくは2.3以下であり、さらに好ましくは2.1以下である。PDIが小さいほど分子量分布の幅が狭い、分子量のそろった共重合体となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。即ち、PDIの下限値は1.0である。PDIが2.5以下であれば、設計した共重合体の分子量に比べて、分子量の小さいものや、分子量の大きいものの含有量が低く、粘着剤組成物に用いたときに凹凸面を有する被着体に対しても汚染(糊残り)が少ない粘着テープを得ることができる。なお、本発明において、分子量分布(PDI)とは、(重量平均分子量(Mw))/(数平均分子量(Mn))によって算出される値であり、MwおよびMnの測定方法は後述する。
【0081】
前記共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、-80℃以上が好ましく、より好ましくは-70℃以上であり、20℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下である。ガラス転移温度が-80℃以上であれば粘着剤組成物に十分な凝集力を与え、粘着剤層の耐久性が向上し、20℃以下であれば粘着剤層の支持基材に対する密着性が高くなり、剥がれ等が抑制され、耐久性が向上する。
【0082】
前記共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)とは、下記FOX式(数式(1))により算出された値である。数式(1)中、Tgは共重合体のガラス転移温度(℃)を示す。Tgiはビニルモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(℃)を示す。Wiは共重合体を形成する全ビニルモノマーにおけるビニルモノマーiの質量比率を示し、ΣWi=1である。iは1~nの自然数である。
【0083】
【0084】
代表的なホモポリマーのガラス転移温度を表1に示す。
【0085】
【0086】
(1-1-5 共重合体(A)の製造方法)
共重合体(A)は、2種以上のビニルモノマーをラジカル重合することで製造されたものが好ましく、より好ましくはリビングラジカル重合することで得られたもの(リビングラジカル重合法を用いて重合することで得られたもの)である。
【0087】
従来のラジカル重合法(フリーラジカル重合法)は、開始反応、成長反応だけでなく、停止反応、連鎖移動反応により成長末端の失活が起こり、様々な分子量、不均一な組成のポリマーの混合物となり易い傾向がある。前記リビングラジカル重合法は、従来のラジカル重合法の簡便性と汎用性を保ちながら、停止反応や、連鎖移動が起こりにくく、成長末端が失活することなく成長するため、高分子量でありながら、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーの製造が容易である。
【0088】
そのため、リビングラジカル重合法で製造された共重合体は、低分子量成分(オリゴマー)が少なく、粘着剤組成物に用いたときに凹凸面を有する被着体に対しても汚染(糊残り)が少ないという利点があるものと考えられる。また、構成単位((a-1)~(a-3))が各ポリマー分子中に均一に重合されていることから、粘着剤組成物に用いたときに定荷重剥離性を高め、さらに粘着剤層の放射線硬化で十分に粘着力を低下させることができると考えられる。
【0089】
リビングラジカル重合法においては、構造単位(a-1)を形成するビニルモノマーと、構造単位(a-2)を形成するビニルモノマーと、必要に応じて構造単位(a-3)を形成するビニルモノマーとの混合物(単に「ビニルモノマー」と称する場合もある。)を使用することにより、ランダム共重合体とすることができる。また、共重合体(A)を構成するビニルモノマーを順次反応させることでブロック共重合体とすることもできる。例えば、ジブロック共重合体である場合は、第一のブロックを先に製造し、第一のブロックに第二のブロックを構成するビニルモノマーを重合する方法;第二のブロックを先に製造し、第二のブロックに第一のブロックを構成するビニルモノマーを重合する方法;等が挙げられる。また、トリブロック共重合体である場合は、第一のブロックを先に製造し、第一のブロックに第二のブロックを構成するビニルモノマーを重合し、さらに第三のブロックを構成するビニルモノマーを重合して製造する方法等;が挙げられる。
【0090】
リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法);硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT法);有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)等の方法がある。ATRP法は、アミン系錯体を使用するため、酸性基を有するビニルモノマーの酸性基を保護せず使用することができない場合がある。RAFT法は、多種のモノマーを使用した場合、低分子量分布になりづらく、かつ硫黄臭や着色等の不具合がある場合がある。これらの方法のなかでも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御、均一な組成、あるいは着色の観点から、TERP法を用いることが好ましい。
【0091】
TERP法とは、有機テルル化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル重合性化合物(ビニルモノマー)を重合させる方法であり、例えば、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された方法である。
【0092】
TERP法の具体的な重合法としては、下記(a)~(d)が挙げられる。
(a)ビニルモノマーを、一般式(2)で表される有機テルル化合物を用いて重合する。
(b)ビニルモノマーを、一般式(2)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との混合物を用いて重合する。
(c)ビニルモノマーを、一般式(2)で表される有機テルル化合物と一般式(3)で表される有機ジテルル化合物との混合物を用いて重合する。
(d)ビニルモノマーを、一般式(2)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と一般式(3)で表される有機ジテルル化合物との混合物を用いて重合する。
【0093】
【化4】
[一般式(2)において、R
21は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を示す。R
22およびR
23は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示す。R
24は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基を示す。
一般式(3)において、R
31は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を示す。]
【0094】
R21で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0095】
R22およびR23で表される基は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、各基は、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0096】
R24で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましくはフェニル基である。
置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。前記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、-COR211で示されるカルボニル含有基(R211は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、炭素数1~8のアルコキシ基またはアリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、1個または2個置換しているのがよい。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR221R222(R221、R222は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基)を挙げることがきる。
オキシカルボニル基としては、-COOR231(R231は水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
アリル基としては、-CR241R242-CR243=CR244R245(R241、R242は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基、R243、R244、R245は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基であり、それぞれの置換基が環状構造で繋がっていてもよい)等を挙げることができる。
プロパルギル基としては、-CR251R252-C≡CR253(R251、R252は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基、R253は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはシリル基)等を挙げることができる。
【0097】
一般式(2)で表される有機テルル化合物は、具体的には(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート、エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、(2-トリメチルシロキシエチル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネートまたは(3-トリメチルシリルプロパルギル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート等、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された有機テルル化合物の全てを例示することができる。
【0098】
一般式(3)で表される有機ジテルル化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-s-ブチルジテルリド、ジ-t-ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリドまたはジピリジルジテルリド等を例示することができる。
【0099】
アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)、2,2’-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、または2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等を例示することができる。
【0100】
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと一般式(2)の有機テルル化合物とに、ビニルモノマーの種類に応じて反応促進、分子量および分子量分布の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤および/または一般式(3)の有機ジテルル化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。
【0101】
前記(a)、(b)、(c)および(d)におけるビニルモノマーの使用量は、目的とする共重合体(A)の物性により適宜調節すればよい。一般式(2)の有機テルル化合物1molに対しビニルモノマーを200mol~30000molとすることが好ましい。
【0102】
前記(b)の一般式(2)の有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、一般式(2)の有機テルル化合物1molに対してアゾ系重合開始剤を0.01mol~10molとすることが好ましい。
【0103】
前記(c)の一般式(2)の有機テルル化合物と一般式(3)の有機ジテルル化合物とを併用する場合、一般式(2)の有機テルル化合物1molに対して一般式(3)の有機ジテルル化合物を0.01mol~100molとすることが好ましい。
【0104】
前記(d)の一般式(2)の有機テルル化合物と一般式(3)の有機ジテルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、一般式(2)の有機テルル化合物1molに対して一般式(3)の有機ジテルル化合物を0.01mol~100molとすることが好ましく、一般式(2)の有機テルル化合物1molに対してアゾ系重合開始剤を0.01mol~10molとすることが好ましい。
【0105】
重合反応は、無溶媒でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される非プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒を使用し、前記混合物を撹拌して行なってもよい。使用できる非プロトン性溶媒は、例えば、アニソール、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはトリフルオロメチルベンゼン等を例示することができる。また、プロトン性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノールまたはジアセトンアルコール等を例示することができる。
【0106】
溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、ビニルモノマー1gに対して、0.01ml以上が好ましく、より好ましくは0.05ml以上、さらに好ましくは0.1ml以上であり、50ml以下が好ましく、より好ましくは10ml以下、さらに好ましくは1ml以下である。
【0107】
反応温度、反応時間は、得られる共重合体(A)の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0℃~150℃で、1分~100時間撹拌する。TERP法は、低い重合温度および短い重合時間であっても高い収率と精密な分子量分布を得ることができる。このとき、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧または減圧しても構わない。
【0108】
重合反応の終了後、得られた反応混合物から、通常の分離精製手段により、使用溶媒、残存ビニルモノマーの除去等を行い、目的とする共重合体(A)を分離することができる。
【0109】
重合反応により得られる共重合体の成長末端は、テルル化合物由来の-TeR21(式中、R21は上記と同じである)の形態であり、重合反応終了後の空気中の操作により失活していくが、テルル原子が残存する場合がある。テルル原子が末端に残存した共重合体は着色したり、熱安定性が劣ったりするため、テルル原子を除去することが好ましい。
【0110】
テルル原子を除去する方法としては、トリブチルスタンナンまたはチオール化合物等を用いるラジカル還元方法;活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブスおよび高分子吸着剤等で吸着する方法;イオン交換樹脂等で金属を吸着する方法;過酸化水素水または過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加したり、空気または酸素を系中に吹き込むことで共重合体末端のテルル原子を酸化分解させ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留テルル化合物を除去する液-液抽出法や固-液抽出法;特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限界ろ過等の溶液状態での精製方法;を用いることができ、また、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。
【0111】
なお、TERP法によって作製された共重合体は、連鎖移動剤に由来する金属化合物が不純物として残存する(0ppm超)場合がある。TERP法によって作製された共重合体中のテルルの含有量は、1000ppm以下とすることが好ましく、400ppm以下とすることがより好ましく、200ppm以下とすることが更に好ましい。
【0112】
側鎖に放射線重合性基を導入した共重合体(A)は、例えば、上述のように得られた共重合体の架橋性官能基に、前記架橋性官能基と重合可能な官能基と、放射性重合性官能基とを1分子中に有する化合物を反応させることで製造することもできる。
【0113】
(1-2 架橋剤(B))
本発明で用いる架橋剤(B)は、上述の共重合体(A)の架橋性官能基と反応し得る反応性基を1分子中に2つ以上有する化合物である。前記架橋剤(B)は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート型架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤が好ましく、架橋反応の進行の程度を制御しやすいこと、および基材に対する密着性の観点からから、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0114】
(イソシアネート系架橋剤)
イソシアネート系架橋剤は、反応性基としてイソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物である。前記イソシアネート系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等のイソシアネート付加物;キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物;ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物;ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート;等から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが好ましく、脂肪族イソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)がより好ましい。
【0116】
(エポキシ系架橋剤)
エポキシ系架橋剤は、反応性基としてエポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。前記エポキシ系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0117】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0118】
(アジリジン系架橋剤)
アジリジン系架橋剤は、反応性基としてアジリジン基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。前記アジリジン系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
アジリジン系架橋剤としては、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、トリス〔1-(2-メチル)-アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1-(2-メチル)-アジリジニル〕トリホスファトリアジン等を挙げることができる。
【0120】
前記架橋剤(B)の反応性基の含有量は、0.5mmol/g以上が好ましく、より好ましくは1.0mmol/g以上、さらに好ましくは3.0mmol/g以上であり、20mmol/g以下が好ましく、より好ましくは10mmol/g以下、さらに好ましくは8.0mmol/g以下である。架橋剤(B)の反応性基の含有量が0.5mmol/g以上であれば放射線照射前の凝集力が良好となり、20mmol/g以下であれば架橋密度が高くなり過ぎず、放射線照射前の粘着力が良好となる。
【0121】
前記粘着剤組成物における架橋剤(B)の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5.0質量部以下である。架橋剤の含有量が0.01質量部以上であれば放射線照射前の凝集力が良好となり、20質量部以下であれば架橋密度が高くなり過ぎず、放射線照射前の粘着力が良好となる。
【0122】
前記粘着剤組成物は、共重合体(A)が有する架橋性官能基に対する架橋剤(B)が有する反応性基のモル比(反応性基のモル量/架橋性官能基のモル量)は、0.001以上が好ましく、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.03以上であり、1.0以下が好ましく、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.2以下である。
【0123】
(1-3 その他添加剤)
本発明の粘着剤組成物には、前記共重合体(A)、架橋剤(B)以外に、その他添加剤を配合して使用することができる。その他添加剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。
【0124】
(放射線重合性化合物(C))
前記粘着剤組成物には、必要に応じて、放射線重合性化合物(C)を配合して使用することができる。放射線重合性化合物(C)は、一分子中に放射性重合性基を2個以上有する、前記共重合体(A)を除く化合物である。前記放射線重合性化合物(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0125】
前記放射線重合性化合物(C)は、前記共重合体(A)が有する架橋性官能基または前記架橋剤(B)が有する反応性基を有していてもよい。前記放射線重合性化合物(C)が架橋性官能基または反応性基を有することで、共重合体(A)に対して直接または架橋剤(B)を介して結合することができる。なお、前記放射線重合性化合物(C)は、前記共重合体(A)が有する架橋性官能基および前記架橋剤(B)が有する反応性基を有していないことが好ましい。
【0126】
放射線重合性化合物(C)が一分子中に有する放射性重合性基は、6個以下であることが好ましい。この個数(以下、「重合基数」ともいう。)が7個以上となると、放射線の照射により放射線重合性化合物(C)が重合した際に生じる粘着剤層の硬化が顕著となって、粘着力が過度に低下して、エキスパンド工程においてチップ脱落が発生する可能性が高まる場合がある。一方、重合基数が2個未満の場合には、放射線の照射に基づく粘着力の低下が少なくなって、ピックアップ不良が生じる可能性が高まる場合がある。したがって、重合基数は3個以上とすることが好ましい。また、共重合体(A)との相溶性の高さの観点から、放射線重合性化合物(C)の放射線重合性基としては、(メタ)アクリロリル基が好ましい。
【0127】
前記放射線重合性化合物(C)の重量平均分子量(Mw)として100~30,000であることが好ましい。その分子量が過度に小さい場合には、製造過程において揮発することが懸念され、このとき粘着剤層の組成の安定性が低下する。製造過程において揮発する可能性を低減させることと粘着剤層を可塑化する機能を高めることとをより安定的に両立させる観点から、放射線重合性化合物(C)の分子量は、重量平均分子量(Mw)として200~20,000とすることがより好ましく、300~10,000とすることがさらに好ましい。
【0128】
なお、前記放射線重合性化合物(C)が、前記共重合体(A)が有する架橋性官能基および前記架橋剤(B)が有する反応性基を有していない場合、前記放射線重合性化合物(C)の重量平均分子量(Mw)は、500以上が好ましく、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは1,500以上であり、30,000以下が好ましく、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。放射線重合性化合物(C)のMwが500以上であれば、共重合体(A)の分子鎖を拘束しやすく、粘着剤層の粘着性を十分に低下させることができる。
【0129】
前記放射線重合性化合物(C)は、分子量の異なる化合物を2種以上併用してもよい。この場合、最も分子量の小さい化合物の重量平均分子量は100以上が好ましく、より好ましくは200以上、さらに好ましくは300以上であり、1000未満が好ましい。最も分子量の小さい化合物が一分子中に有する放射性重合性基は、3個以上、6個以下が好ましい。また、最も分子量の大きい化合物の重量平均分子量は1,000以上が好ましく、より好ましくは1,500以上であり、10,000以下が好ましく、より好ましくは5,000以下、さらに好ましくは3,000以下である。最も分子量の大きい化合物が一分子中に有する放射性重合性基は、2個以上、3個以下が好ましく、2個がより好ましい。
【0130】
前記放射線重合性化合物(C)が、分子量の異なる化合物を2種以上含有する場合、最も分子量の小さい化合物(C1)と最も分子量の大きい化合物(C2)との質量比(C1/C2)は0.5以上が好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは3.0以上であり、10以下が好ましく、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは6.0以下である。
【0131】
前記放射線重合性化合物(C)としては、多官能(メタ)アクリレート化合物、および、多官能オリゴマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
【0132】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、オリゴエステル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0133】
前記多官能オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリオール化合物(ポリエステル型、ポリエーテル型等の高分子量ポリオール化合物を含む。)と、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート等)を反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等)を反応させて得られる。
【0134】
前記粘着剤組成物における放射線重合性化合物(C)の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して10質量部以上が好ましく、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは40質量部以下である。放射線重合性化合物(C)の含有量が前記範囲であれば、放射線を照射することで、粘着剤層の粘着力が十分に低下し粘着テープを容易に剥離させることができる。
【0135】
(光重合開始剤)
前記粘着剤組成物には、必要に応じて、光重合開始剤を配合して使用することができる。前記光重合開始剤としては、アセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アミン系開始剤等が挙げられる。これらのうち、アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等が挙げられる。チオキサントン系開始剤として具体的には、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドが挙げられる。アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4-ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
【0136】
光重合開始剤としては1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。光重合開始剤の含有量は、例えば、放射線重合性化合物(C)の含有量や完全硬化させるときの放射線の照射量等に応じて適宜調節すればよい。光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、放射線重合性化合物(C)の全量100質量に対して1質量部~30質量部が好ましく、5質量部~20質量部がより好ましい。前記下限値以上であれば、粘着剤層が十分に硬化して三次元網目化して、粘着剤層の粘着力が低下する。前記上限値以下であれば、放射線照射によって重合される低分子量体が原因の糊残りを回避できる。
【0137】
(粘着性付与樹脂)
本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて、共重合(A)を除く粘着性付与樹脂を配合して使用することができる。前記粘着性付与樹脂としては、ロジンエステル系樹脂等のロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂等の石油系樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ロジンエステル系樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。前記粘着剤組成物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
前記ロジンエステル系樹脂とは、アビエチン酸を主成分とするロジン樹脂、不均化ロジン樹脂および水添ロジン樹脂、アビエチン酸等の樹脂酸の二量体(重合ロジン樹脂)等を、アルコールによってエステル化させて得られた樹脂である。エステル化に用いたアルコールの水酸基の一部がエステル化に使用されずに樹脂内に含有されることで、水酸基価が調整される。アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。なお、ロジン樹脂をエステル化した樹脂がロジンエステル樹脂、不均化ロジン樹脂をエステル化した樹脂が不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂をエステル化した樹脂が水添ロジンエステル樹脂、重合ロジン樹脂をエステル化した樹脂が重合ロジンエステル樹脂である。前記テルペンフェノール樹脂とは、フェノールの存在下においてテルペンを重合させて得られた樹脂である。
【0139】
前記粘着付与樹脂は、水酸基価が170mgKOH/g~250mgKOH/gであることが好ましく、180mgKOH/g~230mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が小さすぎると、粘着付与樹脂の配合効果が得られにくく、水酸基価が大きすぎると粘着剤成分が相分離して粘着性が低下する場合がある。水酸基価は、JIS K0070(1992) 7.1中和滴定法により測定することができる。
【0140】
前記粘着付与樹脂は、軟化温度が70℃~170℃であることが好ましく、90℃~150℃である。軟化温度が低すぎると粘着付与樹脂の配合効果が得られにくく、軟化温度が高すぎると粘着剤層が硬くなり剥がれやすくなる場合がある。軟化温度は、JIS K2207環球法により測定することができる。
【0141】
前記粘着付与樹脂は、エチレン性不飽和結合を水素添加によって飽和させて用いることが好ましい。粘着付与樹脂が過剰のエチレン性不飽和結合を有する場合、粘着剤層に放射線照射時に粘着剤層中の放射線重合性基が、粘着付与樹脂のエチレン性不飽和結合と反応し、粘着剤組成物の硬化反応が十分に進行しない場合がある。また、粘着剤層に照射された放射線が粘着付与樹脂同士の付加反応に使用され、粘着剤層の硬化反応が十分に進行しない場合がある。
【0142】
前記粘着剤組成物における粘着付与樹脂の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して5質量部以上が好ましく、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。粘着付与樹脂の含有量が少ないと粘着付与樹脂の配合効果が得られにくく、粘着付与樹脂が多すぎると糊残りが多くなるおそれがある。
【0143】
(架橋促進剤)
前記粘着剤組成物には、必要に応じて、架橋促進剤を配合して使用することができる。共重合体(A)としてリビングラジカル重合することで得られた共重合体を用いる場合、粘着剤層の形成において養生の時間が短く、得られた粘着テープの剥離フィルムに対する重剥離化を抑制することが可能となる。
【0144】
架橋促進剤としては、有機スズ化合物、金属キレート化合物等を挙げることができる。前記架橋促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0145】
前記有機スズ化合物としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチオルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチレート等をあげることができる。
【0146】
前記金属キレート化合物とは、2個以上の配位原子を持つ配位子が環を形成して中心金属に結合した錯体である。前記金属キレート化合物を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、バリウム、カルシウム、銅、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄、インジウム、マグネシウム、マンガンおよびニッケルから選ばれる1種または2種以上の金属原子が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、ジルコニウム、チタンおよび亜鉛から選ばれる少なくとも一種の金属原子が好適である。なお、前記金属キレート化合物は、構成金属としてスズを含有しないことが好ましい。
【0147】
前記金属キレート化合物において、配位数は、使用される金属原子の種類や目的する効果を考慮して適正範囲に選択されることができ、特に制限されるものではない。前記金属キレート化合物において、金属原子の配位数は、3~20、好ましくは4~16とすることができる。本発明において「配位数」とは、前記金属原子と配位子の間に形成されている配位結合の数のことをいう。
【0148】
前記金属キレート化合物を構成する配位子(キレート化剤)としては、ポリアミノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、縮合リン酸塩等が挙げられる。前記金属キレート化合物は、下記式(4)で示される配位子を含有することが好ましい。
【0149】
【化5】
[式中、R
41およびR
42は、それぞれ独立に、水素、アルキル基またはアルコキシ基を示す。]
【0150】
前記R41またはR42で示されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましい。炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0151】
前記R41またはR42で示されるアルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましいく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等を挙げることができる。
【0152】
前記金属キレート化合物に含まれる配位子としては、例えば、アセチルアセトネート系配位子、アセトアセテート系配位子、アセトネート系配位子、ラクテート系配位子、カルボン酸系配位子、シトレート系配位子、グリコール系配位子等を挙げることができる。具体例としては、例えば、アセチルアセトネート、アルキルアセトアセテート、アルキレンジアミンテトラアセテート、ジイソアルコキシビスアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシビスアルキルアセトアセテート、ジ-n-アルコキシ-ビスアルキル-アセトアセテート、ヒドロキシアルキレンジアミントリアセテート等が挙げられる。
【0153】
前記金属キレート化合物の具体例としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等のジルコニウムキレート化合物;チタンエチルアセトアセテート、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のチタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート等のアルミニウムキレート化合物;亜鉛(II)ビスアセチルアセトネート・一水和物等の亜鉛キレート化合物;ビス(アセチルアセトネート)ジアクアバリウム(II)等のバリウムキレート化合物、ビス(アセチルアセトネート)ジアクアカルシウム(II)等のカルシウムキレート化合物;銅(II)ビスアセチルアセトネート等の銅キレート化合物;ビス(アセチルアセトネート)ジアクアストロンチウム(II)等のストロンチウムキレート化合物;クロムトリス(アセチルアセトネート)等のクロムキレート化合物;コバルト(III)トリス(アセチルアセトネート)、ビス(アセチルアセトネート)ジアクアコバルト(II)等のコバルトキレート化合物;鉄(III)トリス(アセチルアセトネート)、ビス(アセチルアセトネート)ジアクア鉄(II)等の鉄キレート化合物;インジウムトリス(アセチルアセトネート)等のインジウムキレート化合物;ビス(アセチルアセトネート)ジアクアマグネシウム(II)等のマグネシウムキレート化合物;ビス(アセチルアセトネート)ジアクアマンガン(II)等のマンガンキレート化合物;ニッケル(II)ビスアセチルアセトネート・二水和物等のニッケルキレート化合物等が挙げられる。これらの中でも、ジルコニウムキレート化合物およびチタンキレート化合物が好ましい。
【0154】
本発明の粘着剤組成物における架橋促進剤の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.02質量部以上、さらに好ましくは0.04質量部以上であり、0.5質量部以下が好ましく、より好ましくは0.4質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。架橋促進剤の含有量を前記範囲にすることで、優れた架橋促進効果と重剥離化抑制効果を得ることが可能となる。
【0155】
ここで、粘着剤組成物にリビングラジカル重合で用いた連鎖移動剤由来の金属化合物を含有していると、前記金属化合物が被着体(剥離フィルム)と作用し重剥離化が生じやすいと考えられている。本発明の粘着剤組成物では、前記架橋促進剤を含有することで重剥離化を抑制することが可能となる。前記連鎖移動剤由来の金属化合物は、リビングラジカル重合法により異なり、例えばTERP法の場合はテルル化合物、ATRP法の場合は銅化合物、ルテニウム化合物、ニッケル化合物、鉄化合物等が挙げられる。
【0156】
前記共重合体中(A)に連鎖移動剤由来の金属化合物が含まれている場合、粘着剤組成物における架橋促進剤の含有量は、共重合体中(A)に含まれる連鎖移動剤由来の金属化合物の金属換算1質量部に対して2.0質量部以上が好ましく、より好ましくは2.2質量部以上、さらに好ましくは3.0質量部以上、特に好ましくは4.0質量部以上であり、40質量部以下が好ましく、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。連鎖移動剤由来の金属化合物と架橋促進剤との質量比を調整することで、得られた粘着テープの剥離フィルムに対する重剥離化を抑制できる。
【0157】
(架橋遅延剤)
前記粘着剤組成物には、必要に応じて、架橋遅延剤を配合して使用することができる。架橋遅延剤とは、例えばイソシアネート系架橋剤を含有する粘着剤組成物において、架橋剤が有するイソシアネート基をブロックすることによって、粘着剤組成物の過剰な粘度上昇を抑制することができる化合物である。架橋遅延剤の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、アセチルアセトン、ヘキサン-2,4-ジオン、ヘプタン-2,4-ジオン、オクタン-2,4-ジオン等のβ-ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステル類;ベンゾイルアセトン等を使用することができる。前記架橋遅延剤としては、キレート剤として作用し得るものが好ましく、β-ジケトン類、β-ケトエステル類が好ましい。前記架橋遅延剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0158】
粘着剤組成物に配合することができる架橋遅延剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは2.0質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5.0質量部以下である。前記架橋遅延剤の含有量を前記範囲に調節することによって、前記架橋剤(B)を粘着剤組成物に配合した後に、粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物の貯蔵安定性(ポットライフ)を延長させることができる。
【0159】
また、前記架橋遅延剤として、キレート剤として作用する化合物を使用する場合、共重合体(A)に含まれる連鎖移動剤由来の金属化合物の金属成分と金属キレート化合物中の金属成分との合計に対する、金属キレート中のキレート剤(配位子)成分と架橋遅延剤との合計の質量比(キレート成分/金属成分)は、20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは50以上であり、1000以下が好ましく、より好ましくは500、さらに好ましくは200以下である。
【0160】
本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて、光増感剤、放射線により気体を発生する気体発生剤、染料、顔料、色素、蛍光増白剤、湿潤剤、表面張力調製剤、増粘剤、防黴剤、防腐剤、酸素吸収剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、水溶性消光剤、酸化防止剤、香料、金属不活性剤、造核剤、帯電防止剤、アルキル化剤、難燃剤、滑剤、加工助剤等を配合して使用することもでき、これらは粘着剤の用途や使用目的に応じて、適宜選択して配合して使用される。
【0161】
(1-3.粘着剤組成物の製造方法)
前記粘着剤組成物は、前記共重合体(A)、架橋剤(B)、および必要に応じて用いられるその他添加剤を混合することにより製造することができる。前記粘着剤組成物は、前記共重合体(A)の製造に由来した溶媒を含有していたり、さらに適当な溶媒が加えられ、粘着剤層を形成するのに適した粘度となるように希釈された溶液であってもよい。
【0162】
前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0163】
溶媒の使用量は、粘着剤組成物が塗工に適した粘度となるように適宜調節すればよく、特に制限はないが、塗工性の観点から、粘着剤組成物の固形分濃度が10質量%~95質
量%となるように用いることが好ましい。
【0164】
<2.粘着テープ>
本発明の粘着テープは、基材フィルムと、前記放射線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層とを有する。前記粘着剤層は基材フィルムの少なくとも片面または少なくとも一部に形成されている。前記粘着剤層は、単層でも良いし、多層構造としてもよい。
【0165】
本発明の粘着テープは、放射線硬化前は定荷重剥離性と粘着集力が高く、放射線硬化後は被着体から容易に剥離することができ、かつ、糊残りが少ない。そのため、凹凸を有する被着体に、特に被接着面の表面凹凸の最大高さ(輪郭曲線でもっとも高い山の高さと、最も深い谷の深さの和)が10μm以上ある被着体対して好適に用いることができる。
【0166】
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅の割には小さい平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さおよび幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JIS K6900)。例えば、厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称することがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かではなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとし、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むのとする。
【0167】
前記基材フィルムは、放射線を透過し得るものであれば特に限定されず、プラスチック、エラストマー、ゴム等を用いることができる。基材フィルム側から放射線照射した場合に粘着剤層が硬化して粘着力が低減するように、放射線透過性を考慮に入れて材料選択することが必要である。放射線のうち紫外線を選択し、その照射によって放射線硬化型粘着剤組成物を硬化させる場合には、この基材フィルムとして紫外線透過性がよいものを選択する必要がある。
【0168】
前記基材フィルムの厚さは特に制限はなく、適宜選定されるが、放射線透過性と強伸度特性の観点から、通常30μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは80μm以上、特に好ましくは90μm以上であり、250μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは120μm以下である。
【0169】
前記基材フィルムとして選択し得る材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレンビニルアルコール、アイオマー樹脂等のプラスチック材料から構成されたフィルムが挙げられる。前記プラスチック材料は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。前記プラスチック材料には、帯電防止剤、熱安定剤等が含まれていてもよく、また相溶性のある2種以上のプラスチック材料同士の混合物、すなわちポリマーアロイ等も使用できる。
【0170】
前記基材フィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、酸化法、凹凸化法等により表面処理を施すことができる。前記酸化法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。前記凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果および操作性等の面から、好ましく用いられる。また、前記基材フィルムとして片面または両面にプライマー処理を施したものも用いることができる。
【0171】
前記粘着剤層の厚さは、粘着テープの用途に応じて適宜調節すればよい。例えば、バックグラインドテープ、ダイシングテープ等の半導体加工用テープとして用いる場合は、基材フィルムの拡張性や凹凸追従性を阻害しない範囲であれば特に制限はないが、通常1μm以上が好ましく、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、100μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは35μm以下、特に好ましくは20μm以下である。粘着剤層が過度に薄い場合には粘着性のばらつきが発生しやすく、過度に厚い場合には放射線照射による粘着力の制御することが困難になったり、ピックアップ時に粘着剤層内部で凝集破壊が生じる可能性が高くなる恐れがある。粘着剤層が多層構造である場合は、全層の合計厚さを上記範囲内とすることが好ましい。
【0172】
前記粘着剤層が有する放射線重合性基の含有量は、0.1mmol/g以上が好ましく、より好ましくは0.2mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上であり、10mmol/g以下が好ましく、より好ましくは5mmol/g以下、さらに好ましくは2mmol/g以下である。前記放射線重合性基の含有量が前記範囲内であれば、放射線を照射することで、粘着剤層の粘着力が十分に低下し粘着テープを容易に剥離させることができる。粘着剤層が複層の場合、粘着剤組成物中に有する放射線重合性基の含有量は、全ての粘着剤層を1層と見做したときに前記範囲を満たすことが好ましく、それぞれの層が前記範囲を満たすことがより好ましい。
【0173】
前記粘着剤層のゲル分率は、耐久性と粘着力の観点から20質量%以上が好ましく、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは65質量%以上であり、100質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。ゲル分率が低すぎると、凝集力が不足することに起因する耐久性不足や、剥離時の糊残りを生じやすい。ゲル分率は、粘着剤組成物における架橋剤の配合量、架橋処理温度、架橋処理時間により制御できる。
【0174】
前記粘着剤層の形成方法としては特に限定されるものではなく、例えば、以下の(1)および(2)の方法が挙げられる。
(1)種々の塗工装置を用いて、基材フィルムの片面または両面に粘着剤組成物を塗布し、溶媒を乾燥除去し、必要に応じて養生を行う方法。
(2)表面に剥離処理が施された剥離フィルムの剥離面に、種々の塗工装置を用いて、粘着剤組成物を塗布し、溶媒を乾燥除去し、必要に応じて養生後、基材フィルムの片面または両面に転写する方法。
【0175】
前記塗工装置としては、リバースロールコーター、グラビアコーター、フォワードロールコーター、ナイフコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター、スロットダイコーター、カーテンコーター、ディップコーター等が挙げられる。
【0176】
前記溶媒を乾燥除去する際の乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、より好ましくは60℃~180℃である。乾燥時間は、好ましくは5秒~20分であり、より好ましくは10秒~10分である。乾燥の手段としては、熱風、近赤外線、赤外線、高周波等が挙げられる。また、前記養生の条件としては、例えば23℃で3日間~7日間程度が挙げられる。
【0177】
前記粘着テープは、使用するまでは粘着剤層の表面に剥離フィルム(セパレータ)を有していてもよい。別途の剥離フィルムを使用せず、基材フィルムの粘着剤層積層面と反対面に剥離層が設けられ、当該剥離層の表面には前記粘着剤層の露出面側が接するようにロール状に巻き回され、または段積み状に積層されてなるものであってもよい。剥離フィルムは粘着剤層の保護材として用いられ、本発明の粘着テープを被着体に貼付する際に剥がされる。
【0178】
前記剥離フィルムとしては、例えば、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙および各種プラスチックフィルムにシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。前記剥離フィルムに用いるプラスチックフィルムとしては、基材フィルムとして挙げたものを適宜使用することができる。剥離フィルムの厚さとしては特に制限はないが、通常、10μm~150μmである。
【0179】
本発明の粘着テープは、例えば、バックグラインドテープ、ダイシングテープ等の半導体加工用テープとして好適に用いることができ、好ましくはダイシングテープとして用いることができる。前記半導体としては、シリコン、シリコンカーバイド、ヒ化ガリウム(ガリウムヒ素)、リン化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム等を挙げることができる。
【0180】
<3.半導体装置の製造方法>
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体ウエハまたは基板とリングフレームとに本発明の粘着テープを貼りつける貼付工程と、前記半導体ウエハまたは基板をダイシングして半導体チップまたは半導体部品にするダイシング工程と、前記粘着テープに放射線を照射する照射工程と、前記半導体チップまたは半導体部品同士の間隔を広げるため前記粘着テープを引き延ばすエキスパンド工程と、前記粘着テープから半導体チップまたは半導体部品をピックアップするピックアップ工程とを含む。
【0181】
前記貼付工程では、粘着テープを、半導体ウエハまたは基板とリングフレームに貼り付ける。半導体ウエハとしては、シリコン、シリコンカーバイド、ヒ化ガリウム(ガリウムヒ素)、リン化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム等を挙げることができ、半導体ウエハには貫通電極が形成されていてもよい。基板としては、樹脂で半導体チップを封止したパッケージ基板、LEDパッケージ基板、セラミック基板等を挙げることができる。
【0182】
前記ダイシング工程では、半導体ウエハまたは基板をダイシングして半導体チップまたは半導体部品にする。ダイシングは、ブレードダイシング、レーザーダイシング、プラズマダイシング等の公知の方法を用いることができる。
【0183】
前記照射工程では、前記粘着テープに放射線を照射する。放射線照射により粘着剤層は三次元網目化して硬化し、粘着剤層の粘着力が低下する。
【0184】
放射線は、基材フィルム側から照射することが好ましい。放射線としては、紫外線または電子線が好ましく。比較的照射設備の導入の容易な紫外線がより好ましい。
【0185】
放射線として紫外線を用いる場合には、取り扱いのしやすさから波長200nm~380nm程度の紫外線を含む近紫外線を用いればよい。紫外線量としては、放射性重合性基の種類や粘着剤層の厚さに応じて適宜選択すればよく、通常、50mmJ/cm2~500mmJ/cm2程度であり、100mmJ/cm2~450mmJ/cm2が好ましく、20mmJ/cm2~400mmJ/cm2がより好ましい。また、紫外線照度は、通常、50mW/cm2~500mW/cm2程度であり、100mW/cm2~450mW/cm2が好ましく、200mW/cm2~400mW/cm2がより好ましい。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード等が用いられる。
【0186】
放射線として電子線を用いる場合には、その加速電圧については、放射性重合性基の種類や粘着剤層の厚さに応じて適宜選択すればよく、通常加速電圧10kV~1000kV程度であることが好ましい。また照射線量は放射性重合性基が適切に反応し、粘着剤層が硬化する範囲に設定すればよく、通常、10krad~1000kradの範囲で選定される。電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
【0187】
前記エキスパンド・ピックアップ工程では、半導体チップまたは半導体部品同士の間隔を広げるために粘着テープを引き伸ばし、半導体チップまたは半導体部品をニードルピン等で突き上げる。その後、半導体チップまたは半導体部品を真空コレットまたはエアピンセット等で吸着し、粘着テープの粘着剤層から剥離してピックアップする。この際、本発明の粘着テープは放射線の照射により十分な接着力の低下が得られているため、半導体チップまたは半導体部品と粘着剤層との間の剥離が容易となり、良好なピックアップ性が得られる。
【実施例】
【0188】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、共重合体の重合率、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(PDI)並びに粘着剤層のゲル分率、粘着テープの粘着力、定荷重剥離およびのり残りは、下記の方法に従って評価した。
【0189】
なお、略語の意味は下記のとおりである。
BA:n-ブチルアクリレート
DMAAm:N,N-ジメチルアクリルアミド
2-HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
BTEE:エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート
V-70:2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)
【0190】
(重合率)
核磁気共鳴(NMR)測定装置(ブルカー・バイオスピン社製、型式:AVANCE500(周波数500MHz))を用いて、1H-NMRを測定(溶媒:CDCl3、内部標準:トリメチルシラン(TMS))した。得られたNMRスペクトルについて、モノマー由来のビニル基とポリマー由来のエステル側鎖のピークの積分比を求め、モノマーの重合率を算出した。
【0191】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(PDI))
高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、型式HLC-8320GPC)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。カラムはTSKgel Super Multipore HZ-H(東ソー社製)を2本、移動相にテトラヒドロフラン溶液、検出器に示差屈折計を使用した。測定条件は、カラム温度を40℃、試料濃度を10mg/mL、試料注入量を10μm、流速を0.2mL/minとした。標準物質としてポリスチレン(分子量2,890,000、1,090,000、775,000、427,000、190,000、96,400、37,900、10,200、2,630、440)を使用して検量線(校正曲線)を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から分子量分布(PDI=Mw/Mn)を算出した。
【0192】
<共重合体の製造>
(合成例1)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管、温度センサーを備えたフラスコに、BAを280g(2185mmol)、DMAAmを100g(1009mmol)、2-HEAを20g(172mmol)、V-70を43.54mg(0.14mmol)、酢酸エチルを300g仕込み、重合系内を窒素ガスで置換後、BTEEを107.7μl(0.47mmol)加え、33℃で24時間撹拌して重合した。1H-NMR測定結果より重合率は92.5%であった。
【0193】
反応終了後、反応溶液に濃度調整用の酢酸エチルを加え、固形分22.0質量%、粘度6,760mPa・sの共重合体Aの溶液を得た。得られた共重合体Aは、Mwが736,000、PDIが2.12、ヒドロキシ基量が0.43mmol/g、Tgが-28℃であった。また、共重合体Aの溶液を乾燥後、灰化処理し、誘導結合プラズマ質量分析(ICP/MS)により、共重合体Aの溶液の固形分に対するテルル化合物の量が金属換算で150ppmであることを確認した。
【0194】
(合成例2)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管、温度センサーを備えたフラスコに、BAを300g(2341mmol)、CHAを80g(519mmol)、2-HEAを20g(172mmol)、V-70を37.96mg(0.12mmol)、酢酸エチルを300g仕込み、重合系内を窒素ガスで置換後、BTEEを107.7μl(0.47mmol)加え、60℃で24時間撹拌して重合した。1H-NMR測定結果より重合率は90.3%であった。
【0195】
反応終了後、反応溶液に濃度調整用の酢酸エチルを加え、固形分15.8質量%、粘度2,550mPa・sの共重合体Bの溶液を得た。得られた共重合体Bは、Mwが930,000、PDIが2.01、ヒドロキシ基量が0.43mmol/g、Tgが-41℃であった。また、共重合体Bの溶液を乾燥後、灰化処理し、誘導結合プラズマ質量分析(ICP/MS)により、共重合体Bの溶液の固形分に対するテルル化合物の量が金属換算で98ppmであることを確認した。
【0196】
(合成例3)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管、温度センサーを備えたフラスコに、BAを280g(2185mmol)、DMAAmを100g(1009mmol)、2-HEAを20g(172mmol)、AIBNを720mg(4.39mmol)、酢酸エチルを300g仕込み、重合系内を窒素ガスで置換後、80℃で12時間撹拌して重合した。1H-NMR測定結果より重合率は90.1%であった。
【0197】
反応終了後、反応溶液に濃度調整用の酢酸エチルを加え、固形分20.3質量%、粘度2,750mPa・sの共重合体Cの溶液を得た。得られた共重合体Cは、Mwが771,000、PDIが7.24であった。
【0198】
<粘着剤組成物の製造>
(粘着剤組成物No.1)
合成例1で得た共重合体Aの溶液455質量部(共重合体成分100質量部、酢酸エチル355質量部)に対して、架橋剤としてイソシアネート化合物を0.51質量部、架橋促進剤として有機スズ化合物を0.20質量部、架橋遅延剤としてアセチルアセトンを2.56質量部、放射線重合性化合物としてウレタンアクリレートNo.1を32質量部、ウレタンアクリレートNo.2を8質量部、光重合開始剤としてTPOを4質量部、酢酸エチルを適量加え、撹拌して粘着剤組成物No.1を得た。なお、共重合体Aが有するOH基とイソシアネート化合物が有するNCO基とのモル比(NCO/OH)は0.07である。有機スズ化合物のイソシアネート化合物に対するNCO当量は0.094である。アセチルアセトンのイソシアネート化合物に対するNCO当量は9.1である。
【0199】
(粘着剤組成物No.2~8)
配合を表2に記載するように変更した以外は、粘着剤組成物No.1と同様にして、粘着剤組成物No.2~8を作製した。
【0200】
【表2】
イソシアネート化合物:旭化成社製、デュラネート(登録商標)TPA-100(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、NCO含有率23.1質量%)
有機スズ化合物:日東化成社製、ネオスタン(登録商標)U810
ウレタンアクリレートNo.1:共栄社化学社製、UA-306I(ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、6官能、分子量約800)
ウレタンアクリレートNo.2:新中村化学工業社製、UA-160TM(ポリエチレンオキサイドにイソシアネート化合物を付加し、ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルを反応させたウレタンアクリレートオリゴマー、2官能、分子量約1600)
テルペンフェノール樹脂:ヤスハラケミカル社製、YSポリスターK125
TPO:BASF社製、Irgacure(登録商標)TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)
【0201】
<粘着テープの製造>
(粘着テープNo.1)
調整した粘着剤組成物(塗工液)を厚さ25μmのセパレーター(離型処理PETフィルム)に乾燥後の塗工層の厚みが20μmとなるようベーカー式アプリケーターで塗布し、オーブンにて60℃で2分、続いて120℃で3分間乾燥させた。その後、厚さ100μmのポリ塩化ビニルフィルムを空気が入らないように注意しながらハンドローラーを用いて粘着剤塗工面に貼り合せた。これを40℃の雰囲気下で72時間エージングし、粘着テープを得た。
【0202】
(粘着テープNo.2~8)
粘着剤組成物No.1を、粘着剤組成物No.2~8に変更したこと以外は、粘着テープNo.1と同様にして、粘着テープNo.2~8を作製した。
【0203】
<粘着テープの評価>
(ゲル分率)
幅50mm、長さ100mm切り出した金網(200メッシュ)の質量W1を測定した。粘着テープから粘着剤層0.1gを採取し、粘着剤が脱落しないように金網で包んで試験片を作製し、この試験片の質量W2を測定した。試験片をガラス瓶に入れ、酢酸エチルを40g注いで軽く振った後、60℃のオーブンで24時間静置した。静置後、試験片をガラス瓶から取り出して室温で12時間放置、さらに80℃の真空オーブンで4時間乾燥させた。乾燥後の試験片を室温まで冷却し質量W3を測定し、以下の式よりゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=((W3-W1)/(W2-W1))×100
【0204】
(粘着力(UV照射前))
粘着テープの粘着力(UV照射前)は、JIS Z0237(2009)の粘着力の測定方法(方法1:テープ及びシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠して測定した。具体的には、表面を洗浄した被着体(ステンレス鋼板(SUS304BA)Ra50nm(JIS B 0601(1994))または銅板(C1220P リン脱酸銅(JIS H3100(2012))Ra95nm(JIS B 0601(1994)))に、圧着装置(ローラの質量2kg)を用いて圧着させて、被着体に対して180°に引きはがした際の粘着力を測定した。引張試験器(今田製作所製、SV-52NA型)を使用し、試験温度は25℃、引きはがし速度は300mm/分とした。粘着テープの幅は25mm、長さは300mmとした。測定開始後、最初の25mmの長さの測定値は無視し、その後試験板から引きはがされた50mmの長さの粘着力測定値を平均した。
【0205】
(粘着力(UV照射後))
粘着テープの粘着力(UV照射後)は、前記粘着力(UV照射前)の試験において、被着体に圧着した粘着テープにUVを照射した後、被着体に対して180°に引きはがした際の粘着力を測定した。
UV照射は、コンベア式UV照射機(ヘレウス社製、LC-6システム、Hバルブ)を用いて、粘着テープを照度250mW/cm2、積算光量が700mJ/cm2以上となるように複数回行った。UV照射後、速やかに粘着力(UV照射後)を測定した。また、測定結果より、UV照射による粘着性の低下率を算出した。
低下率(%)=100×(UV照射前粘着力-UV照射後粘着力)/UV照射前粘着力
【0206】
(定荷重剥離試験)
粘着テープを、幅20mm、長さ80mmに切り出し、これを測定試料とした。粘着テープの長手方向の一方端から中心へ10mmの位置まで、支持材(PETフィルム(幅20mm、長さ50mm、厚さ25μm))を貼り付けた。フロート板ガラス(JIS R3202(2011))の被接着面をアセトン、酢酸エチル、メタノール、n-ヘプタン、メタノール、酢酸エチル、アセトンの順で、各溶剤をキムワイプ等に含浸させ払拭洗浄し、最後に乾いたキムワイプ等で乾燥するまで払拭した。洗浄後の板ガラスは23℃、50%RH環境下に30分間以上放置後使用した。支持材を貼り付けた粘着テープを、払拭洗浄した板ガラスに重さ2kgのハンドローラーを1往復させて圧着し、1時間放置した。
【0207】
その後、板ガラスを、粘着テープが張り付けられている面を下側にしてクランプを用いて水平に設置した。支持材をクリップでつかみ、クリップの先に50gの重りをつけ、試験を開始した。なお、粘着テープには、板ガラスに対して垂直方向(90°剥離方向)に荷重がかけられている。試験開始から1時間後、3時間後および6時間後に、板ガラス板から剥離した粘着テープの距離を測定した。また、剥離した粘着テープにおける粘着剤の糸曳性を観察し、糸曳きがないものを「○」、糸曳きがあるものを「×」と評価した。試験片の調整、養生、試験は全て23℃、50%RH環境下で実施した。糸曳き性がないものは、のり残りが少ないと推測される。
【0208】
(粘着力測定後の被着体のり残り)
ホットプレート上で電解銅箔(幅50mm、長さ50mm)を60℃に加熱し、粘着テープ(幅30mm、長さ30mm)をホットプレート上で圧着した。圧着は、重さ2kgのハンドローラー1往復することで行った。なお、粘着テープおよびハンドローラーの貼り合せ作業直前の温度は25℃である。圧着後23℃、50%RH環境下で24時間放置した。
次に、コンベア式UV照射機(ヘレウス社製:LC-6システム、Hバルブ)を用いて、粘着テープに照度250mW/cm2、積算光量が700mJ/cm2以上になる様に複数回UVを照射した。UV照射後、粘着テープを剥離し、糊残りの有無を目視で確認した。のり残りがないものを「○」、のり残りがあるものを「×」と評価した。
【0209】
【0210】
表3に示すように、粘着テープNo.1~3は、粘着剤層が、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、架橋剤(B)と含有し、固形分の放射線重合性基の含有量が0.1mmol/g~10mmol/gである粘着剤組成物から形成されている。これらの粘着テープNo.1~3は、UV照射前においては、定荷重剥離試験の剥離量が少なく、かつ、剥離後ののり残りも少ない。また、UV照射前の粘着力が高いが、UV照射後には粘着力が十分に低下している。
【0211】
粘着テープNo.4~6は、粘着剤組成物が、構造単位(a-1)を有さない共重合体を含有する。これらの粘着テープNo.4および5は、UV照射前における粘着力が低く、定荷重剥離試験では1時間経過前に全体が剥離した。なお、粘着テープNo.6は、粘着剤組成物が粘着性付与樹脂を含有するため、UV照射前における粘着力が高いが、UV照射後の粘着力が十分に低下していない。
【0212】
粘着テープNo.7および8は、粘着剤組成物が、分子量分布が2.5超である共重合体を含有する。これらの粘着テープNo.7および8は、被着体へののり残りが発生した。