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特許7137317屋内雰囲気中の二酸化炭素濃度を調整するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】屋内雰囲気中の二酸化炭素濃度を調整するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/44 20060101AFI20220907BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20220907BHJP
   B01D 57/02 20060101ALI20220907BHJP
   C25B 1/01 20210101ALN20220907BHJP
   C25B 9/00 20210101ALN20220907BHJP
   C25B 13/04 20210101ALN20220907BHJP
【FI】
B01D61/44
B01J19/08 A
B01D57/02
C25B1/01 Z
C25B9/00 Z
C25B13/04 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018027973
(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公開番号】P2018144024
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】62/468,332
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/468,350
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/880,780
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴィドゥヤラジャ・デサイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ルイス・ベイカー・リヴェスト
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・イフタイム
(72)【発明者】
【氏名】ヴェドハスリ・ヴェドハラシナム
(72)【発明者】
【氏名】マハティ・チンタパリ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンフア・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・エマーソン・ドリス
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0233155(US,A1)
【文献】国際公開第2012/164913(WO,A1)
【文献】特開2015-160159(JP,A)
【文献】特開2015-160160(JP,A)
【文献】特開2015-025057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0225401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00-71/82
B01J 19/08
C25B 1/00- 9/77
13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスであって、
二酸化炭素を備える供給ガスを受け取るようにされた入口を含むカソードチャンバと、
前記ガス中の二酸化炭素を還元してイオン担体種を形成するようにされた前記カソードチャンバ内の還元触媒層と、
二酸化炭素を備えるガスを排出するようにされた出口を有するアノードチャンバと、
前記アノードチャンバを前記カソードチャンバから隔て、前記カソードチャンバと前記アノードチャンバとの間で前記イオン担体種を輸送するようにされた固体電解質であって、重合されたイオン液体を含む、前記固体電解質膜と、
前記イオン担体種を酸化して二酸化炭素を形成するようにされた前記アノードチャンバ内の酸化触媒層と、
前記還元触媒層および前記酸化触媒層の少なくとも一方に電気的に接続され、還元および酸化のためのエネルギーを供給するようにされたエネルギー源と
を備える電気化学デバイス。
【請求項2】
前記還元触媒層中の触媒が、前記イオン担体種がペルオキシジカーボネートアニオン、ホルメートアニオン、シュウ酸アニオン、およびそれらの混合物で構成される群から形成されることとなるよう選択される、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記膜が、窒素含有カチオン、リン含有カチオン、硫黄含有カチオン、およびそれらの組み合わせから選択される重合可能な有機カチオンを含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記膜が、次の一般式で表される重合可能な窒素含有有機カチオンを含み、
【化1】
ここでR1、R2、R3およびR4は、H、C1-C12アルキル基、C1-C12アルケニル基、C1-C12アルコキシ基、C1-C12ヒドロキシアルキル基、C1-C12ヒドロキシアルケニル基、およびそれらの組み合わせから独立して選択され、ここでR1、R2、R3およびR4の少なくとも1つはHではなく、
XはCまたはNであって、
nは0または1である、
請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記重合されたイオン液体が、シュウ酸塩、水酸化物、スルホン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩、ホウ酸塩、イミドアニオン、アミドアニオン、ハロゲン化物、硫酸塩およびそれらの混合物で構成される群から選択されるアニオンを含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
内部空間の二酸化炭素濃度を改質する方法であって、
請求項1に記載の電気化学デバイスを提供するステップと、
前記カソードチャンバ内の二酸化炭素を前記イオン担体種に電気化学的に還元するステップと、
前記膜を介して前記イオン担体種をイオン輸送するステップと、
前記アノードチャンバ内の前記イオン担体種を二酸化炭素に電気化学的に酸化するステップと、
前記カソードチャンバおよび前記アノードチャンバの一方から前記内部空間にガスを供給して、前記内部空間の二酸化炭素濃度を改質するステップと
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は、密閉空間の雰囲気における二酸化炭素濃度の調節に関する。屋内空気から二酸化炭素を減少させるための装置および方法に関連して、特定の用途が見出される。
【背景技術】
【0002】
屋内空気中の炭素濃度を調整するために様々な方法が用いられてきた。商業ビルでは、屋内空気をASHRAE推奨水準(ASHRAE基準、Ventilation for Indoor Air Quality、2003年)に維持するために、屋外空気(一般的に300~400ppm以下の二酸化炭素)を使用して頻繁に換気が行われる。換気コストは非常に高くなる可能性がある。例えば、BTO Market Calculatorでは、商業ビルの占有者によって116MT COが吐出され、既存のHVACシステムによる外気の再循環および加熱または冷却で2.25クワッド(2.37×1012MJ)のエネルギー(1次燃料ベース)が消費されると推定されている(https://trynthink.github.io/scout/calculator.htmlを参照)。これは、大部分がCO除去(約2.2MJ mol-1 CO)を構築するための高いエネルギーコストに相当する。インテリジェントなCO除去システムがない場合、屋内空気を許容可能なCOレベルに希釈するための過度の換気でかなりの量のエネルギーが浪費される(Mysenら「Occupancy density and benefits of demand-controlled ventilation in Norwegian primary schools」Energy&Buildings,37,1234-1240(2005))。現在の研究では、占有者の生産性向上のためのより厳しい大気質基準(650ppm未満)のメリットが指摘されているため、エネルギー費用のかかる換気の使用が増加することが予想される(Allenら「Associations of Cognitive Function Scores with Carbon Dioxide, Ventilation, and Volatile Organic Compound Exposures in Office Workers:A Controlled Exposure Study of Green and Conventional Office Environments」Environ Health Perspectives、124(6)805-812(2016)、Satishら「Is CO an Indoor Pollutant?Direct Effects of Low-to-Moderate CO Concentrations on Human Decision-Making Performance」 Environ.Health Perspectives,120(12):1671-1677(2012))。
【0003】
屋内空気からCOを取り除くために、吸収剤を含む再生CO除去システムが使用されてきた。Lackner「Capture of carbon dioxide from ambient air」European Phys.J.Special Topics 176(1):93-106(2009)、Hoffman「NETL Report:Study of regenerable sorbents for CO capture」J.Energy Environ.Res.,1.1:90-100(2001)、Fuchs.Wによる米国特許第3,511,595、Kimら「A novel ventilation strategy with CO capture device and energy saving in buildings」Energy and Buildings,87,134-141(2015)を参照。CO除去量は吸収剤の容積に依存するため、システムを重くする傾向がある。さらなる使用のために吸収剤を再生するため、吸収剤を低CO分圧で150℃以上の高温に加熱し、吸収されたCOおよび水蒸気を放出する。これは、屋内空気の連続処理能力を制限し、また大量の熱を発生させる。商業化された吸着剤ベースのシステムでは冷却負荷の29%の削減が実証されているが、具体的なエネルギー消費量は、1MJ mol-1 CO除去以上であると推定されている(Zeman「Energy and Material Balance of CO Capture from Ambient Air」、Environ.Sci.Technol.、41(21)、7558-7563(2007))。
【0004】
生きている植物も屋内でのCO除去をいくらか行うことができるが、植物の占有者に対する比率は高くなければならず、屋内で健康な植物を維持することは高価になる可能性がある(Darlingtonら「The biofiltration of indoor air:implications for air quality」Indoor Air,10(1):39-46(2000))。
【0005】
屋内のCOを除去するための電気化学的方法が提案されている。電気化学的CO除去に示唆される1つのアプローチは、キノン担体を含む膜電解質を使用する(Gellett「Solid State Air Purification System」NASA NIAC Phase I Final Report,project no.NNX12AR14G(2013))。しかしながら、この担体は酸素安定性が比較的低く、低いCO除去流束しか示されていない。電気化学的CO濃度のための1,4-ベンゾキノン担体を用いた電気化学的CO輸送も提案されている(Scovazzoら「Electrochemical separation and concentration of<1% carbon dioxide from nitrogen」J.Electrochem.Soc.,150.5:D91-D98(2003))。しかしながら、このプロセスは高い還元電位(-3V対Ag|AgCl)を必要とし、連続的に動作することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋内空気から二酸化炭素を連続的に除去するのに適したエネルギー効率の良いシステムの必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な実施形態の一態様によれば、電気化学デバイスは、二酸化炭素を含有する供給ガスを受け取る入口を含むカソードチャンバを含む。カソードチャンバ内の還元触媒層は、ガス中の二酸化炭素を還元してイオン担体種を形成する。アノードチャンバは、二酸化炭素を含有するガスを排出する出口を含む。電解質膜は、アノードチャンバをカソードチャンバから隔てる。膜は、イオン液体を含む。膜に電位差が適用されたときに、膜は、カソードチャンバとアノードチャンバとの間でイオン担体種を輸送する。アノードチャンバ内の酸化触媒層は、イオン担体種を酸化して二酸化炭素を形成する。エネルギー源は、還元触媒層および酸化触媒層の少なくとも一方に電気的に接続され、還元および酸化のためのエネルギーを供給する。
【0008】
例示的な実施形態の別の態様によれば、電解二酸化炭素除去装置は、上述した電気化学デバイスと、カソードチャンバ入口およびカソードチャンバ出口を関連する内部空間に接続する導管とを含み、電気化学デバイスは、内部空間の二酸化炭素の分圧を減少させる。
【0009】
例示的な実施形態の別の態様によれば、電解二酸化炭素ポンピング装置は、上述の電気化学デバイスと、アノードチャンバ入口およびアノードチャンバ出口を関連する内部空間に接続する導管とを含み、電気化学デバイスは、内部空間の二酸化炭素の分圧を上昇させる。
【0010】
例示的な実施形態の別の態様によれば、二酸化炭素検出システムは、上述の電気化学デバイスと二酸化炭素センサとを含む。
【0011】
例示的な実施形態の別の態様によれば、内部空間の二酸化炭素濃度を改質する方法は、上述したような電気化学デバイスを提供するステップと、二酸化炭素をカソードチャンバ内のイオン担体種に電気化学的に還元するステップと、膜を介してイオン担体種をイオン輸送するステップと、アノードチャンバ内でイオン担体種を二酸化炭素に電気化学的に酸化するステップと、カソードチャンバおよびアノードチャンバの一方から内部空間にガスを供給して、内部空間の二酸化炭素濃度を改質するステップとを含む。
【0012】
例示的な実施形態の別の態様によれば、二酸化炭素を輸送する方法は、第1の電極で二酸化炭素ガスを可動イオン種に電気化学的に還元するステップと、固体電解質膜を横切って可動イオン種を輸送するステップと、第2の電極でイオン種を二酸化炭素に酸化させるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、例示的な一実施形態による、二酸化炭素の電気化学デバイスが動作する環境の側断面図である。
図2図2は、一実施形態による電気化学デバイスの側断面図である。
図3図3は、別の実施形態による、電気化学セルのスタックを含む電気化学デバイスの斜視図である。
図4図4は、図3の電気化学セルのスタックの分解斜視図である。
図5図5は、二酸化炭素除去の有効性を評価するために設計されたサイクリックボルタンメトリー実験の結果を示す。
図6図6は、図1図4の装置に使用され得る追加の二酸化炭素捕獲層を組み込んだ電気化学デバイスの層のセットを示す。
図7図7は、二酸化炭素の電解除去方法を示す。
図8図8は、一実施形態による屋内空気中の二酸化炭素の濃縮に適合した電気化学デバイスの側断面図である。
図9図9は、プロトタイプの電気化学デバイスを示す。
図10図10は、白金電極電解質(エチルイミダゾール中の0.1Mギ酸)におけるギ酸酸化およびその後のCO還元のサイクリックボルタモグラム(10mV s-1)を示し、0.5-1Vの全動的過電圧を示している。
図11図11は、走査速度に対してプロットしたピーク酸化還元電流(mA/cm)のグラフである。
図12図12は、ギ酸塩伝導膜の電気化学的応答を市販のAFN陰イオン交換膜と比較したナイキスト線図である。
図13図13は、周囲空気および純CO供給物からCOを除去するために使用される電気化学セルの電流過渡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
例示的な実施形態の態様は、密閉空間内で主に空気であり得る気体環境の二酸化炭素濃度を調節するための装置および方法に関する。一実施形態では、屋内空間の気体環境から二酸化炭素を除去するための装置が記載されている。別の実施形態では、屋内空間の気体環境に二酸化炭素を添加するための装置が記載されている。本明細書に記載のデバイスおよび方法は、屋内空気からの連続的なCO除去/屋内空気への連続的なCO添加に適している。
【0015】
電解CO除去装置(ECR)は、連続的な屋内空気浄化のための電気化学デバイスを含む。電気化学デバイスは、様々な環境で簡単に設置できる形状因子を備えた低電力および低温デバイスであり得る。このデバイスは、換気の増加および関連する新鮮空気の熱調節に必要とされるエネルギーの一部における建物占有者の生産性を高めることを可能にする。CO電気化学デバイスは、冷却ユニットまたはHVACユニットと連結されて、屋内空気からCOを除去し、~1,000ppm以下の安全レベルに保つことができる。CO電気化学デバイスを使用することによって建物内の空気再循環の減少が可能になり、したがって全体のエネルギー消費量が減少する。あるいは、このようなデバイスは、温室などの用途のために、環境中の二酸化炭素の分圧を増加させるために使用することもできる。
【0016】
例示的な電気化学デバイスは、例えば屋内空調システムに容易に統合することができる電解質膜を有する膜電極接合体(MEA)ベースのCO電気化学デバイスである。高温で動作する吸収剤を使用する既存のシステムとは対照的に、例示的な装置および電気化学的方法は、70℃未満の温度で屋内空気からCOを連続的に除去することができる。
【0017】
図1は、例示的な電解CO除去(ECR)装置1が動作する環境を示す。装置1は、屋外に通気されるCO流を濃縮する電気化学デバイス10(この場合、単一の電気化学セル)を含む。図1に示す電気化学デバイスは、屋内空気(主に窒素および酸素、少量の二酸化炭素および水蒸気を含む)などの二酸化炭素含有ガスの流れAを、空気入口導管14を介して屋内空間12から受け取る。空気から二酸化炭素を除去した後、空気出口導管16を介して空気の一部または全部を屋内空間に戻すことができる。戻り空気流Bは、入口流Aよりも低い二酸化炭素分圧を有する。二酸化炭素出口導管18は、密閉構造22の外部20に、例えば空気中で混合された二酸化炭素の流れCを運ぶ。大気の流れDは、導管21を介して受け取られる。流れC内の二酸化炭素の分圧は、流れAおよび/または流れBにおける分圧より高くてもよい。示された密閉構造22は建物であるが、車両などの内部空間を有する他の密閉構造、例えば自動車、潜水艦、船舶、航空機または宇宙船も意図される。
【0018】
1つ以上のポンプ24,26および/または送風機27は、導管14,16,18を介して電気化学デバイスに、および電気化学デバイスから、空気を循環させるのに役立つ。1つ以上の導管14,16に空気フィルター28を組み込んで、揮発性有機成分および微粒子を捕捉してもよい。電気化学デバイスの動作のための電流は、電気回路29によって供給される。電気化学セル10(またはそのようなセルのスタック)は空調機の内部に設置することができ、空調機のファンを使用して屋内空気を電気化学デバイスへ動かすため、そのための追加のファンを必要としない。
【0019】
図2を参照すると、図1の装置で使用するのに適した電気化学デバイス10の一実施形態が示されている。この電気化学デバイスは、ポリ(イオン)液体ベースの膜などの固体膜34によって隔てられたアノードチャンバ30とカソードチャンバ32とを含む。電位は、エネルギー(例えば電圧)源36によって膜34を横切って維持され、エネルギー源36は、アノードチャンバ30およびカソードチャンバ32内のアノード38およびカソード40にそれぞれ電気的に接続されている。カソード40は、膜34の第1の表面43に隣接してカソードチャンバ32内に配置された、電流コレクタ41と第1の触媒層42とを含む。アノード38は、膜の反対側の第2の表面46に隣接してアノードチャンバ30内に配置された、電流コレクタ44と第2の触媒層45とを含む。電流コレクタは電子を輸送するが、COの酸化または還元を触媒しない。第1の触媒層42は、二酸化炭素(および酸素)のイオン二酸化炭素担体種47への還元を触媒する還元触媒を含む。第2の触媒層45は、(膜を通って輸送された後の)イオン担体種47の酸化物を二酸化炭素および酸素に触媒する酸化触媒を含む。還元触媒層および酸化触媒層の少なくとも1つと電気的に接続されているエネルギー源36は、そこに生じる還元および酸化反応のためのエネルギーを供給する。膜34は、イオン担体種(アニオン)47に対して透過性であるが、ガス、特に酸素および二酸化炭素に対して不透過性または実質的に不透過性である。「実質的に不透過性」とは、カソードチャンバに入るそれぞれのガス(例えば、酸素)の5%以下または1%以下が膜を通ってアノードチャンバに運ばれる(逆もまた同様である)ことを意味する。ガス拡散層48,49は、ガス流の分配を助けるために、触媒層42,45の一方または両方に隣接して配置することができる。この拡散層48,49は、布などの多孔質材料から形成することができる。コレクタ40,44からセルの反対側の端部に、第2の対の電流コレクタ50,51を配置することができる。電流コレクタ40,44,50,51は、銅または鋼のような導電性材料から形成することができる。セルは、セルおよび/またはチャンバ32,30間のガス漏れを防止するために、膜の両端にガスケット52,53を含むことができる。
【0020】
カソードチャンバ32への入口54は、導管14(図1)を介して、屋内空間12からの屋内空気などの二酸化炭素を含む供給ガスを受け取る。屋内空気は、COの一部を除去した後、カソードチャンバの出口55から流出し、導管16を介して屋内空間12に戻される。アノードチャンバ30は、再生されたCOを含む排気が導管18を通る1つまたは複数の出口56を含む。入口57は、屋外空気の加圧された流れを受け取って、アノードチャンバ内の空気と混合し、出口56から運び出すことができる。
【0021】
コントローラ58は、例えば1つ以上のガスセンサ60,61の使用を通じて、空気流A、B、C、Dおよび/またはチャンバ30,32のうちの1つ以上におけるガス組成を監視する。コントローラ58はメモリMを含んでいてもよく、メモリMは、センサ60からの信号をCOなど1種以上のガスのガス濃度測定値に変換するための命令と、検出されたガス濃度が所定の範囲外にある場合にCO除去率の調整を実施するための命令とを格納する。コントローラ58は、命令を実行するためにメモリと通信するハードウェアプロセッサPを含む。検出されたガス濃度が所定の範囲内にない場合、コントローラ58は、例えば電気回路36のスイッチ62および/またはレオスタット64など、値の変化をもたらすことができる電気化学デバイス10の1つ以上の構成要素と通信してもよい。セル10は、頂部および底部電流コレクタを隔ててセルへのそれぞれの入口および出口を画定する1つまたは複数の側壁66,68を含んでいてもよく、または図3に示すように他のセルと接続してスタックを形成してもよい。
【0022】
単一セルの電気化学デバイスが図2に示されているが、図3および図4に示すようにセルのスタックを組み合わせて電気化学デバイス10を形成することができ、図3および図4では同様の要素に同じ数字が付されている。スタックは、少なくとも2個または少なくとも5個のセル、例えば約10個のセルを含むことができ、互いに重なって、共通の入口(マニホールド)54から空気を受け取り、1つまたは複数の共通の出口(マニホールド)55,56に排出空気を送達する。導電性部材69は、電流コレクタ41に電子を伝導する。同様の導電性部材(図示せず)が電流コレクタ44から電子を伝導する。セルを画定する層42,34および44(および使用される場合は48,49)は、絶縁層70,72によって覆われてもよく、絶縁層70,72は、クランプデバイス74によって固定され、クランプデバイス74は、本明細書ではボルトまたはねじなどのねじ付き固定部材80によって共に保持される双極板76,78を含むものとして示されている。一実施形態では、双極板は各々、フルオロカーボン/グラファイト複合板などの複合グラファイト板である。ボルト、圧縮ばね、ガス継手などのクランプデバイス74の他の構成要素は、鋼製、プラスチック製、または他の剛性材料製であり得る。
【0023】
マルチセル電気化学デバイススタック10は、スタック内の異なるセルに屋内空気を全体的な圧力および流量で分配する。セルは、スタック内で空気圧的に並行または連続しており、各セル内の空気の流量は均衡している。図4に示す実施形態では、第1の(左側の)セルはカソード、膜、アノードで配置されているが、スタックの第2のセルは逆転し、アノード、膜、カソードの配置であり、以下スタック全体を通して同様である。
【0024】
COの低い周囲濃度(400ppm)は、膜34を横切って維持することができる最大流束を抑制する傾向がある。一実施形態では、図2図4を参照して説明したように、電気化学デバイス10は、膜34のアノード側、例えば図5で示すように拡散層49と触媒層45の間に、CO捕捉層90としてCO吸着剤をさらに含むことができる。このようにして、CO捕捉層90は、膜34の屋内側、例えば、触媒層44によって膜から離間して配置される。CO捕捉層90は、CO還元電極(カソード)40近傍のガス濃度を上昇させることにより、CO除去率を向上させることができる。捕捉層90内のCO吸着剤COは、導電性多孔質材料(例えば、炭素布)によって支持された液体(例えば、アルキルアミンまたはイオン液体)であってもよい。あるいは、吸着剤は、固体ポリマー(例えば、ポリ(エタノールアミン)などのポリアミン、または重合したイオン液体)であってもよい。
【0025】
前述の実施形態のいずれかに記載された例示的な電気化学デバイス10は、屋内のCO除去のために連続モードで動作可能であり、除去されたCOを屋外に通気する低電力、小型かつ軽量のデバイスである。膜によって分離された電気化学デバイスのカソード側で捕捉された空気からのCOは、アノード側を通って連続的に屋外に放出される。理解されるように、屋内空気からの酸素の一部も、COを除去する過程で還元され得る。しかしながら、これは屋内空間の酸素のうちの比較的少ない割合である。例えば、典型的な大気含有量210,000ppmのうち、約250ppmの酸素が除去され得る。
【0026】
触媒層42,45は各々、同じであっても異なっていてもよい1種以上の触媒を含む。COの還元および/またはCOを形成するためのイオン担体種の酸化に適した触媒には、インジウム(In)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、ルテニウム(Ru)および銅(Cu)などの貴金属、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)などの他の金属触媒、PdPt100-xおよびその混合物などの二金属触媒が含まれる。一実施形態では、層42内の触媒は、二酸化炭素のイオン担体種への変換に対して高度に選択的である。一例として、ギ酸イオン生成のために、触媒層はCu、In、SnおよびPbの少なくとも1種を含み得る。層42,45の一方または両方の触媒は、触媒充填量を削減するために高い表面積を有することができるカーボンブラックのような担体材料上に担持することができる。CO還元触媒は、ディスク電極を用いて測定したjlimiting=0.2mA cm-2で、少なくとも70%のファラデー効率を有することができる。
【0027】
図示の電気化学デバイス10の膜34は、ポリ(イオン)液体(PIL)などの固化した液体電解質を含んでいてもよく、または例えば炭素含有布または他の導電性多孔質材料など、導電性布などの支持材料上に支持されたイオン液体であってもよい。イオン液体は、周囲温度(10~40℃)で液体であり得る有機カチオンおよびアニオンを含有する化合物である。PILは、典型的には、100℃未満の温度で融解する。本明細書での使用に適したPILは、動作温度下で陽イオンがポリマーの形態で固定され、陰イオンが膜を自由に移動するものである。ポリ(イオン)液体膜は、例えばイオン液体の重合による、または適切なアニオンを含有する電解質による既存のイオン交換膜の官能化による、直接合成によって形成することができる。イオン液体またはポリ(イオン)液体は疎水性であり、1%未満の含水量を有し得る。したがって、例示的な膜34は、疎水性であり、CO吸収に対して高度に選択的であり、屋内環境に水分を残す。一実施形態では、膜34は主にポリ(イオン)液体、すなわち少なくとも51重量%または少なくとも70重量%、または少なくとも90重量%のポリ(イオン)液体、または100重量%までのポリ(イオン)液体である。
【0028】
薄い均一膜34は、例えば10~500μm、例えば少なくとも20μm、例えば200μmまで、または100μmまで、例えば50μm程度の厚さtで作ることができる。膜34は、用途に応じて、少なくとも0.5cm、例えば50cmまでの直径d(または最大寸法)を有することができる。膜は可撓性であり、偏向後に元の形状に戻ることができる。
【0029】
一実施形態では、膜34は、非プロトン性、場合により重合されたイオン液体を含む。特に好適なイオン液体は、広い電気化学的窓(>3.5~7V)、低い蒸気圧(298Kで100Pa未満のPvap)、高いイオン伝導度(0.1~50mS/cm)、および低い融点を有し、これら全てはガスベースの電気化学的用途に望ましい特性である。
【0030】
イオン液体またはポリ(イオン)液体中の有機カチオンの例は、窒素含有カチオン、リン含有カチオン、硫黄含有カチオン、シュウ酸塩、およびこれらの組み合わせから選択することができる。
【0031】
例示的な窒素含有カチオンとしては、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウムおよびピロリジニウム含有カチオン、有機アンモニウムカチオン、およびこれらの混合物などの複素環式および非環式窒素含有カチオンが挙げられる。
【0032】
適切な複素環式窒素含有カチオンは、一般形態の5および6員複素環式イオンであって、
【0033】
【化1】
【0034】
ここでR、R、RおよびRは、H、C-C12アルキル基、C-C12アルコキシ基、C-C12ヒドロキシアルキル基、C-C12アルケニル基、C-C12ヒドロキシアルケニル基およびそれらの組み合わせから独立して選択され、ここで例えばRなど、R、R、RおよびR(存在する場合)の少なくとも1つ、または少なくとも2つはHではなく、ここでRおよび/またはRなど、R、R、RおよびRの1つ、2つまたはそれ以上は重合性基、例えばC-C12アルケニル基およびC-C12ヒドロキシアルケニル基などの不飽和C-C12重合性基であってもよく、
XはCまたはNであり、
nは0または1であり、
mは0または1~5である。
【0035】
はH以外であってもよく、プロトン化された窒素基を除いて、Xを含む任意の環員に結合することができる。
【0036】
例示的なイミダゾリウムカチオンとしては、モノ-、ジ-およびトリ-C-C12アルキル、アルケニル、アルコキシおよびヒドロキシアルキルイミダゾリウムカチオン、例えば1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジエチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、1,3-ジプロピルイミダゾリウム、1-エチル-3-プロピルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-N-ブチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ブチルイミダゾリウム、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-エチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-n-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-プロピル-3-エチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-エチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジエチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-エチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-エチルイミダゾリウム、イオン、例えばビニルまたは他のアルケニル官能基と重合可能なそれらの等価物であり、官能基は環の1位および/3位にあってもよい、例えば1-ビニルイミダゾリウム、1-プロピニルイミダゾリウム、1-ビニル-3-エテニルイミダゾリウム、1-エテニル-3-プロピニルイミダゾリウム、1,3-ジプロピニルイミダゾリウム、2-メチル-1-ビニルイミダゾリウム、それらの混合物、およびそれらのポリマーなどが挙げられる。
【0037】
例示的なピリジニウムカチオンには、C-C12アルキル、アルコキシおよびヒドロキシアルキルピリジニウムカチオン、例えば1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピリジニウム、N-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウム、およびN-ヘキシルピリジニウムカチオン、それらの重合可能な等価物、例えば1-エテニル-3-プロペニルピリジニウム、4-ビニルピリジニウム、2-ビニルピリジニウム、およびそれらの混合物が含まれる。
【0038】
例示的なピロリジニウムカチオンとしては、C-C12アルキル、アルケニル、アルコキシおよびヒドロキシアルキルピロリジニウムカチオン、例えば1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、N-ブチル-N-メチルピロリジニウム、および1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウム、それらの重合可能な等価物、例えば1-エテニル-3-プロペニルピロリジニウム、それらの混合物、およびそれらのポリマーが挙げられる。
【0039】
適切な有機アンモニウムカチオンは、一般形態であり、
【0040】
【化2】
【0041】
ここでR、R、RおよびRは、H、C-C12アルキル基、C-C12アルコキシ基、それらの重合可能な等価物、およびそれらの組み合わせから独立して選択され、ここでR、R、RおよびRの少なくとも1つ、または少なくとも2つはHではない。例示的な有機アンモニウムカチオンには、C-C12アルキルおよびアルコキシアンモニウムカチオン、例えばトリメチルブチルアンモニウム、N-エチル-N、N-ジメチル-2-メトキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、n-ヘキシルトリエチルアンモニウム、トリメチル-n-ヘキシルアンモニウムおよびトリエチルブチルアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0042】
例示的なリン含有カチオンには、ホスホニウムイオン、例えばC-C12アルキルおよびアルケニルホスホニウムイオン、例えばトリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムおよびトリス(n-ヘキシル)テトラデシルホスホニウムイオンが含まれる。
【0043】
有機カチオンは、カチオン部位に少なくとも1つの不飽和重合性基を含むことができ、フリーラジカル重合によって架橋することができる。好適な不飽和重合性基には、α-不飽和C-C12アルケニル基、例えばエテニル、プロペニルおよびブテニル基が含まれる。
【0044】
重合性カチオンの一例は、ビニル基を介して重合される1-ビニルイミダゾリウムカチオンなどのイミダゾリウムカチオンである。
【0045】
ポリ(イオン)液体中の例示的なアニオンとしては、シュウ酸塩(C2-、水酸化物、トリフルオロメタンスルホン酸塩などのスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩などの酢酸塩、ペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフェート、ジホスフェートおよびヘキサフルオロホスフェートなどのホスフェート、ギ酸などのカルボン酸塩、ギ酸メチルおよびギ酸エチルなどのC-C12ギ酸アルキル、ギ酸ナトリウムなどのギ酸金属塩、テトラフルオロボレートおよびテトラシアノボレートなどのホウ酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドとしても知られている)などのイミドイオン、シアナミドなどのアミドイオン、塩化物などのハロゲン化物、C-C12アルキル硫酸塩などの硫酸塩(例えば硫酸エチル)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
このようなアニオンおよびカチオンから形成される例示的なイオン液体およびポリイオン液体には、
【0047】
1.ピペリジン、例えば1-(3-メトキシプロピル)-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピペリジニウムトリス-(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、
【0048】
2.ホスホネート、例えばトリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロライド、トリス(n-ヘキシル)テトラデシルホスホニウムトリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフェート、トリス(n-ヘキシル)テトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムジシアンアミド、およびN-アリルホスホニウムホルメート、
【0049】
3.ピリジン、例えば1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、N-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、およびN-ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
【0050】
4.ピロリジン、例えば1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ヘキシル-1-メチル-ピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリフルオロアセテート、
【0051】
5.一置換、二置換および三置換のイミダゾール、例えば1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,2-ジメチル-3-N-ブチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3-ジメチルイミダゾリウムジホスフェート、1,3-ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルスルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-n-プロピル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-2,3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、N-ビニルイミダゾリウムホルメート、1-エチル、3-メチルイミダゾリウムヒドロキシド、および1-ビニルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、
【0052】
6.有機アンモニウム、例えばトリメチルブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N、N-ジメチル-2-メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、n-ヘキシルトリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリメチル-n-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリエチルブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、およびテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
【0053】
これらのイオン液体の混合物を使用してもよい。カチオン性ポリマーに対応するアニオンが浸透していてもよい、不飽和基を有するカチオンから形成された重合イオン液体も考えられる。
【0054】
イオン液体の一例は、EMIM=1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、TFSI=ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドであるポリ(EMIM)TFSI電解質である:
【0055】
【化3】
【0056】
別の例となるイオン液体は、ポリ(1-ビニルイミダゾリウム)化合物を含み、可動アニオンはシュウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩およびトリフルオロ酢酸塩から選択される。例えば、イオン液体は、フリーラジカル開始剤を用いて、ビニル基を介して重合される1-ビニルイミダゾリウムホルメートのポリマーである。一例として、ポリ(ビニルイミダゾール)ホルメートは、1-ビニルイミダゾリウムカチオンの重合によって形成される:
【0057】
【化4】
【0058】
あるいは、ギ酸基は、重合の後、例えばイオン交換によって導入される:
【0059】
【化5】
【0060】
どちらの方法においても、ペンダントイミダゾリウムカチオン基を有するn個の繰り返し単位のポリマー骨格が得られ、ここで、nは、例えば少なくとも2、または少なくとも10、または少なくとも50であり得る。ホルメートアニオンは可動性である。
【0061】
イオン液体の他の特定の例は、1-エチル、3-メチルイミダゾリウムヒドロキシド(ポリ(EMIM)水酸化物としても知られている)などの重合水酸化物ベースのイオン液体である。アニオン交換膜の研究に使用するために、重合されたイオン液体水酸化物の使用が研究されており、ブロックコポリマーについては10-3S/cmまでの導電率が報告されている(Ye,Y.ら「High hydroxide conductivity in polymerized ionic liquid block copolymers」ACS Macro Letters,2(7):575-580(2013))。
【0062】
一実施形態では、イオン液体は、カチオン基(イミダゾリウム、ホスホニウム、ピリジニウム、ピペリジニウムおよびアンモニウム)の1つと、アニオン基(トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホニルイミド、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、テトラフルオロボレートおよびヘキサフルオロホスフェート)の1つとの組み合わせによって選択される。
【0063】
一実施形態では、膜は、選択的に官能化されたイオン交換膜であり、可動種は、選択的イオンCO担体、例えばシュウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩である。
【0064】
イオン液体を含有する固体マトリックスを形成するための架橋剤として好適な例示的な重合性モノマーには、ビニル置換芳香族モノマー、例えばスチレンおよびα-メチルスチレン、ビニル脂肪族モノマー、特にC-C12 α-オレフィン、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン、(メタ)アクリレートモノマー、例えばポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、アリルモノマー、例えばポリエチレンオキシドおよびポリエチレングリコール、ならびにそれらの二量体およびオリゴマーおよび混合物が含まれる。
【0065】
膜34は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、またはアセトニトリルなどの非水性および非揮発性可塑剤をさらに含んでもよく、可塑剤は総膜容量の25%以下で存在してもよい。
【0066】
例示的なイオン担体種47は、ペルオキシジカーボネートイオン(C 2-)、ギ酸イオン(HCOO)、シュウ酸イオン(C2-、炭酸イオン(CO 2-)、トリフルオロ酢酸イオン(CFCO )およびこれらの組み合わせを含む。これらのアニオンの全ては、炭素および酸素の両方、および場合により水素またはフッ素などの別の元素を含む。特定の一実施形態では、イオン担体種は、ペルオキシジカーボネートイオン(C 2-)である。担体種47は、有機液体中のアニオンと同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
COの輸送は、CO還元を使用してイオン担体種47を生成することによって、または炭酸イオン(CO 2-)の形成を介して達成することができ、この場合、酸素ガスは還元種として働く。これらの反応は、以下の表1に示されている。
【0068】
【表1】
【0069】
これらの還元された種は、膜を横切って可逆的に輸送されることにより、COを電気化学的にポンプ輸送するために使用される。上昇した電位での動作は、CO除去のための比エネルギー消費を増加させる。代替的なCO還元反応は、除去されるCOの分子1個あたりに消費される電子の数を減少させることによって、エネルギー消費量を低減させることができる。
【0070】
1つの例示的な架橋ポリ(イオン)液体膜は、COとOの還元生成物であるペルオキシジカーボネートイオン(C 2-)の輸送が優先的に膜を通過し、C 2-イオン担体種47を酸化して図2に示すようにCOとOに戻すことを可能にする。一例の膜34は、高いイオン伝導率と機械的安定性を有し、かつガスクロスオーバーを有さないペルオキシジカーボネートイオン(C 2-)導電性ポリ(イオン)液体膜である。一実施形態では、屋内環境において電気化学的CO除去および/または電気化学的CO検出を用いるペルオキシジカーボネートイオン(C 2-)導電性固体電解質膜を使用する電気化学セルは、イオン液体の他の可能性のある可動種を固定化する一方で、ペルオキシジカーボネートイオンを優先的に輸送する、機械的に安定のポリ(イオン)液体膜と、アノードおよびカソード間にガスクロスオーバーを生じさせずにガスバリアとして作用する架橋PIL膜とを含む。
【0071】
一実施形態では、膜は、メナキノンおよびユビキノン(補酵素Q10)などのキノンを含まないか、または実質的に含まない。実質的に含まないとは、膜が1重量%未満のキノンを含むことを意味する。
【0072】
一例として、図6は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートを含む液体電解質を使用したプロトタイプデバイス(ビーカーに設置された3電極システム)のサイクリックボルタンメトリーの結果を示す。動作中、屋内空気からのOとCOは還元されて、CO選択性電解質膜の存在下で、カソードでペルオキシジカーボネートイオン(C 2-)を形成する。最大-0.6V(対Ag/Ag基準電極)の過電圧をカソードに印加し、CO還元反応を促進する。アノードには+0.4V(対Ag/Ag基準電極)の追加電位を印加し、アノードにおけるペルオキシジカーボネートイオンのCOとOへの酸化を促進する。以下の反応が起こる。
【0073】
【表2】
【0074】
Gary B.Dunks and D.Stelman(1983)「Electrochemical studies of molten sodium carbonate」Inorganic Chemistry 22(15),2168-2177を参照。
【0075】
典型的なセル動作の下では、1Vの最大セル電位が印加される。図6の曲線Xは、45%CO、45%Oを表しており、かなりの量の酸素が存在してもCOは電解され、結果として生じるイオン種(C 2-)の膜を通しての輸送を可能にすることを示す。なお、これは酸素と2対1のモル比で起こるため、屋内空気から失われる大気中の酸素はごくわずかである(210,000ppmのうち250ppm)。他の例示的な実施形態では、同様の電位を用いて、電気化学デバイスの動作中に膜を横切って(HCOO)またはシュウ酸(C2-イオンを輸送することができる。
【0076】
図3図4に示すタイプの電気化学デバイスにおいて、10Vで動作する6Aの電流は、50L/hのCOを処理するのに十分であると推定される(ファラデーの電気分解の法則を用いる)。図6に示すサイクリックボルタモグラムから、熱および流量制御を含み、6Aの電流を使用し、10Vで10セルの電気化学デバイススタックを動作させ、97%の効率を仮定した場合の73.4Wの総電力消費量を計算することができる。電気化学デバイスを加熱するのに必要な電力は、図3および図4に示すタイプの10cm×10cm×8.5cmの電気化学デバイス上の1cm厚のガラス繊維絶縁体(0.04W/m.K)に対して11.9Wと推定される。
【0077】
別の実施形態では、イオン担体種47としてのギ酸イオンが優先的に輸送される。架橋したイオン液体から合成された高分子電解質膜34を用いてもよい。達成され得る比エネルギー消費量(100kJ mol-1 CO除去)は、周囲空気からのCO除去のための従来の吸着剤と比較して少なくとも1桁低い。膜は、高いギ酸イオン伝導度(例えば、5×10-4S/cm)を有し得る。ギ酸イオン輸送を改善するために、エチレンカーボネートなどの非水性の不揮発性可塑剤、および/またはポリ(エチレンオキシド)またはポリ(エチレングリコール)などの低T架橋剤を膜に組み込むことができる。In、Pt、Pd、Ag、NiまたはPdPt100-xバイメタル触媒を使用し、システム動作電圧を低下させることによって、CO還元のファラデー効率を向上させることができる。このような電気化学デバイスの他の詳細は、以下の実施例に記載されている。
【0078】
別の実施形態では、イオン担体種47にはシュウ酸イオンが含まれる。これは、1-エチル、3-メチルイミダゾリウムヒドロキシド、またはポリ(EMIM)ヒドロキシド[EMIM=1-エチル-3-メチルイミダゾリウム]などのシュウ酸塩-(C2-または重合水酸化物ベースのイオン液体の1つを含有する膜の使用によって達成され得る。これらの反応は各々、CO 1モルあたり1電子のみを消費し、ギ酸塩へのCO還元と比較して、消費量が半分になる。イオン液体水酸化物中の酸素還元反応は、イオン液体中でより可逆的であることが知られている重炭酸イオンを生成する。膜は、10Ωcm未満の面積比抵抗を有することができる。
【0079】
シュウ酸塩ベースの膜の場合、CO還元反応はCO分子あたり1電子のみを消費し、Oを消費せず、HOを消費せず、独立した湿度制御を可能にする。この独特の要因の組み合わせは、そのようなガスのレベルを制御することが望ましいかまたは困難な場合に、シュウ酸塩または重炭酸塩を特に有用にする。
【0080】
電気化学デバイス10の形状因子は比較的柔軟である。例えば、最小容積を達成するために、電気化学デバイスは、約0.00085mの小さな容積を占めることができる。このシステム容積は、0.09A/cmの電流密度(図6のサイクリックボルタモグラムからのピーク電流密度)を用いて、50L/h(60.3A)を処理するのに必要なセルの表面積を得て、双極板とプラスチックの本体を含めて5cmのセル厚さを有する4セルスタックを仮定して計算される。所望のどのような形状因子にも対応できるように、システムの寸法を変更することができる。
【0081】
電気化学デバイス10は、商業ビル内の既存の暖房、換気および空調(HVAC)システムのエネルギー需要を低減するように改造することができる。このシステムは、屋内のCOレベルを希釈するのに必要な屋外空気再取り入れ換気の回数を減らすことにより、米国内の全商業ビルで実施する場合、最高1.35クワッド(1.42×1012MJ)の年間エネルギー節減を達成し得る。
【0082】
理解されるように、COの電気化学的還元は複雑な反応である。触媒および電解質に応じて、複数の生成物(例えば、水素、メタン、エタン、メタノール、ギ酸塩など)が発生する可能性がある。場合によっては、目的のイオン(例えば、ペルオキシジカーボネート、ギ酸塩、重炭酸塩またはシュウ酸塩)へのCOの変換効率100%を達成することが難しいことがあり、アノード反応効率とカソード反応効率との間で生じる不均衡が電解質の劣化およびシステム性能の低下につながることがある。このシステムは、電極で生じる望ましくない反応をバランスさせることによって、最適な(健康な)レベルの動作で維持することができる。例えば、セルを水電解(E=1.23V)に必要な電位よりも高い電位で動作させ、カソードでの寄生H発生損失が同等の量の酸素発生によって補償されることを確実にすることができる。効果的なCO還元触媒(>90%)では、ファラデー効率への影響は小さいと予想される。セル電位は、測定された生成物ガスの濃度に基づいて動的に制御されてもよい。一実施形態では、センサ60,61を使用して、電気化学デバイス内および/または電気化学デバイスに入るかまたは電気化学デバイスを出る、1種以上のガスの濃度を検出する。複数のセンサの必要性を回避するために、セル電位、温度および流入/流出ガス濃度の間の相関をコントローラ58にプログラムしてもよい。
【0083】
CO電気化学デバイスは、70℃未満、または50℃未満、または40℃未満で動作させることができ、空調システムの熱負荷に影響を与えることなく高いCO除去流束を保証する。例えば、排気ガス温度は、冷却を必要とせずに許容可能な温度、例えば10~50℃で維持される。いくつかの実施形態では、例えば、温室などの屋内環境のために二酸化炭素を濃縮するように動作する場合、電気化学デバイスに熱を加えることができる。
【0084】
図1図5に示す電気化学デバイス10は、屋内環境からCOを選択的に除去することにより、屋内CO濃度を約1,000ppmの低さに維持することによって、屋内環境をより快適にするのに適している。
【0085】
電気化学デバイス10が二酸化炭素除去のために使用される場合、生成物ガス中の二酸化炭素分圧(通気口55を通って排出される)は、0.001bar(1.02g/cm)~0.01bar(10.2g/cm)の範囲内であり得る。後述するように、電気化学デバイス10が二酸化炭素濃縮のために使用される場合、生成物ガス(通気口56を通って排出される)中の二酸化炭素の分圧は、0.1bar(102g/cm)超~100bar(102,000g/cm)であり得る。
【0086】
図7を参照すると、屋内環境からCOを除去する方法が示されている。この方法はS100で始まる。S102でイオン液体ベースの電気化学デバイス10が提供される。S104では、電気化学デバイスセルに電圧が印加される。S106では、屋内空気がカソードチャンバに供給される。電気化学デバイスは、取り込まれた屋内空気中のCOとOをイオン担体種47(例えば、ペルオキシジカーボネートイオン(C 2-))に電気化学的に還元し、イオン担体種47は、PIL膜34を介してイオン輸送され、酸化されてCOとOに戻る。
【0087】
S108では、アノードで発生したCOを大気に通気して、屋内のCOレベルを約1,000ppmという低いレベル、またはそれ以下に低下させることができる。
【0088】
S110では、間を置いて、センサ60,61を用いて装置1および/または環境内の1箇所以上でCOレベルを測定する。
【0089】
S112では、COレベルが所定の範囲内でないとコントローラ58が判断した場合、方法はS114に進み、電気化学デバイス10の調整を行った後、S110に戻る。そうでなければ、方法は直接S110に進む。この方法は、建物が人によって占有されていないか、または連続運転で維持されている場合など、CO調整が必要なくなるまでこのように進めることができる。
【0090】
膜の形成
一実施形態によれば、電気化学デバイスのための固体膜34を形成する方法は、必要に応じて架橋剤の存在下で、必要に応じてコモノマーの存在下で、イオン液体を重合させるステップを含む。高いCO溶解度を有する非プロトン性の重合可能なイオン液体は、用途に応じてポリ(イオン)液体膜に形成することができる。
【0091】
一実施形態では、ポリ(イオン)液体(PIL)膜34は、上述したような1つ以上の有機カチオン、または対応するイオン化可能なモノマーまたはオリゴマーを重合することによって形成することができる。重合は、有機カチオン/モノマー/オリゴマーの自己重合によって行うことができる。あるいは、重合は、第2のポリマー形成モノマーとの共重合によって行われて、固定化された有機カチオンを含有するポリマーを形成してもよい。この方法の利点は、カチオン部分が、重合可能な第2のモノマーから形成されたポリマー主鎖にグラフトされることである。重合は、開始剤の存在下で行うことができる。一実施形態において、イオン液体のアニオン成分は、例えば、イオン交換プロセスによって、有機カチオンの重合後に導入され得る。このことは、C 2-イオンが支配的な可動種46として残ることを可能にする。このようにして、C 2-イオンの輸送およびアノードでのその供給が強化され、したがってCO電気化学デバイス10の性能が改善される。
【0092】
好適な開始剤には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が含まれる。
【0093】
特定の一実施形態において、ポリ(イオン)液体(PIL)膜34は、直接合成によって調製される。この実施形態では、ポリ(イオン)液体(PIL)膜は、カチオン部位に少なくとも1つの不飽和重合性基(例えばビニル)を含むイオン液体から製造することができ、フリーラジカル重合によって架橋することができる。このようなモノマーから調製された架橋PILネットワークは、非架橋PIL膜よりも水分および溶媒に対する優れた安定性、柔軟性およびより高い機械的安定性を有する。このようなイオン液体を架橋させた高分子電解質膜では、カチオンがポリマー骨格に沿って固定化され、ポリ(カチオン)が形成される。この固定化は、可搬性イオン47(例えばギ酸イオン)の選択的輸送を可能にし、効果的に膜を単一イオン伝導体にする。このような膜は、柔軟で機械的に頑丈であり、薄膜(<50μm)として形成されて、面積比抵抗を最小にすることができる。例示的なECRシステムに統合されると、このような膜は、従来のシステムよりも1桁以上低い100kJ mol-1 COのエネルギー消費量でCO除去を可能にする。
【0094】
別の実施形態では、ポリ(イオン)液体(PIL)膜は、既存のイオン交換膜を電解質として適切なイオン液体で機能化することによって調製することができる。
【0095】
架橋剤の密度は、所望のフィルム厚さおよび弾力性を達成するように選択することができる。
【0096】
膜34は、ポリ(イオン)液体が不均一に分散し得る均一な厚さの薄層を形成するのに適したキャスティング、ドクターブレード、スピンコーティング、または他の堆積技術によって形成することができる。
【0097】
アノード触媒層42およびカソード触媒層45は、焼結、スパッタリング、薄層金属スパッタリング、電気めっきまたは膜34のそれぞれの表面上に触媒材料を堆積させるための他の適切な方法によって形成することができる。
【0098】
例示的なECRシステム1は、160L CO-2-1の膜流束を有することができる。
【0099】
電気化学デバイスの(膜を横切る)動作電圧(V)は、1.5Vまで、例えば1.0V~1.3Vなど少なくとも0.5Vであり得る。1.0Vの動作電圧で、COとギ酸塩の完全な転化が達成される。
【0100】
電気化学デバイスのエネルギー消費量は、最大300kJ/mol CO除去、または最大200kJ/mol CO除去、または最大100kJ/mol CO除去、またはそれ以下であり得る。300kJ/mol CO除去の消費量は、例えば、1.5Vで2eCOの還元反応を伴う電気化学デバイスの動作によって達成することができる。100kJ/mol CO除去の消費量は、例えば、1.0Vで1e COの還元反応を伴う電気化学デバイスの動作、および高度に選択的なCO還元触媒の使用によって達成することができる。
【0101】
電気化学デバイス膜におけるギ酸イオン(または他のイオン47)の伝導率は、少なくとも0.5mS cm-1、または少なくとも1mS cm-1、または少なくとも2mS cm-1、または少なくとも2.8mS cm-1であり得る。ギ酸充填量の増加、低T架橋剤の使用、および/またはポリ(カチオン)を固定化して単一イオン伝導性を確保することによって、より高い伝導度を達成することができる。
【0102】
膜34は、100μmまで、または50μmまで、または25μmまでの厚さを有することができる。特に薄い膜の場合、スピンコーティングを用いて薄い均一なポリマーフィルムを得る、および/またはシリカ粒子、セラミック粒子、ガラス粒子、アルミナセラミック粒子または任意の適切なタイプの粒子などの非導電性粒状充填材を用いて膜強度を改善することが有利であり得る。非導電性粒子のサイズ(平均直径)は、2~15μmの範囲であり得る。
【0103】
電気化学デバイスのファラデー効率は、供給ガスから除去された二酸化炭素と通過した電荷の量との比によって測定され、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%であり得る。CO還元反応では、100%ファラデー効率を達成することは期待されない。アノード反応効率とカソード反応効率との間に生じる不均衡は、電解質の劣化を招く可能性がある。水電解(E=1.23V)に必要な電位よりも高い電位でセルを動作させることにより、カソードでの寄生H発生損失を同等の酸素発生量で補うことができる。セル電位は、測定された生成物ガスの濃度に基づいて動的に制御することができる。余分なセンサを避けるために、セル電位、温度および/または流入/流出ガス濃度の間のこの相関をコントローラにプログラムすることができる。
【0104】
この膜は、最高5000ppmまたはそれ以上のCO濃度で動作させることができる。この電気化学デバイスの例では、最終的に2mol CO-2-1または少なくとも2mol CO-2-1の流束を、5,000ppmのCOで達成することができる。より高い触媒表面積でより高い流束レベルを達成することができる。
【0105】
図1図5の電気化学デバイスの一部におけるいくつかの利点は以下を含み得る。
【0106】
1.屋内環境からCOを選択的に除去して、約1,000ppmの安全なCO限界未満にすることができる電気化学デバイス10。
【0107】
2.膜34を横切るペルオキシジカーボネートイオン(C 2-)イオン(または他の担体種)の選択的輸送。
【0108】
3.電気化学デバイスによって送達される最大電流密度の実質的な改善。
【0109】
4.適切なレベルの架橋を介してガス不透過性ポリマーマトリックスを形成することにより、アノード側とカソード側との間のガスクロスオーバーがわずかであるかまたは全くない。
【0110】
5.最高70℃、またはそれ以上の動作温度で熱的および機械的に安定した膜。
【0111】
6.劣化を避けることによる電気化学デバイスの寿命および性能の改善。
【0112】
7.電気化学的なCO除去(300kJ mol-1 COまで、または100kJ mol-1 COまで)にかかる低い比エネルギー消費。これは、本電気化学デバイスで達成することができ、単純にCOを希薄にすることに比べてより効率的な方法で、屋内のCOを除去することを可能にする。COが取り除かれた建物では、市販の空気フィルターでVOCや微粒子を除去することができ、最小換気率が大幅に低下する。予防措置として、建物換気は、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)の屋内濃度によって決定することもできる(EPA Report EPA 530-R-10-001(2011)「Background Indoor Air Concentrations of Volatile Organic Compounds in North American Residences(1990-2005):A Compilation of Statistics for Assessing Vapor Intrusion」)。典型的な建物のホルムアルデヒド濃度(171μg/m)を大気質の指標として仮定すると(Kadenら「WHO Guidelines for Indoor Air Quality:Formaldehyde」(2010))、ホルムアルデヒド濃度をOSHAの許容限度(0.75ppm)で維持しながら、換気率をCOベンチマーク(http://www.engineeringtoolbox.com/pollution-concentration-rooms-d_692.html)と比較して85%低下させることができる。この換気率の低下は、米国内の全商業ビル(または、48kWh/m/y)で実施する場合、年間で最高1.35クワッド(米国の全ての商業用建物のHVACエネルギーのほぼ10%)の主要なエネルギー節減をもたらす。
【0113】
このエネルギー節減の計算では、BTO計算機によって推定される、米国(ゾーン1~5)全体の2.25クワッド(主要燃料ベース)の商業ビルにおける換気エネルギーのベースラインを仮定している。建物の空気を0.75ppmのホルムアルデヒドと1,000ppmのCOで維持するのに必要な換気率を計算することにより、換気量をベースライン値の15%(0.34クワッド)に低減できると仮定している。ECRシステム1は、100kJ mol-1 COの比エネルギー消費を有することができる。45%の燃料-電気変換効率が仮定される。
【0114】
ECRシステムの経済分析では、特定の資本コストがPEM燃料電池($500m-2)(https://www.hydrogen.energy.gov/pdfs/15015_fuel_cell_system_cost_2015.pdf)に匹敵し、高価な白金族金属(PGM)触媒の使用を避けることによって最終的にはさらに約30%削減できると仮定されている。50LPH/占有者のCO発生率と320L/m/hのCO膜流束を仮定すると、推定消費電力は60W/人であり、50LPH/占有者相当分を除去するための資本コストは$52/占有者である。単純換算計算では、屋外換気率が85%低下したと仮定して、3年以内に初期費用が回収されると考えられる。
【0115】
これらの結果は、システム内での良好なイオン輸送(高伝導性膜)および速い運動(十分に良好なCO還元および再酸化)によって達成される。これらは、キャスティング、ドクターブレーディングまたはスピンコーティングによってポリマーを薄く機械的に安定なフィルムにキャスティングするステップ、ポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレンオキシド)などの低T架橋剤の使用によってイオン輸送を改善するステップ、In、Pt、Pd、Ag、NiまたはPdPt100-xバイメタル触媒を使用することによってCO還元のファラデー効率を向上させるステップ、およびシステム動作電圧を低下させるステップのうちの1つ以上によって促進される。
【0116】
1,000ppmで動作する商用ECRシステム1の設置コストは、2017年1月のエネルギー価格に基づき、3年未満の簡単な回収期間で約52ドル/占有者と見積もられている。
【0117】
例示的なECRシステムは、建物の空気を空調する際に消費されるエネルギーを最小限に抑えようとするのではなく、空調が必要な建物の空気の量を最小限に抑えることによって、従来のHVACシステムの高エネルギー消費に対処する。ECRシステムは、不要なガスを絶えず希釈して屋内の大気質を維持する現行のHVACシステムとは対照的に、建物の空気から不要なガス(CO)のみを選択的に除去し、一方で市販の空気フィルターでVOCや微粒子を捕捉することを可能にする。ECRは、屋内の湿度レベルに影響を与えずにCOを独立して除去することができ、従来の電気化学システムとは違って全てのECR構成要素が酸素の存在下で安定している。ECRシステムは、100kJ mol-1 COという低いエネルギー消費量でCOを除去することができ、これは従来技術よりも1桁低い。成功した場合、ECRは、創造的なシステム設計と慎重な電気化学によって、最先端のソリューションにおけるエネルギーとコストの課題を解決し、米国の商業用建物のHVACエネルギーの10%を節減する。
【0118】
図8を参照すると、別の実施形態では、電気化学デバイス100は、温室内などの屋内雰囲気において二酸化炭素の分圧を上昇させるように構成されている。電気化学デバイスは、注記したものを除いて、図2図5に示すものと同様に構成することができる。この実施形態では、電気化学デバイスは、アノードチャンバ30が空気取り入れ口14に接続された入口54を介して屋内空気を受け取るように配向されている。二酸化炭素の分圧を高めた後、屋内空気は出口55を介して屋内環境に戻される。カソードチャンバ32は、入口57を介して、少なくとも低レベルの二酸化炭素を含有する屋外空気を受け取る。屋外空気からの二酸化炭素は、触媒層42によって、輸送可能なイオン46に還元され、イオン46は、触媒層45によって二酸化炭素に再変換される前に、膜34を横切って輸送される。このようにして、このシステムを使用して屋内空気中のCOを濃縮させ、温室内で使用するためのより高い濃度を提供することができる。
【0119】
理解されるように、内部空間における二酸化炭素の濃度を上昇させる方法は、図7に示す方法と同様であってもよい。しかしながら、S106では、高CO雰囲気がカソードチャンバ入口に供給される一方で、内部空間からの空気がアノードチャンバ入口に供給される。S108では、より高レベルのCOを有する内部空気が、アノードチャンバから、アノードチャンバ出口を介して内部空間に通気される。図7の方法のように、二酸化炭素はカソードチャンバ内でイオン担体種に電気化学的に還元され、イオン担体種は膜を介してイオン輸送され、イオン担体種は電気化学的に酸化されてアノードチャンバ内に二酸化炭素を形成する。
【0120】
別の実施形態では、電気化学デバイスは、屋内環境における暖房換気および空調(HVAC)システムを調節するための電気化学的COセンサとして使用され得る。この実施形態では、周囲CO濃度の摂動が、電気化学セルの電位に測定可能な変化をもたらす。この実施形態は、人感知などCOエミッタの存在を感知し、建物のHVAC負荷を調節するために使用されてもよい。この実施形態では、基準電極上のCOガス濃度(ベースライン)は一定の値に維持される。標準的な基準電極(銀、銀|塩化銀、フェロセン|フェロセニウム)も同様に使用することができる。
【0121】
ギ酸イオンによる二酸化炭素除去のための電気化学デバイス
COを除去し室温(10~40℃)で動作するように構成されたプロトタイプの電気化学デバイス(1.27cm)10を、図9に概略的に示すように組み立てる。膜は、ギ酸(96%)またはギ酸カリウム(0.5M)のいずれかで平衡化されたアニオン交換膜から形成し、両方の電極(Pt、4mg/cm)で触媒層を使用した。ギ酸イオンの高伝導度(1×10-3S/cm以上)を可能にする高分子電解質膜および使用した市販の触媒によって、COをギ酸塩に還元し、ギ酸塩を高いファラデー効率(>20%)でCOガスに再酸化する。
【0122】
別の実施では、ポリ(イオン)液体の合成について記載された方法(Yuan,J.and M.Antonietti「Applications of Ionic Liquids in Polymer Science and Technology」D.Mecerreyes.Berlin,Heidelberg,Springer Berlin Heidelberg:47-67(2015))を使用したSaroj Sahuによる米国特許出願公開第2016/0064763号(2016年3月3日公開)「APPARATUS AND METHOD ASSOCIATED WITH REFORMER-LESS FUEL CELL」に記載された方法に従って、ポリ(1-ビニルイミダゾリウム)から膜を形成する。1モルのギ酸を、水(10g)中の1-ビニルイミダゾールの冷却した分散液に滴下し、一日間連続して撹拌する。次いで、過剰の水を蒸発させて、粘稠な暗イオン液体モノマーである1-ビニルイミダゾールホルメートを得る。モノマーを脱水ジエチルエーテルで繰り返し洗浄し、続いて60℃に加熱して痕跡量の溶媒を除去することにより精製する。モノマーは、開始剤として1モル%アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と、柔軟性を改善するための架橋剤として、膜の総重量を基準にした5重量%ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)とを備えた、フリーラジカル重合を用いて重合する。反応混合物を窒素ガスでバブリングし、キャスティングのために調製し、脱気し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))型にキャストする。
【0123】
形成された膜(厚さ870μm)は親水性であり、2.8×10-3S/cmの室温水和伝導率を有する。ギ酸塩膜のイオン伝導度は、5×10-4S cm-1の目標を満たしている。膜を薄膜(約50μm)にキャスティングすることにより、膜面積固有抵抗が目標値<10Ωcmに低減されることが期待される。
【0124】
エチレンカーボネートなどの非水性の不揮発性可塑剤、およびポリ(エチレンオキシド)またはポリ(エチレングリコール)などの低T架橋剤を添加することによって、ギ酸塩輸送を改善することが期待される。架橋剤の密度は、所望のフィルム厚さおよび弾力性を達成するように選択することができる。ポリマーのガラス転移温度は、より柔軟な骨格を使用してイオンの可動性を促進することによって調節することができる。
【0125】
電気化学デバイスは、2つの触媒ガス拡散電極、高分子電解質膜、および双極板を含む。ECRシステムは、集中型の屋内空気取り入れダクトと直列に配置されており、室温で動作して屋内の典型的な濃度(700~1400ppmのCO)で空気を浄化するように設計され、室温で1,000ppmのCOで動作する場合の目標CO除去流束(16mole/膜材料のm/時間)を有する。CO除去の最大速度は、CO還元反応の流束によって決定される。これは、PEM燃料電池の酸素還元反応データを低濃度および室温に投影することによって推定される(出典:Benziger、Jayら(2011)、AIChE Journal、57(9)、2505-2517)。
【0126】
電気化学デバイスは、300kJ/mol CO除去のエネルギー消費量で、室温で160L CO-2-1の膜流束を有する。2mol-m-2-1のCO除去流束が達成される。電気化学デバイスを1.5V未満で動作させることによって、300kJ mol-1 CO未満の比エネルギー消費が達成されることが期待される。比エネルギーは、他のCO還元触媒およびより効率的なイオン担体(1eCO分子)を使用することによってさらに低減され得る(<100kJ mol-1 CO)。
【0127】
CO除去のための電気化学デバイス(ECR)は、連続動作が可能でありつつ、過剰換気(CO除去エネルギー、約2.2MJ mol-1 CO)およびCO吸着剤(1MJ mol-1 CO)など他の除去方法と比較して良好である。
【0128】
屋内のCO濃度が上昇するとECRシステムに活性電位が印加され、屋内空気中に存在するCOを電気化学的にギ酸(HCOイオンに還元する。還元されたイオン種は、導電性の高い固体電解質(κ=2.8×10-3S cm-1)を通って外向きのカソードに輸送され、ここでギ酸塩は再酸化され、COが屋外空気に除去される。
【0129】
可逆性
このような電気化学デバイスにおいて、CO還元の生成物は、水素の発生と競合しなければならず、これは電解質および触媒材料の選択に応じて著しく異なる。CO/HCOOシステムは、非常に可逆的であることが従来実証されている(Riceら「Direct formic acid fuel cells」Journal of Power Sources、111(1)、83-89(2002))。予備実験は、Ptディスク電極を備えた、1-エチルイミダゾールに溶解した0.1Mギ酸で実施した。
【0130】
図10は、Pt電極電解質(エチルイミダゾール中の0.1Mギ酸)におけるギ酸酸化およびその後のCO還元のサイクリックボルタモグラム(10mV/s)を示し、0.5-1Vの全動的過電圧を示している。図11は、走査速度に対してプロットしたピーク酸化還元電流のプロットである。酸化ピークと還元ピークの比は、準可逆的反応運動を示す。
【0131】
図10に示すように、ギ酸酸化のピークは、0.6V対Ag|AgClで観察され、-0.6Vで観察されるカソード肩部がCO還元に対応すると予想される。ピーク電流の比は0.44であり、反応が部分的に可逆的であることが示唆される。不可逆性は、CO還元中間体の吸着によってPt電極が被毒することによると考えられる。PdPt100-x二元金属触媒(Ye,Y.ら「High Hydroxide Conductivity in Polymerized Ionic Liquid Block Copolymers」ACS Macro Letters 2(7):575-580(2013))、およびCOのギ酸への還元(約90%のファラデー効率)を促進するのに特に有効であることが知られているインジウム触媒を使用することによって、改善された可逆性が予想される。
【0132】
図12は、ギ酸塩伝導膜の電気化学的応答を市販のAFNアニオン交換膜(過スルホン化ポリベンズイミダゾール)と比較したナイキスト線図である。結果は、ギ酸塩伝導膜が従来の膜よりも良好に機能することを示している。ナイキストプロットの形状はまた、ギ酸塩伝導膜がより高い動的抵抗を有することを示唆している。
【0133】
予備的データは合理的な流束が達成できるという確信を与えているが、薄膜をキャスティングし可塑剤を添加することにより、膜の伝導性を上昇させることによって改善を行うことができ、また、ガラス転移温度を調整することにより、低い抵抗降下を有する大電流を可能にすることができると予想される。触媒の表面積を増加させ、電極アセンブリとの接触を改善することにより、動的過電圧がCO流束を制限しないようにすることができる。
【0134】
この結果は、空気中のCOを選択的に除去することにより、電気化学デバイスが、HVAC負荷の屋外再取り入れ換気部分を60%低減することができることを示唆している。
【0135】
ギ酸イオンによる二酸化炭素ポンピングのための電気化学デバイス
COポンピングのための電気化学セルは、以下のように製造される。ギ酸選択性膜は、市販のアニオン交換膜(例えばAstom AFN)を96%ギ酸で72時間イオン交換することによって調製される。このプロセス中、市販の膜内の可動イオンはギ酸塩基で置換される。この膜とPt触媒(Fuel Cell store、4mg cm-2)を用いて膜電極接合体を作製し、1.27cmの電気化学的活性面積を有するステンレススチールの電流コレクタを用いてセル内に組み立てる。電気化学デバイス10は、周囲の屋内空気(0.1%CO)および20mL/min-1の一定流量で流れる純COを用いて試験する。供給ガス中の二酸化炭素を、固定された電位(+1.5V)を印加することによって抽出し、それによってCOをギ酸塩に還元し、その後排気(例えば屋外)側でCOに酸化する。電流過渡現象は図13に示されており、装置が室温で動作していても高いCO除去率に相当する。
【0136】
排気側に位置するCOセンサの時間経過写真撮影を使用して、CO排気流の濃度およびCO供給源からの同時除去を実証した。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13