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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/02 20060101AFI20220907BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20220907BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H01Q1/02
H01Q1/42
H01Q21/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018053255
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019165409
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100206243
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貴士
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紘
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0017322(US,A1)
【文献】特表平11-510655(JP,A)
【文献】特開2009-246910(JP,A)
【文献】特開平04-154306(JP,A)
【文献】特開2017-152848(JP,A)
【文献】特開2003-078326(JP,A)
【文献】特開2001-127523(JP,A)
【文献】特開平11-289217(JP,A)
【文献】特開平07-283638(JP,A)
【文献】実公昭53-008985(JP,Y1)
【文献】実公昭49-016985(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 3/46
H01Q 21/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の電波を送信する複数の放射素子と、
前記複数の放射素子がある放射面を有するアレーアンテナと、
前記放射面と対向する方向にあるスキン材と、
前記アレーアンテナと前記スキン材との間にあり、複数の貫通穴を有するコア材と、
前記放射面とは反対側の面と対向する方向にあるアンテナ筐体と、
を備え、
隣接する前記貫通穴の中心間の距離が、前記所定周波数に対応する波長の2分の1以下であり、
前記複数の放射素子における隣接する放射素子間の距離は、隣接する前記貫通穴の中心間の距離より長い、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記コア材は、前記放射面に接触する
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記コア材がハニカム構造であり、
前記ハニカム構造におけるセルが前記貫通穴に該当する
請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記スキン材の一部または全体の厚さが前記波長の20分の1以下である
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記スキン材と前記コア材とを接着する接着層
をさらに備える請求項1ないし4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナ筐体および前記スキン材により囲われた空間内にある熱源
をさらに備える請求項1ないし5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記熱源が、フィルムヒータであり、前記反対側の面と接触している
請求項6に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体材料で作られたアレーアンテナの放射素子側の表面には、保護層として、樹脂発泡体が接着されることがある。また、当該樹脂発泡体により、アンテナ装置の薄型化、アンテナ利得の低下の抑制、機械強度の向上といった利点が得られる。
【0003】
一方、積雪地帯では、アンテナ装置のレドーム表面に付着した雪を融かすためにレドームを加温することが行われている。しかし、樹脂発泡体が接着されたアンテナ装置では、レドームを加温しても、樹脂発泡体の断熱効果により、十分な融雪効果が得られないことが課題となっている。そのため、加温性を向上させる工夫が検討されているが、当該工夫によりアンテナ特性が失われてしまうことも多々ある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-48107号公報
【文献】特開2017-152848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、加温性に適し、かつ、サイドローブレベルが抑制されたアンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としてのアンテナ装置は、複数の放射素子と、アレーアンテナと、スキン材と、コア材と、アンテナ筐体と、を備える。前記複数の放射素子は、所定周波数の電波を送信する。前記アレーアンテナは、前記複数の放射素子が配置された放射面を有する。前記スキン材は、前記放射面と対向する方向に配置されている。前記コア材は、前記アレーアンテナと前記スキン材との間に配置され、複数の貫通穴を有する。前記アンテナ筐体は、前記放射面の裏面と対向する方向に配置されている。隣接する前記貫通穴の中心間の距離は、前記所定周波数に対応する波長の2分の1以下である
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】第1の実施形態のアンテナ装置の分解斜視図。
図1B】第1の実施形態のアンテナ装置の断面図。
図2A】第1の実施形態のアレーアンテナ単体での放射指向性を示す図。
図2B】間隔Pが1波長を超えている場合に生じるアンテナ開口上の振幅変動による放射指向性への寄与を示す図。
図2C】間隔Pが1波長を超えている場合の放射指向性を示す図。
図2D】間隔Pが略1波長の場合に生じるアンテナ開口上の振幅変動による放射指向性への寄与を示す図。
図2E】間隔Pが略1波長の場合の放射指向性を示す図。
図2F】間隔Pが2分の1波長以下の場合に生じるアンテナ開口上の振幅変動による放射指向性への寄与を示す図。
図2G】間隔Pが2分の1波長以下の場合の放射指向性を示す図。
図3】第2の実施形態のアンテナ装置について説明する図。
図4】ハニカム材の一例を示す平面図。
図5A】第3の実施形態のアンテナ装置の分解斜視図。
図5B】第3の実施形態のアンテナ装置の断面図。
図6A】第4の実施形態のアンテナ装置の分解斜視図。
図6B】第4の実施形態のアンテナ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。図1Aは、第1の実施形態のアンテナ装置の分解斜視図である。図1Bは、第1の実施形態のアンテナ装置の断面図である。図1Bの切断線は、図1AのB-B線である。第1の実施形態に係るアンテナ装置100は、アレーアンテナ101と、コア材102と、スキン材103と、アンテナ筐体104と、熱源105と、を備える。
【0010】
なお、図1Aおよび1Bに示されたアンテナ装置100は、電波を上に放射するように配置されている。ゆえに、本説明において、アンテナ装置100が電波を放射する方向を「上」として説明する。
【0011】
第1の実施形態のアンテナ装置100は、内部の熱源105を用いて、アンテナ装置100の内部を加温する。例えば、積雪地帯においてアンテナ装置100を屋外で使用する場合、アンテナ装置100の表面に雪が付着する可能性がある。雪が付着したままでは、アンテナ特性が劣化する恐れがあるためである。また、アンテナ装置100は、アンテナ特性を考慮しつつ、当該加温の効率性が向上するように構成されている。
【0012】
アレーアンテナ101は、電波の放射面106(図1Aおよび1Bでは上面)に、複数の放射素子107を有する。放射素子107は、所定周波数の電波を送信する。なお、放射素子107は、送信だけでなく、受信を行ってもよい。言い換えると、電波が放射される放射素子107が配置された面が放射面である。放射素子107は、放射面106に、格子状に配列される。なお、放射素子107の数は、アンテナ装置100の仕様に応じて適宜に定めてよい。
【0013】
アレーアンテナ101は、例えば、誘電体基板に形成される。誘電体基板としては、樹脂基板、樹脂発泡体、またはフィルム基板などが用いられる。樹脂基板としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)などが用いられる。フィルム基板としては、液晶ポリマーなどが用いられる。
【0014】
また、図1に示された放射素子107はパッチアンテナであるが、放射素子107はアンテナ装置100の仕様に応じて適宜に定めてよい。放射素子107として、例えば、スロットアンテナ、スロットループアンテナなどが用いられてもよい。
【0015】
コア材102とスキン材103は、アレーアンテナ101の放射面106側のほうを、外部環境から保護する。つまり、コア材102とスキン材103は、レドームの役割を担う。
【0016】
コア材102は、アレーアンテナ101の放射面106と対向する方向に配置される。言い換えると、コア材102は、アレーアンテナ101よりも電波の放射側に配置される。ゆえに、アレーアンテナ101からの電波がコア材を通過する。そのため、アンテナ特性への悪影響を避けるため、コア材102としては、樹脂発泡体といった比誘電率が1に近いものが用いられる。
【0017】
また、コア材102は、複数の貫通穴108を有する。隣接する二つの貫通穴108の距離が、アンテナ装置100が送信する電波の周波数に対応する波長(以下、単に波長と呼ぶ)の2分の1以下になるように、各貫通穴108は配置される。隣接する二つの貫通穴108の距離は、二つの貫通穴108の中心間の距離とし、図1Aに示すように間隔Pと記載する。当該配置であれば、貫通穴108の数は、アンテナ装置100の仕様に応じて適宜に定めてよい。また、貫通穴108の形状は、円だけではなく、正多角形でもよい。貫通穴108の詳細については、後述する。
【0018】
スキン材103は、コア材102から見て、アレーアンテナ101とは反対側に配置される。言い換えると、スキン材103は、コア材102よりも電波の放射側に配置される。
【0019】
スキン材103も、アレーアンテナ101の放射面106と対向する方向に配置される。また、スキン材103は、コア材102から見て、アレーアンテナ101とは反対側に配置される。つまり、コア材102は、アレーアンテナ101とスキン材103との間に配置される。
【0020】
スキン材103としては、耐候性が良好、かつ電波の減衰の少ないPTFEが用いられることが考えられる。機械強度に優れるFRP(繊維強化プラスチック)などが用いられてもよい。
【0021】
スキン材103は,反射損失、誘電体損失といった損失を低減するために、アンテナ装置100が送信する電波の周波数に対応する波長に対して、十分に薄いことが好ましい。また、スキン材103を薄型化した場合は、機械強度が不足することがある。そこで、アレーアンテナ101と、アレーアンテナ101よりも電波放射側にある構成要素と、を接触させて機械強度を向上してもよい。つまり、スキン材103、コア材102、およびアレーアンテナ101が互いに接触するように配置することにより、機械強度を向上してもよい。また、スキン材103、コア材102、およびアレーアンテナ101のそれぞれの間において非導電体層を配置した場合は、非導電体層も接触させることにより、機械強度を向上してもよい。
【0022】
アンテナ筐体104は、アレーアンテナ101から見て、コア材102とは反対側に配置される。言い換えると、アンテナ筐体104は、放射面の裏面と対向する方向に配置される。また、アンテナ筐体104は、ねじ止め、接着などの方法によって、スキン材103と結合される。これにより、スキン材103およびアンテナ筐体104により囲われた空間ができる。そして、図1Bに示すように、アレーアンテナ101、コア材102、および熱源105は、当該空間内に含まれる。以降、当該空間を内部空間と記載する。
【0023】
熱源105は、内部空間内に存在し、内部空間内の空気を加温する。熱源105は、電波の妨害とならないような位置に配置すればよい。例えば、図1Bに示したように、熱源105は、アレーアンテナ101よりも下側、かつ、アンテナ筐体104よりも上側に配置してもよい。なお、図1の例において、熱源105はアンテナ筐体104と接しているが、アレーアンテナ101と接してもよく、アンテナ筐体104とアレーアンテナ101の両者と接していてもよい。また、アンテナ筐体104や、アレーアンテナ101と接していなくてもよい。
【0024】
内部空間に配置された熱源105から発せられた熱が内部空間内の空気を加温することにより、間接的にスキン材103が加温される。これにより、融雪が可能となる。しかし、コア材102はスキン材103への熱伝導を妨げてしまう。特に、コア材102として樹脂発泡体が使用された場合には、コア材102が断熱材として働いてしまうため、スキン材103を十分に加温できない恐れがある。そこで、コア材102が複数の貫通穴108を有しており、貫通穴108により加温された空気がスキン材103に届くようにしている。これにより、スキン材103の十分な加温を可能としている。
【0025】
しかし、貫通穴108には空気が充填されるため、貫通穴108およびコア材102の比誘電率は異なる。このため、スキン材103の表面におけるアンテナ開口分布に小さな振幅変動が生じる。振幅分布は貫通穴108の間隔に対応して生じるため、貫通穴108の間隔によっては、アンテナのサイドローブレベルが上昇する場合があり、アンテナ装置100に対し低いサイドローブレベルが要求される場合において問題となる。
【0026】
図2は、貫通穴108により、アンテナ開口分布に振幅変動が生じた場合の放射指向性に対する影響について説明する図である。アレーアンテナ101の放射面106に対する垂直線からの離角に対する振幅値が示されている。振幅変動が、隣接する二つの貫通穴108の中心の間隔Pにより変化することを説明する。
【0027】
なお、図2では、アレーアンテナ101の開口部の縦および横の長さは、共に波長の25倍(25波長×25波長)と想定した。また、図3に示された振幅値は、アレーファクタおよび素子指向性から簡易的に計算した結果である。また、アレーアンテナ101の主ビームが放射面106に対して垂直方向に向かうように、放射素子107の同位相励振が調整されていることを想定した。
【0028】
図2Aは、第1の実施形態のアレーアンテナ単体での放射指向性を示す図である。つまり、放射側にコア材102などが存在しないときの放射指向性を示す。ゆえに、コア材102の影響はなく、突出したサイドローブは存在しない。
【0029】
図2Bは、間隔Pが1波長を超えている場合に生じるアンテナ開口上の振幅変動による放射指向性への寄与を示す図である。振幅変動の周期が1波長を超えている場合、つまり、コア材102が存在し、間隔Pが1波長を超えている場合では、図2Aに示された放射指向性が、図2Bに示すような影響を受ける。図2Bでは、離角が略35度の方向において、グレーティングローブが示されている。このように、間隔Pが1波長以上であると、グレーティングローブが発生する。
【0030】
図2Cは、間隔Pが1波長を超えている場合の放射指向性を示す図である。つまり、間隔Pが1波長を超えている場合に、図2Aに示された放射指向性が、図2Bに示すような影響を受けた後の放射指向性が示されている。図2Bに示したグレーティングローブの影響を受けたことにより、離角が略35度の方向のサイドローブが、周囲のサイドローブよりも上昇している。このような突出したサイドローブにより、アンテナ装置100に要求される仕様が満たされない場合、当該サイドローブを抑制する必要がある。
【0031】
図2Dは、間隔Pが略1波長の場合に生じるアンテナ開口上の振幅変動による放射指向性への寄与を示す図である。振幅変動の周期が略1波長の場合、離角が略90度の方向にグレーティングローブが発生する。
【0032】
図2Eは、間隔Pが略1波長の場合の放射指向性を示す図である。略90度の方向のグレーティングローブの影響を受けたことにより、離角が略90度の方向のサイドローブが周囲のサイドローブよりも上昇している。アンテナ装置100に対し、広角方向までサイドローブが厳しく制限された場合は、当該サイドローブを抑制する必要がある。
【0033】
図2Fは、間隔Pが2分の1波長以下の場合に生じるアンテナ開口上の振幅変動による放射指向性への寄与を示す図である。間隔Pが2分の1波長以下の場合、グレーティングローブは存在しない。また、離角が大きくなるにつれて、サイドローブレベルは単調減少する。
【0034】
図2Gは、間隔Pが2分の1波長以下の場合の放射指向性を示す図である。グレーティングローブが生じていないため、広角方向においてもサイドローブの上昇は生じていない。
【0035】
したがって、本実施形態のように、隣接する貫通穴108の中心間の距離が、電波の所定周波数に対応する波長の2分の1以下であるほうが、波長の2分の1を超えている場合よりも振幅変動を抑えることができる。なお、全ての貫通穴108が、隣接する貫通穴108と、当該波長の2分の1以下の距離以内に存在しなければ、振幅変動を抑える効果が得られないわけではない。例えば、数千個の貫通穴108がある場合に、間隔Pが2分の1波長よりも長い箇所が数カ所ほどあったとしても、振幅変動を抑える効果は得られる。ゆえに、隣接する貫通穴108と、当該波長の2分の1以下の距離以内に存在するという条件を、全ての貫通穴108が満たしていなくともよい。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、コア材102に設けられた貫通穴108により、熱源105からスキン材103への熱伝導性が高められ、スキン材103の表面に付着する雪の融雪が可能になる。さらに、隣接する貫通穴108の間隔を2分の1波長以下とすることにより、貫通穴108の影響でアンテナ開口分布に振幅変動が生じた場合においても、広角方向のサイドローブ上昇を抑制することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。第2の実施形態のアンテナ装置100は、コア材102がハニカム構造である点が第1の実施形態と異なる。本説明では、ハニカム構造であるコア材102を、ハニカム材109と記載する。これまでの実施形態と同様の点は説明を省略する。
【0038】
図4は、ハニカム材の一例を示す平面図である。ハニカム構造とは、正六角柱などの立体図形を隙間なく並べたものである。図4では、六角柱が隙間なく並べられた構造であるハニカム材109が示されている。但し、当該立体図形は正多角柱であればよい。また、正多角柱は筒状(中空)である。つまり、ハニカム構造において、中空の正多角柱が貫通穴108に該当する。また、ハニカム構造における中空部分はセルと称されるため、ハニカム構造におけるセルが貫通穴108に該当する。
【0039】
ハニカム材109は、特殊なコア材102であり、その配置は、コア材102と変わらない。ハニカム材109の内壁部(つまり、セルを区切るリブ)としては、電波の伝送を妨げない非導電性物質が用いられる。例えば、アラミド、ポリプロピレンなどが用いられてもよい。
【0040】
ハニカム材109は、非導電性物質を折り曲げて接着して製造することができる。そのため、第2の実施形態では、アンテナ装置100の製造工程において、貫通穴108を形成する工程が不要となる。したがって、第1の実施形態に比べて、低コスト化が可能である。また、ハニカム材109は、第1の実施形態のコア材102に比べて、空気が占める割合が高く、軽量化が可能となる。
【0041】
貫通穴108の間隔Pも、第1の実施形態と同様、2分の1波長以下とする。なお、ハニカム構造の場合、貫通穴108の間隔は、セルの周期とも称される。ゆえに、ハニカム構造セルの周期が2分の1波長以下であれば、第1の実施形態と同様、アンテナ開口分布に振幅変動が生じた場合においても、広角方向におけるサイドローブの上昇を抑制することができる。
【0042】
ハニカム材109は空気の体積占有率が高いため、その比誘電率が1に近い値となる。そのため、ハニカム材109では電波の反射が生じにくく、電波の反射は主にその先のスキン材103で生じる。ゆえに、スキン材103の厚さを調整することにより、スキン材103でも、電波の反射を抑制した方が好ましい。一般的に、スキン材の厚さが20分の1波長以下であると、電波の反射が起こりにくい。ゆえに、スキン材103の厚さを20分の1波長程度以下とすることにより、スキン材103で生じる反射を抑制してもよい。なお、第1の実施形態においても、電波の反射の抑制効果は得られるため、スキン材103の厚さを20分の1波長程度以下に調整してもよい。
【0043】
なお、スキン材103の厚さは均等ではなくともよい。ゆえに、スキン材103の一部分の厚さを20分の1波長以下にし、当該部分における電波の反射を防いでもよい。例えば、アレーアンテナ101からの電波は、アレーアンテナ101からスキン材103へ投影された正射影の領域に当たりやすい。したがって、当該正射影の領域における厚さを、20分の1波長以下にしてもよい。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、セルの周期が2分の1波長以下のハニカム構造のコア材を用いることにより、アンテナ開口分布に振幅変動が生じた場合においても、広角方向のサイドローブ上昇を抑制することができる。さらに、第1の実施形態よりも、低コスト化、軽量化を達成することができる。
【0045】
また、スキン材103の必要とされる部分または全体の厚さを20分の1波長以下とすることにより、レドームによる反射を抑制できる。
【0046】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。図5Aは、第3の実施形態のアンテナ装置の分解斜視図である。図5Bは、第3の実施形態のアンテナ装置の断面図である。図5Bの切断線は、図5AのB-B線である。第3の実施形態のアンテナ装置100は、接着層110をさらに備える点がこれまでの実施形態と異なる。図5では、第2の実施形態に接着層110が加えられているが、第1の実施形態に接着層110が加えられてもよい。これまでの実施形態と同様の点は説明を省略する。
【0047】
第2の実施形態にて述べたように、反射損失低減の観点から、スキン材103の厚さは、20分の1波長程度以下に調整され得る。その場合、アンテナ装置100が送信する電波の周波数によっては、レドームとしての剛性が低下してしまい、屋外使用時に問題が生じる恐れがある。そこで、第3の実施形態では、コア材102またはハニカム材109と、スキン材103と、の間に接着層110を設ける。これにより、コア材102またはハニカム材109と、スキン材103とが接着されて、レドームとしての剛性が向上される。
【0048】
なお、スキン材103の厚さが調整されていなくとも、レドームとしての剛性を向上させるために、接着層110を設けてもよい。また、コア材102またはハニカム材109と、アレーアンテナ101との間に、接着層をさらに設けてもよい。これにより、剛性を更に向上することも可能である。
【0049】
なお、スキン材103と、コア材102またはハニカム材109と、アレーアンテナ101とがそれぞれ接着された場合は、図5Bに示すように、アレーアンテナ101が一番下にあるため、アレーアンテナ101の重量により、スキン材103が変形する恐れがある。ゆえに、内部空間内に、アレーアンテナ101を支えるための、アンテナ筐体104に固定された台座などを設けてもよい。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、接着層を設けることにより、レドームとしての剛性を向上することができる。ゆえに、送信する電波の周波数が高い場合でも、反射損失を低減しつつ、レドームの剛性を十分に維持することができ、アンテナ装置100の屋外での使用が可能となる。
【0051】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態のアンテナ装置について説明する図である。図6Aは、第4の実施形態のアンテナ装置の分解斜視図である。図6Bは、第4の実施形態のアンテナ装置の断面図である。図6Bの切断線は、図6AのB-B線である。第4の実施形態のアンテナ装置100は、熱源105としてフィルムヒータ111が用いられている点が、これまでの実施形態とは異なる。図6では、第3の実施形態の熱源105がフィルムヒータ111に変更されているが、第1および第2の実施形態においてフィルムヒータ111が用いられてもよい。これまでの実施形態と同様の点は説明を省略する。
【0052】
これまでの実施形態の熱源105と同様、フィルムヒータ111は内部空間内に存在し、電波の妨害とならないような位置に配置されればよい。しかし、フィルムヒータ111は、その形状および熱伝導性の観点から、図5Bに示すように、アレーアンテナ101の放射面106の裏面に接着されることが想定される。
【0053】
フィルムヒータ111とアレーアンテナ101が接触していれば、フィルムヒータ111から発せられた熱により、アレーアンテナ101が直接加温される。加温されたアレーアンテナ101により、貫通穴108に充填された空気が加温され、追ってスキン材103が加温される。一方、フィルムヒータ111とアレーアンテナ101が接触していない場合、内部空間内全体の空気を加温して、スキン材103が加温される。ゆえに、加温の効率が低い。したがって、アレーアンテナ101の放射面106の裏面と接触するフィルムヒータ111を用いることにより、熱伝導性をこれまでの実施形態よりも向上することができる。
【0054】
なお、第3の実施形態にて述べたように、内部空間内に、アレーアンテナ101を支える台座などを設けた場合は、接着ではなく、当該台座とアレーアンテナ101との間にフィルムヒータ111を設けて、フィルムヒータ111を固定してもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、熱源105としてフィルムヒータ111が用いられることにより、アレーアンテナ101に対する加温性を向上する。これにより、スキン材103への加温性が、これまでの実施形態よりも向上する。したがって、スキン材103の表面の融雪性能が、これまでの実施形態よりも高いアンテナ装置を提供することができる。
【0056】
上記に、本発明の一実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
100 アンテナ装置
101 アレーアンテナ
102 コア材
103 スキン材
104 アンテナ筐体
105 熱源
106 放射面
107 放射素子
108 貫通穴
109 ハニカム材
110 接着層
111 フィルムヒータ
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B