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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】廃棄物焼却炉
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/14 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
F23G5/14 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018063411
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019174059
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】横路 尚人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 航哉
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】南 亮輔
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213652(JP,A)
【文献】特開平04-214109(JP,A)
【文献】特開平05-203132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 - 5/50
F23L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物をほぼ水平方向に搬送しながら焼却する焼却装置と、
前記焼却装置が配置された燃焼室に接続され、燃焼室で発生した燃焼ガス中の未燃成分を再燃焼させる再燃焼室であって、前記燃焼室の下流部から、上方、かつ前記燃焼室の上流側に向けて傾斜した方向に延設されている再燃焼室と、
前記再燃焼室の下流部から上流部へ向けて、前記再燃焼室の側壁に沿った方向に、前記再燃焼室における燃焼ガスの流速分布の偏りを調整するガスである流速調整ガスを噴射する噴射部と、
を備える廃棄物焼却炉。
【請求項2】
請求項1に記載の廃棄物焼却炉において、前記再燃焼室の最下流部から鉛直方向上方へ延びる後壁に前記噴射部が設けられている
廃棄物焼却炉。
【請求項3】
請求項2に記載の廃棄物焼却炉において、前記噴射部が、前記再燃焼室の下側の側壁に沿って流速調整ガスを噴射可能に構成されている
廃棄物焼却炉。
【請求項4】
請求項3に記載の廃棄物焼却炉において、前記後壁の、前記再燃焼室における燃焼ガス流の平均流速よりも低い領域である低速領域に対応する下側部分のみに前記噴射部が設けられている廃棄物焼却炉。
【請求項5】
廃棄物をほぼ水平方向に搬送しながら焼却する焼却装置と、
前記焼却装置が配置された燃焼室に接続され、燃焼室で発生した燃焼ガス中の未燃成分を再燃焼させる再燃焼室であって、前記燃焼室の下流部から、上方、かつ前記燃焼室の上流側に向けて傾斜した方向に延設されている再燃焼室と、
前記再燃焼室の下流部から上流部へ向けて、前記再燃焼室の側壁に沿った方向に流速調整ガスを噴射する噴射部と、
を備え、
前記再燃焼室の最下流部から鉛直方向上方へ延びる後壁に前記噴射部が設けられており、
前記噴射部が、前記再燃焼室の下側の側壁に沿って流速調整ガスを噴射可能に構成されており、
複数の前記噴射部が前記後壁の高さ方向に離間して設けられており、
前記再燃焼室における燃焼ガス流の流速分布を測定する流速分布測定装置と、
前記流速分布測定装置の測定結果に基づいて、流速調整ガスを噴射する噴射部を選択する制御装置と、
をさらに備える廃棄物焼却炉。
【請求項6】
廃棄物をほぼ水平方向に搬送しながら焼却する焼却装置と、
前記焼却装置が配置された燃焼室に接続され、燃焼室で発生した燃焼ガス中の未燃成分を再燃焼させる再燃焼室であって、前記燃焼室の下流部から、上方、かつ前記燃焼室の上流側に向けて傾斜した方向に延設されている再燃焼室と、
前記再燃焼室の下流部から上流部へ向けて、前記再燃焼室の側壁に沿った方向に流速調整ガスを噴射する噴射部と、
を備え、
前記再燃焼室の最下流部から鉛直方向上方へ延びる後壁に前記噴射部が設けられており、
前記噴射部が、前記再燃焼室の下側の側壁に沿って流速調整ガスを噴射可能に構成されており、
前記再燃焼室の上流側の前壁に設けられて、下流側へ向けて、前記再燃焼室の上側の側壁に沿って流速補助調整ガスを噴射する補助噴射部をさらに備える廃棄物焼却炉。
【請求項7】
請求項6に記載の廃棄物焼却炉において、前記焼却装置の廃棄物焼却量に応じて流速補助調整ガスの噴射量を調整する調整装置をさらに備える廃棄物焼却炉。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の廃棄物焼却炉において、前記噴射部および/または補助噴射部がノズルとして設けられている廃棄物焼却炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物などの廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物焼却炉として、複数並べた火格子(ストーカ)によって廃棄物を搬送しながら焼却する焼却装置を備えるストーカ式焼却炉が一般的に採用されている。また、ストーカ式焼却炉として、廃棄物の焼却過程において発生する未燃成分を、廃棄物の搬送方向に沿って燃焼室の下流側まで流してから、上方に向けて偏向させる、いわゆる並行流方式の焼却炉が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ストーカ式焼却炉では、一般的に、未燃成分を完全に燃焼させてNOxやダイオキシン類などの有害物質を低減するために、二次燃焼用の空気が燃焼室に供給される。並行流方式の焼却炉によれば、未燃成分を含む燃焼ガスの流れを、その流路の構造によって強制的に偏向させることによって、燃焼ガスと二次燃焼用空気との撹拌,混合が促進され、より少量の二次燃焼用空気の投入で未燃成分を燃焼させることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-090221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、並行流方式の焼却炉では、燃焼ガス流を偏向させることにより、この燃焼ガス流が流入する再燃焼室において、偏向部分に対して外側となる領域の流速が増大した偏った流速分布が生じる。その結果、再燃焼室において、燃焼ガス中の未燃成分を燃焼させるのに十分な滞留時間が確保できないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するために、再燃焼室における燃焼ガス流量の偏りを解消して、十分な滞留時間を確保することにより、燃焼ガス中の未燃成分を確実に燃焼させることができる廃棄物焼却炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明に係る廃棄物焼却炉は、廃棄物をほぼ水平方向に搬送しながら焼却する焼却装置と、前記焼却装置が配置された燃焼室に接続され、燃焼室で発生した燃焼ガス中の未燃成分を再燃焼させる再燃焼室であって、燃焼室の下流部から、上方、かつ前記燃焼室の上流側に向けて傾斜した方向に延設されている再燃焼室と、前記再燃焼室の下流部から上流部へ向けて、前記再燃焼室の側壁に沿った方向に流速調整ガスを噴射する噴射部とを備える。なお、本明細書における「流速調整ガス」とは、再燃焼室における燃焼ガスの流速分布の偏りを調整する目的で再燃焼室内へ噴射されるガスを意味する。
【0008】
この構成によれば、燃焼ガスを強制的に偏向させる並行流式の焼却装置において、噴射部から流速調整用のガスを噴射することにより、再燃焼室における燃焼ガスの流速分布の偏りを調整することができる。これにより、燃焼ガスの再燃焼室での滞留時間を十分に確保することができ、燃焼ガス中の未燃成分を確実に燃焼させることが可能になる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記再燃焼室の最下流部から鉛直方向上方へ延びる後壁に噴射部が設けられていてもよい。この構成によれば、再燃焼室の最下流部から流速調整ガスを噴射するので、効率よく燃焼ガスの滞留時間を確保することができる。また、従来の廃棄物焼却炉の構造を大きく変更することなく噴射部を設けることができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記噴射部が、前記再燃焼室の下側の側壁に沿って流速調整ガスを噴射可能に構成されていてもよい。この構成によれば、流速が低下する下側の領域に流速調整ガスを噴射することにより、再燃焼室内で旋回流を生じさせることができる。したがって、偏向した燃焼ガスの流れを利用することによって流速調整ガスの噴射量を抑制しながら、効果的に燃焼ガスの滞留時間を確保することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記後壁の、前記再燃焼室における燃焼ガス流の平均流速よりも低い領域である低速領域に対応する下側部分のみに噴射部が設けられていてもよい。再燃焼室における低速領域の範囲が一定で、想定可能である場合には、この構成により、簡易な構造で効果的に燃焼ガスの滞留時間を確保することができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、複数の前記噴射部が前記後壁の高さ方向に離間して設けられており、前記再燃焼室における燃焼ガス流の流速分布を測定する流速分布測定装置と、前記流速分布測定装置の測定結果に基づいて、流速調整ガスを噴射する噴射部を選択する制御装置とをさらに備えていてもよい。この構成によれば、再燃焼室内の流速分布に応じた最適な噴射を行うことが可能になり、必要十分なガス噴射量で効果的に燃焼ガスの滞留時間を確保することができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記再燃焼室の上流側の前壁に設けられて、下流側へ向けて、前記再燃焼室の上側の側壁に沿って流速補助調整ガスを噴射する補助噴射部をさらに備えていてもよい。この構成によれば、流速調整ガスが噴射されない領域である再燃焼室の上側に、流速調整ガスと逆向きの流速補助調整ガスを噴射することにより、再燃焼室における旋回流の状態を制御することが容易となる。これにより、効率的に所望の燃焼ガスの滞留時間を確保することが可能となる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記焼却装置の廃棄物焼却量に応じて流速補助調整ガスの噴射量を調整する調整装置をさらに備えていてもよい。この構成によれば、廃棄物処理負荷に応じて流速補助調整ガスの噴射量を調整することにより、必要十分なガス量で所望の旋回流を維持することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記噴射部および/または補助噴射部がノズルとして設けられていてもよい。この構成によれば、噴射される各ガスの指向性が高まるので、より効率的に燃焼ガス中の未燃成分を燃焼させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る廃棄物焼却炉によれば、再燃焼室における燃焼ガス流量の偏りを解消して、十分な滞留時間を確保することにより、燃焼ガス中の未燃成分を確実に燃焼させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る廃棄物焼却炉を示す側面図である。
図2図1の廃棄物焼却炉の概略構成および作用を模式的に示す側面図である。
図3図1の廃棄物焼却炉の噴射ノズルの配置態様の例を示す正面図である。
図4図1の廃棄物焼却炉の噴射ノズルの配置態様の他の例を示す正面図である。
図5図1の廃棄物焼却炉の変形例の概略構成を示す側面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る廃棄物焼却炉を示す側面図である。
図7図6の廃棄物焼却炉の噴射ノズルの配置態様の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1に、本発明の第1実施形態に係る廃棄物焼却炉1を示す。廃棄物焼却炉1では、投入口3から投入された焼却対象の廃棄物Wが、燃焼室5に設置された焼却装置7によって焼却されるとともに、廃棄物Wの焼却の際に焼却装置7で発生した燃焼ガスBGに含まれる未燃成分が、燃焼室5の下流側に接続された再燃焼室9において再燃焼される。再燃焼室9で燃焼された高温の燃焼ガスは、再燃焼室9のさらに下流側に接続されたボイラのような加熱装置(図示せず)の熱源として利用される。焼却装置7は、廃棄物Wをほぼ水平方向(同図では左側から右側へ向かう方向)に搬送しながら焼却する。焼却装置7で廃棄物Wを焼却して生じた灰は、排出シュート11から排出される。
【0020】
なお、本明細書において、廃棄物Wの搬送方向としての「ほぼ水平方向」には、水平方向のみならず、水平方向成分を含む方向も含まれる。したがって、例えば、水平方向から鉛直方向に傾斜した搬送方向も上記「ほぼ水平方向」に含まれる。また、後述するように焼却装置7が複数配列されたストーカからなるような場合に、隣接するストーカ間において廃棄物Wが鉛直下方に移動する箇所が存在する場合であっても、焼却装置7全体として(つまり焼却装置7の上流端から下流端にかけて)廃棄物Wの搬送方向が水平方向成分を含む方向であれば、「ほぼ水平方向」に含まれる。
【0021】
具体的には、焼却装置7は、廃棄物Wの搬送方向に沿って複数の火格子(ストーカ)を並べて配置したストーカ式焼却装置として構成されている。焼却装置7は、上流側から順に、乾燥ブロック7a、燃焼ブロック7b、および後燃焼ブロック7cの3つのブロックに分けて構成されている。乾燥ブロック7aにおいて投入口3から投入された廃棄物Wを乾燥し、燃焼ブロック7bにおいて乾燥された廃棄物Wを燃焼し、後燃焼ブロック7cにおいて、燃焼ブロック7bで未燃焼となった廃棄物Wの燃焼残部を燃焼する。焼却装置7の各ブロックには、下方から一次空気A1が供給される。
【0022】
このような焼却装置7が設置された燃焼室5の、焼却装置7による搬送方向の下流端部に再燃焼室9が接続されているので、燃焼室5で発生した未燃成分を含む燃焼ガスBGは、燃焼室5内において廃棄物Wの搬送方向にほぼ並行して流れることになる。焼却炉1はこのような構造を有する、いわゆる並行式焼却炉として構成されている。
【0023】
燃焼室5の上流側の上部は、上方に膨出する上壁13によって覆われている。図示の例では、上壁13は、下流側に向かうに従って上方に傾斜している。燃焼室5の下流部、すなわち後燃焼ブロック7cが配置された部分の上部に、再燃焼室9が接続されている。再燃焼室9は、燃焼室5の下流部から、上方、かつ前記燃焼室5の上流側に向けて傾斜した方向に延設されている。燃焼室5における、上壁13と、再燃焼室9の下側の側壁25との間の中間部分、すなわち燃焼ブロック7bのほぼ上方には、上壁13から下方に凹んで再燃焼室9の下側の側壁25に連なる中間壁15が設けられている。再燃焼室9の下流端からほぼ鉛直方向上方に向けて、再燃焼室9で燃焼された高温の排ガスEGを加熱装置に送る排気通路17が延びている。
【0024】
なお、燃焼室5の具体的構成は図示の例に限定されない。例えば、上壁13は、図示例の態様に限らず、水平方向に延びていてもよく、下流側に向かうに従って下方に傾斜していてもよい。また、中間壁15は設けられていなくともよい。
【0025】
燃焼室5の上壁13および中間壁15には、燃焼室5内における燃焼ガスBGに混合させる二次空気A2を噴射する二次空気噴射ノズル19が設けられている。
【0026】
本実施形態の廃棄物焼却炉1には、再燃焼室9の下流部から上流部へ向けて、再燃焼室9の側壁に沿った方向に流速調整ガスAGを噴射する噴射部として噴射ノズル21が設けられている。
【0027】
より詳細には、再燃焼室9の最下流部から鉛直方向上方へ延びる後壁23に噴射ノズル21が設けられている。図示の例では、再燃焼室9の後壁23は、排気通路17における燃焼ガスBGの流れに対向するほぼ垂直な壁の上流側端部によって形成されている。
【0028】
噴射ノズル21は、再燃焼室9の下側の側壁25に沿って流速調整ガスAGを噴射可能に構成されている。図示の例では、後壁23における下側の所定の範囲、例えばほぼ下側半分の領域に噴射ノズル21が設けられている。各噴射ノズル21は、再燃焼室9の下側の側壁25の壁面に平行な方向に向けられている。
【0029】
並行流型の廃棄物焼却炉1では、図2に示すように、燃焼室5で発生した燃焼ガスBG流は、再燃焼室9に流入する際、90°以上の角度で大きく偏向させられる。この偏向によって燃焼ガスBGと二次空気A2との混合が促進される。もっとも、この偏向によって、再燃焼室9内の高さ方向(再燃焼室9の下側の側壁25の壁面に垂直な方向)H1において流速分布の偏りが生じる。すなわち、偏向部分において外側となる、再燃焼室9の上側の領域の流速が増大した偏った流速分布が生じる(同図の状態A)。この場合、再燃焼室9の上側の領域を通過する燃焼ガスBGについては、十分な滞留時間が得られない。そこで、本実施形態では、再燃焼室9において、燃焼ガスBGの流速が低下する下側の領域に、燃焼ガスBGの流れ方向と逆向きの流速調整ガスAGを噴射して、上側領域の燃焼ガスBGを巻き込んだ旋回流Sが生じさせ、上側領域を通過する燃焼ガスBGの流速を低下させる(同図の状態B)。これによって、再燃焼室9の横断面内での燃焼ガスBGの流速分布の偏りを抑制して、燃焼ガスBGの再燃焼室9内での滞留時間を十分に確保することが可能になる。噴射ノズル21から噴射する流量調整ガスAGの流速は、再燃焼室9における燃焼ガスBGの平均流速以下とする。流量調整ガスAGの流速の制御は、例えば、噴射ノズル21から噴射する流量調整ガスAGの流量を制御することにより行う。
【0030】
したがって、焼却する廃棄物Wの種類および量が所定の範囲にあり、再燃焼室9において流量調整ガスAGを噴射するべき所定の低速領域(例えば、平均流速以下の領域)を概ね特定できる場合には、後壁23の、再燃焼室9における低速領域に対応する下側部分のみに噴射ノズル21を設けることができる。
【0031】
本実施形態では、図3に示すように、後壁23のほぼ下側半分の領域において、複数(図示の例では4つ)の噴射ノズル21が後壁23の幅方向(つまり再燃焼室9の幅方向)WIに等間隔に配置されている。もっとも、噴射ノズル21を設けるべき領域における噴射ノズル21の数および配置はこの例に限定されない。例えば、図4に示すように、後壁23の幅方向WIに並ぶ複数の噴射ノズル21の上下方向位置を交互にずらしてもよい。
【0032】
以上説明した第1実施形態に係る廃棄物焼却炉1によれば、燃焼ガスBGを強制的に偏向させる並行流式の焼却装置7において、噴射ノズル21から流速調整用のガスを噴射することにより、再燃焼室9における燃焼ガスBGの流速分布の偏りを調整することができる。これにより、燃焼ガスBGの再燃焼室9での滞留時間を十分に確保することができ、燃焼ガスBG中の未燃成分を確実に燃焼させることが可能になる。特に、本実施形態では、後壁23の、再燃焼室9における燃焼ガスBG流の平均流速よりも低い領域である低速領域に対応する下側部分のみに噴射ノズル21が設けられている。再燃焼室9における低速領域の範囲が一定で、想定可能である場合には、このような構成により、簡易な構造で効果的に燃焼ガスBGの滞留時間を確保することができる。
【0033】
なお、本実施形態の変形例として、図5に示すように、再燃焼室9の上流側の前壁27に、補助噴射部として補助噴射ノズル31がさらに設けられていてもよい。補助噴射ノズル31は、再燃焼室9の下流側へ向けて、再燃焼室9の上側の側壁33に沿って流速補助調整ガスSGを噴射する。
【0034】
補助噴射ノズル31が設けられる場合、さらに、焼却装置7の廃棄物焼却量に応じて流速補助調整ガスSGの噴射量を調整する調整装置35が設けられていてもよい。
【0035】
補助噴射ノズル31によって、流速調整ガスAGが噴射されない領域である再燃焼室9の上側の領域に、流速調整ガスAGと逆向きの流速補助調整ガスSGを噴射することにより、再燃焼室9における旋回流Sの状態を制御することが容易となる。特に、焼却装置7の焼却処理負荷が想定よりも下がった場合に、流速補助調整ガスSGを噴射することにより、所望の旋回流Sを維持することが可能になる。これにより、効率的に所望の滞留時間を確保することが可能となる。
【0036】
図1に示すように、噴射ノズル21から噴射される流速調整ガスAGとして、二次空気A2の供給通路41から分岐させて流速調整空気供給通路43を設け、二次空気A2の供給通路41の空気の一部を使用している。もっとも、流速調整ガスAGの供給系統は、この例に限定されず、例えば二次空気A2とは独立の供給源から流速調整ガスAGが供給されてよい。また、流速調整ガスAGは空気に限定されず、例えば、二次空気A2とは独立の供給源から排気通路17を介して排出された排ガスEGを流速調整ガスAGとして使用してもよい。補助噴射ノズル31から噴射される流速補助調整ガスSG(図5)についても、流速調整ガスAGと同様上記の例に限定されず、例えば、二次空気A2の一部または排ガスEGを使用することができる。
【0037】
図6に、本発明の第2実施形態に係る廃棄物焼却炉1を示す。本実施形態に係る廃棄物焼却炉1は、再燃焼室9に流速調整ガスAGを噴射するための構成を除く基本構成が第1実施形態と共通している。再燃焼室9に流速調整ガスAGを噴射するための構成については、再燃焼室9の後壁23に噴射ノズル21が設けられている点で第1実施形態と共通しているが、予め必要な所定の位置のみに噴射ノズル21を設けるのではなく、複数の噴射ノズル21が後壁23の高さ方向H2に離間して設けられており、再燃焼室9における燃焼ガスBG流の流速分布を測定する流速分布測定装置45と、流速分布測定装置45の測定結果に基づいて、流速調整ガスAGを噴射する噴射ノズル21を選択する制御装置47とをさらに備える点で第1実施形態と異なる。以下、主として第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と共通する点については説明を省略する。
【0038】
図7に示すように、本実施形態では、再燃焼室9の後壁23において、複数(この例では3つ)の噴射ノズル21が、後壁23の高さ方向H2に離間して設けられている。図示の例では、高さ方向H2における同一位置に、後壁23の幅方向(再燃焼室9の幅方向)WIに等間隔に離間して複数(この例では4つ)の噴射ノズル21が配置されており、このように配置された破線で示す噴射ノズル列21Rが、高さ方向H2に複数設けられている。
【0039】
また、図6に示すように、本実施形態では、再燃焼室9に、再燃焼室9の高さ方向H1の流速分布を測定する流速分布測定装置45が設けられている。流速分布測定装置45としては、例えば、酸素濃度計を用いることができる。さらに、この廃棄物焼却炉1は、流速分布測定装置45の測定結果に基づいて、流速調整ガスAGを噴射する噴射ノズル21を選択する制御装置47を備えている。
【0040】
本実施形態に係る廃棄物焼却炉1では、流速分布測定装置45によって、再燃焼室9の高さ方向H1における燃焼ガスBGの流速分布を測定し、その測定結果に基づいて、制御装置47が、所定の低速領域(例えば平均流速以下の領域)に対応する位置に設けられた噴射ノズル21から選択的に流速調整ガスAGを噴射させる。
【0041】
流速分布測定装置45として酸素濃度計を用いる場合、酸素濃度が低い部分は燃焼促進点でありガス流速が速く、逆に酸素濃度が高い部分は燃焼不良点でありガス流速が遅い関係となると考えられ、この関係を利用して流速分布を測定する。
【0042】
また、流速分布測定装置45としての酸素濃度計と、流速計や一酸化炭素濃度計等、他の機器を併用して各噴射ノズル21から噴射される流速調整ガスAGの流量を制御することもできる。
【0043】
以下、CO濃度計、温度測定装置および酸素濃度計の3つを連動させた制御の例を説明する。これらの測定装置は、例えば再燃焼室9の出口に配置する。CO濃度計によって測定したCO濃度が所定の閾値よりも低い場合は現状の噴射量を維持し、CO濃度が閾値よりも高い場合は以下のように各噴射ノズル21の流量制御を行う。温度測定装置によって測定した再燃焼室9内の温度が所定温度(例えば850℃)以下の場合で酸素濃度が設定値よりも高い場合は、空気が過多なので流速調整ガスAGの供給量を減らし、これによって再燃焼室9内温度の上昇を促す。同じ理由(室内温度の上昇を促す)により、再燃焼室9内の温度が所定温度(例えば850℃)以下の場合で且つ酸素濃度が設定値よりも低い場合であっても、ガス供給量を増やす処理は行わず、供給量を現状で維持する。再燃焼室9内の温度が所定温度(例えば850℃)以上の場合で酸素濃度が設定値よりも低い場合、空気が過少なので噴射ノズル21を開き、空気量を増やす。酸素濃度が設定値よりも高い場合は現状を維持して燃焼を促す。
【0044】
なお、本実施形態においても、図5に示した変形例と同様に、再燃焼室9の上流側の前壁27に、補助噴射ノズル31がさらに設けられていてもよい。
【0045】
以上説明した第2実施形態に係る廃棄物焼却炉1によれば、第1実施形態と同様、燃焼ガスBGを強制的に偏向させる並行流式の廃棄物焼却炉1において、噴射ノズル21から流速調整用のガスAGを噴射することにより、再燃焼室9における燃焼ガスBGの流速分布の偏りを調整することができる。これにより、再燃焼室9の横断面内での燃焼ガスBGの流速分布の偏りを抑制して、燃焼ガスBGの再燃焼室9での滞留時間を十分に確保することができ、燃焼ガスBG中の未燃成分を確実に燃焼させることが可能になる。特に、本実施形態では、流速分布測定装置45の測定結果に基づいて、流速調整ガスAGを噴射する噴射ノズル21を選択するので、再燃焼室9内の流速分布に応じた最適な噴射を行うことが可能になり、必要十分なガス噴射量で効果的に燃焼ガスBGの滞留時間を確保することができる。
【0046】
なお、第1実施形態および第2実施形態のいずれにおいても、図1または図6に示したように、噴射ノズル21を再燃焼室9の下側の側壁25に沿って流速調整ガスAGを噴射可能に構成した例について説明した。上述したように、再燃焼室9内で旋回流Sを生じさせることができる点でこのように構成することが好ましいが、噴射ノズル21が再燃焼室9の上側の側壁33に沿って流速調整ガスAGを噴射可能に構成されていても、燃焼ガスBGの滞留時間を長くする一定の効果を得ることができる。
【0047】
また、第1実施形態および第2実施形態のいずれにおいても、燃焼ガスBGの流速分布の偏りの抑制は、噴射ノズル21からの流量調整ガスAGを、上記のように旋回流を生じさせるように噴射するほか、燃焼ガスBGの流速分布の偏りを打ち消すように、流速分布の大きい部分に対しては流量調整ガスAGの噴射量を多くし、流速分布の小さい部分に対しては流量調整ガスAGの噴射量を少なくするよう構成,制御することにより行ってもよい。
【0048】
また、第1実施形態および第2実施形態のいずれにおいても、噴射ノズル21を再燃焼室9の後壁23に設けた例について説明した。再燃焼室9の最下流部から流速調整ガスAGを噴射することにより効率よく燃焼ガスBGの滞留時間を確保することができる点、および従来の廃棄物焼却炉1の構造を大きく変更することなく噴射ノズル21を設けることができる点で、噴射ノズル21を後壁23に設けることが好ましい。もっとも、例えば、再燃焼室9の下側の側壁25から、上流側へ向けて流速調整ガスAGを噴射する噴射ノズル21を突設してもよい。
【0049】
また、第1実施形態および第2実施形態のいずれにおいても、噴射ノズル21は、再燃焼室9の下側の側壁25の壁面に平行な方向に向けられている例について説明した。もっとも、噴射ノズル21は、下側の側壁25の壁面側に傾斜する方向に向けられていてもよい。この場合も、噴射ノズル21から下側の側壁25の壁面に噴射された流速調整ガスAGがこの壁面に沿って上流側に流れ、旋回流を生じさせることができる。
【0050】
また、第1実施形態および第2実施形態のいずれにおいても、噴射部および補助噴射部として、噴射ノズル21および補助噴射ノズル31といったノズル、すなわち筒状部材として設けた例を説明した。このように構成することにより、噴射される各ガスの指向性が高まるので、より効率的に燃焼ガス中の未燃成分を燃焼させることができる。もっとも、噴射部および/または補助噴射部は、ノズルの形態に限らず、例えば各壁に形成された単なる開口であってもよい。
【0051】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 廃棄物焼却炉
5 燃焼室
7 焼却装置
9 再燃焼室
21 噴射ノズル(噴射部)
23 再燃焼室の後壁
25 再燃焼室の側壁
AG 流速調整ガス
BG 燃焼ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7