(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】熱伝導性シート
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220907BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20220907BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20220907BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220907BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C08J5/18 CEQ
C08K3/38
C08K7/00
C08L101/00
C09K5/14 E
(21)【出願番号】P 2018112130
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 祐希
(72)【発明者】
【氏名】向 史博
(72)【発明者】
【氏名】荒 憲太郎
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071287(JP,A)
【文献】特開2012-040811(JP,A)
【文献】特開2015-003961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02;5/12-5/22,106
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、前記樹脂内に分散した鱗片状の熱伝導性フィラーとを含有する樹脂組成物からなる熱伝導性シートであって、
前記鱗片状の熱伝導性フィラーは、当該熱伝導性シートの厚さ方向に対する傾きが、当該熱伝導性シートの面方向内の一方向に沿って周期的に変化して
おり、
前記熱伝導性シートの厚さは、100~500μmであり、
前記熱伝導性シートの絶縁破壊電圧は、33kV/mm以上である
ことを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素からなるフィラーである請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーの含有量は、30~70体積%である請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
前記熱伝導性シートの熱抵抗値が、1.4K・cm
2
/W以下である請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高密度化・薄型化が急速に進み、ICやパワー部品、高輝度LEDから発生する熱の影響が重大な問題となっている。これに対して、例えば、チップ等の発熱体と放熱体の間の熱を効率よく伝達する部材として、熱伝導性フィラーを樹脂中に分散させた熱伝導性シートの利用が進んでいる。
【0003】
ここで、熱伝導性シートに高い熱伝導性を付与する手段として、効率よく熱伝導パスを形成するために、鱗片状の熱伝導性フィラーを熱伝導性シートの厚さ方向に沿って配向させることが知られている。
例えば、特許文献1には、樹脂及び/又はゴムと窒化ホウ素の鱗片状粒子を含む混練物を複数の帯状可塑物に押出成型しながらそれらをリップで集成しシート化した後硬化させるか、又はシート化しながら硬化させるシートの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、熱伝導性シートが鱗片状の熱伝導性フィラーを含有している場合、当該熱伝導性フィラーを熱伝導性シートの厚さ方向に沿って配向させることにより、熱伝導性シートは優れた熱伝導性を有するようになる。
一方、本発明者らの検討によると、鱗片状の熱伝導性フィラーを熱伝導性シートの厚さ方向に沿って配向させた場合、当該熱伝導性シートは、絶縁破壊しやすくなる(耐絶縁破壊性に劣る)という課題があることが明らかになった。
そのため、熱伝導性フィラーがその厚さ方向に沿って配向した熱伝導性シートは、熱伝導性に優れるものの、耐絶縁破壊性が求められる用途、例えば、電子部品とヒートシンクとの間に介在させる放熱シート等として使用するには不向きであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、高い熱伝導性を有しつつ、優れた耐絶縁破壊性を有する熱伝導性シートを完成した。
【0007】
(1)本発明の熱伝導性シートは、
樹脂と、上記樹脂内に分散した鱗片状の熱伝導性フィラーとを含有する樹脂組成物からなる熱伝導性シートであって、
上記鱗片状の熱伝導性フィラーは、当該熱伝導性シートの厚さ方向に対する傾きが、当該熱伝導性シートの面方向内の一方向に沿って周期的に変化していることを特徴とする熱伝導性シート。
【0008】
本発明の熱伝導性シートによれば、鱗片状の熱伝導性フィラーが、上記樹脂内で所定の向きを向くように分散している。
具体的には、上記鱗片状の熱伝導性フィラーは、当該熱伝導性フィラーの上記熱伝導性シートの厚さ方向に対する傾きが、上記熱伝導性シートの面方向内の一方向に沿って周期的に変化するように分散している。そして、上記熱伝導性シートのX-Z断面は、複数の波状の層が積層されているように観察される。
そのため、上記熱伝導性シートは、高い熱伝導性を有しつつ、優れた耐絶縁破壊性を有する。この理由は以下のように推測している。
本発明者らの検討によれば、樹脂中に熱伝導性フィラーが分散した熱伝導性シートが絶縁破壊した場合、多くのケースで、樹脂と熱伝導性フィラーとの界面で通電して絶縁破壊に至っていることが確認された。このことから、上記熱伝導性シートでは、樹脂と熱伝導性フィラーとの界面が他の部分と比べて相対的に電気が流れやすくなっていると考えられた。
一方、本発明の熱伝導性シートのように、熱伝導性フィラーの上記厚さ方向に対する傾きが、上記面方向内の一方向に沿って周期的に変化している場合、熱伝導性シートの厚さ方向において一方の面から他方の面に至る樹脂と熱伝導性フィラーとの界面の距離が、熱伝導性フィラーが熱伝導性シートの厚さ方向に沿って配向している場合に比べて長くなる。そのため、上記熱伝導性シートでは、上記耐絶縁破壊性が向上すると推測している。
【0009】
(2)上記熱伝導性シートにおいて、上記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素からなるフィラーであることが好ましい。
この場合、上記熱伝導性シートの熱伝導性をより高めるのに適している。
【0010】
(3)上記熱伝導性シートにおいて、上記熱伝導性フィラーの含有量は、30~70体積%であることが好ましい。
この場合、上記熱伝導性シートの熱伝導性をより高めるのに適している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱伝導性シートは、高い熱伝導性を有しつつ、優れた耐絶縁破壊性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は本発明の実施形態に係る熱伝導性シートを模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)のA-A線断面図であり、(c)は(b)の部分拡大図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る熱伝導性シートの製造で使用する押出機を模式的に示す図である。
【
図3】(a)は、
図2に示した押出機の先端部近傍(ダイ及びその周辺部)の拡大断面図であり、(b)は(a)に示した押出機の先端部の側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る熱伝導性シートにおいて、X-Z断面に観察される波状の層における「波長」の取得方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る熱伝導性シートにおいて、X-Z断面に観察される波状の層における「振幅」の取得方法を説明するための図である。
【
図6】(a)及び(b)は、それぞれ実施例1で製造した熱伝導性シートの断面の観察画像である。
【
図7】(a)は比較例1で使用したダイを模式的に示す断面図であり、(b)は(a)に示したダイの側面図である。
【
図8】(a)及び(b)は、それぞれ比較例1で製造した熱伝導性シートの断面の観察画像である。
【
図9】(a)及び(b)は、それぞれ比較例2で製造した熱伝導性シートの断面の観察画像である。
【
図10】実施例1及び比較例1、2の熱抵抗値の測定結果を示すグラフである。
【
図11】実施例1及び比較例1、2の絶縁破壊電圧の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、(a)は本発明の実施形態に係る熱伝導性シートを模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)のA-A線断面図であり、(c)は(b)の部分拡大図である。なお、
図1~3は、本願発明の把握を容易にするための図であり、各部材の寸法比率は、実際の寸法比率を正確に反映したものではない。
本発明の実施形態に係る熱伝導性シート1は、例えば、ICチップ等の発熱する電子部品とヒートシンク等の放熱部材との間に配置し、一方の面を電子部材に接触させ、他方の面を放熱部材に接触させて使用する。
【0014】
熱伝導性シート1は、
図1(a)に示すようにシート状物であり、後述するように押出成形によって製造することができる。本発明の実施形態の説明においては、熱伝導性シート1の成形時の押出方向をX方向、熱伝導性シート1の面方向内で上記X方向と直行する方向をY方向、熱伝導性シート1の厚さ方向をZ方向ともいう(
図1(a)参照)。
熱伝導性シート1は、
図1(b)、(c)に示すように、マトリックス成分2と、熱伝導性フィラー4とを有している。
熱伝導性フィラー4は、鱗片状の熱伝導性フィラーである。
なお、上記熱伝導性シートでは、熱伝導性フィラー以外の成分をまとめてマトリックス成分と称する。
【0015】
熱伝導性フィラー4は、熱伝導性シート1の厚さ方向(Z方向)に対する傾きが、熱伝導性シート1のX方向に沿って周期的に変化している。ここで、熱伝導性フィラー4の熱伝導性シート1の厚さ方向に対する傾きとは、鱗片状の熱伝導性フィラー4の面方向と熱伝導性シート1の厚さ方向とが成す角度をいい、0~90°の範囲にある。なお、本明細書においては、「熱伝導性フィラーの傾き」と記載した場合、熱伝導性フィラーの熱伝導性シートの厚さ方向に対する傾きを意味する。
熱伝導性シート1において、熱伝導性シート1のZ方向に沿ってほぼ同じ位置にある鱗片状の熱伝導性フィラー4は、上記Z方向に対して同じように傾いており、更に、熱伝導性シート1のY方向に沿ってほぼ同じ位置にある鱗片状の熱伝導性フィラー4は、上記Z方向に対して同じように傾いている。
従って、熱伝導性シート1は、当該熱伝導性シート1内に熱伝導性フィラーが上記のように分散していることによって、その分散状態が熱伝導性シート1のX-Z断面において、複数の波状の層が積層されているように観察される(
図1(b)及び(c)、
図6(a)及び(b)参照)。
【0016】
熱伝導性フィラー4がこのような状態で分散した熱伝導性シート1は、耐絶縁破壊性に優れる。熱伝導性フィラー4が熱伝導性シート1の厚さ方向に沿って配向した場合に比べて熱伝導性シート1の厚さ方向に通電しにくいからである。
加えて、熱伝導性シート1では、充分な熱伝導性を確保することができる。熱伝導性シート1は、鱗片状の熱伝導性フィラー4の傾きがX方向に沿って、周期的に変化しているため、熱伝導性フィラー4全体が熱伝導性シートの厚さ方向に沿って配向している熱伝導性シートに比べると熱伝導性に劣るものの、熱伝導性フィラーの傾きが熱伝導性シートの厚さ方向に近い(上記傾きが0°に近い)熱伝導性フィラーを充分量含有しており、これによって、高い熱伝導性を発揮することができる。
従って、熱伝導性シート1では、高い熱伝導性と優れた耐絶縁破壊性とを両立することができる。
【0017】
熱伝導性フィラー4の傾きの周期性は、熱伝導性シート1のX-Z断面で観察される波状の層(以下、熱伝導性フィラーが描く波形ともいう)において、波長が250~600μmで、振幅が50~150μmであることが好ましい。この場合、より高いレベルで、高い熱伝導性と優れた耐絶縁破壊性とを両立することができる。
上記熱伝導性フィラーが描く波形において、上記波長及び振幅は下記の手法にて取得することができる。
図4は、熱伝導性シート1において、X-Z断面に観察される熱伝導性フィラーが描く波形の「波長」の取得方法を説明するための図である。
図5は、熱伝導性シート1において、X-Z断面に観察される熱伝導性フィラーが描く波形の「振幅」の取得方法を説明するための図である。
なお、
図4に示した電子顕微鏡による観察画像は、
図6(a)に示した観察画像と同一である。また、
図5に示した電子顕微鏡による観察画像は、
図6(b)に示した観察画像と同一である。
【0018】
<波長>
(1)熱伝導性シート1のX-Z断面の電子顕微鏡による観察画像を取得する。
(2-1)上記観察画像内において、熱伝導性フィラーの傾きが90°であり、熱伝導性フィラーが描く波形において山となる点であって、その点が属するZ方向において最も上面側に位置する点A1を決定する。
(2-2)熱伝導性フィラーの傾きが90°であり、熱伝導性フィラーが描く波形において山となる点であって、その点が属するZ方向において最も上面側に位置し、かつ上記点A1とX方向で隣接する点A2を決定する。
(2-3)点A1と点A2とのX方向の距離D1を算出する。
【0019】
(3-1)上記観察画像内において、熱伝導性フィラーの傾きが90°であり、熱伝導性フィラーが描く波形において谷となる点であって、その点が属するZ方向において最も下面側に位置する点B1を決定する。
(3-2)熱伝導性フィラーの傾きが90°であり、熱伝導性フィラーが描く波形において谷となる点であって、その点が属するZ方向において最も下面側に位置し、かつ上記点B1とX方向で隣接する点B2を決定する。
(3-3)点B1と点B2とのX方向の距離D2を算出する。
(4)上記(2-3)で求めた距離D1と、上記(3-3)で求めた距離D2との平均値を算出する。距離D1と距離D2との平均値を複数箇所で算出し、その平均値を熱伝導性フィラーが描く波形の波長とする。
【0020】
<振幅>
(1)熱伝導性シート1のX-Z断面の電子顕微鏡による観察画像を取得する。
(2)上記観察画像内において、熱伝導性フィラーの傾きが90°であり、熱伝導性フィラーが描く波形において、山となる点Pを決定する。
(3)上記点Pを通る熱伝導性フィラーが描く波形Cを描画する。この波形Cは、隣接する熱伝導性フィラー同士を当該熱伝導性フィラーの傾きに沿って滑らかに結ぶことによって描画する。その後、波線C上の点であって、熱伝導性フィラーの傾きが90°であり、上記点Pに隣接する谷となる点Qを決定する。
(4)点Pと点Qとの厚さ方向(Z方向)の距離D3を算出し、その1/2の値を取得する。距離D3の1/2の値は複数箇所で取得し、その平均値を熱伝導性フィラーが描く波形の振幅とする。
【0021】
熱伝導性シート1において、熱伝導性フィラーが描く波形は、連続した正弦波(又は正弦波に似た波形)であることが好ましい。
この場合、高い熱伝導性と、優れた耐絶縁破壊性との両立により適している。
【0022】
一方、熱伝導性フィラー4全体に対して熱伝導性フィラーの傾きが0°に近い熱伝導性フィラーの占める割合が高いと、上記熱伝導性フィラーが描く波形は、波長が短く(250μm未満)、かつ振幅が大きく(150μm超え)なり易く、この場合、熱伝導性シート1の耐絶縁破壊性が不充分になるおそれがある。
また、熱伝導性フィラー4全体に対して熱伝導性フィラーの傾きが90°に近い熱伝導性フィラーの占める割合が高いと、上記熱伝導性フィラーが描く波形は、波長が長く(600μm超え)、かつ振幅が小さく(50μm未満)なり易く、この場合、熱伝導性シート1の熱伝導性が不充分になるおそれがある。
【0023】
熱伝導性シート1の厚さは特に限定されず、熱伝導性フィラー4の配向状態に応じて適宜選択すれば良い。上記厚さは、通常100~500μm程度である。
【0024】
熱伝導性シート1の厚さと上記熱伝導性フィラーが描く波形の振幅との関係において、上記振幅は、熱伝導性シート1の厚さの1/6~1/2が好ましい。この場合、上記熱伝導性フィラーが描く波形として、途中で途切れることがない波形を少なくとも1つは描くことができ、熱伝導性シート1は、高い熱伝導性と優れた耐絶縁破壊性との両立により適したものとなる。
より具体的には、熱伝導性シート1の厚さが100~500μmの場合、上記熱伝導性フィラーが描く波形の振幅は、熱伝導性シート1の厚さの1/6~1/2で、かつ50~150μmであることが特に好ましい。
【0025】
熱伝導性シート1は、上述した通り、高い熱伝導性と優れた耐絶縁破壊性とを両立したものである。
ここで、熱伝導性シート1は、熱伝導性シート1の厚さが100~500μmの場合、絶縁破壊電圧が33kV/mm以上であり、かつ熱抵抗値が1.4K・cm2/W以下であることが好ましい。
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る熱伝導性シート1の構成部材を説明する。
マトリックス成分2は、少なくとも樹脂(ゴムを含む)を含有する。
上記樹脂としては、従来公知の種々の樹脂を適宜選択して用いることができる。
具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体;ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリアクリル酸又はそのエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマーなどを用いることができる。
また、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体又はその水添ポリマー、スチレン-イソプレンブロック共重合体又はその水添ポリマー等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
更には、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム等を用いることもできる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
これらのなかでは、成型体とした際の柔軟性、形状追従性、電子部品等に接触させる際の発熱面への密着性、及び、耐熱性に優れる点からシリコーンゴムが好ましい。
【0027】
上記シリコーンゴムとしては、シリコーン骨格を有する高分子(シリコーン)が架橋したものが挙げられる。ここで、シリコーンの架橋は、過酸化物架橋であっても良いし、付加反応型の架橋であっても良いが、過酸化物架橋が好ましい。過酸化物架橋によって架橋されたシリコーンゴムの方が耐熱性に優れるからである。
【0028】
上記シリコーンゴムとしては、例えば、側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンと側鎖(末端も含む)の一部にビニル基を有するシリコーンとの混合物を過酸化物架橋させたものが好ましい。
このとき、上記側鎖の一部にビニル基を有するシリコーンは、上記側鎖が全てメチル基で不飽和基を含まないシリコーンに対する架橋剤とみなすこともできる。
【0029】
上記側鎖の一部にビニル基を有するシリコーンの具体例としては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
【0030】
上記過酸化物架橋を行う際の有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
更に、架橋時には、架橋促進剤や架橋促進助剤を併用しても良い。
【0031】
マトリックス成分2は、上記樹脂に加えて、上述したように架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤を含有しても良いし、更には、補強剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、粘着付与剤、帯電防止剤、練り込み接着剤、難燃剤、カップリング剤等の一般的な添加剤を含有していても良い。
【0032】
熱伝導性シート1は、鱗片状の熱伝導性フィラー4を含有する。鱗片状の熱伝導性フィラーは、高アスペクト比で、かつ面方向に等方的な熱伝導率を有しているため、鱗片状の熱伝導性フィラーを所定の傾きでマトリックス中に分散させて熱伝導率を高めるのに適している。
熱伝導性フィラー4は、鱗片状のものであれば特に限定されず、その材質としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、二硫化モリブデン等が挙げられる。また、上記熱伝導性フィラーとして材質の異なる熱伝導性フィラーを併用してもよい。
上記導電性フィラーは、窒化ホウ素(BN)からなるものが好ましい。熱伝導性に特に優れるからである。
【0033】
熱伝導性フィラー4の粒径は特に限定されないが、1~100μmが好ましい。
上記粒径が1μm未満では、熱伝導パスが形成しにくく、熱伝導性に劣る場合がある。
一方、熱伝導性フィラー4の粒径が100μmを超えると、熱伝導性シートを成型する際の加工性に劣ることがある。
熱伝導性フィラー4の粒径は、5~50μmがより好ましい。
【0034】
熱伝導性フィラー4のアスペクト比は10~100が好ましい。
上記アスペクト比を10以上とすることで、熱伝導性フィラー4は、マトリックス成分2中に所定の傾きで分散し易くなる。
一方、上記アスペクト比を100以下とすることで、熱伝導性フィラー4を熱伝導性シートに充填しやすくなる。
【0035】
本発明において、熱伝導性フィラーの「粒径」とは、粒度分布測定における平均粒径という概念であり、レーザー回析散乱法(装置:マイクロトラック・ベル株式会社社製、マイクロトラックMT3300EXII)によって測定されたものである。
また、本発明において、熱伝導性フィラーの「アスペクト比」は、短径に対する長径の比の平均値という概念であり、SEMで撮影された画像から200個以上の粒子を任意に選択し、それぞれの長径と短径の比を求めて平均値を算出する。
【0036】
熱伝導性シート1における熱伝導性フィラー4の含有量は、30~70体積%が好ましい。
上記熱伝導性フィラー4の含有量が30体積%未満では、充分な熱伝導性を確保することができないことがある。一方、上記含有量が70体積%を超えると、熱伝導性シートを作製する際の加工性に劣り、また、安価で提供することが困難になる。
上記含有量は、45~65体積%がより好ましい。
【0037】
熱伝導性シート1は、電気部品や自動車部品等において、発熱部材と放熱部材との間で熱を効率良く伝達する部材として好適に使用することができる。
特に、熱伝導性及び耐絶縁破壊性の高レベルでの両立が求められるパワーモジュール等で好適に使用される。
【0038】
次に、本実施形態に係る熱伝導性シートを製造する方法について、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートの製造で使用する押出機を模式的に示す図である。
図3(a)は、
図2に示した押出機の先端部近傍の拡大断面図であり、(b)は(a)に示した押出機の先端部の側面図である。
上記熱伝導性シートは、例えば、下記工程A及び工程Bを経て製造することができる。
工程A:上記樹脂の原料と、上記鱗片状の熱伝導性フィラーとを含有する原料組成物を調製する工程、及び、
工程B:上記原料組成物を押出成形してシート状物を作製する工程。
【0039】
(工程A)
ここでは、上記マトリック成分を得るための原料と、上記鱗片状の熱伝導性フィラーを2本ロールで練り込む等によって、原料組成物を調製する。
具体的には、例えば、未架橋のシリコーンゴムと、架橋剤と、上記熱伝導性フィラーと、可塑剤等の必要に応じて添加する各種添加剤とを、2本ロールで練り込む等によって原料組成物を調製する。
【0040】
(工程B)
ここでは、上記工程Aで調製した原料組成物を押出成形してシート状物を作製する。
この工程Bは、
図2、
図3(a)及び(b)に示した押出機100を用いて行うことができる。
押出機100は、従来公知のゴム用短軸押出機である。押出機100は、内部に駆動モータ6によって回転されるスクリュー5を備えたシリンダ7、シリンダ7内に原料組成物を投入するためのホッパ8、及び、シリンダ7の先端部に固定されたダイ10を備えている。
【0041】
ダイ10は、
図3(a)及び(b)に示すように、スクリュー5側から搬送された樹脂組成物を上下方向(厚さ方向)にしぼり込み、薄い帯状の樹脂シート前駆体を成形するための第1ギャップ11と、第1ギャップ11よりも上下方向の長さ(高さ)が大きく、断面積が拡大した第2ギャップ12と、第1ギャップ11と第2ギャップ12とを繋ぎ、上下方向の長さ(高さ)が第1ギャップ11から第2ギャップ12に向かって徐々に拡大する連結部13とを有する。
ダイ10において、流路9の幅方向(
図3(b)中、左右方向)の寸法は一定である。
ダイ10の形状に関して、本明細書では、第1ギャップ11の長さ(ランド長さ)をL1、第1ギャップ11の高さをH1、第1ギャップの吐出口11aの幅をW1、第2ギャップ12の高さH2とする(
図3(a)及び(b)参照)。
【0042】
工程Bでは、ホッパ8からシリンダ7内に上記原料組成物を投入する。シリンダ7内に投入された原料組成物は、スクリュー5によって搬送され、ダイ10に導入される。
ここで、原料組成物は、第1ギャップ11に向かって上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれ、第1ギャップ11を通過して薄い帯状の樹脂シート前駆体となる。第1ギャップ11を通過する際、原料組成物にはせん断力が作用して原料組成物中に含まれている熱伝導性フィラーは原料組成物の流れ方向(押出方向)に沿って配向する。
第1ギャップ11の吐出口11aから押し出された樹脂シート前駆体は、連結部13を通って、第2ギャップ12に導かれる。このとき、第2ギャップ12は、第1ギャップ11に比べて流路9の断面積が拡大し、上下方向の長さが長くなっているため、樹脂シート前駆体の流れが上下方向に広がるように変化し、樹脂シート前駆体は流れ方向が広がりながら、連結部13及び第2ギャップ12を通過して押し出され、上記樹脂シート前駆体よりも厚さの厚いシート状物となる。その後、第2ギャップから押し出されたシート状物には、必要に応じて、加熱等による架橋処理を施すことにより、熱伝導性シート1を作製することができる。このような工程Bを経ることにより、熱伝導性フィラーの傾きが押出方向に沿って周期的に変化する熱伝導性シートを作製することができる。
本工程では、ダイ10を通過する際に、樹脂シート前駆体の流れ方向が変化するため、熱伝導性フィラーの傾きが、熱伝導性シートの面方向内の一方向に沿って周期的に変化する熱伝導性シートを製造することができると推測している。
【0043】
ダイ10の寸法は、第1ギャップ11の高さH1に対する第2ギャップ12の高さH2の比(H2/H1)が、1.5~5.0であることが好ましい。
また、第1ギャップ11のランド長さL1は、1~10mmが好ましい。
このような寸法・形状のダイを使用して、熱伝導性シートを製造することにより、熱伝導性フィラーの傾きが、熱伝導性シートの面方向内の一方向に沿って周期的に変化する熱伝導性シートを製造するのに適している。
【0044】
上記比(H2/H1)が、1.5未満では、製造した熱伝導性シートにおいて、熱伝導性フィラーの配向方向が面方向に近くなり(熱伝導性フィラーの傾きが90°に近くなり)、上記熱伝導性シートのX-Z断面において、熱伝導性フィラーが描く波形の振幅が小さくなるか、又は熱伝導フィラー全体が面方向に沿って配向してしまう。
一方、上記比(H2/H1)が5.0を超えると鱗片状の熱伝導性フィラー全体が熱伝導性シートの厚さ方向に沿って配向してしまう。
上記比(H2/H1)は、2.0~3.0がより好ましい。
【0045】
ダイ10において、第1ギャップ11の高さH1は、0.15~5.0mmが好ましい。
この場合、熱伝導性フィラーを含む原料組成物は流れやすく、かつ、第1ギャップ11内で熱伝導性フィラーが面方向(流れ方向)に対して均一に配向しやすくなる。
第2ギャップ12の高さH2は、第1ギャップ11の高さH1を考慮して、上記比(H2/H1)が1.5~5.0の範囲となるように設定することが好ましい。
ダイ10において、吐出口11aの幅W1は特に限定されないが、通常、30~120mm程度である。
【0046】
ダイ10は、上述した通り、第1ギャップ11と第2ギャップ12と連結部13とを備えている。ここで、連結部13は、第1ギャップ11側から第2ギャップ12側に向かって徐々に高さ方向(Z方向)の寸法が拡大する内壁面を有している。一方、熱伝導性シート1を作製するために使用するダイは、徐々に高さ方向が拡大する連結部を必ずしも備えている必要はなく、第1ギャップと第2ギャップとが高さ方向(Z方向)に沿った垂直な壁面で連結されたダイであってもよい。
【0047】
上記熱伝導性シートを製造する方法において、上述した工程A及び工程Bを経て熱伝導性シートを作製した後、当該熱伝導性シートに面方向に沿ったスライス加工を施し、より厚さの薄い熱伝導性シートとしてもよい。
上述した押出成形によって熱伝導性シートを製造した場合、成型時にTダイの上下の内壁面と接した熱伝導性シートの上下面は、上述した熱伝導性フィラーの傾きの周期性が乱れていることがある。一方、上記スライス加工を施し、上下面をスライス加工面とした熱伝導性シートでは、上述した周期性の乱れが存在せず、優れた熱伝導性と耐絶縁破壊性とがより高いレベルで両立される。
上記スライス加工は、例えば、超音波カッターを用いて行えば良い。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
シリコーンゴム100重量部、可塑剤100重量部、2種類の架橋剤を合計で10重量部、及び熱伝導性フィラー670重量部を2本ロールで練り込み、リボンシート(原料組成物)を得た。
上記樹脂成分としては、シリコーンゴム「東レダウコーニング社製のDY321005U」、及び可塑剤(信越化学工業社製のシリコーンオイル:KF-96-3000CS)を用いた。
上記架橋剤としては、東レダウコーング社製の「MR-53」、及び、「RC-4 50P FD」を用いた。表1にはその合計含有量を示した。
上記熱伝導性フィラーとしては、窒化ホウ素からなるフィラー(デンカ株式会社製「XGP」(鱗片状、粒径35μm、アスペクト比約30))を用いた。
【0049】
次に、作製したリボンシートを所定の形状のダイ10(第1ギャップの長さ(ランド長さ)L1=5mm、第1ギャップの高さH1=1mm、第2ギャップの高さH2=2mm、吐出口の幅W1=55mm)を取付けたゴム用短軸押出機100(
図2、3(a)及び(b)参照)のホッパ8から投入し、押出成形を行うことにより、熱伝導性フィラー(鱗片状窒化ホウ素)の傾きが、樹脂組成物の押出方向に沿って周期的に変化している厚さ2mmのシートを成形した。
次に、得られたシートに170℃で30分間の架橋処理を施して、熱伝導性シートA-1を作製した。
【0050】
次に、作製した熱伝導性シートA-1を、超音波カッターを用いて、面方向に沿って厚さ300μmにスライス加工し、熱伝導性シートB-1を作製した。本実施例において、熱伝導性シートB-1は、熱伝導性シートA-1の厚さ方向中央部から切り出した。
作製した熱伝導性シートB-1を所定のサイズ(タテ80mm×ヨコ50mm)に裁断し、評価用サンプルとした。ここで、評価用サンプルは19枚作製した。
また、熱伝導性シートB-1の押出方向に沿った厚さ方向に垂直な断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察(倍率:100倍及び200倍)した。その結果、熱伝導性フィラーは、
図6に示したように、熱伝導性フィラーの傾きが押出方向に沿って周期的に変化していることが確認された。
図6(a)は倍率100倍の画像であり、
図6(b)は倍率200倍の画像である。
熱伝導性シートB-1のX-Z断面について、上述した手法で熱伝導性フィラーの描く波形の波長及び振幅を算出した。その結果、波長は360μm、振幅は80μmであった。
なお、上記の波長及び振幅は、無作為に抽出した2箇所で算出した値の平均値である。
また、本実施例で作製した熱伝導性シートA-1における熱伝導性フィラーの含有量は、60体積%である。
【0051】
(比較例1)
図7(a)及び(b)に示した形状のダイ20を使用した以外は、実施例1と同様にして押出成形を行い、厚さ1mmの熱伝導性シートA-2を作製した。
ダイ20の寸法は、第1ギャップ21の長さ(ランド長さ)L2=1mm、第1ギャップ21の高さH3=1mm、第2ギャップ無し、吐出口21aの幅W2=55mmとした。
その後、作製した熱伝導性シートA-2を実施例1と同様の手法によって面方向にスライスして、厚さ300μmの熱伝導性シートB-2を、熱伝導性シートA-2の厚さ方向中央部付近から切り出した。
得られた熱伝導性シートB-2の厚さ方向に平行な断面であって、押出方向に沿った断面をSEMで観察したところ、押出方向に沿って熱伝導性フィラーが配向していることが確認された。
図8にSEM観察による観察画像を示した。
図8(a)は倍率100倍の画像であり、
図8(b)は倍率200倍の画像である。
【0052】
(比較例2)
ダイ10と同様の形状を有し、各部の寸法を変更したダイを使用した以外は、実施例1と同様にして、厚さ10mmの熱伝導性シートA-3を作製した。
ここでダイの寸法は、第1ギャップの長さ(ランド長さ)L1=5mm、第1ギャップの高さH1=1mm、第2ギャップの高さH2=10mm、吐出口の幅W1=55mmとした。
その後、作製した熱伝導性シートA-3を実施例1と同様の手法によって面方向にスライスして、厚さ300μmの熱伝導性シートB-3を、熱伝導性シートA-3の厚さ方向中央部付近から切り出した。
得られた熱伝導性シートB-3の厚さ方向に平行な断面であって、押出方向に沿った断面をSEMで観察したところ、厚さ方向に沿って熱伝導性フィラーが配向していることが確認された。
図9にSEM観察による観察画像を示した。
図9(a)は倍率100倍の画像であり、
図9(b)は倍率200倍の画像である。
【0053】
[評価試験]
(1)熱抵抗値[K・cm
2/W]
熱伝導性樹脂シートB-1~B-3のそれぞれについて、厚さ方向の熱抵抗値をTIM TESTER1300を用いて測定した。当該測定は定常法にて米国規格ASTM D5470に準拠した。
ここで、熱抵抗値の計測は、3水準の測定圧力(0.3MPa、0.5MPa及び1MPa)で行った。結果を
図10に示した。
【0054】
(2)絶縁破壊電圧[kV]
熱伝導性樹脂シートB-1~B-3のそれぞれについて、厚さ方向の絶縁破壊電圧を電源装置(Trek社製 DC電源 MODEL610C)を用いて測定した。
ここで、電極は銅材(C1020)、10mm×10mm R0.4mm(電極との接触面10mm角)を使用し、厚さ300μmの熱伝導性樹脂シートを電極で挟み込み、上部からの加圧をせずに測定した。電源装置で電圧を印加し、絶縁破壊が発生した電圧を記録した。
結果を
図11にヒストグラムで示した。
【0055】
実施例及び比較例の結果から、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートは、高い熱伝導性を有しつつ、優れた耐絶縁破壊性を有することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0056】
1 熱伝導性シート
2 マトリックス成分
4 熱伝導性フィラー
5 スクリュー
6 駆動モータ
7 シリンダ
8 ホッパ
9 流路
10、20 ダイ
11、21 第1ギャップ
11a、21a 吐出口
12 第2ギャップ
13 連結部
100 押出機