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  • 特許-有害生物防除剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】有害生物防除剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/02 20060101AFI20220907BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A01N37/02
A01P7/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018119196
(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公開番号】P2019218329
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】山元 えみ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039803(JP,A)
【文献】特開2013-170146(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108220(WO,A1)
【文献】食品安全委員会,ポリグリセリン脂肪酸エステル,対象外物質評価書 ,2015年
【文献】小山匡子ほか,ポリグリセリン脂肪酸エステルの特性と応用,J.Jpn.Soc.Colour Mater.,2016年,Vol.89, No.12,430-434
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数12~14の脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、グリセリンが重合した少なくとも1種のポリグリセリンとのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステルのみ有害生物防除剤の有効成分として含有し、かつ、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1分子中、ポリグリセリン残基に少なくとも1個の環状構造を有する環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを25重量%以上含有することを特徴とする、有害生物防除剤。
【請求項2】
請求項1に記載の有害生物防除剤および農薬成分を含有する有害生物防除組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の有害生物防除剤または請求項2に記載の有害生物防除組成物を、有害生物または育成植物に施用することを特徴とする、有害生物防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有害生物防除剤、これを含有する有害生物防除組成物およびこれらを有害生物または育成植物に施用することを特徴とする有害生物防除方法に関する。詳しくは、環状構造を有するポリグリセリン由来のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量含有するポリグリセリン脂肪酸エステルを、有害生物防除剤とすることや、これを含有する有害生物防除組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸を直接エステル化することにより得られる化合物であって、ポリグリセリンの重合度、脂肪酸鎖長、そしてエステル化度を変えることにより、親水性-親油性のバランス(HLB)を自由に調整できるため、汎用性の高いノニオン系界面活性剤の1つとして知られている。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、出発原料が天然由来の化合物であることから、食品、化粧品や医薬品などの広い分野で利用が増えている。
また農園芸分野においても、ポリグリセリン脂肪酸エステルを利用することが検討されており、例えば、特許文献1には、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる農薬用展着剤が提案され、浸透力や農薬との相溶性に優れることが示されている。特許文献2には、ポリグリセリンの誘導体を必須成分とする農薬用効力増強剤が提案されており、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、種々の農薬に対して効力増強作用を有することが示されている。また、特許文献3には、ポリグリセリンモノC8~10脂肪酸エステルを有効成分とする植物病害虫用防除剤が提案されており、特定のエステル化度のものにおいて病害虫防除効果が得られることが示されている。特許文献4には、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルとノニオン系界面活性剤との組み合わせからなる殺虫殺ダニ組成物が開示されている。
【0003】
市販されているポリグリセリン脂肪酸エステルの多くは、グリセリンの脱水縮合により得られたポリグリセリンを用いて、エステル化したものである。この脱水縮合は、グリセリンをアルカリ触媒存在下200~260℃の高温で実施される。この反応により得られるポリグリセリンは、グリセリンの3個の水酸基のうち第1級水酸基同士が脱水結合した直鎖状のもの、第1級と第2級の水酸基が脱水結合した分岐状のもの、そして、生成したポリグリセリンが分子内脱水した環状構造を有するものなど、異性体が存在することが知られている。このため、ポリグリセリン脂肪酸エステルの多くは、直鎖状、分岐状、環状などの異性体を含む組成となっている。この点について、特許文献5には、環状構造を有するポリグリセリンを多く含有するポリグリセリン由来のポリグリセリン脂肪酸エステルは、水溶性、界面活性などの様々な特性が低下するため、ポリグリセリンの製造過程において、環状構造を有するポリグリセリンの含有量を低下させて、直鎖状のポリグリセリンの含有量を増加させる製造方法や、精製方法が研究されていることが記載されている。すなわち、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、環状構造を有するポリグリセリン由来のポリグリセリン脂肪酸エステルは、その含有量が低いものほど、各種性能に優れていることは公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-327507号公報
【文献】特開平05-345702号公報
【文献】再公表2014/058065号
【文献】特開平10-251104号公報
【文献】特開2014-501602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、各種用途で使用されているが、有害生物防除活性を発揮するものは未だ知られていない。
そこで、本発明は、単独で用いても優れた有害生物防除活性を有する、ポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とした防除剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述のポリグリセリン脂肪酸エステルを検討した結果、予想外にも、様々な特性が低下する要因とされた環状ポリグリセリン由来のポリグリセリン脂肪酸エステルを、特定量含有するポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルが、単独で優れた有害生物防除活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明の特定のポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルを特定量含有する有害生物防除剤は、種々の農薬成分と併用する際に、農薬成分の含有量を大きく減らしても、優れた防除効果が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、以下の具体的な構成要件からなるものである。
1.炭素数12~14の脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、グリセリンが重合した少なくとも1種のポリグリセリンとのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分として含有し、かつ、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1分子中、ポリグリセリン残基に少なくとも1個の環状構造を有する環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを25重量%以上含有することを特徴とする、有害生物防除剤。
2.1.に記載の有害生物防除剤および農薬成分を含有する有害生物防除組成物。
3.1.に記載の有害生物防除剤または2.に記載の有害生物防除組成物を、有害生物または育成植物に施用することを特徴とする、有害生物防除方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有害生物防除剤は、食品添加物などとして使用されているポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とするため、環境や人畜に負荷が少なく安全性が高いという特徴を有する。
また、本発明の有害生物防除剤を育成植物に施用しても、薬害の恐れがなく、繰り返し使用することができるため、有用である。
さらに本発明の有害生物防除剤は、上述のポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とするものであるため、種々の農薬成分との相溶性もよく、展着剤としての機能も発揮しながら、少量の農薬成分であっても併用することにより優れた有害生物防除効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例3の試験概要模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の有害生物防除剤について詳細に説明する。
本発明の有害生物防除剤は、炭素数12~14の脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、グリセリンが重合した少なくとも1種のポリグリセリンとのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分として含有し、かつ、1分子中、ポリグリセリン残基に少なくとも1個の環状構造を有する環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを25重量%以上含有するものである。
なお、本発明における有害生物とは、本発明の有害生物防除剤や有害生物防除組成物が防除活性を示す病害虫、雑草等を意味する。
<ポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルについて>
炭素数12~14の脂肪酸は、直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有するものや、これらの混合物であってもよいが、直鎖のアルキル基のものが好ましい。具体的には、炭素数12のラウリン酸や炭素数14のミリスチン酸等が挙げられ、これらの混合物であってもよい。
ポリグリセリンの平均縮合度は2~16であり、3~15が好ましく、4~14がより好ましく、5~13がさらに好ましい。
ポリグリセリン残基に少なくとも1個の環状構造を有する環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、文献公知の分析方法(例えば、国際公開第2004/048304号パンフレット等)により導き出される、ポリグリセリン脂肪酸エステルの全量に対する、ポリグリセリン残基に少なくとも1個の環状構造を有する環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有割合(%)を意味する。分析方法が、ガスクロマトグラフィー(GC)や液体クロマトグラフィー(LC)であれば、分析データの面積比率により算出された値であり、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)や液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)では、相対強度比により算出された値である。
ここで、ポリグリセリンの平均縮合度が大きくなるにつれて、ポリグリセリン残基に少なくとも1個の環状構造を有する環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、徐々に増加する傾向にある。
【0011】
本発明の有害生物防除剤は、1分子中、ポリグリセリン残基に少なくとも1個の環状構造を有する環状ポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルを25重量%以上含有するものであり、その含有量は30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルに対する、環状ポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルの含有量を高めるためには、製造原料として、グリセリンの脱水縮合により得られるポリグリセリンを選択することが好ましい。また、得られたポリグリセリンを減圧下蒸留分画することにより、未反応のグリセリンを取り除くと共に、環状ポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルの含有量を高めることもできる。一方、ポリグリセリンの製造方法としては、グリシドール開環重合法やジグリセリン架橋法が公知であるが、これらの製造方法は、環状構造を有する環状ポリグリセリンの含有量の低いポリグリセリンが得られるため、本発明のポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルの原料の製造方法としては適さない。
【0012】
本発明に係る環状ポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルを特定量含有するポリグリセリン脂肪酸(C12~14)エステルの製造方法は、上述のように得られたポリグリセリンと、脂肪酸との脱水エステル化による方法、脂肪酸低分子アルコールエステルとの脱低分子アルコールによる方法、脂肪酸ハライドを使用する方法などを挙げることができるが、脂肪酸との脱水エステル化による方法が経済的である。
脱水エステル化による方法は、例えばアルカリ触媒下、酸触媒下、または無触媒下にて、常圧または減圧下に脱水エステル化することができる。環状構造高含有ポリグリセリンと脂肪酸の仕込み量は、目的とする有害生物防除活性に応じて適宜選択すればよい。中でも、ポリグリセリンモノ脂肪酸(C12~14)エステルの含有量が高いものが、良好な有害生物防除活性を得るために好ましい。
【0013】
<農薬成分について>
本発明の有害生物防除剤は、種々の農薬成分と併用して組成物とすることができる。これら農薬成分としては、公知の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤および植物成長調節剤などが挙げられ、例えば、農薬ハンドブック2016年度版(社団法人 日本植物防疫協会)に記載されたものを用いることができる。さらに、有害生物防除効果が知られている植物油、植物精油、食品由来のものなど安全性の高いものが好適に併用できる。
殺菌剤としては、硫黄系のジネブ、マンネブ、ベンズイミダゾール系のベノミル、ジカルボキシイミド系のビンクロゾリン、イプロジオン、プロシミドン、他にトリアジン、トリフミゾール、メタラキシル、ペンチオピラド、有機銅、水酸化第二銅、抗生物質系殺菌剤(ストレプトマイシン系、テトラサイクリン系、ポリオキシ系、ブラストサイジンS、カスガマイシン系、バリダマイシン系)等が挙げられる。
殺虫剤としては、ピレスロイド系のペルメトリン、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、リン系のCYAP、スミチオン、DDVP、カーバメート系のバッサ、メソミル、カルタップ、ネオニコチノイド系のジノテフラン、イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン等が挙げられる。更に、天然系殺虫剤として、除虫菊由来のピレトリン剤、ピペロニルブトキシド剤、マメ科のかん木デリス由来のロテノン剤、ニコチン剤等が挙げられる。昆虫成長制御剤(IGR剤)のジフルベンズロン等も使用することができる。
殺ダニ剤としては、CPCBS、フェニソブロモレート、ヘキシチアゾクス、テトラジホン、フェノチオカルブ、フェンピロキシメート、アミトラズ等が挙げられる。
除草剤としては、酸アミド系のスタム、尿素系のDCMU、リニュロン、ビピリジニウム系のパラコート、ジクワット、ダイアジン系のブロマシル、S-トリアジン系のシマジン、シメトリン、ニトリル系のDBN、ジニトロアニリン系のトリフルラリン、カーバメート系のベンチオカーブ、MCC、ジフェニルエーテル系除のNIP、フェノール系のPCP、安息香酸系のMDBA、フェノキシ系の2,4-Dナトリウム塩、マピカ、アミノ酸系のグリホサート、ビアラホス、グルホシネート、脂肪族系のTCAナトリウム塩等が挙げられる。
植物成長調節剤としては、インドール酪酸、エチクロゼート、ベンジルアミノプリン、ホルクロルフェニュロン、ジベレリン、デシルアルコール、エテホン等が挙げられる。
本発明の有害生物防除組成物は、本発明の有害生物防除剤に対して、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤および植物成長調節剤を重量基準で好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上、さらに好ましくは40ppm以上であり、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは5000ppm以下、さらに好ましくは3000ppm以下で併用するとよい。
【0014】
<その他の成分について>
本発明の有害生物防除剤または有害生物防除組成物は、各種製剤とすることで容易に使用することができる。例えば、油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、液剤、スプレー剤、エアゾール剤などが挙げられる。
これらの中でも、スプレー剤やエアゾール剤などの噴霧用製剤、ジョウロヘッドを備えた容器に充填した液剤などが、本発明の有害生物防除剤または有害生物防除組成物を、簡便に使用できる製剤型として好適である。
【0015】
上述の製剤とする際に用いられる液体担体としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、乳酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ヘテロ環系溶剤(スルホラン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、酸アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、ろ過処理した水、滅菌処理した水、地下水などが用いられる。
【0016】
また界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル(例、ソルビタンモノオレート、ソルビタンラウレート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテルなどが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸アルキル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)フェニルエーテル硫酸またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー硫酸のナトリウム、カルシウムまたはアンモニウムの各塩;スルホン酸アルキル、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸(例、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムなど)、モノ-またはジ-アルキルナフタレン酸スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸またはポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホサクシネートのナトリウム、カルシウム、アンモニウムまたはアルカノールアミン塩の各塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン、モノ-またはジ-アルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)化フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)化フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェートのナトリウムまたはカルシウム塩などの各塩が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、例えば第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルオキサイドなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン、アミンオキシドなどが挙げられる。
【0017】
さらにガス状担体としては、例えばブタンガス、フロンガス、(HFO、HFC等の)代替フロン、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、及び炭酸ガスが、固体担体としては、例えば粘土類(カオリン、珪藻土、ベントナイト、クレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、多孔質体等が挙げられる。
【0018】
本発明の有害生物防除剤または有害生物防除組成物を製剤とする際には、適宜、凍結防止剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤及び増粘剤などを添加することができる。
凍結防止剤としては、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルカルビトール、3-メチル-メトキシブタノール等が挙げられる。
消泡剤としては、例えばアンチフォームE-20(シリコーンエマルジョン、花王(株)、商品名)、アンチフォームC(東レ・ダウコーニング社、商品名)、アンチフォームCエマルション(東レ・ダウコーニング社、商品名)、ロードシル454(ソルベイ社、商品名)、ロードシルアンチフォム432(ソルベイ社、商品名)、TSA730(タナック社、商品名)、TSA731(タナック社、商品名)、TSA732(タナック社、商品名)、YMA6509(タナック社、商品名)等のシリコーン系消泡剤、フルオウェットPL80(クラリアント社、商品名)等のフッ素系消泡剤が挙げられる。
防腐剤としては、例えばバイオホープ及びバイオホープL(化学名:有機窒素硫黄系複合物、有機臭素系化合物、ケイ・アイ化成(株)、商品名)、ベストサイド-750(化学名:イソチアゾリン系化合物、2.5~6.0%、日本曹達(株)、商品名)、プリベントールD2(化学名:ベンジルアルコールモノ(ポリ)ヘミホルマル、ランクセス社、商品名)、PROXEL GXL(S)(化学名:1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、20%、ロンザ社、商品名)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(トミノックスTT、(株)エーピーアイコーポレーション、商品名/IRGANOX1010またはIRGANOX1010EDS、チバ・ジャパン(株)、商品名)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシ・アニソール(BHA)、没食子酸プロピル、及びビタミンE、混合トコフェロール、α-トコフェロール、エトキシキン及びアスコルビン酸等が挙げられる。
増粘剤としてはPVP K-15(化学名:ポリビニルピロリドン、東京化成工業(株)、商品名)、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、グアーガム、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
【0019】
<有害生物について>
本発明の対象である有害生物について、以下に説明する。
害虫としては、例えば、半翅目(ウンカ類、ヨコバイ類、アブラムシ類、コナジラミ類など)、鱗翅目(ヨトウムシ類、コナガ、ハマキムシ類、メイガ類、シンクイムシ類、モンシロチョウなど)、鞘翅目(ゴミムシダマシ類、ゾウムシ類、ハムシ類、コガネムシ類など)、ダニ目(ハダニ科のミカンハダニ、ナミハダニなど、フシダニ科のミカンサビダニなど)等を挙げることができる。また、線虫(ネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シンガレセンチュウ、マツノザイセンチュウなど)、ネダニ、衛生害虫(例えば、ハエ、カ、ゴキブリなど)、貯蔵害虫(例えば、コクヌストモドキ類、マメゾウムシ類など)、木材害虫(例えば、イエシロアリ、ヤマトシロアリ、ダイコクシロアリなどのシロアリ類、ヒラタキクイムシ類、シバンムシ類、シンクイムシ類、カミキリムシ類、キクイムシ類など)を挙げることができる。
病原菌としては、例えば、コムギ赤さび病、大麦うどんこ病、キュウリべと病、イネいもち病、トマト疫病など)を挙げることができる。
有害生物は雑草も含む。広葉雑草としては、例えばアサガオ、ベルベットリーフ、ヒルガオ、シロツメクサ、タンポポ、ツボスミレ、チドメグサ、メドハギ、ヤブガラシ、セイタカアワダチソウ、アレチノギク、アメリカセンダングサ、イタドリ、イヌガラシ、イヌタデ、イヌビユ、オオイヌノフグリ、オオバコ、オナモミ、カキドオシ、カタバミ、カナムグラ、カヤツリグサ、カラスノエンドウ、ギシギシ、コニシキソウ、ジシバリ、シロザ、スカシタゴボウ、スギナ、スベリヒユ、セイヨウタンポポ、タケニグサ、ツユクサ、ドクダミ、ナズナ、ノゲシ、ノボロギク、ノミノフスマ、ハコベ、ハハコグサ、ハマスゲ、ハルジオン、ヒメジョオン、ヒメムカシヨモギ、ブタクサ、ホトケノザ、ヤエムグラ、ヨモギ、ワルナスビ等が挙げられる。また、イネ科雑草としては、例えばイヌビエ、エノコログサ、キンエノコロ、ムラサキエノコロ、スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、ニワホコリ、アキメヒシバ、メヒシバ、カゼクサ、カモガヤ(オーチャードグラス)、ススキ、スズメノヒエ、チガヤ、チカラシバ、ヨシ、ササ類が挙げられる。
本発明の有害生物防除方法は、これらの有害生物に対して、本発明の有害生物防除剤または有害生物防除組成物を、噴霧や塗布等により適用することにより行う。また、有害生物が生息し得る場所、例えば、農作物や観葉植物等の育成植物、栽培畑、果樹園、一般家庭内、倉庫、厨房、家具、押入れ、玄関、洗面所等に、噴霧、塗布等により適用することにより行う。
【0020】
特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする本発明の有害生物防除剤が、有害生物防除活性を発揮する作用機構については明らかではないが、有効成分による被膜が有害生物の表面を覆うため、有害生物が呼吸障害を起こし致死にいたるものと推察される。
また、農薬成分を併用する本発明の有害生物防除組成物は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルが農薬成分に対する可溶化力が非常に強いため、農薬成分が微粒子化し、有害生物の表面あるいは有害生物体内への浸透を強力に推進するため、優れた防除効果が得られるものと推察される。
【実施例
【0021】
以下、製剤例および試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
まず、本発明の有害生物防除剤の試験検体例を示す。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0022】
<試験検体>
下記表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステルの提供を受け、これらを各種評価試験の試験検体として使用した。
【表1】
【0023】
<実施例1:環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量に関する評価試験>
(1)処方検体
表1に示す試験検体Aと試験検体aを使用して、下記表2に示す組成に基づき処方1-1~1-5の処方検体を調製した。
(2)試験方法
ADVANTEC製の円形定性ろ紙(グレード2)直径70mmを1/4にカットし、その上に供試虫(ハスモンヨトウの若齢幼虫、体長5mm)5匹を載せ、下記表2に示す処方検体(100mL)に、供試虫をろ紙ごと10秒間浸漬し、浸漬1時間経過後の供試虫の致死数を調べた。試験は2回行い、その平均から致死率(%)を算出した。試験の結果は表2に示した。
【0024】
【表2】
【0025】
表2の結果より、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを45重量%、33重量%または27.5重量%含有するポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする処方1-1、処方1-2または処方1-3は、ハスモンヨトウの若齢幼虫に対してそれぞれ100%、100%、70%の致死率を示し、優れた有害生物防除効果を発揮することが明らかとなった。これに対し、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを22重量%または10重量%含有するポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする比較例である処方1-4または比較例である処方1-5は、ハスモンヨトウの若齢幼虫に対して10%または20%の致死率を示し、有害生物防除効果は低いことも明らかとなった。これらの結果より、本発明の有害生物防除剤は、1分子中、ポリグリセリン残基に少なくとも1個の環状構造を有する環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを25重量%以上含有することにより、臨界的な防除効果を発揮することを確認できた。
【0026】
<実施例2:脂肪酸エステルの炭素数に関する評価試験>
(1)処方検体
表1に示す試験検体Bと試験検体b、c-1、c-2を使用して、下記表3に示す組成に基づき処方2-1~2-4の処方検体を調製し、使用した。さらに、実施例1の処方1-1と処方1-5を使用した。
(2)試験方法
上記「実施例1:環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量に関する評価試験」と同じ試験方法により、平均致死率(%)を算出した。試験の結果は表3に示した。
【0027】
【表3】
【0028】
表3の結果より、脂肪酸の炭素数が12または14であり、かつ、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを45重量%含有するポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする処方1-1または処方2-1は、ハスモンヨトウの若齢幼虫に対して100%または90%の致死率を示し、優れた有害生物防除効果を発揮することが確認された。これに対して、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを45重量%含有するものの、脂肪酸の炭素数が18のポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする比較例である処方例2-3は、ハスモンヨトウの若齢幼虫に対して10%の致死率であり、有害生物防除効果は低いことが明らかとなった。また、脂肪酸の炭素数が12または14であるものの、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が10重量%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする比較例である処方1-5、処方2-2も、ハスモンヨトウの若齢幼虫に対する致死率が20%または0%であり、有害生物防除効果は低いことが確認された。これらの結果より、本発明の有害生物防除剤は、脂肪酸の炭素数と、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量を特定の範囲のものとすることにより、臨界的な防除効果を発揮することが明らかとなった。
【0029】
<実施例3:ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量に関する評価試験>
(1)処方検体
表1に示す試験検体Aと試験検体aを使用して、下記表4に示す組成に基づき処方3-1~3-6の処方検体を調製した。
(2)試験方法
供試虫としてアブラムシを使用し、ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量に関する評価試験を行った。下記図1に試験概要模式図を示す。
直径100mm、高さ45mmのプラスチックカップ(以下KPカップともいう。品番:KP-200M、鴻池プラスチック株式会社製)に水を230mL入れ、蓋に切り込みをいれて脱脂綿(85mm×85mm)を差し込み、その上にキャベツ片(直径3cm)を載置した。その上に、供試虫(アブラムシ、約20頭)をのせ、逃亡しないように別のカップで上部を覆い(図1中には図示されていない)、一晩放置し順化させた後、死虫を取り除き、葉片に定着している供試虫数を計測した。
処方検体2mL(1mL×2回)を、15cmの距離から供試虫に噴霧した。24時間後の供試虫の生死を確認し、以下の式により補正致死率を算出した、この補正致死率をまとめ表4に示す。試験は、処方3-6以外の処方3-1~3-5は2回行った。
補正致死率(%)={(無処理区の生存率-処理区の生存率)÷無処理区の生存率}×100
【0030】
【表4】
【0031】
表4の結果より、実施例1の評価試験結果と同様に、アブラムシに対しても、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルを45重量%含有するポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする処方3-1~3-3は、優れた有害生物防除効果を発揮することが明らかとなった。特に、ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が0.1重量%と低薬量である処方3-3においても、良好な有害生物防除効果を奏することも明らかとなった。
【0032】
<実施例4:農薬成分との併用に関する評価試験1>
(1)処方検体
表1に示す試験検体A、Bと試験検体c-1を使用して、下記表5に示す組成に基づき処方4-1~4-4の処方検体を調製した。
表中のアーリーセーフは、住友化学園芸(株)より販売されている、ヤシ油由来の脂肪酸グリセリドを有効成分とする、野菜類の病害虫に有効な農薬成分である。
(2)試験方法
上記「実施例1:環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量に関する評価試験」と同じ試験方法により、平均致死率(%)を算出した。試験の結果は表5に示した。
【0033】
【表5】
【0034】
表5の結果より、農薬成分である脂肪酸グリセリドと併用する、本発明の有害生物防除組成物の具体例である処方4-1、4-2は、ハスモンヨトウの若齢幼虫に対して、アーリーセーフ単体の比較例である処方4-4に比べて、優れた有害生物防除活性を発揮することが明らかとなった。一方、脂肪酸の炭素数が18のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する比較例である処方4-3は、アーリーセーフ単体の比較例である処方4-4と同じ平均致死率であり、本発明の有害生物防除組成物とは異なり、農薬成分との併用効果が得られないことが確認された。
すなわち、本発明の有害生物防除組成物は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと種々の農薬成分とを併用することにより、相乗効果に相当する有害生物防除効果が得られることが、この評価試験結果より明らかとなった。
【0035】
<実施例5:農薬成分との併用に関する評価試験2>
(1)処方検体
表1に示す試験検体Aと試験検体aを使用して、下記表6に示す組成に基づき処方5-1~5-3の処方検体を調製した。
表中のクロチアニジンは、住友化学(株)より販売されているネオニコチノイド系殺虫剤である。
(2)試験方法1(チャバネゴキブリ)
処方検体1.5mL(0.5mL×3噴射)を、供試虫であるチャバネゴキブリ(雌雄各5頭、合計10頭)に対して20cmの距離から噴射した。噴射直後から経時的に供試虫のノックダウン数(行動停止した頭数)を記録し、KT50(供試虫の50%がノックダウンする時間:分)とKT90(供試虫の90%がノックダウンする時間:分)をプロビット法にて算出した。試験は2回行い、KT50とKT90の平均結果を表6に示す。
(3)試験方法2(ハスモンヨトウ)
ADVANTEC製の円形定性ろ紙(グレード2)直径70mmを1/4にカットしたものの上に供試虫(ハスモンヨトウの中齢幼虫、体長20mm)3匹を載せ、下記表6に示す処方検体(100mL)にろ紙ごと10秒間浸漬し、浸漬3時間経過後の供試虫の致死数を調べた。試験は3回行い、その平均から致死率(%)を算出した。試験の結果として平均致死率(%)を表6に示した。
【0036】
【表6】
【0037】
表6の試験方法1のチャバネゴキブリに対する結果(KT50、KT90)より、農薬成分であるクロチアニジンと併用する、本発明の有害生物防除組成物の具体例である処方5-1は、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が10%である比較例である処方5-2に比べて、チャバネゴキブリのKT50、KT90ともに半減し、優れた有害生物防除効果が得られることが明らかとなった。しかも、クロチアニジン単体の比較例である処方5-3と比較例である処方5-2を合わせ比較すると、本発明の有害生物防除組成物(処方5-1)は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと公知の農薬成分とを併用することにより、相加効果以上の相乗的な有害生物防除効果が得られることが、この評価試験結果より明らかとなった。
また、表6の試験方法2のハスモンヨトウに対する結果(平均致死率)からも、本発明の有害生物防除組成物(処方5-1)は、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が10%である比較例である処方5-2とクロチアニジン単体の比較例である処方5-3の結果と比べると、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと公知の農薬成分とを併用することにより、相加効果以上の相乗的な有害生物防除効果が得られることが確認された。
【0038】
<実施例6:農薬成分との併用に関する評価試験3>
(1)処方検体
表1に示す試験検体Aと試験検体aを使用して、下記表7に示す組成に基づき処方6-1~6-3の処方検体を調製した。
表中のフェンプロパトリンは、住友化学(株)より販売されているピレスロイド系殺虫剤である。
(2)試験方法
処方検体1.5mL(0.5mL×3噴射)を、供試虫であるチャバネゴキブリ(雌雄各5頭、合計10頭)に対して20cmの距離から噴射した。噴射直後から全供試虫が致死するまでの時間(分)を測定した。試験は2回行い、その平均結果を表7に示す。
【0039】
【表7】
【0040】
表7の結果より、農薬成分であるフェンプロパトリンと併用する、本発明の有害生物防除組成物の具体例である処方6-1は、環状ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が10%である比較例である処方6-2に比べて、チャバネゴキブリの致死までの時間が極めて短縮され、優れた有害生物防除効果が得られることが明らかとなった。しかも、フェンプロパトリン単体の比較例である処方6-3と比較例である処方6-2を合わせ比較すると、本発明の有害生物防除組成物(処方6-1)は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと公知の農薬成分とを併用することにより、相加効果以上の相乗的な有害生物防除効果が得られることが、この評価試験結果より明らかとなった。
【0041】
<実施例7:農薬成分との併用に関する評価試験4>
(1)処方検体
表1に示す試験検体Aと試験検体c-1を使用して、下記表8に示す組成に基づき処方7-1~7-3の処方検体を調製した。
表中のトレボン乳剤は、三井化学アグロ(株)より販売されている、ピレスロイド系殺虫剤であるエトフェンプロックスを有効量20重量%含有する農薬製剤である。
(2)試験方法
ADVANTEC製の円形定性ろ紙(グレード2)直径110mmの上に供試虫(ハスモンヨトウの中齢幼虫、体長20mm)5匹を載せ、処方検体3mL(0.3mL×10噴射)を、供試虫に対して20cmの距離から噴射した。噴射直後から全供試虫が致死するまでの時間(分)を測定した。試験は2回行い、その平均結果を表8に示す。
【0042】
【表8】
【0043】
表8の結果より、農薬成分であるエトフェンプロックスを含有するトレボン乳剤と併用する、本発明の有害生物防除組成物の具体例である処方7-1は、脂肪酸の炭素数が18のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する比較例である処方7-2とトレボン乳剤単体の比較例である処方7-3を合わせ比較すると、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと公知の農薬成分とを併用することにより、相加効果以上の相乗的な有害生物防除効果が得られることが、この評価試験結果より明らかとなった。
【0044】
<実施例8:農薬成分との併用に関する評価試験5>
(1)処方検体
表1に示す試験検体A、Bと試験検体c-1を使用して、下記表9に示す組成に基づき処方8-1~8-4の処方検体を調製した。
表中のスタークルは、三井化学アグロ(株)より販売されているスタークル顆粒水溶剤であり、ネオニコチノイド系殺虫剤であるジノテフランを有効量20重量%含有する農薬製剤である。同じく、アフェットは、三井化学アグロ(株)より販売されているアフェットフロアブルであり、ピラゾール系殺菌剤であるペンチオピラドを有効量20重量%含有する農薬製剤である。
(2)試験方法
KPカップに供試虫(クロゴキブリ、7頭)に対して、処方検体3mL(1mL×3噴射)を20cmの距離から噴射した。噴射直後から経時的に供試虫のノックダウン数(行動停止した頭数)を記録し、KT50(供試虫の50%がノックダウンする時間:分)とKT90(供試虫の90%がノックダウンする時間:分)をプロビット法にて算出した。試験は2回行い、その平均結果を表9に示す。
【0045】
【表9】
【0046】
表9の結果より、農薬成分を併用する、本発明の有害生物防除組成物の具体例である処方8-1、8-2は、農薬単体の比較例である処方8-4に比べて、クロゴキブリのKT50、KT90ともに半減以下に低下し、優れた有害生物防除活性を発揮することが明らかとなった。しかも、脂肪酸の炭素数が18のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する比較例である処方8-3と農薬成分単体の比較例である処方8-4を合わせ比較すると、本発明の有害生物防除組成物(処方8-1、8-2)は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと公知の農薬成分とを併用することにより、相加効果以上の相乗的な有害生物防除効果が得られることが、この評価試験結果より明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の有害生物防除剤は、食品添加物として使用が許されているポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とするものであるため、環境や人畜に負荷も少なく安全性が高く、育成植物に施用しても薬害の心配がないため、繰り返し使用することができ、非常に有用である。
さらに、本発明の有害生物防除剤は、農園芸分野におけるノニオン系界面活性剤として汎用されるポリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とするものであるため、公知の農薬成分との相溶性も良好で、展着剤としての機能も発揮しながら、少量の農薬成分との併用により優れた有害生物防除効果を得ることができるのみならず、相加効果以上の相乗的な有害生物防除効果を得ることもできる。
図1