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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】自動倉庫システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018119881
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020001840
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】日野 克美
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013020716(DE,A1)
【文献】特開平04-085202(JP,A)
【文献】「Intralogistics automation: Robotic and data-driven miniload and pallet handling」,Youtube [online] [video],2017年04月21日,<https://www.youtube.com/watch?v=dh6dSGgsLt4>,主に0:42~0:59参照。[検索日2022年2月17日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を保管可能な保管棚部を有する自動倉庫システムであって、
荷を搭載して第1方向に移動する第1台車と、
前記保管棚部の間口近傍を、前記第1台車を搭載して前記第1方向と交差する第2方向に移動する第2台車と、
を備え、
前記第2台車は、前記第1方向の第1位置における前記第2方向の第1の端部の高さが、前記第1方向の第1位置と異なる第2位置における前記第2方向の第2の端部の高さよりも低く
前記第1の端部は、前記第2方向で前記第2の端部と同じ側に配置され、前記第2台車上を人が前記第2方向に通過するための凹部を構成し、
前記第2台車の走行路には、人が移動するための床板が設けられていることを特徴とする自動倉庫システム。
【請求項2】
前記第2台車は、前記第2の端部の高さが、前記第1方向の第2位置における前記第2方向の中央部の高さよりも高く構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動倉庫システム。
【請求項3】
前記第2台車は、前記第1方向の第1位置における前記第2方向の両端部の高さが、前記第1方向の第2位置における前記第2方向の少なくとも一方の端部の高さよりも低く構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動倉庫システム。
【請求項4】
前記第1方向の第1位置は端部であり、前記第1方向の第2位置は中央部であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動倉庫システム。
【請求項5】
前記第2台車は、前記第1方向の第1位置とは反対側の端部である第3位置における前記第2方向の端部の高さが、前記第2の端部の高さよりも低く構成されていることを特徴とする請求項4に記載の自動倉庫システム。
【請求項6】
前記第1の端部の前記第1方向幅は、前記第2台車と前記保管棚部の間口との間の隙間より広く構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自動倉庫システム。
【請求項7】
前記第第1の端部の前記第1方向幅は、300mm以上であることを特徴とする請求項6に記載の自動倉庫システム。
【請求項8】
前記第2の端部に、前記第2台車の動作を操作するための操作スイッチを含む操作部が設けられることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の自動倉庫システム。
【請求項9】
前記第1の端部には、人の足を載せるための補強部材が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の自動倉庫システム。
【請求項10】
前記第1の端部の高さは、前記第2台車の下面から400mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の自動倉庫システム。
【請求項11】
荷を保管可能な保管棚部を有する自動倉庫システムであって、
荷を搭載して第1方向に移動する第1台車と、
前記保管棚部の間口近傍を、前記第1台車を搭載して前記第1方向と交差する第2方向に移動する第2台車と、
を備え、
前記第2台車には、人が前記第2方向に通過するための凹部が設けられており、
前記第2台車の走行路には、人が移動するための床板が設けられていることを特徴とする自動倉庫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
少ないスペースで多数の荷を効率的に入庫・出庫可能な自動倉庫システムが知られている。本出願人は、特許文献1によって複数の物品を収納可能な複数の収納棚を備えた自動倉庫システムを開示している。この自動倉庫システムは、保管棚の間で列方向に移動可能な搬送台車と行方向に移動可能な台車とを用いて物品を搬入・搬出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-160040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動倉庫では、保管棚の保守などのために作業員が台車の走行路を移動することがあり、この場合に台車を乗り越えて移動するコースが最短コースである場合もある。しかし、従来の台車はその上を人が乗り越えて移動するための構造を有していないため、作業員が台車を乗り越えることは容易ではない。このため、作業員は最短コースを迂回して保管棚の周囲を大回りしなければならず、労力と時間とを無駄に費やすという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、台車上を人が移動することが可能な自動倉庫システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動倉庫システムは、荷を保管可能な保管棚部を有する自動倉庫システムであって、荷を搭載して第1方向に移動する第1台車と、保管棚部の間口近傍を、第1台車を搭載して第1方向と交差する第2方向に移動する第2台車と、を備える。第2台車は、第1方向の第1位置における第2方向の端部の高さが、第1方向の第1位置と異なる第2位置における第2方向の端部の高さよりも低く構成されている。
【0007】
本発明の別の態様もまた、自動倉庫システムである。この自動倉庫システムは、荷を保管可能な保管棚部を有する自動倉庫システムであって、荷を搭載して第1方向に移動する第1台車と、保管棚部の間口近傍を、第1台車を搭載して第1方向と交差する第2方向に移動する第2台車と、を備える。第2台車には、人が第2方向に通過するための凹部が設けられている。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、台車である。この台車は、荷を搭載して保管棚部内を第1方向に移動する第1台車を有する自動倉庫において、第1台車を搭載して第1方向と交差する第2方向に移動する自動倉庫用の台車であって、第1方向の第1位置における第2方向の端部の高さが、第1方向の第1位置と異なる第2位置における第2方向の端部の高さよりも低く構成されている。
【0009】
本発明のさらに別の態様もまた、台車である。この台車は、荷を搭載して保管棚部内を第1方向に移動する第1台車を有する自動倉庫において、第1台車を搭載して第1方向と交差する第2方向に移動する自動倉庫用の台車であって、人が第2方向に通過するための凹部が設けられている。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、台車上を人が移動することが可能な自動倉庫システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る自動倉庫システムの一例を概略的に示す平面図である。
図2図1の自動倉庫システムの保管棚部の配置を示す平面図である。
図3図1の自動倉庫システムを概略的に示す側面図である。
図4図1の自動倉庫システムの保管棚部の配置を示す側面図である。
図5図1の自動倉庫システムの第1台車の一例を概略的に示す平面図である。
図6図5の第1台車の正面図である。
図7図1の自動倉庫システムの第2台車の一例を概略的に示す平面図である。
図8図7の第2台車の正面図である。
図9図7の第2台車の側面図である。
図10】比較例に係る第2台車を示す側面図である。
図11図1の自動倉庫システムの第2台車を示す側面図である。
図12図1の自動倉庫システムの第2台車を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0014】
[実施の形態]
図1図4を参照して実施の形態に係る自動倉庫システム100の構成について説明する。図1は、実施の形態に係る自動倉庫システム100の一例を概略的に示す平面図である。図2は、自動倉庫システム100の保管棚部22の配置を示す平面図である。図3は、自動倉庫システム100を概略的に示す側面図である。図4は、自動倉庫システム100の保管棚部22の配置を示す側面図である。これらの図では、柱や梁などの記載を省略している。
【0015】
説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX軸方向、X軸方向に直交する水平な方向をY軸方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系を定める。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。また、X軸方向を「行方向」ということもある。また、Y軸方向を「列方向」ということもある。また、Z軸方向を「上下方向」ということもある。このような方向の表記は自動倉庫システム100の構成を制限するものではなく、自動倉庫システム100は、用途に応じて任意の構成で使用されうる。なお、以降の説明ではXYZ直交座標系を用いて説明するが、必ずしもX軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに直交していなくとも、略90度で交差していればよい。
【0016】
先に、自動倉庫システム100の全体構成を説明する。自動倉庫システム100は、多数の荷12を保管可能な保管棚部22を含むシステムである。自動倉庫システム100は、保管棚部22と、第1台車14と、第2台車16と、第1レール40と、第2レール44と、給電部34と、制御部18と、モード設定部30と、を含む。実施の形態では、第1方向としてY軸方向を、第2方向としてX軸方向を例示している。保管棚部22において、第1レール40はY軸方向に延在する。走行路47は、第2台車16の走行路であって保管棚部22の端部近傍にX軸方向に延設される。第1台車14および第2台車16を総称するときは単に「台車」ということがある。第2レール44と給電部34とは走行路47においてX軸方向に延在する。なお、本明細書では、保管棚部22の走行路47側の端部を、「保管棚部22の間口」という。
【0017】
制御部18は、MPU(Micro Processing Unit)などを含んで構成され、ユーザからの操作結果に基づき荷12の移動を制御する。制御部18は、荷12の移動を制御するために第1台車14および第2台車16の動作を制御することができる。モード設定部30は、自動倉庫システム100の動作モードを設定する設定手段である。本実施形態のモード設定部30は、複数のモードを設定することができる。モード設定部30は、設定結果を制御部18に提供する。
【0018】
なお、本実施形態では、荷12をパレット(不図示)に載せた状態で扱うが、これに限られず、パレットを用いずに荷12を単独で扱うようにしてもよい。なお、荷12をパレットに載せた状態で搬送することを、単に荷12を搬送するという。
【0019】
(保管棚部)
保管棚部22は、床部Lgに設置され、多数の荷12を保管可能ないわば高密度保管型の保管スペースである。本実施形態では、走行路47を挟んで列方向の両側に保管棚部22が設けられている。保管棚部22の構成は、複数の荷12を収容・保管可能であれば、特に限定されない。自動倉庫システム100は、上下方向に層状に重ねられたN(N≧2)段の保管棚部22を有する。本実施形態は3段の保管棚部22を有する。層状に重ねられたN段の保管棚部22を保管棚群20という。なお、床部Lgに最も近い1段目の保管棚部22を単に「1段目」と、2段目の保管棚部22を単に「2段目」と、3段目の保管棚部22を単に「3段目」ということがある。
【0020】
各段の保管棚部22は、X軸方向に並べられた複数(例えば6つ)の保管列24を含み、各保管列24はY軸方向に接続された複数の保管部26を含む。保管部26は、荷12を保管する単位である。各保管列24の第2レール44側の間口は、保管棚部22の間口であって、第1台車14が出入りする出入口として機能する。
【0021】
第1レール40は、第1台車14が走行するための走行路である。第1レール40は、各保管列24において、Y軸方向に延在する。第2レール44は、第2台車16が走行するためのレールである。第2レール44は、各保管列24を横断するようにX軸方向に延在する。本実施形態の第2レール44は、保管列24の間口に接近した位置に設けられている。第1レール40および第2レール44を総称するときは単にレールという。第1レール40は、X軸方向に延在する第1支持部材42上に支持される。第2レール44は、Y軸方向に延在する横梁46上に支持される。なお、第1支持部材は横梁46上に支持されてもよい。
【0022】
(第1台車)
次に、図5図6も参照して第1台車14について説明する。図5は、第1台車14の一例を概略的に示す平面図である。図6は、第1台車14の正面図である。第1台車14は、荷12を搬送するために、保管列24の中で第1レール40をY軸方向に走行する。第1台車14は、保管部26に対して荷12を出し入れする。第1台車14は、第2台車16に乗降するために、第2台車16上をY軸方向に走行する。
【0023】
第1台車14は、車体14bと、載置台部14cと、リフト機構14dと、複数(例えば4個)の車輪14fと、を主に含む。車体14bは、上下方向に偏平な略直方体形状の輪郭を有する。車体14bの内部には、複数の車輪14fを駆動するモータ(不図示)と、このモータを制御する制御回路(不図示)と、バッテリ14gと、を搭載している。第1台車14は、バッテリ14gの電力によってモータを駆動するように構成されている。バッテリは繰り返し充電可能なリチウムイオンバッテリなどの二次電池である。本実施形態のバッテリ14gは、第2台車16上に載置されている状態で、第2台車16によって充電される。
【0024】
載置台部14cは、荷12を持上げて保持する部分である。リフト機構14dは、載置台部14cを昇降させる機構である。図6において、上昇状態の載置台部14cを破線で示し、下降状態の載置台部14cを実線で示す。リフト機構14dは、載置台部14cを上昇させ、荷12を保管部26の載置面から持上げることができる。リフト機構14dは、載置台部14cを降下させて荷12を保管部26の載置面に降ろすことができる。複数の車輪14fは第1レール40上および第2台車16上を転動することができる。
【0025】
(第2台車)
次に、図7図9も参照して第2台車16について説明する。図7は、第2台車16の一例を概略的に示す平面図である。図8は、第2台車16の正面図であり、第1台車14を搭載した状態を示している。図9は、第2台車16の側面図である。第2台車16は、第2レール44をX軸方向に走行する。第2台車16は、空荷の状態または荷12を搭載した状態の第1台車14を搬送する。
【0026】
第2台車16は、ベース16aと、台車搭載部16cと、第1端部カバー16dと、第2端部カバー16eと、複数(例えば、4個)の車輪16fと、集電ユニット38と、を主に含む。ベース16aは、第2台車16の各構成要素を搭載するための基台である。ベース16aは、第2台車16の下部において、X軸方向およびY軸方向に延在する板状の部材である。第1端部カバー16dは、第2台車16のX軸方向の一方の端部においてベース16a上に設けられる。第2端部カバー16eは、第2台車16のX軸方向の他方の端部においてベース16a上に設けられる。台車搭載部16cは、第2台車16のX軸方向の中央部においてベース16a上に設けられる。したがって、台車搭載部16cは、第1端部カバー16dと第2端部カバー16eとの間に配置されている。
【0027】
(台車搭載部)
台車搭載部16cは、第1台車14を搭載するための部分で、第1台車14をガイドする一対のガイド部16jを有する。一対のガイド部16jは、ベース16aの上面において、第1台車14を搭載する空間をX軸方向に挟むように互いに離間して配置される。各ガイド部16jの正面視の断面は、角張った横向きU字形状を有する。台車搭載部16cは、第2台車16のX軸方向の両端の端部カバーから下向に窪んでおり、第2台車16は正面視で略凹形状を呈する。
【0028】
(第1端部カバー)
第1端部カバー16dは、ベース16a上において、車輪16fを駆動するためのモータ16kと、モータ16kの回転を車輪16fに伝達するギア装置16gと、モータ16kを制御する制御回路(不図示)と、一方の端部側の2つの車輪16fとを収納するケーシングとして機能する。第1端部カバー16dは、これらの要素を少なくとも上から覆うように構成されている。第1端部カバー16dには、第2台車の動作を操作するための操作スイッチを含む操作部16pが設けられている。例えば、操作部16pには、操作スイッチとして、動作の開始と停止とを切り換える電源スイッチ(不図示)と、非常停止ボタン(不図示)とが設けられている。
【0029】
第1端部カバー16dの上面は、高位置部16hと、高位置部16hより低位置に構成される低位置部とを有する。高位置部16hは、第1端部カバー16dのY軸方向の中央部において上向きに突出した部分である。低位置部は、第1端部カバー16dのY軸方向の両端に設けられる第1低位置部16mと第2低位置部16nとを含む。第1低位置部16mと第2低位置部16nとは、高位置部16hから下向きに窪んだ部分である。したがって、高位置部16hは、第1低位置部16mと第2低位置部16nとにY軸方向から挟まれている。低位置部については後述する。
【0030】
(第2端部カバー)
第2端部カバー16eは、ベース16a上において、他方の端部側の2つの車輪16fを収納するケーシングとして機能する。第2端部カバー16eは、車輪16fを少なくとも上から覆うように構成されている。本実施形態では、第2端部カバー16eの高さは、台車搭載部16cの高さよりも高く、第1端部カバー16dの高さよりも低く構成されている。
【0031】
車輪16fは、第2レール44上を走行するためのものである。第1端部カバー16d側の2つの車輪16fは、モータ16kに駆動される駆動輪であり、第2端部カバー16e側の2つの車輪16fは、モータに駆動されない従動輪である。
【0032】
1つのモータにより2つの車輪16fを駆動するようにしてもよいが、本実施形態では、2つの車輪16fのそれぞれに対応して2つのモータ16kが設けられている。2つのモータ16kは、互いにY軸方向に離間して、各車輪16fの近傍に配置される。モータ16kは、第1端部カバー16dの下部に長手方向がX軸方向に延びるように横長配置される。ギア装置16gは、回転軸の方向を変えて、モータ16kの回転を車輪16fに伝達する。モータ16kが車輪16fの近傍に配置されているので、伝達機構が簡略化され、ひいては第1端部カバー16dの小型化を図ることができる。
【0033】
集電ユニット38は、給電部34(図1も参照)に接触して電力の供給を受ける。第2台車16は、その集電ユニット38を介して給電部34から電力を受け取る。第2台車16は、受け取った電力によってモータ16kを駆動するように構成されている。第2台車16は、受け取った電力によって、第1台車14のバッテリを充電することができる。
以上が、自動倉庫システム100の全体構成の説明である。
【0034】
(比較例)
次に、第2台車の比較例について説明する。比較例の第2台車216は、本実施形態の第2台車16を発明する過程において案出されたものである。図10は、比較例に係る第2台車216の周囲を示す側面図である。この図は、走行路47に配置された状態の第2台車216を示している。第2台車216は、低位置部を有しておらず、モータ16kの配置が異なる点で本実施形態の第2台車16と相違し、その他の構成は同じである。したがって、重複する説明を省き、相違点について重点的に説明する。
【0035】
第2台車の走行路47は、Z軸方向に離間して配置される2本の横梁46の間において、Y軸方向に離間して配置される2本の縦柱20nに挟まれた略矩形の縦断面を有する。第2台車は、走行路47の下部において横梁46に配置された第2レール44を走行する。第1レール40は、横梁46に支持された第1支持部材42上に配置されている。第1台車14が第1レール40から第2台車に容易に乗り移れるように、第1レール40の端部は第2台車に接近していることが望ましい。このため、保管棚部22の間口と第2台車との間の隙間は狭く構成されている。図10では、保管棚部22の間口は、縦柱20nの走行路47側の側部である。走行路47の下部には、床板(不図示)が設けられており、作業員8はこの床板上を移動することができる。
【0036】
保管棚部22のメンテナンス等のために、作業員8が第2台車の走行路47をその延在方向(X軸方向)に移動することがある。この場合に、図10に示すように、走行路47の途中に第2台車216があると、これが作業員8の移動を妨げることがある。上述したように、縦柱20nと第2台車216との間の隙間は狭いので、作業員8はこの隙間を通過することはできない。また、第2台車216は、作業員8が乗り越えて移動するための構造(第1、第2低位置部16m、16n)を有していない。このため、作業員8が第2台車216を乗り越えようとすると、かなり無理な姿勢をとらなければならない。作業員8が、第2台車216の上で無理な姿勢をとると、安全上の問題が生じるおそれがある。このため、作業員8は、第2台車216上を通る経路を迂回し、保管棚部22の周囲を大回りしなければならず、労力と時間とを無駄に費やすという問題がある。
【0037】
比較例を踏まえ、本実施形態の第2台車16について説明する。図11は、第2台車16の周囲を示す側面図である。この図は、走行路47に配置された状態の第2台車16を示している。図11の走行路47の構成は、図10の走行路47と同じである。本発明者らは、作業員8が第2台車16と保管棚部22との間を容易に通過可能とするために、第2台車16に作業員8の通過を許容する通路用の凹部(以下、「通路凹部」という)を設けることを発案した。通路凹部は、第2台車16の上面の高さが高い高位置部から下向きに後退した低位置部であってもよい。通路凹部は、作業員8の通過を許容するものであればよく、保管棚部22の間口に対面するように設けられてもよい。また、通路凹部と保管棚部22の間口との間に介在するものがあってもよい。
【0038】
しかし、比較例の第2台車216では、車輪駆動用のモータ16kが縦長配置されており、モータ16kの長手方向が上下方向に延在しているため、モータ16kの上部空間が狭く、作業員8が通過可能な形状の通路凹部を設けることが困難であった。そこで、本実施形態の第2台車16では、モータ16kは横長配置されており、モータ16kの長手方向は水平方向(X軸方向)に延びている。モータ16kを横長配置したことにより、モータ16kの上部空間が通路凹部として利用可能になり、第2台車16では、モータ16kの上部に作業員8がX軸方向に通過するための低位置部が設けられている。
【0039】
(通路凹部)
図7図11図12を参照して、第2台車16の通路凹部について説明する。図12は、第2台車16を模式的に示す図である。図12(a)は、平面視の第2台車16およびその周辺を示している。図12(b)は、図12(a)のA-A線に沿った断面の輪郭を示している。特に、この図は、X軸方向に投影した第2台車16の外形を示しているといえる。これらの図では、説明に重要でない部分の記載を省いている。第2台車16は、X軸方向において中央に設けられる中央部16bと、X軸方向において中央部16bの両側に設けられる第1端部16xおよび第2端部16yと、を有する。本実施形態では、第1端部16xとして第1端部カバー16dを例示し、第2端部16yとして第2端部カバー16eを例示し、中央部16bとして台車搭載部16cを例示している。
【0040】
第1端部16xにおいて、Y軸方向の第1位置におけるX軸方向の端部16sの高さは、Y軸方向の第1位置と異なる第2位置におけるX軸方向の端部16uの高さよりも低く構成される。本実施形態では、端部16sとして第1端部カバー16dの上面の第1低位置部16mを例示し、端部16uとして高位置部16hを例示している。この構成によれば、端部16sの高さが端部16uの高さよりも低く構成されるので、端部16sを、作業員8がX軸方向に通過するための通路凹部として用いることができる。
【0041】
第2台車16は、Y軸方向の第2位置におけるX軸方向の端部16uの高さが、Y軸方向の第2位置におけるX軸方向の中央部16bの高さよりも高く構成されてもよい。この場合、端部16uの高さが高いので、端部16uの下部に第2台車16を駆動する機構を収納することができる。駆動機構を端部16uに収納することにより、中央部16bの高さを低くすることができる。
【0042】
第2台車16は、Y軸方向の第1位置におけるX軸方向の両方の端部16s、16vの高さが、Y軸方向の第2位置におけるX軸方向の少なくとも一方の端部16uの高さよりも低く構成されてもよい。この場合、両方の端部16s、16vの高さが低いので、第2台車16の端部16sから端部16vまでを、作業員8がX軸方向に通過する通路として使用することが可能になる。本実施形態では、端部16vとして、第2端部カバー16eのY軸正方向の端に近い部分を例示している。端部16vの高さは、端部16sの高さよりも低く構成されている。
【0043】
Y軸方向の第1位置は端部であり、Y軸方向の第2位置は中央部であってもよい。この場合、端部16sの高さが、端部16uの高さよりも低く構成されるので、第2台車16のY軸方向の端側に作業員8のための通路凹部を設けることができる。
【0044】
第2端部16yが作業員8の通過を妨げないようにするために、第2端部16yの高さは低いことが望ましい。この観点から、第2台車16は、Y軸方向の第1位置とは反対側の端部である第3位置におけるX軸方向の端部16wの高さが、端部16uの高さよりも低く構成されてもよい。この場合、端部16wが低く構成されているので、端部16wが作業員8の通過を妨げる可能性を低くすることができる。本実施形態では、端部16wとして、第2端部カバー16eのY軸負方向の端に近い部分を例示している。
【0045】
作業員8の通過を可能にするために、端部16sの幅は広いことが望ましい。この観点から、端部16sのY軸方向幅W2は、第2台車16と保管棚部22の間口との間の隙間W1より広く構成されてもよい。この場合、端部16sの幅が狭い場合に比べて、作業員8は、端部16sをスムーズに通過することができる。
【0046】
作業員8の通過を容易にするために、端部16sの幅は、その上を一方の足が通過容易な大きさであることが望ましい。この観点から、端部16sのY軸方向幅W2は100mm以上であってもよい。作業員8の通過をよりスムーズにするために、端部16sの幅は、その上を両足が通過可能な大きさであることが望ましい。この観点から、端部16sのY軸方向幅W2は300mm以上であってもよい。本実施形態の第1低位置部16mのY軸方向幅W2は380~390mmの範囲に設定されている。なお、第1低位置部16mのY軸方向幅W2は600mm以下であってもよい。
【0047】
安全上の観点から、作業員8が走行路47の近傍で作業する際、その作業員8が事前に第2台車16の動作を停止できることが望ましい。また、作業終了後にはその作業員8が第2台車16の動作を再開できることが望ましい。このため、端部16uの近傍に、第2台車16の動作を操作するための操作スイッチを含む操作部16pが設けられている。この場合、作業員8は、作業をする前に停止操作をすることができ、作業終了後は速やかに再開操作をすることができる。
【0048】
作業員8の通過を容易にするために、端部16sは足を載せるステップとして使用できることが望ましい。端部16sには、人の足を載せるための補強部材16zが設けられている。補強部材16zは、ステップとして人の足を載せ得る程度の強度を有する。補強部材16zは、ステップとして使用できるものであればよく、一例として、表面に滑り止め用の突起を有する縞鋼板などで構成されてもよい。補強部材16zは、端部16sの全体に設けられてもよいし、一部に設けられてもよい。
【0049】
作業員8の通過を可能にするために、端部16sの高さは低いことが望ましい。この観点から、端部16sの高さH1(補強部材16zを含めた高さ)は、第2台車16の下面(この例では、ベース16aの下面)から400mm以下に設定されてもよい。この場合、作業員8は端部16sを通過可能であることが確認されている。作業員8の通過をよりスムーズにするために、端部16sの高さは、第2台車16の下面から350mm以下に設定されてもよい。この場合、通過がスムーズになる。本実施形態の第1低位置部16mの第2台車16の下面からの高さは320mm~340mmの範囲に設定されている。また、端部16uの高さH2は、第2台車16の下面から700mm以下に設定されてもよい。本実施形態の高位置部16hの高さは第2台車16の下面から580mm~620mmの範囲に設定されている。なお、端部16sの高さH1は100mm以上であってもよい。
【0050】
第2台車16の平面視の形状は、Y軸方向範囲を2等分してX軸方向に延びる線Laに対して線対称である。また、第2台車16の側面視の形状は、Y軸方向範囲を2等分してZ軸方向に延びる線Lbに対して線対称である。したがって、第1端部16xのY軸方向で端部16sとは反対側の端部16tは端部16sと対称な形状を有している。つまり、端部16tのY軸方向幅および高さは端部16sと同じであり、補強部材16zは端部16tにも設けられている。端部16tは、端部16sと同様に通路凹部として用いることができる。
【0051】
(搬入・搬出動作)
次に、図1図2を参照して、このように構成された自動倉庫システム100の搬入・搬出動作を説明する。自動倉庫システム100は、フォークリフトなどによって倉庫外部からの荷12を入庫部(不図示)に搬入する。自動倉庫システム100は、入庫部に搬入された荷12を、第1台車14および第2台車16によって所定の保管部26に搬送して保管する。自動倉庫システム100は、所定の保管部26で保管していた荷12を、第1台車14および第2台車16によって出庫部(不図示)に搬送する。自動倉庫システム100は、出庫部に搬送された荷12を、フォークリフトなどによって倉庫外部に搬出する。
【0052】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0053】
(変形例)
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施の形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施の形態と重複する説明を適宜省略し、実施の形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0054】
実施の形態の説明では、高位置部16hの両側に第1低位置部16mと第2低位置部16nとが設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。第1低位置部16mと第2低位置部16nの一方は設けられなくてもよい。この場合、高位置部16hの範囲が端まで連続していてもよい。
【0055】
実施の形態の説明では、第1低位置部16mと第2低位置部16nとが対称に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、第2低位置部16nの高さや幅は第1低位置部16mと異なっていてもよい。
【0056】
実施の形態の説明では、保管棚部22の間口が縦柱20nで規定される例を示したが、本発明はこれに限られない。保管棚部22の走行路47側の側部に、縦柱20nとは別の部材であって、間口を規定する部材が設けられてもよい。例えば、この別の部材は、作業員8の移動を容易にするためのガイド部材や手摺を含んでもよい。
【0057】
実施の形態の説明では、補強部材16zが第1端部16xに設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。補強部材16zは、第2端部16yや中央部16bなど第1端部16x以外の箇所に設けられてもよい。
【0058】
実施の形態の説明では、台車がレールを有する走行路を走行する例を示したが、本発明はこれに限られない。台車はレールを有しない走行路を走行するものであってもよい。
【0059】
実施の形態の説明では、自動倉庫システム100が3段の保管棚部22を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。自動倉庫システムは2段以下または4段以上の保管棚部を備えてもよい。
【0060】
第1台車14を各段の各列に設けることは必須ではなく、第1台車14は各列に設けられなくてもよい。
【0061】
複数の段の保管棚部22の間で荷12を昇降するための昇降機構が設けられてもよい。
【0062】
保管列24の保管部26の数を一様に構成することは必須ではない。保管列24を構成する保管部26の数は、保管棚部22を収容する建物の壁の凹凸に応じて、数が多いものと少ないものとが設けられてもよい。
【0063】
上下方向に積層される保管列24の段数を一様に構成することは必須ではない。保管列24の段数は、保管棚部22を収容する建物の天井の高さに応じて、段数が多い領域と少ない領域とが設けられてもよい。
【0064】
荷12がパレットを含むことは必須ではない。本自動倉庫システムは、パレットを含まない荷を取り扱うようにしてもよい。
【0065】
フォークリフトに代えて、クレーンを備えた移載装置など、別の種類の移載装置によって、荷12を搬入・搬出するようにしてもよい。
【0066】
これらの各変形例は、実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0067】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0068】
12・・荷、 14・・第1台車、 16・・第2台車、 16b・・中央部、 16p・・操作部、 16s、16u・・端部、 16x・・第1端部、 16y・・第2端部、 16z・・補強部材、 22・・保管棚部、 40・・第1レール、 44・・第2レール、 47・・走行路、 100・・自動倉庫システム。
図1
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