(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】水性組成物及びその硬化物、止水剤原料セット、止水剤、並びに漏水部からの漏水を止水する方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20220907BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220907BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20220907BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20220907BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20220907BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
E04G23/02 B
C09K3/10 E
C09K3/10 Q
C09K3/10 Z
C09K3/10 R
E04B1/66 B
F16L5/02 N
C08F220/28
C08F220/06
(21)【出願番号】P 2018121807
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2017131955
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392035064
【氏名又は名称】保土谷建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】樽本 直浩
(72)【発明者】
【氏名】生田目 渉
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-078050(JP,A)
【文献】特開2018-173474(JP,A)
【文献】特開2001-294463(JP,A)
【文献】特開2004-277492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/06
C08F 220/28
C09K 3/10
E04G 23/00
E04B 1/00
F16L 5/00
C09K 17/22
C09K 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ジ(メタ)アクリル酸塩と、を含有する水性組成物であって、
水性組成物中の固形分全量を基準として、前記ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの含有量は25~75質量%であり、前記ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は16~62質量%であ
り、
コンクリート構造物における漏水又はケーブル管路口の漏水の止水に用いられる、水性組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2はアルキル基を表し、mは2~30の整数を表し、nは2~50の整数を表す。]
【請求項2】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを更に含有する、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、水性組成物中の固形分全量を基準として10質量%以下である、請求項2に記載の水性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水性組成物である第1の原料と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物である第2の原料と、を備え
、
コンクリート構造物における漏水又はケーブル管路口の漏水の止水に用いられる、止水剤原料セット。
【請求項5】
過硫酸塩を含む組成物である第3の原料を更に備える、請求項4に記載の止水剤原料セット。
【請求項6】
前記第1の原料とは別個に、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性組成物である第4の原料を更に備える、請求項4又は5に記載の止水剤原料セット。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体と、過硫酸塩と、を含有する混合物の硬化物
であって、
コンクリート構造物における漏水又はケーブル管路口の漏水の止水に用いられる、硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物からなる止水剤
であって、
コンクリート構造物における漏水又はケーブル管路口の漏水の止水に用いられる、止水剤。
【請求項9】
コンクリート構造物における漏水部からの漏水
又はケーブル管路口における漏水部からの漏水を止水する方法であって、
請求項1~3のいずれか一項に記載の水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物と、過硫酸塩を含む組成物と、を含有する混合物を得る混合工程と、
前記混合物を漏水部に注入する注入工程と、を備える、方法。
【請求項10】
前記注入工程の前に、前記漏水部に多孔質体を配置する工程を更に備え、
前記注入工程において、前記多孔質体に前記混合物を注入する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物及び硬化物、止水剤原料セット、止水剤、並びに漏水部からの漏水を止水する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物に発生するひび割れからの漏水、又はケーブルを収納したパイプの管路口からの漏水による浸水を止水する方法として、様々な高分子系止水剤を漏水部に注入してこれを硬化させる方法が知られている。
【0003】
一般に、コンクリート構造物からの漏水又は湧水を止水するためには、液状やスラリー状のセメント系止水剤を注入する。漏水部のクラック(ひび割れ)幅が大きく、漏水量が多い場合は、ケイ酸ソーダ(水ガラス)又はケイ酸ソーダとセメントとの混合物を漏水部に注入して止水する方法が行われている。また、クラック幅の小さな漏水部又は漏水量が微量である箇所には、微粒子のセメントを注入する方法が一般的に用いられている。しかしながら、ケイ酸ソーダ又はケイ酸ソーダとセメントとの混合物を注入する方法では、ケイ酸ソーダのゲル化物が脆く、且つ収縮率が大きいため、止水後に再び漏水が生じやすい。一方、微粒子セメントを注入する方法では、短時間での固結が困難であること、微小なクラックに深く浸透しないこと、自己収縮によるクラック生成が頻繁に起こること、といった問題があり、解決が望まれていた。
【0004】
上記のセメント系止水剤の他には、エポキシ系、ポリウレタン系等の止水剤も使用されている。エポキシ系及びポリウレタン系の止水剤は、硬化後の止水剤のコンクリート、木材、金属等からなる漏水部の材料への接着力が強い。しかし、漏水部の材料温度や振動等の外的環境条件の変化に追随しきれず、接着部から新たなクラックが生じることがある。
【0005】
一方、上記の止水剤に代えて、(メタ)アクリル酸エステル系の止水剤が開発され、使用されている。(メタ)アクリル酸エステル系の止水剤として、特許文献1及び2には、アクリルモノマーとして水酸基末端型のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含有する止水剤が開示されている。また、特許文献3及び4には、アクリルモノマーとしてポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを主に含有する止水剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭58-206680号公報
【文献】特許第4916695号公報
【文献】特開昭61-221281号公報
【文献】特開2015-205981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(メタ)アクリル酸エステル系止水剤は、漏水部に充填されることにより、漏水を抑制し、止水効果が発揮される。この際、可能な限り長期間にわたって止水効果を持続させるために、止水剤には優れた水膨張性(水を吸収して膨張する性質)が求められる。しかし、特許文献1~4に記載されているようなアクリル系止水剤においては、必ずしも十分な水膨張性が得られず、止水効果を持続することが難しい。
【0008】
そこで本発明は、水膨張性に優れた止水剤、該止水剤を得るための止水剤原料セット、これらに好適に用いられる水性組成物及びその硬化物、並びに、該組成物を用いた止水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の態様として、下記式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ジ(メタ)アクリル酸塩と、を含有する水性組成物であって、水性組成物中の固形分全量を基準として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの含有量は25~75質量%であり、ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は16~62質量%である、水性組成物を提供する。
【化1】
式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2はアルキル基を表し、mは2~30の整数を表し、nは2~50の整数を表す。
【0010】
水性組成物は、好ましくは、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを更に含有する。
【0011】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは、水性組成物中の固形分全量を基準として10質量%以下である。
【0012】
本発明は、第2の態様として、上記の水性組成物である第1の原料と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物である第2の原料と、を備える止水剤原料セットを提供する。
【0013】
止水剤原料セットは、好ましくは、過硫酸塩を含む組成物である第3の原料を更に備える。
【0014】
止水剤原料セットは、好ましくは、第1の原料とは別個に、上記の水性組成物である第4の原料を更に備える。
【0015】
本発明は、第3の態様として、上記の水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体と、過硫酸塩と、を含有する混合物の硬化物を提供する。
【0016】
本発明は、第4の態様として、上記の硬化物からなる止水剤を提供する。
【0017】
本発明は、第5の態様として、漏水部からの漏水を止水する方法であって、上記の水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物と、過硫酸塩を含む組成物と、を含有する混合物を得る混合工程と、混合物を漏水部に注入する注入工程と、を備える、方法を提供する。
【0018】
第5の態様における方法は、好ましくは、注入工程の前に、前記漏水部に多孔質体を配置する工程を更に備え、注入工程において、多孔質体に混合物を注入する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水膨張性に優れた止水剤、該止水剤を得るための止水剤原料セット、これらに好適に用いられる水性組成物及びその硬化物、並びに、該組成物を用いた止水方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味する。
【0022】
本発明の一実施形態における止水剤は、第1の原料と、第2の原料と、をそれぞれ別個に備える止水剤原料セットから調製され、これらの原料を含有する混合物の硬化物である。
【0023】
第1の原料は、一実施形態において、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ジ(メタ)アクリル酸塩と、を含有する水性組成物である。
【0024】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、例えば下記式(1)で表される。本実施形態に係る水性組成物は、下記式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートを1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【化2】
式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2はアルキル基を表し、mは2~30の整数を表し、nは2~50の整数を表す。
【0025】
R2で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。R2で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上であり、また、好ましくは、20以下、15以下、10以下、5以下、3以下、又は2以下である。R2で表されるアルキル基は、メチル基であってもよい。
【0026】
mは、好ましくは2以上の整数であり、また、好ましくは、30以下、25以下、20以下、10以下、5以下、又は3以下の整数である。mは、特に好ましくは2であり、すなわち、式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、好ましくはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートにおいては、重合させて得られる硬化物のエステル部分が加水分解されにくく、例えば、アルカリ性の条件下でもエステル部分が崩壊しにくい。そのため、得られる硬化物が十分な強度を保持することができる。同一分子内に含まれる複数の-(CmH2m-O)-においては、それぞれのmが異なる数であってもよい。
【0027】
nの数は、式(1)の化合物における、ポリアルキレングリコール部分の重合度を意味し、2~50の整数を表す。nは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上の整数であり、また、好ましくは、50以下、40以下、30以下、20以下、又は10以下の整数である。nが2以上の整数であることにより、組成物の水溶性が向上し、止水剤を調整することが容易になり、更には、得られる硬化物の架橋密度を高めることにより硬化物の強度を向上させることができる。一方、nが50以下の整数であることにより、硬化物を調製した際に重合性二重結合間の距離が長くなりすぎないため、硬化物の強度低下を抑制することができる。
【0028】
式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、すなわち、アルキル基をエステル基の末端に有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであり、具体的には、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノアクリレート及びメトキシポリプロピレングリコールモノメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、好ましくは、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート及びメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0029】
式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの含有量は、水性組成物全量を基準として、好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは35質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは72質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下である。
【0030】
式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの含有量は、硬化物の水膨張性を更に高める観点から、水性組成物の固形分全量を基準として、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは72質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの含有量は、硬化物の水膨張性を更に高める観点から、水性組成物の固形分全量を基準として、好ましくは、25~75質量%、25~72質量%、25~70質量%、35~75質量%、35~72質量%、35~70質量%、40~75質量%、40~72質量%、又は40~70質量%である。
【0031】
ジ(メタ)アクリル酸塩は、水性組成物の硬化物により高い弾力性と水膨張性を与える。ジ(メタ)アクリル酸塩としては、例えば、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、亜鉛、アルミニウム等の金属塩などが挙げられる。ジ(メタ)アクリル酸塩は、硬化物の水膨張性及び安定性を高める観点から、好ましくは、マグネシウム塩又は亜鉛塩である。
【0032】
ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、水性組成物全量を基準として、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは16質量%以上であり、更に好ましくは18質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは62質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは45質量%以下である。
【0033】
ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、硬化物の水膨張性を更に高める観点から、水性組成物の固形分全量を基準として、好ましくは16質量%以上であり、より好ましくは18質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは62質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、硬化物の水膨張性を更に高める観点から、水性組成物の固形分全量を基準として、好ましくは、16~62質量%、16~50質量%、16~40質量%、18~62質量%、18~50質量%、18~40質量%、20~62質量%、20~50質量%、又は20~40質量%である。
【0034】
第1の原料である水性組成物は、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを更に含有してもよい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、例えば、下記式(2)で表される化合物である。本実施形態に係る水性組成物は、下記式(2)で表されるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【化3】
式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、pは2~30の整数を表し、qは2~50の整数を表す。
【0035】
pは、好ましくは2以上の整数であり、また、好ましくは、30以下、25以下、20以下、10以下、5以下、又は3以下の整数である。pは、特に好ましくは2であり、すなわち、式(2)で表されるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、好ましくはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0036】
qは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上の整数であり、また、好ましくは、50以下、40以下、30以下、20以下、又は10以下の整数である。
【0037】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、水性組成物全量を基準として、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは9質量%以上であり、更に好ましくは8質量%以下である。
【0038】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、水性組成物の固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは9質量%以下であり、更に好ましくは8質量%以下である。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、水性組成物の固形分全量を基準として、好ましくは、0.1~10質量%、0.1~9質量%、0.1~8質量%、0.2~10質量%、0.2~9質量%、0.2~8質量%、0.5~10質量%、0.5~9質量%、又は0.5~8質量%である。
【0039】
第1の原料である水性組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。その他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0040】
水性組成物における固形分の含有量は、水性組成物全量を基準として、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下である。
【0041】
水性組成物のpHは、硬化物を得るための重合反応を早める観点から、好ましくは7以下であり、7になるべく近い値である。水性組成物のpHは、好ましくは、5.5以上であり、より好ましくは6.0以上であり、更に好ましくは6.5以上であり、また、好ましくは7以下であり、より好ましくは6.98以下であり、更に好ましくは6.95以下である。
【0042】
第2の原料は、一実施形態において、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物である。アスコルビン酸の誘導体としては、アスコルビン酸リン酸エステル等のアスコルビン酸の無機酸エステル、アスコルビン酸-2-グルコシド等のアスコルビン酸の配糖体が挙げられる。
【0043】
第2の原料は、粉末等の固形状で原料セットに備えられてよく、水溶液として原料セットに備えられてもよい。第2の原料が粉末等の固形状の原料セットの場合、第1の原料に粉末を溶解させてもよく、使用前に水溶液にした後に第1の原料と混合してもよい。第2の原料が水溶液である場合、アスコルビン酸又はその誘導体の含有量は、水溶液全量を基準として、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下である。
【0044】
第2の原料は、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸塩、(イソ)アスコルビン酸のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、硫酸第一鉄等が挙げられる。その他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0045】
止水剤原料セットは、第3の原料として、第1の原料及び第2の原料とは別個に、過硫酸塩を含む組成物を更に備えてもよい。過硫酸塩における塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等であってよく、好ましくはナトリウム塩である。
【0046】
第3の原料は、粉末等の固形状で原料セットに備えられてよく、水溶液として原料セットに備えられてもよい。第3の原料が水溶液である場合、過硫酸塩の含有量は、水溶液全量を基準として、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
【0047】
第3の原料は、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、過塩素酸ナトリウム、過酸化水素等が挙げられる。その他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0048】
止水剤原料セットは、第4の原料として、第1の原料、第2の原料及び第3の原料とは別個に、上述した式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、上述したジ(メタ)アクリル酸塩と、を含有する水性組成物を更に備えてもよい。
【0049】
第4の原料は、上述したポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを更に含有してよく、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有してもよい。その他の添加剤は、上述した第1の原料に用いられるものと同様であってよい。第4の原料は、第1の原料と同一の組成であっても異なる組成であってもよいが、好ましくは同一の組成である。
【0050】
本実施形態に係る止水剤原料セットは、第1の原料及び第2の原料、更には、第3の原料及び第4の原料をそれぞれ別々に保管することができるため、長期間の保存を可能とすることができる。
【0051】
止水剤原料セットは、上述した原料の他に、その他の原料として、腐食抑制剤、カチオン性電解質モノマー、セメント類、焼却灰等を更に備えてもよい。これらの原料は、第1の原料~第4の原料とは別個の原料として止水剤原料セットに備えられてもよく、第1の原料~第4の原料のいずれかに含有された状態であってもよい。
【0052】
腐食抑制剤は、カルボン酸及びその塩、リン酸及びその塩、リン酸エステル、亜硝酸及びその塩、アミン及びその塩からなる群より選ばれた1種類以上であってよい。腐食抑制剤を添加することにより、止水剤が、金属、特に汎用される鉄系材料である鉄鋼等に対して、強い腐食抑制効果を示す。
【0053】
カチオン性電解質モノマーは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとその塩及び第四級化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートとその塩及び第四級化物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとその塩及び第四級化物、等であってよい。これらの塩としては、塩酸、硫酸等の無機塩との塩、ジ(メタ)アクリル酸との塩が用いられる。第四級化物としては、メチルクロライド、ジメチル硫酸等による第四級化物、あるいはそれらの複合塩が用いられる。カチオン性電解質モノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0054】
セメント類は、各種ポルトラントセメント類、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、ジェットセメント、アルミナセメント、スラグセメント等であってよい。焼却灰は、フライアッシュ、シリカヒューム、高炉スラグ、石膏、下水処理汚泥等であってよい。セメント類及び焼却灰は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0055】
次に、一実施形態に係る止水剤について説明する。本実施形態に係る止水剤は、上述した式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ジ(メタ)アクリル酸塩とを含有する水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体と、過硫酸塩と、を含有する混合物の硬化物からなる。硬化物は、式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、ジ(メタ)アクリル酸塩に由来する構造単位と、アスコルビン酸又はその誘導体に由来する構造単位とを含む。硬化物は、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートに由来する構造単位を更に含んでいてよい。過硫酸塩は、式(1)で表されるポリアルキレンモノ(メタ)アクリレート(及びポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート)の重合を開始させる重合開始剤としての役割をもっている。この硬化物は、上述した原料セットの各原料を混合することにより得られる。
【0056】
硬化物の原料となる水性組成物、アスコルビン酸又はその誘導体、及び過硫酸塩は、上述した第1の原料、第2の原料、及び第3の原料として使用できるものと同様であってよい。
【0057】
硬化物において、式(1)で表されるポリアルキレンモノ(メタ)アクリレートの含有量は、硬化物全量を基準として、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下であり、更に好ましくは50質量%以下である。
【0058】
硬化物において、ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、硬化物全量を基準として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
【0059】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ジ(メタ)アクリル酸塩との含有量の合計は、硬化物の強度と耐久性を高める観点から、硬化物全量を基準として、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ジ(メタ)アクリル酸塩との含有量の合計は、経済的観点から、硬化物全量を基準として、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
【0060】
硬化物において、アスコルビン酸又はその誘導体の含有量は、硬化物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.07質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
【0061】
硬化物には、上述したポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを更に含有してもよい。その場合、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、硬化物全量を基準として、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは8質量%以下である。
【0062】
硬化物は、水分を含有するゲル状の硬化物である。硬化物における固形分の含有量は、硬化物の強度を高める観点から、硬化物全量を基準として、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは35質量%以上である。硬化物における固形分の含有量は、硬化物の原料を溶解しやすくし、硬化物を容易に調製する観点から、硬化物全量を基準として、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
【0063】
硬化物中における水分の含有量は、硬化物全量を基準として、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、更に好ましくは65質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下である。
【0064】
本実施形態に係る止水剤(硬化物)は、優れた水膨張性を有する。水膨張性は、止水剤の水中膨張率を測定することにより評価することができる。止水剤の水中膨張率は、例えば、10~500%、20~450%、又は30~400%であってよい。水中膨張率が10%以上であることにより、止水剤は、耐水圧性や止水安定性に優れる。一方、水中膨張率が500%以下であることにより、止水剤の強度の不足が抑制され、耐久性にも優れる。水中膨張率は、止水剤を水中に浸漬する前の止水剤の体積と、止水剤の100倍量の水中に止水剤を7日間浸漬させた後の体積を測定し、下記の式(3)より求めることができる。
水中膨張率(%)=(水中に浸漬させた後の止水剤の体積-浸漬前の止水剤の体積)/浸漬前の止水剤の体積)×100・・・(3)
【0065】
本実施形態に係る止水剤によれば、止水時に水へ浸出するアミン量及び有機物量、アクリル酸量を低減でき、優れた安全性が得られる。例えば、止水剤は、日本水道協会で制定された規格である、水道用資機材の浸出試験中の試験項目において、コンディショニング処理(硬化物からの溶出物を安定させるための操作)をしなくても、浸出後の水中に含まれる有機物(全有機炭素(TOC)の量)を150mg/L以下に低減できる。また、有機物の中でも、高速液体クロマトグラフ法(検出下限値0.002ppm)により測定される、浸出後の水中に含まれるアミン類を0.1mg/L以下、アクリル酸を5.0mg/L以下に低減できる。また、本実施形態に係る止水剤は、止水時に水中の塩素濃度を低減させにくいため、水中の塩素含有量の基準を下回らせることなく使用することができる。例えば、止水剤は、日本水道協会で制定された規格である、水道用資機材の浸出試験の試験項目において、コンディショニング処理をしなくても、浸出後の水中における残留塩素の減量を20mg/L以下に低減できる。
【0066】
次に、上述した硬化物からなる止水剤を用いた、漏水部からの漏水を止水する方法(以下、単に「止水方法」と呼ぶことがある。)について説明する。一実施形態に係る止水方法は、上述した水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物と、過硫酸塩を含む組成物と、を含有する混合物を得る混合工程と、混合物を漏水部に注入する注入工程と、を備える。
【0067】
混合工程は、一実施形態において、以下の方法により行われる。まず、上述した水性組成物(第1の原料)と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物(第2の原料)と、が混合された混合物(A液)と、過硫酸塩を含む組成物(第3の原料)と、第1の原料とは別個の、上述した水性組成物(第4の原料)が混合された混合物(B液)と、をそれぞれ得る。そして、A液とB液とを混合して、上記の原料が混合された混合物を得る。A液とB液とを混合する方法としては、例えば、A液とB液をY字管や二重管等に送液し、Y字管の合流部及び二重管の先端で混合すればよい。A液とB液は、好ましくはA液:B液=1:1(体積比)で混合される。
【0068】
注入工程においては、混合工程によって得られた混合物を、漏水部に注入する。注入された混合物が硬化することにより、漏水部における漏水が止水される。混合物の注入の際、例えば、コンクリート壁面に漏水部が存在する場合には、高圧で注入する必要があるため、エアーピストン方式のプランジャーポンプ等が用いられる。一方、混合物の注入は、例えば、ケーブル管路口に漏水部が存在する場合には、低圧で注入することができるため、低圧に調圧したエアーコンプレッサー又は圧縮ガスボンベ等を用いて、容器に入れた液を圧送することにより行われる。
【0069】
止水方法は、他の実施形態において、注入工程の前に、漏水部に多孔質体を配置する工程を更に備えてもよい。この場合、注入工程においては、多孔質体に混合物を注入し、含浸させる。本実施形態に係る止水方法は、ケーブル管路口における漏水部に適している。混合物が含浸された多孔質体は、止水板等の止水用シール材としても用いられる。
【0070】
多孔質体は、好ましくは、機械的強度、伸縮性、耐候性に優れ、また、止水剤(混合物)の浸透性にも優れるものであり、連続気泡構造の発泡体、又は、繊維が絡み合って出来た繊維塊等であってよい。多孔質体は、好ましくはウレタン発泡体である。多孔質体の形状は特に制限されないが、ケーブル管路口における漏水部に配置する場合は、好ましくは円柱状であり、コンクリート構造物と構造物との間の目地部における漏水部に配置する場合は、好ましくはシート状である。
【0071】
本実施形態において、多孔質体は2個以上用いられてもよい。例えば、ケーブル管路口における漏水部において、ケーブルが単一ケーブルである場合は、止水方法は、ケーブル形状に合わせた穴あけ加工等を行った円柱状の多孔質体を漏水部に配置し、この多孔質体に混合物を注入する方法であってよい。ケーブルが多条ケーブルである場合は、止水方法は、多孔質体を2個以上使用し、それらの隙間に混合物を注入する方法であってよく、これにより、方法が簡便で止水効果がより優れるようになる。
【0072】
これらの実施形態に係る止水方法は、コンクリート構造物における漏水、ケーブル管路口の漏水等を容易に止水することを可能とする。これらの実施形態の方法によって止水した箇所は、耐薬品性、耐水圧性、耐凍結融解性、耐乾燥収縮性等に優れる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例、比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
<第1の原料の調製>
[実施例1~24、比較例1~3]
実施例及び比較例においては、表1~表3に示す組成に基づき、以下のものを用いて第1の原料を調製した。なお、表1~表3においては、A-1a、A-1b、A-1cで表されるポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレートをまとめて(A-1)と記載し、A-2a、A-2bで表されるジ(メタ)アクリル酸塩をまとめて(A-2)と記載する。
(A-1a):下記式(4)で表されるポリエチレングリコールモノアクリレート(n≒9、製品名:AME-400、日油株式会社製)
【化4】
(A-1b):下記式(5)で表されるポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒9、製品名:PME-400、日油株式会社製)
【化5】
(A-1c):下記式(6)で表されるポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒8、製品名:PE-350、日油株式会社製)
【化6】
(A-2a):ジアクリル酸マグネシウム塩(製品名:MA-35、浅田化学工業株式会社製)の35質量%水溶液
(A-2b):ジアクリル酸亜鉛塩(製品名:ZA-30、浅田化学工業株式会社製)の30質量%水溶液
(A-3):下記式(7)で表されるポリエチレングリコールジアクリレート(n≒9、製品名:ADE-400A、日油株式会社製)
【化7】
(A-4):水酸化ナトリウム(和光純薬株式会社製)の4質量%水溶液
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
<硬化物(止水剤)の調製>
[実施例1~24、比較例1、2]
上述した第1の原料104g(ただし、比較例2では105g)と、以下の第2の原料10gとを混合したA液と、以下の第3の原料20gと第4の原料94gとを混合したB液と、を調製した。A液とB液との混合物を直ちにプラスチック容器内に流し込み、撹拌混合することによって硬化物を得た。
第2の原料:アスコルビン酸(和光純薬株式会社製)の2.55質量%水溶液
第3の原料:過硫酸ナトリウム(製品名:SPS、株式会社ADEKA製)の5質量%水溶液
第4の原料:各実施例で使用した第1の原料と同一の組成を有する水性組成物
【0079】
[比較例3]
上述した第1の原料105gと、以下の第2の原料10.8gとを混合したA液と、以下の第3の原料20gと第4の原料89.7gとを混合したB液と、を調製した。A液とB液との混合物を直ちにプラスチック容器内に流し込み、撹拌混合することによって硬化物を得た。
第2の原料:トリエタノールアミン(日本触媒株式会社製)の11.1質量%水溶液
第3の原料:過硫酸アンモニウム(製品名:APS、株式会社ADEKA製)の15質量%水溶液
第4の原料:モノエチレングリコール(三菱化学株式会社製)
【0080】
得られた各硬化物中のA-1~A-3成分の固形分含有量を表4~表6に示す。なお、実施例1~24及び比較例1、2の硬化物中のアスコルビン酸の固形分含有量は、いずれも0.11質量%であった。また、実施例及び比較例の各硬化物について、上述した式(3)に基づいて水中膨張率を評価した。結果を表4~表6に示す。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
次に、表7に示す実施例及び比較例の硬化物について、水中へ浸漬された後の水中のアミン量、有機物(全有機炭素(TOC))量、及び残留塩素低減量を測定した。アミン量は、吸光光度法により、有機物量は、全有機炭素測定法(検出下限値0.3ppm)により、残留塩素低減量は、ジエチル-p-フェニレンジアミン法によりそれぞれ測定した。結果を表7に示す。
【0085】
【0086】
また、実施例9及び比較例3の硬化物について、水中へ浸漬された後の水中のアクリル酸量を、高速液体クロマトグラフ法(検出下限値0.002ppm)により測定した。その結果、実施例9の硬化物では、水中へ浸漬された後の水中のアクリル酸量は2.7mg/Lであったのに対して、比較例3の硬化物では、アクリル酸量は0.027mg/Lであった。