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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】腰用サポータ
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20220907BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220907BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20220907BHJP
   A61F 13/14 20060101ALI20220907BHJP
   A61M 35/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61F 7/02 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
A61F5/01 K
A41D13/05 125
A61F13/02 380
A61F13/02 360
A61F13/14 C
A61M35/00
A61F7/02 A
A61F7/02 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018141385
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020014768
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吹上 正人
(72)【発明者】
【氏名】五林 達雄
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074338(JP,A)
【文献】特開昭63-119759(JP,A)
【文献】特開平04-305522(JP,A)
【文献】登録実用新案第3147930(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0249459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
A41D 13/05
A61F 13/02
A61F 13/14
A61M 35/00
A61F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の腰部に貼り付けられ、前記腰部の動きを制限するための腰用サポータであって、
弾性復元力を有する骨部材と、
前記骨部材を前記腰部に貼り付ける貼付部材とを備え、
前記骨部材が、
前記腰部に貼り付けられた際に前記腰部の腰椎に沿うように、互いに間隔をおいて略平行に延びる一対の縦延在部と、
前記一対の縦延在部の延びる方向に対して交差する方向に延び、前記一対の縦延在部同士を連結する横延在部とを備え
前記間隔は、前記一対の縦延在部の下端から上下方向の中央近傍までは略同一の大きさを有し、前記一対の縦延在部の上下方向の中央近傍から先端側に向かって徐々に大きくなるように形成されている、
腰用サポータ。
【請求項2】
前記骨部材がさらに、前記横延在部の下端から下方に延びる下方延在部を備える、
請求項1記載の腰用サポータ。
【請求項3】
前記貼付部材が、冷感成分、温感成分または薬効成分を含む、
請求項1または2記載の腰用サポータ。
【請求項4】
前記貼付部材が、
前記骨部材が貼り付けられる不織布層と、
前記不織布層を前記腰部に貼り付ける粘着層とを備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の腰用サポータ。
【請求項5】
前記貼付部材が、前記腰用サポータを前記腰部に貼り付ける際に前記腰用サポータを前記腰椎に沿って位置合わせするための位置合わせ部を備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の腰用サポータ。
【請求項6】
前記貼付部材が、前記腰用サポータが前記腰部に貼り付けられている際に、前記腰部の皮膚の伸長によって、貼付部材の他の部位に比べて大きく伸長する高伸長部を備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の腰用サポータ。
【請求項7】
前記腰用サポータがさらに、前記貼付部材に貼り付けられ、前記腰用サポータを前記腰部に貼り付ける際に取り外される剥離紙を備え、
前記剥離紙が、前記貼付部材の下端から下方に突出し、前記貼付部材に貼り付けられていない未貼付部を備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の腰用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛の緩和や予防を目的として、腰部の動きを制限するために、たとえば特許文献1に開示されるような腰用サポータや、たとえば特許文献2に開示されるようなキネシオロジーテープが用いられる。特許文献1の腰用サポータは、人体の腰部から腹部にかけて体幹軸を中心に巻き付けられて使用され、特許文献2のキネシオロジーテープは、人体の腰部に貼り付けられて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-139605号公報
【文献】特開2011-208069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の腰用サポータは、腰部の動きを制限することができるが、それと同時に腹部を圧迫する。腹部が圧迫されることにより、胃や腸が圧迫されて、胃や腸の働きが低下し、胃酸の逆流や、胃酸の滞留、胃壁の循環不全などの症状をもたらす。また、特許文献2のキネシオロジーテープは、人体の腰部に貼り付けられるだけなので腹部を圧迫することはないが、腰部を支える部分がなく、腰部の固定感に劣る。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、腹部を圧迫することなく、腰部の動きを制限することが可能な腰用サポータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の腰用サポータは、人体の腰部に貼り付けられ、前記腰部の動きを制限するための腰用サポータであって、弾性復元力を有する骨部材と、前記骨部材を前記腰部に貼り付ける貼付部材とを備え、前記骨部材が、前記腰部に貼り付けられた際に前記腰部の腰椎に沿うように、互いに間隔をおいて略平行に延びる一対の縦延在部と、前記一対の縦延在部の延びる方向に対して交差する方向に延び、前記一対の縦延在部同士を連結する横延在部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記骨部材がさらに、前記横延在部の下端から下方に延びる下方延在部を備えることが好ましい。
【0008】
また、前記骨部材が、前記一対の縦延在部の上端側に向かうに従って前記間隔がフレア状に大きくなるように形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記貼付部材が、冷感成分、温感成分または薬効成分を含むことが好ましい。
【0010】
また、前記貼付部材が、前記骨部材が貼り付けられる不織布層と、前記不織布層を前記腰部に貼り付ける粘着層とを備えることが好ましい。
【0011】
また、前記貼付部材が、前記腰用サポータを前記腰部に貼り付ける際に前記腰用サポータを前記腰椎に沿って位置合わせするための位置合わせ部を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記貼付部材が、前記腰用サポータが前記腰部に貼り付けられている際に、前記腰部の皮膚の伸長によって、貼付部材の他の部位に比べて大きく伸長する高伸長部を備えることが好ましい。
【0013】
また、前記腰用サポータがさらに、前記貼付部材に貼り付けられ、前記腰用サポータを前記腰部に貼り付ける際に取り外される剥離紙を備え、前記剥離紙が、前記貼付部材の下端から下方に突出し、前記貼付部材に貼り付けられていない未貼付部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、腹部を圧迫することなく、腰部の動きを制限することが可能な腰用サポータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る腰用サポータの正面図である。
図2図1の腰用サポータの右側面図およびその部分拡大図である。
図3図1の腰用サポータを人体の腰部に貼り付けた状態を人体の背面側から見た模式図であり、人体の骨を実線で、腰用サポータを二点鎖線で示した図である。
図4図3において、人体の骨を二点鎖線で、腰用サポータを実線で示した図である。
図5図1の腰用サポータを人体の腰部に貼り付けた状態を人体の側面側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る腰用サポータを説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例であり、本発明の腰用サポータは以下の例に限定されることはない。なお、本明細書において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、および「後」という場合、それぞれは、腰用サポータを人体の腰部に貼り付けた状態での方向を意味し、具体的には、腰部から見て頭部側、腰部から見て脚部側、腰部から見て左手側、腰部から見て右手側、腰部から見て腹部側、および腰部から見て腹部とは反対側を意味する。
【0017】
本実施形態の腰用サポータ1は、人体の腰部Wに貼り付けられ、腰部Wの動きを制限するために用いられる。腰用サポータ1は、たとえば、痛みに繋がるような腰部Wの前屈、後屈、左右の捩りなどの動作を制限して、腰部Wに痛みが生じるのを抑制し、あるいは、腰部Wの姿勢を安定させるのを補助することで、腰部Wの姿勢を安定するために使用する筋肉の疲労を軽減し、腰痛の発生を抑制する。
【0018】
腰用サポータ1は、図1および図2に示されるように、弾性復元力を有する骨部材2と、骨部材2を腰部Wに貼り付ける貼付部材3とを備えている。腰用サポータ1はさらに、任意で、貼付部材3に貼り付けられ、腰用サポータ1を腰部Wに貼り付ける際に取り外される剥離紙4を備えている。
【0019】
骨部材2は、貼付部材3によって腰部Wに貼り付けられて、弾性復元力により腰部Wの動きを制限する。ここで、弾性復元力とは、たとえば、外力を受けたときに、弾性変形して、元の状態に復元しようとする力のことをいう。また、腰部Wの動きを制限するとは、たとえば、骨部材2の弾性復元力による抵抗力によって腰部Wを支持して腰部Wの動きを物理的に制限することだけでなく、使用者が腰部Wを動かしたときに骨部材2の弾性復元力によって腰部Wの皮膚が刺激され、皮膚の刺激により腰部Wの動きを知覚した使用者がそれ以上の腰部Wの動きを意識的に制限することも含む。腰用サポータ1は、腰部Wの動きを制限する骨部材2を貼付部材3により腰部Wに貼り付けて使用することで、腹部を圧迫することなく腰部Wの動きを制限することができる。
【0020】
骨部材2は、腰部Wの動きを制限するように構成されていれば、特に限定されることはないが、本実施形態では、図1図3および図4に示されるように、腰部Wに貼り付けられた際に腰部Wの腰椎Lに沿うように、互いに間隔Dをおいて略平行に延びる一対の縦延在部21、21と、一対の縦延在部21、21の延びる方向に対して交差(図示された例では略直交)する方向に延び、一対の縦延在部21、21同士を連結する横延在部22とを備えている。
【0021】
一対の縦延在部21、21はそれぞれ、図3および図4に示されるように、一対の縦延在部21、21の延びる方向と腰椎Lの延びる方向とが略平行になるように、腰部Wの腰椎Lの左右の両側に貼り付けられて、主に腰部Wの前後方向の動き(たとえば、腰部Wの前屈および後屈)を制限する。一対の縦延在部21、21は、図示されるように横延在部22により互いに連結されているが、それによって、いずれか一方の縦延在部21の変形が、いずれか一方の縦延在部21の弾性復元力だけでなく、他方の縦延在部21や横延在部22の弾性復元力によっても制約されることになるので、それぞれが独立して配置される場合と比べて腰部Wに対する抵抗力が増加して、腰部Wの動きをより強固に制限することができる。本実施形態では、図1に示されるように、一対の縦延在部21、21は、横延在部22によって一対の縦延在部21、21の下端側同士で連結され、骨部材2が全体として略U字状に形成されている。したがって、一対の縦延在部21、21は、後述するように横延在部22が腰椎Lの下方の仙骨Sおよび腸骨I近傍に貼り付けられることで、横延在部22と協働して、仙骨Sおよび腸骨Iに対する腰椎Lの動きを制限することができる。ただし、一対の縦延在部21、21は、横延在部22によって互いに連結されていれば、横延在部22により連結される位置は特に限定されることはなく、たとえば、一対の縦延在部21、21の上下方向の中間領域で連結されてもよい。
【0022】
一対の縦延在部21、21はそれぞれ、本実施形態では、図3および図4に示されるように、腰用サポータ1が腰部Wに貼り付けられた際に、腰部Wの腰椎Lの5つの推骨L1~L5のうち下から3つの推骨L3~L5に対応する長さを有している。たとえば、一対の縦延在部21、21はそれぞれ、上下方向に70~110mmの長さに形成することができる。腰椎Lの中で下から2つの推骨L4、L5が腰部Wの動きによって最も負担を受けるが、一対の縦延在部21、21は、この最も負担を受ける2つの推骨L4、L5を含む長さに形成されることで、最も負担を受ける腰部Wの部分の動きを効果的に制限する。ただし、縦延在部21、21は、主に腰部Wの前後方向の動きを制限することができれば、その長さは特に限定されることはなく、腰椎Lの少なくとも一部に対応する長さを有していればよく、たとえば2つ以下の推骨また4つ以上の推骨に対応する長さを有していてもよい。
【0023】
一対の縦延在部21、21はそれぞれ、本実施形態では、図1に示されるように、略矩形のシート状に形成され、略矩形の上端側の内側(互いに向き合う側)の角部が切り取られた形状を有している。これにより、骨部材2は、一対の縦延在部21、21の上端側に向かうに従って間隔Dがフレア状に大きくなるように形成されている。より具体的には、間隔Dは、縦延在部21、21の下端から中央近傍までは略同一の大きさを有し、縦延在部21、21の中央近傍から先端側に向かって徐々に大きくなるように形成されている。一対の縦延在部21、21はそれぞれ、腰部Wを後屈する場合に、上端側の内側の角部に力を受けることがないので、左右方向の外側に回転するような変形が抑制される。したがって、一対の縦延在部21、21は、腰部Wの後方への湾曲が主として生じるために、腰部Wの後屈動作を効率よく制限することができる。ただし、一対の縦延在部21、21は、腰椎Lの延びる方向に沿って、互いに間隔Dをおいて略平行に延びるように形成されていれば、その形状は特に限定されることはなく、切り取り部分の無い略矩形状など、図示された形状とは異なる形状であってもよい。
【0024】
一対の縦延在部21、21の間の間隔Dは、一対の縦延在部21、21のそれぞれを、腰椎Lを挟んで腰椎Lの左右に配置できる大きさであれば、特に限定されることはない。たとえば、間隔Dは、少なくとも腰椎Lの棘突起SPの先端部分の左右方向の幅よりも大きいことが好ましい(図3および図4を参照)。たとえば、間隔Dは、10~40mmとすることができる。棘突起SPは、腰椎Lから後方側(腰部Wの皮膚側)に突出しているため、棘突起SPに対応する皮膚の表面を後方に突出させている。腰用サポータ1を腰部Wに貼り付ける際に、図3および図4に示されるように、一対の縦延在部21、21の間の間隙24を棘突起SPの位置に位置合わせすることで、棘突起SPに対応する皮膚が縦延在部21、21に当接するのを実質的に防止し、棘突起SPと縦延在部21、21との間に皮膚が挟まれて不要な刺激(痛みなど)を受けるのを抑制できる。
【0025】
横延在部22は、図3および図4に示されるように、横延在部22の延びる方向と腰椎Lの延びる方向とが交差(図示された例では略直交)するように腰部Wに貼り付けられて、主に腰部Wの左右方向の動き(たとえば、腰部Wの捩り)を制限する。横延在部22は、図示されるように一対の縦延在部21、21を互いに連結するために一対の縦延在部21、21と接続されているが、それにより、横延在部22の変形が、横延在部22の弾性復元力だけでなく、一対の縦延在部21、21の弾性復元力によっても制約を受けることになるので、横延在部22が独立して配置される場合と比べて腰部Wに対する抵抗力が増加して、腰部Wの動きをより強固に制限することができる。本実施形態では、横延在部22は、横延在部22の上端が一対の縦延在部21、21の下端に接続され、一対の縦延在部21、21の下端側同士を連結している。それによって、骨部材2は、全体として略U字状に形成されている。横延在部22は、腰椎Lに沿って配置される一対の縦延在部21、21の下端に接続されることで、腰椎Lの下方の仙骨Sおよび腸骨I近傍に配置することができ、仙骨Sおよび腸骨Iの動きを制限するとともに、一対の縦延在部21、21と協働して、仙骨Sおよび腸骨Iに対する腰椎Lの動きを制限することができる。ただし、横延在部22は、一対の縦延在部21、21同士を連結することができればよく、縦延在部21、21の下端側以外の他の位置同士を連結してもよい。
【0026】
横延在部22は、本実施形態では、図1および図2に示されるように、略矩形のシート状に形成されている。そして、横延在部22は、図3および図4に示されるように、腰用サポータ1が腰部Wに貼り付けられた際に、腰椎Lの土台である仙骨Sの左右の腸骨I、Iの上後腸骨棘P、Pの間に横架される大きさに形成されている。たとえば、横延在部22は、左右方向に100~120mmの長さに形成することができる。横延在部22は、仙骨Sおよび腸骨I近傍に貼り付けられ、仙骨Sと腸骨Iとの間の仙腸関節の動きを制限するとともに、一対の縦延在部21、21と協働して、腰椎Lと仙骨Sとの間の腰仙関節の動きを制限する。ただし、横延在部22は、一対の縦延在部21、21の延びる方向に対して交差する方向に延び、一対の縦延在部21、21同士を連結するように構成されていれば、その形状や大きさは特に限定されることはない。
【0027】
骨部材2はさらに、図1に示されるように、横延在部22の下端から下方に延びる下方延在部23を備えていてもよい。下方延在部23は、横延在部22とともに腰部Wに貼り付けられて、一対の縦延在部21、21および横延在部22と協働して腰部Wの動きを制限する。下方延在部23は、本実施形態では、一対の縦延在部21、21の間の間隙24が延びる延長線上で、横延在部22の下端の略中央に位置付けられ、一対の縦延在部21、21に対して略平行に延びるように設けられている。下方延在部23は、本実施形態では、図1図4に示されるように、略矩形のシート状に形成され、腰用サポータ1が腰部Wに貼り付けられたときに、仙骨Sの中央近傍から仙骨Sの下端より中央よりの位置までに対応する長さに形成されている。たとえば、下方延在部23は、上下方向に10~30mmの長さに形成することができる。下方延在部23は、仙骨Sに対応する位置に貼り付けられることで、横延在部22と協働して、主に仙骨Sおよび腸骨Iの動きを制限する。たとえば、骨部材2は、下方延在部23を有することにより、仙骨Sに対応する位置の設置面積が増大するので、仙骨Sに対してより強固に固定され、それによって、仙骨Sに対する腰椎Lの動きをより強固に制限する。また、骨部材2が下方延在部23を備えることにより、たとえば、図5に示されるように、腰部Wが後屈されると骨部材2が後方に湾曲するが(二点鎖線の状態)、その際に、骨部材2の弾性復元力によって下方延在部23が仙骨Sに対応する皮膚に刺激を与えるため(図5中の矢印を参照)、使用者は、腰部Wが後屈されたことを知覚して、それ以上の腰部Wの後屈を意識的に制限する。このように、骨部材2は、下方延在部23を有することで、腰部Wの動きをより確実に制限することができる。ただし、下方延在部23は、横延在部22の下端から下方に延びるように形成されていれば、その設けられる位置や延びる方向、大きさは特に限定されることはない。下方延在部23は、たとえば、横延在部22の下端の略中央から横方向にずれた位置に設けられていてもよいし、一対の縦延在部21、21に対して傾斜する方向に延びていてもよいし、仙骨Sの下端まで延びる長さに形成されていてもよい。
【0028】
骨部材2は、本実施形態では、図1および図2に示されるように、上述した一対の縦延在部21、21、横延在部22および下方延在部23が一体としてシート状に形成されている。腰用サポータ1は、骨部材2がシート状に形成されることで、持ち運び(携帯)に便利であるとともに、腰部Wに貼り付けても他人から気付かれることがほとんどない。骨部材2の厚さは、腰部Wの動きを制限するために必要な弾性復元力に応じて適宜決定することが可能であるが、たとえば、上述した携帯性および装着性の観点から、0.05~10.0mmであることが好ましく、0.1~5.0mmであることがさらに好ましく、0.15~1.5mmであることがよりさらに好ましい。ただし、骨部材2は、弾性復元力を有し、腰部Wの動きを制限するように構成されていれば、本実施形態に限定されることはない。一対の縦延在部21、21、横延在部22および下方延在部23は、それぞれがロッド状など別の形状に形成されていてもよいし、それぞれが別体として形成された後に互いに接続されて、骨部材2を構成してもよい。
【0029】
骨部材2は、腰部Wの動きを制限するために必要な弾性復元力を有していればよく、構成される材料は特に限定されることはない。骨部材2は、たとえば、弾性復元力を有する材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などの硬質樹脂材料を用いることができる。骨部材2の材料として硬質樹脂材料を用いることで、腰用サポータ1を軽量化することができるので、持ち運び(携帯)に便利であり、腰部Wへの貼り付けをより容易に行なうことができるとともに、腰部Wに貼り付けても腰用サポータ1の重量による腰部Wへの負担を軽減することができる。
【0030】
貼付部材3は、骨部材2を腰部Wに貼り付け、腰部Wに対して骨部材2を保持する部材である。貼付部材3は、本実施形態では、図1図5に示されるように、シート状に形成され、貼付部材3の後面(腰部Wの皮膚とは反対側の面)に骨部材2が貼り付けられ、貼付部材3の前面(腰部Wの皮膚側の面)が腰部Wに貼り付けられることで、骨部材2を腰部Wに貼り付ける。したがって、貼付部材3は、骨部材2と腰部Wの皮膚との間に位置付けられ、その間で緩衝材として機能するため、骨部材2が腰部Wの皮膚に直接接触することによる腰部Wの皮膚への不要な刺激(痛みなど)が軽減され、腰用サポータ1の腰部Wへの装着感が向上する。ただし、貼付部材3は、骨部材2を腰部Wに貼り付け、腰部Wに対して骨部材2を保持することができれば、本実施形態に限定されることはなく、骨部材2の後面側から骨部材2を覆うようにして、腰部Wに直接接触するように骨部材2を腰部Wに貼り付けるように構成されていてもよい。
【0031】
貼付部材3は、本実施形態では、図1に示されるように、骨部材2よりも大きい貼付面積を有し、骨部材2全体を貼付面内に配置可能な大きさに形成されている。貼付部材3は、骨部材2よりも大きい貼付面積を有することで、骨部材2を腰部Wに、より確実に貼り付けることができるとともに、骨部材2の弾性復元力を、貼付部材3を通じて、骨部材2よりも広い範囲に及ぼすことができる。また、貼付部材3は、腰部Wに対応する大きさに形成されており、少なくとも腹部に貼り付けられることはなく、腹部を圧迫することはない。たとえば、貼付部材3は、上下方向に160~180mm、左右方向に160~180mmの大きさに形成することができる。ただし、貼付部材3は、腹部を圧迫することなく骨部材2を腰部Wに貼り付けることができれば、その大きさは特に限定されることはない。
【0032】
貼付部材3は、本実施形態では、図2に示されるように、骨部材2が貼り付けられる不織布層31と、不織布層31を腰部Wに貼り付ける粘着層32とを備えている。貼付部材3は、不織布層31と粘着層32とが積層されることにより形成されている。不織布層31は、伸縮性を有する不織布を含み、腰用サポータ1が腰部Wに貼り付けられている際に、腰部Wの皮膚の伸縮に少なくとも部分的に対応するように伸縮可能に構成されている。骨部材2は、公知の両面テープなどの粘着部材Aにより不織布層31の表面に貼り付けられ、不織布層31および粘着層32を介して腰部Wに貼り付けられる。このように、骨部材2が不織布層31を介して腰部Wに貼り付けられることにより、不織布層31が有する伸縮性によって、腰用サポータ1に皮膚の伸縮に対する追従性を持たせることができるので、腰用サポータ1の使用に際して皮膚が引っ張られるなどの皮膚の負担を軽減することができる。
【0033】
不織布層31は、皮膚の伸縮に少なくとも部分的に対応するように伸縮可能であるとともに、骨部材2の弾性復元力に対抗する強度を有していれば、特に限定されることはなく、公知の不織布により構成することができる。たとえば、不織布層31を構成する不織布としては、要求される伸縮性や強度の観点から、20%の伸長を実現するために8~19Nの力が必要な不織布を採用することが好ましく、たとえば、ポリエステル製の不織布を好適に採用することができる。
【0034】
粘着層32は、不織布層31を腰部Wの皮膚に貼り付け、腰部Wに対して不織布層31および骨部材2を保持することができるとともに、使用者の手により腰部Wから剥がすことができれば、構成される材料は特に限定されることはない。粘着層32は、たとえば、JIS Z 0237に準拠してSUS304板を用いて25mm幅で測定した際の粘着強度が3~11Nである粘着剤により構成されることが好ましく、たとえば、公知のアクリル系粘着剤などにより構成することができる。
【0035】
貼付部材3は、たとえば、冷感を感じさせると同時に痛みや腫れを緩和させるメントールやサリチル酸などの冷感成分、皮膚の血行をよくして温感を感じさせるトウガラシエキスやカプサイシンなどの温感成分、または、インドメタシン、ジクロフェナック、フェルビナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェンなどの非ステロイド系消炎鎮痛剤などの薬効成分を含んでいてもよい。腰用サポータ1は、貼付部材3が冷感成分、温感成分または薬効成分を含むことにより、腰部Wの動きを制限しながら、腰部Wに鎮痛効果をもたらすことができるので、腰痛をより早期に鎮めることが可能である。なお、冷感成分、温感成分または薬効成分は、貼付部材3が不織布層31および粘着層32を備える場合には、粘着層32に含ませることができる。
【0036】
貼付部材3は、図1に示されるように、腰用サポータ1が腰部Wに貼り付けられている際に、腰部Wの皮膚の伸長によって、貼付部材3の他の部位に比べて大きく伸長する高伸長部33を備えていてもよい。貼付部材3が高伸長部33を備えることにより、腰部Wの動きに応じて皮膚が伸長した際に、貼付部材3の他の部位では十分な伸長が行なわれなくても高伸長部33において大きく伸長するので、皮膚の伸長に貼付部材3が追従して変形して、貼付部材3により皮膚が引っ張られるなどの皮膚の負担が軽減される。高伸長部33は、本実施形態では、一対の縦延在部21、21のそれぞれに対応する位置で、一対の縦延在部21、21の延びる方向に対して略平行に延びるように、断続的に切れ目を有する破線状に形成されている。高伸長部33が上下方向に延びるように配置されているので、腰部Wの皮膚が左右方向に伸長した際に、高伸長部33が左右方向に伸長して、皮膚の左右方向の負担が軽減される。特に、本実施形態では、図1に示されるように、骨部材2が設けられていない領域にも高伸長部33が設けられており、この領域の高伸長部33は、骨部材2の制約を受けることなく伸長できるので、皮膚の伸長に対してより追従して変形しやすい。ただし、高伸長部33は、腰部Wの皮膚の負担を軽減することができれば、その設けられる位置は特に限定されることはなく、たとえば一対の縦延在部21、21の延びる方向に対して略垂直な方向に延びるように設けられてもよい。また、高伸長部33は、本実施形態では破線の形態で設けられているが、腰部Wの皮膚の伸長によって、貼付部材3の他の部位に比べて大きく伸長可能であれば、たとえば他の部位と比べて伸長率の大きい部材により形成されているなど、他の形態であっても構わない。
【0037】
貼付部材3は、図1に示されるように、腰用サポータ1を腰部Wに貼り付ける際に腰用サポータ1を腰椎Lに沿って位置合わせするための位置合わせ部34を備えていてもよい。位置合わせ部34は、本実施形態では、使用者の指先の触覚によって知覚可能に構成される。より具体的には、位置合わせ部34は、一対の縦延在部21、21の間の間隙24が延びる延長線上で、貼付部材3の上端の略中央に配置され、上端から凹んだ凹部として形成される。位置合わせ部34は、図3および図4に示されるように、腰用サポータ1を腰部Wに貼り付ける際に、腰椎Lの複数の棘突起SPが並ぶ線上に位置合わせ部34を位置付けることで、腰用サポータ1を腰椎Lに沿って位置合わせすることができる。たとえば、上述した特許文献2のキネシオロジーテープは、腰部の特定の位置に対して指標となる部分が無いので、自分ひとりで腰部の適切な位置に貼るのが難しい。しかし、本実施形態では、貼付部材3が位置合わせ部34を備えることにより、使用者は、ひとりでも、腰用サポータ1を腰部Wの適切な位置に貼り付けることができる。ただし、位置合わせ部34は、腰用サポータ1を腰椎Lに沿って位置合わせするための指標とすることができれば、図示された例に限定されることはなく、たとえば、上端から突出した突起部として形成することもできる。
【0038】
腰用サポータ1は、上述したように、剥離紙4を備えていてもよい。腰用サポータ1は、剥離紙4を備えることで、腰用サポータ1の保管時や持ち運び時に、貼付部材3が保管場所に貼り付いたり、折れ曲がって貼付部材3同士が貼り付いたりすることを抑制することができるので、保管や持ち運びが容易である。剥離紙4は、本実施形態では、図1および図2に示されるように、貼付部材3の下端から下方に突出し、貼付部材3に貼り付けられていない未貼付部41を備えている。剥離紙4が、貼付部材3の下方に未貼付部41を備えることにより、使用者は、自分で腰用サポータ1を腰部Wに貼り付ける際に、未貼付部41が貼付部材3の上方に設けられる場合と比べて、未貼付部41に手が届きやすいために、剥離紙4を貼付部材3から剥離しやすく、腰用サポータ1を腰部Wに、より容易に貼り付けることができる。また、剥離紙4は、複数に分割して貼付部材3から剥がすことができるように、(本実施形態では貼付部材3の高伸長部33と同じ位置に)切り取り線を有している。したがって、使用者は、貼付部材3から剥離紙4を段階的に剥がすことができるので、貼付部材3を腰部Wに段階的に貼り付けることができ、貼付部材3同士が貼り付くことが抑制されて、貼付部材3を腰部Wに、より正確に貼り付けることができる。
【0039】
つぎに、添付図面を参照して、本実施形態の腰用サポータ1の使用方法および作用・効果を説明する。ただし、以下の説明は単なる一例であり、本発明の腰用サポータの構成や使用方法を限定するものではない。
【0040】
腰用サポータ1の使用者は、まず、剥離紙4を備えた状態で、腰用サポータ1を腰部Wに位置付ける。このとき、図3および図4に示されるように、貼付部材3の位置合わせ部34を、腰椎Lの複数の棘突起SPが並ぶ線上に位置付け、一対の縦延在部21、21の間の間隙24の下端を、腰椎Lの最も下側の棘突起SPの下側に位置付け、横延在部22を、左右両側の腸骨I、Iの上後腸骨棘P、Pの間に横架するように位置付ける。使用者は、貼付部材3が位置合わせ部34を備えることで、ひとりでも腰用サポータ1を腰部Wの適切な位置に位置合わせできる。
【0041】
つぎに、使用者は、腰用サポータ1を腰部Wに位置付けた状態で、剥離紙4を貼付部材3から剥離して、貼付部材3を腰部Wの皮膚に貼り付ける。剥離紙4は、図1に示されるように、貼付部材3の下端から下方に未貼付部41を備えており、使用者は、未貼付部41を起点に剥離紙4を貼付部材3から剥離して、貼付部材3を腰部Wの皮膚に貼り付ける。使用者は、未貼付部41が貼付部材3の下端に設けられているので、未貼付部41に手が届きやすく、剥離紙4の剥離を容易に行なうことができる。また、剥離紙4は、3つに分割して剥離可能であるので、使用者は、切り取り線(高伸長部33と同じ位置)に沿って分割して1枚ずつ剥離紙4を段階的に剥離しながら、剥離紙4が剥離された貼付部材3の部分から順に段階的に腰部Wの皮膚に貼り付けることができ、それにより貼付部材3同士が貼り付くことが抑制されて、貼付部材3を腰部Wに、より正確に貼り付けることができる。
【0042】
以上のようにして、骨部材2は、図3および図4に示されるように、一対の縦延在部21、21が、腰椎Lの延びる方向に沿って腰椎Lの左右の両側にそれぞれ位置し、横延在部22が、仙骨Sの両側の腸骨I、Iの上後腸骨棘P、Pの間に横架されるように位置し、下方延在部23が仙骨Sに位置するように配置される。これにより、一対の縦延在部21、21によって、主に腰椎Lの動きが制限され、横延在部22によって、主に仙骨Sおよび腸骨Iの動きが制限され、一対の縦延在部21、21および横延在部22が協働することによって、腰部Wの動きが制限される。そして、下方延在部23が仙骨Sに配置されることで、仙骨Sに対する骨部材2の固定がより強固になり、仙骨Sに対する腰椎Lの動きがより制限される。また、図5に示されるように、腰部Wが後屈動作をする際には、骨部材2が後方に湾曲して、下方延在部23により仙骨Sに対応する皮膚が刺激されるので、刺激を受けて腰部Wが後屈したことを知覚した使用者は、腰部Wのそれ以上の後屈を制限する。このように、弾性復元力を有する骨部材2を貼付部材3により腰部Wに貼り付けることで、腹部を圧迫することなく腰部Wの動きを制限することができる。
【0043】
なお、骨部材2が上述のように腰部Wに位置合わせされると、一対の縦延在部21、21の間の間隙24が、腰椎Lの棘突起SPに位置合わせされる。これによって、棘突起SPに対応する皮膚は、一対の縦延在部21、21に実質的に当接することがなく、棘突起SPと一対の縦延在部21、21とに挟まれて不要な刺激を受けることが抑制される。
【0044】
また、貼付部材3が、伸縮性を有する不織布層31を備えているので、腰部Wの動きによって皮膚が伸縮したとしても、皮膚の伸縮に少なくとも部分的に対応して不織布層31が伸縮するので、腰用サポータ1によって皮膚が引っ張られることが抑制され、腰用サポータ1の腰部Wへの装着感が向上する。特に、貼付部材3が高伸長部33を備えることで、皮膚が伸長しても、高伸長部33が大きく伸長することで、皮膚の伸長に追従して貼付部材3が変形するので、皮膚が引っ張られるなどの皮膚の負担がより軽減される。
【0045】
また、腰用サポータ1は、貼付部材3が冷感成分、温感成分または薬効成分を含むことにより、腰部Wの動きを制限しながら、腰部Wに鎮痛効果をもたらすことができるので、腰痛をより早期に鎮めることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 腰用サポータ
2 骨部材
21 縦延在部
22 横延在部
23 下方延在部
24 間隙
3 貼付部材
31 不織布層
32 粘着層
33 高伸長部
34 位置合わせ部
4 剥離紙
41 未貼付部
A 粘着部材
D 間隔
I 腸骨
L 腰椎
L1~L5 推骨
P 上後腸骨棘
S 仙骨
SP 棘突起
W 腰部
図1
図2
図3
図4
図5