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特許7137411アルデヒド類吸着材及びこれを用いたフィルター体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】アルデヒド類吸着材及びこれを用いたフィルター体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20220907BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20220907BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220907BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220907BHJP
   C01B 32/30 20170101ALI20220907BHJP
【FI】
B01J20/20 E
A61L9/014
A61L9/01 B
A61L9/01 K
B01J20/28 Z
C01B32/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018167874
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2019051508
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2017177910
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】島村 紘大
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-057955(JP,A)
【文献】特許第4590369(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
A61L 9/00- 9/22
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールと、無機酸または有機酸とを含有した添着液を、担体活性炭に添着したアルデヒド類吸着材であって、
前記担体活性炭のBET比表面積が750~2100m/gであり、
前記担体活性炭のDH法による細孔分布の測定において、細孔直径4~50nmの細孔の総細孔容積が0.003~0.077mL/gであり、
前記担体活性炭100重量部に対して前記2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールが1~60重量部の添着であり、かつ、
前記担体活性炭100重量部に対して前記無機酸または有機酸が0.1~16重量部の添着である
ことを特徴とするアルデヒド類吸着材。
【請求項2】
下記の式(F)により表される前記添着液のpH緩衝能が、320~2900mmol/kgである請求項1に記載のアルデヒド類吸着材。
【数1】
【請求項3】
請求項1に記載のアルデヒド類吸着材を保持してなることを特徴とするフィルター体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド類吸着材及びこれを用いたフィルター体に関し、特に、活性炭に吸着成分を担持させたアルデヒド類吸着材と、これを組み込んだフィルター体に関する。
【背景技術】
【0002】
汗等の分泌物、人体自体の体臭、食事の際の料理由来の臭気、喫煙時の煙の臭気、さらにはペットの臭気等が混じると、人によっては不快感が高まる。現代の家屋等の室内、車内等の生活環境は、空調制御された閉鎖空間であることから、臭気が空間内に残留しやすい。そのゆえ、余計に臭気に敏感になる。
【0003】
前掲の臭気は生活臭とも称され、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸、アンモニア、アミン類、加えて、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類が主な臭気の原因とされる。その脱臭には活性炭が脱臭材として使用されてきた。また、従来、活性炭の臭気成分の吸着能力を高めるため、アニリンが汎用的に活性炭に添着されていた(特許文献1等参照)。
【0004】
しかしながら、アニリンでは性能劣化の点からは避けられることが多く、新たな添着成分として、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールが主流となりつつある。前記の添着成分の消臭効果を高め、かつ安定化するため、同添着成分に適量の酸を配合した消臭剤が提案されている(特許文献2等参照)。さらに、シート、フィルター等への加工も提案されている(特許文献3等参照)。特に、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールはアルデヒド類の吸着に効果的であることが知られている。
【0005】
特許文献2及び3は、活性炭への直接の添着を目的としていない。活性炭はその発達した細孔により、複数種の臭気分子の吸着に効果を発揮する。そこで、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの有する化学結合に起因した臭気分子の吸着と、活性炭の細孔内への捕捉の双方を生かした効率の良い活性炭吸着材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭56-53744号公報
【文献】特許4590369号公報
【文献】特開2017-127812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような経緯を踏まえ、発明者は、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールと配合する酸の量、さらには、活性炭の物性の各指標を均衡させることにより、特にアルデヒド類の消臭に最適な活性炭吸着材を開発するに至った。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールのアルデヒド類の吸着能力を高めるべく、最適な酸の種類と量を制御し、さらに、活性炭の物性を制御することにより、活性炭自体の吸着能力をいかしつつ、従来よりも優れたアルデヒド類の吸着能力を発揮するアルデヒド類吸着材を提供するとともに、当該アルデヒド類吸着材を用いたフィルター体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、第1の発明は、水と、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールと、無機酸または有機酸とを含有した添着液を、担体活性炭に添着したアルデヒド類吸着材であって、前記担体活性炭のBET比表面積が750~2100m/gであり、前記担体活性炭のDH法による細孔分布の測定において、細孔直径4~50nmの細孔の総細孔容積が0.003~0.077mL/gであり、前記担体活性炭100重量部に対して前記2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールが1~60重量部の添着であり、かつ、前記担体活性炭100重量部に対して前記無機酸または有機酸が0.1~16重量部の添着であることを特徴とするアルデヒド類吸着材に係る。
【0010】
の発明は、下記の式(F)により表される前記添着液のpH緩衝能が、320~2900mmol/kgである第1の発明に記載のアルデヒド類吸着材に係る。
【0011】
【数1】
【0012】
の発明は、第1の発明に記載のアルデヒド類吸着材を保持してなることを特徴とするフィルター体に係る。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係るアルデヒド類吸着材によると、水と、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールと、無機酸または有機酸とを含有した添着液を、担体活性炭に添着したアルデヒド類吸着材であって、前記担体活性炭のBET比表面積が750~2100m/gであり、前記担体活性炭のDH法による細孔分布の測定において、細孔直径4~50nmの細孔の総細孔容積が0.003~0.077mL/gであり、前記担体活性炭100重量部に対して前記2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールが1~60重量部の添着であり、かつ、前記担体活性炭100重量部に対して前記無機酸または有機酸が0.1~16重量部の添着であるため、活性炭自体の吸着能力を活かしつつ、アルデヒド類の高い吸着性能が発揮、維持される。
【0014】
の発明に係るアルデヒド類吸着材によると、第1の発明において、式(F)により表される前記添着液のpH緩衝能が、320~2900mmol/kgであるため、滴定を通じて添着液のアルデヒド類の吸着性能を把握でき、添着液の管理が容易となる。
【0015】
の発明に係るフィルター体によると、第1の発明に記載のアルデヒド類吸着材を保持してなるため、アルデヒド類吸着のためのユニット化された部材として活用でき、空調機器内、空気清浄機、送気用のダクト内等への設置は容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のアルデヒド類吸着材の製造例を示す概略工程図である。
図2】本発明のアルデヒド類吸着材を用いたフィルター体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のアルデヒド類吸着材は、主にアルデヒド類の吸着効果を発揮するポリヒドロキシアミン化合物を含有する添着液を、担体活性炭に添着して得た薬剤添着型の活性炭吸着材である。すなわち、薬剤によるアルデヒド類の吸着の化学的吸着と、活性炭に発達した細孔による物理的吸着の双方を兼ね備えた吸着材である。
【0018】
本発明のアルデヒド類とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、さらにはグルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物の全般を包含する概念である。これらは不快臭の原因物質であり、生活臭、体臭が発生要因である。これらのうち、主にホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの効率の良い吸着を目的とする。
【0019】
アルデヒド類は、ポリヒドロキシアミン化合物との間でシッフ塩基等のアルデヒド-アミンの結合を形成することが知られている。そこで、当該反応の利用を通じて、不快臭の原因物質であるアルデヒド類は化学結合により効率良く吸着される。
【0020】
ポリヒドロキシアミン化合物として、「2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール」が好ましい。この化合物の別名は、トロメタミン、またはトリスヒドロキシメチルアミノメタンである。なお、ポリヒドロキシアミン化合物の他の例として、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、または2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0021】
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等のポリヒドロキシアミン化合物と、アルデヒド類との反応は、適切な酸性下であるほど促進する。すなわち、酸が触媒として作用することが考えられる。ここで用いられる酸は無機酸または有機酸である。無機酸として、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸等が挙げられる。また、有機酸として、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸等のカルボン酸が挙げられる。有機酸の選択に際し、臭気の少ない種類が好ましい。
【0022】
前掲のポリヒドロキシアミン化合物と、無機酸または有機酸との混合により添着液が調製される。そして、添着液は担体活性炭に添着される。つまり、活性炭は添着のための基材となる。担体活性炭は公知の活性炭より選択される。吸着活性炭の原料は、ヤシ殻、大鋸粉(オガコ)、廃材、廃竹、ヤシ殻、パームヤシの搾りかす、コーヒーの抽出後に生じるコーヒー豆の搾りかす、石炭、石油ピッチ、フェノール樹脂等である。これらの原料は炭化された後、水蒸気賦活、塩化亜鉛賦活、リン酸賦活、硫酸賦活、空気賦活、炭酸ガス賦活等の賦活処理が加えられる。この結果、活性炭に細孔が発達する。
【0023】
担体活性炭を評価する物性にBET比表面積がある。担体活性炭のBET比表面積は750ないし2100m/gを充たす範囲である。後記の実施例の検証より、アルデヒド類の吸着(破過時間による評価)の結果から、下限の750m/gを下回る場合にアルデヒド類の吸着性能は低下した。2100m/gを上回る場合は、活性炭の強度が不足し、実用上好ましくない。そこで、良好な性能を確保する範囲として、BET比表面積は750ないし2100m/gの範囲である。
【0024】
さらに、担体活性炭の物性評価に際し、DH法(Dollimore-Heal法)による担体活性炭の細孔分布の解析が用いられる。DH法は一般に2.0ないし50.0nmの直径のメソ細孔の分布解析を比較的容易に把握できることから、当該直径の細孔の解析に多く用いられる。そこで、DH法による担体活性炭の細孔分布の測定において、細孔直径4ないし50nmの細孔の総細孔容積は0.003ないし0.077mL/gの範囲に収斂する。
【0025】
後記の実施例から明らかであるように、担体活性炭についてDH法により各種範囲の細孔直径について測定し、どの範囲が吸着に際して効果的であるか否かを検討した。その結果、細孔直径4ないし50nmの細孔範囲の多少が吸着性能に最も影響していることを見出した。そこで、細孔直径4ないし50nmの範囲の総細孔容積を評価対象とした。この総細孔容積の範囲が0.003mL/gを下回る範囲では、アルデヒド類の吸着性能の低下は顕著であり好ましくない。また、0.077mL/gを上回る範囲においては活性炭の強度が不足し、実用上好ましくない。このことを理由に総細孔容積は規定される。
【0026】
加えて、担体活性炭の大きさ、すなわち、アルデヒド類吸着材の好ましい大きさは、おおよそ0.5ないし5mmの粒径である。その中でも、1ないし4mmの平均粒径がより好ましい。当該アルデヒド類吸着材は、専ら空気中の臭気成分の吸着に用いられる。例えば、空気清浄機、エアコンディショナー、その他空気流通用の配管、ダクト等に設置される。この用途を勘案すると、空気流通の圧力損失を過大にすることなく、円滑な流通確保が望まれる。
【0027】
そのため、粉末状活性炭等の細かすぎる活性炭では不向きとなりやすい。そこで、比較的粒の大きい活性炭として、0.5ないし5mm、特には1ないし4mmの大きさが適する。平均粒径が1mmを下回る活性炭では、充填時に緻密化して通気性能が低下する。平均粒径が4mmを上回る活性炭では、重量当たりの表面積が減少し、ポリヒドロキシアミン化合物の添着量が減少し、所望のアルデヒド類の吸着能力が発揮されにくくなる。そこで、前記の範囲が好ましい。
【0028】
続いて、図1の概略工程図を用いながら本発明のアルデヒド類吸着材の作製について説明する。無機酸または有機酸の酸類が秤量され、水に溶解される。水の量は添着対象の担体活性炭の量に合わせて加減される。そして、ここに2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等のポリヒドロキシアミン化合物が溶解される。こうして添着液は調製される。
【0029】
担体活性炭は乾燥機等により絶乾状態に乾燥される。そして、前記調製の添着液は担体活性炭に滴下、浸漬等され、均等に表面に付着する。添着の方法はこれ以外にもスプレー塗布等可能である。その後、適宜乾燥され、添着液中の余分な水分は蒸発される。こうして、アルデヒド吸着材は完成する。
【0030】
ここで、アルデヒド吸着材における2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール及び無機酸または有機酸の酸類の添着割合は、担体活性炭の重量を基準に規定される。
【0031】
具体的には、担体活性炭100重量部に対し、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールは1ないし60重量部の添着量である。当該ポリヒドロキシアミン化合物が1重量部未満の場合、もとより少ないためアルデヒド類の吸着能力が発揮されない。逆に60重量部を超過する場合は添着液の調整が困難である。この量に関しては、酸類の量を変化させた場合であっても同様であった。従って、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールは前記の添着量として規定される。
【0032】
次に、担体活性炭100重量部に対し、無機酸または有機酸の酸類は0.1ないし16重量部の添着量である。2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの量及び酸類の種類を変更した場合であっても、当該範囲が好適であることが判明している。0.1重量部未満の場合、実質的に酸が存在していないに等しく吸着効率が乏しい。16重量部を超過する場合、酸の量が過剰となることにより逆にアルデヒド類の結合が阻害されるためである。
【0033】
添着液がアルデヒド類を吸着するための条件はpHに依存する。特に、塩基性条件下において良好な吸着性能が得られやすい。また、酸類は触媒として作用しアルデヒド-アミンの結合の形成が促される。そのことからも、前述の規定量に従い、無機酸または有機酸が添加される。その上で、添着液全体における酸-塩基の好ましい均衡についてはpH緩衝能を通じて把握される。pH緩衝能の数値を指標として用いることにより、添着液中の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの量を増減させた場合の最適な酸類の量の把握が可能となる。総じて添着液の調製は容易となる。
【0034】
添着液のpH緩衝能は、前掲の式(F)として表される。添着液自体は本来塩基性域のpHである。そこに塩酸が添加されれば中性を超えて酸性域にpHは移行する。この際の塩酸量を通じて添着液の性状を把握できる。添着液のpHが5.0未満の酸性領域ではアルデヒド類の吸着性能は低下する。逆に言うと、酸が過剰に添加されるとしても、添着液がpH5.0に到達するまではアルデヒド類の吸着性能は確保されると考えられる。従って、式中の「pHを5.0にするため」とは、添着液のアルデヒド類の吸着の性能上の限界を意味する。
【0035】
式(F)により表されるpH緩衝能は、290ないし3000mmol/kgの範囲、より好ましくは290ないし2900mmol/kgの範囲である。pH緩衝能が290mmol/kgを下回る場合、アルデヒド類吸着材に仕上げた際のアルデヒド類の吸着性能が低下する。また、pH緩衝能の2900mmol/kgを超えた場合、活性炭に対し過剰量の添着となるため吸着性能が低下する。滴定量を通じて添着液のpH緩衝能を把握できるため、添着液の性能、品質の管理が容易となる。
【0036】
背景技術に提示の特許文献2(特許4590369号公報)もpH緩衝能を示し、0.3ないし300mmol/kgの範囲を開示する。しかしながら、本発明のpH緩衝能の範囲と大きく相違する。特に本発明においては、添着液をより塩基性側に強めた性状である。背景技術に提示の特許4590369号公報は専ら噴霧用の液体としての使用である。これに対し、本発明は前述のとおり担体活性炭に添着液を添着してアルデヒド類吸着材に至るまで加工される。一般に、活性炭の表面には酸性または塩基性の官能基(残基)が存在する。
【0037】
双方のpH緩衝能の相違は、おそらく活性炭表面の官能基の存在が大きく影響していると考えられる。添着液は当初から塩基性側へ移行するべく調製していたのではなく、良好な試作例の結果を集めたところ、290ないし2900mmol/kgの範囲のpH緩衝能が導き出された。このように、途中の加工の相違等から本発明と特許4590369号のpH緩衝能の範囲は相違すると考えられる。
【0038】
一連の説明により得られるアルデヒド類吸着材は、それのみで既に完成しており、空気浄化用の各種装置に使用される。例えば、図2のフィルター体20としての活用も可能である。フィルター体20は、矩形の枠部21と前後の設けられた通気部22を備える。そして、注入口23から完成したアルデヒド類吸着材10が枠部21内に注がれ、枠部21内はアルデヒド類吸着材10により満たされる。後に、注入口23は封止される。このフィルター体20はひとつのユニット化された部材として活用できる。そこで、空調機器内、空気清浄機、送気用のダクト内等への設置は容易となる。
【0039】
例えば、一定時間装置を運転した後、フィルター体20ごと装置から取り外され、新たに新しいフィルター体20が設置される。そして、フィルター体20内部のアルデヒド類吸着材10が抜き取られ、未使用の新しいアルデヒド類吸着材10に交換される。この場合、フィルター体20は設置対象の装置の構造に合わせて設計でき、内部に充填されるアルデヒド類吸着材10を詰め替えるのみで足りる。結果として、消耗品の交換のみで十分となる。むろん、フィルター体は図示の矩形以外にも、円筒体等の種々の形状もあり、用途、目的、処理能力等に応じて最適な大きさ、形状が選択される。
【実施例
【0040】
[使用原料]
担体活性炭の物性特定に際し、ヤシ殻由来の活性炭を使用して賦活の条件を制御することにより、BET比表面積、細孔容積等を作り分け、篩別して粒径を揃えて用意した(活性炭Ac1ないしAc6)。
その後のアルデヒド類吸着材の作製に際しては、「HC-30E」(株式会社ツルミコール製)(活性炭Ac7)と、「HC-16」(株式会社ツルミコール製)(活性炭Ac8)とを使用した。
【0041】
活性炭の粒径は、後述のアルデヒド類の吸着性能評価における破過試験の試験内容によって変更した。試験No.1及び試験No.3においては、活性炭Ac1ないしAc5及びAc7について、篩別により粒径をおよそ1.7ないし2mmとした。試験No.2においては、活性炭Ac6ないしAc8について、同様に篩別により粒径をおよそ1.18ないし1.4mmとした。
【0042】
ポリヒドロキシアミン化合物として、「2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール」を使用した(以降、同物質を「AHMPD」と略記する。)。
【0043】
無機酸として、次の5種類を使用した。
リン酸(オルトリン酸):NYLEX SPECIALTY CHEMICALS SDN BHD製,純度89%
塩酸:関東化学株式会社製,特級,純度36.7%
硫酸:関東化学株式会社製,鹿一級,純度96.3%
ポリリン酸:Acros Organics製,純度85.4%(Pとして)
メタリン酸:関東化学株式会社製,鹿特級,純度42.7%(HPOとして)
【0044】
有機酸として、次の2種類を使用した。
クエン酸:関東化学株式会社製,鹿特級,純度99.8%
コハク酸:関東化学株式会社製,鹿特級,純度99.8%
【0045】
[アルデヒド類吸着材の作製]
各試作例のアルデヒド類吸着材の作製に際し、原料の添加量は後出の表中の重量部とした。活性炭100重量部を基準とする相対量である。表中の「部」は重量部と同義である。はじめに酸類を秤量し、水に溶解し酸溶液とした。この酸溶液中に秤量した2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(AHMPD)を添加し溶解して各試作例に対応した添着液を調製した。担体活性炭は添着液の添着に先立ち乾燥して絶乾状態とした。
【0046】
担体活性炭を秤量し、これに添着液を滴下ながら攪拌し全体を均質化した。その後、乾燥して各試作例に対応したアルデヒド類吸着材を作製した。
【0047】
[担体活性炭の物性測定]
比表面積(m/g)は、マイクロトラック・ベル株式会社製,自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP-miniII」を使用して77Kにおける窒素吸着等温線を測定し、BET法により求めた(BET比表面積)。
【0048】
全細孔容積(mL/g)は、上記の比表面積の測定に用いた装置を使用し、Gurvitschの法則を適用して相対圧0.990における窒素吸着量(V)を下記の数式(i)により液体窒素の体積(V)に換算して求めた。なお、数式(i)において、Mは吸着質の分子量(窒素:28.020)、ρ(g/cm)は吸着質の密度(窒素:0.808)である。
【0049】
【数2】
【0050】
平均細孔直径(nm)は、細孔の形状を円筒形と仮定し、前述の測定から得た細孔容積(mL/g)及び比表面積(m/g)の値を用いて数式(ii)より求めた。
【0051】
【数3】
【0052】
細孔直径2ないし200nmの範囲における細孔容積の値は、窒素ガスの吸着等温線からDH法によって解析した。DH法の解析結果から、細孔直径2.0nm以下の細孔の総細孔容積を求めた。同様に、細孔直径2.0ないし4.0nmの細孔、4.0ないし50.0nmの細孔、50.0ないし100.0nmの細孔の総細孔容積を求めた。そして、全細孔容積に占める各範囲の細孔の総細孔容積が占める割合(%)も算出した。
【0053】
担体活性炭(担持前、活性炭のみ)のベンゼン吸着力(%)と、アルデヒド類吸着材(担持後)のベンゼン吸着力(%)、充填密度(g/mL)、及びpHは、JIS K 1474(2014)に準拠して測定した。ベンゼン吸着力は、活性炭として備える一般的な吸着能力を評価する指標として採用した。
【0054】
[pH緩衝能の測定]
各試作例の添着液(50g)をコニカルビーカーに分注し、ここに1.0mol/L(1N)の塩酸をビュレットにより滴下した。液のpHを測定しながら塩酸を滴下し、pH5.0に到達した時点の塩酸の滴下量を読み取った。そして、前掲の式(F)に従い、「添着液のpHを5.0にするために要した塩酸水溶液の滴定量(mL)」を「添着液の量(kg)」で除し、これに「塩酸水溶液の濃度(mol/L)」を乗じ、各試作例の添着液のpH緩衝能(mmol/kg)を算出した。
【0055】
[アルデヒド類の吸着性能評価]
各試作例のアルデヒド類吸着材に関し、アセトアルデヒドの吸着性能を破過試験により評価した。併せて他のアルデヒド類の評価としてホルムアルデヒドの吸着性能も破過試験により評価した。表1はそれぞれの試験条件である。「C」は出口濃度、「C」は入口濃度とし、「C/C=0.1」に達したときを破過とみなした。すなわち、出口濃度が入口濃度の「1/10」に到達したときを破過とした。そして、ガスの流入開始から破過に至るまでの時間を破過時間とした。アルデヒド類の濃度はガス検知管により評価した。表中の検知管の番号は全て株式会社ガステック製である。
【0056】
【表1】
【0057】
[担体活性炭の物性]
アルデヒド類吸着材の担体(基材)である担体活性炭が具備するべき物性を検証するべく次の6種類のヤシ殻由来の活性炭を用意した(活性炭Ac1ないしAc6)。また、BET比表面積及び細孔分布の近似した活性炭Ac7(株式会社ツルミコール製,品名:「HC-30E」)及び活性炭Ac8(株式会社ツルミコール製,品名:「HC-16」)を用意した。活性炭Ac1ないしAc8を担体活性炭とした。そして、活性炭Ac1ないしAc8を使用し、表2及び3のAHMPD(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、リン酸、水を選択して、前述のアルデヒド類吸着材の作製に従い作製し、試作例1-1ないし1-8のアルデヒド類吸着材を得た。AHMPDとリン酸の量は共通とした。活性炭Ac1ないしAc8及び試作例1-1ないし1-8のアルデヒド類吸着材の結果は表2及び3である。
【0058】
表2及び3中、活性炭ベンゼン吸着力(%)、BET比表面積(m/g)、平均細孔直径(nm)、全細孔容積(mL/g)、及びDH法の各細孔直径の総細孔容積(mL/g)とその割合(%)は、活性炭Ac1ないしAc8の単独での測定結果である。さらに、活性炭単独の破過時間(min)を測定した。
【0059】
同表2及び3中、AHMPD、リン酸、水はいずれも担体活性炭を100重量部としたときの相対重量部表記である。そして、充填密度(g/mL)、pH、ベンゼン吸着力(%)、破過時間(min)は試作例1-1ないし1-8のアルデヒド類吸着材の測定結果である。各活性炭単独及び試作例1-1ないし1-8の破過時間測定の吸着対象は「アセトアルデヒド」とした(試験No.1)。表中、「N.D.」は測定限界以下、「-」は測定せず、である。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
[担体活性炭物性の考察]
担体活性炭Ac1と、これに添着液を添着した試作例1-1との比較では、添着の無い担体活性炭単独の破過時間が良好となった。すなわち、活性炭の細孔のみによる吸着が添着液の性能を上回ったと考える。しかしながら、担体活性炭単独では、BET比表面積の増加に反して破過時間の向上は喪失した。これに対し、アルデヒド類吸着材の試作例1-2ないし1-6のとおり、破過時間は顕著に向上した。そこで、BET比表面積について、良好な吸着性能を示す範囲を破過時間の変遷から求めた。結果、750ないし2100m/gが望ましい範囲である。
【0063】
担体活性炭Ac1からAc6の順にBET比表面積は増加した。これと連動して同様の傾向でベンゼン吸着力も上昇した。この傾向から、試作例の順に破過時間の性能も向上すると考えた。しかし、予想に反して試作例1-4と比較して試作例1-5の破過時間は低下した。この傾向から、活性炭の物性をBET比表面積のみによって評価したのでは、効果的な吸着性能(破過時間)を得ることができないと判明した。そこで、活性炭の物性をより正確に把握するため、DH法による細孔分布を加えた。
【0064】
DH法による測定における細孔直径の区分ごとの総細孔容積の変遷と破過時間の性能発現が明確化する範囲として、細孔直径4ないし50nmの範囲に着目した。同範囲の試作例の結果から、細孔直径4ないし50nmの総細孔容積は0.002ないし0.080mL/gの範囲であり、より好ましくは0.003ないし0.077mL/gの範囲である。
【0065】
[AHMPDの添着量]
次に、前出の担体活性炭Ac4及びAc5を使用し、AHMPD(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)の添着量を変えながらアルデヒド類吸着材の試作例2-1ないし2-5を作製した。表4は試作例の結果である。順番は前掲の表2と同様である。破過時間測定の吸着対象は「アセトアルデヒド」(試験No.1)とした。
【0066】
【表4】
【0067】
そして、担体活性炭Ac6、Ac7及びAc8を使用し、同様にAHMPD(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)の添着量を変えながらアルデヒド類吸着材の試作例2-6ないし2-20を作製した。破過時間測定の吸着対象は「ホルムアルデヒド」(試験No.2)とした。表5ないし7は試作例の結果である。同表5ないし7中、AHMPD、リン酸、水はいずれも担体活性炭を100重量部としたときの相対重量部表記である。そして、充填密度(g/mL)、pH、ベンゼン吸着力(%)、破過時間(min)は試作例2-6ないし2-20のアルデヒド類吸着材の測定結果である。また、一部の試作例においてはその添着液のpH緩衝能を測定した。表中、「-」は測定せず、である。
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
[AHMPDの添着量の考察]
試作例2-4,2-5及び試作例2-6ないし2-8はそれぞれ同一の担体活性炭を使用し、AHMPDの添着量が異なる例である。この傾向から、AHMPDの添着量が増すほどアセトアルデヒド又はホルムアルデヒドの吸着性能は向上した。試作例2-1ないし2-3も同一の担体活性炭を使用した例である。しかしながら、この場合、AHMPDの添着量とアセトアルデヒドの吸着性能は単純に比例せず、試作例2-3では吸着性能が低下した。試作例2-14ないし2-20も同一の担体活性炭を使用した例である。同様に、AHMPDの添着量とホルムアルデヒドの吸着性能は単純に比例せず、試作例2-20では吸着性能が低下した。試作例2-9ないし2-13も同様であって、試作例2-13で吸着性能は低下した。このことから、BET比表面積の異なる各担体活性炭によって最適なAHMPD添着範囲が存在することを突き止めた。また、試作例2-8の結果より、AHMPDの添着量については60重量部が上限であると考える。
【0072】
さらに、「AHMPDの添着量と酸量の関係」、「酸類の種類拡張」、「アルデヒド類の種類拡張」と検証を重ねた。以降の全試作例の作製は、活性炭の選択の他は、前述のアルデヒド類吸着材の作製手法と同様とし、量と種類のみを変更した。表8以降の各表において、pH、充填密度、及びベンゼン吸着力はいずれも試作例のアルデヒド類吸着材について測定した結果である。また、一部の試作例においてはその添着液のpH緩衝能を測定した。
【0073】
[AHMPDの添着量と酸量の関係]
担体活性炭Ac7を使用し、AHMPDの添着量を適宜選択するとともに固定し、これに対応して酸(リン酸)の量を変更しながら試作例3-1ないし3-17を作製した。吸着試験の対象は「アセトアルデヒド」(試験No.1)である。また、酸量を固定してAHMPDの添着量を変更した試作例4-1ないし4-6、及び5-1ないし5-5を作製した。結果は表8ないし13である。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
【表12】
【0079】
【表13】
【0080】
そして、担体活性炭Ac8を使用し、AHMPDの添着量を固定し、酸(リン酸)の量を変更しながら試作例6-1ないし6-7を作製した。吸着試験の対象は「ホルムアルデヒド」(試験No.2)である。結果は表14及び15である。
【0081】
【表14】
【0082】
【表15】
【0083】
[AHMPDの添着量と酸量の考察]
表13より、全く酸類(リン酸)を使用せずに作製した試作例5-1ないし5-5については、AHMPDの量に比例して破過時間も延びた。自明ながら、専らAHMPDに起因する吸着能力の発現である。この場合、良好な吸着性能を得るためには、AHMPDの量をかなり多くしなければならず、効率的とはいえない。しかも、AHMPD量の増加に伴いベンゼン吸着力が低下することから、アセトアルデヒド以外の吸着能力の低下が顕著であり好ましいとはいえない。それゆえ、酸類の無添加は吸着材としての性能維持の観点から効果的ではない。
【0084】
表8ないし11に開示の試作例3-1ないし3-17は、AHMPDの量を3段階に固定し、酸類(リン酸を使用)を変化させた結果である。はじめに、試作例3-1ないし3-8は酸類のリン酸を無添加から6.5部(相対量)まで変化させた作製例である。試作例3-1から3-5までは破過時間が延びていることからアセトアルデヒドの吸着効率は高まった。しかし、試作例3-6から3-8の結果によると、アセトアルデヒドの吸着効率が低下した。従って、酸類の添加には上限が存在することを突き止めた。
【0085】
試作例3-9ないし3-12は酸類のリン酸を無添加から4.0部(相対量)まで変化させた作製例であり、試作例3-13ないし3-17は酸類のリン酸を無添加から6.0部(相対量)まで変化させた作製例である。いずれにおいても、前述と同様の傾向であり、試作例3-15から3-17の結果によると、アセトアルデヒドの吸着効率が低下した。
【0086】
試作例6-1ないし6-7は活性炭Ac8を使用し、AHMPDの量を20.0部に固定し、酸類のリン酸を無添加から16.0部(相対量)まで変化させた作製例である。試作例6-2から6-6までは無添加の試作例1よりも破過時間が伸びていることからホルムアルデヒドの吸着効率は高まった。試作例6-7の結果から、これまでと同様に、添加する酸量が多すぎるとホルムアルデヒドの吸着効率が低下した。
【0087】
一連の結果から、アセトアルデヒドの吸着性能は、AHMPDの量の変動に関わらず酸類の添着量は4重量部から低下する傾向があるものの、4重量部以上に酸類を添加したとしてもホルムアルデヒドの吸着性能は高まることから、酸類の上限は概ね16重量部であると結論づけた。下限については、試作例3-2より0.1重量部とした。
【0088】
表12に開示の試作例4-1ないし4-6は、酸類(リン酸)の量を固定しAHMPDの量を変化させた結果である。前述の表13の結果と比較すると、酸類の添加に伴い格段に破過時間は延長した。この結果からも酸類添加は必須といえる。
【0089】
[酸類の種類拡張]
担体活性炭Ac7を使用し、酸類として使用する無機酸と有機酸の種類を増やしてアルデヒド類吸着材の試作例を作製した。表16は塩酸(試作例7-1)と硫酸(試作例8-1ないし8-5)であり、表17はクエン酸(試作例9-1ないし9-3)とコハク酸(試作例10-1,10-2)であり、表18はポリリン酸(試作例11-1ないし11-6)であり、表19はメタリン酸(試作例12-1ないし12-6)である。吸着試験の対象は「アセトアルデヒド」(試験No.1)である。
【0090】
【表16】
【0091】
【表17】
【0092】
【表18】
【0093】
【表19】
【0094】
[酸類の種類拡張の考察]
各試作例のとおり、酸類の種類を他の無機酸、有機酸に変更した作製においても同様にアセトアルデヒドの吸着に効果的であった。ただし、硫酸は強酸であることから触媒としての作用よりもAHMPDの分解が強まり性能低下したと考える。それゆえ、試作例8-4,8-5では破過時間の性能低下が顕著であった。さらに、リン酸の種類を変更した場合であっても酸類の量と破過時間との間の傾向は同様であった。
【0095】
[アルデヒド類の種類拡張]
これまでアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの破過時間によりアルデヒド類吸着材の性能を評価してきた。ここで、同一の試作例において、アセトアルデヒド(試験No.1)及びホルムアルデヒド(試験No.3)の破過時間も併せて測定することにより、アルデヒド類の吸着に効果的であることを検証した。表20の試作例13-1ないし13-3は、順に前出の試作例3-3、3-10、及び3-14に対応する。
【0096】
【表20】
【0097】
[アルデヒド類の種類拡張の考察]
アルデヒド類の種類により破過時間に相違は見られるものの、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドはほぼ同様の傾向で推移することを確認した。よって、他のアルデヒド類の吸着にも有効であると確信した。
【0098】
[pH緩衝能の考察]
試作例において、アセトアルデヒドの吸着性能(破過時間)の良好であった一部の例については、作製に用いた添着液のpH緩衝能も測定した。この結果からpH緩衝能の数値範囲をまとめると、290ないし2900mmol/kgの範囲を妥当とした。当該範囲を規定することにより、調製した添着液の性状等の把握ができ利便性が高まる。
【0099】
[まとめ]
各試作例のアルデヒド類吸着材の作製結果、検証の結果から、水、AHMPD(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、酸類から調製される添着液を担体活性炭に添着して作製する吸着材において、担体活性炭に必要なBET比表面積、DH法による細孔分布を規定することができた。また、添着液におけるAHMPD及び酸類の量、さらに、pH緩衝能も規定することができた。これらの各指標を統合することにより、前述の好例の試作例のアルデヒド類吸着材を得ることができた。この知見から、アルデヒド類吸着材の性能を生かし、これを保持したフィルター体にも展開可能である。こうすると、取り扱いの利便性の増した製品にもなり得る。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のアルデヒド類吸着材は、活性炭に添着液を組み合わせるため安価に作製でき、しかも、添着液によるアルデヒド類の吸着と活性炭による一般的な吸着の両方を備えた極めて効率の良い吸着材となる。そこで、室内、病院内、車内、機内、船内等の閉鎖環境の空気浄化に有望である。さらに、フィルター体へ簡単に加工できるため、取り扱いの利便性が向上し空調機器への適用も容易である。
【符号の説明】
【0101】
1 水
2 ポリヒドロキシアミン化合物(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)
3 酸類(無機酸または有機酸)
4 添着液
5 担体活性炭
10 アルデヒド類吸着材
20 フィルター体
21 枠部
22 通気部
23 注入口
図1
図2