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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ステータ、回転電機及び作業機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
H02K3/28 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018179284
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020054052
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柴 敦誉
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛章
(72)【発明者】
【氏名】三神 洸介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 貞一郎
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-225974(JP,A)
【文献】特開2017-163754(JP,A)
【文献】特開2013-162570(JP,A)
【文献】特開2013-138594(JP,A)
【文献】特開2013-121183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティース及び複数のスロットを有するステータコアと、
前記複数のスロットに所定ピッチで巻回されるコイルと、を備え、
前記コイルは、
前記ステータコアの周方向に第一間隔をあけて位置する一対の第一スロットに挿入された一対の第一脚部、及び、一対の前記第一脚部を連結し、前記ステータコアの軸方向の第一端面側に配された第一渡り部を有する基本コイルセグメントと、
前記周方向に前記第一間隔よりも広い第二間隔をあけて位置する一対の第二スロットに挿入された一対の第二脚部、及び、一対の前記第二脚部を連結し、前記軸方向において前記第一端面との間に前記第一渡り部が位置するように配された第二渡り部を有する渡りコイルセグメントと、を備え、
前記基本コイルセグメントの前記第一渡り部は、各第一脚部から前記周方向に互いに近づくにしたがって前記軸方向において前記第一端面から離れるように斜めに延びる一対の第一立ち上がり部を有し、
前記渡りコイルセグメントの前記第二渡り部は、各第二脚部から互いに近づく方向に延びる一対の肩部、及び、各肩部の延長方向の先端から互いに近づくにしたがって前記軸方向において前記第一端面から離れるように斜めに延びる一対の第二立ち上がり部を有し、
前記第一端面に対する前記第二立ち上がり部の傾斜角度が、前記第一端面に対する前記肩部の角度よりも大きいことで、前記第二渡り部が前記第一渡り部に接触するステータ。
【請求項2】
前記第二渡り部は、一対の前記第二立ち上がり部の延長方向の先端を連結し、前記ステータコアの第一端面に対して平行に延びる平坦部を備え、
前記平坦部には、複数の前記基本コイルセグメントの前記第一立ち上がり部の延長方向の先端が接触する請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記第二渡り部の前記第二立ち上がり部が、前記第一渡り部の前記第一立ち上がり部に対して平行に接触する請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記複数のスロットは、それぞれ前記ステータコアの径方向に並ぶ複数のレイヤーを有し、
各レイヤーには、一つの前記第一脚部又は一つの前記第二脚部が挿入され、
前記基本コイルセグメントの一対の前記第一脚部は、前記径方向において互いに隣り合う2つの前記レイヤーに挿入され、
前記渡りコイルセグメントの一対の前記第二脚部は、前記径方向において互いに2つ以上離れて位置する2つの前記レイヤーに挿入されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項5】
ロータと、前記ロータを収容する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のステータと、を備える回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機を備える作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、回転電機及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のステータには、ステータコアに対してコイルを波巻き状に巻き回したものがある。特許文献1に示すように、この種のステータには、コイルを平角線からなる複数のコイルセグメントによって構成したものがある。各コイルセグメントは、ステータコアの軸方向に互いに平行に延びてステータコアの一対のスロットに挿入される一対の脚部と、一対の脚部を連結し、ステータコアの軸方向の一方の端面側に配される渡り部と、を有する。
この種のステータでは、各コイルセグメントの一対の脚部を、ステータコアの一対のスロットに対してステータコアの軸方向の一方の端面側から挿入した後に、ステータコアの他方の端面側に突出した互いに異なる二つのコイルセグメントの脚部の先端部同士を溶接することで、波巻き状のコイルを製造できる。コイルセグメントの脚部同士を溶接する際には、互いに異なる2つの脚部同士を溶接する溶接部位が、複数の溶接部位の間でステータコアの軸方向にばらつくと、溶接不良の要因となる。そこで、このばらつきを抑えるために、ステータコアの一方の端面から突出する渡り部を、ステータコアの一方の端面に向けて押さえる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-184559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コイルを構成するコイルセグメントには、基本コイルセグメントと、渡りコイルセグメントと、がある。渡りコイルセグメントの渡り部は、ステータコアの軸方向においてステータコアの一方の端面との間に一部の基本コイルセグメントの渡り部が位置するように配される。
しかしながら、従来のステータでは、渡りコイルセグメントの渡り部が一部の基本コイルセグメントの渡り部に対して軸方向に間隔をあけて位置する。このため、コイルセグメント同士を溶接する際に、一部の基本コイルセグメントをステータコアの一方の端面に向けて押さえることができない場合がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、渡りコイルセグメントの渡り部が基本コイルセグメントの渡り部に重ねて配されても、基本コイルセグメントの渡り部を確実にステータコアの第一端面に向けて押さえることができるステータ、これを備える回転電機及び作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係るステータは、複数のティース及び複数のスロットを有するステータコアと、前記複数のスロットに所定ピッチで巻回されるコイルと、を備え、前記コイルは、前記ステータコアの周方向に第一間隔をあけて位置する一対の第一スロットに挿入された一対の第一脚部、及び、一対の前記第一脚部を連結し、前記ステータコアの軸方向の第一端面側に配された第一渡り部を有する基本コイルセグメントと、前記周方向に前記第一間隔よりも広い第二間隔をあけて位置する一対の第二スロットに挿入された一対の第二脚部、及び、一対の前記第二脚部を連結し、前記軸方向において前記第一端面との間に前記第一渡り部が位置するように配された第二渡り部を有する渡りコイルセグメントと、を備え、前記基本コイルセグメントの前記第一渡り部は、各第一脚部から前記周方向に互いに近づくにしたがって前記軸方向において前記第一端面から離れるように斜めに延びる一対の第一立ち上がり部を有し、前記渡りコイルセグメントの前記第二渡り部は、各第二脚部から互いに近づく方向に延びる一対の肩部、及び、各肩部の延長方向の先端から互いに近づくにしたがって前記軸方向において前記第一端面から離れるように斜めに延びる一対の第二立ち上がり部を有し、前記第一端面に対する前記第二立ち上がり部の傾斜角度が、前記第一端面に対する前記肩部の傾斜角度よりも大きいことで、前記第二渡り部が前記第一渡り部に接触する。
【0007】
本発明の一の態様に係る回転電機は、ロータと、前記ステータと、を備える。
【0008】
本発明の一の態様に係る作業機械は、前記回転電機を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、渡りコイルセグメントの第二渡り部をステータコアの第一端面に向けて押さえるだけで、基本コイルセグメントの第一渡り部を確実にステータコアの第一端面に向けて押さえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る回転電機を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るステータを示す斜視図である。
図3図2のステータにおける三相交流回路を表す回路図である。
図4図2のステータを構成するステータコア及び基本コイルセグメントを示す斜視図である。
図5図2のステータを構成する基本コイルセグメントを示す正面図である。
図6図2のステータを構成する渡りコイルセグメントを示す正面図である。
図7図2のステータにおいて、ステータコアの軸方向から見たステータコアと、基本コイルセグメントと、渡りコイルセグメントとの相対的な位置関係を示す平面図である。
図8図2のステータにおいて、ステータコアの径方向から見た基本コイルセグメントと、渡りコイルセグメントとの相対的な位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図1図8を参照して詳細に説明する。
<回転電機>
図1に示す回転電機1は、例えば図示しない建設機械の上部旋回体を下部走行体に対して旋回駆動する3相交流型の永久磁石同期モータである。回転電機1は、ロータ2と、ステータ3と、を備える。
ロータ2は、ロータシャフト4及びロータコア5を備える。ロータシャフト4は、軸線Oを中心とする棒状の部材である。ロータシャフト4は、軸線O周りに回転可能に設けられる。ロータコア5は、軸線Oを中心とした円筒形状に形成されている。ロータコア5は、ロータシャフト4の外周面に固定される。
【0012】
<ステータ>
図1,2に示すように、ステータ3は、ステータコア6及びコイル7を備える。
<ステータコア>
図1,4に示すように、ステータコア6は、軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。ステータコア6の内部には、前述したロータ2が回転自在に収容される。図4に示すように、ステータコア6は、複数のティース11及び複数のスロット12を備える。
【0013】
複数のティース11及び複数のスロット12は、ステータコア6の周方向に交互に形成されている。複数のティース11は、互いに同じ形状及び大きさに形成されている。各ティース11は、ステータコア6の周方向における幅寸法がステータコア6の径方向内側に向かうにしたがって小さくなるように形成されている。これにより、ステータコア6の周方向における各スロット12の幅寸法が、ステータコア6の径方向において一定となる。また、ステータコア6の周方向に隣り合う2つのスロット12の間隔は、ステータコア6の径方向内側に向かうにしたがって小さくなる。複数のスロット12は、ステータコア6の周方向に等間隔で配列される。以下の説明では、周方向に隣り合う2つのスロット12の間隔をピッチと呼ぶことがある。
3相のモータとして構成される本実施形態の回転電機1では、複数のティース11及びスロット12が等間隔で周方向に交互に形成される。
【0014】
図7に示すように、各スロット12は、ステータコア6の径方向に並ぶ複数の挿入領域LYを有する。各挿入領域LYには、後述するコイルセグメント22,23の脚部31,41が一つ挿入される。すなわち、各スロット12においては、複数の脚部31,41がステータコア6の径方向に配列される。本実施形態では、8つの挿入領域LY1~LY8がステータコア6の径方向に並ぶ。以下の説明では、各挿入領域LYをレイヤーLYと呼ぶ。また、ステータコア6の径方向に並ぶ8つのレイヤーLY1~LY8を、それぞれステータコア6の径方向内側から順番に、第一レイヤーLY1、第二レイヤーLY2…、第八レイヤーLY8と呼ぶ。
【0015】
図4,7に示すように、ステータコア6は、円筒状に形成されて複数のティース11を一体に連結するヨーク13をさらに備える。ヨーク13は、複数のティース11のうちステータコア6の径方向外側の端に接続される。
ステータコア6は、例えば電磁鋼板を軸線O方向に複数積層することで構成される。ステータコア6は、粉体成型により構成されてもよい。
【0016】
<コイル>
図2に示すように、本実施形態のステータ3は、3相分のコイル7を備える。各コイル7は、複数のスロット12に所定ピッチで波巻き状に巻回される。本実施形態において、同一のコイル7は、所定ピッチ離れて位置するスロット12毎に通されることで波巻き状に巻回される。
図3に示すように、3相分のコイル7は、三相交流回路を構成する。各相のコイル7は、並列接続される二つの並列コイル20を備える。本明細書における三相交流回路では、3相のコイル7を中性点N1,N2で接続したダブルスター結線が採用されている。なお、図2,3においては、3相のコイル7に各々別の符号7U,7V,7Wも付している。
各相の並列コイル20は、図5に示す基本コイルセグメント22と、図6に示す渡りコイルセグメント23と、を備える。
【0017】
<基本コイルセグメント>
図5に示すように、基本コイルセグメント22は、略四角形断面を有する平角線に折り曲げ加工を施すことで形成される。基本コイルセグメント22は、円形断面を有する丸線により形成されてもよい。基本コイルセグメント22は、互いに平行に延びる一対の第一脚部31と、一対の第一脚部31を連結する第一渡り部32と、を有する。
【0018】
一対の第一脚部31は、図4,5に示すように、それぞれステータコア6の軸方向に延びる。一対の第一脚部31は、ステータコア6の周方向に第一間隔I1をあけて位置する一対の第一スロット12Aに挿入される。なお、本明細書において、軸方向とは、図5、6の矢印D1で示す方向を言う。また、周方向とは、図5,6の矢印D2で示す方向を言う。
すなわち、一対の第一脚部31は互いに第一間隔I1をあけて位置する。一対の第一脚部31は、それぞれステータコア6の軸方向の第一端面14側から第一スロット12Aに挿入される。一対の第一脚部31を第一スロット12Aに挿入した状態において、一対の第一脚部31の延長方向の第一端部31Aは、それぞれステータコア6の軸方向の第二端面16から突出する。
【0019】
一対の第一脚部31の第一端部31Aは、一対の第一脚部31の間隔が広がるように折り曲げられる。一対の第一脚部31の第一端部31Aは、互いに異なるコイルセグメント22,23同士を溶接するための部位である。一対の第一脚部31の第一端部31Aの折り曲げは、基本コイルセグメント22をステータコア6に取り付けた後に行われる。すなわち、基本コイルセグメント22をステータコア6に取り付ける前の状態において、一対の第一脚部31の第一端部31Aは、図5において二点鎖線で示すように互いに平行に構成される。
【0020】
第一渡り部32は、その長手方向の両端が各第一脚部31の延長方向の第二端部31Bに接続される。第一渡り部32は、一対の第一脚部31を一対の第一スロット12Aに挿入した状態において、ステータコア6の第一端面14側に配される。
第一渡り部32は、一対の第一立ち上がり部33を有する。一対の第一立ち上がり部33は、各第一脚部31からステータコア6の周方向に互いに近づくにしたがってステータコア6の軸方向において第一端面14から離れるように斜めに延びる。一対の第一立ち上がり部の延長方向の先端は、互いに接続されている。すなわち、第一渡り部32は、所定の開き角度θ1でL字状に折り曲げた形状に形成されている。所定の開き角度θ1は、180°以下であってよい。そして、互いに接続された一対の第一立ち上がり部の先端の部分が、第一渡り部32の頂部34となる。
【0021】
また、第一渡り部32は、図7に示すように、ステータコア6の軸方向から見て、一対の第一立ち上がり部33がステータコア6の径方向にずれて位置するように折り曲げられている。これにより、一対の第一立ち上がり部33は、隣り合う2つのレイヤーLYに対応するように、ステータコア6の径方向に互いにずれて位置する。また、前述した一対の第一脚部31は、所定ピッチ離れて位置する一対の第一スロット12Aのうち、ステータコア6の径方向において互いに隣り合う2つのレイヤーLYに挿入される。
【0022】
図3に示した並列コイル20は、図4に示すように、上記した基本コイルセグメント22を複数備える。複数の基本コイルセグメント22は、ステータコア6の周方向に配列され、基本コイルセグメント22の第一脚部31の第一端部31A同士を溶接することで、直列に接続され、コイルの波形形状を形成する。並列コイル20は、上記のように複数の基本コイルセグメント22を直列に接続してなるコイル構成体21を複数備える。図4では図示しないが、複数のコイル構成体21は、ステータコア6の径方向に配列される。本実施形態において、並列コイル20は4つのコイル構成体21を備える。
【0023】
図4,5に示すように、並列コイル20を構成する基本コイルセグメント22には、メインコイルセグメント22Aと、サブコイルセグメント22Bと、がある。サブコイルセグメント22Bの一対の第一脚部31同士の第一間隔I1は、メインコイルセグメント22Aの一対の第一脚部31同士の第一間隔I1よりも小さい。具体的に、メインコイルセグメント22Aの一対の第一脚部31同士の第一間隔I1は、互いに6ピッチ離れて位置する一対の第一スロット12A同士の間隔に対応する。一方、サブコイルセグメント22Bの一対の第一脚部31同士の第一間隔I1は、互いに5ピッチ離れて位置する一対の第一スロット12A同士の間隔に対応する。
【0024】
本実施形態では、図7に示すように、第一サブコイルセグメント22B1、第二サブコイルセグメント22B2、第三サブコイルセグメント22B3、第四サブコイルセグメント22B4が、ステータコア6の径方向内側から外側に順番に並んでいる。図7においては、4つのサブコイルセグメント22B1~22B4が、4つのコイル構成体21A~21Dに各々対応している。各サブコイルセグメント22Bの一対の第一脚部31を挿入する一対の第一スロット12Aは、複数のサブコイルセグメント22B1~22B4の間で同じである。
【0025】
各サブコイルセグメント22Bにおいては、ステータコア6の径方向内側のレイヤーLYに位置する一方の第一立ち上がり部33Aと、径方向外側のレイヤーLYに位置する他方の第一立ち上がり部33Bとが、ステータコア6の周方向の一方側に順番に並んでいる。ステータコア6の周方向の一方側は、図7において矢印D2で示す方向である。
具体的に、第一サブコイルセグメント22B1では、一方の第一立ち上がり部33Aが第一レイヤーLY1に位置し、他方の第一立ち上がり部33Bが第二レイヤーLY2に位置する。第二サブコイルセグメント22B2では、一方の第一立ち上がり部33Aが第三レイヤーLY3に位置し、他方の第一立ち上がり部33Bが第四レイヤーLY4に位置する。第三サブコイルセグメント22B3では、一方の第一立ち上がり部33Aが第五レイヤーLY5に位置し、他方の第一立ち上がり部33Bが第六レイヤーLY6に位置する。第四サブコイルセグメント22B4では、一方の第一立ち上がり部33Aが第七レイヤーLY7に位置し、他方の第一立ち上がり部33Bが第八レイヤーLY8に位置する。
【0026】
<渡りコイルセグメント>
渡りコイルセグメント23は、前述したコイル構成体21同士を接続するものである。図6に示すように、渡りコイルセグメント23は、基本コイルセグメント22と同様の線材(例えば平角線、丸線)に折り曲げ加工を施すことで形成される。渡りコイルセグメント23は、互いに平行に延びる一対の第二脚部41と、一対の第二脚部41を連結する第二渡り部42と、を有する。
【0027】
一対の第二脚部41は、それぞれステータコア6の軸方向に延び、ステータコア6の周方向に第二間隔I2をあけて位置する一対の第二スロット12Bに挿入される。すなわち、一対の第二脚部41は互いに第二間隔I2をあけて位置する。一対の第二スロット12B同士の第二間隔I2は、図5に示した一対の第一スロット12A同士の第一間隔I1よりも広い。本実施形態において、一対の第二脚部41同士の第二間隔I2は、図7に示すように、互いに7ピッチ離れて位置する一対の第二スロット12B同士の間隔に対応する。
【0028】
図6に示すように、一対の第二脚部41は、それぞれステータコア6の軸方向の第一端面14側から第二スロット12Bに挿入される。一対の第二脚部41を第二スロット12Bに挿入した状態において、一対の第二脚部41の延長方向の第一端部41Aは、それぞれステータコア6の軸方向の第二端面16から突出する。
一対の第二脚部41の第一端部41Aは、一対の第二脚部41の間隔が広がるように折り曲げられる。一対の第二脚部41の第一端部41Aは、互いに異なるコイルセグメント22,23同士を溶接するための部位である。一対の第二脚部41の第一端部41Aの折り曲げは、渡りコイルセグメント23をステータコア6に取り付けた後に行われる。すなわち、渡りコイルセグメント23をステータコア6に取り付ける前の状態において、一対の第二脚部41の第一端部41Aは、図6において二点鎖線で示すように互いに平行に構成される。
【0029】
第二渡り部42は、その長手方向の両端が各第二脚部41の延長方向の第二端部41Bに接続される。第二渡り部42は、一対の第二脚部41を一対の第二スロット12Bに挿入した状態において、ステータコア6の第一端面14側に配される。
第二渡り部42は、一対の肩部43、及び、一対の第二立ち上がり部44を有する。また、本実施形態の第二渡り部42は、平坦部45も有する。
【0030】
一対の肩部43は、各第二脚部41からステータコア6の周方向に互いに近づく方向に延びる。本実施例において、一対の肩部43は、ステータコア6の第一端面14から離れるように、0度よりも大きい所定の角度で斜めに延びる。肩部43の角度は、基本コイルセグメント22の第一立ち上がり部33がステータコア6の第一端面14に対して傾斜する傾斜角度φ1よりも小さい。なお、一対の肩部43は、ステータコア6の第一端面14に対して平行に延びてよい、すなわち、肩部43の角度を0度としてもよい。
【0031】
一対の第二立ち上がり部44は、各肩部43の延長方向の先端から互いに近づくにしたがってステータコア6の軸方向において第一端面14から離れるように斜めに延びる。ステータコア6の第一端面14に対する第二立ち上がり部44の傾斜角度φ2は、前述した肩部43の角度よりも大きい。つまり、第二立ち上がり部44の傾斜角度φ2は、少なくとも0度よりも大きければよい。
第二立ち上がり部44の傾斜角度φ2は、基本コイルセグメント22の第一立ち上がり部33の傾斜角度φ1と同じである。すなわち、一対の第二立ち上がり部44がなす開き角度θ2は、一対の第一立ち上がり部33がなす開き角度θ1と同じである。なお、第二立ち上がり部44の傾斜角度φ2は、例えば、第一立ち上がり部33の傾斜角度φ1より大きくてもよい。すなわち、一対の第二立ち上がり部44の開き角度θ2は、一対の第一立ち上がり部33の開き角度θ1より小さくてもよい。
一対の第二立ち上がり部44の延長方向の先端は、平坦部45を介して互いに接続されている。なお、一対の第二立ち上がり部44の延長方向の先端は、例えば何も介さずに直接接続されてもよい。
【0032】
平坦部45は、一対の第二立ち上がり部44の延長方向の先端を連結する。平坦部45は、ステータコア6の第一端面14に対して平行に延びる。本願明細書において、平坦部45がステータコア6の第一端面14に平行に延びることは、平坦部45が第一端面14に対して若干傾斜して延びることも含む。
【0033】
第二渡り部42は、図7に示すように、ステータコア6の軸方向から見て、一対の第二立ち上がり部44がステータコア6の径方向にずれて位置するように折り曲げられている。これにより、一対の第二立ち上がり部44は、ステータコア6の径方向において互いに2つ以上離れて位置する2つのレイヤーLYにそれぞれ位置する。また、一対の第二脚部41は、所定ピッチ離れて位置する一対の第二スロット12Bのうち、ステータコア6の径方向において互いに2つ以上離れて位置する2つのレイヤーLYに挿入される。
【0034】
具体的に、一対の第二立ち上がり部44は、ステータコア6の径方向において互いに3つ離れて位置する2つのレイヤーLYにそれぞれ位置する。例えば、一方の第二立ち上がり部44Aが第一レイヤーLY1に位置する場合、他方の第二立ち上がり部44Bは第四レイヤーLY4に位置する。なお、一対の第二立ち上がり部44は、例えばステータコア6の径方向において互いに1つ又は2つだけ離れて位置する2つのレイヤーLYにそれぞれ位置してもよい。
また、平坦部45は、ステータコア6の周方向に向かうにしたがって、ステータコア6の径方向外側に向かう方向に延びている。
【0035】
本実施形態では、図7に示すように、第一渡りコイルセグメント231、第二渡りコイルセグメント232、第三渡りコイルセグメント233が、ステータコア6の径方向内側から外側に順番に並んでいる。各渡りコイルセグメント23の一対の第二脚部41を挿入する一対の第二スロット12Bは、複数の渡りコイルセグメント23の間で同じである。
【0036】
各渡りコイルセグメント23においては、ステータコア6の径方向内側のレイヤーLYに位置する一方の第二立ち上がり部44Aと、径方向外側のレイヤーLYに位置する他方の第二立ち上がり部44Bとが、ステータコア6の周方向の一方側に順番に並んでいる。
具体的に、第一渡りコイルセグメント231では、一方の第二立ち上がり部44Aが第一レイヤーLY1に位置し、他方の第二立ち上がり部44Bが第四レイヤーLY4に位置する。第二渡りコイルセグメント232では、一方の第二立ち上がり部44Aが第三レイヤーLY3に位置し、他方の第二立ち上がり部44Bが第六レイヤーLY6に位置する。第三渡りコイルセグメント233では、一方の第二立ち上がり部44Aが第五レイヤーLY5に位置し、他方の第二立ち上がり部44Bが第八レイヤーLY8に位置する。
【0037】
<作用効果>
本実施形態のステータ3においては、図7,8に示すように、サブコイルセグメント22B(基本コイルセグメント22)の一対の第一脚部31が、一対の第一スロット12Aに挿入される。また、渡りコイルセグメント23の一対の第二脚部41は、ステータコア6の周方向において一対の第一スロット12Aを挟み込むように位置する一対の第二スロット12Bに挿入される。このため、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42は、ステータコア6の軸方向において第一端面14との間にサブコイルセグメント22B(基本コイルセグメント22)の第一渡り部32が位置するように配される。そして、渡りコイルセグメント23の第二立ち上がり部44の傾斜角度φ2が肩部43の角度よりも大きいことで、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42がサブコイルセグメント22Bの第一渡り部32に接触する。
以下、この点について具体的に説明する。
【0038】
一の渡りコイルセグメント23の一方の第二立ち上がり部44Aとステータコア6の第一端面14との間には、一のサブコイルセグメント22Bの一方の第一立ち上がり部33Aが位置する。また、一の渡りコイルセグメント23の他方の第二立ち上がり部44Bとステータコア6の第一端面14との間には、一のサブコイルセグメント22Bに対して径方向外側に隣り合う他のサブコイルセグメント22Bの他方の第一立ち上がり部33Bが位置する。さらに、一の渡りコイルセグメント23の平坦部45とステータコア6の第一端面14との間には、ステータコア6の径方向に隣り合う2つのサブコイルセグメント22Bの頂部34が位置する。
【0039】
例えば、第一渡りコイルセグメント231の一方の第二立ち上がり部44Aとステータコア6の第一端面14との間には、第一サブコイルセグメント22B1の一方の第一立ち上がり部33Aが位置する。また、第一渡りコイルセグメント231の他方の第二立ち上がり部44Bとステータコア6の第一端面14との間には、第二サブコイルセグメント22B2の他方の第一立ち上がり部33Bが位置する。また、第一渡りコイルセグメント231の平坦部45とステータコア6の第一端面14との間には、第一、第二サブコイルセグメント22B1,22B2の頂部34が位置する。
上記した第一渡りコイルセグメント231と第一、第二サブコイルセグメント22B1,22B2との位置関係は、第二渡りコイルセグメント232と第二、第三サブコイルセグメント22B2,22B3との間、及び、第三渡りコイルセグメント233と第三、第四サブコイルセグメント22B3,22B4との間においても同様である。
【0040】
そして、ステータコア6の第一端面14に対する第二立ち上がり部44の傾斜角度φ2が、ステータコア6の第一端面14に対する肩部43の角度よりも大きいことで、ステータコア6の第一端面14を基準とした第二渡り部42の高さ位置が低くなる。また、一対の第二立ち上がり部44がステータコア6の周方向において互いに近くに位置する。これにより、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42がサブコイルセグメント22Bの第一渡り部32に接触する。
【0041】
本実施形態において、一の渡りコイルセグメント23の一方の第二立ち上がり部44Aには、一のサブコイルセグメント22Bの一方の第一立ち上がり部33Aが接触する。また、一の渡りコイルセグメント23の他方の第二立ち上がり部44Bと、他のサブコイルセグメント22Bの他方の第一立ち上がり部33Bとが接触する。ここで、サブコイルセグメント22Bの第一立ち上がり部33の傾斜角度φ1と渡りコイルセグメント23の第二立ち上がり部44の傾斜角度φ2とは互いに等しいため、第二立ち上がり部44は、第一立ち上がり部33に対して平行に接触する。
また、一の渡りコイルセグメント23の平坦部45には、ステータコア6の径方向に隣り合う2つのサブコイルセグメント22Bの頂部34が接触する。
【0042】
より具体的に説明すれば、第一渡りコイルセグメント231の一方の第二立ち上がり部44Aは、第一サブコイルセグメント22B1の一方の第一立ち上がり部33Aに対して平行に接触する。また、第一渡りコイルセグメント231の他方の第二立ち上がり部44Bは、第二サブコイルセグメント22B2の他方の第一立ち上がり部33Bに対して平行に接触する。また、第一渡りコイルセグメント231の平坦部45には、第一、第二サブコイルセグメント22B1,22B2の頂部34が接触する。
上記のように第一渡りコイルセグメント231の第二渡り部42と第一、第二サブコイルセグメント22B1,22B2の第一渡り部32とが接触する態様は、第二渡りコイルセグメント232の第二渡り部42と第二、第三サブコイルセグメント22B2,22B3の第一渡り部32との間、及び、第三渡りコイルセグメント233の第二渡り部42と第三、第四サブコイルセグメント22B3,22B4の第一渡り部32との間においても同様である。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るステータ3及びこれを備える回転電機1によれば、サブコイルセグメント22Bの第一渡り部32が、ステータコア6の第一端面14と渡りコイルセグメント23の第二渡り部42との間に配されると共に、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42に接触する。これにより、互いに異なるコイルセグメント22,23の脚部31,41同士を溶接する際に、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42をステータコア6の第一端面14に向けて押さえるだけで、サブコイルセグメント22Bの第一渡り部32を確実にステータコア6の第一端面14に向けて押さえることができる。全てのコイルセグメント22,23をステータコア6の第一端面14に向けて押さえることで、互いに異なる2つの脚部31,41同士を溶接する溶接部位が、複数の溶接部位の間でステータコア6の軸方向にばらつくことを効果的に抑制できる。
【0044】
また、本実施形態に係るステータ3及び回転電機1によれば、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42が、一対の第二立ち上がり部44の先端の間に位置してステータコア6の第一端面14に平行する平坦部45を備える。これにより、1つの渡りコイルセグメント23の第二渡り部42が複数のサブコイルセグメント22Bの第一渡り部32に重ねて配されていても、複数のサブコイルセグメント22Bの頂部34を同一の第二渡り部42に接触させることができる。
また、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42が平坦部45を備える場合には、平坦部45を備えない場合と比較して、ステータコア6の第一端面14を基準とした渡りコイルセグメント23の第二渡り部42の頂部の高さ位置が低くなる。これにより、サブコイルセグメント22Bの頂部34をより確実に渡りコイルセグメント23の第二渡り部42の平坦部45に接触させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るステータ3及び回転電機1によれば、渡りコイルセグメント23の第二立ち上がり部44が、サブコイルセグメント22Bの第一立ち上がり部33に対して平行に接触する。すなわち、第一立ち上がり部33と第二立ち上がり部44とが線接触する。このため、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42をステータコア6の第一端面14に向けて押さえる際に、サブコイルセグメント22Bの第一渡り部32を安定にステータコア6の第一端面14に向けて押さえることができる。また、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42をステータコア6の第一端面14に向けて押さえる際に、第一渡り部32や第二渡り部42が変形することを抑制できる。
【0046】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0047】
本発明のステータにおいて、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42は、例えばステータコア6の軸方向において第一端面14との間にメインコイルセグメント22Aの第一渡り部32が位置するように配されてもよい。すなわち、渡りコイルセグメント23の第二渡り部42がメインコイルセグメント22Aの第一渡り部32に接触してもよい。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0048】
本発明のステータにおいて、挿入領域LYの数は8つ以外であってよい。本発明は、例えば、4、6、10、12、またはそれ以上の数の挿入領域LYを有するステータに適用することもできる。
【0049】
本発明の回転電機は、ステータ3のコイル7に交流電流を流すことでロータ2を駆動回転するモータに限らず、エンジン等の動力によってロータ2を回転させることで発電する発電機であってもよい。
【0050】
本発明の回転電機は、油圧ショベル、ブルドーザ、フォークリフトなどの作業機械に用いる回転電機として好適である。
【符号の説明】
【0051】
1…回転電機、2…ロータ、3…ステータ、4…ロータシャフト、5…ロータコア、6…ステータコア、7…コイル、11…ティース、12…スロット、12A…第一スロット、12B…第二スロット、14…第一端面、22…基本コイルセグメント、22A…メインコイルセグメント、22B,22B1,22B2,22B3,22B4…サブコイルセグメント、23,231,232,233…渡りコイルセグメント、31…第一脚部、32…第一渡り部、33,33A,33B…第一立ち上がり部、34…頂部、41…第二脚部、42…第二渡り部、43…肩部、44,44A,44B…第二立ち上がり部、45…平坦部、I1…第一間隔、I2…第二間隔、O…軸線、φ1…第一立ち上がり部33の傾斜角度、φ2…第二立ち上がり部44の傾斜角度
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8