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  • 特許-巻線形回転電機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】巻線形回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20220907BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H02K13/00 R
H02K9/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018188184
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020058163
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 敬太
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-033536(JP,A)
【文献】特開昭51-066413(JP,A)
【文献】実開昭53-066613(JP,U)
【文献】実開昭49-038910(JP,U)
【文献】実開昭60-119861(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
H02K 9/06
H02K 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心を貫通する複数の回転子巻線と、前記ロータシャフトに取り付けられて前記複数の回転子巻線とそれぞれ電気的に結合する複数のスリップリングとを有する回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側に設けられた固定子鉄心と、前記固定子鉄心を貫通する固定子巻線とを有する固定子と、
前記複数のスリップリングのそれぞれと摺動するブラシを保持し外部ケーブルと結合する複数のブラシホルダーと、前記複数のブラシホルダーのそれぞれを軸方向に挟むように静止支持され、軸方向に投影した範囲内に前記複数のブラシホルダーを投影した範囲を含むように形成された絶縁材からなる複数の相間短絡防止板と、を有する静止側伝送部と、
を備え、
前記複数の相間短絡防止板のそれぞれには、前記ブラシホルダーと軸方向に対向しない複数の通風孔と、前記ブラシホルダーと軸方向に対向する通風孔と、が形成され、
前記ブラシホルダーと軸方向に対向しない前記複数の通風孔のうちの一部は、前記ブラシにおいて前記ブラシホルダーから前記ロータシャフトの径方向外側に突出した部分と軸方向に対向し、
前記複数のブラシホルダーおよび前記複数の相間短絡防止板は、前記回転子から離間した、
ことを特徴とする巻線形回転電機。
【請求項2】
前記複数のブラシホルダー、および前記複数の相間短絡防止板を収納する回転接続部カバーと、
前記回転接続部カバー内で、前記ロータシャフトに取り付けられた冷却ファンと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の巻線形回転電機。
【請求項3】
前記複数のブラシホルダーを軸方向に貫通し、前記複数のブラシホルダーを静止支持し、周方向に互いに間隔をおいて配された複数の連結支持ロッドをさらに備え、
前記複数の相間短絡防止板のそれぞれは、2本の前記連結支持ロッドにより支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻線形回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線形回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
同期機、あるいは巻線形誘導電動機などの巻線形回転電機においては、通常、回転子巻線に3相の交流を流すために、静止側から回転子巻線側に、各相の電力を供給する。各相の回転子巻線は、それぞれ、ロータシャフトの軸方向の一方に設けられたそれぞれに対応するスリップリングに接続されている。一方、静止側の配線はそれぞれの相において、スリップリングの径方向外側に設けられたブラシに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4339761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、3相の回転電機では、前記のように各相の巻線に接続されている3つのスリップリングが、ロータシャフトの端部付近に、軸方向に互いに間隔をおいて取り付けられている。それぞれのスリップリングと接触して電気的に導通する静止側の各相のブラシは、それぞれブラシホルダーにより支持されているので、各相のブラシおよびブラシホルダーも、軸方向に互いに間隔をおいて配されている。この結果、ある相のブラシおよびブラシホルダーと、その軸方向に隣接する相のブラシおよびブラシホルダーとの間には、相間電圧が印加される。
【0005】
図4は、従来の巻線形回転電機の回転子端部近傍における回転側と静止側の構成例を示す縦断面図である。また、図5は、ある一つの相についての回転側と静止側の構成例を示す横断面図である。図5が示すのがたとえばU相であるとする。U相のスリップリング15は、回転子巻線のうちのU相のみと電気的に接続している。U相のスリップリング15の径方向外側には、静止側のU相のブラシ61およびブラシホルダー62が配されている。
【0006】
U相とV相の間、V相とW相との間、およびU相の外側、W相の外側には、それぞれ、絶縁板70が設けられている。しかしながら、定期的な清掃時の不備や、ブラシリードが隣接する相に近接した場合など、相間短絡を惹き起こす可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、巻線形回転電機の回転子端部近傍における相間短絡の可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明に係る巻線形回転電機は、ロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取り付けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心を貫通する複数の回転子巻線と、前記ロータシャフトに取り付けられて前記複数の回転子巻線とそれぞれ電気的に結合する複数のスリップリングとを有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に設けられた固定子鉄心と、前記固定子鉄心を貫通する固定子巻線とを有する固定子と、前記複数のスリップリングのそれぞれと摺動するブラシを保持し外部ケーブルと結合する複数のブラシホルダーと、前記複数のブラシホルダーのそれぞれを軸方向に挟むように静止支持され、軸方向に投影した範囲内に前記複数のブラシホルダーを投影した範囲を含むように形成された絶縁材からなる複数の相間短絡防止板と、を有する静止側伝送部と、を備え、前記複数の相間短絡防止板のそれぞれには、前記ブラシホルダーと軸方向に対向しない複数の通風孔と、前記ブラシホルダーと軸方向に対向する通風孔と、が形成され、前記ブラシホルダーと軸方向に対向しない前記複数の通風孔のうちの一部は、前記ブラシにおいて前記ブラシホルダーから前記ロータシャフトの径方向外側に突出した部分と軸方向に対向し、前記複数のブラシホルダーおよび前記複数の相間短絡防止板は、前記回転子から離間した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻線形回転電機の回転子端部近傍における相間短絡の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る巻線形回転電機の構成を示す縦断面図である。
図2】実施形態に係る巻線形回転電機の回転子端部近傍における回転側と静止側の構成を示す縦断面図である。
図3】実施形態に係る巻線形回転電機の回転子端部近傍におけるある一つの相についての回転側と静止側の構成例を示す横断面図である。
図4】従来の巻線形回転電機の回転子端部近傍における回転側と静止側の構成例を示す縦断面図である。
図5】従来の巻線形回転電機の回転子端部近傍におけるある一つの相についての回転側と静止側の構成例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る巻線型回転電機について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る巻線形回転電機の構成を示す縦断面図である。巻線形回転電機200は、回転子10、固定子20、2つの軸受30、フレーム40、2つの軸受ブラケット45、静止側伝送部60を有する。
【0013】
回転子10は、水平方向に延びるロータシャフト11、ロータシャフト11の径方向外側に取り付けられた回転子鉄心12、および回転子鉄心12を貫通する複数の回転子巻線13を有する。ロータシャフト11は、回転子鉄心12の両外側のそれぞれで軸受30に支持されている。回転子巻線13は、回転子鉄心12の外周近傍に周方向に互いに間隔をおいて形成された複数の回転子スロット(図示せず)内を貫通し、回転子鉄心12の軸方向の両外側において互いに接続され、あるいは静止側伝送部60を介して、外部と電気的に結合される。
【0014】
固定子20は、回転子鉄心12の径方向の外側に配された円筒状の固定子鉄心21、および固定子鉄心21を貫通する固定子巻線22を有する。
【0015】
回転子鉄心12および固定子20は、固定子20の径方向外側に配されたフレーム40に収納されている。フレーム40の軸方向の両側の端部には、それぞれ軸受ブラケット45が取り付けられている。それぞれの軸受ブラケット45は、それぞれの軸受30を静止支持している。
【0016】
図2は、実施形態に係る巻線形回転電機の回転子端部近傍における回転側と静止側の構成を示す縦断面図である。また、図3は、実施形態に係る巻線形回転電機の回転子端部近傍におけるある一つの相についての回転側と静止側の構成例を示す横断面図である。
【0017】
ロータシャフト11の端部には、冷却ファン50が取り付けられている。冷却ファン50は、ロータシャフト11の端部近傍を収納する回転接続部カバー51内において、空気などの冷却用気体を循環駆動する。
【0018】
冷却ファン50の軸方向の内側のロータシャフト11の部分には、U相、V相およびW相の3つの相に対応するそれぞれのスリップリング15が、軸方向に互いに間隙を空けて、取り付けられている。それぞれのスリップリング15間の間隙には、絶縁管16が設けられている。それぞれのスリップリング15は、回転子巻線13の各相とそれぞれ接続されている。たとえば、U相については、回転子巻線13のU相と接続する引き出し線13aがロータシャフト11内を経由してロータシャフト11の端部の外側まで引き回されている。引き出し線13aは、さらに他と電気的に絶縁された状態で延びてU相のスリップリング15に接続されている。V相およびW相についても同様に、回転子巻線13からそれぞれのスリップリング15までの電気配線部分は、それぞれ、他の相および周囲とは電気的に絶縁されている。
【0019】
回転側の回路、すなわち回転子巻線13、引き出し部13aおよびスリップリング15は、スリップリング15と静止側伝送部60のブラシ61とが接触することにより、静止側の回路と電気的に接続している。静止側伝送部60は、3つの相別静止側伝送部60aを有し、それぞれの相に対応する相別静止側伝送部60aは、ブラシ61、ブラシホルダー62、連結線63、連結支持ロッド68、および相間短絡防止板100を有する。
【0020】
ブラシ61のスリップリング15との接触面は、スリップリング15の表面に対応するような曲面に形成さている。この結果、ブラシ61は、できるだけ広い面積でスリップリング15と摺動可能に形成されている。
【0021】
このため、図3に示すように、それぞれの相においては、4つのブラシ61が、スリップリング15の径方向外側から、それぞれ、スリップリング15に向かって押し付けられている。4つブラシ61は、2つずつ同一のブラシホルダー62により保持されている。それぞれのブラシホルダー62は、その両端近傍を貫通する2つの連結支持ロッド68によって、支持されている。なお、連結支持ロッド68により3つの相のブラシホルダー62が機械的には結合しているが、電気的には絶縁されるように、連結支持ロッド68の全体あるいはブラシホルダー62との結合部分は、絶縁体で形成されている。
【0022】
ブラシホルダー62の両端には端子板62aが設けられており、一方の端子板62aは、端子64aにより外部ケーブル64と接続可能に形成されている。また、他方の端子板62aは、別のブラシホルダー62に設けられた端子板62aとの間で、端子63aで接続された連結線63により電気的に結合されている。
【0023】
ブラシホルダー62の周方向位置は、たとえば、上半部にあるとメンテナンス時に取り扱いやすい等で設定すればよい。
【0024】
各相のそれぞれのブラシホルダー62の間の軸方向位置、軸方向の最も外側のブラシホルダー62のさらに軸方向の外側位置、および軸方向の最も内側のブラシホルダー62のさらに軸方向の内側位置には、相間短絡防止板100がそれぞれ設けられている。相間短絡防止板100は、同一のブラシホルダー62を支持する2本の連結支持ロッド68により、同様に支持されている。
【0025】
軸方向に投影すると、ブラシホルダー62は、相間短絡防止板100の範囲内に収まるような大きさに相間短絡防止板100が形成されている。また、ブラシ61のスリップリング15との密着部近傍を除いて、ブラシ61も、相間短絡防止板100の範囲内に収まるような大きさに、相間短絡防止板100が形成されている。
【0026】
相間短絡防止板100には、複数の通風孔101が形成されている。回転接続部カバー51内のロータシャフト11の端部に取り付けられている冷却ファン50から、冷却風が回転接続部カバー51内に送られる。相間短絡防止板100に複数の通風孔101が形成されていることにより、回転接続部カバー51内の冷却風の循環が確保される。
【0027】
したがって、相間短絡防止板100の設置によって、回転接続部カバー51内の冷却風の循環の低下を最小限に留めながら、巻線形回転電機の回転子端部近傍における相間短絡の可能性を低減することができる。
【0028】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0029】
さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0030】
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
10…回転子、11…ロータシャフト、12…回転子鉄心、13…回転子巻線、13a…引き出し部、15…スリップリング、16…絶縁管、20…固定子、21…固定子鉄心、22…固定子巻線、30…軸受、40…フレーム、45…軸受ブラケット、50…冷却ファン、51…回転接続部カバー、60…静止側伝送部、60a…相別静止側伝送部、61…ブラシ、62…ブラシホルダー、62a…端子板、63…連結線、63a…端子、64…外部ケーブル、64a…端子、68…連結支持ロッド、70…絶縁板、100…相間短絡防止板、101…通風孔、200…巻線形回転電機
図1
図2
図3
図4
図5