(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】タイヤ加硫成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20220907BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20220907BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20220907BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/38
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2018210414
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】今西 天亮
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-039819(JP,A)
【文献】特開2012-016826(JP,A)
【文献】特開2002-160234(JP,A)
【文献】特開昭61-031321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 33/38
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンタイヤのタイヤ径方向の外側にタイヤ周方向へ並設されて環状をなす複数のセクタを有する加硫モールドと、
前記複数のセクタをそれぞれ前記タイヤ径方向の内側に取り付けた複数のセグメントと、前記タイヤ径方向における前記複数のセグメントの外周を覆う筒状のジャケットとを有するコンテナと
を備え、
前記複数のセクタのうちの少なくとも1個、そのセクタを取り付けた前記セグメント、及びそのセグメントの前記タイヤ径方向の外側に位置する前記ジャケットの少なくとも一部は、透光性を有する、タイヤ加硫成形機。
【請求項2】
グリーンタイヤのタイヤ幅方向の両側にそれぞれ配置された一対のサイド型を有する加硫モールドと、
前記一対のサイド型をそれぞれ前記タイヤ幅方向の内側に取り付けた一対の
第1プレートを有するコンテナと
、
前記一対の第1プレートをそれぞれ前記タイヤ幅方向の内側に取り付けた一対のプラテンと、前記一対のプラテンのうちの一方の前記タイヤ幅方向外側を覆うように配置された第2プレートとを有するフレームと
を備え、
少なくとも前記第2プレート、その第2プレートによって覆われた前記プラテン、そのプラテンに取り付けられた前記第1プレート、その第1プレートに取り付けられた前記サイド型は、透光性を有する、タイヤ加硫成形機。
【請求項3】
前記加硫モールド及び前記コンテナの全てが透光性を有する、請求項1又は2に記載のタイヤ加硫成形機。
【請求項4】
前記加硫モールド及び前記コンテナの前記透光性を有する部分は、200℃以上の耐熱性を有する樹脂又はセラミックスからなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたタイヤの加硫成形機は、グリーンタイヤの内面側を覆うブラダと、グリーンタイヤの外面側を覆う加硫モールドと、これらを覆うコンテナとを備える。ブラダと加硫モールドによって画定されたキャビティ内でグリーンタイヤが加硫されることで、タイヤが成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グリーンタイヤの加硫時、加硫モールドの内面とグリーンタイヤとの間に空気又はゴム組成物から発生したガスが残留すると、タイヤ表面にベアが発生したり、タイヤ内部にエア入り(空洞)が発生したりする。しかし、特許文献1の加硫成形機では、加硫時のゴムの流れが不明のため、この問題(工程不良)の対策に時間を要する。
【0005】
本発明は、加硫時のゴム流れを確認可能なタイヤ加硫成形機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、グリーンタイヤのタイヤ径方向外側にタイヤ周方向へ並設されて環状をなす複数のセクタを有する加硫モールドと、前記複数のセクタをそれぞれ前記タイヤ径方向の内側に取り付けた複数のセグメントと、前記タイヤ径方向における前記複数のセグメントの外周を覆う筒状のジャケットとを有するコンテナとを備え、前記複数のセクタのうちの少なくとも1個、そのセクタを取り付けた前記セグメント、及びそのセグメントの前記タイヤ径方向外側に位置する前記ジャケットの少なくとも一部は、透光性を有する、タイヤ加硫成形機を提供する。
【0007】
本発明の第2態様は、グリーンタイヤのタイヤ幅方向の両側にそれぞれ配置された一対のサイド型を有する加硫モールドと、前記一対のサイド型をそれぞれ前記タイヤ幅方向の内側に取り付けた一対の第1プレートを有するコンテナと、前記一対の第1プレートをそれぞれ前記タイヤ幅方向の内側に取り付けた一対のプラテンと、前記一対のプラテンのうちの一方の前記タイヤ幅方向外側を覆うように配置された第2プレートとを有するフレームとを備え、少なくとも前記第2プレート、その第2プレートによって覆われた前記プラテン、そのプラテンに取り付けられた前記第1プレート、その第1プレートに取り付けられた前記サイド型は、透光性を有する、タイヤ加硫成形機を提供する。
【0008】
第1態様によれば、タイヤ径方向におけるコンテナの外側から透光性を有する部分を透して、セクタへのゴムの密着状態、及びゴム流れの良し悪しを容易に確認できる。第2態様によれば、タイヤ幅方向におけるコンテナの外側から透光性を有する部分を透して、サイド型へのゴムの密着状態、及びゴム流れの良し悪しを容易に確認できる。よって、ゴム流れが悪い部分が存在する場合、加硫モールドの対象部分にベントホールを設けたり、グリーンタイヤの対象部分のゴムの量を調整したり、短時間かつ的確に対策できる。その結果、加硫モールドの内部に空気又はガスが残留すること効果的に抑制でき、ベア及びエア入り等がタイヤに発生することを防止できる。
【0009】
前記加硫モールド及び前記コンテナの全てが透光性を有する。この態様によれば、加硫モールド内のゴム流れが悪い部分を確実に判断できる。
【0010】
前記加硫モールド及び前記コンテナの前記透光性を有する部分は、200℃以上の耐熱性を有する樹脂又はセラミックスからなる。この態様によれば、加硫モールド及びコンテナに透光性を有する部分を確実に設け、グリーンタイヤを加硫できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤ加硫成形機では、コンテナ及び加硫モールドの透光性を有する部分を透して、加硫モールドへのゴムの密着状態、及びゴム流れの良し悪しを容易に確認できる。よって、短時間かつ的確にゴム流れが悪い部分を対策できるため、ベア及びエア入り等がタイヤに発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の実施形態に係る型締め状態のタイヤ加硫成形機を示す断面図。
【
図1B】型開き状態のタイヤ加硫成形機を示す断面図。
【
図2】ブラダ、セクタ、及びセグメントを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1A及び
図1Bは、本発明の実施形態に係るタイヤ加硫成形機(以下「加硫成形機」と略す。)10を示す。この加硫成形機10は、フレーム20、コンテナ30、加硫モールド40、及びブラダユニット50を備える。
【0015】
図1Aに示すように、加硫モールド40とブラダユニット50によって、グリーンタイヤ1を加硫するキャビティが画定されている。加硫モールド40は、コンテナ30を介してフレーム20に取り付けられている。図示しない駆動機構によってフレーム20が駆動されることで、加硫モールド40は、
図1Aに示す型締め状態及び
図1Bに示す型開き状態に切り換えられる。
【0016】
図1A及び
図1Bに示すように、フレーム20は、プレート21、上プラテン22、及び下プラテン23を備える。
【0017】
プレート21は、平面視円環状であり、昇降部材24の下端に固定されている。上プラテン22は、平面視円形状であり、昇降部材24の中心に配置された昇降部材25の下端に固定されている。下プラテン23は、平面視円環状であり、上プラテン22の下方の所定位置に固定されている。昇降部材24,25は駆動機構をそれぞれ備え、プレート21と上プラテン22を独立して昇降する。
【0018】
上プラテン22は、熱交換媒体(例えば、オイル)が流動される流路22aを備える。下プラテン23は、上プラテン22と同様に、熱交換媒体が流動される流路23aを備える。流路22a,23aを流動させる熱交換媒体の温度を調整することで、上プラテン22及び下プラテン23を介して加硫モールド40を所望の加硫温度に調整できる。
【0019】
引き続いて
図1A及び
図1Bを参照すると、コンテナ30は、複数のセグメント31、ジャケット32、上プレート33、及び下プレート35を備える。
【0020】
図2を併せて参照すると、セグメント31は、加硫モールド40を構成する複数のセクタ41と同じ数だけ設けられ、個々のセクタ41をそれぞれネジ止めする。タイヤ径方向Xにおけるセグメント31の内面は、セクタ41の外面に沿う形状を有する。タイヤ径方向Xにおけるセグメント31の外面は、平面視円弧状であり、上方から下方に向けて次第に拡開(傾斜)する円錐状の傾斜面31aで構成されている。複数のセグメント31は、上プレート33に固定された複数の上スライド34にそれぞれ取り付けられ、上スライド34に対してタイヤ径方向Xに往復移動可能である。
【0021】
ジャケット32は、
図1Bに示す型開き状態の加硫モールド40の外周を覆うことが可能な直径の円筒状であり、プレート21の下面に固定されている。ジャケット32は、昇降部材24の昇降動作に従ってプレート21を介して昇降する。ジャケット32の内面は、プレート21に近接した上側からプレート21と離間した下側に向けて、次第に拡開する円錐状の傾斜面32aで構成されている。プレート21が降下すると、ジャケット32の傾斜面32aがセグメント31の傾斜面31aを押圧し、タイヤ径方向Xにおいて外側に位置するセグメント31を内側に移動させ、複数のセグメント31を環状に連なった状態に配置(並設)できる。
【0022】
上プレート33は、ジャケット32の内径よりも小径の円板状であり、上プラテン22の下面に固定されている。上プレート33は、昇降部材25が昇降動作に従って上プラテン22を介して昇降する。上プレート33には、外周部に上スライド34が固定され、その内側に加硫モールド40を構成する上型42が固定されている。これにより、セクタ41を含むセグメント31と上型42とは、上プレート33と一体に昇降する。
【0023】
下プレート35はジャケット32の直径と概ね同じ直径の円板状であり、下プラテン23の上面に固定されている。下プレート35には、外周部に下スライド36が固定され、その内側に加硫モールド40を構成する下型44が固定されている。
図1Aのように昇降部材24,25が下降した型締め時、下スライド36は、載置されたセグメント31をタイヤ径方向Xにスライド可能に支持する。
【0024】
引き続いて
図1A及び
図1Bを参照すると、加硫モールド40は、複数のセクタ41、上型(第1のサイド型)42、及び下型(第2のサイド型)44を備える。
【0025】
セクタ41は、環状体を周方向に複数(本実施形態では7個)分割することで形成された平面視扇形状であり、それぞれセグメント31に取り付けられている。
図1Aに示す型締め状態では、複数のセクタ41は、成形するタイヤの外径に応じた内径の円環状に連なる。タイヤ径方向Xにおいて、セクタ41の内側面はタイヤのトレッド部を成形するための成形面41aであり、セクタ41の外側面はセグメント31に取り付けるための取付面41bである。
図2及び
図3を参照すると、タイヤ周方向Zにおけるセクタ41の両側にはそれぞれ、タイヤ径方向Xの内側に位置する当接面41cと、タイヤ径方向Xの外側に位置する逃がし面41dとが設けられている。
図1Aに示す型締め時、隣接するセクタ41の当接面41c同士は互いに当接し、隣接するセクタ41の逃がし面41d同士は、互いに間隔をあけて位置する。
【0026】
図1A及び
図1Bに示すように、上型42は、円環状であり、グリーンタイヤ1の上方に位置するように上プレート33の下面に固定されている。上型42は、昇降部材25の昇降動作に従って上プレート33を介して昇降する。上型42の内周部には上ビードリング43が固定されている。
図1A及び
図1Bにおいて下側に位置する上型42の内面は、タイヤの一対のサイドウォール部のうちの一方を成形するための成形面42aであり、上ビードリング43の内面は、タイヤの一対のビード部のうちの一方を成形するための成形面43aである。上型42の外周部には、型締め時にセクタ41が当接する段部42bが形成されている。
【0027】
下型44は、上型42と同様の円環状であり、グリーンタイヤ1の下部に位置するように下プレート35の上面に固定されている。下型44の内周部には、下ビードリング45が固定されている。
図1A及び
図1Bにおいて上側に位置する下型44の内面は、タイヤの一対のサイドウォール部のうちの他方を成形するための成形面44aであり、下ビードリング45の内側面は、タイヤの一対のビード部のうちの他方を成形するための成形面45aである。下型44の外周部には、型締め時にセクタ41が当接する段部44bが形成されている。
【0028】
引き続いて
図1A及び
図1Bを参照すると、ブラダユニット50は、支軸51、上クランプ52、下クランプ53、及びブラダ54を備える。
【0029】
支軸51は、下プラテン23の中心に配置されており、図示しない駆動機構によってタイヤ幅方向(軸方向)Yへ昇降可能なロッド51aを備える。上クランプ52はロッド51aに固定され、下クランプ53は支軸51の本体に固定されている。上クランプ52と下クランプ53のタイヤ幅方向Yに間隔は、駆動機構の駆動によってロッド51aを昇降させることで調整される。ブラダ54は、上側内周縁がクランプ52に取り付けられ、下側内周縁がクランプ52に取り付けられている。上クランプ52、下クランプ53及びブラダ54によって囲まれた空間内には、図示しない給排気装置によって空気が供給及び排出される。ブラダ54は、空気が供給されることで膨らみ、グリーンタイヤ1をタイヤ径方向の内側から支持する。
【0030】
このように構成された加硫成形機10には、
図1Bに示す型開き状態で、タイヤ幅方向Yが上下に延びる姿勢としたグリーンタイヤ1が下型44上に載置される。続いて、空気を供給してブラダ54を膨張させ、その外面でグリーンタイヤ1の内側面を保持する。これにより、グリーンタイヤ1は、下ビードリング45とブラダ54によって支持され、下型44とは非接触状態になる。
【0031】
続いて、駆動機構を駆動することにより昇降部材24,25を降下させ、型締めする。詳しくは、まず、グリーンタイヤ1の上側ビード部に上ビードリング43が当接した後、当接により変形したグリーンタイヤ1のサイドウォール部に上型42が当接する。続いて、上型42を型締め完了位置まで降下させることで、グリーンタイヤ1が上型42と下型44とによって挟持される。
【0032】
上型42が型締め完了位置まで降下した後も昇降部材24による降下が続行される。これにより、プレート21と一体にジャケット32が下側へ移動し、ジャケット32がセグメント31を押圧することで、セグメント31と一緒にセクタ41がタイヤ径方向X内側へ移動する。上プラテン22に当接するまでプレート21を降下させることで、
図1Aに示すように、グリーンタイヤ1の外面側はセクタ41、上型42、上ビードリング43、下型44、及び下ビードリング45で押圧され、グリーンタイヤ1の内面側はブラダ54で押圧された状態になる。
【0033】
加硫モールド40とブラダ54で画定されたキャビティ内のグリーンタイヤ1のゴムは、加硫モールド40による押圧によって成形面41a~45aに密着する。上プラテン22及び下プラテン23には、所定温度に調整された熱交換媒体が常に流動されている。これにより、グリーンタイヤ1のゴムが加硫され、定められた形状のタイヤが完成する。
【0034】
加硫時、加硫モールド40内に空気又はゴム組成物から発生したガスが残留していると、成形面41a~45aにゴムが密着せず、タイヤ表面にベアが発生したり、タイヤ内部にエア入り(空洞)が発生したりする。そこで、セクタ41、上型42、上ビードリング43、下型44、及び下ビードリング45のうち、ゴム流れが悪い部分には、空気とガスを排出するための排出構造が設けられている。
【0035】
図3はセクタ41に形成した排出構造を示す。この排出構造は、上型42、上ビードリング43、下型44、及び下ビードリング45にも同様に形成される。
図3に示すように、排出構造は、ゴム流れが悪い部分に形成されたベントホール60を備える。ベントホール60は、内面(成形面41a)と外面(取付面41b)とが連通するようにセクタ41を貫通して設けられ、加硫モールド40の内部から外部への空気及びガスの流動を許容する。なお、セグメント31には、ベントホール60に連通する排気孔(図示せず)が形成されている。
【0036】
ベントホール60の成形面41a側にはスプリングベント61が装着されている。スプリングベント61は、ベントホール60に嵌合される筒状のハウジング62と、ハウジング62内に挿入されて通路を開閉するステム63と、キャビティ内に向けてステム63を付勢するスプリング64とを備える。キャビティ側に位置するステム63の端には、ステム63の軸線を中心として外向きに突出した皿状の頭部63aが設けられている。スプリング64による付勢によって成形面41aから頭部63aが突出することで、頭部63aと成形面41aとの間に排気のための空隙が確保される。グリーンタイヤ1のゴムによって頭部63aが押圧されることで、頭部63aと成形面41aとの間の空隙が閉じられる。但し、ベントホール60には、スプリングベント61の代わりに常開のベントスピューを配置してもよい。
【0037】
加硫モールド40におけるベントホール60の形成位置は、例えばコンピュータによるシミュレーション結果に基づいて決定される。しかし、加硫モールド40での実際のゴム流れが不明な場合、試作したタイヤのベア及びエア入りの状態を見て、排出構造の増設、グリーンタイヤ1のゴム量の調節等の対策を行う必要があるため、加硫モールド40の完成までに長い時間を要する。
【0038】
そこで、本実施形態では、加硫モールド40の特定部分とコンテナ30の対応部分とを、透光性を有する材料によって形成し、加硫モールド40内を透視可能としている。ここで、透光性を有するとは、加硫時にグリーンタイヤ1のゴムが成形面41a~45aに密着しているか否かを外部から目で確認できる程度の光透過率を有することを意味する。
【0039】
具体的には、加硫モールド40を構成する複数のセクタ41のうち、特定(1個)のセクタ41Aが、無色透明又は有色透明の材料によって形成されている。また、セクタ41Aを固定する特定のセグメント31A、及びセグメント31Aに対してタイヤ径方向Xの外側に位置するジャケット32の一部(窓32b)が、セクタ41Aと同様の透明材料によって形成されている。複数のセクタ41のうちの特定のセクタ41A以外、複数のセグメント31のうちの特定のセグメント31A以外、及びジャケット32の窓32b以外は、不透明な金属製である。
【0040】
透明材料としては、加硫温度T1(例えば177℃)よりも高い温度T2(例えば200℃)以上の耐熱性を有する樹脂又はセラミックスが用いられる。このような樹脂としては、例えばポリメチルペンテンを用いることができる。また、セラミックスの場合、例えばクワーズテック製の透明セラミックスを用いることができる。なお、ジャケット32は、周方向の一部に形成された開口に窓32bを配置することで、構成される。
【0041】
透明なセクタ41A、セグメント31A、及び窓32bは、タイヤ径方向Xへ直線上に配置される。これらは、
図2に示すように、作業者が立ち入るためのスペースが確保されている制御盤70の横に配置されている。制御盤70の横に立ってジャケット32を外側から見て、セクタ41A、セグメント31A、及び窓32bは、制御盤70と重複する部分が生じないように配置されている。
【0042】
この加硫成形機10では、コンテナ30の外側から窓32b、セグメント31A、及びセクタ41Aを透して、セクタ41Aの成形面41aへのゴムの密着状態、及びゴム流れの良し悪しを確認できる。また、実際のゴム流れの確認は、作業者による目視に限られず、カメラを用いて画像解析によって行うこともできる。
【0043】
よって、ゴム流れが悪い部分が存在する場合、セクタ41の対象部分にベントホール60を設けたり、グリーンタイヤ1の対象部分のゴム量を調整したり、短時間かつ的確に対策できる。その結果、以後のグリーンタイヤ1の加硫時には、加硫モールド40内に空気又はガスが残留すること効果的に抑制でき、ベア及びエア入り等がタイヤに発生することを防止できる。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態の加硫成形機10は、
図1A及び
図1Bに示す第1実施形態の加硫成形機10と同様の基本構造を有する。第2実施形態では、加硫モールド40を構成する上型42、及び上型42の外側に位置するコンテナ30の上プレート33が、第1実施形態と同様の透明材料によって形成されている。また、上プレート33の外側に位置するプレート21と上プラテン22も、第1実施形態と同様の透明材料によって形成されている。
【0045】
この加硫成形機10では、上方からプレート21、上プラテン22、上プレート33、及び上型42を透して、上型42の成形面42aへのゴムの密着状態、及びゴム流れの良し悪しを容易に確認できる。よって、第1実施形態と同様に、ゴム流れが悪い部分が存在する場合、短時間かつ的確に対策でき、ベア及びエア入り等がタイヤに発生することを防止できる。
【0046】
(第3実施形態)
第3実施形態の加硫成形機10は、
図1A及び
図1Bに示す第1実施形態の加硫成形機10と同様の基本構造を有する。第3実施形態では、加硫モールド40の全て、つまり複数のセクタ41、上型42、下型44、上ビードリング43、及び下ビードリング45の全体が、第1実施形態と同様の透明材料によって形成されている。また、コンテナ30の全て、つまり複数のセグメント31、ジャケット32、上プレート33、及び下プレート35の全体が、第1実施形態と同様の透明材料によって形成されている。さらに、フレーム20を構成するプレート21、上プラテン22、及び下プラテン23が、第1実施形態と同様の透明材料によって形成されている。
【0047】
この加硫成形機10では、全ての成形面41a~44aへのゴムの密着状態、及びゴム流れの良し悪しを外部から容易に確認できる。よって、ベア対策及びエア入り対策に要する時間を飛躍的に短縮できる。
【0048】
なお、本発明のタイヤ加硫成形機10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、第1実施形態では、特定のセクタ41Aだけを透光性を有する構成としたが、複数のセクタ41のうちの特定の2個が透光性を有する構成としてもよく、その数は必要に応じて変更可能である。また、フレーム20の構成は必要に応じて変更可能であり、その構成に応じて透明材料によって形成する部分も変更すればよい。
【符号の説明】
【0050】
1…グリーンタイヤ
10…タイヤ加硫成形機
20…フレーム
21…プレート
22…上プラテン
22a…流路
23…下プラテン
23a…流路
24…昇降部材
25…昇降部材
30…コンテナ
31…セグメント
31A…特定のセグメント
31a…傾斜面
32…ジャケット
32a…傾斜面
32b…窓
33…上プレート
34…上スライド
35…下プレート
36…下スライド
40…加硫モールド
41…セクタ
41A…特定のセクタ
41a…成形面
41b…取付面
41c…当接面
41d…逃がし面
42…上型
42a…成形面
42b…段部
43…上ビードリング
43a…成形面
44…下型
44a…成形面
44b…段部
45…下ビードリング
45a…成形面
50…ブラダユニット
51…支軸
51a…ロッド
52…上クランプ
53…下クランプ
54…ブラダ
60…ベントホール
61…スプリングベント
62…ハウジング
63…ステム
63a…頭部
64…スプリング
70…制御盤