(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】バルブ駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/53 20060101AFI20220907BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F16K31/53
F16K31/04 A
(21)【出願番号】P 2018226715
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】横江 悟
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062999(JP,A)
【文献】特開2017-219064(JP,A)
【文献】特開2013-233000(JP,A)
【文献】特開2020-090965(JP,A)
【文献】特開2020-008155(JP,A)
【文献】特開2020-008156(JP,A)
【文献】特開2019-210961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/53
F16K 31/04
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を駆動させる弁体駆動機構を有するバルブ駆動装置であって、
前記弁体駆動機構は、
モータにより回転駆動させられる駆動側歯車と、
前記駆動側歯車と噛合した状態において、前記駆動側歯車の回転により前記弁体を回転させる従動側歯車と、
前記駆動側歯車が前記従動側歯車と噛合して前記モータの動力を前記従動側歯車に伝達する動力伝達状態と、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除された動力非伝達状態とを切換可能な動力伝達切換部と、
を備え、
前記動力伝達切換部は、
前記駆動側歯車に形成され、当該駆動側歯車の半径方向に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、
前記従動側歯車に対して回動可能に前記従動側歯車に取り付けられ、前記凸部と係合可能な回転規制部と、
を備え、
前記回転規制部は、
前記従動側歯車に挿入されている回動軸と、
前記回動軸から前記従動側歯車の円周方向に延設され、前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢力を受けているレバー部と、
を有し、
前記従動側歯車は、前記レバー部と接触して、前記回転規制部の、前記従動側歯車の半径方向外側への回動を規制するレバー回動規制部を有し、
前記レバー部は、前記凸部と接触する動作と、前記付勢力に抗して回動して前記レバー回動規制部との接触位置から離れる動作をし、
前記レバー部と前記レバー回動規制部との間を成す領域を覆う異物進入抑制部を備えている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ駆動装置において、
前記異物進入抑制部は、前記レバー部に設けられている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブ駆動装置において、
前記異物進入抑制部は、前記レバー部の前記接触位置及び前記接触位置から離れた位置のいずれの位置においても連続して前記領域を覆う形状に形成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のバルブ駆動装置において、
前記異物進入抑制部は、前記レバー部が前記レバー回動規制部に接している状態において、前記レバー回動規制部の対応する位置に対して前記半径方向内側に位置する形状に形成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、
前記レバー回動規制部が前記回転規制部の回動を規制している状態において、前記レバー回動規制部は、前記レバー回動規制部と前記回動軸との間に隙間が形成される、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、
前記レバー部は、前記駆動側歯車が第1方向に回転した際に前記凸部と接触する第1接触部及び前記駆動側歯車が前記第1方向と反対の方向である第2方向に回転した際に前記凸部と接触する第2接触部を備え、
前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記レバー部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、
前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記レバー部は前記付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態となる、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載のバルブ駆動装置において、
前記レバー部の前記第2接触部は、前記従動側歯車の半径方向において外周側に位置し、前記従動側歯車の円周方向に沿って延びる曲面として形成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項8】
請求項6に記載のバルブ駆動装置において、前記従動側歯車は、前記凸部が前記第2接触部と接触して、前記レバー部が前記付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動する際、前記第2接触部が前記凸部により当該凸部の回転方向に押されて前記従動側歯車が前記駆動側歯車の回転方向に応じた回転方向に回転することを規制する連れ回り防止部を備えている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項9】
請求項6に記載のバルブ駆動装置において、
前記駆動
側歯車が回動したときに前記凸部の前記半径方向における先端が作る円軌跡を第1円軌跡とし、前記凸部が前記第1方向に回転して前記第1接触部と接触する際の前記第1接触部の前記従動側歯車の半径方向における先端が作る円の軌跡を第2円軌跡とし、
前記第2接触部は、前記第1円軌跡の作る第1円と前記第2円軌跡が作る第2円とで囲われた干渉領域において、前記第1接触部側に干渉回避部が存在する形状である、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項10】
請求項9に記載のバルブ駆動装置において、
前記干渉回避部は、前記レバー部の前記レバー回動規制部との接触位置と前記第1接触部との間で凹部により構成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、
前記従動側歯車には、半径方向外側、かつ前記従動側歯車の軸線方向において前記従動側歯車の一方側の面から突出する凸状部が形成され、
前記凸状部において前記従動側歯車の半径方向内側には、前記レバー回動規制部が形成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、
前記回転規制部は、前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の前記レバー部と反対側に設けられている足部を有し、
前記足部は、前記レバー部を付勢する前記付勢力による前記回動軸の傾きを規制する、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項13】
請求項12に記載のバルブ駆動装置において、
前記足部は前記レバー部が付勢される方向と反対の方向に延びている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載のバルブ駆動装置において、
前記足部は前記回動軸から前記従動側歯車の半径方向内側に向けて延びている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流量を調節するバルブを駆動するバルブ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫等の庫内を冷却するために、冷媒を供給する冷媒バルブ装置がある。この冷媒バルブ装置には、バルブを駆動させて庫内に供給する冷媒の供給量を調整するバルブ駆動装置を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷媒バルブ装置は、冷媒入口、冷媒出口及び弁座面を備えた基台において、前記冷媒入口及び前記冷媒出口のいずれか一方の口に偏った位置を中心に回転可能な弁体と、当該弁体を回転させる弁体駆動機構を備えている。弁体駆動機構は、ステッピングモータ(以下、モータという)と、当該モータの駆動軸と一体に回転するピニオンと、当該ピニオンと噛合し、弁体と一体に回転する出力歯車とを備えている。
【0005】
前記モータが回転すると、当該モータと一体に回転するピニオンを解して出力歯車、ひいては弁体も回転する。これにより、前記弁体は、前記冷媒入口及び前記冷媒出口のいずれか一方の口の開き具合を調整することができ、冷媒の供給量を調節することができる。
【0006】
この弁体駆動機構では、前記ピニオンを正回転方向に回転させることで、前記出力歯車及び前記弁体を第1の回転規制位置からモータを正回転方向に回転させた位置である第2の回転規制位置まで回転させることができる。
【0007】
ここで、冷媒の供給量を調整すべく前記モータを逆回転方向に回転させて第2の回転規制位置から第1の回転規制位置まで回転させると、前記出力歯車の腕部と前記ピニオンの被当接部とが当接し、ピニオンの前記逆回転方向への回転が規制された状態となる。これにより、前記逆回転方向への前記ピニオンの回転が規制された状態で前記モータが前記逆回転方向への回転を継続しようとするので、前記モータにおいて脱調が生じる。その結果、前記モータの脱調時に、前記腕部と前記被当接部とが衝突して騒音(衝突音)を発生させる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、弁体を駆動させる弁体駆動機構を有するバルブ駆動装置において、前記弁体の駆動に際しての騒音を低減するとともに円滑な動力伝達切換を行うことができ、更に、バルブ駆動装置内を流体が流動する際に、前記弁体駆動機構の前記動力伝達切換を実行する部分に異物が入って動作不良になる虞を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明に係るバルブ駆動装置は、弁体を駆動させる弁体駆動機構を有するバルブ駆動装置であって、前記弁体駆動機構は、モータにより回転駆動させられる駆動側歯車と、前記駆動側歯車と噛合した状態において、前記駆動側歯車の回転により前記弁体を回転させる従動側歯車と、前記駆動側歯車が前記従動側歯車と噛合して前記モータの動力を前記従動側歯車に伝達する動力伝達状態と、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除された動力非伝達状態とを切換可能な動力伝達切換部と、を備え、前記動力伝達切換部は、前記駆動側歯車に形成され、当該駆動側歯車の半径方向に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、前記従動側歯車に対して回動可能に前記従動側歯車に取り付けられ、前記凸部と係合可能な回転規制部と、を備え、前記回転規制部は、前記従動側歯車に挿入されている回動軸と、前記回動軸から前記従動側歯車の円周方向に延設され、前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢力を受けているレバー部と、を有し、前記従動側歯車は、前記レバー部と接触して、前記回転規制部の、前記従動側歯車の半径方向外側への回動を規制するレバー回動規制部を有し、前記レバー部は、前記凸部と接触する動作と、前記付勢力に抗して回動して前記レバー回動規制部との接触位置から離れる動作をし、前記レバー部と前記レバー回動規制部との間を成す領域を覆う異物進入抑制部を備えている、ことを特徴とする。
【0010】
本態様では、動力伝達切換部において駆動側歯車と従動側歯車との噛合状態を切り換えることで動力伝達の状態を切り換えることができ、前記モータを脱調させる必要がないので、騒音を低減させることができる。
【0011】
上記騒音を低減させる動力伝達切換部の改良を進める段階で、このバルブ駆動装置内を流れる流体が銅粉等の異物を含む流体経路に設置される場合があることを考慮する必要があることを認識した。この場合、前記動力伝達切換部の一つの動作として、前記レバー部が前記凸部と接触する動作と、前記付勢力に抗して回動して前記レバー回動規制部との接触位置から離れる動作を繰り返す際に、前記レバー部と前記レバー回動規制部との間を成す領域に前記異物が入り込むことがあることを確認した。そして、その異物が前記領域に進入して溜まると前記レバー部が本来の前記接触位置まで戻れなくなり、前記動力伝達切換部が動作不良を起こす虞があるという新たな課題を認識した。
本発明はこの新たな課題を解決するために、前記領域を覆う異物進入抑制部を備えている。これにより、バルブ駆動装置が銅粉等の異物を含む流体経路に設置された場合でも、前記異物が前記領域に進入することを前記異物進入抑制部によって抑制することが可能となり、以って、前記レバー部が本来の前記接触位置まで戻れなくなる状態になる虞を低減することができる。これにより、前記動力伝達切換部が前記異物によって動作不良を起こす虞を低減することができる。
【0012】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記異物進入抑制部は、前記レバー部に設けられているのが好ましい。
【0013】
本態様において、前記異物進入抑制部は、前記レバー部に設けられているので、構造簡単及び製造容易にして異物の進入を抑制することができる。
【0014】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記異物進入抑制部は、前記レバー部の前記接触位置及び前記接触位置から離れた位置のいずれの位置においても連続して前記領域を覆う形状に形成されているのが好ましい。
【0015】
本態様において、前記異物進入抑制部は、前記レバー部の前記接触位置及び前記接触位置から離れた位置のいずれの位置においても連続して前記領域を覆う形状に形成されているので、異物の進入の虞を大きく抑制することができる。
【0016】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記異物進入抑制部は、前記レバー部が前記レバー回動規制部に接している状態において、前記レバー回動規制部の対応する位置から前記半径方向内側に位置する形状に形成されているのが好ましい。
【0017】
本態様において、前記異物進入抑制部は、前記レバー回動規制部の対応する位置に対して前記半径方向内側に位置する形状に形成されている。即ち、最大形状の上限が上記のように規定されているので、周囲の他の構成部材と干渉する虞なく、異物進入抑制部を設けることができる。
【0018】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記レバー回動規制部が前記回転規制部の回動を規制している状態において、前記レバー回動規制部は、前記レバー回動規制部と前記回動軸との間に隙間が形成されることが好ましい。
【0019】
本態様において、前記レバー回動規制部が前記回転規制部と接触して前記回転規制部の回動を規制している状態において、前記レバー回動規制部は、前記レバー回動規制部と前記回動軸との間に隙間が形成されるので、前記レバー回動規制部と前記回動軸が直接接触することを避けることができる。その結果、前記回転規制部の位置決めを前記回動軸の部分で行う必要がなく、前記レバー回動規制部は、前記回転規制部の前記回動軸以外の部位と接触して位置決めを行えるので、前記回動軸の寸法等のバラツキの影響を低減でき、前記回転規制部が前記凸部と接触しない状態における前記レバー部の先端の位置精度を安定させることができる。
【0020】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記レバー部は、前記駆動側歯車が第1方向に回転した際に前記凸部と接触する第1接触部及び前記駆動側歯車が前記第1方向と反対の方向である第2方向に回転した際に前記凸部と接触する第2接触部を備え、前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記レバー部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記レバー部は前記付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態となる、ことが好ましい。
【0021】
本態様において、前記回転規制部のレバー部は、前記駆動側歯車が第1方向に回転した際に前記凸部と接触する第1接触部及び前記駆動側歯車が前記第1方向と反対の方向である第2方向に回転した際に前記凸部と接触する第2接触部を備え、前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記回転規制部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記回転規制部は当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態を維持する。したがって、前記駆動側歯車の回転方向に応じて前記凸部と接触させる部位を切り換えるだけで前記モータから前記従動側歯車への動力の伝達又は切断を行うことができるので、前記回転規制部を簡素な構成とすることができる。
【0022】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記レバー部の前記第2接触部は、前記従動側歯車の半径方向において外周側に位置し、前記従動側歯車の円周方向に沿って延びる曲面として形成されていることが好ましい。
【0023】
本態様において、前記レバー部の前記第2接触部は、前記従動側歯車の半径方向において外周側に位置し、前記従動側歯車の円周方向に沿って延びる曲面として形成しているので、前記第2接触部が前記凸部と接触して前記従動側歯車の半径方向内側に回動させられ、前記凸部が前記第2接触部から離間する際、前記第2接触部を直線状に形成した場合に比べて、前記第2接触部の曲面を次に接触する予定の凸部により近い位置に位置させることができる。言い換えると、前記凸部と接触した前記第2接触部は、前記レバー回動規制部に規制される位置に近い位置で前記凸部から離間する。これにより、前記第2接触部を直線状に形成した場合に比べて、前記凸部が前記第2接触部から離間した際における前記第2接触部と前記レバー回動規制部とが接触する際の勢いを和らげることができる。その結果、前記回転規制部の回動動作における前記第2接触部と前記レバー回動規制部との接触時における騒音の発生を抑制できる。
【0024】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記従動側歯車は、前記凸部が前記第2接触部と接触して、前記レバー部が前記付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動する際、前記第2接触部が前記凸部により当該凸部の回転方向に押されて前記従動側歯車が前記駆動側歯車の回転方向に応じた回転方向に回転することを規制する連れ回り防止部を備えていることが好ましい。
【0025】
本態様において、連れ回り防止部により前記駆動側歯車による前記従動側歯車の連れ回り回転を規制することができ、前記駆動側歯車の空転状態を維持し、前記動力非伝達状態を確実に維持することができる。
【0026】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記駆動歯車が回動したときに前記凸部の前記半径方向における先端が作る円軌跡を第1円軌跡とし、前記凸部が前記第1方向に回転して前記第1接触部と接触する際の前記第1接触部の前記従動側歯車の半径方向における先端が作る円の軌跡を第2円軌跡とし、前記第2接触部は、前記第1円軌跡の作る第1円と前記第2円軌跡が作る第2円とで囲われた干渉領域において、前記第1接触部側に干渉回避部が存在する形状であることが好ましい。
ここで、「第2接触部は、…干渉領域において、前記第1接触部側に干渉回避部が存在する形状」における「干渉回避部」とは、前記凸部が接触する相手となる前記レバー部の前記第2接触部に前記凸部に対する退避形状が設けられていて、その退避形状の部分では前記凸部は前記レバー部と非接触となることを意味する。即ち、前記干渉領域において、第2接触部の前記第1接触部側の部分に前記凸部が非接触となる隙間が在る形状であることを意味する。
【0027】
本態様によれば、前記第2接触部に前記干渉回避部が存在する形状であるので、前記駆動側歯車の回転により前記凸部が前記レバー部の前記第2接触部に当接するタイミングが、前記干渉回避部が存在しない形状よりも遅くなる。これにより、前記レバーの前記接触及び離れる動作における「離」の状態にある時間が前記干渉回避部が存在しない形状よりも短くなる。前記異物は前記接触及び離れる動作における「接」の状態においては構造的に前記領域に入り込むことができないものであるので、前記「離」の状態の時間が短くなれば、その分だけ前記異物が前記領域に入り込み難くなる。
従って、前記異物進入抑制部を備えることに加えて、更に、前記干渉回避部が存在する形状によって前記異物が前記領域に進入することを抑制することが可能となり、前記動力伝達切換部が前記異物によって動作不良を起こす虞を一層低減することができる。
【0028】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記干渉回避部は、前記レバー部の前記レバー回動規制部との接触位置と前記第1接触部との間で凹部により構成されていることが好ましい。
【0029】
前記レバー部の第2接触部が前記レバー回動規制部と接触する部分は、前記凸部は元々接触しない。
本態様においては、前記レバー部の前記レバー回動規制部との接触位置と前記第1接触部との間に凹部を設け、この凹部によって前記干渉回避部が構成されているので、前記レバー部の前記レバー回動規制部との接触状態及び接触位置を安定させた状態で、前記凹部によって前記タイミングの遅れを容易に実現することができる。
【0030】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記従動側歯車には、半径方向外側、かつ前記従動側歯車の軸線方向において前記従動側歯車の一方側の面から突出する凸状部が形成され、前記凸状部において前記従動側歯車の半径方向内側には、前記レバー回動規制部が形成されていることが好ましい。
本態様において、前記従動側歯車に設けられた前記凸状部の前記半径方向内側に前記レバー回動規制部が形成されている構造に基づく前記領域に対して上述した作用効果を得ることができる。
【0031】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記回転規制部は、前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の前記レバー部と反対側に設けられている足部を有し、前記足部は、前記レバー部を付勢する前記付勢力による前記回動軸の傾きを規制することが好ましい。
【0032】
本態様において、前記回転規制部は、前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の前記レバー部と反対側に設けられている足部と、を有し、前記足部は、前記レバー部を付勢する付勢力による前記回動軸の傾きを規制するので、前記回動軸の傾きを抑制することができる。これにより、動力伝達切換部における動力伝達切換を円滑にすることができる。
【0033】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記足部は前記レバー部が付勢される方向と反対の方向に延びていることが好ましい。
【0034】
尚、本態様において「前記レバー部が付勢される方向と反対の方向に延びている」とは、付勢方向に対して180度反転した方向にのみ限定されるものではなく、付勢方向に対して反対方向に作用する力のベクトル成分を含む方向に延びているものも含んでいる。
【0035】
ここで、前記レバー部は付勢力により付勢されている。これにより前記回動軸には、前記付勢力により前記回動軸を軸線方向に対して傾けさせる回転モーメントが生じる。本態様における前記足部は前記レバー部が付勢される方向と反対の方向に延びているので、前記回転モーメントにより前記回転軸が傾こうとすると、前記足部が前記従動側歯車に押し付けられることになるので、前記回転軸が傾こうとすることを規制することができる。
【0036】
また本発明は、上記バルブ駆動装置において、前記足部は前記回動軸から前記従動側歯車の半径方向内側に向けて延びていることが好ましい。
【0037】
ここで、前記回転規制部は、前記レバー部を駆動側歯車の凸部と係合可能な構成とするため、前記従動側歯車において当該従動側歯車の半径方向外周側に近い位置に設ける必要がある。したがって、前記足部を前記回動軸から前記従動側歯車の半径方向外側に向けて延ばす構成とすると、前記足部の長さが短くなる。
本態様によれば、前記足部が前記回動軸から前記従動側歯車の半径方向内側に向けて延びているので、前記足部を前記半径方向外側に延ばした場合に比べて前記足部の長さを長くすることができる。その結果、前記回動軸を倒れ難くすることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、弁体を駆動させる弁体駆動機構を有するバルブ駆動装置において、前記弁体の駆動に際しての騒音を低減するとともに円滑な動力切換を行うことができ、更に、バルブ駆動装置内を流体が流動する際に、前記弁体駆動機構の前記動力伝達切換を実行する部分に異物が入って動作不良になる虞を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】本実施形態に係るバルブ駆動装置の側断面図。
【
図3】同バルブ駆動装置における弁体駆動機構の斜視図。
【
図4】同バルブ駆動装置における弁体駆動機構の斜視図。
【
図7】同弁体駆動機構における従動側部分の分解斜視図。
【
図8】同駆動機構における従動側歯車を上面側から見た斜視図。
【
図9】同従動側歯車を上面側の
図8と異なる方向から見た斜視図。
【
図12】同回転規制部の足部と従動側歯車の足部収容部との関係を示す斜視図。
【
図13】(A)図は弁体を弁座面と反対の側から見た斜視図であり、(B)図は弁体を座面側から見た斜視図。
【
図14】各ステップにおける同弁体駆動機構の開閉状態を示す図。
【
図15】同出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図16】同出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図17】同出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図18】原点復帰動作における同弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図19】原点復帰動作における同弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図20】弁体駆動時における同弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図21】弁体駆動時における同弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図22】原点位置における同出力側歯車と従動側歯車との関係を示す図。
【
図23】(A)図及び(B)図は同駆動側歯車に対する従動側歯車の連れ回り回転を第2回転規制部で規制する状態を示す図。
【
図24】同従動側歯車に対する同回転規制部の回動軸の中心位置の関係を示す図。
【
図25】同回転規制部に作用する付勢力と足部との関係を説明する模式図。
【
図26】(A)図及び(B)図は同回転規制部におけるレバー部の第2接触部を曲面で構成することによる効果を説明する模式図。
【
図27】異物進入抑制部を備える弁体駆動機構の上方から見た斜視図。
【
図28】
図27の弁体駆動機構の一部を省いた下方から見た斜視図。
【
図29】
図27の弁体駆動機構の一部を省いた異なる上方から見た斜視図。
【
図30】同異物進入抑制部を備える回転規制部の斜視図。
【
図31】同異物進入抑制部を備える回転規制部の作用を説明する平面図で、(A)はレバー部の回動開始前、(B)はレバー部の回動時を示す。
【
図32】
図27と異なる構造の異物進入抑制部を備える弁体駆動機構の上方からの斜視図。
【
図33】干渉回避部を備える弁体駆動機構の上方からの要部平面図で、(A)はレバー部の回動開始前、(B)はレバー部の回動時を示す。
【
図34】駆動側歯車の回転位置とレバー部の回動位置との関係を表す説明図。
【
図35】駆動側歯車の回転位置とレバー部の回動位置との関係を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
尚、以下の説明においては、説明を解り易くするために、異物進入抑制部と干渉回避部の具体的な構造の説明は後にまわして、先ず前記弁体の駆動に際しての騒音を低減するとともに円滑な動力伝達切換を行うことができるようにしたバルブ駆動装置の構造について一通り説明する。
そして、その説明の次に、そのバルブ駆動装置内を流体が流動する際に、前記弁体駆動機構の前記動力伝達切換を実行する部分に異物が入って動作不良になる虞を低減できるようにするために設ける異物進入抑制部の具体的な構造等を詳しく説明する。
続いて、干渉回避部の具体的な構造等を詳しく説明する。
【0041】
<<<実施形態>>>
<<<バルブ駆動装置の概要>>>
図1ないし
図4を参照して、本実施形態に係るバルブ駆動装置10について説明する。バルブ駆動装置10は、一例として冷蔵庫に搭載されて、庫内冷却用の冷媒(流体)の供給量を調整するものである。バルブ駆動装置10は、バルブ本体12と、バルブ本体12から延びる流入管14と、流入管14に平行に延びる第1流出管16及び第2流出管18と、バルブ本体12の上部を覆うカバー部材20とを備えている。尚、以下の説明では、便宜上、流入管14、第1流出管16及び第2流出管18の延設方向を上下方向とし、バルブ本体12を上側、流入管14、第1流出管16及び第2流出管18を下側として説明する。
【0042】
図2において、バルブ本体12は、ベース部材22と、モータ24と、密封カバー26と、基台本体28と、弁体駆動機構30とを備えている。基台本体28は、上面28aを有している。基台本体28には、流入管14、第1流出管16及び第1流出管16がそれぞれ取り付けられている。基台本体28の上部には、密封カバー26が取り付けられている。基台本体28と密封カバー26とは、バルブ室32を形成している。
【0043】
図3に示すように上面28aには、流体入口28bが形成されている。流体入口28bは、基台本体28に取りつけられた流入管14と連通している。バルブ室32内には流入管14から冷媒(流体)が供給される。
【0044】
一方で、基台本体28には、弁座構成部材34(
図2、
図3、
図7及び
図15ないし
図17参照)が取り付けられている。弁座構成部材34には、第1流出管16及び第2流出管18がそれぞれ取り付けられ、第1流出管16と連通する第1流体出口34aと、第2流出管18と連通する第2流体出口34bとが設けられている。流入管14からバルブ室32内に供給された流体は、第1流体出口34aから第1流出管16へ流出し、あるいは第2流体出口34bから第2流出管18へ流出する。
【0045】
図2に示すように、モータ24は、ステータ36と、駆動マグネット38が取り付けられたロータ40とを備えている。ステータ36は、密封カバー26を挟んでロータ40の周囲を取り囲むように配置されている。
【0046】
本実施形態において、ステータ36は、
図2に示すようにコア部材42を備えている。ステータ36のコア部材42には、駆動コイル37として巻線が巻かれている。ステータ36に巻かれた駆動コイル37(巻線)の一端は、不図示のモータ端子の一端に絡げて繋がれている。不図示のモータ端子は、不図示のコネクタ、あるいは基板等と電気的に接続されることで、ステータ36に電力を供給する。
【0047】
図2及び
図3に示すように、ロータ40は、駆動マグネット38と、駆動側歯車46と、支軸48とを備えている。支軸48には、駆動側歯車46と駆動マグネット38とが支軸48に対して回転可能に取り付けられている。駆動マグネット38は、駆動側歯車46に取り付けられている。支軸48の上端は、密封カバー26に形成された軸受部26aに支持され、支軸48の下端は、基台本体28に形成された軸受部28cに支持されている。本実施形態では、ステータ36(駆動コイル37)が励磁されると、ロータ40は駆動マグネット38により支軸48を回転中心としてバルブ室32内で回転するように構成されている。
【0048】
<<<弁体駆動機構の概要>>>
図3ないし
図12を参照して弁体駆動機構30の構成について説明する。
図3及び
図4に示すように、弁体駆動機構30は、モータ24と、駆動側歯車46と、従動側歯車50と、動力伝達切換部52とを備えている。動力伝達切換部52は、後述するが駆動側歯車46と従動側歯車50との間における動力伝達を、動力を伝達する動力伝達状態と、動力を伝達しない動力非伝達状態とに切換可能に構成されている。本実施形態において動力伝達切換部52は、後述する駆動側歯車46の凸部46bと回転規制部62とを備えている。
【0049】
図5及び
図6に示すように駆動側歯車46は、下端部に歯車部46aが形成されている。歯車部46aの上方には複数の凸部46bが形成されている。駆動側歯車46の円周方向において、凸部46bに対応する歯車部46aの歯は、ロック回避歯46cとして構成されている。
【0050】
複数の凸部46bは、駆動側歯車46の本体46dから駆動側歯車46の半径方向外側に突出している。本実施形態において、凸部46bは一例として平板状に形成されている。尚、凸部46bの形状は平板状に限定されるものではなく、後述する回転規制部62と係合可能な形状であればよい。本実施形態において、複数の凸部46bは、駆動側歯車46の円周方向において駆動マグネット38のN極、またはS極に対応する位置にそれぞれ形成されている。
【0051】
本実施形態において駆動マグネット38の磁極の数は、一例として8極として構成されている。したがって、本実施形態では、凸部46bは、駆動側歯車46において4箇所設けられている。具体的には凸部46bは、駆動側歯車46において駆動側歯車46の円周方向に等間隔に設けられ、本実施形態において凸部46bは4箇所形成されているので90度ごとに設けられている(
図18ないし
図21参照)。本実施形態において凸部46bは、駆動側歯車46の歯車部46aの歯の歯厚に対応する厚みに形成されている。
【0052】
図6を参照するに、本実施形態においてロック回避歯46cの歯先円直径はd1に設定されている。一方、歯車部46aにおいてロック回避歯以外の歯の歯先円直径はd2に設定されている。本実施形態では、歯先円直径d1は歯先円直径d2よりも小さくなるように設定されている。尚、
図6における一点鎖線の円は、ロック回避歯46cの歯先円直径を図示しており、二点鎖線の円はロック回避歯46c以外の歯の歯先円直径を図示している。
【0053】
次いで、駆動側歯車46に対して従動回転する従動側歯車50の側の構成について説明する。
図2に示すように、従動側歯車50の半径方向中心には、支軸54が挿入されている。従動側歯車50は支軸54に対して回転可能に構成されている。従動側歯車50の下方には弁体56が設けられている。本実施形態において弁体56は、従動側歯車50と一体に支軸54に対して回転可能に構成されている。弁体56の下方には弁座構成部材34が設けられている。弁座構成部材34の上面は弁座面34cとして構成されている。
【0054】
また、弁座構成部材34の中心には貫通孔34dが設けられ、支軸54が挿入されている。尚、
図4において支軸54の図示を省略している。
図4において、符号R1が付された矢印は、駆動側歯車46における一方の回転方向である第1方向を示し、符号R2が付された矢印は、駆動側歯車46における他方の回転方向である第2方向を示している。
【0055】
従動側歯車50の上部には、保持部材58が取り付けられている。保持部材58には、支軸54が通されている。また、保持部材58は、上部にフランジ部58aが形成された円筒状の部材として構成され、筒状部58bに「付勢部材」としてのねじりばね60が通されて保持されている。また、従動側歯車50の上部には、レバー状の回転規制部62が取り付けられている。
【0056】
<<<従動側歯車について>>>
図4、
図7ないし
図10を参照するに、従動側歯車50には、外周部分に円周方向に沿って連続的に複数の歯が形成された噛合部50aと、歯が形成されていない非噛合部50bとが形成されている。また、従動側歯車50の外周部分において、噛合部50aの第2方向R2側の端部には、従動側歯車50の第1方向R1側への回転を規制する第1回転規制部50cが設けられ、噛合部50aの第1方向R1側の端部には、非噛合部50bが設けられている。
【0057】
さらに、非噛合部50bにおいて第1方向R1側の端部には、「連れ回り防止部」としての第2回転規制部50kが設けられている。尚、
図8及び
図9において、符号R1が付された矢印は、駆動側歯車46が第1方向に回転した際の従動側歯車50の従動回転方向を示し、符号R2が付された矢印は、駆動側歯車46が第2方向に回転した際の従動側歯車50の従動回転方向を示している。尚、
図18ないし
図21において第2回転規制部50kの符号を省略している。
【0058】
尚、本実施形態において、主に
図15のステップS0に示すように、駆動側歯車46の基準円直径と従動側歯車50の基準円直径とを比べると、従動側歯車50の基準円直径の方が大きく形成されている。さらに、駆動側歯車46の歯車部46aの歯の数は、従動側歯車50の噛合部50aに形成された歯の数よりも少なく形成されている。したがって、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとが噛合って回転する動力伝達状態において、モータ24の回転を従動側歯車50に減速させて伝達させることができるので、小さな動力源でも大きなトルクを得ることができ、後述する弁体56を確実に駆動させることができる。
【0059】
また、
図7ないし
図10に示すように、従動側歯車50の中心部には、支軸54が挿入される貫通孔50dが設けられている。さらに、従動側歯車50の上面50pにおいて貫通孔50dの周囲には、保持部材58の一部を受け入れて、保持部材58と係合する凹部50eが形成されている。凹部50eと係合した保持部材58は、支軸54とともに従動側歯車50の軸部を構成し、ねじりばね60を保持している。
【0060】
加えて、従動側歯車50の上面50pにおいて凹部50eを取り巻くように円弧状の保持部50fが設けられている。
図4に示すように保持部50fは、ねじりばね60の一端60aと係合し、一端60aを保持するように構成されている。また、従動側歯車50の上面50pには、「孔部」としての貫通孔50gと、レバー回動規制部50hと、スリット部50qが設けられている。スリット部50qは、貫通孔50gと連通し、一例として従動側歯車50の半径方向内側に向かって貫通孔50gから延びている。本実施形態において、スリット部50qは、後述する回転規制部62の足部62hを挿入可能なサイズに設定されている。
【0061】
図10において、従動側歯車50の下面50rには、足部収容部50sが形成されている。足部収容部50sは、下面50rにおいて、貫通孔50g及びスリット部50qに連通している。足部収容部50sは、スリット部50qを通された回転規制部62の足部62hを、回動軸62aを支点に回動させた際、足部62hの回動を許容するように形成されている。本実施形態において、足部収容部50sは下面50rにおいて貫通孔50gを中心として従動側歯車50の半径方向内側に延びる扇状の凹部として形成されている。本実施形態において下面50rに凹状の足部収容部50sを設けたので、足部62hが下面50rから突出することを防止でき、弁体駆動機構30の小型化を図ることができる。
【0062】
図8、
図9及び
図24において、従動側歯車50には、上面50pから上方に突出するとともに半径方向外側に向かって突出する凸状部50nが形成されている。従動側歯車50の円周方向において凸状部50nの一方側には第1回転規制部50cが形成され、他方側には第2回転規制部50kが形成されている。凸状部50nにおいて従動側歯車50の半径方向内側には、レバー回動規制部50hが形成されている。凸状部50nにおいてレバー回動規制部50hは、レバー状の回転規制部62の回動軸62aの一部及びレバー部62bの一部を受け入れるように半径方向外側に向かって凹状に形成されている。
【0063】
凸状部50nにおいて半径方向外側に向かって凹状に形成された部位には、貫通孔50gの少なくとも一部が入り込んでいる。ここで、
図24において符号50mが付された二点鎖線の円は、従動側歯車50の噛合部50aの歯の歯底円を示している。本実施形態において、貫通孔50gの一部が歯底円50mよりも半径方向外側に位置している。これにより、貫通孔50gを従動側歯車50の半径方向において外周に近い部位に配置することができ、後述する回転規制部62の足部62hの長さを長くすることができる。
【0064】
さらに、凸状部50nにおいて、レバー回動規制部50hの第1方向R1側には逃げ部50tと、逃げ部50tの第1方向R1側に支持面50uが形成されている。
図24に示すように、逃げ部50tは、凸状部50nにおいて回転規制部62の回動軸62aと接触しないように従動側歯車50の半径方向外側にレバー回動規制部50hよりも凹むように構成されている。これにより、
図24に示すように回転規制部62がレバー回動規制部50hと接触している状態において、回動軸62aと逃げ部50tとの間には隙間50vが形成される。尚、
図18ないし
図21において隙間50vの図示を省略している。
【0065】
図24に示すように、本実施形態において、隙間50vを設けることで、レバー回動規制部50hと回動軸62aとを離間した状態とし、レバー回動規制部50hと回転規制部62の第2接触部62dとの接触位置を回動軸62aから離れた位置とすることができる。
【0066】
ここで、逃げ部50tを設けない場合、回動軸62aとレバー回動規制部50hとが接触することになり、回動軸62aの製造上の寸法のバラツキにより、レバー部62bの先端位置が回動方向に対して不安定となる。その結果、駆動側歯車46の凸部46bとの接触位置が不安定となり、動力伝達切換部52における動力非伝達状態の維持を不安定にさせる。本実施形態では、逃げ部50tが回動軸62aとの間に隙間50vを形成するので、回動軸62aの製造上の寸法のバラツキの影響を低減させることができ、レバー部62bの先端位置を安定させることができる。
【0067】
支持面50uは、貫通孔50gの内周面の一部と面一の面として形成され、貫通孔50gから貫通孔50gの上部に位置する凸状部50nの上部まで延びている。したがって、回動軸62aは、軸線方向に沿って支持面50uに支持されている。
【0068】
<<<回転規制部について>>>
図11を参照するに、回転規制部62は、回動軸62aと、レバー部62bと、足部62hとを備えている。レバー部62bには、第1接触部62cと、第2接触部62dと、ばね保持部62eとが設けられている。ばね保持部62eは、「付勢部材接触部」としてのばね接触部62fと、ばね脱落防止部62gとを備えている。
【0069】
図4に示すように回転規制部62は従動側歯車50の上部に回動可能に取り付けられている。具体的には、従動側歯車50の貫通孔50g及びスリット部50q(
図8)に回転規制部62の回動軸62a及び足部62hが挿入されている。回転規制部62は従動側歯車50に対して回動軸62aを回動可能に構成されている。
【0070】
符号C1(
図24)が付された点は、回転規制部62の回動軸62aの回動中心を示している。本実施形態において、回転規制部62は、回動軸62aの回動中心C1が従動側歯車50の歯底円50mの半径方向内側に位置するように、従動側歯車50に取り付けられている。
【0071】
図11及び
図24に示すように、本実施形態において、回動軸62aの軸線方向における一端側にレバー部62bが設けられ、他端側に足部62hが設けられている。本実施形態において、レバー部62bは回動軸62aから延びる円弧状のレバーとして形成されている。従動側歯車50に回転規制部62が取り付けられた際、レバー部62bにおいて従動側歯車50の半径方向外側には第2接触部62dが形成されている。本実施形態において第2接触部62dは、従動側歯車50の円周方向に沿って延びる曲面として構成されている。レバー部62bの先端には、第1接触部62c及びばね保持部62eが形成されている。
【0072】
図24に示すように、回転規制部62のレバー部62bのばね保持部62eのばね接触部62fには、ねじりばね60の他端60bが接触し、ねじりばね60の他端60bに押圧されている。ばね保持部62eにおいてばね脱落防止部62gは、ねじりばね60の他端60bを挟んで、ばね接触部62fの反対側に設けられている。ばね脱落防止部62gは、ばね接触部62fと接触しているねじりばね60の他端60bが回転規制部62の回動状態によりばね接触部62fから離間した際、ねじりばね60の他端60bがばね保持部62eから脱落することを防止する。したがって、簡素な構成でねじりばね60を保持できる。
【0073】
本実施形態において、ばね接触部62fはレバー部62bの先端に設けられている。ここで、ばね接触部62fを付勢するねじりばね60の付勢力は、
図24における時計回り方向の回転モーメントを回転規制部62に与える。この回転モーメントは、回動軸62aの中心C1からばね接触部62fまでの距離とねじりばね60の付勢力により大きさが決定される。本実施形態では、ばね接触部62fをレバー部62bの先端に設けることで、ねじりばね60の付勢力が小さくても大きなトルクを得ることができる。これにより、回転規制部62のレバー部62bが凸部46bと離間した際、ねじりばね60の付勢力によりレバー部62bの先端を、凸部46bと接触する前の位置である、レバー回動規制部50hに規制された位置に確実に戻すことができる。
【0074】
本実施形態において、回転規制部62は、レバー部62bの第2接触部62dが従動側歯車50のレバー回動規制部50hと接触してレバー回動規制部50hを押圧するように、ねじりばね60の付勢力を受けている。つまり、回転規制部62のレバー部62bは、ねじりばね60の付勢力により、従動側歯車50の半径方向外側に向かって付勢され、第2接触部62dとレバー回動規制部50hとが接触する位置で半径方向外側への回動を規制されている。
【0075】
これに対し、第2接触部62dをねじりばね60の付勢力に抗して従動側歯車50の半径方向内側に向かって押圧すると、回転規制部62は回動軸62aを中心として従動側歯車50の半径方向内側に向かって回動する。第2接触部62dに対する半径方向内側への押圧を解除すると、レバー部62bはねじりばね60の付勢力により第2接触部62dとレバー回動規制部50hとが接触する位置まで回動して戻る。
【0076】
図24において、符号F1が付された矢印は、ねじりばね60がばね接触部62fを付勢する方向を示している。本実施形態において、回転規制部62の足部62hは、ねじりばね60の他端60bにおける付勢方向F1に対して反対の方向に向けて回動軸62aから延びている。具体的には、足部62hは、従動側歯車50の半径方向内側方向に回動軸62aから延びている。ここで、付勢方向F1に対する反対の方向とは付勢方向F1を180度反転させた方向だけでなく、力のベクトル成分として付勢方向F1に対して反対の方向のベクトル成分を含むものも反対の方向とする。
【0077】
図25において、ねじりばね60がばね接触部62fを付勢すると、回転規制部62は、回動軸62aの軸線方向における中心C2を中心に
図25における時計回り方向に回動しようとする。しかしながら、本実施形態において、回転規制部62が時計回り方向に回動しようとすると、付勢方向F1と反対の方向に向けて延びる足部62hは、足部収容部50sに押し付けられることになり、回動軸62aの倒れを抑制し、回転規制部62の回動を規制する。さらに、支持面50uも足部62hと同様に、回転規制部62の回動を規制し、回動軸62aを支持することで回動軸62aが時計回り方向に倒れることを規制する。
【0078】
また、足部62hを従動側歯車50の半径方向内側方向に回動軸62aから延びるように構成したことにより、足部62hを従動側歯車50の半径方向外側方向に延ばした場合に比べて足部62hの長さを長くすることができる。その結果、回動軸62aを倒れ難くすることができる。
【0079】
<<<弁体について>>>
図7、
図13(A)及び
図13(B)を参照して弁体56について説明する。
図13(A)及び
図13(B)に示すように、弁体56は円盤状の部材として構成されている。弁体56の中央部には、貫通孔56aが設けられている。貫通孔56aには、支軸54が挿入される。弁体56の下面は、弁座構成部材34の弁座面34cと摺動する摺動面56bとして構成されている。弁体56において摺動面56bの一部が切り取られ、切り欠き部56cとして構成されている。
【0080】
図13(B)に示すように、切り欠き部56cは、弁体56の摺動面56bに対して上方側に凹んだ形状を成している。尚、切り欠き部56cには2箇所の貫通孔56dが設けられている。本実施形態では、一例として貫通孔56dには、従動側歯車50の下面から突出する不図示のボスが挿入され、従動側歯車50と弁体56とを一体に回転可能とするように構成されている。
【0081】
また、弁体56には、上下方向に貫通し、摺動面56bにおいて開口するオリフィス56eが設けられている。本実施形態において、オリフィス56eは、流体の経路において第1流体出口34a及び第2流体出口34bよりも幅が狭い部位を有している。尚、より好ましくは、オリフィス56eは、流体の経路において幅が最も狭い部位を有している。
【0082】
以上が、バルブ駆動装置10及び弁体駆動機構30の主要な構成であり、以下において、弁体駆動機構30による弁体56の流体の制御、及び駆動側歯車46と従動側歯車50との動力伝達状態、動力非伝達状態について順次説明する。
【0083】
<<<弁体による流体制御について>>>
図14ないし
図17を参照して、流体入口28bから第1流体出口34a及び第2流体出口34bの少なくとも一方への流体の流量制御について説明する。
図15のステップS0において、駆動側歯車46は従動側歯車50に対して原点位置に位置している。尚、原点位置における駆動側歯車46の歯と従動側歯車50の歯との関係については後述する。
【0084】
図15に示すようにステップS0(原点位置)において、弁体56の切り欠き部56cは、第1流体出口34a及び第2流体出口34bの上方に位置している。したがって、弁体56が第1流体出口34a及び第2流体出口34bを閉じていない状態であるので、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは開口した状態にある。これにより、流体入口28bからバルブ室32内に供給された流体は、第1流体出口34a及び第2流体出口34bを通して第1流出管16及び第2流出管18へ流出する(
図14の開閉モード参照)。
【0085】
次いで、モータ24を回転駆動させて、ロータ40、ひいては駆動側歯車46を第1方向R1に回転させる。この際、駆動側歯車46と噛み合う従動側歯車50も従動回転(
図15における時計周り方向)し、ステップS1(
図15の中央の図)の状態に移行する。従動側歯車50の従動回転により、弁体56は弁座構成部材34に対して、摺動面56bが弁座面34cに密着状態で
図15における時計回り方向に摺動する。ステップS1においても、切り欠き部56cが第1流体出口34a及び第2流体出口34bの上方に位置しているので、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは開口した状態、すなわち、
図14における開モードとなる。
【0086】
図15の下の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS1の状態からステップS2の状態に移行する。この状態では、第1流体出口34aの上方にオリフィス56eが位置し、切り欠き部56cは第2流体出口34bの上方に位置している。第1流体出口34aは、オリフィス56eにより第1流体出口34aから流出する流体の流量が制限された状態となる。
【0087】
つまり、ステップS0及びステップS1のように完全に開口した状態の第1流体出口34aから流出する流体の流量に比べてオリフィス56eにより制限された状態の第1流体出口34aから流出する流体の流量は少なくなる。つまり、
図14のステップS2における微小開モードとなる。第2流体出口34bは、開口した状態であるので、開モードとなる。
【0088】
次いで、
図16の上の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS2の状態からステップS3の状態に移行する。この状態では、オリフィス56eは、第1流体出口34aの上方の位置から外れている。第1流体出口34aは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じられている。したがって、第1流体出口34aは閉モード(
図14)となり、バルブ室32から第1流出管16への流体の経路が遮られる。一方、第2流体出口34bの上方には切り欠き部56cが位置している。したがって、第2流体出口34bは開口しており、開モード(
図14)となる。
【0089】
次いで、
図16の中央の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS3の状態からステップS4の状態に移行する。この状態では、第1流体出口34aは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じられている。したがって、第1流体出口34aは、ステップS3から継続して閉モード(
図14)状態を維持し、バルブ室32から第1流出管16への流体の経路が遮られた状態を維持している。
【0090】
さらに、第2流体出口34bの上方にはオリフィス56eが位置している。したがって、第2流体出口34bは、オリフィス56eにより第2流体出口34bから流出する流体の流量が制限された状態であり、
図14のステップS4における微小開モードとなる。
【0091】
次いで、
図16の下の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS4の状態からステップS5の状態に移行する。ステップS5の状態では、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じた状態となる。つまり、
図14のステップS5における閉モードとなる。この状態では、バルブ室32から第1流出管16及び第2流出管18への流体の経路が遮られた状態となる。
【0092】
次いで、
図17に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS5の状態からステップS6の状態に移行する。ステップS6の状態では、再度、切り欠き部56cが第1流体出口34aの上方に位置する。したがって、第1流体出口34aは完全に開いた状態となり、
図14における開モードとなる。一方、第2流体出口34bは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じた状態を維持するので、バルブ室32から第2流出管18への流体の経路が遮られた状態を維持する。つまり、
図14のステップS6において閉モードとなる。
【0093】
本実施形態では、モータ24により弁体56を弁座構成部材34に対して回転させることで、第1流体出口34a及び第2流体出口34bをそれぞれ開いた状態、微小に開いた状態、閉じた状態と切り換えることができ、バルブ室32から第1流出管16及び第2流出管18のそれぞれに流出する流体の流量を調整することができる。
【0094】
<<<動力伝達切換部における動力伝達状態から動力非伝達状態への切換について>>>
図18及び
図19において弁体駆動機構30の動力伝達切換部52の原点位置復帰動作について説明する。ステップS7において、駆動側歯車46は第2方向R2に回転している。ステップS7の状態では、駆動側歯車46の歯車部46aは従動側歯車50の噛合部50aと噛合っている。尚、ステップS7は、駆動側歯車46を第1方向R1側に回転させて従動側歯車50を従動回転させた後、回転方向を第2方向側に切り換えて、原点位置に戻る途中の状態である。
【0095】
さらにステップS7からステップS8に移行すると、駆動側歯車46は従動側歯車50に対して原点位置に戻る。ここで、原点位置とは、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとの噛合状態が解除され、歯車部46aが従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態である。この状態において、駆動側歯車46が第2方向に回転した場合、駆動側歯車46から従動側歯車50への動力伝達がなされない動力非伝達状態となる。
【0096】
具体的には、ステップS7ないしステップS12の図を参照するに、駆動側歯車46が第2方向R2側に回転すると、4つの凸部46bも第2方向R2に回転する。ステップS7からステップS9に進むにつれ、回転規制部62の第2接触部62dと対向している凸部46bは、第2方向R2側への回転に伴って第2接触部62dに接近し、ステップS9において第2接触部62dと接触する。
【0097】
駆動側歯車46が第2方向R2にさらに回転すると、第2接触部62dと接触した凸部46bも第2方向R2側に回転しようとする。この際、凸部46bは、ステップS10及びステップS11に示すようにねじりばね60の付勢力に抗して第2接触部62dを押圧する。その結果、回転規制部62は、回動軸62aを中心として従動側歯車50の半径方向内側に向けて回動する。
【0098】
その後、ステップS11及びステップS12に示すように、駆動側歯車46がさらに第2方向R2に回転すると、第2接触部62dを押圧していた凸部46bが、第2接触部62dから離間する。その結果、回転規制部62は、ねじりばね60の付勢力により半径方向外側に向かって回動し、第2接触部62dが従動側歯車50のレバー回動規制部50hと接触する位置まで回動する。
【0099】
本実施形態において、駆動側歯車46の歯車部46aが、従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態で、第2方向R2側に駆動側歯車46を回転させると、凸部46bが回転規制部62の第2接触部62dと間欠的に接触と離間とを繰り返す一方で、歯車部46aは非噛合部50b内で空転し続ける。したがって、動力非伝達状態における駆動側歯車46の歯と従動側歯車50の歯とが不用意に接触することを防止でき、歯同士が衝突した際の衝突音の発生を防止できる。
【0100】
歯車部46aが非噛合部50b内で空転し続けることにより、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとの噛合状態が解除された状態が継続する。その結果、駆動側歯車46から従動側歯車50へはモータ24の動力が伝達されない動力非伝達状態が維持される。したがって、モータ24において脱調が生じる虞を低減でき、脱調を起因とする騒音を抑制することができる。
【0101】
<<<第2回転規制部について>>>
図23(A)及び
図23(B)を参照して、第2回転規制部50kについて説明する。
図23(A)及び
図23(B)は、ステップS10からステップS11までの間における駆動側歯車46と従動側歯車50との関係を示している。
図23(A)において、凸部46bが回転規制部62の第2接触部62dと接触し、第2接触部62dを押圧する際、凸部46bは、第2方向R2側に回転することから、第2接触部62dを
図23(A)における反時計回り方向へ回転するように押圧する。
【0102】
ここで、凸部46bにより押圧された第2接触部62dは、従動側歯車50とともに
図23(A)及び
図23(B)における反時計回り方向に回転しようとする。本実施形態において従動側歯車50には、非噛合部50bの第1方向R1方向側に第2回転規制部50kが設けられている。従動側歯車50が第2接触部62dとともに
図23(A)における反時計回り方向に回転すると、第2回転規制部50kは非噛合部50b内に位置する駆動側歯車46の歯車部46aの歯車と接触する(
図23(A))。
【0103】
第2回転規制部50kが歯車部46aの歯と接触すると、従動側歯車50の
図23(A)及び
図23(B)における反時計回り方向への回転が規制される。さらに、この状態で駆動側歯車46が第2方向R2側への回転を継続しても、第2回転規制部50kが歯車部46aのいずれかの歯と接触した状態(
図23(B))を保つので、従動側歯車50の回転規制状態が維持される。これにより、駆動側歯車46の歯車部46aが、非噛合部50b内において空転することができ、動力非伝達状態を維持できる。
【0104】
<<<第2接触部について>>>
さらに、
図26(A)及び
図26(B)において、第2接触部62dを曲面として構成した利点について説明する。
図26(A)は、第2接触部を直線状に形成した回転規制部66を示している。回転規制部66は、回動軸66aと、レバー部66bと、第2接触部66cとを備えている。
図26(A)は、直線状のレバー部66bを有する回転規制部66の回動状態の変位を示し、
図26(B)は本実施形態に係る回転規制部62の回動状態の変位を示している。
【0105】
図26(A)において、直線状の第2接触部66cは、凸部46bと接触すると従動側歯車50の半径方向内側に回動する。第2接触部66cと接触した凸部46bは、直線状の第2接触部66cに沿って第2方向R2側に回動する。この際、直線状の第2接触部66cは凸部46bと離間する直前まで従動側歯車50の半径方向内側に押し込まれた状態となる。凸部46bが第2接触部66cと離間すると、回転規制部66は、不図示のねじりばね60の付勢力により第2接触部66cがレバー回動規制部50hと接触する位置まで回動量W1分回動する。尚、
図26(A)における二点鎖線は、レバー回動規制部50hと接触する第2接触部66cと、その状態における凸部46bの位置を模式的に示している。
【0106】
一方、
図26(B)において、曲面として構成された第2接触部62dは、凸部46bと接触すると、従動側歯車50の半径方向内側へ回動させられる。駆動側歯車46が第2方向R2側に回動すると、凸部46bは第2接触部62dと摺動しつつ移動する。この際、第2接触部62dは従動側歯車50の円周方向に沿った曲面であるので、凸部46bの第2方向R2側の回動とともに、従動側歯車50の半径方向内側に押し込まれた状態から半径方向外側へと徐々に戻る。そして、凸部46bが第2接触部62dから離間すると、第2接触部62dがレバー回動規制部50hと接触する位置まで回動量W2分戻る。尚、
図26(B)における二点鎖線は、レバー回動規制部50hと接触する第2接触部62dと、その状態における凸部46bの位置を模式的に示している。
【0107】
ここで、回転規制部62は凸部46bが第2接触部62dから離間する前の状態から半径方向外側に向かって回動を開始しているので、回転規制部66の回動量W1に比べて凸部46bが第2接触部62dと離間した際における半径方向外側への回動量W2を小さくすることができる。その結果、第2接触部62dがレバー回動規制部50hと接触する際における衝撃を和らげることができ、衝撃音(騒音)を抑制できる。
【0108】
<<<動力非伝達状態から動力伝達状態への切換について>>>
次いで、
図20及び
図21において動力非伝達状態から動力伝達状態への切換について説明する。本実施形態において、ステップS13に示すように、駆動側歯車46の歯車部46aが従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態、つまり動力非伝達状態において、駆動側歯車46を原点位置に合わせる。尚、駆動側歯車46の原点位置決めは、ステータ36を所定の励磁パターンで励磁することにより行われる。
【0109】
ステップS14において駆動側歯車46が第1方向R1側の回転を開始すると、凸部46bが回転規制部62の第1接触部62cと接触し、回転規制部62、ひいては従動側歯車50を
図20における時計回り方向に押圧する。ここで、第1接触部62cと接触する凸部46bは、第1接触部62cと交差する方向において回動軸62aの側に向けて第1接触部62cを押圧するので、回転規制部62は回動することができない。その結果、従動側歯車50は、回転規制部62の第1接触部62cを介して凸部46bに押圧されて、
図20における時計回り方向に回転する。
【0110】
これにより、ステップS15に示すように、駆動側歯車46の歯車部46aの歯が従動側歯車50の非噛合部50bから抜け出て噛合部50aの歯と噛合いを開始する。これにより動力伝達切換部52は、動力非伝達状態から動力伝達状態へと切り換わる。さらに、駆動側歯車46が第1方向R1側に回動すると、ステップS16に示すように歯車部46aの歯と噛合部50aとの歯の噛合により従動側歯車50は
図21における時計回り方向への回動を継続する。
【0111】
さらにステップS17に示すように駆動側歯車46を第1方向R1側に回転させることで、従動側歯車50を
図21における時計回り方向に回転させることができ、弁体56におけるステップS1からステップS6までの動作を実行することができる。
【0112】
次いで
図22を参照して、原点位置(
図20のステップS13の状態)における駆動側歯車46と従動側歯車50との関係について説明する。本実施形態において、駆動側歯車46が原点位置に位置すると、凸部46bは回転規制部62の第1接触部62cに対応する位置に位置する。ここで、駆動側歯車46の円周方向において凸部46bに対応する位置には、ロック回避歯46cが形成されている。
【0113】
図22において、二点鎖線で示す円弧は、駆動側歯車46の歯車部46aにおけるロック回避歯46c以外の歯の歯先円を図示している。
図22において駆動側歯車46が原点位置に位置した状態では、従動側歯車50の噛合部50aと非噛合部50bとの境目の歯50jは、ロック回避歯46c以外の歯の歯先円と干渉する位置に位置している。
【0114】
この状態において、ロック回避歯46cの位置にロック回避歯46c以外の歯が配置されている場合、駆動側歯車46が第1方向に回転しようとする際、従動側歯車50の歯50jとロック回避歯46cの位置に配置されたロック回避歯46c以外の歯とが接触して駆動側歯車46と従動側歯車50とがロック状態となる場合がある。
【0115】
本実施形態では、駆動側歯車46が原点位置に位置する際、従動側歯車50の歯50jに、駆動側歯車46のロック回避歯46cが近接するように配置している。これにより、ロック回避歯46cの歯先円はロック回避歯46c以外の歯先円よりも小さいので、従動側歯車50の歯50jと駆動側歯車46のロック回避歯46cとの間に隙間64を設けることができる。隙間64が形成されることにより、駆動側歯車46と従動側歯車50とのロック状態を回避できる。その結果、動力伝達切換部52において駆動側歯車46と従動側歯車50との動力非伝達状態から動力伝達状態への切換を円滑に行うことができ、異常動作(励磁パターンに対する駆動側歯車46の歯車部46aの位置のずれ)や動作不良の発生を抑制できる。
【0116】
上述したように、本実施形態において、動力伝達切換部52における回転規制部62は、駆動側歯車46が第1方向に回転した場合、従動側歯車50の回転を許容し、駆動側歯車46が第2方向に回転した場合、従動側歯車50の回転を規制するように構成されている。つまり、クラッチ機構として構成されている。本実施形態における回転規制部62を既知のクラッチ機構の構成を利用することで、設計時間の短縮及びコストダウンを図ることができる。
【0117】
本実施形態における回転規制部62は、駆動側歯車46が第1方向に回転した際、駆動側歯車46から従動側歯車50へ動力を伝達させ、駆動側歯車46が第2方向に回転した際、駆動側歯車46から従動側歯車50への動力伝達を切断するので、駆動側歯車46の回転方向を切り換えるだけで、動力伝達状態を切り換えることができ、回転規制部62の構成を簡素化することができる。
【0118】
<異物進入抑制部>
図27~
図31
次に、バルブ駆動装置10がその内部を流れる流体が銅粉等の異物を含む流体経路に設置される場合に、弁体駆動機構30の動力伝達切換を実行する部分(動力伝達切換部52)に異物が入って動作不良になる虞を低減できるようにするために設ける異物進入抑制部の具体的な構造を詳しく説明する。
図27及び
図29は、本発明の実施形態に係る異物進入抑制部を備える弁体駆動機構30の上方から見た斜視図である。本実施形態において、回転規制部62のレバー部62bは、駆動側歯車46の回転移動する凸部46bと接触する動作と、ねじりばね60の前記付勢力に抗して回動してレバー回動規制部50hとの接触位置から離れる動作をする。その接触及び離れる動作をするレバー部62bとレバー回動規制部50hとの間を成す領域53を覆う異物進入抑制部63を備えている。
【0119】
領域53は、レバー部62bの第2接触部62dとレバー回動規制部50hとの互いの対向する面で作られる領域である(後述する
図33も参照)。この領域53はレバー62bが回動してレバー回動規制部50hとの接触位置から離れると、前記領域の開口面積が大きくなるので、バルブ駆動装置10内を流れる液体中に銅粉等の異物が含まれていると、この異物が領域53内に入り込む虞がある。
【0120】
本実施形態では、上記の通り、異物進入抑制部63が領域53を覆うように設けられている。この異物進入抑制部63により、バルブ駆動装置10が銅粉等の異物を含む流体経路に設置された場合でも、前記異物が領域53に進入することを抑制することが可能となる。これにより、レバー部62bがレバー回動規制部50hとの本来の前記接触位置まで戻れなくなる状態になる虞を低減することができる。以って、動力伝達切換部52が前記異物によって動作不良を起こす虞を低減することができる。
【0121】
図30に基づいて、本実施形態の異物進入抑制部63の構造の一例を説明する。この異物進入抑制部63は、回転規制部62のレバー部62bに一体的に設けられている。具体的には、異物進入抑制部63は、レバー部62bの第2接触部62dの同図における上方の位置に、領域53を同図の上方から覆うように傘形状に張り出して設けられている。
図28に表したように、異物進入抑制部63の裏面63bは、凸状部50nの頂面51とクリアランスgを持って対向している。
図28ではクリアランスgを図面で視認し易くするために大きめに表してあるが、異物進入抑制の観点からは、このクリアランスgは可能な範囲で小さいことが好ましい。尚、ばね保持部62eは、
図11の構造におけるばね脱落防止部62gが除かれた構造になっている。
このように、異物進入抑制部63は、レバー部62bに設けられているので、構造簡単及び製造容易にして異物の進入を抑制することができる。
【0122】
図31(A)(B)に基づいて、本実施形態の異物進入抑制部63の大きさ(サイズ)について説明する。本実施形態では、異物進入抑制部63は、レバー部62bがレバー回動規制部50hに接している状態(同図(A))において、レバー回動規制部50hの対応する位置となる外郭線53に対して従動側歯車50の半径方向内側に位置する(半径方向外側に出ない)形状に形成されている。従動側歯車50の外郭線83の外側には、他の部材が配置されている場合が通常であるので、この「他の部材」に干渉しないように異物進入抑制部63の大きさの上限が規定されている。
具体的には、
図31(A)では、凸状部50nの頂面51のほとんどが異物進入抑制部63によって同図における上から覆われている。
図31(B)は、駆動側歯車46の凸部46bに押されてレバー部62bがねじりばね60の前記付勢力に抗して回動した状態であるが、この回動した状態でも頂面51が少し露呈する程度である。よって異物が領域53に入り込む虞は少ない。
【0123】
異物進入抑制部63の大きさは、
図31(A)(B)に表したように大きく形成できない場合は、それより小さくすることが可能である。この場合、異物進入抑制部63は、レバー部62bの前記接触位置及び前記接触位置から離れた位置のいずれの位置においても連続して領域53を覆う形状に形成されているのが好ましい。即ち、
図31(A)(B)のように、領域53の部分を大きくはみ出して覆っていなくても、レバー部62bが回動して領域53の開口面積が最大になった状態(
図31(B))において、この状態の領域53を覆う大きさであれば、異物が入るのを抑制することができるからである。
【0124】
尚、異物進入抑制部63の大きさとして、レバー部62bがレバー回動規制部50hに接している状態(同図(A))において、この状態の領域53を覆う大きさ(最小の大きさ)以上であればよい。言い換えると、レバー部62bが回動して領域53の開口面積が最大になった状態(
図31(B))においては、この状態の領域53を一部覆っていない大きさであってもよい。前記「最小の大きさ」でも、領域53への異物進入に対する抑制効果は、異物進入抑制部63が全く設けられていない構造のものよりは有ると言えるので、小さく形成したい場合はその程度の大きさでもよい。
【0125】
<異物進入抑制部の異なる実施形態>
図32
図32に基づいて、異物進入抑制部163の異なる実施形態の一例を説明する。
図27乃至
図31の実施形態では、異物進入抑制部63は、レバー部62bに一体に設けられている構造を説明したが、レバー部62bとは別に設けることもできる。
図32の実施形態では、異物進入抑制部163は、保持部材58に一体に設けられている。保持部材58のフランジ部58aから領域53の上方に延設されて、領域53を覆って異物が進入するのを抑制している。
この異物進入抑制部163によっても、前記異物が領域53に進入することを抑制することが可能となる。これにより、レバー部62bがレバー回動規制部50hとの本来の前記接触位置まで戻れなくなる状態になる虞を低減することができる。
尚、異物進入抑制部163は、レバー部62bに設ける構造として、保持部材58に設ける構造に限定されないことは勿論である。スペース的に可能であれば、専用の新たな部材として設置してもよい。
【0126】
<干渉回避部>
図33~
図35
次に、前記異物が領域53に入って前記動作不良になる虞を低減できるようにするために設ける干渉回避部の具体的な構造を詳しく説明する。
図33は、本発明の実施形態に係る干渉回避部を備える回転規制部62を有する弁体駆動機構30の要部を上方から見た平面図である。
図33(A)は、本実施形態において、回転規制部62のレバー部62bが凸状部50nのレバー回動規制部50hに接触しており、レバー部62bが回動前の状態を示す。即ち、第2方向R2に回転する駆動側歯車46の凸部46bがレバー部62bの第2接触部62dと接触する前の状態である。
【0127】
一方、
図33(B)は、レバー部62bがレバー回動規制部50hから離れて回動した状態を示す。即ち、第2方向R2に回転する駆動側歯車46の凸部46bがレバー部62bの第2接触部62dと接触してレバー部62bを押し込み、レバー部62bを回動させた状態である。この図の状態から、更に凸部46bが第2方向R2に回転することで、凸部46bはレバー部62bの第2接触部62dから外れる。
【0128】
本実施形態では、駆動側歯車46が回動したときに凸部46bの前記半径方向における先端が作る円の軌跡(二点鎖線)を第1円軌跡80とする。凸部46bが第1方向R1に回転して第1接触部62cと接触する際の第1接触部62cの従動側歯車50の半径方向における先端62jが作る円の軌跡(一点鎖線)を第2円軌跡90とする。
そして、レバー部62bの第2接触部62dは、第1円軌跡80の作る第1円80(第1円軌跡と同じ符号を用いる)と第2円軌跡90が作る第2円90(第2円軌跡と同じ符号を用いる)とで囲われた干渉領域85において、第1接触部62c側の部分に干渉回避部62kが存在する形状である。
【0129】
ここで、「第2接触部62dは、…干渉領域85において、第1接触部62c側の部分に干渉回避部62kが存在する形状」における「干渉回避部62k」とは、凸部46bが接触する相手となるレバー部62bの第2接触部62dに凸部46bに対する後退形状が設けられていて、その後退形状の部分では凸部46bはレバー部62bと非接触となることを意味する。即ち、干渉領域85において、第2接触部62dの第1接触部62c側の部分に凸部46bが非接触となる隙間が在る形状であることを意味する。
【0130】
本実施形態によれば、レバー部62bは、その第2接触部62dに干渉回避部62kが存在する形状であるので、駆動側歯車46の回転により凸部46bがレバー部62bの第2接触部62dに当接するタイミングが、干渉回避部62kが存在しない形状よりも遅くなる。これにより、レバー部62bの前記接触及び離れる動作における「離」の状態にある時間が、干渉回避部62kが存在しない形状よりも短くなる。前記異物は前記接触及び離れる動作における「接」の状態においては構造的に領域53に入り込むことができないものであるので、前記「離」の状態の時間が短くなれば、その分だけ前記異物が領域53に入り込み難くなる。
従って、バルブ駆動装置10が銅粉等の異物を含む流体経路に設置された場合でも、干渉回避部62kが存在する形状によって前記「離」の状態の時間が短くなって、前記異物が領域53に進入することを抑制することが可能となる。以って、レバー部62bが本来の前記接触位置まで戻れなくなる状態になる虞を低減することができる。これにより、動力伝達切換部52が前記異物によって動作不良を起こす虞を低減することができる。
【0131】
図33(A)(B)に基づいて、本実施形態の干渉回避部62kの構造の一例を説明する。この干渉回避部62kは、第2接触部62dの干渉回避部62kの部分から第1接触部62cの先端62jに連なる部分62mが、当接する凸部46bがスライド可能な曲面に形成されている。
【0132】
駆動側歯車46の回転により凸部46bが回転移動して第2接触部62dの干渉回避部62kに対応する部分に臨んだ際に、当初は第2接触部62dと非接触の状態である(
図33(A))。その後、凸部46bが第1接触部62c側に向かって移動することで第2接触部62dに対して非接触の状態から接触の状態に変わる。この接触状態に変わると凸部46bは前記連なる部分62mを介して第2接触部62dを押し始める。
そして、レバー部62bは、回転移動する凸部46bに押されて前記付勢力に抗して回動軸62aを支点にして回動する。これにより、レバー部62bはレバー回動規制部50hとの接触位置から離れる(
図33(B))。
【0133】
この際、本実施形態においては、干渉回避部62kに対応する部分から第1接触部62cに連なる部分62mは、凸部46bがスライド可能な曲面であるので、レバー部46bはスムースに回動することができる。以って、その回動動作が安定する。
尚、前記連なる部分62mのスライド可能な曲面は平坦面が好ましいが、凸部46bがスライド可能であれば、平坦面に限定されない。
【0134】
図33(A)(B)に基づいて、本実施形態の干渉回避部62kを備えるレバー部62bの具体的な構造(形状)について説明する。
本実施形態では、レバー部62bは、レバー回動規制部50hと対向する部位の面が、レバー回動規制部50hの、レバー部62bの延出方向における先端位置55まで、全体が略一様に面接触する面形状に形成されている。そして、レバー回動規制部50hの先端位置55がレバー部62bとの基点としての接触位置55(先端位置と同じ符号を用いる)となるように形成されている。
【0135】
干渉回避部62kは、本実施形態では、レバー部62bのレバー回動規制部50hとの接触位置55と第1接触部62cとの間で凹部57として構成されている。
尚、凹部57の形状は、
図33のような形状、則ち先端位置55から前記連なる部分62mに向かって徐々に下る傾斜面によって全体として略対称の形状に限定されないことは勿論である。例えば、凹部57の形状は、先端位置55から従動側歯車50の半径方向に後退した後、略直角に向きを変えて前記連なる部分62mにつながる形状でもよい。
本実施形態によれば、凹部57によって干渉回避部62kが構成されているので、レバー部62bのレバー回動規制部50hとの接触状態及び接触位置を安定させた状態で、凹部57によって前記タイミングの遅れを容易に実現することができる。
【0136】
次に、
図34と
図35に基づいて、駆動側歯車46の回転角度すなわち凸部46bの回転位置とレバー部62bの回動位置との関係を、レバー部62bが干渉回避部62kを有しないもの(
図34の上段、
図35の鎖線グラフ)と、干渉回避部62kを有するもの(
図34の下段、
図35の実線グラフ)とを比較して説明する。
図34において、左端の1番(
図34では〇で囲ってある)から右端の8番に向けてステップ(step)1~8を踏んで動作が進行する。凸部46bは、レバー部62bの第2接触部62dにそれぞれのタイミングで接触して押し込んで回動させ、回動角度が最大回動状態を経て、凸部46bはレバー部62bの第2接触部62dとの接触状態から外れて第1接触部62c側に至る。
【0137】
図34と
図35から理解できるように、ステップ1の原点位置では、凸部46bはレバー部62部といずれも非接触である。
干渉回避部62kが無いレバー部62bでは、
図34の上段に示したように、ステップ1の直後から回転する凸部46bはレバー部62bと接触してレバー部62bを前記付勢力に抗して回動させる。そのため、領域53はステップ1の直後から前記開口面積が大きくなっていくので、異物が入り易くなる。領域53の開口面積が大きくなっている時間は、ステップ1からステップ7までの間である。
【0138】
一方、干渉回避部62kが有るレバー部6bでは、
図34の下段に示したように、ステップ1からステップ3の直前まで間は、干渉回避部61kが有ることで、凸部46bはレバー部62bと接触しない。凸部46bは、ステップ3の位置でレバー部62bと接触し、その後レバー部62bを回動させる。
これにより領域53は、前記開口面積が大きくなっていくが、領域53の開口面積が大きくなっている時間は、ステップ3からステップ7までの間である。
【0139】
従って、干渉回避部62kが有るレバー部62bでは、領域53に異物が入り易い時間は、ステップ1からステップ3までの間の分だけ短くなる。
図35は、干渉回避部62kが有るレバー部62kでは、ステップ1からステップ3までの間の分だけ、領域53に異物が入り易い時間は短くなることをグラフで表したものである。このグラフから理解できるように、本実施形態によれば、干渉回避部62kが存在する形状によって前記「離」の状態の時間が短くなって、前記異物が領域53に進入することを抑制することが可能となる。
【0140】
また本実施形態では、
図35の実線(回避部:有)のグラフで表したように、駆動側歯車50が第2方向R2に回転しつつ凸部46bがレバー部62bの第2接触部62dを押すことでレバー部62bが回動軸62aを回動支点として回動し、凸部46bが第2接触部62dから外れるときのレバー部62bの回動角度は、最大値となるように構成されている。
本実施形態では、凸部46bが第2接触部62dから外れるときのレバー部62bの回動角度が最大値となる構造であるので、レバー部62bを、干渉回避部62kが無いレバー部62bの回動角度(
図35の破線(回避部:無)のグラフ)のように、必要以上に回動させないで済む。これにより構造を簡単にすることができる。
【0141】
また本実施形態では、モータ24はステッピングモータである。そして、レバー部62bの回転角度の最大値に対するするステップの次のステップで凸部46bが第2接触部62dから外れるように構成されている。
この構成により、レバー部62bの回転角度の最大値に対するするステップの次のステップで凸部46bが第2接触部62dから外れるので、設計及び動作制御を簡単にすることができる。
【0142】
<異物進入抑制部+干渉回避部>
図29、
図31、
図34下段
図29、
図31や
図34下段に表したように、本実施形態では、レバー部62bは、異物進入抑制部63と干渉回避部62kの両方を備えている。
図31により理解できるように、レバー部62bが凸部46bと非接触で回動前の状態(
図31(A))と、レバー部62bが凸部46bと接触して最大角度まで回動された状態(
図31(B))のいずれの状態においても、領域53は異物進入抑制部63によって大きく覆われている。
従って、異物進入抑制部63を備えることと、更に、干渉回避部62kが存在する形状とによって前記異物が領域53に進入することを一層抑制することが可能となる、以って、動力伝達切換部52が前記異物によって動作不良を起こす虞を一層低減することができる。
【0143】
更に本実施形態においては、
図29、
図31や
図34下段に表したように、干渉回避部62kは、上記説明の凹部57により構成されている。このように凹部57として構成されていることにより、凹部構造に基づく上記説明の効果が、異物進入抑制部63と干渉回避部62kの両方を備えている両構造においても得られる。
【0144】
<<<実施形態の変更形態>>>
(1)本明細書においては、冒頭に記したように、説明を解り易くするために、異物進入抑制部63と干渉回避部62kの具体的な構造の説明は後にまわして、先ず弁体の駆動に際しての騒音を低減するとともに円滑な動力伝達切換を行うことができるようにしたバルブ駆動装置の構造について
図1から
図26に基づいて一通り説明した。そして、異物進入抑制部63、干渉回避部62k、及びその両方63,62kを備える構造は
図27から
図35に基づいて説明した。
本発明の各態様の特徴構成において、
図1から
図26に記載され、そこで説明されているものについては、
図27から
図35による実施形態の説明においては、同様の構成であり重複になるので、その説明は省略した。
例えば、領域53が、
図24に記載されている隙間50vを有する構造である場合は、レバー部62bがレバー回動規制部50hに前記付勢力により押し付けられている接触状態でも、前記異物が進入する虞がある。この構造の領域53に対して本発明を適用するとその効果は大きいと言える。
【0145】
(2)本実施形態において「付勢部材」の一例としてねじりばね60により回転規制部62を付勢する構成としたが、この構成に代えて、付勢部材を板ばね等により構成してもよい。
【0146】
(3)本実施形態において動力伝達切換部52において凸部46bと回転規制部62との係合状態(第1接触部62cまたは第2接触部62dとの接触)の切換により動力伝達を切り換える構成としたが、この構成に代えて、回転規制部62に既知のラチェット機構を設けて駆動側歯車46を空転させる構成としてもよい。
【0147】
(4)本実施形態において、従動側歯車50の下面50rに足部収容部50sを設けて足部62hを収容する構成としたが、この構成に代えて、下面50rに足部収容部50sを設けずに足部62hを下面50rから突出させて下面50rに接触するように回動可能に配置する構成としてもよい。
【0148】
(5)本実施形態において足部62hをねじりばね60の付勢方向と反対方向に延びる単一の足部として構成したが、この構成に代えて、複数の足部を備える構成としてもよく、例えば、ねじりばね60の付勢方向に延びる足部を備えていてもよい。
【0149】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0150】
10 バルブ駆動装置、12 バルブ本体、14 流入管、16 第1流出管、
18 第2流出管、20 カバー部材、22 ベース部材、24 モータ、
26 密封カバー、26a、28c 軸受部、28 基台本体、28a、50p 上面
28b 流体入口、30 弁体駆動機構、32 バルブ室、34 弁座構成部材、
34a 第1流体出口、34b 第2流体出口、34c 弁座面、
34d、50d、50g、56a、56d 貫通孔、36 ステータ、37 駆動コイル
38 駆動マグネット、40 ロータ、42 コア部材、42a 極歯、
46 駆動側歯車、46a 歯車部、46b 凸部、46c ロック回避歯、
46d 本体、48、54 支軸、50 従動側歯車、50a 噛合部、
50b 非噛合部、50c 第1回転規制部、50e 凹部、50f 保持部、
50h レバー回動規制部、50j 歯、50k 第2回転規制部、50m 歯底円、
50n 凸状部、50q スリット部、50r 下面、50s 足部収容部、
51 頂面、53 領域、55 先端位置、57 凹部、
50t 逃げ部、50u 支持面、50v、64 隙間、52 動力伝達切換部、
56 弁体、56b 摺動面、56c 切り欠き部、56e オリフィス、
58 保持部材、58a フランジ部、58b 筒状部、60 ねじりばね、
60a 一端、60b 他端、62、66 回転規制部、62a、66a 回動軸、
62b、66b レバー部、62c 第1接触部、62d、66c 第2接触部、
62e ばね保持部、62f ばね接触部、62g ばね脱落防止部、62h 足部、
62k 干渉回避部、62j 第1接触部の先端、62m 連なる部分、
63、163 異物進入抑制部、63b 裏面、80 第1円軌跡(第1円)、
83 外郭線、85 干渉領域、90 第2円軌跡(第2円)、g クリアランス、
C1、C2 中心、F1 付勢方向、R1 第1方向、R2 第2方向、
S0、S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17 ステップ、
W1、W2 回動量、d1、d2 歯先円直径