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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20220907BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220907BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20220907BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B60C11/03 100B
B60C5/00 H
B60C11/12 D
B60C11/13 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018232796
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020093658
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】柴山 健輔
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-73313(JP,A)
【文献】特開2016-203663(JP,A)
【文献】特開平6-31832(JP,A)
【文献】特開2012-236455(JP,A)
【文献】特開平7-257113(JP,A)
【文献】特開2006-143040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、前記主溝により区画された複数の陸部と、をトレッド部に備え、車両に対する装着の向きが指定された空気入りタイヤにおいて、
前記主溝は、タイヤ幅方向外側に設けられた一対のショルダー主溝を備え、
前記陸部は、前記一対のショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に形成された一対のショルダー陸部を備え、
前記一対のショルダー陸部は、
タイヤ周方向に対して交差する方向に延びる複数のスリットと、
前記複数のスリットにより区画された複数の陸部要素をタイヤ周方向に並べてなる陸部要素列と、
前記陸部要素に設けられ、前記スリットより溝幅が狭い複数のサイプと、を備え、
前記陸部要素と当該陸部要素にタイヤ周方向の一方で隣り合うスリットとからなる繰り返し要素のタイヤ周方向長さをピッチ長とすると、前記陸部要素列は、前記ピッチ長が異なる複数種類の前記繰り返し要素をタイヤ周方向に並べてなり、
最もピッチ長の短い繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数が、最もピッチ長の長い繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数より少なく、
車両外側に位置する前記ショルダー陸部に設けられた前記サイプの数が、車両内側に位置する前記ショルダー陸部に設けられた前記サイプの数より少ない空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ1周分の前記繰り返し要素の数をピッチ数、タイヤ1周分のタイヤ周方向長さを前記ピッチ数で除した長さを平均ピッチ長とすると、
前記平均ピッチ長より短いピッチ長の繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数が、前記平均ピッチ長より長いピッチ長の繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数より少ない請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記複数のサイプのタイヤ幅方向内側端が、前記複数のスリットの前記タイヤ幅方向内側端よりタイヤ幅方向内側に位置する請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数のサイプのタイヤ幅方向内側端から前記複数のスリットの前記タイヤ幅方向内側端までのタイヤ幅方向の長さが3mm以上である請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記一対のショルダー陸部は、前記ショルダー主溝に隣接して設けられ、前記スリット及び前記サイプにより分断されることなくタイヤ周方向に連続して延びる連続部を備える請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記連続部のタイヤ幅方向に沿った長さAと、接地幅Wとの比A/Wが0.05以上0.15以下である請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの騒音として、トレッド部が接地する際に路面を叩く打撃音がある。タイヤの踏み込み時や蹴り出し時において、タイヤが路面に接地するときの接地形状とトレッドパターンとが合致するタイミングが一定であると、打撃音のピークが目立つ。例えばタイヤ周方向においてトレッドパターンのピッチ長が一定であると、ピッチノイズのピークが高くなりやすい。
【0003】
従来、左右一対のショルダー陸部に異なる数のサイプを設けた空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-218596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、左右一対のショルダー陸部においてサイプの数を異ならせることで、ピッチピークを分散させてピッチノイズを低減することができるが、ピッチノイズの低減に対する要求が高く、更なる改善が求められている。
【0006】
これに対して、一方のショルダー陸部に多くのサイプを追加して、左右のショルダー陸部に設けるサイプの数の差を大きくすることが考えられる。しかしながら、トレッドゴムに設けるサイプの数を増やすと陸部剛性が低下するため、サイプを追加したショルダー陸部が大きく倒れ込み、操縦安定性が低下しやすくなる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、操縦安定性を確保しつつ、ピッチノイズを低減することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、前記主溝により区画された複数の陸部と、をトレッド部に備え、車両に対する装着の向きが指定された空気入りタイヤにおいて、前記主溝は、タイヤ幅方向外側に設けられた一対のショルダー主溝を備え、前記陸部は、前記一対のショルダー主溝のタイヤ幅方向外側に形成された一対のショルダー陸部を備え、前記一対のショルダー陸部は、タイヤ周方向に対して交差する方向に延びる複数のスリットと、前記複数のスリットにより区画された複数の陸部要素をタイヤ周方向に並べてなる陸部要素列と、前記陸部要素に設けられ、前記スリットより溝幅が狭い複数のサイプと、を備え、前記陸部要素と当該陸部要素にタイヤ周方向の一方で隣り合うスリットとからなる繰り返し要素のタイヤ周方向長さをピッチ長とすると、前記陸部要素列は、前記ピッチ長が異なる複数種類の前記繰り返し要素をタイヤ周方向に並べてなり、最もピッチ長の短い繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数が、最もピッチ長の長い繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数より少なく、車両外側に位置する前記ショルダー陸部に設けられた前記サイプの数が、車両内側に位置する前記ショルダー陸部に設けられた前記サイプの数より少ないものである。
【0009】
本発明の好ましい態様において、タイヤ1周分の前記繰り返し要素の数をピッチ数、タイヤ1周分のタイヤ周方向長さを前記ピッチ数で除した長さを平均ピッチ長とすると、前記平均ピッチ長より短いピッチ長の繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数が、前記平均ピッチ長より長いピッチ長の繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数より少なくてもよい。
【0010】
本発明の他の好ましい態様において、前記複数のサイプのタイヤ幅方向内側端が、前記複数のスリットの前記タイヤ幅方向内側端よりタイヤ幅方向内側に位置してもよい。
【0011】
本発明の他の好ましい態様において、前記複数のサイプのタイヤ幅方向内側端から前記複数のスリットの前記タイヤ幅方向内側端までのタイヤ幅方向の長さが3mm以上であってもよい。
【0012】
本発明の他の好ましい態様において、前記一対のショルダー陸部は、前記ショルダー主溝に隣接して設けられ、前記スリット及び前記サイプにより分断されることなくタイヤ周方向に連続して延びる連続部を備えてもよい。この場合において、前記連続部のタイヤ幅方向に沿った長さAと、接地幅Wとの比A/Wが0.05以上0.15以下であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操縦安定性を確保しつつ、ピッチノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの断面図。
図2図1の空気入りタイヤのトレッド部の平面図。
図3】本発明の変更例の空気入りタイヤのトレッド部の平面図。
図4】比較例1の空気入りタイヤのトレッド部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
なお、以下の説明において、タイヤ接地時とは、空気入りタイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた時のことである。接地面とは、タイヤ接地時において、空気入りタイヤと路面とが接触する面のことである。接地端とは、タイヤ接地時において、路面に接地するトレッド面のタイヤ幅方向端部のことである。接地幅とは、タイヤ幅方向両側の接地端の幅(間隔)のことである。サイプとは、タイヤ接地時に接地面への開口部が閉じる溝のことであり、例えば、幅が2mm未満の狭い溝のことを意味する。周方向溝及びスリットは、サイプより幅が広く、タイヤ接地時に接地面への開口部が閉じない溝のことであり、例えば、幅が2mm以上の溝を意味する。
【0017】
また、以下の説明における空気入りタイヤの特徴や各種寸法は、特に記載が無い場合は、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤの無負荷状態でのものである。
【0018】
ここで、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」のことである。また、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOAD CAPACITY」のことである。
【0019】
図1及び図2に示す本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤは、左右一対のビード部1と、ビード部1からタイヤ径方向外方に延びる左右一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向外方端同士を繋いで接地面を構成するトレッド部3とを備える。この空気入りタイヤは、車両への装着の向きが指定されたタイヤであり、すなわち、車両に装着する際の車両外側に装着される面と車両内側に装着される面とが予め定められている。図1及び図2の左側が車両装着姿勢において車両外側に配置され、図1の右側が車両装着姿勢において車両内側に配置される。
【0020】
なお、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図において符号RDで示す。タイヤ径方向内側RDiとはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ径方向外側RDoとはタイヤ回転軸から離れる方向である。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図において符号WDで示す。タイヤ幅方向内側WDiとはタイヤ赤道面CLに近づく方向であり、タイヤ幅方向外側WDoとはタイヤ赤道面CLから離れる方向である。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心とした円周上の方向であり、図において矢印CDで示す。
【0021】
ビード部1には、ゴム被覆したビードワイヤを積層巻回した収束体よりなる環状のビードコア11が埋設されている。そのビードコア11のタイヤ径方向外側RDoには、ビードフィラー12が配置されている。
【0022】
空気入りタイヤは、一対のビード部1間に跨がってトロイダル状に延びるカーカス層4を備える。カーカス層4は、トレッド部3から両側のサイドウォール部2を経てビード部1に至り、ビード部1においてビードコア11の周りにタイヤ幅方向内側WDiから外側WDoに折り返されることにより、カーカス層4の両端部が係止されている。カーカス層4は、有機繊維コードからなるカーカスコードをタイヤ周方向CDに対して実質上直角になるように配列しゴムで被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライからなる。
【0023】
サイドウォール部2では、カーカス層4の外側に、空気入りタイヤの外壁面を構成するサイドウォールゴム6が設けられている。サイドウォールゴム6のタイヤ径方向内側RDiには、少なくともリムフランジに接触する部分にリムストリップゴムを設けてもよい。
【0024】
カーカス層4の内側には、空気入りタイヤTの内周面を構成するインナーライナー部材5が設けられている。すなわち、インナーライナー部材5は、トレッド部3からその左右両側のサイドウォール部2を経てビード部1に至る、タイヤ内面の全体を覆うように設置されている。
【0025】
トレッド部3では、カーカス層4の外周側にベルト7が設けられている。ベルト7は、スチールコードやアラミド繊維などのベルトコードをタイヤ周方向CDに対して10°~35°の傾斜角度で配列した、少なくとも2枚の交差ベルトプライからなる。ベルト7の外周側には、接地面を構成するトレッドゴム8が設けられている。
【0026】
図2に示されるように、トレッド部3の表面には、タイヤ周方向CDに延びる3本の周方向溝が、タイヤ幅方向WDに間隔をおいて設けられている。3本の周方向溝は、タイヤ赤道面CLに位置するセンター主溝32と、最も車両外側に設けられた外側ショルダー主溝33と、最も車両内側に設けられた内側ショルダー主溝34である。本実施形態では、外側ショルダー主溝33及び内側ショルダー主溝34が、センター主溝32のタイヤ幅方向外側WDoに設けられた一対のショルダー主溝である。
【0027】
トレッド部3は、上記3本の周方向溝32,33,34により形成された複数の陸部36、37、38、39を備える。
【0028】
具体的には、トレッド部3は、センター主溝32と外側ショルダー主溝33との間に形成されたセンター陸部36と、センター主溝32と内側ショルダー主溝34との間に形成されたセンター陸部37と、外側ショルダー主溝33と車両外側の接地端40との間に形成された外側ショルダー陸部38と、内側ショルダー主溝34と車両内側の接地端41との間に形成された内側ショルダー陸部39とを備える。本実施形態では、外側ショルダー陸部38及び内側ショルダー陸部39が、一対のショルダー主溝33,34のタイヤ幅方向外側WDoに形成された一対のショルダー陸部である。
【0029】
センター陸部36,37には、周方向溝32,33,34に交差する方向に延びる複数の横溝42がタイヤ周方向CDに間隔をあけて設けられている。
【0030】
車両外側の外側ショルダー陸部38は、タイヤ周方向CDに交差する方向に延びる複数のスリット43と、タイヤ周方向CDに交差する方向に延びる複数のサイプ44と、複数の陸部要素46a,46b,46c,46d,46eを有する陸部要素列47と、タイヤ周方向CDに連続する連続部45とを備える。
【0031】
スリット43は、一定の幅で車両外側の接地端40からタイヤ幅方向内側WDiへ延び、外側ショルダー主溝33へ貫通することなく、外側ショルダー陸部38内で終端している。このようなスリット43は、タイヤ周方向CDに間隔を開けて複数設けられている。タイヤ周方向CDに隣り合うスリット43の間には陸部要素46a,46b,46c,46d,46eが形成されている。陸部要素46a,46b,46c,46d,46eは、タイヤ周方向CDの一方で隣り合うスリット43とで、陸部要素列47を構成する繰り返し単位(1ピッチ)である繰り返し要素55を構成する。
【0032】
陸部要素列47は、外側ショルダー陸部38の接地端40側において、ピッチ長(繰り返し要素55a,55b,55c,55d,55eのタイヤ周方向長さ)が異なる複数種類の繰り返し要素55a,55b,55c,55d,55eをタイヤ周方向CDに所定のピッチ数(タイヤ1周分の繰り返し要素55a,55b,55c,55d,55eの総数)Nだけ並べることで構成されている。
なお、ピッチ長とは、図2に示すように、繰り返し要素のタイヤ周方向長さである。また、ピッチ数Nとは、外側ショルダー陸部38又は内側ショルダー陸部39におけるタイヤ1周分の繰り返し要素の総数である。
【0033】
図2に示す例では、ピッチ長Pが異なる5種類の繰り返し要素から陸部要素列47が構成されている。具体的には、ピッチ長が大きいものから順に、ピッチ長Paの繰り返し要素55a、ピッチ長Pbの繰り返し要素55b、ピッチ長Pcの繰り返し要素55c、ピッチ長Pdの繰り返し要素55d及びピッチ長Peの繰り返し要素55eから陸部要素列47が構成されている。繰り返し要素55aが2つ、繰り返し要素55bが2つ、繰り返し要素55cが2つ、繰り返し要素55dが2つ及び繰り返し要素55eが4つタイヤ周方向CDに並んだ図2に示すような要素列を1周期すると、外側ショルダー陸部38は、この要素列がタイヤ周方向CDに複数周期(例えば、4周期)繰り返し配置されている。
【0034】
サイプ44は、1~4番目にピッチ長の長い繰り返し要素55a,55b,55c,55dを構成する陸部要素46a,46b,46c,46dに対して1つずつ設けられ、最もピッチ長の短い繰り返し要素55eを構成する陸部要素46eに設けられていない。
【0035】
サイプ44は、外側ショルダー陸部38をタイヤ幅方向WDに貫通することなく、タイヤ幅方向WDの両端部が、外側ショルダー陸部38内に配置されている。
【0036】
また、サイプ44のタイヤ幅方向内側端44aは、スリット43のタイヤ幅方向内側端43aよりタイヤ幅方向内側WDiへ延びてもよい。その場合、サイプ44のタイヤ幅方向内側端44aからスリット43のタイヤ幅方向内側端43aまでのタイヤ幅方向WDに沿った長さCoが3mm以上であることが好ましい。
【0037】
連続部45は、陸部要素列47と外側ショルダー主溝33との間に設けられている。連続部45は、スリット43やサイプ44によって分断されることなく、タイヤ周方向CDに連続して延びる陸部である。
【0038】
このような連続部45のタイヤ幅方向WDに沿った長さ、つまり、サイプ44のタイヤ幅方向内側端44aから内側ショルダー主溝34までのタイヤ幅方向WDに沿った長さAoと、トレッド部3の接地幅Wとの比σo(=Ao/W)が、0.05以上0.15以下であることが好ましい。
【0039】
車両内側の内側ショルダー陸部39は、タイヤ周方向CDに交差する方向に延びる複数のスリット48と、タイヤ周方向CDに交差する方向に延びる複数のサイプ49と、複数の陸部要素51a、51b,51c,51d,51eからなる陸部要素列52と、タイヤ周方向CDに連続する連続部50とを備える。内側ショルダー陸部39は、外側ショルダー陸部38に設けられたサイプ44の総数より多くのサイプ49が設けられている点で外側ショルダー陸部38と異なる。
【0040】
すなわち、スリット48は、一定の幅で車両内側の接地端41からタイヤ幅方向内側WDiへ延び、内側ショルダー主溝34へ貫通することなく、内側ショルダー陸部39内で終端している。このようなスリット48は、外側ショルダー陸部38のスリット43と同様、タイヤ周方向CDに間隔を開けて複数設けられている。タイヤ周方向CDに隣り合うスリット48の間には陸部要素51a、51b,51c,51d,51eが形成されている。陸部要素51a、51b,51c,51d,51eは、タイヤ周方向CDの一方で隣り合うスリット48とで、陸部要素列52を構成する繰り返し単位(1ピッチ)である繰り返し要素56を構成する。
【0041】
陸部要素列52は、内側ショルダー陸部39の接地端41側において、ピッチ長が異なる複数種類の繰り返し要素56a,56b,56c,56d,56eをタイヤ周方向CDに所定のピッチ数Nだけ並べることで構成されている。
【0042】
図2に示す例では、外側ショルダー陸部38の陸部要素列47と同様、ピッチ長Pが異なる5種類の繰り返し要素から陸部要素列52が構成されている。具体的には、ピッチ長が大きいものから順に、ピッチ長Paの繰り返し要素56a、ピッチ長Pbの繰り返し要素56b、ピッチ長Pcの繰り返し要素56c、ピッチ長Pdの繰り返し要素56d及びピッチ長Peの繰り返し要素56eから陸部要素列52が構成されている。図2に示すような、繰り返し要素56aが2つ、繰り返し要素56bが2つ、繰り返し要素56cが2つ、繰り返し要素56dが2つ及び繰り返し要素56eが4つタイヤ周方向CDに並んだ要素列を1周期すると、内側ショルダー陸部39は、この要素列がタイヤ周方向CDに複数周期(例えば、4周期)繰り返し配置されている。
【0043】
サイプ49は、1,2及び3番目にピッチ長の長い繰り返し要素56a,56b,56cを構成する陸部要素46a,46b,46cに対して2つずつ設けられ、最もピッチ長の短い繰り返し要素56eと2番目にピッチ長の短い繰り返し要素56dを構成する陸部要素46e,46dに対して1つずつ設けられている。
【0044】
サイプ49は、内側ショルダー陸部39をタイヤ幅方向WDに貫通することなく、タイヤ幅方向WDの両端部が、内側ショルダー陸部内39に配置されている。
【0045】
また、サイプ49のタイヤ幅方向内側端49aは、スリット48のタイヤ幅方向内側端48aよりタイヤ幅方向内側WDiへ延びてもよい。その場合、サイプ49のタイヤ幅方向内側端49aからスリット48のタイヤ幅方向内側端48aまでのタイヤ幅方向WDに沿った長さCiが3mm以上であることが好ましい。
【0046】
なお、本実施形態において、サイプ49のタイヤ幅方向内側端49aからスリット48のタイヤ幅方向内側端48aまでの長さCiは、サイプ44のタイヤ幅方向内側端44aからスリット43のタイヤ幅方向内側端43aまでの長さCoと同じ長さに設定されている。
【0047】
連続部50は、陸部要素列52と内側ショルダー主溝34との間に設けられている。連続部50は、スリット48やサイプ49によって分断されることなく、タイヤ周方向CDに連続して延びる陸部である。
【0048】
このような連続部50のタイヤ幅方向WDに沿った長さ、つまり、サイプ49のタイヤ幅方向内側端49aから内側ショルダー主溝34までのタイヤ幅方向WDに沿った長さAiと、トレッド部3の接地幅Wとの比σi(=Ai/W)が、0.05以上0.15以下であることが好ましい。
【0049】
なお、本実施形態において、内側ショルダー陸部39に設けられた連続部50のタイヤ幅方向WDに沿った長さAiは、外側ショルダー陸部38に設けられた連続部45のタイヤ幅方向WDに沿った長さAoと同じ長さに設定されている。
【0050】
以上のような本実施形態の空気入りタイヤでは、外側ショルダー陸部38と内側ショルダー陸部39との間でサイプ44、49の数が異なっているため、ピッチピークを分散させてピッチノイズを低減することができる。しかも、外側ショルダー陸部38に設けられたサイプ44の数が、内側ショルダー陸部39に設けられたサイプ49の数より少ないため、車両旋回時などに比較的大きさ荷重を受ける外側ショルダー陸部38の剛性低下を抑えることができ、操縦安定性能を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態では、外側ショルダー陸部38にピッチ長が異なる複数種類の繰り返し要素55a,55b,55c,55d,55eが設けられ、内側ショルダー陸部39にピッチ長が異なる複数種類の繰り返し要素56a,56b,56c,56d,56eが設けられているため、ピッチノイズの周波数を分散することができそのピークを下げることができる。しかも、外側ショルダー陸部38において、最もピッチ長の短い繰り返し要素55eを構成する陸部要素46eに設けられたサイプ44の数が、最もピッチ長の長い繰り返し要素55aを構成する陸部要素46aに設けられたサイプ44の数より少ない。内側ショルダー陸部39も同様、最もピッチ長の短い繰り返し要素56eを構成する陸部要素51eに設けられたサイプ49の数が、最もピッチ長の長い繰り返し要素56aを構成する陸部要素51aに設けられたサイプ49の数より少ない。これにより、スリット43,48及びサイプ44,49がタイヤ周方向CDにおいて局所的に集中することがなく、ショルダー陸部38、39の剛性低下を抑えることができ、ピッチノイズの低減と、操縦安定性能の確保とを両立することができる。
【0052】
また、本実施形態では、外側ショルダー陸部38及び内側ショルダー陸部39が連続部45,50を備えているため、路面との接触面積を確保することができ、操縦安定性能及び制動性能を向上することができる。
【0053】
しかも、連続部45,50は、サイプ44、49によるショルダー陸部38、39の剛性低下を抑えるため、ピッチノイズの低減を図るためにサイプ44,49の数を増やしてもショルダー陸部38、39の剛性低下を抑えることができる。そのため、ピッチノイズの低減と、操縦安定性能の確保とを両立することができる。
【0054】
また、本実施形態のように、ショルダー陸部38、39に設けられたサイプ44,49のタイヤ幅方向内側端44a、49aが、スリット43、48のタイヤ幅方向内側端43a、48aよりタイヤ幅方向内側WDiへ延びている場合、ショルダー陸部38の剛性をタイヤ幅方向内側WDiから外側WDoへ段階的に低下させることでき、ショルダー陸部38、39の接地性を改善することができる。特に、サイプ44、49のタイヤ幅方向内側端44a、49aからスリット43,48のタイヤ幅方向内側端43a,48aまでのタイヤ幅方向WDに沿った長さCo、Ciが3mm以上であると、ショルダー陸部38、39の接地性を顕著に改善することができ、操縦安定性能を向上することができる。
【0055】
(変更例)
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0056】
上記実施形態では、外側ショルダー陸部38において、1~4番目にピッチ長の長い繰り返し要素55a,55b,55c,55dを構成する陸部要素46a,46b,46c,46dに対してサイプ44を1つずつ設け、最もピッチ長の短い繰り返し要素55eを構成する陸部要素46eにサイプ44を設けない場合に説明したが、最もピッチ長の短い繰り返し要素55aを構成する陸部要素46aに設けられたサイプ44の数が、最もピッチ長の長い繰り返し要素55eを構成する陸部要素46eに設けられたサイプ44の数より少なければ、本発明において、各陸部要素46a、46b,46c,46d,46eに設けるサイプ44の数は特に限定されない。
【0057】
また、上記実施形態では、内側ショルダー陸部39において、1,2及び3番目にピッチ長の長い繰り返し要素56a,56b,56cを構成する陸部要素46a,46b,46cに対して2つずつサイプ49を設け、最もピッチ長の短い繰り返し要素56eと2番目にピッチ長の短い繰り返し要素56dを構成する陸部要素46e,46dに対して1つずつサイプ49を設ける場合に説明したが、外側ショルダー陸部38と同様、最もピッチ長の短い繰り返し要素56aを構成する陸部要素51aに設けられたサイプ49の数が、最もピッチ長の長い繰り返し要素56eを構成する陸部要素51eに設けられたサイプ49の数より少なければ、本発明において、各陸部要素51a、51b,51c,51d,51eに設けるサイプ49の数は特に限定されない。
【0058】
例えば、タイヤ1周分のタイヤ周方向長さをピッチ数Nで除した長さを平均ピッチ長Laとすると、平均ピッチ長Laより長いピッチ長の繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプ44,49の数より少ない数のサイプ44,49を、平均ピッチ長Laより短いピッチ長の繰り返し要素を構成する陸部要素に設けてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、外側ショルダー陸部38及び内側ショルダー陸部39が連続部45,50を備えている場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図3に示すように、外側ショルダー陸部38及び内側ショルダー陸部39に設けられたスリット43,48及びサイプ44,49がショルダー主溝33,34に連通して、外側ショルダー陸部38及び内側ショルダー陸部39に連続部が設けられていなくてもよい。あるいは、外側ショルダー陸部38及び内側ショルダー陸部39のいずれか一方に連続部45,50を設け、他方に連続部が設けられていなくてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、3本の周方向溝をトレッド部3に設けた場合について説明したが、主溝の本数は3本には限定されず、例えば、4本や5本でもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、内側ショルダー陸部39に設けられた連続部50のタイヤ幅方向WDに沿った長さAiを、外側ショルダー陸部38に設けられた連続部45のタイヤ幅方向WDに沿った長さAoと同じ長さに設定したが、連続部50の長さAiを連続部45の長さAoより大きく設けてもよい。このように内側ショルダー陸部39において連続部50の長さAiを大きくすることで、内側ショルダー陸部39の陸部要素46a,46b,46c,46d,46eに多くのサイプ49を設けても、内側ショルダー陸部39の剛性を確保しやすくなるため、ピッチノイズの低減と操縦安定性能の向上を図ることができる。
【0062】
また、内側ショルダー陸部39に設けられた連続部50の長さAiを外側ショルダー陸部38に設けられた連続部45の長さAoより小さく設けてもよい。このように外側ショルダー陸部38において連続部45の長さAoを大きくすることで、外側ショルダー陸部38の剛性を確保しやすくなり、操縦安定性能を向上することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、サイプ49のタイヤ幅方向内側端49aからスリット48のタイヤ幅方向内側端48aまでの長さCiを、サイプ44のタイヤ幅方向内側端44aからスリット43のタイヤ幅方向内側端43aまでの長さCoと同じ長さに設定したが、内側ショルダー陸部39における長さCiを外側ショルダー陸部38における長さCoより大きく設定したり、あるいは、内側ショルダー陸部39における長さCiを外側ショルダー陸部38における長さCoより小さく設定してもよい。
【実施例
【0064】
上記実施形態の効果を確認するために、実施例および比較例のタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15、空気圧:220kPa、リムサイズ:15X6.0)について、ノイズ性能及び操縦安定性能を評価した。
【0065】
比較例1のタイヤは、図4に示すように、外側ショルダー陸部に設けられた複数の陸部要素の全てに1つずつサイプが設けられ、内側ショルダー陸部に設けられた複数の陸部要素の全てに2つずつサイプが設けられており、最もピッチ長の短い繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプ数が、最もピッチ長の長い繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプ数と同一である。なお、比較例1のその他の構成は実施例1と同一である。
【0066】
実施例1~5のタイヤは、基本的な構成は上記実施形態で説明した通りであり、下記表1に示すように各諸元を設定した。
【0067】
各評価方法は以下の通りである。
【0068】
・ノイズ性能:試作タイヤを試験車両に装着し、車室内運転席の耳の位置にマイクロフォンを設置し、乾燥状態の平坦なアスファルト路面を80km/hで走行した時の音圧を測定した。評価結果は測定値の逆数を用い、比較例1の値を100とする指数で示した。指数が大きいほどロードノイズ低減効果が大きく良好である。
【0069】
・操縦安定性能:試作タイヤを試験車両に装着し、実車による官能評価を行った。評価は、乾燥状態のハンドリング試験路(アスファルト舗装路)を走行し、連続したコーナーでの切り返し及びコーナリングを行ったときの車両の安定性を評価した。比較例1を100とした指数で表示した。指数が大きいほど操縦安定性が良好であることを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
結果は、表1に示す通りである。比較例1に対して、最もピッチ長の短い繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数が、最もピッチ長の長い繰り返し要素を構成する陸部要素に設けられたサイプの数より少なく設定された実施例1~5では、ノイズ性能と操縦安定性能とを両立することができた。
【符号の説明】
【0072】
1…ビード部、2…サイドウォール部、3…トレッド部、4…カーカス層、5…インナーライナー部材、6…サイドウォールゴム、7…ベルト、8…トレッドゴム、32…センター主溝、33…外側ショルダー主溝、34…内側ショルダー主溝、36…センター陸部、37…センター陸部、38…外側ショルダー陸部、39…内側ショルダー陸部、40…車両外側の接地端、41…車両内側接地端、42…横溝、43…スリット、44…サイプ、45…連続部、46…陸部要素、47…陸部要素列、48…スリット、49…サイプ、50…連続部、51…陸部要素、52…陸部要素列、55…繰り返し要素、56…繰り返し要素
図1
図2
図3
図4