(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20220907BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20220907BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20220907BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C5/00 H
B60C11/13 B
B60C11/03 100C
B60C11/12 D
B60C11/03 B
(21)【出願番号】P 2018236566
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 由彦
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-283822(JP,A)
【文献】特開2015-066988(JP,A)
【文献】特開2004-182090(JP,A)
【文献】特開2009-137412(JP,A)
【文献】特開2015-003700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数の主溝によってタイヤ周方向に延びる複数のリブが形成された空気入りタイヤであって、
前記リブにはタイヤ周方向に延びる周方向サイプが形成されており、
前記主溝及び前記周方向サイプの口元に位置する両縁部のうち、車両装着姿勢で、タイヤ赤道線よりも車両外側に位置する縁部にのみ、タイヤ周方向に延びる面取り部が形成されている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記面取り部は、車両装着姿勢でタイヤ赤道線よりも車両外側に位置する前記主溝及び前記周方向サイプに、少なくとも形成されている、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記面取り部は、タイヤ幅方向における幅が、1mm以上3mm以下である、
請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記面取り部は、タイヤ径方向における深さが、当該面取り部が形成されている前記主溝又は前記周方向サイプの深さの15%以上40%以下である、
請求項1~3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記周方向サイプには、残余の部分に比して深さが浅い、嵩上げ部が形成されている、
請求項1~4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記リブには、タイヤ幅方向に延びており、前記周方向サイプに連通する横スリットが形成されており、
前記嵩上げ部は、前記周方向サイプと前記横スリットとの交差部を挟んだ、タイヤ周方向の両側に形成されている、
請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記周方向サイプと前記横スリットとによってタイヤ周方向の両側に区画された角部のうち、鋭角側の角部に形成された前記嵩上げ部は、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成されている、
請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記リブには、タイヤ幅方向に延びており、前記周方向サイプに連通する幅方向サイプが形成されており、
前記嵩上げ部は、前記周方向サイプと前記幅方向サイプとよってタイヤ周方向に区画される角部のうち鋭角側の角部に接続されている、
請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記鋭角側の角部に形成された嵩上げ部は、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成されている、
請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッド部をタイヤ周方向に延びる複数の主溝によって所謂リブパターンに形成された空気入りタイヤが知られている。特許文献1には、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる一対のセンター主溝と、このタイヤ幅方向外側それぞれにおいてタイヤ周方向にジグザグ状に延びる一対のショルダー主溝とを有する、空気入りタイヤが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、このタイヤ幅方向外側に区画されたショルダーリブにおいてタイヤ周方向に延びる周方向サイプと、を有する空気入りタイヤが開示されている。
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、センター主溝の口元の両縁部にタイヤ周方向に延びる面取り部を形成することが開示されている。また、特許文献2の空気入りタイヤでは、周方向サイプの口元の両縁部にタイヤ周方向に延びる面取り部を形成することが開示されている。主溝及び/又は周方向サイプ(以下、周方向溝と称する場合がある)の口元に面取り部を形成することによって、周方向溝の溝容積が増大すると共に、周方向溝への路面上の水分を導入させやすくなるため、ウェット性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-278414号
【文献】国際公開第2014/048635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
周方向溝の口元の両縁部に面取り部を形成すると、リブの接地面積が減少するため、グリップ力が低下し、この結果、ドライ路面における操縦安定性が低下しやすい。
【0007】
本発明は、リブパターンに形成された空気入りタイヤにおいて、ウェット性能を向上させながら、ドライ路面における操縦安定性の低下を抑制できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数の主溝によってタイヤ周方向に延びる複数のリブが形成された空気入りタイヤであって、
前記リブにはタイヤ周方向に延びる周方向サイプが形成されており、
前記主溝及び前記周方向サイプの口元に位置する両縁部のうち、車両装着姿勢で、タイヤ赤道線よりも車両外側に位置する縁部にのみ、タイヤ周方向に延びる面取り部が形成されている、空気入りタイヤを提供する。
【0009】
本発明によれば、主溝及び周方向サイプの口元に位置する両縁部のうち一方側にのみ、タイヤ周方向に延びる面取り部が形成されているので、両縁部に面取り部を形成する場合に比して、リブの接地面積を確保しやすい。これによって、ドライ路面においては、面取り部を形成したことによる操縦安定性の低下を抑制できる。また、ウェット路面においては、面取り部によって、主溝及び周方向サイプへ路面上の水分を導入させやすく且つ溝容積が増大するので、ウェット性能が向上する。
【0010】
特に、リブは、車両内側の縁部に接地圧が集中しやすいが、該接地圧の集中しやすい縁部に対応する主溝及び周方向サイプの車両外側の縁部に面取り部が形成されている。これによって、リブの車両内側の縁部における接地圧の集中が抑制されるので、当該縁部における偏摩耗が抑制される。
【0011】
したがって、面取り部を形成しながら、ドライ路面における操縦安定性の悪化を抑制しつつ、ウェット性能を向上させることができる。さらに、リブの車両内側の縁部における偏摩耗を抑制できる。
【0012】
好ましくは、前記面取り部は、車両装着姿勢でタイヤ赤道線よりも車両外側に位置する前記主溝及び前記周方向サイプに、少なくとも形成されている。
【0013】
本構成によれば、操舵時や旋回時等において接地圧が特に高くなりやすい車両外側のリブに対応する主溝及び周方向サイプに面取り部を形成することによって、本発明の効果が好適に発揮される。
【0014】
好ましくは、前記面取り部は、タイヤ幅方向における幅が、1mm以上3mm以下である。
【0015】
本構成によれば、面取り部による上記効果を好適に発揮させながら、面取り部が過度に大きくなることが抑制される。面取り部の幅が1mmより小さいと、ウェット性能の向上代が少なくなると共にリブの車両内側の縁部における偏摩耗の抑制効果が少なくなる。面取り部の幅が3mmより大きいと、接地面積が減少するため、ドライ路面における操縦安定性が低下しやすい。
【0016】
好ましくは、前記面取り部は、タイヤ径方向における深さが、当該面取り部が形成されている前記主溝又は前記周方向サイプの深さの15%以上40%以下である。
【0017】
本構成によれば、面取り部による上記効果を好適に発揮させながら、面取り部が過度に大きくなることが抑制される。面取り部の深さが主溝又は周方向サイプの深さの15%より浅いと、ウェット性能の向上代が少なくなると共にリブの車両内側の縁部における偏摩耗の抑制効果が少なくなる。面取り部の深さが40%より深いと、接地面積が減少しやすいため、ドライ路面における操縦安定性が低下しやすい。
【0018】
好ましくは、前記周方向サイプには、残余の部分に比して深さが浅い、嵩上げ部が形成されている。
【0019】
本構成によれば、周方向サイプによってタイヤ幅方向に区画されたリブが、嵩上げ部によってタイヤ幅方向に連結されるので、リブ剛性の低下が抑制される。
【0020】
好ましくは、前記リブには、タイヤ幅方向に延びており、前記周方向サイプに連通する横スリットが形成されており、
前記嵩上げ部は、前記周方向サイプと前記横スリットとの交差部を挟んだ、タイヤ周方向の両側に形成されている。
【0021】
本構成によれば、周方向サイプによりタイヤ幅方向に区画されたリブの一方側部分のうち、さらに横スリットによりタイヤ周方向に区画された部分が、嵩上げ部によって、周方向サイプを挟んでタイヤ幅方向に対向する、リブの他方側部分に連結されるので、リブ剛性の低下が抑制される。
【0022】
好ましくは、前記周方向サイプと前記横スリットとによってタイヤ周方向の両側に区画された角部のうち、鋭角側の角部に形成された前記嵩上げ部は、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成されている。
【0023】
本構成によれば、周方向サイプと横スリットとによってタイヤ周方向の両側に区画された角部のうち、相対的に剛性が低い鋭角側の角部が、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成された嵩上げ部によってタイヤ幅方向に連結されているので、リブ剛性の低下がより好適に抑制される。
【0024】
好ましくは、前記リブには、タイヤ幅方向に延びており、前記周方向サイプに連通する幅方向サイプが形成されており、
前記嵩上げ部は、前記周方向サイプと前記幅方向サイプとよってタイヤ周方向に区画される角部のうち鋭角側の角部に接続されている。
【0025】
本構成によれば、周方向サイプによりタイヤ幅方向に区画されたリブの一方側部分のうち、さらに幅方向サイプによってタイヤ周方向に区画された角部であって相対的に剛性が低い鋭角側の角部が、嵩上げ部によって、周方向サイプを挟んでタイヤ幅方向に対向する、リブの他方側部分に連結されるので、リブ剛性の低下が抑制される。
【0026】
好ましくは、前記鋭角側の角部に形成された嵩上げ部は、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成されている。
【0027】
本構成によれば、周方向サイプと幅方向サイプとによってタイヤ周方向の両側に区画された角部のうち、相対的に剛性が低い鋭角側の角部が、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成された嵩上げ部によってタイヤ幅方向に連結されているので、リブ剛性の低下がより好適に抑制される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、リブパターンに形成された空気入りタイヤにおいて、ウェット性能を向上させながら、ドライ路面における操縦安定性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分展開図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部2の部分展開図である。
図1において、空気入りタイヤ1は、タイヤ幅方向TWにおけるTW1側(
図1において下側)が、車両装着姿勢で車両外側に位置し、TW2側(
図1において上側)が車両装着姿勢で車両内側に位置するように構成されている。また、タイヤ周方向TCのうち、
図1において左側をTC1側とし、右側をTC2側として、以下説明する。
【0032】
(トレッド部の全体構成)
トレッド部2には、タイヤ周方向に直線状に延びる複数の主溝10が形成されている。トレッド部2は、複数の主溝10によって、タイヤ周方向に直線状に延びる複数のリブ20に区画された、所謂リブパターンに形成されている。
【0033】
複数の主溝10には、外側センター主溝11、内側センター主溝12、外側ショルダー主溝13、及び内側ショルダー主溝14が含まれている。複数のリブ20には、センターリブ21、外側メディエイトリブ22、内側メディエイトリブ23、外側ショルダーリブ24、及び内側ショルダーリブ25が含まれている。
【0034】
外側センター主溝11及び内側センター主溝12は、タイヤ赤道線CLを挟んだ両側に形成されており、タイヤ幅方向TW1側に外側センター主溝11が位置しており、タイヤ幅方向TW2側に内側センター主溝12が位置している。外側ショルダー主溝13は、外側センター主溝11のタイヤ幅方向TW1側に位置している。内側ショルダー主溝14は、内側センター主溝12のタイヤ幅方向TW2側に位置している。
【0035】
一対の外側センター主溝11及び内側主溝12の間にセンターリブ21が区画されている。外側センター主溝11及び外側ショルダー主溝13の間に外側メディエイトリブ22が区画されている。内側センター主溝12及び内側ショルダー主溝14の間に内側メディエイトリブ23が区画されている。外側ショルダー主溝13のタイヤ幅方向TW1側に外側ショルダーリブ24が区画されている。内側ショルダー主溝14のタイヤ幅方向TW2側に内側ショルダーリブ25が区画されている。
【0036】
外側メディエイトリブ22及び外側ショルダーリブ24には、タイヤ周方向に直線状に延びる、周方向サイプ30がそれぞれ形成されている。周方向サイプ30には、外側メディエイトリブ22に形成されたメディエイト周方向サイプ31と、外側ショルダーリブ24に形成されたショルダー周方向サイプ32とが含まれている。
【0037】
外側メディエイトリブ22は、メディエイト周方向サイプ31によって、タイヤ幅方向TW1側に位置するメディエイトリブ第1部分22aと、タイヤ幅方向TW2側に位置するメディエイトリブ第2部分22bとに区画されている。
【0038】
同様に、外側ショルダーリブ24は、ショルダー周方向サイプ32によって、タイヤ幅方向TW1側に位置するショルダーリブ第1部分24aと、タイヤ幅方向TW2側に位置するショルダーリブ第2部分24bとに区画されている。
【0039】
(外側ショルダーリブ)
外側ショルダーリブ24には、複数のラグ溝54及び複数のショルダー幅方向サイプ50が形成されている。
【0040】
複数のラグ溝54は、タイヤ幅方向TWに延びており、タイヤ周方向TCに互いに間隔を空けて形成されている。ラグ溝54は、外側ショルダーリブ24のタイヤ幅方向TW1側の端部に開口した外端部54aから、タイヤ幅方向TW2側に延び、外側ショルダーリブ24内に位置する内端部54bで終端している。
【0041】
複数のショルダー幅方向サイプ50には、タイヤ幅方向TW2に向かってタイヤ周方向TC1側に傾斜した方向に延びる、第1~第3ショルダー幅方向サイプ51~53が含まれている。
【0042】
第1ショルダー幅方向サイプ51は、ラグ溝54の内端部54bと外側ショルダー主溝13とをタイヤ幅方向TWに連通している。第2ショルダー幅方向サイプ52は、ラグ溝54の内端部54bとショルダー周方向サイプ32とを連通している。第3ショルダー幅方向サイプ53は、第2ショルダー幅方向サイプ52の延長線上に沿って概ね位置しておりショルダー周方向サイプ32に対してタイヤ幅方向TW2側に間隔を空けた位置からタイヤ幅方向TW2側に延び、外側ショルダー主溝13に連通している。
【0043】
第1ショルダー幅方向サイプ51と、第2及び第3ショルダー幅方向サイプ52,53とは、タイヤ周方向TCに交互に形成されている。
【0044】
(外側メディエイトリブ)
外側メディエイトリブ22には、複数のメディエイト幅方向サイプ70が形成されている。複数のメディエイト幅方向サイプ70には、タイヤ幅方向TW2に向かってタイヤ周方向TC1側に傾斜した方向に延びる、第1~第4メディエイト幅方向サイプ71~74が含まれている。
【0045】
第1及び第2メディエイト幅方向サイプ71,72は、第1ショルダー幅方向サイプ51の延長線上に沿って概ね位置している。第3及び第4メディエイト幅方向サイプ73,74は、第2及び第3ショルダー幅方向サイプ52,53の延長線上に沿って概ね位置している。
【0046】
第1メディエイト幅方向サイプ71は、メディエイトリブ第1部分22aのうち、外側ショルダー主溝13に対してタイヤ幅方向TW2側に間隔を空けた位置からタイヤ幅方向TW2側に延び、メディエイト周方向サイプ31に連通している。第2メディエイト幅方向サイプ72は、メディエイトリブ第2部分22bのうち、メディエイト周方向サイプ31に対してタイヤ幅方向TW2側に間隔を空けた位置からタイヤ幅方向TW2側に延び、外側センター主溝11に連通している。
【0047】
第1及び第2メディエイト幅方向サイプ71,72は、延在方向における略中央部からタイヤ周方向TC1側に屈曲して延びる屈曲部71a,72aを有している。
【0048】
第3メディエイト幅方向サイプ73は、メディエイトリブ第1部分22aのうち、外側ショルダー主溝13に対してタイヤ幅方向TW2側に間隔を空けた位置からタイヤ幅方向TW2側に延び、メディエイト周方向サイプ31に連通している。第3メディエイト幅方向サイプ73は、第1メディエイト幅方向サイプ71よりもタイヤ幅方向TWに短い。
【0049】
第4メディエイト幅方向サイプ74は、メディエイトリブ第2部分22bのうち、メディエイト周方向サイプ31に対してタイヤ幅方向TW2側に間隔を空けた位置からタイヤ幅方向TW2側に延び、外側センター主溝11に連通している。第4メディエイト幅方向サイプ74は、第2メディエイト幅方向サイプ72よりもタイヤ幅方向TWに短い。
【0050】
(センターリブ)
センターリブ21には、複数のセンター幅方向サイプ77が形成されている。複数のセンター幅方向サイプ77は、タイヤ周方向TCに互いに間隔を空けて形成されている。センター幅方向サイプ77は、外側センター主溝11に連通した一端部から、タイヤ幅方向TW2側に向かってタイヤ周方向TC1側に傾斜した方向に延びて、センターリブ21内で終端している。複数のセンター幅方向サイプ77は、第1及び第2メディエイト幅方向サイプ71,72の延長線上に沿って概ね位置している。
【0051】
(周方向面取り部)
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図であり、第1ショルダー幅方向サイプ51、および、第1及び第2メディエイト幅方向サイプ71,72を通る、トレッド部2の断面を示している。
【0052】
図2に示すように、外側センター主溝11、外側ショルダー主溝13、メディエイト周方向サイプ31、及びショルダー周方向サイプ32それぞれの、接地面側の口元部に位置するタイヤ周方向TCに延びる両縁部のうち車両装着状態で車両外側(すなわちタイヤ幅方向TW1側)に位置する縁部には、タイヤ周方向TCに延びる周方向面取り部40が形成されている。
【0053】
周方向面取り部40は、リブ20の接地面から主溝10又は周方向サイプ30の溝側面にかけて、タイヤ幅方向TW2側に向かってタイヤ径方向内側に直線状に傾斜している。
【0054】
周方向面取り部40は、タイヤ幅方向TWにおける幅W1が、1mm以上3mm以下に形成されている。また、周方向面取り部40の深さD1は、当該周方向面取り部40が形成された主溝10又は周方向サイプ30の溝深さD0の15%以上40%以下に設定されている。
【0055】
周方向面取り部40には、外側センター主溝11に形成された第1周方向面取り部41と、外側ショルダー主溝13に形成された第2周方向面取り部42と、内側ショルダー主溝14に形成された第3周方向面取り部43(
図1参照)と、メディエイト周方向サイプ31に形成された第4周方向面取り部44と、ショルダー周方向サイプ32に形成された第5周方向面取り部45とが含まれている。
【0056】
具体的に、外側メディエイトリブ22には、外側センター主溝11、外側ショルダー主溝13、及びメディエイト周方向サイプ31によって区画されたタイヤ周方向TCに延びる縁部のうち、車両装着姿勢で車両内側(すなわちタイヤ幅方向TW2側)となる縁部に第1及び第4周方向面取り部41,44が形成されている。
【0057】
同様に、外側ショルダーリブ24には、外側ショルダー主溝13及びショルダー周方向サイプ32によって区画されたタイヤ周方向TCに延びる縁部のうち、車両装着姿勢で車両内側(すなわちタイヤ幅方向TW2側)となる縁部に第2及び第5周方向面取り部42,45が形成されている。
【0058】
また、
図1に示すように、内側メディエイトリブ23には、内側センター主溝12及び内側ショルダー主溝14によって区画されたタイヤ周方向TCに延びる縁部のうち、車両装着姿勢で車両内側(すなわちタイヤ幅方向TW2側)となる縁部に第3周方向面取り部43が形成されている。
【0059】
一方、外側センター主溝11、外側ショルダー主溝13、内側ショルダー主溝14、メディエイト周方向サイプ31、及びショルダー周方向サイプ32それぞれの、接地面側の口元部に位置するタイヤ周方向に延びる両縁部のうち車両装着状態で車両内側に位置する縁部には、面取り部が形成されていない。すなわち、これらの車両内側に位置する縁部は、リブ20の接地面と主溝10又は周方向サイプ30の溝側面とが略直角に交差する角部として構成されている。
【0060】
(幅方向面取り部)
図1及び
図2に示すように、第1ショルダー幅方向サイプ51、第1及び第2メディエイト幅方向サイプ71,72、及びセンター幅方向サイプ77それぞれの、接地面側の口元部に位置するタイヤ幅方向TWに延びる両縁部のうちタイヤ周方向TCにおける一方側に位置する縁部には、タイヤ幅方向TWに延びる幅方向面取り部60が形成されている。
【0061】
幅方向面取り部60は、リブ20の接地面から幅方向サイプ50,70,77の溝壁面にかけて、タイヤ周方向TCにおいて当該幅方向サイプ50,70,77に向かってタイヤ径方向内側に直線状に傾斜している。
【0062】
幅方向面取り部60には、第1ショルダー幅方向サイプ51に形成された第1幅方向面取り部61と、第1及び第2メディエイト幅方向サイプ71,72それぞれに形成された第2及び第3幅方向面取り部62,63と、センター幅方向サイプ77に形成された第4幅方向面取り部64とが含まれている。
【0063】
図1に示すように、外側ショルダーリブ24には、第1ショルダー幅方向サイプ51によってタイヤ周方向TCの両側に区画された縁部のうちタイヤ周方向TC2側に位置する縁部に、第1幅方向面取り部61が形成されている。第1幅方向面取り部61は、第1ショルダー幅方向サイプ51のうち、タイヤ幅方向TWの途中からタイヤ幅方向TW2側に延び、ショルダー周方向サイプ32を横断して外側ショルダー主溝13に至っている。第1幅方向面取り部61は、面取りの大きさ(幅及び深さ)が、タイヤ幅方向TW2側に向かって徐々に増大している。
【0064】
外側メディエイトリブ22には、第1及び第2メディエイト幅方向サイプ71,72によってタイヤ周方向TCの両側に区画された縁部のうちタイヤ周方向TC2側に位置する縁部に、第2及び第3幅方向面取り部62,63がそれぞれ形成されている。第2及び第3幅方向面取り部62,63は、第1及び第2メディエイト幅方向サイプ71,72の屈曲部71a,72aに対応して形成されており、タイヤ幅方向TW2側に向かって面取りの大きさが徐々に増大している。
【0065】
センターリブ21には、センター幅方向サイプ77によってタイヤ周方向の両側に区画された縁部のうちタイヤ周方向TC1側に位置する縁部に、第4幅方向面取り部64が形成されている。第4幅方向面取り部64は、外側センター主溝11からタイヤ赤道線CLにかけて形成されており、タイヤ幅方向TW2に向かって面取りの大きさが徐々に減少している。
【0066】
幅方向面取り部60を形成することによって、幅方向サイプ50,70,77の溝幅が増大するようになっている。幅方向サイプ50,70,77と幅方向面取り部60とによって、タイヤ幅方向に延びる横スリット90が構成されている。
【0067】
具体的には、センター幅方向サイプ77と第4幅方向面取り部64とによって第1横スリット91が構成されている。第1メディエイト幅方向サイプ71と第2幅方向面取り部62とによって第2横スリット92が構成されている。第2メディエイト幅方向サイプ72と第3幅方向面取り部63とによって第3横スリット93が構成されている。第1ショルダー幅方向サイプ51と第1幅方向面取り部61とによって第4横スリット94が構成されている。
【0068】
(周方向サイプの嵩上げ部)
図3は、メディエイト周方向サイプ31に沿ったトレッド部2の断面図であり、メディエイト周方向サイプ31のうち、第2横スリット92及び第3メディエイト幅方向サイプ73が連通している部分の断面を示している。
【0069】
図3に示すように、メディエイト周方向サイプ31には、溝底から隆起しており、残余の部分に比して溝深さが浅くなるように嵩上げされた複数の嵩上げ部80が形成されている。嵩上げ部80は、外側メディエイトリブ22のうち、メディエイト周方向サイプ31によってタイヤ幅方向TWに区画された部分をタイヤ幅方向TWに連結している。
【0070】
嵩上げ部80のタイヤ径方向における高さH1は、当該嵩上げ部80が形成された部分の、メディエイト周方向サイプ31の溝深さD0の10%以上30%以下に設定されている。
【0071】
複数の嵩上げ部80には、第2横スリット92のタイヤ周方向TCの両側の近傍に形成された第1及び第2嵩上げ部81,82と、第3メディエイト幅方向サイプ73のタイヤ周方向TC2側の近傍に形成された第3嵩上げ部83とが含まれている。第1~第3嵩上げ部81~83は、それぞれ第2横スリット92又は第3メディエイト幅方向サイプ73に対して、当該第1~第3嵩上げ部81~83が形成されたメディエイト周方向サイプ31の溝深さD0の10%以上30%以下の長さタイヤ周方向TCに離れた範囲内に形成されている。
【0072】
具体的には、第3メディエイト幅方向サイプ73に比して溝幅が大きい第2横スリット92との交差部には、このタイヤ周方向TCの両側の近傍に第1及び第2嵩上げ部81,82がそれぞれ形成されている。一方、幅方向面取り部60が形成されておらず、溝幅が相対的に小さい第3メディエイト幅方向サイプ73との交差部には、このタイヤ周方向TCの一方側の近傍にのみ第3嵩上げ部83が形成されている。
【0073】
すなわち、相対的に溝幅が大きい第2横スリット92によりタイヤ周方向TCに分断されており剛性の低下代が相対的に大きい部分には、嵩上げ部80がタイヤ周方向TCの両側に形成されている。一方、相対的に溝幅が小さい第3メディエイト幅方向サイプ73によりタイヤ周方向TCに分断されており剛性の低下代が相対的に小さい部分には、嵩上げ部80がタイヤ周方向TCの一方側に形成されている。
【0074】
嵩上げ部80を、第2横スリット92又は第3メディエイト幅方向サイプ73との交差部の近傍に設けることによって、外側メディエイトリブ22のうち第2横スリット92又は第3メディエイト幅方向サイプ73によってタイヤ周方向TCに分断され相対的に剛性が低下しやすい部分が、メディエイト周方向サイプ31を挟んで対向するメディエイトリブ第2部分22bに嵩上げ部80によって連結される。これによって、外側メディエイトリブ22を効果的に補強できる。
【0075】
第1及び第3嵩上げ部81,83は、メディエイトリブ第1部分22aのうち第2横スリット92又は第3メディエイト幅方向サイプ73とメディエイト周方向サイプ31とによって区画された角部のうち、鋭角側の角部に設けられている。第1及び第3嵩上げ部81,83は溝底に向かってタイヤ周方向TCに幅広に構成されている。すなわち、溝底に向かって幅広に構成された第1及び第3嵩上げ部81,83により、相対的に剛性が低い鋭角側の角部が効果的に補強されている。
【0076】
一方、第2嵩上げ部82は、メディエイトリブ第1部分22aのうち第3メディエイト幅方向サイプ73とメディエイト周方向サイプ31とによって区画された角部のうち、鈍角側の角部に設けられている。第2嵩上げ部82は、タイヤ周方向TCにおける長さL1がタイヤ径方向に一定とされた矩形状に構成されている。タイヤ周方向TCにおいて、第2嵩上げ部82は、先端部の長さL1が、第1及び第3嵩上げ部81,83の長さL2と略同一に設定されており、基端部が第1及び第3嵩上げ部81,83よりも短い。
【0077】
図示は省略するが、ショルダー周方向サイプ32にも、ここに連通する、第4横スリット94に対応した位置のタイヤ周方向TCにおける両側と、第2ショルダー幅方向サイプ52によりタイヤ周方向TC側に区画された角部のうち鋭角側となる角部とに対応して、嵩上げ部80が形成されている。
【0078】
上記説明した空気入りタイヤ1によれば、次のような効果が得られる。
【0079】
(1)主溝10及び周方向サイプ30の口元に位置する両縁部のうち一方側にのみ周方向面取り部40が形成されているので、両縁部に面取り部を形成する場合に比して、リブ20の接地面積を確保しやすい。これによって、ドライ路面においては、周方向面取り部40を形成したことによる操縦安定性の低下を抑制できる。また、ウェット路面においては、周方向面取り部40によって、主溝10及び周方向サイプ30へ路面上の水分を導入させやすく且つ溝容積が増大するので、ウェット性能が向上する。
【0080】
特に、車両前面視で空気入りタイヤがハの字状の姿勢となるようにキャンバー角度が付された場合、若しくは操舵時には、リブ20には、車両内側の縁部に接地圧が集中しやすいが、該接地圧の集中しやすい縁部に対応する主溝10及び周方向サイプ30の車両外側の縁部に周方向面取り部40が形成されている。これによって、リブ20の車両内側の縁部における接地圧の集中が抑制されるので、当該縁部における偏摩耗が抑制される。
【0081】
したがって、周方向面取り部40を形成しながら、ドライ路面における操縦安定性の悪化を抑制しつつ、ウェット性能を向上させることができる。さらに、リブ20の車両内側の縁部における偏摩耗を抑制できる。
【0082】
(2)周方向面取り部40は、車両装着姿勢でタイヤ赤道線CLよりも車両外側に位置する主溝10及び周方向サイプ30に、少なくとも形成されている。これによって、旋回時、操舵時等において接地圧が特に高くなりやすい車両外側のリブ20に対応する主溝10及び周方向サイプ30に形成された周方向面取り部40によって、上記効果が好適に発揮される。
【0083】
(3)周方向面取り部40は、タイヤ幅方向TWにおける幅W1が、1mm以上3mm以下であるので、周方向面取り部40による上記効果を好適に発揮させながら、周方向面取り部40が過度に大きくなることが抑制される。周方向面取り部40の幅W1が1mmより小さいと、ウェット性能の向上代が少なくなると共にリブ20の車両内側の縁部における偏摩耗の抑制効果が少なくなる。周方向面取り部40の幅W1が3mmより大きいと、接地面積が減少するため、ドライ路面における操縦安定性が低下しやすい。
【0084】
(4)周方向面取り部40は、タイヤ径方向における深さD1が、当該周方向面取り部40が形成されている主溝10又は周方向サイプ30の溝深さD0の15%以上40%以下であるので、周方向面取り部40による上記効果を好適に発揮させながら、周方向面取り部40が過度に大きくなることが抑制される。
【0085】
周方向面取り部40の深さD1が主溝10又は周方向サイプ30の深さD0の15%より浅いと、ウェット性能の向上代が少なくなると共にリブ20の車両内側の縁部における偏摩耗の抑制効果が少なくなる。周方向面取り部40の深さD1が主溝10又は周方向サイプ30の深さD0の40%より深いと、接地面積が減少しやすいため、ドライ路面における操縦安定性が低下しやすい。
【0086】
(5)周方向サイプ30には、残余の部分に比して深さが浅い、嵩上げ部80が形成されているので、周方向サイプ30によってタイヤ幅方向TWに区画されたリブ20が、嵩上げ部80によってタイヤ幅方向TWに連結されるので、リブ剛性の低下が抑制される。
【0087】
(6)嵩上げ部80は、周方向サイプ30と横スリット90との交差部を挟んだ、タイヤ周方向TCの両側に形成されている。これによって、周方向サイプ30によりタイヤ幅方向TWに区画されたリブ20のうち、さらに横スリット90によりタイヤ周方向TCに区画された部分が、嵩上げ部80によりタイヤ幅方向TWに連結されるので、リブ剛性の低下が抑制される。
【0088】
(7)周方向サイプ30と横スリット90とによってタイヤ周方向TCの両側に区画された角部のうち、鋭角側の角部に形成された嵩上げ部80は、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成されている。これによって、周方向サイプ30と横スリット90とによってタイヤ周方向TCの両側に区画された角部のうち、相対的に剛性が低い鋭角側の角部が、溝底に向かってタイヤ周方向TCに幅広に形成された嵩上げ部80によってタイヤ幅方向TWに連結されているので、リブ剛性の低下がより好適に抑制される。
【0089】
(8)嵩上げ部80は、周方向サイプ30と幅方向サイプ50,70とよってタイヤ周方向TCに区画される角部のうち鋭角側の角部に接続されている。これによって、周方向サイプ30によりタイヤ幅方向TWに区画されたリブ20の一方側部分のうち、さらに幅方向サイプ50,70によりタイヤ周方向TCに区画された角部であって相対的に剛性が低い鋭角側の角部が、嵩上げ部80により周方向サイプ30を挟んでタイヤ幅方向に対向する他方側部分に連結されるので、リブ剛性の低下が抑制される。
【0090】
(9)鋭角側の角部に形成された嵩上げ部80は、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成されている。これによって、周方向サイプ30と幅方向サイプ50,70とによってタイヤ周方向TCの両側に区画された角部のうち、相対的に剛性が低い鋭角側の角部が、溝底に向かってタイヤ周方向に幅広に形成された嵩上げ部80によってタイヤ幅方向TWに連結されているので、リブ剛性の低下がより好適に抑制される。
【0091】
上記実施形態では、周方向面取り部40及び幅方向面取り部60が直線状である場合を例にとって説明したが、これに限らない。周方向面取り部及び幅方向面取り部を円弧状、階段状等任意の形状を採用してもよい。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
10 主溝
11 外側センター主溝
12 内側センター主溝
13 外側ショルダー主溝
14 内側ショルダー主溝
20 リブ
21 センターリブ
22 外側メディエイトリブ
23 内側メディエイトリブ
24 外側ショルダーリブ
25 内側ショルダーリブ
30 周方向サイプ
31 メディエイト周方向サイプ
32 ショルダー周方向サイプ
40 周方向面取り部
50 ショルダー幅方向サイプ
60 幅方向面取り部
70 メディエイト幅方向サイプ
80 嵩上げ部
90 横スリット