(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】螺条付き締結具を締める装置
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B25B21/00 C
B25B21/00 K
(21)【出願番号】P 2018539039
(86)(22)【出願日】2017-01-26
(86)【国際出願番号】 US2017015148
(87)【国際公開番号】W WO2017132387
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-24
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511253276
【氏名又は名称】ハイトーク ディビジョン ユネックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ピーター コッペンへーファー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マクラフリン
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0114344(US,A1)
【文献】米国特許第08650990(US,B2)
【文献】米国特許第04819520(US,A)
【文献】米国特許第04644829(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺条付き締結具を締め又は緩める油圧駆動式トルク工具において、
前記油圧駆動式トルク工具は、
油圧シリンダ・アセンブリと、
駆動アセンブリと、
可撓的なリンク機構接続アセンブリとを備え、
前記可撓的なリンク機構接続アセンブリは、
ロッカ・アームと、旋回接続部とを有するロッカ・アーム・アセンブリと、
単一もしくは複数のチェーン・リンク、単一もしくは複数のチェーン・ピン、及び、単一もしくは複数のピン溝を有する、チェーンリンク・ピン・アセンブリを含
み、
前記ロッカ・アーム・アセンブリの前記ロッカ・アームは、前記チェーンリンク・ピン・アセンブリの前記単一もしくは複数のチェーン・リンク及び前記単一もしくは複数のチェーン・ピンを介して前記駆動アセンブリに接続されており、
前記可撓的なリンク機構接続アセンブリが、前記油圧シリンダ・アセンブリと前記駆動アセンブリとの間に形成され且つそれらを作用的に接続し、
前記可撓的なリンク機構接続アセンブリは、前記駆動アセンブリの全動程に亙り、前記油圧シリンダ・アセンブリにより前記ロッカ・アーム・アセンブリ上に生成された線形力の作用のラインと、前記ロッカ・アーム・アセンブリにより前記駆動アセンブリ上に生成される回動力との間に、線形の力及び変位を回動的なトルク及び角度的な変位へと変換するのに最適化された関係を維持する、螺条付き締結具を締め又は緩める油圧駆動式トルク工具。
【請求項2】
前記油圧シリンダ・アセンブリは、
ピストン・アセンブリと、
前記ピストン・アセンブリと外部油圧供給源との間に形成され且つ
前記ピストン・アセンブリと前記外部油圧供給源に対して作用的に接続された油圧コネクタ・アセンブリ
とを有し、
前記駆動アセンブリは、
チェーン・リンク駆動プレート・アセンブリと、
単方向ラチェット機構アセンブリと、
駆動ソケット・アセンブリとを有する、請求項1に記載の油圧駆動式トルク工具。
【請求項3】
前記ピストン・アセンブリは、シリンダ端部キャップとOリングと、ピストンと、ピストン・ロッドとを各々が含む、第1のシリンダ・アセンブリ及び第2のシリンダ・アセンブリを有し、
前記チェーン・リンク駆動プレート・アセンブリは、駆動プレートを有し、
前記単方向ラチェット機構アセンブリは、駆動セグメント及び付勢スプリングを有し、
前記駆動ソケット・アセンブリは、一方向においては前記駆動セグメントに対して回動可能に結合するラチェット歯であって、別方向においては前記駆動セグメントに対して回動不能に結合するというラチェット歯を備えた外側面を有するラチェット駆動ソケットを有する、請求項2に記載の油圧駆動式トルク工具。
【請求項4】
第1のハウジング部分及び第2のハウジング部分と、前記第1のハウジング部分と前記第2のハウジング部分を接続するための接続手段と、前記第1のハウジング部分又は前記第2のハウジング部分に取り付けられた取手アセンブリと、前記旋回接続部で生じる旋回力に作用する反力を反作用点まで伝達する、前記第1のハウジング部分又は前記第2のハウジング部分に取り付けられる反作用取付具と、索体を取り付けるための、前記第1のハウジング部分又は前記第2のハウジング部分に取り付けられる索体アセンブリとを有するハウジング・アセンブリを含む、請求項1、2又は3に記載の油圧駆動式トルク工具。
【請求項5】
前記油圧駆動式トルク工具は、第1のハウジング部分及び第2のハウジング部分と、前記第1のハウジング部分と前記第2のハウジング部分を接続するための接続手段と、前記第1のハウジング部分又は前記第2のハウジング部分に取り付けられた取手アセンブリと、前記旋回接続部で生じる旋回力に作用する反力を反作用点まで伝達する、前記第1のハウジング部分又は前記第2のハウジング部分に取り付けられる反作用取付具と、索体を取り付けるための、前記第1のハウジング部分又は前記第2のハウジング部分に取り付けられる索体アセンブリとを有するハウジング・アセンブリを含み、
前記第1のハウジング部分は、前記第1のシリンダ・アセンブリ及び前記第2のシリンダ・アセンブリに対する第1ピストン・ハウジング及び第2ピストン・ハウジングを含む、請求項3に記載の油圧駆動式トルク工具。
【請求項6】
前記ピストン・アセンブリの前進行程により生成される圧縮力を伝達して当該油圧駆動式トルク工具をリセットする戻しスプリング・アセンブリを含む、請求項2に記載の油圧駆動式トルク工具。
【請求項7】
前記戻しスプリング・アセンブリは、戻しスプリング・ピストン及び戻しスプリングを含む、請求項6に記載の油圧駆動式トルク工具。
【請求項8】
螺条付き締結具と、
請求項1に記載の油圧駆動式トルク工具とを含む、対象物を締結するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、本出願と同様に本出願人が所有すると共に同時係属中である以下の特許出願の優先権を主張し、且つ/又は、それらの継続特許出願又は一部継続出願であり、それらの全ての内容は言及したことにより本明細書中に援用される、2016年1月26日の出願日を有すると共に「螺条付き締結具を締める装置」と称された米国出願第62/287,414号、及び、2016年2月9日の出願日を有すると共に「螺条付き締結具を締める装置」と称された米国出願第62/293,170号。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガス・タービンの如き多くの工業的なボルト締め用途は、大きくて正確なトルクを付与し得る工具を必要とする螺条付き締結具を伴う。これらの締結具の多くに対するアクセスには、限られたスペース(clearance)用のトルク工具を必要とすることが多い。その様に覆い隠すように配置された締結具に対するアクセスに適した幾つかの選択肢が在る。利用可能な選択肢は、線形の力及び変位を、回動的なトルク及び角度的な変位へと変換する剛直的(rigid)なリンク機構に対して結合された油圧シリンダを使用する。斯かる剛直的なリンク機構による力の伝達は、力の作用のラインが、回動出力部材の中心を起点とするラインに対して直角である、という単一点においてのみ最適化される。与えられた力に対し、結果的に生成されるトルクは、この単一の最適点のいずれかの側への線形変位に対し、最終的にはゼロまで減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
必要とされるのは、トルク工具に対する優れた力伝達リンク機構である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、出入りが限られた工業的なボルト締め用途において、大きくて正確であり、且つ、効率的に付与されるトルクを提供するという要望に対処している。可撓的(flexible)な負荷伝達部材を介して結合された一対のリンク部材は、力の作用のラインと、回転出力部材との間の関係を、前記工具の出力の全動程に亙り、最適位置に接近して維持する。線形の力及び変位を回動的なトルク及び角度的な変位へと変換する結果的な効率の増大によれば、覆い隠すように配置された、限られたスペースの、及び/又は、アクセス困難である螺条付き締結具に対してアクセスするために必要な最小限の断面積において、大きくて正確なトルクを生成することが許容される。特に、本発明における独特の可撓的な負荷伝達部材は、独特であると共に未だ実現されていない狭幅でコンパクトな工具に帰着する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】
図1Aは、部分的に組立てられたトルク工具100の下側面の斜視概観を示している。
【
図1B】
図1Bは、部分的に組立てられたトルク工具100の上側面の斜視概観を示している。
【
図1C】
図1Cは、部分的に組立てられたトルク工具100の下側面の平面概観を示している。
【
図2】
図2Aは、完全に組立てられたトルク工具100の後側面の平面概観を示している。
図2Bは、完全に組立てられたトルク工具100の下側面の平面概観を示している。
図2Cは、完全に組立てられたトルク工具100の前側面の平面概観を示している。
図2Dは、完全に組立てられたトルク工具100の左側面の平面概観を示している。
図2Eは、完全に組立てられたトルク工具100の上側面の斜視概観を示している。
【
図3】
図3は、完全に組立てられたトルク工具100の分解斜視概観を示している。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施例である完全に組立てられたトルク工具200の分解斜視概観を示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図3に示された如く、例示的にのみ、この場合にはGE7FAガス・タービンと共に使用されるトルク工具100は、油圧的に動力供給されると共に、該工具は、限られたスペースの箇所において、(不図示の)ボルト、及び/又は、スタッド及びナットの組合せ物の如き螺条付き締結具を締め、又は、緩めるべく使用される。トルク工具100は、油圧シリンダ・アセンブリ40と、駆動アセンブリ60と、油圧シリンダ・アセンブリ40と駆動アセンブリ60との間に形成された可撓的なリンク機構接続アセンブリ50とを含み、それらの全ては、ハウジング・アセンブリ70内に、又は、それに隣接して形成される。示された如く、工具100は、反力アセンブリ80も含んでいる。工具100は、油圧シリンダ・アセンブリ40の線形運動を、可撓的なリンク機構接続アセンブリ50を介して、駆動アセンブリ60に対して作用する回動運動へと変換することで、螺条付き締結具を旋回させる。
【0007】
油圧シリンダ・アセンブリ40は、(不図示の)外部の油圧式駆動ユニットをピストン・アセンブリ50に対して作用的に接続し、且つ、油圧コネクタ(結合器)アセンブリ41及びピストン・アセンブリ44を含む。油圧コネクタ・アセンブリ41は、工具100を(不図示の)外部油圧供給源に対して接続し、且つ、第1及び第2の結合器アセンブリ42及び43を含む。第1結合器アセンブリ42は、雌型の回り継手28、外側保持リング29、雄型の油圧流体結合器31、及び、継管32を含む。第2結合器アセンブリ43は、雌型の油圧流体結合器30を除き、同様の斯かる構成部材を含んでいる。
【0008】
ピストン・アセンブリ44は、油圧コネクタ・アセンブリ41を可撓的なリンク機構接続アセンブリ50に対して作用的に接続すると共に、第1及び第2のシリンダ・アセンブリ45及び46を含んでいる。第1シリンダ・アセンブリ45は、シリンダ端部キャップ3、第1及び第2のOリング14及び15、ピストン5、及び、ピストン・ロッド7を含む。第2シリンダ・アセンブリ46は、シリンダ端部キャップ4、第1及び第2のOリング35、ピストン18、及び、ピストン・ロッド8を含む。
【0009】
可撓的なリンク機構接続アセンブリ50は、ピストン・アセンブリ44を駆動アセンブリ60に対して作用的に接続すると共に、ロッカ・アーム・アセンブリ51、及び、チェーンリンク・ピン・アセンブリ52を含む。ロッカ・アーム・アセンブリ51は、ロッカ・アーム17、及び、旋回接続部53を含む。ロッカ・アーム17は、第1端部に向けては第1及び第2のシリンダ・アセンブリ45及び46に対し、且つ、第2端部に向けてはチェーンリンク・ピン・アセンブリ52に対し、旋回的に取付けられる。チェーンリンク・ピン・アセンブリ52は、単一もしくは複数のチェーン・リンク19、単一もしくは複数のチェーン・ピン20、及び、単一もしくは複数のピン溝54を含む。
【0010】
駆動アセンブリ60は、可撓的なリンク機構接続アセンブリ50を、(不図示の)ボルト、及び/又は、スタッド及びナットの組合せ物に対して作用的に接続すると共に、チェーン・リンク駆動プレート・アセンブリ61、単方向ラチェット機構アセンブリ62、及び、駆動ソケット・アセンブリ63を含む。チェーン・リンク駆動プレート・アセンブリ61は、駆動プレート16を含む。単方向ラチェット機構アセンブリ62は、駆動セグメント、すなわち駆動爪材10と、単一もしくは複数の付勢スプリング13とを含む。駆動ソケット・アセンブリ63は、ラチェット駆動ソケット9、単一もしくは複数の側部プレート・スリーブ6、締めソケット25、及び、ソケット頭部キャップネジ(SHCS)26を含む。ラチェット駆動ソケット9は、一方向においては駆動爪材10の歯部に対して回動可能に結合するラチェット歯であって、別方向においては駆動爪材10の歯部に対して回動不能に結合するというラチェット歯を備えた外側面を有する。それは、締めソケット25の上部に対して回動可能に結合する内側面を有する。また、締めソケット25の下側部分は、螺条付き締結具に対して回動不能に結合する。本明細書中に記述された全てが回動可能に結合された接続手段は、業界公知であると共に、例えば、ラチェット歯、スプライン、矩形、六角、12ポイントなどが挙げられることを銘記されたい。
【0011】
ハウジング・アセンブリ70は、油圧シリンダ・アセンブリ40、可撓的なリンク機構接続アセンブリ50、及び、駆動アセンブリ600を収容し、且つ/又は、それらに隣接する。それは、第1ハウジング部分1と、第2ハウジング部分2と、例えば、SHCS12及び21及び数本の合せピン22及び23を含む接続手段61と、取手アセンブリ27と、反作用取付具11と、索体アセンブリ34とを含む。第1ハウジング部分は、夫々、第1及び第2のシリンダ・アセンブリ45及び46に対する第1ピストン・ハウジングA及び第2ピストン・ハウジングRを含む。
【0012】
概略的に、工具100は、可撓的なリンク機構接続アセンブリ50に対して作用する油圧シリンダ・アセンブリ45及び46の線形運動を、螺条付き締結具を旋回させるために必要な、駆動アセンブリ60に作用する回動運動へと変換する。
【0013】
全てのラチェット型工具と同様に、工具100は一方向においてのみトルクを生成する。時計方向又は反時計方向である選択された(すなわち、右ねじを締め又は緩める)方向は、工具100のいずれの側が螺条付き締結具に対して適用されるかにより制御される。これ以降、前進とはトルク付与方向として参照されると共に、後退は前進の逆である。
【0014】
図3に示された実施例において、第1結合器アセンブリ42は、前進方向用の油圧接続構造であり、且つ、第2結合器アセンブリ43は、後退方向用の油圧接続構造である。工具100を前進させるためには、後退用結合器アセンブリ43が油圧流体供給源の低圧側に接続され乍ら、前進用結合器アセンブリ42に対しては油圧的圧力が付与される。工具100を後退させるためには、前進用結合器アセンブリ42が油圧流体供給源の低圧側に接続され乍ら、後退用結合器アセンブリ43に対しては油圧的圧力が付与される。
【0015】
前進方向に関し、加圧された油圧流体は、実質的に第1ピストン・ハウジングA内に配置された前進用シリンダ・アセンブリ42に対して導入されて、それに進入する。加圧された油圧流体は、圧力の大きさに比例して、前進用線形力をピストン5に対して付与する。Oリング14及び15は、前進用シリンダ・アセンブリ42をシールして、油圧流体の漏出を阻止する。ピストン5及びピストン・ロッド7は、ロッカ・アーム17の前進側を押圧して該アームを時計方向に回動させる線形力を伝達する。
【0016】
時計方向の回動により、ロッカ・アーム17の後退側は、ピストン・ロッド8及びピストン18を押圧する。これにより、後退用シリンダ・アセンブリ43内の油圧流体を第2結合器アセンブリ43を介して外部の油圧式駆動ユニットの低圧側へと押圧する後退側の線形力が生成される。
【0017】
ロッカ・アーム17は、チェーンリンク・アセンブリ52の単一もしくは複数のチェーン・リンク19及び単一もしくは複数のチェーン・ピン20を介して駆動プレート・アセンブリ61に対して接続されることを思い起こされたい。ロッカ・アーム17の時計方向回動は、チェーンリンク・アセンブリ52の各構成要素の作用により、駆動プレート・アセンブリ61の反時計方向回動に帰着する。各ピン20は、ハウジング・アセンブリ70の基部箇所において配置された溝54内へと案内される。
【0018】
駆動プレート16の反時計方向回動は、駆動爪材10を回動不能に押圧する。ラチェット駆動ソケット9は、一方向、すなわち、旋回力方向93において駆動爪材10の歯部に対して回動可能に結合するラチェット歯であって、別方向91において駆動爪材10の歯部に対して回動不能に結合するというラチェット歯を備えた外側面を有する。駆動爪材10とラチェット駆動ソケット9との間の接触は、付勢スプリング13により維持される。駆動プレート14におけるスロットの幾何学形状によれば、駆動爪材10は一方向93においてラチェット駆動ソケット9に当接して押圧されることで、締めソケット25を、故に螺条付き締結具を回転させ得る。
【0019】
概略的に、ラチェット駆動ソケット9は、緩め方向におけるトルクを提供するときに螺条付き締結具に臨む工具100の側面上に、一体的な12ポイント六角ソケットである締めソケット25を有する。ラチェット駆動ソケット9は、締め方向におけるトルクを提供するときに螺条付き締結具に臨む工具100の側面上に、一体的な雌型の矩形駆動部を有する。該矩形駆動部は、締めソケット25上の雄型の矩形駆動部と合致係合する。ラチェット駆動ソケット9の反時計方向の回動は、締めソケット25の反時計方向の回動に帰着する。締めソケット25は、SHCS26を介してラチェット駆動ソケット9に取付けられる。
【0020】
工具100の締めサイクルは、前進用ピストン5が前進用シリンダ・アセンブリ42内の動程の限界に到達したとき、又は、工具100により生成されるトルクが、螺条付き締結具の抵抗トルクと平衡したときに、終了する。
【0021】
反作用取付具11は、旋回力軸心FTを中心として別方向93に作用する反力91を、適切な反作用点まで伝達する。
【0022】
後退方向に関し、加圧された油圧流体は、実質的に第2ピストン・ハウジングR内に配置された後退用シリンダ・アセンブリ43に対して導入されて、それに進入する。加圧された油圧流体は、圧力の大きさに比例して、後退用線形力をピストン18に対して付与する。各Oリング35は、後退用シリンダ・アセンブリ43をシールして、油圧流体の漏出を阻止する。ピストン18及びピストン・ロッド8は、ロッカ・アーム17の後退側を押圧して該アームを反時計方向に回動させる線形力を伝達する。
【0023】
反時計方向の回動により、ロッカ・アーム17の前進側は、ピストン・ロッド7及びピストン5を押圧する。これにより、前進用シリンダ・アセンブリ42内の油圧流体を第1結合器アセンブリ42を介して外部の油圧式駆動ユニットの低圧側へと押圧する前進側の線形力が生成される。
【0024】
ロッカ・アーム17は、チェーンリンク・アセンブリ52の単一もしくは複数のチェーン・リンク19及び単一もしくは複数のチェーン・ピン20を介して駆動プレート・アセンブリ61に対して接続されることを思い起こされたい。ロッカ・アーム17の反時計方向回動は、チェーンリンク・アセンブリ52の各構成要素の作用により、駆動プレート・アセンブリ61の時計方向回動に帰着する。各ピン20は、ハウジング・アセンブリ70の基部箇所において配置された溝内へと案内される。
【0025】
駆動プレート16の時計方向回動は、駆動爪材10を回動不能に押圧する。ラチェット駆動ソケット9は、旋回力方向93において駆動爪材10の歯部に対して回動可能に結合するラチェット歯であって、別方向91において駆動爪材10の歯部に対して回動不能に結合するというラチェット歯を備えた外側面を有することを思い起こされたい。駆動爪材10は、付勢スプリング13に当接して押圧されると共に、該爪材は、ラチェット駆動ソケット9の歯部上を摺動することにより、駆動プレート14内のスロット内で径方向に変位する。これにより、ラチェット駆動ソケット9は、駆動プレート14が時計方向に回動する間、螺条付き締結具上で所定位置に留まることが許容される。
【0026】
工具100の後退サイクルは、後退ピストン18が後退用シリンダ・アセンブリ43内の動程の限界に到達したときに終了する。
【0027】
図4を参照すると、例示的にのみ、同図は、本発明の第2実施例である完全に組立てられたトルク工具200の分解斜視概観を示している。トルク工具200は、トルク工具100と同一の構成部材の多くを含んでいる。トルク工具100は、第2結合器アセンブリ43及び第2シリンダ・アセンブリ46を含むことを思い起こされたい。これらの構成要素は、トルク工具200においては存在せず、且つ、戻しスプリング・ピストン48と戻しスプリング49とを含む戻しスプリング・アセンブリ47により置き換えられている。戻しスプリング・アセンブリ47は、前進行程の間において、前記圧力の大きさに比例して戻しスプリング49に作用する圧縮力を、戻しスプリング・ピストン48に対して伝達する。トルク工具100に関する他の全ての考察は、トルク工具200に対して適用される。
【0028】
先行技術のトルク工具は、剛直的なリンク機構に対して結合されて線形の力及び変位を回動的トルク及び角度的変位へと変換する油圧シリンダを使用することを思い起こされたい。斯かる剛直的なリンク機構による力伝達は、力の作用のラインが、回動出力部材の中心を起点とするラインに対して直角である、という単一点においてのみ最適化される。与えられた力に対し、結果的に生成されるトルクは、この単一の最適点のいずれかの側への線形変位に対し、最終的にはゼロまで減少する。
【0029】
本発明のトルク工具は、油圧シリンダ・アセンブリと、駆動アセンブリと、該油圧シリンダ・アセンブリと駆動アセンブリとの間に形成された可撓的なリンク機構接続もしくは力伝達アセンブリとを含み、それらの全てがハウジング・アセンブリ内又はそれに隣接して形成される。それらは、限られたスペースの用途に対し、大きくて正確なトルクを提供する。前記可撓的なリンク機構接続アセンブリは、ロッカ・アーム・アセンブリ及びチェーンリンク・ピン・アセンブリを含む。前記可撓的なリンク機構接続アセンブリは、単一もしくは複数の油圧ピストン・アセンブリにより前記ロッカ・アーム・アセンブリ上に生成される線形力の作用のラインと、前記ロッカ・アーム・アセンブリにより前記ラチェット駆動ソケット上に生成される回動力との間の関係を、前記チェーンリンク・ピン・アセンブリを介し、前記駆動アセンブリの駆動プレート・アセンブリの全動程に亙り、最適位置に接近して維持する。線形の力及び変位を回動的なトルク及び角度的な変位へと変換する結果的な効率の増大によれば、覆い隠すように配置された、限られたスペースの、及び/又は、アクセス困難である螺条付き締結具に対してアクセスするために必要な最小限の断面積において、大きくて正確なトルクを生成することが許容される。
【0030】
上述された要素の各々、又は、協働する2つ以上の要素は、上述された形式とは異なる他の形式の構成においても有用な適用性を見出し得ることは理解される。前記説明、もしくは、以下の各請求項、もしくは、添付図面において開示された特徴であって、必要に応じて、それらの特定形態において表現され、或いは、開示された機能を実施する手段、又は、開示された結果を達成する方法もしくはプロセスに関して表現されたという特徴は、別体的に、又は、斯かる特徴の任意の組合せにて、本発明をその多様な形態で実現するために利用され得る。明細書において付番された構成要素の説明において、僅かな相違が在り得ることを銘記されたい。
【0031】
本発明は、流体作動式の工具において具現されるとして示され且つ記述されてきたが、本発明は、示された詳細に限定されることは意図されない、と言うのも、本発明の精神から何ら逸脱せずに種々の改変及び構造的変更が為され得るからである。
【0032】
更なる検討なしで、上述の内容は、他者が、現在の知見を適用することにより、それを、先行技術の観点から、本発明の包括的また特定的な見地の本質的な特性を明確に構成する特徴を除外せずに種々の用途に対して容易に適合化し得る様に、本発明の要旨を十分に明らかとしている。
【0033】
本出願及び各請求項において使用されたとき、「備えて成る(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、及び、それらの変化形は、特定の特徴、段階又は整数が包含されることを意味している。各語句は、他の特徴、段階又は構成要素の存在を除外すると解釈されるべきでない。