(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】クランプ装置及び工作物を挟みつける方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B23Q3/06 301G
(21)【出願番号】P 2018553097
(86)(22)【出願日】2017-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2017058564
(87)【国際公開番号】W WO2017178435
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】102016106598.6
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016116752.5
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505390886
【氏名又は名称】アンドレアス マイアー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ゲーベル
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー フィリッピ
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-000606(JP,Y1)
【文献】仏国特許発明第02044137(FR,A5)
【文献】欧州特許出願公開第00578989(EP,A1)
【文献】米国特許第05165670(US,A)
【文献】特開平02-036038(JP,A)
【文献】特開昭54-152282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0061268(US,A1)
【文献】特開平08-090103(JP,A)
【文献】特開2015-223647(JP,A)
【文献】特開平01-257538(JP,A)
【文献】特開平09-280211(JP,A)
【文献】特開2013-091157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00-3/154
B25B 1/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(102)を挟みつけるクランプ装置であって、クランプ部材(108)を有し、前記クランプ部材が締め付け運動においてゆるめ位置から締め付け位置へ移動可能であり、締め付け運動が旋回運動と直線運動とを有しており、
該クランプ装置(100)が、直線運動を駆動するための直線運動ピストン(134)と旋回運動を駆動するための旋回運動ピストン(126)とを有しており、
前記クランプ装置(100)が、
前記直線運動ピストン(134)の締め付け側への締め付け作動流体用の締め付け流体路を有しており、前記締め付け流体路は、ゆるめ位置からのクランプ部材(108)の旋回運動が終了した場合に初めて、開放され、
前記直線運動ピストン(134)の締め付け側への締め付け流体路が、
前記旋回運動ピストン(126)
内を通って延びる
流体通路(186)を有
し、
前記流体通路(186)は、前記クランプ部材(108)が締め付け位置へ直線移動する間、及び/又は前記クランプ部材(108)が締め付け位置から直線移動する間、前記直線運動ピストン(134)の流体通路(184)と流体接続されることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記クランプ装置(100)が締め付け流体シーケンス制御を有しており、前記締め付け流体シーケンス制御によって、ゆるめ位置からの
前記クランプ部材(108)の旋回運動が開始された後に初めて、締め付け位置への
前記クランプ部材(108)の直線運動が開始されることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記クランプ装置(100)が締め付け流体シーケンス制御を有しており、前記締め付け流体シーケンス制御によって、ゆるめ位置からの
前記クランプ部材(108)の旋回運動が終了された後に初めて、締め付け位置への
前記クランプ部材(108)の直線運動が開始されることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記クランプ部材(108)がゆるめ運動において締め付け位置からゆるめ位置へ移動可能であり、
ゆるめ運動が直線運動と旋回運動とを有しており、
前記クランプ装置(100)がゆるめ流体シーケンス制御を有しており、前記ゆるめ流体シーケンス制御によって、締め付け位置からの
前記クランプ部材(108)の直線運動が開始された後に初めて、ゆるめ位置への
前記クランプ部材(108)の旋回運動が開始されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記クランプ装置(100)がゆるめ流体シーケンス制御を有しており、前記ゆるめ流体シーケンス制御によって、締め付け位置からの
前記クランプ部材(108)の直線運動が終了した後に初めて、ゆるめ位置への
前記クランプ部材(108)の旋回運動が開始されることを特徴とする請求項4に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記クランプ装置(100)が、
前記旋回運動ピストン(126)のゆるめ側へのゆるめ作動流体用のゆるめ流体路を有しており、前記ゆるめ流体路は、締め付け位置からの
前記クランプ部材(108)の直線運動が終了した後に初めて、開放されることを特徴とする請求項4又は5のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記ゆるめ流体路が、
前記直線運動ピストン(134)を通って延びる部分を有することを特徴とする請求項6に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記直線運動ピストン(134)が、
前記旋回運動ピストン(126)のためのストッパ(190)を有しており、前記ストッパに対して、
前記旋回運動ピストン(126)が締め付け位置において締め付け作動流体によって押圧されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項9】
前記直線運動ピストン(134)がシール(198)を有しており、前記シールは、締め付け位置においてシール面(200)に密閉するように添接し、かつ
前記クランプ部材(108)が締め付け位置から直線移動することによって
前記シール面(200)から離れるので、
前記旋回運動ピストン(126)のゆるめ側へのゆるめ作動流体用のゆるめ流体路が開放されることを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項10】
前記クランプ装置(100)がスリーブ(216)を有し、前記スリーブ内で
前記直線運動ピストン(134)が摺動可能に案内されており、かつ、前記スリーブがシール(218)を有し、前記シール(218)が締め付け位置において
前記直線運動ピストン(134)のシール面(220)に密閉するように添接し、
前記直線運動ピストン(134)がゆるめ流体通路(196)を有し、前記ゆるめ流体通路は
前記クランプ部材(108)が締め付け位置から直線移動する間
、スリーブ(216)のシール(218)を通過して移動するので、
前記ゆるめ流体通路(196)を通る
前記旋回運動ピストン(126)のゆるめ側へのゆるめ流体路が開放されることを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項11】
前記クランプ部材(108)が、直線運動の運動方向に対して平行に延びる回転軸線(232)を中心に回動可能であって、
前記クランプ装置(100)が固定装置(230)を有し、前記固定装置によって回転軸線(232)に関する
前記クランプ部材(108)の角度位置が固定可能であることを特徴とする請求項1から
10のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項12】
前記クランプ装置(100)がロック装置(240)を有し、前記ロック装置によって旋回運動ピストン(126)が
前記直線運動ピストン(134)にロック可能であることを特徴とする請求項1から
11のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項13】
前記ロック装置(240)が少なくとも1つのロック体(242)を有し、前記ロック体は、
前記旋回運動ピストン(126)を
前記直線運動ピストン(134)にロックするために、ロック凹部(250)と係合可能であることを特徴とする請求項
12に記載のクランプ装置。
【請求項14】
前記ロック装置(240)が少なくとも1つの回避凹部(252)を有しており、
前記直線運動ピストン(134)に対する
前記旋回運動ピストン(126)のロックを解除するために、
前記ロック体(242)が前記回避凹部内へ逃げることができることを特徴とする請求項
13に記載のクランプ装置。
【請求項15】
クランプ装置(100)によって、
請求項1から
14のいずれか一項に記載のクランプ装置によって、工作物(102)を挟みつける方法であって、
締め付け運動において
前記クランプ部材(108)をゆるめ位置から締め付け位置へ移動させることを含んでおり、
締め付け運動が旋回運動と直線運動とを有し、
ゆるめ位置からの
前記クランプ部材(108)の旋回運動が開始された後に初めて、締め付け位置への
前記クランプ部材(108)の直線運動が開始され、
前記クランプ部材(108)の直線運動は、前記直線運動ピストン(134)によって駆動され、
前記クランプ部材(108)の旋回運動は、前記旋回運動ピストン(126)によって駆動され、
前記クランプ装置(100)は、前記直線運動ピストン(134)の締め付け側への締め付け作動流体用の締め付け流体路を有し、前記締め付け流体路は、ゆるめ位置からの前記クランプ部材(108)の旋回運動が終了した場合に初めて、開放され、
前記直線運動ピストン(134)の締め付け側への締め付け流体路は、前記旋回運動ピストン(126)を通って延びる部分を有する、
工作物を挟みつける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物を挟みつけるクランプ装置に関するものであって、クランプ装置はクランプ部材を有し、クランプ部材は締め付け運動においてゆるめ位置からクランプ位置へ移動可能であり、締め付け運動は旋回運動と直線運動を有している。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置は、知られている。特に、クランプ部材の締め付け運動を駆動するために、作動流体を供給可能なピストンを有するクランプ装置が知られており、その場合にピストンは、クランプ部材が旋回運動と直線運動を実施するように、ガイドトラックと協働する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、クランプ部材の旋回運動と直線運動の制御に関して大きい可変性を可能にする、冒頭で挙げた種類のクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の前提部分の特徴を有するクランプ装置において、クランプ装置が直線運動を駆動するための直線運動ピストンと、旋回運動を駆動するための旋回運動ピストンとを有していることをとおして解決される。
【0005】
本発明のコンセプトは、直線運動を駆動するためと、旋回運動を駆動するために2つの異なるピストンを設け、そのようにして2つの運動を別々に調節し、かつ駆動することができるようにすることである。
【0006】
その場合にこの明細書及び添付の図面において、ピストンというのは、その幾何学的形態に関係なく、それぞれ案内されて移動する各部材である。したがってこの種のピストンは、特に実質的に中空円筒状に形成されてもよい。
【0007】
直線運動ピストンは、好ましくは作動流体を供給可能、特に直線運動ピストンの締め付け側に締め付け作動流体を、及び/又は直線運動ピストンのゆるめ側に緩め作動流体を供給可能である。
【0008】
旋回運動ピストンは、同様に好ましくは作動流体を供給可能、そして特に旋回運動ピストンの締め付け側に締め付け作動流体を、及び/又は旋回運動ピストンのゆるめ側に緩め作動流体を供給可能である。
【0009】
締め付け作動流体は、液体、特に油圧オイル、あるいはガス、特に圧縮空気とすることができる。
【0010】
ゆるめ作動流体は、同様に液体、例えば油圧オイル、あるいはガス、特に圧縮空気とすることができる。
【0011】
好ましい形態において、クランプ装置は締め付け流体シーケンス制御を有しており、前記制御によって、ゆるめ位置からのクランプ部材の旋回運動が開始された後に初めて、締め付け位置へのクランプ部材の直線運動が開始される。
【0012】
特に、クランプ装置が締め付け流体シーケンスを有し、前記制御によって、ゆるめ位置からのクランプ部材の旋回運動が終了された後に初めて、締め付け位置へのクランプ部材の直線運動が開始されるようにすることができる。
【0013】
クランプ装置は、直線運動ピストンの締め付け側への締め付け作動流体用の締め付け流体路を有することができ、その締め付け流体路は、ゆるめ位置からのクランプ部材の旋回運動が終了した場合に初めて、開放される。
【0014】
特に、直線運動ピストンの締め付け側への締め付け流体路は、旋回運動ピストンを通って延びる部分を有することができる。
【0015】
好ましくは、クランプ部材はゆるめ運動において締め付け位置からゆるめ位置へ移動可能であって、その場合にゆるめ運動が直線運動と旋回運動とを有している。
【0016】
その場合にクランプ装置が好ましくはゆるめ流体シーケンス制御を有しており、前記制御によって、締め付け位置からのクランプ部材の直線運動が開始された後に初めて、ゆるめ位置へのクランプ部材の旋回運動が開始される。
【0017】
特に、クランプ装置がゆるめ流体シーケンス制御を有することができ、前記制御によって、締め付け位置からのクランプ部材の直線運動が終了した後に初めて、ゆるめ位置へのクランプ部材の旋回運動が開始される。
【0018】
クランプ装置の好ましい形態において、クランプ装置は旋回運動ピストンのゆるめ側へのゆるめ作動流体用のゆるめ流体路を有しており、そのゆるめ流体路は、締め付け位置からのクランプ部材の直線運動が終了された場合に初めて、開放される。
【0019】
その場合に特に、ゆるめ流体路は、直線運動ピストンを通って延びる部分を有することができる。
【0020】
直線運動ピストンは、旋回運動ピストンのためのストッパを有することができ、締め付け位置において旋回運動ピストンが締め付け作動流体によってそのストッパに対して押圧される。
【0021】
旋回運動ピストンは流体通路を有することができ、その流体通路はクランプ部材が締め付け位置へ直線移動する間、及び/又はクランプ部材が締め付け位置から直線移動する間、直線運動ピストンの流体通路と流体接続されている。
【0022】
その場合に、クランプ部材がゆるめ位置から旋回移動する間、及び/又はクランプ部材がゆるめ位置へ旋回移動する間、旋回運動ピストンが直線運動ピストンの流体通路とは流体接続されないようにすることができる。
【0023】
直線運動ピストンがシールを有することができ、そのシールは締め付け位置においてシール面に密閉するように添接し、かつクランプ部材が締め付け位置から直線移動することによって、シール面から離れるので、旋回運動ピストンのゆるめ側へのゆるめ作動流体用のゆるめ流体通路が開放される。
【0024】
その代わりに、あるいはそれを補って、クランプ装置がスリーブを有することができ、そのスリーブ内で直線運動ピストンが摺動可能に案内されており、かつそのスリーブがシールを有し、そのシールが締め付け位置において直線運動ピストンのシール面に密閉するように添接し、その場合に直線運動ピストンがゆるめ流体通路を有し、そのゆるめ流体通路は、クランプ部材が締め付け位置から直線移動する間、スリーブのシールを通過して移動するので、ゆるめ流体通路をとおって旋回運動ピストンのゆるめ側へのゆるめ流体路が開放される。
【0025】
クランプ部材の旋回運動は、好ましくは、締め付け面に対して実質的に平行に方向付けされた旋回軸線を中心に行われ、挟みつけるべき工作物がその締め付け面においてクランプ部材によって挟みつけられる。
【0026】
クランプ装置の特別な形態において、クランプ部材は直線運動の移動方向に対して平行に延びる回転軸線を中心に回転可能であり、かつクランプ装置が固定装置を有し、その固定装置によって回転軸線に関するクランプ部材の角度位置が、好ましくは取り外しできるように、固定可能である。
【0027】
この種の固定装置は、特に、例えばクリップフランジ又はクリップリングの形式の、クリップ装置を有することができる。
【0028】
固定装置、特にクリップ装置は、好ましくはクランプ装置のカバーを固定し、そのカバー内でクランプ装置の直線運動ピストン及び/又は旋回運動ピストンが摺動可能に案内されている。
【0029】
クランプ装置のカバーは、好ましくは回動防止手段を介して直線運動ピストン及び/又は旋回運動ピストンと相対回動不能に結合されているので、カバーが回転軸線を中心に回転する場合にクランプ部材も同様に回転軸線を中心に一緒に回転される。
【0030】
旋回運動を開始しようとする前に、旋回運動ピストンが直線運動ピストンに対して移動することを阻止するために、クランプ装置がロック装置を有していると効果的であって、そのロック装置によって旋回運動ピストンが、好ましくは形状結合によって、直線運動ピストンにロック可能である。
【0031】
本発明の好ましい形態において、ロック装置が少なくとも1つのロック体を有しており、旋回運動ピストンを直線運動ピストンにロックするために、そのロック体がロック凹部と係合可能である。
【0032】
ロック凹部は、特に旋回運動ピストンに配置することができる。
【0033】
直線運動ピストンがロック体収容部を有することができ、旋回運動ピストンをロック位置において直線運動ピストンにロックするために、そのロック体収容部からロック体が部分的にロック凹部内へ延びている。
【0034】
ロック体は、1つ又は複数の転がり体を有することができる。
【0035】
1つ又は複数の転がり体は、特に玉として形成することができる。
【0036】
本発明の特別な形態において、ロック体は2つ又はそれより多い転がり体、特に2つ又はそれより多い玉を有している。
【0037】
さらに、ロック装置が回避凹部を有することができ、直線運動ピストンに対する旋回運動ピストンのロックを解除するために、ロック体が少なくとも部分的に前記回避凹部内へ逃げることができる。
【0038】
この種の回避凹部は、スリーブに配置することができ、そのスリーブ内で直線運動ピストンが摺動可能に案内されている。
【0039】
その代わりに、あるいはそれを補って、直線運動ピストンに対する旋回運動ピストンのロックを解除するために、ロック体が少なくとも部分的に逃げ込むことができる回避凹部は、収容ブロックに、機械テーブルに、あるいは他の装置に配置することができ、その他の装置内へクランプ装置を、好ましくはハウジングを介在させずに直接挿入可能である。
【0040】
本発明は、さらに、クランプ装置によって工作物を挟みつける方法に関するものであり、該方法は、
締め付け運動においてゆるめ位置から締め付け位置へクランプ部材を移動させることを含み、
締め付け運動が旋回運動と直線運動を有しており、かつ
ゆるめ位置からのクランプ部材の旋回運動が開始された後に初めて、締め付け位置へのクランプ部材の直線移動が開始される。
【0041】
それによって、クランプ部材の旋回運動と直線運動の制御と実施に関する大きな可変性を可能にする、クランプ装置を用いて工作物を挟みつける方法を提供する課題が解決される。
【0042】
この本発明に係る方法は、好ましくは本発明に係るクランプ装置によって実施される。
【0043】
クランプ部材の直線運動は、好ましくは直線運動ピストンによって駆動される。
【0044】
クランプ部材の旋回運動は、好ましくは旋回運動ピストンによって駆動される。
【0045】
その場合に直線運動ピストンと旋回運動ピストンは、クランプ装置の互いに異なる部材であって、それらは好ましくは互いに対して摺動可能であり、特に互いに対して摺動可能に案内されている。
【0046】
本発明に係るクランプ装置は、クランプ部材の旋回運動とクランプ部材の直線運動を発生させるために、作動流体が時間的にずれて直線運動ピストンと旋回運動ピストンに作用する切り替え順序で、直線運動ピストンと旋回運動ピストンを協働させることを可能にする。
【0047】
この機能原理が、大きい製造誤差を有する挟みつけるべき工作物を、工作物における相対移動なしで正確に挟みつけることを可能にする。
【0048】
本発明に係るクランプ装置は、カートリッジ技術で形成することができ、それによってクランプ装置が直接装置のキャビティ内へ挿入可能、特に差し込み可能あるいはねじ込み可能である。
【0049】
それとは異なり、本発明に係るクランプ装置は、収容ブロックに、あるいは他の装置に取り付け可能なハウジングを有することもできる。
【0050】
クランプ部材の直線運動の開始は、特に旋回運動ピストンに配置された流体通路が、直線運動ピストンに配置されたシールを通過して移動されることにより、実現され得る。
【0051】
クランプ部材の旋回運動は、特に、直線運動ピストンに配置されたシールが、クランプ装置が挿入されているキャビティから出るように移動されることによって、開始され得る。
【0052】
その代わりに、あるいはそれを補って、クランプ部材の旋回運動は、直線運動ピストンに設けられた流体通路が、直線運動ピストンを包囲するスリーブに配置されたシールを通過して移動されることによって開始され得る。
【0053】
本発明の他の特徴と利点が、実施例についての以下の説明及び図面表示の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】収容ブロックに取り付けられたクランプ装置を示す斜視図であって、その場合にクランプ装置は締め付け位置にあって、その位置において工作物がクランプ装置のクランプ部材と締め付け面との間に挟み込まれている。
【
図2】
図1のクランプ装置と挟みつけられた工作物を上から示す上面図である。
【
図3】
図1と2のクランプ装置と収容ブロックを、工作物なしで、
図2の矢印3の方向に見た正面図である。
【
図4】
図1と2のクランプ装置、収容ブロック及び挟みつけられた工作物を、
図2の矢印4の方向に見た側面図である。
【
図5】
図1から4のクランプ装置、収容ブロック及び工作物を通る断面を、
図2の5-5線に沿って示している。
【
図6】クランプ装置、収容ブロック及び工作物を中間位置において
図4に相当する側面図で示しており、その中間位置においてクランプ部材がゆるめ方向に直線状に工作物から離れるように移動されている。
【
図7】クランプ装置、収容ブロック及び工作物を中間位置において
図5に相当する断面で示している。
【
図8】クランプ装置、収容ブロック及び工作物をゆるめ位置において
図4に相当する側面図で示しており、そのゆるめ位置においてクランプ部材が中間位置から旋回軸線を中心に角度βだけ離れるように旋回されている。
【
図9】クランプ装置、収容ブロック及び工作物をゆるめ位置において、
図5に相当する断面で示している。
【
図10】クランプ装置、収容ブロック及び工作物の第2の実施形態を
図5に相当する断面で示しており、その場合にクランプ装置が締め付け位置にあって、その位置においてクランプ装置のクランプ部材が工作物を締め付け面に挟みつけており、その場合にこの実施形態においてクランプ装置はスリーブを有し、その中にクランプ装置の直線運動ピストンが摺動可能に案内されており、かつそのスリーブは収容ブロックの凹部内へ挿入されている。
【
図11】第2の実施形態におけるクランプ装置、収容ブロック及び工作物を、
図10に相当する断面で示しており、その場合にクランプ装置は中間位置にあり、その中間位置においてクランプ部材はゆるめ方向に直線的に工作物から離れるように移動されている。
【
図12】第2の実施形態におけるクランプ装置、収容ブロック及び工作物を、
図10に相当する断面で示しており、その場合にクランプ装置はゆるめ位置にあって、その位置においてクランプ部材は旋回軸線を中心に中間位置から離れるように旋回されている。
【
図13】クランプ装置と収容ブロックの第3の実施形態を示す斜視図である。
【
図14】第3の実施形態においてクランプ装置、収容ブロック及びクランプ装置によって締め付け面に対して締め付けられた工作物を上面図で示しており、その場合にクランプ装置が締め付け位置にあり、その位置においてクランプ装置のクランプ部材が工作物を締め付け面に挟み込んでおり、その場合にクランプ部材が締め付け方向に対して平行に延びる回転軸線を中心に回転可能であり、かつ固定装置によって回転軸線に関して所望の角度位置に取り外しできるように固定可能であって、その場合にクランプ部材の長手中心平面が参照平面に対して0°の角度だけ回動されている。
【
図15】
図14のクランプ装置、収容ブロック及び工作物を、
図14の矢印15の方向に見た側面図である。
【
図16】
図14と15のクランプ装置、収容ブロック及び工作物を、
図14に相当する上面図で示しており、その場合にクランプ装置のクランプ部材が回転軸線を中心に角度αだけ(
図16の視線方向に見て反時計方向に)回動されているので、クランプ部材の長手中心平面が参照平面と角度α(例えば約22°)を形成している。
【
図17】
図16のクランプ装置、収容ブロック及び工作物を、
図16の矢印17の方向に見た側面図である。
【
図18】クランプ装置、収容ブロック及び工作物の第4の実施形態を
図10に相当する断面で示しており、その場合にクランプ装置が締め付け位置にあって、その位置においてクランプ装置のクランプ部材が工作物を締め付け面に挟みつけており、その場合にクランプ装置はこの実施形態においてロック装置を有しており、そのロック装置によって旋回運動ピストンが直線運動ピストンにロック可能である。
【
図19】第4の実施形態におけるクランプ装置、収容ブロック及び工作物を、
図18に相当する断面で示しており、その場合にクランプ装置が中間位置にあって、その位置においてクランプ部材がゆるめ方向に直線的に工作物から離れるように移動されている。
【
図20】第4の実施形態におけるクランプ装置、収容ブロック及び工作物を
図18に相当する断面で示しており、その場合にクランプ装置がゆるめ位置にあって、その位置においてクランプ部材が旋回軸線を中心に中間位置から離れるように旋回されており、かつロック装置が解放位置にあり、その位置においてロック装置は旋回運動ピストンを直線運動ピストンにロックしない。
【発明を実施するための形態】
【0055】
等しい部材又は機能的に等価の部材は、すべての図において同一の参照符号で示されている。
【0056】
図1から9に示すクランプ装置100は、工作物102を締め付け面104に挟みつけるために用いられる。
【0057】
締め付け面104は、収容ブロック106に配置することができ、その収容ブロックにクランプ装置100が取り付けられている。しかしその代わりに、締め付け面104は、収容ブロック106とは異なる部材に設けることもできる。
【0058】
工作物102に挟みつけ力を供給するために、クランプ装置100はクランプ部材108を有しており、図示の実施例においてそのクランプ部材はクランプレバー110と、クランプレバー110内の透孔112を貫通する、例えば圧縮ねじ116の形式の圧縮片114を有しており、その圧縮片がクランプ装置100の締め付け位置において挟みつけるべき工作物102に当接する。
【0059】
圧縮片114は、ナット118によってクランプレバー110に固定することができる。
【0060】
以下でさらに詳しく説明するように、クランプ部材108は締め付け方向120に沿って挟みつけるべき工作物102へ近づくように、そして締め付け方向120とは逆のゆるめ方向122に沿って挟みつけるべき工作物102から離れるように、直線的に移動することができる。
【0061】
さらに、クランプ部材108は、締め付け方向120及びゆるめ方向122に対して横方向に、好ましくは垂直に延びる旋回軸線124を中心に旋回可能に旋回運動ピストン126と結合されている。
【0062】
旋回運動ピストン126は、締め付け方向122に沿って延びるピストンロッド128と、ピストンロッド128の上方の端部に固定されたジョイントアイ130とを有することができる。
【0063】
ここで、そして以下において「上」及び「下」という記載は、締め付け方向122に関するものである。その場合に締め付け方向122は垂直線と一致することができるが、垂直線に対して任意の角度だけ傾斜することもできる。
【0064】
ジョイントアイ130は、ボルト132によって貫通され、そのボルトの長手軸線が旋回軸線124と一致する。
【0065】
図1からもっともよくわかるように、ボルト132がさらにクランプ部材108の2つの軸受脚133を貫通している。
【0066】
旋回運動ピストン126は、締め付け方向122に沿って摺動可能に直線運動ピストン134内で案内されている。
【0067】
直線運動ピストン134は、シリンダ138の形式の下方部分136と、下方部分136内へ挿入された、ブッシュ142の形式の上方部分140とを有し、その上方部分にジョイントヘッド144が配置されている。
【0068】
ブッシュ142は、外ねじを有することができ、その外ねじがそれに対して相補的な、シリンダ138の内ねじ内へ螺合されている。
【0069】
直線運動ピストン134のジョイントヘッド144は、1つ又は2つの引っ張りフラップ146を介してクランプ部材108とリンク結合されている。
【0070】
そのために各引っ張りフラップ146は、旋回軸線124に対して平行にジョイントヘッド144内の透孔を通って延びる第1のボルト148と第2のボルト150によって貫通され、その第2のボルトは旋回軸線124に対して平行にクランプ部材108内の透孔を通って延びる。
【0071】
直線運動ピストン134は、締め付け方向122に沿って摺動可能に凹部152内で案内されており、その凹部は収容ブロック106内に形成されている。
【0072】
凹部152は、段つきで形成されて、下方のキャビティ154と上方のキャビティ160を有しており、下方のキャビティ内へ締め付け作動流体通路156が連通し、その通路は締め付け作動流体接続端158へ通じており、上方のキャビティは下方のキャビティ154よりも大きい直径を有し、かつその上方のキャビティ内へゆるめ作動流体通路162が連通しており、かつその通路はゆるめ作動流体接続端164へ通じている。
【0073】
シリンダ138の上方の終端領域166は、上方のキャビティ160を越えてクランプ装置100のカバー170の内部空間168内へ延びており、その内部空間が上方の締め付け作動流体室172を形成し、そこから締め付け作動流体が直線運動ピストン134の締め付け側へ作用することができ、それによってその直線運動ピストンが締め付け方向120に下方へ移動される。
【0074】
カバー170の内部空間168は、カバー170内に設けられている排気通路174を介して排気可能であって、その場合に排気通路174はクランプ装置100の駆動中は排気ボルト176によって閉鎖されている。
【0075】
図1と2からもっともよくわかるように、カバー170は複数の、例えば4つの固定ねじ178を介して収容ブロック106に取り外し可能に固定されている。
【0076】
直線運動ピストン134の上方部分140は、カバー170内で締め付け方向120に沿って摺動可能に案内されている。
【0077】
カバー170内にはさらに、方向変換ノズル180が配置されており、その方向変換ノズルはクランプ装置100の駆動中は(図示されない)圧縮空気源に接続されている。
【0078】
この方向変換ノズル180は、直線運動ピストン134がその上方の終端位置にある場合に、直線運動ピストン134の上方部分140内に設けられた出口通路182と流体接続され、
図7と8に示されるその上方の終端位置は、クランプ装置100の中間位置もしくはクランプ装置100のゆるめ位置に相当する。
【0079】
方向変換ノズル180と出口通路182との間に流体接続が存在する場合に、圧縮空気が出口通路182を通ってクランプ装置100の周囲へ流出することができ、それが圧縮空気導管内で方向変換ノズル180の上流に圧力降下をもたらし、それが(図示されない)圧力センサによって検出可能であり、かつ直線運動ピストン134が上方の終端位置へ達したことを示す。
【0080】
この圧力降下が確認された場合に、クランプ部材108が挟みつけるべき工作物102からはずれるので、工作物102は締め付け面104におけるその締め付け位置から取り出すことができる。
【0081】
さらに直線運動ピストン134は1つ又は複数の流体通路184を有しており、その流体通路が直線運動ピストン134をその内側からその外側へ貫通して、上方の締め付け作動流体室172内へ連通する。
【0082】
旋回運動ピストン126が流体通路186を有しており、旋回運動ピストン126が
図5と7に示す上方の終端位置にある場合に、その流体通路が一方で下方のキャビティ154と連通し、他方では直線運動ピストン134の流体通路184と流体接続され、その上方の終端位置はクランプ装置100の締め付け位置もしくは中間位置に相当する。
【0083】
この上方の終端位置において、旋回運動ピストン126のリングカラー188が、直線運動ピストン134の内側へ向かって張り出すストッパ190に添接し、そのストッパが旋回運動ピストン126の上方への摺動距離を制限する。
【0084】
下方のキャビティ154の、旋回運動ピストン126のリングカラー188の下方に位置する部分が、下方の締め付け作動流体室192を形成し、そこから旋回運動ピストン126の締め付け側に、締め付け作動流体通路156から締め付け作動流体が供給可能である。
【0085】
収容ブロック106内の凹部152の、旋回運動ピストン126のリングカラー188の上方に位置する部分(この部分は直線運動ピストン134の内部に位置する)が、内側のゆるめ作動流体室194を形成し、そこからゆるめ作動流体が旋回運動ピストン126のゆるめ側へ作用することができる。
【0086】
この内側のゆるめ作動流体室194内へ、直線運動ピストン134内の流体通路196の内側の端部が連通し、その他方の端部は直線運動ピストン134の外側で開口している。
【0087】
図5、7及び9から明らかなように、流体通路196の開口部の上方で直線運動ピストン134の外側に環状のシール198が配置されており、そのシールは、クランプ装置100の締め付け位置を示す
図5に示されるように、直線運動ピストン134がその上方の終端位置の下方にある間、下方のキャビティ154の周壁の形状のシール面200に密閉するように添接する。
【0088】
このシール198が下方のキャビティ154から上方へ離れるように移動され、それによってシールがもはやシール面200に添接しなくなった場合に、ゆるめ流体路が開放され、そのゆるめ流体路は上方のキャビティ160から直線運動ピストン134の外側に沿って流体通路196へ、そしてそこから内側のゆるめ作動流体室194内へ通じている。
【0089】
上方のキャビティ160の、ゆるめ作動流体通路162と流体接続し、かつ直線運動ピストン134に設けられたリングカラー202の下方に位置する部分が、外側のゆるめ作動流体室204を形成し、そこからゆるめ作動流体通路162からのゆるめ作動流体が直線運動ピストン134のゆるめ側へ作用することができる。
【0090】
締め付け面104に工作物102を挟みつけるための、上述したクランプ装置100は、以下のように機能する。
【0091】
挟みつけプロセスの前に、クランプ装置100は
図8と9に示すゆるめ位置にあって、その位置においてクランプ部材108の長手軸線206は、締め付け面104に対して角度β(好ましくは40°より大きく、例えば約50°)で傾斜している(特に
図8を参照)。
【0092】
図9の断面表示から明らかなように、直線運動ピストン134はその上方の終端位置にあって、その位置において直線運動ピストン134はカバー170に、特にカバー170の内部空間168の上方の制限壁に、添接している。
【0093】
旋回運動ピストン126は、直線運動ピストン134に対してその下方の終端位置にある。
【0094】
挟みつけるべき工作物102が締め付け面104に配置されており、その締め付け面に工作物がクランプ装置100のクランプ部材108によって挟みつけられようとしている。
【0095】
クランプ装置100の(図示されない)制御装置によって、締め付け作動流体接続端158へ通じる締め付け作動流体供給導管内の弁が開放され、それによって圧力下にある締め付け作動流体、特に油圧オイル、が下方の締め付け作動流体室192内へ達する。
【0096】
下方の締め付け作動流体室192内の締め付け作動流体が、旋回運動ピストン126の締め付け側へ作用するので、その旋回運動ピストンが直線運動ピストン134に対してゆるめ方向122に上方へ移動される、それが旋回軸線124を中心とするクランプ部材108の旋回運動(
図8と9の視線方向にみて時計方向)をもたらす。
【0097】
この旋回運動の間、上方の締め付け作動流体室172内への流体通路186を通る流体路は最初はまだ閉鎖されており、したがって直線運動ピストン126はその上方の終端位置に留まる。
【0098】
旋回運動ピストン126の上昇運動は、旋回運動ピストン126のリングカラー188が直線運動ピストン134のストッパ190に当接するまで続く。
【0099】
その後、
図6と7に示すクランプ装置100の中間位置が達成され、その位置においてクランプ部材108の長手軸線206と、圧縮片114の工作物102へ向いた端部に設けられた圧縮面210は、締め付け面104に対して実質的に平行に方向付けされる。
【0100】
しかしこの中間位置において、クランプ部材108の圧縮片114は、まだ工作物104から離隔している。
【0101】
さらに、この中間位置において、例えば旋回運動ピストン126の外側にリング通路として形成することができる、流体通路186の連通開口部212が、直線運動ピストン134の内側に設けられた環状のシール208を通過し、かつ、直線運動ピストン134を上方の締め付け作動流体室172へ向かって貫通する流体通路184と流体接続されているので、直線運動ピストン134の締め付け側へ向かう締め付け作動流体用の締め付け流体路が開放される。
【0102】
したがってクランプ部材108の旋回運動が終了した後に、直線運動ピストン134はその上方の終端位置から締め付け方向120に沿って下方へ移動し、それによってクランプ部材108が同様に締め付け方向120において挟みつけるべき工作物102上へ移動されて、ついには
図4と5に示す締め付け位置において圧縮片114が工作物の、締め付け面104と対向する外側面に(好ましくは平面的に)添接するので、工作物102に締め付け面104へ向けられた締め付け力が供給される。
【0103】
それによってクランプ部材108の旋回運動と直線運動を有する、ゆるめ位置から締め付け位置への旋回運動が終了する。
【0104】
したがってクランプ装置100は締め付け流体シーケンス制御を有しており、それが特に流体通路186と184及びシール208を有しており、かつそれによって、クランプ部材108の旋回運動が開始された後に初めて、そして好ましくはクランプ部材108の旋回運動が終了した場合に初めて、締め付け位置へのクランプ部材108の直線運動が開始されることになる。
【0105】
クランプ装置100によって締め付け面104に挟みつけられた工作物102を外すために、以下のように行われる。
【0106】
制御装置によって、ゆるめ作動流体接続端164へ通じる(図示されない)ゆるめ作動流体供給導管内の弁が開放されるので、ゆるめ作動流体、例えば油圧オイルが、ゆるめ作動流体通路162を通って外側のゆるめ作動流体室204内へ達して、直線運動ピストン134のゆるめ側へ作用し、それによって直線運動ピストン134がゆるめ方向122において
図5に示す下方の終端位置から上方へ移動される。
【0107】
それによって圧縮片114を有するクランプ部材108も、挟み付けられた工作物102から外されて、ゆるめ方向122に沿って直線的に工作物102から離れるように移動される。
【0108】
締め付け位置からのクランプ部材108のこの直線運動は、直線運動ピストン134がその上方の終端位置へ達した場合に終了し、その終端位置において直線運動ピストンがカバー170の内部空間168の上方の制限壁に当接するので、クランプ装置100の
図6と7に示す中間位置が達成される。
【0109】
クランプ部材108がこのように直線移動する間、外側のゆるめ作動流体室204から内側のゆるめ作動流体室194へのゆるめ流体路がシール198によって中断されているので、ゆるめ作動流体が旋回運動ピストン126のゆるめ側へ達することはなく、したがって旋回運動ピストン126は直線運動ピストン134に対してその上方の終端位置に留まる。
【0110】
図6と7に示す中間位置において、シール198は下方のキャビティ154から出るように移動しており、下方のキャビティ154の周壁によって形成されるシール面200にもはや添接していないので、外側のゆるめ作動流体室204から流体通路196を通って内側のゆるめ作動流体室194へいたるゆるめ流体路は開放されており、ゆるめ作動流体は旋回運動ピストン126のゆるめ側へ作用することができる。
【0111】
それによって旋回運動ピストン126が直線運動ピストン134に対して下方へ向かって、したがって締め付け方向120に摺動され、それによって旋回運動ピストン126とリンク結合されているクランプ部材108が、クランプ部材108の長手軸線206が締め付け面104に対して実質的に平行に方向付けされている中間位置から、
図8と9に示すゆるめ位置へ旋回され、そのゆるめ位置においてクランプ部材108の長手軸線206は締め付け面104に対して角度βで傾斜している。
【0112】
クランプ部材108のこの旋回運動は、旋回運動ピストン126の下方の端部が下方のキャビティ154の底214に当接した場合に終了する。
【0113】
それによってクランプ装置100のゆるめプロセスが終了し、工作物102は締め付け面104におけるその締め付け位置から取り出すことができる。
【0114】
したがってクランプ装置100は、ゆるめ流体シーケンス制御を有しており、それは特にシール198と流体通路196を有しており、かつ、締め付け位置からのクランプ部材108の直線運動が開始された後に初めて、そして好ましくは締め付け位置からのクランプ部材108の直線運動が終了した場合に初めて、ゆるめ位置へのクランプ部材108の旋回運動が開始されることをもたらす。
【0115】
図10から12に示す、クランプ装置100と収容ブロック106の第2の実施形態は、上述した第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態において直線運動ピストン134は収容ブロック106の凹部152内で直接直線的に案内されず、クランプ装置100が付加的にスリーブ216を有しており、その中で直線運動ピストン134が締め付け方向120に沿って摺動可能に案内されており、かつそのスリーブがその内側にシール218を有しており、そのシールが直線運動ピストン134の周面に設けられたシール面220に密閉するように添接する。
【0116】
シール218の上方において、スリーブ216に1つ又は複数の流体通路222が設けられており、それらの流体通路がスリーブを外側からその内側へ貫通し、かつ外側においてゆるめ作動流体通路162と流体接続されている。
【0117】
スリーブ216の内側において、各流体通路222が外側のゆるめ作動流体室204内へ連通し、そこからゆるめ作動流体が直線運動ピストン134のゆるめ側へ作用することができる。
【0118】
図10に示すクランプ装置100の締め付け位置において、外側のゆるめ作動流体室204から流体通路196をとおって内側のゆるめ作動流体室194(この内側のゆるめ作動流体室からゆるめ作動流体が旋回運動ピストン126のゆるめ側へ作用することができる)へ通じるゆるめ流体路は、シール218によって中断されている。
【0119】
直線運動ピストン134が持ち上がることによってクランプ装置100が
図11に示す中間位置へ移動された場合に、流体通路196がシール218を通過して、外側のゆるめ作動流体室204と流体接続されるので、外側のゆるめ作動流体室204から流体通路196をとおって内側のゆるめ作動流体室194内へいたるゆるめ流体路が開放される。
【0120】
それに続いてゆるめ作動流体が旋回運動ピストン126のゆるめ側へ作用するので、旋回運動ピストン126が締め付け方向120において下方へ移動され、それによって
図11に示す中間位置から
図12に示すゆるめ位置へのクランプ部材108の旋回運動が駆動される。
【0121】
したがってクランプ装置100のこの実施形態は、ゆるめ流体シーケンス制御を有しており、それは特にシール218と流体通路196を有し、かつ、締め付け位置からのクランプ部材108の直線運動開始された後に初めて、かつ好ましくは締め付け位置からのクランプ部材108の直線運動が終了した場合に初めて、ゆるめ位置へのクランプ部材108の旋回運動が開始されることを、もたらす。
【0122】
図12に示すゆるめ位置から
図11に示す中間位置を介して
図10に示す締め付け位置へクランプ部材108の締め付け運動を制御することは、流体通路186とシール208によって、第1の実施形態に関連して上で説明したように、制御される。
【0123】
第2の実施形態のスリーブ216は、外ねじ224を有することができ、その外ねじはクランプ装置100が取り付けられた状態において、収容ブロック106内の凹部152の周壁に設けられた、それに対応する内ねじ226内へ嵌入する。
【0124】
クランプ装置100の第2の実施形態は、クランプ装置がゆるめ位置から締め付け位置へ、あるいは締め付け位置からゆるめ位置へ移動する場合に、密閉するように添接するシール面に対して移動する、動的なシール、特にシール218が、それぞれシール面に、例えばシール面220に添接し、そのシール面がクランプ装置100の構成部分に、すなわち直線運動ピストン134に、形成されており、それが高い表面品質を有しているので、これらのシールは締め付けサイクルの間わずかな負荷しか受けない、という利点を提供する。
【0125】
それに対してシール222(このシールを介してスリーブ216の外側が収容ブロック106内の凹部の周壁に密閉するように添接する)は、静的なシールであって、それは締め付けサイクルの間、それぞれ添接するシール面に対して移動しないので、シール面として用いられる凹部152の周壁は高い表面品質を有する必要がない。
【0126】
それとは異なり、
図1から9に示す第1の実施形態においては、直線運動ピストン134の外側に設けられた動的なシール、特にシール198は、それぞれシール面に、例えばシール面200に添接し、そのシール面が収容ブロック106内の凹部152の周壁に形成されているので、このシール面は、多数の締め付けサイクル後も確実な密閉を保証するために、高い表面品質をもたなければならない。
【0127】
その他において、
図10から12に示すクランプ装置100の第2の実施形態は、構造、機能及び形成方法に関して、
図1から9に示す第1の実施形態と一致するので、その限りにおいて上述したその説明を参照することができる。
【0128】
図13から17に示すクランプ装置100の第3の実施形態は、上述した第2の実施形態とは異なり、クランプ装置100のカバー170は固定ねじによって直接収容ブロック106に固定されておらず、その代わりにカバー170は、締め付け方向120に対して平行に延びる回転軸線232を中心に回転可能に配置されており、かつ回転軸線232に関するカバー170の角度位置は、固定装置230によって取り外し可能に固定することができる。
【0129】
固定装置230は、特にクリップ装置として形成することができ、好ましくはクリップフランジ又はクリップリングを有し、クリップリング234が1つ又は複数の、例えば4つの固定ねじ236によって収容ブロック106に取り外し可能に固定された場合に、そのクリップリングがカバー170を把持して、収容ブロック106に対して圧接する。
【0130】
カバー170は、その中で摺動可能に案内される直線運動ピストン134と相対回動不能に結合されており、かつ直線運動ピストン134はその中で摺動可能に案内される旋回運動ピストン126と相対回動不能に結合されているので、回転軸線232を中心とするカバー170の回転が結果として、回転軸線232を中心とするクランプ部材108のそれに応じた回転をもたらす。
【0131】
回転軸線232は、特に旋回運動ピストン126の長手中心軸と一致する。
【0132】
図14と15には、クランプ装置100が参照位置で示されており、その位置においてクランプ部材108の長手軸線206は収容ブロック106の長手中心平面238に対して平行に方向付けされており、したがってそれと0°の角度を形成する。
【0133】
収容ブロック106に対するクランプ部材108の角度位置を、好ましくは無段階に変化させるために、クリップリング234の固定ねじ236は、カバー170がクリップリング234に対して回転軸線232を中心に回動することができる程度に、緩められる。
【0134】
カバー170、直線運動ピストン134及びクランプ部材108を有する旋回運動ピストン126が、ゼロとは異なる角度α(
図16を見る視線方向に、例えば反時計方向に)だけ回動された後に、回転軸線232に関するこれらの部材の角度位置が、固定ねじ236を引き締めることによって固定される。
【0135】
そのほかにおいて、
図13から17に示すクランプ装置100の第3の実施形態は、構造、機能及び形成方法に関して
図10から12に示す第2の実施形態と一致し、その限りにおいて上述したその説明を参照することができる。
【0136】
回転軸線232を中心に回転可能かつ固定装置230を用いて回転軸線232に関して所望の角度位置に、好ましくは無段階に、固定可能なカバー170の使用は、
図1から9に示すクランプ装置100の第1の実施形態においても可能である。
【0137】
図18から20に示すクランプ装置100と収容ブロック106の第4の実施形態は、上述し、かつ
図10から12に示す第2の実施形態から次のことによって、すなわち第4の実施形態においてクランプ装置100がロック装置240を有しており、それを用いて旋回運動ピストン126が直線運動ピストン134にロック可能であるので、クランプ部材108が所望の旋回運動を実施しようとしない間、旋回運動ピストン126と直線運動ピストン134との間の相対移動が特に確実に阻止されることによって、区別される。
【0138】
例えば
図18に明らかなように、この種のロック装置240の特別な形態はロック体242を有しており、そのロック体は少なくとも部分的にロック体収容部244内に収容されている。
【0139】
ロック体収容部244は、好ましくは直線運動ピストン134に、特にその下方部分136に、配置されている。
【0140】
ロック体収容部244は、例えば径方向の孔として形成することができ、その孔が直線運動ピストン134をその内側からその外側へ貫通している。
【0141】
ロック体収容部244の長手軸線は、締め付け方向120に対して好ましくは実質的に垂直かつクランプ装置100のゆるめ方向122に対して好ましくは実質的に垂直に方向付けされている。
【0142】
ロック体242はロック体収容部244内に、ロック体が直線運動ピストン134に対してロック体収容部244の長手方向に移動可能であるように、配置されている。
【0143】
ロック体242は、例えば玉248の形状の、1つ又は複数の転がり体246を有することができる。
【0144】
ロック装置240の好ましい形態において、ロック体242は2つ又はそれより多い玉248によって形成されており、それらの玉は好ましくは実質的に同一の直径を有し、かつ好ましくは互いに接触する。
【0145】
ロック体242が旋回運動ピストン126と係合することができるようにするために、旋回運動ピストン126にロック凹部250が設けられており、そのロック凹部は、クランプ装置100が
図18に示す締め付け位置にあって、旋回運動ピストン126が直線運動ピストン134に対してその最高の位置を占めた場合に、
直線運動ピストン134に設けられたロック体収容部244に対向する。
【0146】
このロック位置において、ロック体242がロック体収容部244からロック凹部250内へ張り出すので、旋回運動ピストン126が形状結合によって、直線運動ピストン134に対して移動することを阻止される。
【0147】
直線運動ピストン134の外側において、ロック体収容部244はスリーブ216の内側によって閉鎖されているので、2つの玉248によって形成されるロック体242は、旋回運動ピストン126の径方向において外側へ逃げることはできない。
【0148】
旋回運動ピストン126を直線運動ピストン134に設けられたロックから外すことができるようにするために、スリーブ216に回避凹部252が設けられており、ロック体収容部244が直線運動ピストン134及びそれにロックされた旋回運動ピストン126と共に、クランプ部材108が締め付け位置から
図19に示す中間位置内へ直線移動する間に上方へ移動されて、ロック体収容部が回避凹部に対向した時に、ロック体242は径方向外側へ向かってその回避凹部内へ逃げることができる。
【0149】
クランプ部材108の中間位置において、特に2つの玉248によって形成されるロック体242は、旋回運動ピストン126の径方向に自由に移動することができる。
【0150】
次に旋回運動ピストン126が直線運動ピストン134に対して下降運動する場合に、ロック体242は、好ましくはロック凹部250の上方の端縁に設けられた斜面254によって、ロック凹部250から押し出されて、その場合に部分的に回避凹部252内へ圧入される。
【0151】
ロック装置240は、複数のロック体242を有することができ、それらがそれぞれ対応づけられたロック体収容部244内へ少なくとも部分的に収容されており、その場合にロック体242とロック体収容部244は、旋回運動ピストン126の周面の回りに好ましくは実質的に等間隔で分配されている。
【0152】
ロック凹部250は、特に旋回運動ピストン126の外側に環状溝として形成することができる。
【0153】
図18に示すクランプ装置100の締め付け位置において、ゆるめ流体路は、外側のゆるめ作動流体室204から流体通路196を通って内側のゆるめ作動流体室194へ至り、前記内側のゆるめ作動流体室194からゆるめ作動流体が旋回運動ピストン126のゆるめ側に作用することができる。
【0154】
この締め付け位置において、ロック装置240がロック位置にあり、そのロック位置においてロック体242が旋回運動ピストン126に設けられたロック凹部250内へ嵌入して、それによって直線運動ピストン134に対する旋回運動ピストン126の移動を阻止する。
【0155】
直線運動ピストン134が持ち上がることによって締め付け装置100が
図19に示す中間位置へ移動された場合に、流体通路196が外側のゆるめ作動流体室204と流体接続されるので、外側のゆるめ作動流体室204から流体通路196を通って内側のゆるめ作動流体室194内へいたるゆるめ流体路が開放される。
【0156】
クランプ装置100のこの中間位置において、ロック装置240のロック体242は旋回運動ピストン126の径方向に自由に移動することができる。
【0157】
それに続いてゆるめ作動流体が旋回運動ピストン126のゆるめ側に作用するので、旋回運動ピストン126が締め付け方向120に下方へ移動され、それによって
図19に示す中間位置から
図20に示すゆるめ位置へのクランプ部材108の旋回運動が駆動される。
【0158】
ロック体242は、旋回運動ピストン126が下降運動する場合に斜面254によって径方向外側へ向かって、ロック体収容部244に対向するロック凹部250内へ押しやられるので、ロック体242はもはやロック凹部250と係合しておらず、直線運動ピストン134に対する旋回運動ピストン126の相対移動をもはやブロックしない。
【0159】
したがってクランプ装置100のこの実施形態も、ゆるめ流体シーケンス制御を有しており、それは特にシール218と流体通路196を有し、かつ、締め付け位置からのクランプ部材108の直線移動が開始された後に初めて、そして好ましくは締め付け位置からのクランプ部材108の直線移動が終了した場合に初めて、ゆるめ位置へのクランプ部材108の旋回運動が開始されることを、もたらす。
【0160】
直線運動ピストン134に対する旋回運動ピストン126の相対運動とそれに伴ってクランプ部材108の旋回運動の開始は、この実施形態においてロック装置240によって排除されており、そのロック装置は、締め付け位置から中間位置へのクランプ部材108の直線移動がまだ終了されない間、旋回運動ピストン126を直線運動ピストン134にロックする。
【0161】
図20に示すゆるめ位置から
図19に示す中間位置を介して
図18に示す締め付け位置へのクランプ部材108の締め付け運動の制御は、流体通路186とシール208によって、第1の実施形態に関連して説明したように、制御される。
【0162】
そのほかにおいて、
図18から20に示すクランプ装置100の第4の実施形態は、構造、機能及び形成方法に関して
図10から12に示す第2の実施形態と一致するので、その限りにおいて上述したその説明を参照することができる。
【0163】
第4の実施形態に関連して上で説明した種類の、旋回運動ピストン126を直線運動ピストン134にロックするロック装置240は、
図1から9に示す、スリーブ216(この中で直線運動ピストン134が締め付け方向120に沿って摺動可能に案内される)を持たない第1の実施形態においても、原則的に使用することができる。
【0164】
この場合において、ロック凹部250からのロック体242の抜けだしを可能にする回避凹部252は、スリーブ216の代わりに収容ブロック106に、あるいは他の装置に、例えばクランプ装置100を挿入することのできる機械テーブルに、配置される。
【0165】
クランプ装置100の上述した4つの実施形態は、いわゆるカートリッジ技術で形成されているので、クランプ装置100は、ハウジングを介在させずに、直接収容ブロック106又は他の装置の、例えば機械テーブルの凹部152内へ挿入可能であり、特に差し込み可能あるいはねじ込み可能である。
【0166】
しかしその代わりに、これらの実施形態の各々においても、クランプ装置の下方の部分、特に直線運動ピストン134、旋回運動ピストン126及び場合によってはスリーブ216も、クランプ装置のハウジング内に配置することができ、そのハウジングが好ましくはカバー170と、特に取り外し可能に、結合されている。
【0167】
その場合にこの種のハウジングは、収容ブロック106又は他の装置の凹部152内へ挿入することができ、あるいは支持面上に載せて、支持面に固定することができる。