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  • 特許-透明ラッパーを有する喫煙物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】透明ラッパーを有する喫煙物品
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/02 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
A24D1/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018563902
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017066205
(87)【国際公開番号】W WO2018002264
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】16177368.4
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ビナッシ エンリコ
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536154(JP,A)
【文献】米国特許第03339560(US,A)
【文献】特表2012-529276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品用のマウスピースであって、
少なくとも一つのマウスピース要素と、
セルロースの酢酸エステルを含む実質的に透明なラッパーであって、前記実質的に透明なラッパーが、前記実質的に透明なラッパーの第一および第二の向かい合った端が長軸方向の重なり合う領域に沿って相互に重なり合うように前記少なくとも一つのマウスピース要素の周りに巻かれているラッパーと、
前記長軸方向の重なり合う領域の少なくとも一部分にある実質的に透明なラッパーの前記第一および第二の向かい合った端の間に配置されたグリセロールのエステルを含む物質によって、前記実質的に透明なラッパー内に形成された、実質的に透明な継ぎ目とを含む、マウスピース。
【請求項2】
前記セルロースの酢酸エステルが、酢酸セルロース、二酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースから成る群から選択される、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項3】
前記実質的に透明なラッパーが実質的にセルロースの酢酸エステルから成る、請求項1または請求項2に記載のマウスピース。
【請求項4】
前記少なくとも一つのマウスピース要素が、濾過材料の少なくとも一つのプラグを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項5】
濾過材料の前記少なくとも一つのプラグが、間隙を介してその間にくぼみを形成する濾過材料の少なくとも二つのセグメントを含む、請求項4に記載のマウスピース。
【請求項6】
前記実質的に透明なラッパーの前記重なり合う領域の透明度が、前記実質的に透明なラッパーの残りの部分の透明度の10パーセント以内である、請求項1~5のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項7】
前記実質的に透明なラッパーが10ミクロン~100ミクロンの厚さを有する請求項1~6のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項8】
前記グリセロールのエステルがトリアセチンである、請求項1~7のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項9】
前記実質的に透明なラッパーの少なくとも一部分を囲む紙ラッパーと、下にある実質的に透明なラッパーの一部分が窓を通して見えるように前記紙ラッパー内に提供された前記窓とをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項10】
喫煙物品であって、
エアロゾル発生基体と、
前記エアロゾル発生基体と軸方向に整列した、請求項1~9のいずれか一項に記載のマウスピースと、
を備える喫煙物品。
【請求項11】
喫煙物品であって、
エアロゾル発生基体と、
前記エアロゾル発生基体と軸方向に整列した、請求項9に記載のマウスピースと、
を備え、
前記紙ラッパーが前記マウスピースを前記エアロゾル発生基体に固定する、喫煙物品。
【請求項12】
喫煙物品用のマウスピースを形成する方法であって、前記方法が、
少なくとも一つのマウスピース要素を提供する工程と、
セルロースの酢酸エステルを含む実質的に透明なラッパーを提供する工程であって、前記実質的に透明なラッパーが第一および第二の向かい合った端を有する工程と、
前記実質的に透明なラッパーの前記第一の向かい合った端に隣接して物質を配置する工程であって、前記物質がグリセロールのエステルを含む工程と、
前記実質的に透明なラッパーの前記第一および第二の向かい合った端が、長軸方向の重なり合う領域に沿って相互に重なり合うように、前記少なくとも一つのマウスピース要素の周りに前記実質的に透明なラッパーを巻きつける工程とを含み、
前記物質の前記グリセロールのエステルが、前記セルロースの酢酸エステルと反応して、前記向かい合った端を相互に固定する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記実質的に透明なラッパー、またはグリセロールのエステルを含む前記物質、または前記実質的に透明なラッパーとグリセロールのエステルを含む前記物質との両方を70℃~80℃の温度に加熱する工程をさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の方法であって、
前記長軸方向の重なり合う領域に圧縮力をかける工程をさらに含む、方法。
【請求項15】
前記セルロースの酢酸エステルが、酢酸セルロース、二酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースから成る群から選択される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に透明なラッパーを有する喫煙物品用のフィルター、およびそうしたフィルターを製造する方法に関連する。本発明はまた、こうしたフィルターを組み込んだ喫煙物品に関連する。
【背景技術】
【0002】
フィルター紙巻たばこは通常、紙ラッパーで囲まれたたばこカットフィラーの円筒形のロッドと、包まれたたばこロッドと端と端を接して軸方向に整列された円筒形のフィルターとを備える。円筒形のフィルターは通常、紙プラグラップによって取り囲まれている濾過材料を含む。従来的には、包まれたたばこロッドおよびフィルターは、フィルターの全長および包まれたたばこロッドの隣接部分を囲む、通常は不透明の紙材料によって形成されるチッピングラッパーの帯によって結合される。
【0003】
たばこなどのエアロゾル発生基体が燃焼式ではなく加熱式である数多くの喫煙物品も、当技術で提案されてきた。加熱式喫煙物品において、エアロゾルはエアロゾル発生基体の加熱によって生成される。周知の加熱式喫煙物品には例えば、電気的加熱によるか、または可燃性燃料要素または熱源からエアロゾル発生基体への熱の伝達によってエアロゾルが生成される喫煙物品が含まれる。喫煙中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル発生基体から放出され、喫煙物品を通して引き出された空気中に混入される。放出された化合物は冷めるにつれて凝縮してエアロゾルを形成し、これが消費者によって吸い込まれる。また、燃焼することなく、また一部の場合において加熱することなく、例えば化学反応によって、たばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン供与源からニコチン含有エアロゾルが生成される喫煙物品も周知である。
【0004】
喫煙物品のラッパーは典型的に、各ラッパーの向かい合った端が長軸方向の重なり合う領域に沿って相互に重なり合って継ぎ目を形成するように提供されている。各ラッパーの向かい合った端を継ぎ目に沿って相互に固定するために、ポリビニルアルコール(PVA)またはホットメルト接着剤などの接着剤が使用される。
【0005】
消費者が喫煙物品の少なくとも一部分をラッパーを通して観察できるように、少なくとも部分的に透明なラッパーを有する喫煙物品を提供することも、これまでに提案されてきた。例えば、喫煙物品は、透明な高分子材料から形成されたチッピングラッパーを伴って提供されてきた。しかしながら、透明な高分子チッピングラッパーは、従来の紙チッピングラッパーと比較して異なる表面感触を提供し、これは消費者に嫌われる傾向にある。
【0006】
別の方法として、消費者が切り抜き窓を通して喫煙物品の下にある部分を観察できるように、切り抜き窓を備えた不透明なチッピングペーパーを有する喫煙物品を提供することも提案されてきた。プラグラップが、こうしたチッピングペーパーと下にあるフィルターとの間に提供されている場合、ユーザーは窓を通して、かつ透明なプラグラップを通して喫煙物品の下にある部分を見ることができるように、透明な材料から形成されたプラグラップを使用する必要があった。
【0007】
ところが、PVAやホットメルト接着剤などの接着剤を使用して実質的に透明なプラグラップの継ぎ目が形成される場合、継ぎ目は透明にはならず、結果的にプラグラップの残りの部分からはっきりと識別できる。これは、実質的に透明なプラグラップが切り抜き窓を備えたチッピングペーパーの下にある場合に特に問題であり、その理由は、継ぎ目が窓の下に定置されるのを避けるために見当合わせが必要になるからである。
【0008】
従って、喫煙物品の全周囲の辺りが透明に見えることができる、実質的に透明なラッパーを有する喫煙物品を提供することが望ましいであろう。実質的に透明なラッパーとチッピングペーパーの間での見当合わせを必要とせずに、チッピングペーパー窓内の切り抜きの下にある実質的に透明なラッパーを有する喫煙物品を提供することがさらに望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第一の態様によると、少なくとも一つのマウスピース要素と、実質的に透明なラッパーの第一および第二の向かい合った端が、長軸方向の重なり合う領域に沿って相互に重なり合うように、少なくとも一つのマウスピース要素の周りに巻かれた実質的に透明なラッパーと、長軸方向の重なり合う領域の少なくとも一部分にある実質的に透明なラッパーの第一および第二の向かい合った端の間に配置された物質とを含む、喫煙物品用のマウスピースが提供されており、ここで実質的に透明なラッパーは、セルロースの酢酸エステルを含み、また物質はグリセロールのエステルを含む。
【0010】
実質的に透明なラッパーのグリセロールのエステルは、トリアセチン(別名、グリセロールトリアセテート)であることが好ましい。グリセロールのエステルは、トリアセチンの代わりに、またはそれに加えてクエン酸トリエチルでもよい。
【0011】
従来技術の継ぎ目接着剤とは対称的に、本発明の発明者は、グリセロールのエステルを含む物質(すなわち結合剤)と、セルロースの酢酸エステルを含む実質的に透明なラッパーとを使用して、実質的に透明な継ぎ目が得られることを見いだした。グリセロールのエステルは実質的に透明な物質であり、従来の接着剤とは異なり、ラッパー内でセルロースの酢酸エステルと相互作用して、長軸方向の重なり合う領域にある重なり合う部分を相互に直接的に結合するか、またはその他の方法で密着させる。この結果、従来の接着剤の場合のように、二つの重なり合う端の間に明確な継ぎ目があるのではなく、重なり合う端の一つが、重なり合う領域にある他方の重なり合う端へと継ぎ目なく移行する。その結果、重なり合う領域は事実上、ラッパーの残りの部分と同一のまたは類似の属性を有するラッパーの部分であると考えられるため(ただし、ラッパーの残りの部分の厚さの2倍である)、ラッパーの残りの部分と実質的に同じ外観を有することができる。
【0012】
従って、本発明の第二の態様によると、少なくとも一つのマウスピース要素と、少なくとも一つのマウスピース要素を囲む実質的に透明な外筒とを備える、喫煙物品用のマウスピースが提供されており、ここで実質的に透明な外筒はセルロースの酢酸エステルを含み、また実質的に透明な外筒は、セルロースの酢酸エステルとグリセロールのエステルとの相互作用によって形成される長軸方向に延びる部分を含む。言い換えれば、少なくとも一つのマウスピース要素と、少なくとも一つのマウスピース要素を囲む実質的に透明な外筒とを備える、喫煙物品用のマウスピースが提供されており、ここで実質的に透明な外筒は、セルロースの酢酸エステルを含み、また実質的に透明な外筒は、マウスピースの半径方向に測定して、実質的に透明な外筒の残りの部分の厚さの約2倍の厚さを有する長軸方向に延びる部分を含む。
【0013】
これは、二つの重なり合う部分の間に継ぎ目を単純に形成する従来の接着剤と対称的である。従って、結果的にできる重なり合う領域は、結果的な重なり合う領域が、その両側のラッパーの領域の約2倍の厚さであることを除き、重なり合う領域の両側のラッパーの領域の連続体として見えうる。本書で使用されている「実質的に透明」という用語は、その材料を通して見ることができるように、少なくとも十分な比率の入射光が通過することを可能にする材料を描写するために使用される。本発明において、実質的に透明なラッパーは、下にあるマウスピースセグメントがラッパーを通して見えるように、十分な光がそのラッパーを通過することを可能にする。実質的に透明なラッパーの透明度は、ASTM D1003 - 13に従い評価されうる。
【0014】
実質的に透明なラッパーは、完全に透明なものとしうる。別の方法として、実質的に透明なラッパーは、下にあるマウスピースセグメントが実質的に透明なラッパーを通して見えるように、低レベルの透明度を有しながらも十分な光を伝達するものとしうる。一部の場合において、実質的に透明なラッパーは、濃淡や色が付いたものとしうる。
【0015】
セルロースの酢酸エステルは、酢酸セルロース、二酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースから成る群から選択されることが好ましい。セルロースの酢酸エステルは二酢酸セルロースであることが特に好ましい。
【0016】
実質的に透明なラッパーは、セルロースの酢酸エステルに加えて、追加的な化合物から構成されうる。ところが、実質的に透明なラッパーは、セルロースの酢酸エステルから実質的に構成されることが好ましい。十分なセルロースの酢酸エステルが実質的に透明なラッパーの表面に存在し、それによってグリセロールのエステルとの反応が可能であることを確実にするのに役立ちうる。
【0017】
実質的に透明なラッパーは一つ以上の層を備えてもよく、少なくとも一つの層はセルロースの酢酸エステルを含む。一部の好ましい実施形態において、実質的に透明なラッパーは、セルロースの酢酸エステル(二酢酸セルロースなど)を含む二つの層の間に配置された高分子層(ポリビニルアルコール層など)を含む。
【0018】
物質は、重なり合う領域に沿って延びる線の形態で提供されることが好ましい。線の幅は、約0.1ミリメートル~約5ミリメートルであることが好ましく、約0.5ミリメートル~約3ミリメートルであることがより好ましく、約1ミリメートル~約2.5ミリメートルであることがなおさらに好ましい。
【0019】
物質は、約0.5ミリグラム~約1.5ミリグラムの量で提供されることが好ましい。
【0020】
本発明による喫煙物品のマウスピースは、濾過材料の一つ以上のセグメントを含むフィルターを備えうる。例えば、マウスピースは濾過材料の単一セグメントを備えることができ、またマウスピースは濾過材料の二つ以上のセグメントを含む、複数セグメントのフィルターを備えうる。二つ以上のフィルターセグメントが提供される場合、フィルターセグメントは互いに同一の構造および材料のものとしうる。ただし、フィルターセグメントは互いに異なる構造を有する、および/または異なる濾過材料を含むことが好ましい。
【0021】
マウスピースが濾過材料の二つ以上のセグメントを含む実施形態において、濾過材料の少なくとも二つのセグメントは間隙を介して、その間にくぼみを形成することができる。くぼみには、少なくとも部分的に風味材料が充填されうる。
【0022】
マウスピースが濾過材料の一つ以上のセグメントを含む実施形態のいずれにおいても、少なくとも一つのフィルターセグメントは風味材料を含みうる。これは、くぼみが存在する時に、その中に供給される風味材料とは別の追加的な風味材料でありうる。
【0023】
一部の実施形態において、風味材料は粒子状の風味材料である。適切な粒子状の風味剤材料には、液体の風味剤を浸み込ませた吸収材またはセルロース系材料の粒子が含まれる。一部の好ましい実施形態において、粒子状の風味材料は、EP-A-1,958,523号に記載のある植物の葉の粒子を含みうる。例えば風味材料には、たばこ、緑茶、ペパーミント、オランダハッカ、月桂樹、ユーカリ、バジル、セージ、クマツヅラおよびカワラヨモギの葉が含まれうる。さらに、ミント系植物の各部も使用しうる。「ミント」という用語は、ハッカ(Mentha)属に属する植物を意味する。別の方法として、植物材料は、香辛料として一般に使用されているものなど、種子、根、皮および/または花の形態としうる。
【0024】
一部の実施形態において、風味材料は、カプセルが消費者による圧迫などの外力を受けた時に少なくとも流体の一部分を放出するように適合されたカプセル入りで提供されている。
【0025】
マウスピースにはまた、セルロース系材料または吸収材のビーズまたは顆粒など、風味剤を含まない粒子状の材料も含みうる。これは、上述の粒子状の風味材料に追加的なもの、またはそれに代わる代替的なものでありうる。適切な吸収材には、活性炭、炭素ビーズ、活性アルミニウム、沸石、海泡石、分子ふるいおよびシリカゲルが含まれる。
【0026】
マウスピースに濾過材料の一つ以上のセグメントが含まれる場合、濾過材料は、酢酸セルローストウまたは紙などの繊維質濾過材料のプラグであることが好ましい。フィルター可塑剤は、分離されたファイバー上に吹き付けることによって、従来の方法で繊維質の濾過材料に塗布することができ、何らかの粒子状材料を濾過材料に塗布する前に行うことが好ましい。マウスピースには、様々な異なるタイプのフィルターセグメントまたはフィルターセグメントの組み合わせが含まれうるが、これには上述のものの他、制限器を備えたセグメントや、引き出し抵抗(RTD)の調節に使用されるセグメントなど、当業者に周知のその他のタイプのフィルターセグメントが含まれる。
【0027】
フィルターが単一のセグメントを含む場合、実質的に透明なラッパーはフィルター材料を囲むプラグラップとしうる。フィルターが二つ以上のセグメントを含む場合には、任意またはすべてのセグメントはそれぞれ、セグメントプラグラップに個別に巻かれうる。その後、フィルターのセグメントは、実質的に透明なラッパーを使用して従来の方法で互いに取り付けられることができ、これが結合用プラグラップを形成する。この場合において、結合用プラグラップが透明であることに加えて、少なくとも一つのセグメントプラグラップが透明であることが好ましく、また一部の場合において、これらの透明なラッパーは同一材料で形成されている。
【0028】
上述の通り、本発明は有利なことに、実質的に透明なラッパーの残りの部分に近いか、それと同じ透明度を重なり合う領域が有することができるようにする。従って、実質的に透明なラッパーの重なり合う領域の透明度は、実質的に透明なラッパーの残りの部分の透明度の10パーセント以内であることが好ましく、5パーセント以内であることがより好ましい。透明度はASTM D1003 - 13に従い評価されうる。
【0029】
実質的に透明なラッパーの厚さは、約10マイクロメートル以上であることが好ましい。実質的に透明なラッパーの厚さは、約200マイクロメートル以下であることが好ましく、約100マイクロメートル以下であることがより好ましい。実質的に透明なラッパーの厚さは、約25マイクロメートル~約75マイクロメートルであることがより好ましい。実質的に透明なラッパーの坪量は、少なくとも約15グラム/平方メートル(gsm)であることが好ましい。実質的に透明なラッパーの坪量は、約20gsm~約130gsmであることがより好ましい。
【0030】
マウスピースは、実質的に透明なラッパーの少なくとも一部分を囲む紙ラッパーをさらに含むことが好ましい。
【0031】
窓および実質的に透明なラッパーを通して、下にあるマウスピースセグメントが見えるように、窓を紙ラッパーに提供しうる。これによって、消費者が実質的に透明なラッパーの下にあるマウスピースの一部分を見ることを可能にする。紙ラッパーは、希望に応じて単一の窓または複数の窓を含みうる。紙ラッパーに複数の窓が含まれる場合、それらは同一の窓とすることができ、または異なるマウスピース設計に適応するために異なるサイズまたは形状を有することもできる。
【0032】
窓は、紙ラッパーに切り抜きを形成することによって供給されうる。別の方法として、紙ラッパーは、マウスピースの少なくとも一部分を囲んで窓を形成する透明な材料の帯を有する複合材料から形成されうる。さらに別の方法として、紙ラッパーは、マウスピースの長さに沿って間隙を介してギャップを画定する紙材料の帯2本を備えることができ、そのギャップが窓を形成する。
【0033】
紙ラッパーが一つの窓を含む実施形態において、窓はマウスピースの全周囲の辺りに延びうる。ただし、窓はマウスピースの周囲の一部分のみの辺りに延びることが好ましい。一部の実施形態において、マウスピースは、紙ラッパーの下にあり、かつマウスピースが使用時に窓で潰れたり折れたりしないように窓を横切って延びる、高坪量の透明なプラグラップを含むことが好ましい。例えば、実質的に透明なプラグラップの坪量は、少なくとも60gsmとすることができ、およそ80gsmであることが好ましい。
【0034】
マウスピースがくぼみを含む実施形態において、消費者が窓および実質的に透明な層を通してくぼみを観察できるように、窓はくぼみの少なくとも一部分の上にあることが好ましい。
【0035】
別の方法として、または追加的に、消費者が窓および実質的に透明な層を通して粒子状の材料を観察できるように、紙ラッパーは粒子状の材料を含むフィルターセグメントの少なくとも一部分の上にある窓を含みうる。紙ラッパーがまた、マウスピース内のくぼみの上にある窓を含む場合、その窓はマウスピースの両方の部分の上に延びる同一の窓であっても、異なる窓であってもよい。
【0036】
本発明による喫煙物品において、マウスピースはエアロゾル発生基体と隣接してもよく、またはマウスピースはエアロゾル発生基体と隣接しなくてもよい。例えば、マウスピースはエアロゾル発生基体から間隙を介していてもよく、その間にギャップまたはくぼみを画定しうる。別の方法として、マウスピースとエアロゾル発生基体の間に介在材料を位置付けうる。
【0037】
本発明による喫煙物品は、フィルター紙巻たばこ、またはたばこ材料が燃焼して煙を形成するその他の喫煙物品としうる。例えば、上述の通り、エアロゾル発生基体はたばこロッドを備えることができ、マウスピースはフィルターを備えうる。紙ラッパーは、チッピングラッパーを備えうる。
【0038】
別の方法として、本発明による喫煙物品は、たばこなどのエアロゾル発生物質が燃焼されるのではなく加熱されてエアロゾルを形成する物品としうる。あるタイプの加熱式喫煙物品において、エアロゾル発生物質は一つ以上の電気発熱体によって加熱されてエアロゾルを生成する。別のタイプの加熱式喫煙物品において、エアロゾルは、可燃性の熱源または化学的な熱源から、熱源の内部、周囲、または下流に位置しうる物理的に分離されたエアロゾル発生基体に熱を伝達することによって生成される。本発明は、燃焼することなく、また一部の場合において加熱することなく、例えば化学反応によって、たばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン供与源からニコチン含有エアロゾルが生成される喫煙物品もさらに網羅する。
【0039】
本発明の第四の態様によると、喫煙物品用のマウスピースを形成する方法が提供されており、方法は、少なくとも一つのマウスピース要素を提供する工程と、セルロースの酢酸エステルを含む実質的に透明なラッパーを提供する工程であって、実質的に透明なラッパーが第一および第二の向かい合った端を有する工程と、物質を実質的に透明なラッパーの第一の向かい合った端に隣接して配置する工程であって、物質がグリセロールのエステルを含む工程と、実質的に透明なラッパーの第一および第二の向かい合った端が、長軸方向の重なり合う領域に沿って相互に重なり合うように、少なくとも一つのマウスピース要素の周りに実質的に透明なラッパーを巻きつける工程とを含み、ここで物質のグリセロールのエステルは、セルロースの酢酸エステルと反応して、向かい合った端を相互に固定する。
【0040】
方法は、実質的に透明なラッパー、またはグリセロールのエステルを含む物質、または実質的に透明なラッパーとグリセロールのエステルを含む物質との両方を、好ましくは少なくとも25℃、より好ましくは少なくとも50℃、なおさらに好ましくは少なくとも70℃の温度に加熱する工程をさらに含む。別の方法としてまたは加えて、方法は、実質的に透明なラッパー、またはグリセロールのエステルを含む物質、または実質的に透明なラッパーとグリセロールのエステルを含む物質との両方を、好ましくは140℃以下、より好ましくは100℃以下、なおさらに好ましくは80℃以下の温度に加熱する工程をさらに含む。
【0041】
こうした高温は、物質や実質的に透明なラッパーを損傷する大きなリスクを取ることなく、物質と実質的に透明なラッパーとの間の相互作用を向上または加速させるのに役立ちうる。
【0042】
方法は、長軸方向の重なり合う領域に圧縮力をかける工程をさらに含むことが好ましい。実質的に透明なラッパー、またはグリセロールのエステルを含む物質、または実質的に透明なラッパーとグリセロールのエステルを含む物質との両方を加熱する工程が方法に含まれる場合、熱を供給する要素は、長軸方向の重なり合う領域に圧縮力をかけるのと同じ要素であることが好ましい。
【0043】
当然のことながら、本発明の第一の態様に関連して説明した特徴は、本発明の第二の態様で同様に適用されることができ、好ましい。
【0044】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながらさらに本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本発明による喫煙物品を示す。
図2図2は、マウスピースが包装されていない状態の図1の喫煙物品を示す。
図3図3は、図1の実質的に透明なラッパーの重なり合う領域の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1および図2に示すフィルター紙巻たばこ10は、単一のフィルターセグメント16を含む軸方向に整列されたフィルター14に一端で取り付けられた、たばこカットフィラーの包まれたロッド12を備える。単一のフィルターセグメント16は、実質的に透明なプラグラップ18の形態で実質的に透明なラッパーで包装された、酢酸セルローストウで形成されている。フィルターセグメント16には、液体の風味を浸み込ませたセルロース系材料(図示せず)の粒子が組み込まれるが、これが酢酸セルローストウ内に分散される。包まれたたばこロッド12およびフィルター14は、標準チッピングペーパーで形成された外側ラッパー20によって結合され、このラッパーはフィルター14の全長およびたばこロッド12の隣接部分を囲む。外側ラッパー20は、フィルター14の周囲の辺りで間隙を介する接着剤の点(図示せず)で、実質的に透明なプラグラップ18に固定されている。
【0047】
外側ラッパー20は、外側ラッパー20のロッド端部からおよそ5mmに位置付けられた、およそ5mmの直径を有する円形切り抜き部分22を含む。下にある実質的に透明なプラグラップ18は外側ラッパー20の切り抜き部分22を通して露出し、従ってセルロースの顆粒を含むフィルターの領域は切り抜き部分22を通して見える。
【0048】
実質的に透明なプラグラップ18は、二酢酸セルロースフィルムから形成されている。実質的に透明なプラグラップ18の第一の部分19には、トリアセチンを含む物質が提供されている。第一の部分19はプラグラップ18の第一の端に隣接し、これは第一の端が長軸方向の重なり合う領域に沿って実質的に透明なラッパーの第二の向かい合った端と重なり合うように、フィルターセグメント16の周りに巻かれるように構成されている。重なり合う時、物質はプラグラップ18の重なり合う部分で二酢酸セルロースと反応して、それらをまとめて固定する。
【0049】
図3から分かるように、結果的に生じる重なり合う部分30は、ラッパー34の残りの部分の厚さ35の約2倍の厚さ37を有する。それ故に物質32は、一つの重なり合う断片から他方の断片への、フィルムの効果的な継ぎ目のない移行をもたらす。図3の配置において、物質32は、重なり合う領域30の幅全体にわたって提供されていない。その結果、二つの重なり合う端のチップ38、39は、重なり合うラッパーの対応する部分に固定されていない。
図1
図2
図3