(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G08C 25/00 20060101AFI20220907BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20220907BHJP
G01K 7/00 20060101ALI20220907BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G08C25/00 H
G01L5/00 101Z
G01K7/00 321C
G08C19/00 J
(21)【出願番号】P 2019014293
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】初田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505893(JP,A)
【文献】特開2005-106513(JP,A)
【文献】特表2008-513888(JP,A)
【文献】特表2011-524974(JP,A)
【文献】特表2009-531709(JP,A)
【文献】特開2009-025180(JP,A)
【文献】特開2011-027515(JP,A)
【文献】特開2001-215135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0039241(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0214501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 25/00
G01L 5/00
G01K 7/00
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタと接続されるセンサ装置であって、
基材と、
前記基材上に配置され、圧力及び温度の少なくとも一方を検出するセンサ素子を含むセンシング部と、
前記基材上に配置され、前記センサ素子の電極と接続される端子と、
前記基材上に配置され、前記センサ素子のキャリブレーションデータを格納する記憶部と
を備
え、
前記コネクタと接続されたときに前記端子が前記コネクタ内に配置されるように構成され、
前記基材は、前記端子と前記コネクタの接点とを接続するための窓を有する、センサ装置。
【請求項2】
前記センシング部は、複数のセンサ素子を含み、前記圧力及び前記温度の前記少なくとも一方の分布を検出し、
前記記憶部は、前記複数のセンサ素子の前記キャリブレーションデータを格納する、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記記憶部は、非接触タグである、
請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記基材は、シート状である、
請求項1から3のいずれかに記載のセンサ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のセンサ装置と、
前記センサ装置に接続される
前記コネクタと
を備え、
前記コネクタは、
前記センサ素子の電気抵抗値を測定する回路と、
前記記憶部からのデータの読み出しが可能なリーダーと、
外部装置との通信が可能な通信部と
を有し、
前記通信部は、前記リーダーにより前記記憶部から読み出された前記キャリブレーションデータと、前記回路により測定された前記電気抵抗値に応じた出力値とを前記外部装置に送信する、
センサシステム。
【請求項6】
前記外部装置としてのコンピュータ
をさらに備え、
前記コンピュータは、
前記キャリブレーションデータに基づき、前記出力値を補正することにより、前記圧力及び前記温度の前記少なくとも一方の値を算出する制御部
を有する、
請求項5に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記記憶部は、前記センサ装置のデバイス識別子及び前記センサ装置の使用情報の少なくとも一方をさらに格納し、
前記コンピュータは、出力部をさらに有し、
前記制御部は、前記リーダーにより前記記憶部から読み出され、前記通信部を介して送信されてきた前記デバイス識別子又は前記使用情報の少なくとも一方に基づき、前記センサ装置の使用状況を判断し、前記使用状況に基づき、前記センサ装置のメンテナンスに関する情報を前記出力部に出力させる、
請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記リーダーは、前記記憶部からのデータの読み出しに加え、前記記憶部へのデータの書き込みが可能なリーダーライターであり、
前記制御部は、前記キャリブレーションデータを作成し、前記リーダーライターを介して前記記憶部に前記キャリブレーションデータを書き込む、
請求項6又は7に記載のセンサシステム。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載のセンサ装置に接続されるコンピュータに、
前記記憶部から前記キャリブレーションデータを読み出すステップと、
前記センサ装置から前記センサ素子の出力値を取得するステップと、
前記キャリブレーションデータに基づき、前記出力値を補正することにより、前記圧力及び前記温度の前記少なくとも一方の値を算出するステップと
を実行させる、プログラム。
【請求項10】
請求項1から4のいずれかに記載のセンサ装置に接続されたコンピュータが、
前記記憶部から前記キャリブレーションデータを読み出すステップと、
前記センサ装置から前記センサ素子の出力値を取得するステップと、
前記キャリブレーションデータに基づき、前記出力値を補正することにより、前記圧力及び前記温度の前記少なくとも一方の値を算出するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力及び温度の少なくとも一方を検出するセンサ装置、及びこれを備えるセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
基材上にセンサ素子を配置することにより、圧力又は温度、あるいはその両方を検出できるようにしたセンサ装置が知られている(例えば、特許文献1)。このようなセンサ装置では、通常、センサ素子の出力値そのものは測定対象の実際の値に一致せず、センサ素子の感度にはばらつきがある。よって、このような問題を解消し、正確な測定値を得られるようにするためには、センサ素子に対し予めキャリブレーション作業を行う必要がある。特許文献1にも記載されているとおり、このような作業により得られたキャリブレーションデータは、ファイル化され、キャリブレーション作業に使用されたコンピュータに保存される。そして、実際の測定時には、このキャリブレーションデータを含むファイルが読み出され、センサ素子の出力値の補正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のキャリブレーションデータは、個々のセンサ装置に固有のものであり、同機種のセンサ装置間においても、互換性がない。よって、ユーザーは、実際の測定時には、センサ装置に印字されたシリアルナンバー等に基づいて、測定に使用されるセンサ装置を特定し、コンピュータ上でこれに対応するファイルを指定することで、目的のキャリブレーションデータを読み出さなければならない。このような作業は、煩雑であり、仮にファイルの指定を誤ると、測定結果が不正確となる。また、ユーザーは、同機種又は異機種に関わらず、多くのセンサ装置を所有しており、これらを同時に又は順番に使用することが多々あり、このような場合には、益々、キャリブレーションデータの指定が煩雑になる。
【0005】
また、以上のキャリブレーションデータは、センサ装置を使用するユーザーの側でも作成することが可能であるが、センサ装置の工場出荷前にキャリブレーションデータを予め作成し、これをセンサ装置とともにユーザーに販売することもしばしば行われる。このような販売形態では、キャリブレーションデータを含むファイルを記憶させたCDやSDカード等の媒体を用意したり、あるいは同ファイルをウェブサイト経由でユーザーに提供する等する必要があるが、販売者側の負担が過大になる。
【0006】
本発明は、センサ素子のキャリブレーションデータを容易に取得することができるセンサ装置、及びこれを備えるセンサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係るセンサ装置は、基材と、前記基材上に配置され、圧力及び温度の少なくとも一方を検出するセンサ素子を含むセンシング部と、前記基材上に配置され、前記センサ素子のキャリブレーションデータを格納する記憶部とを備える。
【0008】
本発明の第2観点に係るセンサ装置は、第1観点に係るセンサ装置であって、前記センシング部は、複数のセンサ素子を含み、前記圧力及び前記温度の前記少なくとも一方の分布を検出する。前記記憶部は、前記複数のセンサ素子の前記キャリブレーションデータを格納する。
【0009】
本発明の第3観点に係るセンサ装置は、第1観点又は第2観点に係るセンサ装置であって、前記記憶部は、非接触タグである。
【0010】
本発明の第4観点に係るセンサ装置は、第1観点から第3観点のいずれかに係るセンサ装置であって、前記基材は、シート状である。
【0011】
本発明の第5観点に係るセンサシステムは、第1観点から第4観点のいずれかに係るセンサ装置と、前記センサ装置に接続されるコネクタとを備える。前記コネクタは、前記センサ素子の電気抵抗値を測定する回路と、前記記憶部からのデータの読み出しが可能なリーダーと、外部装置との通信が可能な通信部とを有する。前記通信部は、前記リーダーにより前記記憶部から読み出された前記キャリブレーションデータと、前記回路により測定された前記電気抵抗値に応じた出力値とを前記外部装置に送信する。
【0012】
本発明の第6観点に係るセンサシステムは、第5観点に係るセンサシステムであって、前記外部装置としてのコンピュータをさらに備える。前記コンピュータは、前記キャリブレーションデータに基づき、前記出力値を補正することにより、前記圧力及び前記温度の前記少なくとも一方を算出する制御部を有する。
【0013】
本発明の第7観点に係るセンサシステムは、第6観点に係るセンサシステムであって、前記記憶部は、前記センサ装置のデバイス識別子及び前記センサ装置の使用情報の少なくとも一方をさらに格納する。前記コンピュータは、出力部をさらに有する。前記制御部は、前記リーダーにより前記記憶部から読み出され、前記通信部を介して送信されてきた前記デバイス識別子又は前記使用情報の少なくとも一方に基づき、前記センサ装置の使用状況を判断し、前記使用状況に基づき、前記センサ装置のメンテナンスに関する情報を前記出力部に出力させる。
【0014】
本発明の第8観点に係るセンサシステムは、第6観点又は第7観点に係るセンサシステムであって、前記リーダーは、前記記憶部からのデータの読み出しに加え、前記記憶部へのデータの書き込みが可能なリーダーライターである。前記制御部は、前記キャリブレーションデータを作成し、前記リーダーライターを介して前記記憶部に前記キャリブレーションデータを書き込む。
【0015】
本発明の第9観点に係るプログラムは、第1観点から第4観点のいずれかに係るセンサ装置に接続されるコンピュータに、以下のステップを実行させる。
・前記記憶部から前記キャリブレーションデータを読み出すステップ
・前記センサ装置から前記センサ素子の出力値を取得するステップ
・前記キャリブレーションデータに基づき、前記出力値を補正することにより、前記圧力及び前記温度の前記少なくとも一方を算出するステップ
【0016】
本発明の第10観点に係る方法は、第1観点から第4観点のいずれかに係るセンサ装置に接続されたコンピュータが行う以下のステップを含む。
・前記記憶部から前記キャリブレーションデータを読み出すステップ
・前記センサ装置から前記センサ素子の出力値を取得するステップ
・前記キャリブレーションデータに基づき、前記出力値を補正することにより、前記圧力及び前記温度の前記少なくとも一方を算出するステップ
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センサ素子のキャリブレーションデータを容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセンサ装置を備えるセンサシステムの全体構成図。
【
図7】センサ装置が接続された状態のコネクタの側方断面図。
【
図8】コンピュータの電気的構成を示すブロック図。
【
図9】第1キャリブレーション処理の流れを示すフローチャート。
【
図10】第2キャリブレーション処理の流れを示すフローチャート。
【
図11】圧力分布の測定処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るセンサ装置及びこれを備えるセンサシステムについて説明する。
【0020】
<1.センサシステムの全体構成>
図1に、本実施形態に係るセンサ装置1を備えるセンサシステム100の全体構成図を示す。センサシステム100は、センサ装置1と、コンピュータ2と、センサ装置1をコンピュータ2に接続するためコネクタ3とを備える。以下、各装置1~3の構成を説明した後、センサシステム100の各種処理について説明する。
【0021】
<2.各部の構成>
<2-1.センサ装置>
本実施形態に係るセンサ装置1は、圧力分布を検出する感圧センサ(タクタイルセンサ)である。
図2は、センサ装置1に含まれる感圧領域102の近傍の様子を示す平面図であり、
図3は、
図2のIII-III線断面図である。なお、説明の便宜のため、これらの図に示すように、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を定義する。
【0022】
センサ装置1は、平らなシート状の第1シート基材10及び第2シート基材20を有する。これらのシート基材10及び20により、センサ装置1は、全体として平らなシート状に構成される。これらのシート基材10及び20上には、後述する各種電気素子が配置される。
【0023】
第1シート基材10の下面10a上には、x軸方向に延びる多数本の第1電極11が積層されている。多数本の第1電極11は、互いに等間隔に配列される。また、下面10a上には、多数本の第1電極11をそれぞれ覆うように、多数本の第1感圧部材12が積層されている。一方、第2シート基材20の上面20a上には、y軸方向に延びる多数本の第2電極21が積層されている。多数本の第2電極21は、互いに等間隔に配列される。また、上面20a上には、多数本の第2電極21をそれぞれ覆うように、多数本の第2感圧部材22が積層されている。
【0024】
第1シート基材10の下面10aと、第2シート基材20の上面20aとは、z軸方向に向かい合うように配置される。これにより、第1電極11と、第1感圧部材12と、第2電極21と、第2感圧部材22とは、平面視において格子状に配列され、格子の交点の位置においてz軸方向に重なる。そして、各交点においてz軸方向に重なり合う第1電極11と、第1感圧部材12と、第2電極21と、第2感圧部材22とにより、当該交点の位置に加えられた圧力を検出するセンサ素子101が構成される。よって、シート基材10及び20上には、多数のセンサ素子101が、x軸方向及びy軸方向に等間隔に配置される。そして、これらの多数のセンサ素子101により、平面状に広がる感圧領域102が形成される。多数のセンサ素子101を含むセンシング部は、z軸方向に直交する平面内における圧力分布を検出することができる。
【0025】
図4は、第1シート基材10の下面10aのパターン配線図であり、
図5は、第2シート基材20の上面20aのパターン配線図である。
図4に示されるとおり、第1シート基材10の下面10a上には、多数本の第1電極11の他、これらの第1電極11にそれぞれ接続される多数の端子15と、第1電極11と端子15とをそれぞれ接続する多数本の配線14とが配置されている。各端子15は、コネクタ3に接続される。一方、
図5に示されるとおり、第2シート基材20の上面20a上には、多数本の第2電極21の他、これらの第2電極21にそれぞれ接続される多数の端子25と、第2電極21と端子25とをそれぞれ接続する多数本の配線24とが配置されている。各端子25は、コネクタ3に接続される。
【0026】
図6は、第1シート基材10の平面図であり、第1シート基材10の上面10bを示している。同図に示すように、第1シート基材10の上面10b上には、非接触タグ40が配置されている。なお、非接触タグ40のセンサ装置1に対する取り付け位置は、これに限られず、例えば、第1シート基材10と第2シート基材20との間に配置してもよいし、第2シート基材20の下面20b上に配置してもよい。
【0027】
非接触タグ40は、RFタグやICタグ等とも呼ばれ、記憶回路41と、アンテナ42とを有する。記憶回路41には、上述した多数のセンサ素子101のキャリブレーションデータが格納されている。また、記憶回路41には、センサ装置1のシリアルナンバー等のデバイス識別子と、センサ装置1の使用情報とが格納されている。アンテナ42は、後述する外部のリーダーライター34と無線通信し、リーダーライター34から記憶回路41内のデータへのアクセスを可能にする。
【0028】
非接触タグ40は、パッシブタイプであり、アンテナ42を介してリーダーライター34から発信される電磁波により受電され、駆動される。ただし、非接触タグ40の構成はこれに限られず、例えば、内部に電池を有するアクティブタイプであってもよいし、タグ40から引き出された配線に対し、コネクタからポゴピン(スプリングプローブ)を介して電力供給されるタイプであってもよい。
【0029】
<2-2.コネクタ>
図7は、センサ装置1が接続された状態のコネクタ3の側方断面図である。同図に示すとおり、コネクタ3は、筐体31と、筐体31内に保持される回路基板32a及び32bとを有する。筐体31には、センサ装置1が差し込み可能なスロット31aが形成されている。センサ装置1は、感圧領域102が外部に露出した状態で、その一部がスロット31a内に挿入され、これにより、センサ装置1とコネクタ3との接続状態が形成される。センサ装置1とコネクタ3との接続状態で、端子15及び25と、非接触タグ40とは、スロット31a内に配置される。回路基板32aは、スロット31aの上側に位置し、回路基板32bは、スロット31aの下側に位置する。
【0030】
回路基板32a上には、外部装置であるコンピュータ2との通信が可能な通信回路36が搭載されている。通信回路36とコンピュータ2とは、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。
【0031】
また、回路基板32a及び32b上には、多数のセンサ素子101の電気抵抗値を測定する測定回路33が搭載されている。より正確には、測定回路33は、上側の回路基板32a上に配置される多数の接点33aと、下側の回路基板32b上に配置される多数の接点33bとを有する。これらの接点33a及び33bは、センサ装置1とコネクタ3との接続状態で、それぞれセンサ装置1の端子25及び15に電気的に接続される。なお、第1シート基材10には、接点33aと端子25とが接続可能なように、接点33aと端子25とが対面する位置に窓18が形成されている。同様に、第2シート基材20には、接点33bと端子15とが接続可能なように、接点33bと端子15とが対面する位置に窓28が形成されている。センサ装置1の感圧領域102に圧力が加えられると、圧力が加えられた位置のセンサ素子101に含まれる第1感圧部材12と第2感圧部材22との接触状態が変化し、両者間の電気抵抗値が変化する。測定回路33は、多数のセンサ素子101に順番に電圧を印加することにより、各センサ素子101の電気抵抗値を測定する。より具体的には、測定回路33は、第1電極11と第2電極21の一方であるドライブ電極に順番に電圧を印加しながら、第1電極11と第2電極21の他方であるレシーブ電極の電圧を順番に測定することにより、各センサ素子101の電気抵抗値を測定する。通信回路36は、各センサ素子101の電気抵抗値に応じた出力値を、コンピュータ2に送信する。
【0032】
また、回路基板32a上には、非接触タグ40と無線通信が可能なリーダーライター34が搭載されている。リーダーライター34は、非接触タグ40のアンテナ42を介して記憶回路41にアクセスし、記憶回路41からのデータの読み出し及び記憶回路41へのデータの書き込みを行う。通信回路36は、リーダーライター34により記憶回路41から読み出されたキャリブレーションデータ、デバイス識別子及び使用情報を、コンピュータ2に送信する。また、回路基板32a上には、測定回路33、リーダーライター34及び通信回路36を含む、回路基板32a及び32b上の各種回路を制御することが可能な演算回路35も搭載されている。
【0033】
<2-3.コンピュータ>
コンピュータ2は、その名のとおり、ハードウェアとしては汎用のコンピュータであり、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等として実現される。
図8は、コンピュータ2の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すとおり、コンピュータ2には、プログラム2aがインストールされている。プログラム2aは、コンピュータ2が読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体から、或いはコンピュータ2が接続されるLANやインターネット等の通信ネットワーク上の端末から取得される。プログラム2aは、コンピュータ2に後述する動作を実行させる。
【0034】
コンピュータ2は、ディスプレイ51、入力部52、記憶部53、制御部54及び通信部55を備える。これらの部51~55は、互いにバス線等の通信線56を介して接続されており、相互に通信可能である。ディスプレイ51は、コンピュータ2の本体の筐体に一体的に組み込まれていても、外付けであってもよい。
【0035】
記憶部53は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置から構成することができる。記憶部53内には、プログラム2aが格納されている他、コネクタ3を介してセンサ装置1から送信されてくる各種データが保存される。制御部54は、CPU、ROM及びRAM等から構成することができる。制御部54は、記憶部53内のプログラム2aを読み出して実行することにより、様々な処理を実行する。通信部55は、様々な形式の通信接続を確立する通信インターフェースとして機能し、コネクタ3の通信回路36との間の通信を可能にする。入力部52は、マウスやキーボード、タッチパネル等で構成することができ、コンピュータ2に対するユーザーからの操作を受け付ける。ディスプレイ51は、液晶ディスプレイ等で構成することができ、各種画面を表示する。
【0036】
制御部54は、コネクタ3から取得した各センサ素子101の出力値(各センサ素子101の電気抵抗値に応じた出力値)を、各センサ素子101に実際に加えられた圧力値に変換して、感圧領域102に加えられた圧力分布を算出する。このとき、センサ装置1に取り付けられた非接触タグ40から取得されたキャリブレーションデータに基づき、コネクタ3から取得した各センサ素子101の出力値が補正される。
【0037】
<3.各種処理の詳細>
<3-1.センサ素子のキャリブレーション処理>
次に、コンピュータ2で実行される、多数のセンサ素子101に対するキャリブレーション処理について説明する。ここでは、
図9及び
図10のフローチャートに示す2種類のキャリブレーション処理について例示する。
【0038】
図9のキャリブレーション処理(以下、第1キャリブレーション処理という)は、イクイリブレーション処理とも称される。センサ装置1は、多数のセンサ素子101を備えているため、これらのセンサ素子101間で出力値にばらつきが出ることが予想される。第1キャリブレーション処理は、キャリブレーションデータとして、このばらつきをキャンセルするための補正係数を算出する処理であり、後述する圧力分布の測定処理に先立ち実行される。
【0039】
まず、コネクタ3をセンサ装置1及びコンピュータ2に接続する。また、入力部52を介して所定の操作を行うことにより、コンピュータ2の制御部54に第1キャリブレーション処理を開始させる。この状態で、センサ装置1の感圧領域102に一様な圧力を加える。このとき、空圧で膨らむブラダ(空気袋)を好適に使用することができ、これにより、全てのセンサ素子101に一定の圧力を加えることができる。
【0040】
以上を受けて、制御部54は、コネクタ3から通信部55を介して、各センサ素子101に加えられた圧力に応じた(言い換えると、各センサ素子101に含まれる感圧部材12及び22の電気抵抗値に応じた)出力値xを受信する(ステップS11)。次に、制御部54は、全てのセンサ素子101の出力値xの平均値xaを算出する(ステップS12)。そして、制御部54は、各センサ素子101について、平均値xaを当該センサ素子101の出力値xで除算した値(xa/x)を、当該センサ素子101の補正係数として算出する(ステップS13)。
【0041】
以上の通り算出された各センサ素子101についての補正係数は、センサ装置1に取り付けられている非接触タグ40の記憶回路41内に格納される(ステップS14)。より具体的には、制御部54は、以上の各センサ素子101についての補正係数を含むキャリブレーションデータを作成し、これをコネクタ3に送信する。コネクタ3側では、演算回路35が、制御部54からの命令に従って、受信したキャリブレーションデータを記憶回路41内に書き込むよう、リーダーライター34を駆動する。
【0042】
なお、上述した例では、1つの圧力で押圧したときのセンサ素子101の出力値xから補正係数が算出されるが、2つ以上の圧力で押圧したときの出力値xから補正係数を算出してもよい。その場合、上述した例と同様に各圧力で補正係数(xa/x)を算出し、こうして得られる2以上の補正係数の平均値を最終的な補正係数としてもよい。あるいは、上述した例と同様に各圧力での(xa,x)を特定し、こうして得られる(xa,x)の2以上のデータセットから、最終的な補正係数として、xとxaとの関係を表す関数を算出してもよい。この場合、関数の係数が、補正係数となる。この関数は、直線式であっても、曲線式であってもよく、例えば、最小二乗法等により算出される。関数は、原点(0,0)を通るものとして算出することができる。
【0043】
次に、
図10のキャリブレーション処理(以下、第2キャリブレーション処理という)について説明する。第2キャリブレーション処理は、キャリブレーションデータとして、センサ素子101の出力値を実際の圧力値に変換するための変換係数を算出する処理であり、後述する圧力分布の測定処理に先立ち実行される。
【0044】
まず、第1キャリブレーション処理の場合と同様に、コネクタ3をセンサ装置1及びコンピュータ2に接続する。また、入力部52を介して所定の操作を行うことにより、コンピュータ2の制御部54に第2キャリブレーション処理を開始させる。この状態で、センサ装置1の感圧領域102に一様な圧力を加える。このときも、空圧で膨らむブラダ(空気袋)を好適に使用することができる。
【0045】
以上を受けて、制御部54は、コネクタ3から通信部55を介して、各センサ素子101に加えられた圧力に応じた(言い換えると、各センサ素子101に含まれる感圧部材12及び22の電気抵抗値に応じた)出力値xを受信する(ステップS21)。また、制御部54は、感圧領域102に加えられた圧力値yの入力を受け付け、これを取得する(ステップS22)。このとき取得される圧力値yは、別途用意した圧力センサ等で測定することができる。なお、ステップS21とステップS22とは、順不同であり、並列に実行されてもよい。
【0046】
次に、制御部54は、全てのセンサ素子101の出力値xの総和x1を算出する(ステップS23)。そして、制御部54は、各センサ素子101の変換係数として、原点(0,0)及び(x1,y1)を通る直線の傾きy1/x1を算出する(ステップS24)。y1は、全てのセンサ素子101に加えられた圧力値yの総和である。
【0047】
以上の通り算出された各センサ素子101についての変換係数は、センサ装置1に取り付けられている非接触タグ40の記憶回路41内に格納される(ステップS25)。より具体的には、制御部54は、以上の各センサ素子101についての変換係数を含むキャリブレーションデータを作成し、これをコネクタ3に送信する。コネクタ3側では、演算回路35が、制御部54からの命令に従って、受信したキャリブレーションデータを記憶回路41内に書き込むよう、リーダーライター34を駆動する。
【0048】
なお、上述した例では、1つの圧力で押圧したときのセンサ素子101の出力値xから変換係数が算出されるが、2つ以上の圧力で押圧したときの出力値xから変換係数を算出してもよい。その場合、上述した例と同様に各圧力で変換係数(y1/x1)を算出し、こうして得られる2以上の変換係数の平均値を最終的な変換係数としてもよい。あるいは、上述した例と同様に各圧力での(x1,y1)を特定し、こうして得られる(x1,y1)の2以上のデータセットから、最終的な変換係数として、x1とy1との関係を示す関数を算出してもよい。この場合、関数の係数が、変換係数となる。この関数は、直線式であっても、曲線式であってもよく、例えば、最小二乗法等により算出される。関数は、原点(0,0)を通るものとして算出することができる。
【0049】
なお、上述した例では、全てのセンサ素子101の出力値xから変換係数が算出されるが、一部のセンサ素子101(1つでもよい)の出力値xから変換係数が算出されてもよい。この場合、変換係数の精度を高めるためには、最初に第1キャリブレーション処理を行い、出力値xに補正係数を乗算した補正後の出力値から、変換係数を算出することが好ましい。
【0050】
<3-2.圧力分布の測定処理>
次に、
図11を参照して、コンピュータ2で実行される、圧力分布の測定処理について説明する。この処理は、センサ装置1の非接触タグ40にキャリブレーションデータを設定した後に実行されるべき処理である。
【0051】
まず、コネクタ3をセンサ装置1及びコンピュータ2に接続する。また、入力部52を介して所定の操作を行うことにより、コンピュータ2の制御部54に測定処理を開始させる。
【0052】
以上を受けて、制御部54は、センサ装置1の非接触タグ40の記憶回路41から、多数のセンサ素子101のキャリブレーションデータ、センサ装置1のデバイス識別子及びセンサ装置1の使用情報を読み出す(ステップS31)。より具体的には、制御部54は、コネクタ3に読み出し命令を送信する。コネクタ3側では、演算回路35が、この読み出し命令に従って、記憶回路41内のキャリブレーションデータ、デバイス識別子及び使用情報を読み出すよう、リーダーライター34を駆動する。演算回路35は、リーダーライター34により読み出されたキャリブレーションデータ、デバイス識別子及び使用情報を、通信回路36を介してコンピュータ2に送信する。制御部54は、センサ装置1からのキャリブレーションデータ、デバイス識別子及び使用情報を、記憶部53又はRAM内に保持する。
【0053】
次に、制御部54は、コネクタ3から通信部55を介して、各センサ素子101の出力値を受信する(ステップS32)。なお、ステップS31とステップS32とは順不同であり、並列に実行されてもよい。
【0054】
次に、制御部54は、ステップS31で取得したキャリブレーションデータに基づき、ステップS32で取得した各センサ素子101の出力値を補正することにより、感圧領域102内における圧力分布を算出する(ステップS33)。より具体的には、各センサ素子101の出力値に、当該センサ素子101の補正係数を乗算し、さらに変換係数を乗算することにより、当該センサ素子101に加えられた圧力値を算出する。このような変換係数による校正により、センサ素子101の出力値を実際に加えられた圧力値に変換することができる。また、このような補正係数による校正により、多数のセンサ素子101間の感度差を調整することができる。制御部54は、こうして算出された圧力分布を、グラフィックや表、グラフ等の様々な態様で表現し、ディスプレイ51上に表示させる(ステップS34)。これにより、ユーザーは、各センサ素子101に加えられた圧力分布を確認することができる。
【0055】
次に、制御部54は、センサ装置1の使用情報に基づき、センサ装置1の使用状況を判断する(ステップS35)。センサ装置1の使用情報とは、例えば、センサ装置1の累積使用時間や、センサ素子101の累積使用回数(圧力を検出した累積回数)等である。制御部54は、以上のような使用情報から判断されるセンサ装置1の使用状況に基づき、センサ装置1がメンテナンス時期に近づいている又は達しているか否かを判断する。例えば、累積使用時間が所定の時間を超えた場合や、累積使用回数が所定の回数を超えた場合等に、メンテナンス時期に近づいている又は達していると判断される。
【0056】
そして、センサ装置1がメンテナンス時期に近づいている又は達していると判断された場合には、制御部54は、メンテナンスに関する情報(以下、メンテナンス情報という)をディスプレイ51上に表示させる(ステップS36)。メンテナンス情報とは、例えば、センサ装置1がメンテナンス時期に近づいている又は達している旨を示す情報であり、センサ装置1の交換や、再度のキャリブレーション処理の実行を促すメッセージ等である。なお、メンテナンス情報は、ディスプレイ51上での表示に代えて又は加えて、別の態様で出力されてもよい。例えば、コンピュータ2に搭載された図示されないスピーカ等から音声出力されてもよいし、コネクタ3に搭載された所定のランプの点灯又は消灯等により表示されてもよい。
【0057】
ステップS35又はステップS36の後、制御部54は、直近の使用状況を含むように、センサ装置1の使用情報を更新する(ステップS37)。例えば、累積使用時間や累積使用回数を増やすように修正する。なお、センサ装置1の累積使用時間は、例えば、センサ装置1がコネクタ3に接続されていた時間に基づき、カウントすることができる。更新されたセンサ装置1の使用情報は、非接触タグ40の記憶回路41内に格納される。より具体的には、制御部54は、更新された使用情報を含む更新データをコネクタ3に送信する。コネクタ3側では、演算回路35が、制御部54からの命令に従って、受信した更新データを記憶回路41内に書き込むよう、リーダーライター34を駆動する。以上により、圧力分布の計測処理が終了する。
【0058】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下に示す変形例の要旨は、適宜、組み合わせることができる。
【0059】
<4-1>
上記実施形態のセンサ装置1は、圧力分布を検出する圧力センサであったが、これに限られず、温度の分布を検出する温度センサであってもよいし、圧力及び温度の両方の分布を検出する圧力温度センサであってもよい。このような温度センサ及び圧力温度センサの構成については、例えば特許文献1にも記載されるとおり、様々知られているため、ここでは詳細な説明を省略する。また、本発明が対象とするセンサ装置は、複数のセンサ素子により複数の点における圧力及び/又は温度の分布を検出するセンサでなくてもよく、単一のセンサ素子により単点の圧力及び/又は温度を検出するセンサであってもよい。単一のセンサ素子を有するセンサ装置の場合も、センサ素子のキャリブレーションデータを予め記憶しておくことにより、センサ素子の出力値を実際の値に変換し、センサ装置間の感度のばらつきを調整することができる。
【0060】
<4-2>
上記実施形態では、センサ装置1に取り付けられた非接触タグ40に、センサ装置1の使用情報が格納された。しかしながら、これに代えて、センサ装置1の使用情報は、センサ装置1のデバイス識別子に関連付けて、コンピュータ2の記憶部53内、又はコンピュータ2に接続されるその他のコンピュータの記憶部内に保存するようにしてもよい。この場合、制御部54は、ステップS35において、センサ装置1のデバイス識別子をキーに、センサ装置1の使用情報をコンピュータから取得し、これに基づいてセンサ装置1の使用状況を判断すればよい。あるいは、非接触タグ40にセンサ装置1の使用情報を格納しつつ、別の情報を、センサ装置1のデバイス識別子に関連付けて、コンピュータ2の記憶部53内、又はその他のコンピュータの記憶部内に保存するようにしてもよい。この場合、制御部54は、非接触タグ40及びコンピュータの両方から使用情報を取得し、これに基づいてセンサ装置1の使用状況を判断することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 センサ装置
101 センサ素子
10 第1シート基材(基材)
20 第2シート基材(基材)
2 コンピュータ
2a プログラム
3 コネクタ
33 測定回路(回路)
34 リーダーライター
35 通信回路(通信部)
40 非接触タグ
41 記憶回路
51 ディスプレイ(出力部)
54 制御部