(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】船舶の積載物の数量検収システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220907BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20220907BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20220907BHJP
G01S 19/49 20100101ALI20220907BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220907BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20220907BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G01C15/00 104Z
B63B35/00 C
G08G5/00 A
G01C15/00 102C
G01S19/49
B64C39/02
B64C27/08
G01B11/24 A
(21)【出願番号】P 2019062960
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道前 武尊
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-275083(JP,A)
【文献】特開平02-187608(JP,A)
【文献】特開2017-015528(JP,A)
【文献】特開2019-117084(JP,A)
【文献】特開平10-318743(JP,A)
【文献】特開2016-061674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0309060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
B63B 35/00
G08G 5/00
G01S 19/49
B64C 39/02
B64C 27/08
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の位置を計測する第1測位手段と、
船舶の方位を計測する方位計測手段と、
無人航空機と、
前記無人航空機の位置を計測する第2測位手段と、
前記無人航空機に搭載されたレーザスキャナと、
前記第1測位手段により計測された前記船舶の位置と、前記方位計測手段により計測された前記船舶の方位とを用いて、前記船舶の土倉の位置及び方位を特定し、特定した前記土倉の位置及び方位と、前記第2測位手段により計測された前記無人航空機の位置とを用いて、前記土倉の上空における飛行ルートを決定する飛行ルート決定手段と、
前記飛行ルート決定手段により決定された飛行ルートに従い前記無人航空機が飛行している間に前記レーザスキャナにより測定された前記土倉に積載された積載物の三次元形状を用いて、前記積載物の数量を算出する数量算出手段と
を備える船舶の積載物の数量検収システム。
【請求項2】
前記飛行ルート決定手段は、位置及び方位を特定した前記土倉と所定の位置関係を有する2以上の点を特定し、特定した前記2以上の点を通過するように前記飛行ルートを決定する
請求項1に記載の数量検収システム。
【請求項3】
前記第1測位手段は、前記船舶の位置を繰り返し計測し、
前記方位計測手段は、前記船舶の方位を繰り返し計測し、
前記飛行ルート決定手段は、前記第1測位手段により前記船舶の新たな位置が計測された場合、当該新たな位置を用いて前記飛行ルートを更新し、
前記飛行ルート決定手段は、前記方位計測手段により前記船舶の新たな方位が計測された場合、当該新たな方位を用いて前記飛行ルートを更新する
請求項1又は2に記載の数量検収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の積載物の数量検収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
港湾工事で用いられる石材等の材料は、現場海域まで船舶(土運船、ガット船等)により運搬されることが多い。材料が船舶から現場海域に投入される前に、船舶の土倉に積載されている材料(積載物)の数量の計測が実施され、計測された数量に基づき、工事の進捗管理、工事費の算出等が行われる。なお、土倉に積載されている材料の数量の計測は検収と呼ばれる。検収は材料が運搬される毎に実施される。
【0003】
船舶の土倉に積載されている積載物の数量を計測する手間を軽減するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ガット船の航路に沿って立設された架台に横向きに突設された取付けアームの先部に設置された光波距離計で、光波距離計の直下を航行するガット船に積載されている石材をスキャニングすることによって計測した石材の表面の三次元座標を用いて、ガット船に積載されている石材の量を計測する方法及び装置が記載されている。なお、特許文献1に記載の方法及び装置においては、光波距離計で石材をスキャニングする際に、ガット船の前部、中部、後部の各々に設置されたプリズムを自動追尾型測距儀により視準することで、ガット船の位置、進入角、傾きが順次測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明による場合、ガット船は積載している材料の検収を受けるために、架台、光波距離計等の設備が設置されている位置を通過しなければならない。
【0006】
上記の事情に鑑み、本発明は、海上の任意の航路を航行する船舶の土倉に積載されている積載物の数量の検収に要する計測員の手間を軽減する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、船舶の位置を計測する第1測位手段と、船舶の方位を計測する方位計測手段と、無人航空機と、前記無人航空機の位置を計測する第2測位手段と、前記無人航空機に搭載されたレーザスキャナと、前記第1測位手段により計測された前記船舶の位置と、前記方位計測手段により計測された前記船舶の方位とを用いて、前記船舶の土倉の位置及び方位を特定し、特定した前記土倉の位置及び方位と、前記第2測位手段により計測された前記無人航空機の位置とを用いて、前記土倉の上空における飛行ルートを決定する飛行ルート決定手段と、前記飛行ルート決定手段により決定された飛行ルートに従い前記無人航空機が飛行している間に前記レーザスキャナにより測定された前記土倉に積載された積載物の三次元形状を用いて、前記積載物の数量を算出する数量算出手段とを備える船舶の積載物の数量検収システムを第1の態様として提供する。
【0008】
第1の態様の船舶の積載物の数量検収システムにおいて、前記飛行ルート決定手段は、位置及び方位を特定した前記土倉と所定の位置関係を有する2以上の点を特定し、特定した前記2以上の点を通過するように前記飛行ルートを決定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0009】
第1又は第2の態様の船舶の積載物の数量検収システムにおいて、前記第1測位手段は、前記船舶の位置を繰り返し計測し、前記方位計測手段は、前記船舶の方位を繰り返し計測し、前記飛行ルート決定手段は、前記第1測位手段により前記船舶の新たな位置が計測された場合、当該新たな位置を用いて前記飛行ルートを更新し、前記飛行ルート決定手段は、前記方位計測手段により前記船舶の新たな方位が計測された場合、当該新たな方位を用いて前記飛行ルートを更新する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、海上の任意の航路を航行する船舶の土倉に積載されている積載物の数量の検収に要する計測員の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る数量検収システムの全体構成を示した図。
【
図2】一実施形態に係るタブレットPCのハードウェア構成を示したブロック図。
【
図3】一実施形態に係るドローンのハードウェアのうち、本願発明の特徴に関係する構成を示したブロック図。
【
図4】一実施形態に係るサーバ装置のハードウェア構成を示したブロック図。
【
図5】一実施形態に係るサーバ装置の機能的構成を示したブロック図。
【
図6】一実施形態に係る数量検収システム1が土質材料の数量の算出のために行う動作のシーケンス図。
【
図7】一実施形態に係る2つのウェイポイントの二次元平面上における位置の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態に係る船舶の積載物の数量検収システム1を説明する。
図1は、数量検収システム1の全体構成を示した図である。
【0013】
数量検収システム1は、計測員が携帯するタブレットPC11と、無人航空機であるドローン12と、陸上に設置されたサーバ装置13を備える。タブレットPC11は船舶2に乗船した計測員により船舶2の所定の位置及び方向に設置される。
【0014】
船舶2は土倉21を備える土運船、ガット船等である。
図1には船舶2が自航船である場合が示されているが、船舶2は自航できなくてもよい。土倉21には、例えば、港湾工事で用いられる土質材料(積載物の一例)が積載されており、上空から積載されている土質材料が見える。
【0015】
図2は、タブレットPC11のハードウェア構成を示したブロック図である。タブレットPC11は、コンピュータ111、GNSS(Global Navigation Satellite System/全地球測位衛星システム)ユニット112(第1測位手段の一例)、コンパス113(方位計測手段の一例)、ジャイロセンサ114、無線通信ユニット115、タッチスクリーン116を備える。
【0016】
コンピュータ111は、プロセッサ1111、メモリ1112、入出力インタフェース1113を備える。プロセッサ1111は、メモリ1112に記憶されているプログラムに従った処理を実行することによって、タブレットPC11の各部の動作を制御する。メモリ1112は、プロセッサ1111により実行されるプログラムの他、各種データを記憶する。入出力インタフェース1113は、外部機器とデータの入出力を行う。入出力インタフェース1113にはGNSSユニット112、コンパス113、ジャイロセンサ114、無線通信ユニット115、タッチスクリーン116が接続されている。
【0017】
GNSSユニット112は、複数の衛星から受信する電波に基づき、タブレットPC11の現在の位置を計測する。コンパス113は、地球の磁場の方向を計測することにより、タブレットPC11の現在の方位を計測する。
【0018】
ジャイロセンサ114は、3本の基準軸の各々に対する単位時間当たりの角度の変化(角加速度)を計測する3軸ジャイロセンサであり、タブレットPC11の現在の姿勢(ピッチ軸、ロール軸、ヨー軸の各々の軸周りの角度)を計測する。
【0019】
タブレットPC11が船舶2の所定の位置及び方向に配置された場合、GNSSユニット112、コンパス113、ジャイロセンサ114の各々が計測する位置、方位、姿勢は、船舶2の現在の位置、方位、姿勢を示すことになる。
【0020】
無線通信ユニット115は、例えば移動体通信網とインターネットを介して、サーバ装置13と無線通信を行う。タッチスクリーン116は、例えば、液晶ディスプレイとタッチパネルが積層されたユニットであり、ユーザに各種情報を表示するとともに、ユーザによるタッチ操作を受け付ける。
【0021】
図3は、ドローン12のハードウェアのうち、本願発明の特徴に関係する構成部分を示したブロック図である。ドローン12は、
図3に示す構成の他に、例えば、バッテリ、モータ、プロペラ、加速度センサ等を備えるが、それらの説明は省略する。
【0022】
ドローン12は、コンピュータ121、GNSSユニット122(第2測位手段の一例)、コンパス123、ジャイロセンサ124、無線通信ユニット125、レーザスキャナ126を備える。
【0023】
コンピュータ121、GNSSユニット122、コンパス123、ジャイロセンサ124、無線通信ユニット125は、タブレットPC11が備えるコンピュータ111、GNSSユニット112、コンパス113、ジャイロセンサ114、無線通信ユニット115と同様の機能を備える。ただし、GNSSユニット122、コンパス123、ジャイロセンサ124の各々が計測するものは、ドローン12の現在の位置、方位、姿勢である。
【0024】
コンピュータ121は、プロセッサ1211、メモリ1212、入出力インタフェース1213を備える。プロセッサ1211、メモリ1212、入出力インタフェース1213は、タブレットPC11のコンピュータ111が備えるプロセッサ1111、メモリ1112、入出力インタフェース1113と同様の機能を備える。
【0025】
入出力インタフェース1213にはGNSSユニット122、コンパス123、ジャイロセンサ124、無線通信ユニット125、レーザスキャナ126が接続されている。
【0026】
レーザスキャナ126は、所定の二次元平面内で扇形を描く方向に順次レーザ光を照射し、その反射光により対象物の表面までの距離を計測する二次元照射レーザスキャナである。なお、レーザスキャナ126の測距の方式は、ToF(Time of Flight)方式、位相差方式等のいずれであってもよい。
【0027】
レーザスキャナ126は、ドローン12の本体に搭載され、ドローン12の本体の移動に伴い対象物との相対的な位置を変更しながら対象物に継続的にレーザ光を二次元照射することにより、対象物の表面の多数の計測点までの距離を示す距離データを取得する。それらの距離データ群は、サーバ装置13において、対象物の三次元形状の特定に用いられる。
【0028】
図4は、サーバ装置13のハードウェア構成を示したブロック図である。サーバ装置13は、コンピュータ131、通信ユニット132、ディスプレイ133を備える。
【0029】
通信ユニット132は、例えばインターネットと移動体通信網を介して、タブレットPC11及びドローン12と通信を行う。
【0030】
ディスプレイ133は、例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表示する。
【0031】
コンピュータ131は、プロセッサ1311、メモリ1312、入出力インタフェース1313を備える。プロセッサ1311、メモリ1312、入出力インタフェース1313は、タブレットPC11のコンピュータ111が備えるプロセッサ1111、メモリ1112、入出力インタフェース1113と同様の機能を備える。
【0032】
入出力インタフェース1313には通信ユニット132、ディスプレイ133が接続されている。
【0033】
図5は、サーバ装置13の機能的構成を示したブロック図である。コンピュータ131が本実施形態に係るプログラムに従う処理を行うと、サーバ装置13が
図5に示される構成部を備える装置として機能する。以下に、
図5に示されるサーバ装置13の機能的な構成部を説明する。
【0034】
通信部1301は、タブレットPC11及びドローン12と無線通信を行う。通信部1301は、タブレットPC11から、GNSSユニット112により計測した船舶2の現在の位置を示す船舶位置データ、コンパス113により計測した船舶2の現在の方位を示す船舶方位データ、ジャイロセンサ114により計測した船舶2の現在の姿勢を示す船舶姿勢データを継続的に受信する。
【0035】
また、通信部1301は、ドローン12から、GNSSユニット122により計測したドローン12の現在の位置を示す航空機位置データ、コンパス123により計測したドローン12の現在の方位を示す航空機方位データ、ジャイロセンサ124により計測したドローン12の現在の姿勢を示す航空機姿勢データを継続的に受信する。
【0036】
また、通信部1301は、ドローン12が船舶2の上空を飛行中に、ドローン12から、レーザスキャナ126により計測した土倉21内の土質材料の三次元形状を表す距離データ群を受信する。
【0037】
記憶部1302は、各種データを記憶する。例えば、記憶部1302は、通信部1301がタブレットPC11又はドローン12から受信する各種データを記憶する。また、記憶部1302には、予め、複数の船舶2の各々に関し、船舶2の三次元形状を示す船舶形状データ、船舶2における土倉21の位置を示す土倉位置データ、土倉21の三次元形状を表す土倉形状データ、船舶2上のタブレットPC11が設置されるべき位置及び方向を示す端末設置データが記憶されている。
【0038】
飛行ルート決定部1303(飛行ルート決定手段の一例)は、船舶位置データが示す船舶2の現在の位置と、航空機位置データが示すドローン12の現在の位置とを用いて、ドローン12が船舶2の上空付近に向かうための飛行ルート(以下、「往路飛行ルート」という)を決定する。
【0039】
また、飛行ルート決定部1303は、船舶位置データが示す船舶2の現在の位置と、船舶方位データが示す船舶2の現在の方位とを用いて、土倉21の現在の位置及び方位を特定し、特定した土倉21の現在の位置及び方位と、航空機位置データが示すドローン12の現在の位置とを用いて、ドローン12が土倉21の上空を飛行しながらレーザスキャナ126により土倉21内の土質材料の三次元形状を表す距離データ群を生成するための飛行ルート(以下、「船舶上空飛行ルート」という)を決定する。
【0040】
また、飛行ルート決定部1303は、航空機位置データが示すドローン12の現在の位置と、ドローン12の次の目的地(例えば、ドローン12が待機する基地)の位置とを用いて、ドローン12が船舶2の上空付近から次の目的地に向かうための飛行ルート(以下、「復路飛行ルート」という)を決定する。
【0041】
数量算出部1304(数量算出手段の一例)は、ドローン12が船舶上空飛行ルートに従い飛行している間にドローン12から送信されてくる距離データ群が表す、土倉21に積載された土質材料の三次元形状と、記憶部1302に記憶されている土倉形状データが表す土倉21の三次元形状を用いて、土倉21に積載された土質材料の数量を算出する。なお、数量算出部1304が算出する土質材料の数量は、例えば土質材料の体積であるが、土質材料の単位体積当たりの重量を体積に乗じて算出される土質材料の重量等であってもよい。
【0042】
ところで、ドローン12が船舶2の上空を飛行中、船舶2とドローン12の位置関係はドローン12の移動に加え、船舶2の移動、船舶2の動揺、ドローン12の動揺によって時々刻々と変化する。従って、数量算出部1304は、距離データ群に含まれる個々の距離データに関し、その距離データが生成されたタイミング(レーザスキャナ126により測距が行われたタイミング)における船舶位置データが示す船舶2の位置、船舶方位データが示す船舶2の方位、船舶姿勢データが示す船舶2の姿勢、航空機位置データが示すドローン12の位置、航空機方位データが示すドローン12の方位、航空機姿勢データが示すドローン12の姿勢に基づき、ドローン12と船舶2の位置関係を特定し、特定したドローン12と船舶2の位置関係と距離データが示す距離とに基づき、船舶2の座標系における測距された点の座標を特定する。そのように特定される座標群が、土倉21に積載されている土質材料を含む船舶2の表面の三次元形状を表すことになる。
【0043】
数量算出部1304により算出された土質材料の数量を示すデータは、船舶2の名称、検収の日時、検収の位置を示すデータとともに、検収結果データとして記憶部1302に記憶される。
【0044】
表示部1305は、検収結果データが示す情報を表示する。従って、関係者は、表示部1305の画面を見て、いつ、どの船舶2にどれくらいの数量の土質材料が積載されていたかを容易に知ることができる。
【0045】
なお、関係者が端末装置を用いてネットワークを介してサーバ装置13にアクセスし、検収結果データが示す情報を端末装置の画面で閲覧可能としてもよい。
【0046】
続いて、数量検収システム1が土倉21に積載されている土質材料の数量を算出するために行う動作を説明する。
図6は、土質材料の数量の算出のために、タブレットPC11、ドローン12、サーバ装置13の各々が行う動作のシーケンス図である。
【0047】
まず、工事現場に向かい航行中(又は、工事現場に到着し停泊中)の船舶2に乗船している計測員は、タブレットPC11を操作して、本実施形態に係るアプリケーションプログラム(以下、「数量検収アプリ」という)をタブレットPC11のコンピュータ111に実行させる。続いて、計測員はタブレットPC11を操作して、数量検収アプリの設定画面を表示させ、設定画面に表示される船舶リストから検収対象の船舶2を選択する。タブレットPC11は計測員により選択された船舶2を識別する船舶識別データをサーバ装置13に送信する(ステップS101)。なお、船舶リストは、予めタブレットPC11に記憶されていてもよいし、タブレットPC11がサーバ装置13から受信してもよい。
【0048】
サーバ装置13は、タブレットPC11から受信した船舶識別データにより識別される船舶2においてタブレットPC11が設置されるべき位置及び方向を示す端末設置データをタブレットPC11に送信する(ステップS102)。タブレットPC11は、サーバ装置13から受信した端末設置データが示す位置及び方向を図示した設置案内画面を表示する。計測員は、設置案内画面に表示される位置及び方向に、タブレットPC11を設置する。
【0049】
タブレットPC11は、数量検収アプリの実行に伴い、GNSSユニット112、コンパス113、ジャイロセンサ114により船舶2の現在の位置、方位、姿勢を継続的に計測し、それらの計測結果を示す船舶位置データ、船舶方位データ、船舶姿勢データを継続的にサーバ装置13に送信する処理(ステップS103)を開始する。なお、本願において「継続的に計測する」とは、十分に短い時間間隔で繰り返し計測することを意味し、「継続的に送信する」とは、十分に短い時間間隔で繰り返し送信することを意味する。計測は、例えば、所定時間の経過毎に実行される。また、計測結果の送信は、例えば、計測が実行される毎に行われてもよいし、計測結果が所定の条件を満たした場合(例えば、閾値以上に変化した場合)に実行されてもよい。
【0050】
図6のシーケンスに従う動作の開始時に、ドローン12は陸上の基地にあるものとする。基地にいる計測員は、ドローン12に対し運転開始の指示を与えるための操作を行う。この操作に応じて、ドローン12は、GNSSユニット122、コンパス123、ジャイロセンサ124によりドローン12の現在の位置、方位、姿勢を継続的に計測し、それらの計測結果を示す航空機位置データ、航空機方位データ、航空機姿勢データを継続的にサーバ装置13に送信する処理(ステップS104)を開始する。
【0051】
サーバ装置13は、最新の航空機位置データが示す位置から、最新の船舶位置データが示す位置に向かう方向に所定の高度を保ちながら飛行するルートを往路飛行ルートとして決定し、決定した往路飛行ルートを示す往路飛行ルートデータをドローン12に送信する(ステップS105)。
【0052】
ドローン12は、サーバ装置13から往路飛行ルートデータを受信すると、離陸し、受信した往路飛行ルートデータが示す往路飛行ルートに従う飛行(ステップS106)を開始する。
【0053】
サーバ装置13は、例えば、タブレットPC11のGNSSユニット112が新たな位置を計測し、サーバ装置13が新たな船舶位置データをタブレットPC11から受信した場合と、ドローン12のGNSSユニット122が新たな位置を計測し、サーバ装置13が新たな航空機位置データをドローン12から受信した場合に、それらの新たなデータを用いて往路飛行ルートを決定し、決定した新たな往路飛行ルートを示す往路飛行ルートデータをドローン12に送信する。ドローン12は、新たにサーバ装置13から往路飛行ルートデータを受信すると、それまで使用していた往路飛行ルートデータを、新たに受信した往路飛行ルートデータで上書きし更新する。
【0054】
サーバ装置13は、船舶位置データが示す船舶2の現在の位置と航空機位置データが示すドローン12の現在の位置との間の距離が所定の閾値以下となると、船舶上空飛行ルートの決定のための処理を行う。サーバ装置13は、まず、様々な船舶に関し記憶している船舶形状データ、土倉位置データ、土倉形状データ、端末設置データのうちの、ステップS101においてタブレットPC11から受信した船舶識別データにより識別される船舶2に応じたデータと、タブレットPC11から受信した最新の船舶位置データ、船舶方位データとを用いて、土倉21に対し所定の位置関係を有する2点の位置(三次元座標)を特定する(ステップS107)。以下、それら2点を「ウェイポイント」という。
【0055】
図7は、2つのウェイポイントの二次元平面上における位置の例を示した図である。なお、ウェイポイントP1及びP2の高さは、例えば船舶位置データが示す高さに所定の距離(例えば、20m)を加えた高さである。
【0056】
サーバ装置13は、まず、土倉21の中心点D(例えば、土倉21の左右方向、前後方向の中心点)を特定する。土倉21の中心点Dは、船舶位置データが示すタブレットPC11の位置と、端末設置データが示す船舶2におけるタブレットPC11の位置と、土倉位置データが示す船舶2における土倉21の位置と、土倉形状データが示す土倉21の形状とにより特定される。
図7の例では、土倉21の中心点DはタブレットPC11の設置位置(正確にはGNSSユニット112のアンテナの位置)から距離Lだけ前方の位置である。
【0057】
続いて、サーバ装置13は、土倉21の中心点Dから、船舶方位データが示す船首方向から反時計回り90度の方向に(0.5W+20)mの位置をウェイポイントP1の位置として特定する。なお、Wは船舶形状データが示す船舶2の幅(土倉21の前後方向における中央位置における船舶2の幅)である。また、サーバ装置13は、土倉21の中心点Dから、船首方向から時計回り90度の方向に(0.5W+20)mの位置をウェイポイントP2の位置として特定する。
【0058】
サーバ装置13は、上記のようにウェイポイントP1及びP2の位置を特定すると(
図6、ステップS107)、続いて、航空機位置データが示すドローン12の現在の位置からウェイポイントP1を通過した後にウェイポイントP2を通過する飛行ルートを船舶上空飛行ルートとして決定し、決定した船舶上空飛行ルートを示す船舶上空飛行ルートデータをドローン12に送信する(ステップS108)。
【0059】
ドローン12は、サーバ装置13から船舶上空飛行ルートデータを受信すると、それまで使用していた往路飛行ルートデータに代えて、船舶上空飛行ルートデータが示す復路飛行ルートに従い飛行を継続する。
【0060】
サーバ装置13は、例えば、タブレットPC11から新たな船舶位置データ又は新たな船舶方位データを受信した場合と、ドローン12から新たな航空機位置データを受信した場合に、それらの新たなデータを用いて船舶上空飛行ルートを決定し、決定した新たな船舶上空飛行ルートを示す船舶上空飛行ルートデータをドローン12に送信する。ドローン12は、新たにサーバ装置13から船舶上空飛行ルートデータを受信すると、それまで使用していた船舶上空飛行ルートデータを、新たに受信した船舶上空飛行ルートデータで上書きし更新する。
【0061】
ドローン12は、サーバ装置13から船舶上空飛行ルートデータを受信すると、上述した船舶上空飛行ルートに従う飛行を開始するとともに、レーザスキャナ126による測距を開始し、測距の結果を示す距離データ群を順次、サーバ装置13に送信する(ステップS109)。
【0062】
サーバ装置13は、ドローン12から受信した距離データ群を用いて、土倉21及び土倉21に積載されている土質材料を含む船舶2全体の表面の三次元形状を特定する(ステップS110)。なお、ステップS110において、サーバ装置13は、レーザスキャナ126による測距が行われたタイミングにおけるドローン12と船舶2の位置関係を特定するために、船舶位置データ、船舶方位データ、船舶姿勢データ、航空機位置データ、航空機方位データ、航空機姿勢データを用いる。
【0063】
続いて、サーバ装置13は、土倉位置データ及び土倉形状データが示す船舶2における土倉21の位置及び形状に基づき、ステップS110において特定した船舶2全体の表面の三次元形状から、土倉21に積載されている土質材料の部分を切り出す(ステップS111)。
【0064】
続いて、サーバ装置13は、ステップS111において切り出した、土倉21に積載されている土質材料の表面の三次元形状と、土倉形状データが示す土倉の三次元形状とに基づいて、土質材料の数量を算出する(ステップS112)。
【0065】
上記のステップS110~S112の処理は、ドローン12が船舶上空飛行ルートに従い飛行している間に行われる。ただし、ドローン12が船舶上空飛行ルートに従う飛行を完了し、以下に説明する復路飛行ルートに従う飛行を開始した後に、ステップS110~S112の処理が行われてもよい。
【0066】
サーバ装置13は、航空機位置データが示すドローン12の現在の位置とウェイポイントP2の位置との間の距離が所定の閾値以下となると、航空機位置データが示すドローン12の現在の位置から、ウェイポイントP2を通過した後、所定の高度を保ちながら基地へ向かい飛行するルートを復路飛行ルートとして決定し、決定した復路飛行ルートを示す復路飛行ルートデータをドローン12に送信する(ステップS113)。
【0067】
ドローン12は、サーバ装置13から復路飛行ルートデータを受信すると、それまで使用していた船舶上空飛行ルートデータに代えて、復路飛行ルートデータが示す復路飛行ルートに従い飛行を継続する。
【0068】
サーバ装置13は、例えば、タブレットPC11から新たな船舶位置データを受信した場合と、ドローン12から新たな航空機位置データを受信した場合に、それらの新たなデータを用いて復路飛行ルートを決定し、決定した新たな復路飛行ルートを示す復路飛行ルートデータをドローン12に送信する。ドローン12は、新たにサーバ装置13から復路飛行ルートデータを受信すると、それまで使用していた復路飛行ルートデータを、新たに受信した復路飛行ルートデータで上書きし更新する。
【0069】
ドローン12は、復路飛行ルートに従い飛行し、基地の上空に到着すると、基地に着陸する(ステップS114)。
【0070】
上述した数量検収システム1によれば、計測員はタブレットPC11を用いて船舶リストから数量検収の対象の船舶2を選択した後、船舶2の所定位置にタブレットPC11を配置することで、船舶2の土倉21に積載されている積載物の数量を検収することができる。また、関係者は、例えば端末装置を用いてサーバ装置13にアクセスすることで、検収結果を知ることができる。
【0071】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0072】
(1)上述した実施形態においては、ドローン12とサーバ装置13との間の通信、及びタブレットPC11とサーバ装置13との間の通信は、移動体通信網を介して行われるものとしたが、これらの装置間の通信に用いられるネットワークは移動体通信網に限られない。例えば、タブレットPC11及びドローン12が衛星と無線通信を行う通信ユニットを備え、移動体通信網の電波が届かない場合、衛星通信網を介してサーバ装置13と通信を行ってもよい。
【0073】
また、例えば、ドローン12が船舶上空飛行ルートに従い飛行中にレーザスキャナ126により生成する距離データ群をサーバ装置13に送信せずに記憶しておき、ドローン12が基地に着陸した後に、基地に配置されている無線アクセスポイント(例えば、WiFi(登録商標)の通信プロトコルに従うアクセスポイント)を介してサーバ装置13に送信してもよい。
【0074】
(2)上述した実施形態においては、ドローン12とタブレットPC11の両方がサーバ装置13との間で通信を行う。これに代えて、ドローン12及びタブレットPC11の一方のみがサーバ装置13と通信を行う構成が採用されてもよい。
【0075】
例えば、タブレットPC11はサーバ装置13と通信可能であるが、ドローン12はサーバ装置13と通信不可である場合に、タブレットPC11がドローン12とサーバ装置13との間の通信の中継を行ってもよい。その場合、上述した実施形態においてドローン12がサーバ装置13に送信するものとしたデータは、ドローン12からタブレットPC11に送信され、タブレットPC11がそれらのデータをサーバ装置13に送信する。また、上述した実施形態においてサーバ装置13がドローン12に送信するものとしたデータは、サーバ装置13からタブレットPC11に送信され、タブレットPC11がそれらのデータをドローン12に送信する。
【0076】
また、タブレットPC11はサーバ装置13と通信不可であるが、ドローン12はサーバ装置13と通信可能である場合に、ドローン12がタブレットPC11とサーバ装置13との間の通信の中継を行ってもよい。
【0077】
(3)上述した実施形態においてサーバ装置13が行う処理の一部又は全てが、ドローン12又はタブレットPC11により行われてもよい。例えば、ドローン12のコンピュータ121がサーバ装置13のコンピュータ131の役割を果たしてもよい。その場合、ドローン12とタブレットPC11との間で通信が行われる。
【0078】
(4)上述した実施形態においては、ドローン12は飛行中、常時、航空機位置データ、航空機方位データ、航空機姿勢データをサーバ装置13に送信するものとした。また、上述した実施形態において、タブレットPC11は数量検収アプリが実行されている間、常時、船舶位置データ、船舶方位データ、船舶姿勢データをサーバ装置13に送信するものとした。これらのデータは、サーバ装置13が必要とする期間のもののみ、サーバ装置13に送信されてもよい。
【0079】
例えば、ドローン12が往路飛行ルートに従い飛行している間、サーバ装置13は往路飛行ルートデータを更新するために船舶位置データと航空機位置データを必要とするが、船舶方位データ、船舶姿勢データ、航空機方位データ、航空機姿勢データを必要としない。従って、ドローン12が往路飛行ルートに従い飛行している間、タブレットPC11は船舶方位データ、船舶姿勢データをサーバ装置13に送らず、ドローン12は航空機方位データ、航空機姿勢データをサーバ装置13に送らない構成が採用されてもよい。
【0080】
(5)ウェイポイントP1及びP2の位置は、上述の実施形態に記載のものに限られない。例えば、ウェイポイントP1及びP2が、船舶2の左右位置ではなく前後位置に配置されてもよい。
【0081】
また、ウェイポイントの数は2つに限られない。例えば、レーザスキャナ126がレーザ光を二次元照射できる距離よりも土倉21の大きさが大きい場合、ドローン12が土倉21の上空を1回飛行しただけでは土倉21の表面の一部領域に関する距離データしか生成できない場合がある。そのような場合、例えば、土倉21の左前方にウェイポイントP1、右前方にウェイポイントP2、右後方にウェイポイントP3、左後方にウェイポイントP4を決定し、ウェイポイントP1、P2、P3、P4の順に通過する飛行ルートが船舶上空飛行ルートとして決定されてもよい。
【0082】
(6)上述の実施形態においては、船舶2とドローン12の位置関係は、船舶位置データ、船舶方位データ、船舶姿勢データ、航空機位置データ、航空機方位データ、航空機姿勢データに基づき特定される。これに代えて、例えばドローン12本体にカメラを搭載し、カメラで撮影した画像に含まれる船舶2の3点以上の特徴点(例えば、土倉21の4つの隅角点)の位置に基づき、船舶2とドローン12の位置関係が特定されてもよい。
【0083】
(7)上述の実施形態においては、ドローン12が飛行中、船舶2が移動していることが想定されている。ただし、ドローン12が飛行中、船舶2が、例えば港や港付近の沖、工事現場等で停止していてもよい。この場合、船舶2の現在の位置を示す船舶位置データ、船舶2の現在の方位を示す船舶方位データは、船舶2が停止した後に一度、サーバ装置13に送信されれば足り、例えば所定時間の経過毎に継続的に送信される必要はない。
【0084】
また、ドローン12が飛行中、船舶2が停止している場合、サーバ装置13が船舶上空飛行ルート及び復路飛行ルートを決定するタイミングは上述した実施形態におけるタイミングより早くてもよい。例えば、上述した実施形態においてはドローン12が船舶2の上空付近に到達した後に実行されるものとした船舶上空飛行ルートデータの送信のための処理(
図6、ステップS107及びS108)が、往路飛行ルートデータの送信のための処理(
図6、ステップS105)と同じタイミングで実行されてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態においてはドローン12が船舶2の上空を飛行した後に実行されるものとした復路飛行ルートデータの送信のための処理(
図6、ステップS113)が、往路飛行ルートデータの送信のための処理(
図6、ステップS105)と同じタイミングで実行されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…数量検収システム、2…船舶、11…タブレットPC、12…ドローン、13…サーバ装置、21…土倉、111…コンピュータ、112…GNSSユニット、113…コンパス、114…ジャイロセンサ、115…無線通信ユニット、116…タッチスクリーン、121…コンピュータ、122…GNSSユニット、123…コンパス、124…ジャイロセンサ、125…無線通信ユニット、126…レーザスキャナ、131…コンピュータ、132…通信ユニット、133…ディスプレイ、1111…プロセッサ、1112…メモリ、1113…入出力インタフェース、1211…プロセッサ、1212…メモリ、1213…入出力インタフェース、1301…通信部、1302…記憶部、1303…飛行ルート決定部、1304…数量算出部、1305…表示部、1311…プロセッサ、1312…メモリ、1313…入出力インタフェース。