(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】環境形成装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2019063562
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】岡留 哲也
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151297(JP,A)
【文献】特開平05-305243(JP,A)
【文献】特開2017-219370(JP,A)
【文献】特開2008-232373(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107092286(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられて
おり、
前記開口の開度を変更する開度制御手段と、前記物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有し、前記温度センサーの検知温度に応じて前記開度制御手段が前記開口の開度を変更することを特徴とする環境形成装置。
【請求項2】
物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられており、
前記開口は、前記フード部材を環状に取り巻いて分布していることを特徴とする環境形成装置。
【請求項3】
前記物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有し、
前記開口の開度を変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の環境形成装置。
【請求項4】
前記送風機の下流側に風向手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境形成装置。
【請求項5】
物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられ、
前記送風機の下流側に風向手段が設けられており、
前記風向手段を駆動する風向制御手段と、前記物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有し、前記風向制御手段によって前記温度センサーの検知温度が周囲に比べて低い領域又は高い領域に向けて重点的に送風されることを特徴とす
る環境形成装置。
【請求項6】
物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられ、
前記送風機の下流側に風向手段が設けられており、
前記風向手段は、固定部と、前記固定部に包囲され前記固定部に対して第一軸を中心として回動可能な回動部を有することを特徴とす
る環境形成装置。
【請求項7】
前記風向手段は、前記回動部に包囲され、前記回動部に対して第二軸を中心として回動可能な内側回動部を有することを特徴とする請求
項6に記載の環境形成装置。
【請求項8】
前記空気が吹き出される吹き出し部が、前記物品配置室の少なくとも一つの壁面の中央に設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の環境形成装置。
【請求項9】
前記物品配置室の少なくとも一つの壁面の上下の辺部近傍及び/又は左右の辺部近傍に吸気開口があることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の環境形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品配置室の内部に所望の環境を形成する環境形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境形成装置の一例として環境試験装置が知られている。環境試験装置は、試験室(物品配置室)を有しており、温度環境(例えば、高温や低温)や湿度環境(例えば、高湿度や低湿度)等の所定の環境を試験室内に人工的に作り出すことができるものである。
【0003】
環境試験装置には、空調部と試験室を有しているものがある。ここで空調部はヒータや冷却器等の空調機器が内蔵された部分であり、試験室は供試体等の処理対象物品が配置される空間である。
環境試験装置には送風機を備え、当該送風機で前記した空調部と試験室の間で空気を循環させて、試験室の環境を所望の環境に整えるものがある。
【0004】
ここで送風機として、シロッコファンやターボファンといった遠心式の送風機と、プロペラファンの様な軸流式の送風機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば環境試験を行う場合、供試体に直接的に空気を吹きつけ、短時間の内に供試体の温度等を試験温度に至らせたい場合があり、軸流式の送風機を採用することによって、供試体に直接的に空気を吹きつけることができる環境試験装置を完成させることがある。
ここで、軸流式の送風機は、吸気口と排気口が直線上に並んでおり、モータと回転軸及び羽根部材を直線的に配置することができる。そのため軸流式の送風機は取り付け位置の自由度が高く、例えば物品配置室の側壁や奥壁に直接的に取り付けるなど、供試体に直接的に風を当てることができる任意の位置に配置することが容易である。
【0007】
その一方、環境試験装置に必要な一般的性能として、物品配置室内の温度ばらつきが小さいことが要求される。
物品配置室内の温度ばらつきを小さくするためには、物品配置室内に満遍なく送風を行き渡らせることが望ましい。
ここで、例えば軸流式の送風機を物品配置室の側壁や奥壁の中央部分に取り付けると、物品配置室の中央に向かう風の風量は十分に確保されるが、側壁や奥壁に沿った方向への送風量が弱く、物品配置室の角等に送風が十分に行き渡りにくい場合がある。
本発明は従来技術の上記した点に注目し、側壁や奥壁に沿った方向への送風量を確保することが可能であり、風が十分に行き渡って物品配置室内の温度ばらつきを小さくすることが可能な環境形成装置を開発する事を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための態様は、物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられていることを特徴とする環境形成装置である。
上記した課題を解決するための具体的態様は、物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられており、前記開口の開度を変更する開度制御手段と、前記物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有し、前記温度センサーの検知温度に応じて前記開度制御手段が前記開口の開度を変更することを特徴とする環境形成装置である。
上記した課題を解決するためのもう一つの具体的態様は、物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられており、前記開口は、前記フード部材を環状に取り巻いて分布していることを特徴とする環境形成装置である。
【0009】
本態様の環境形成装置は、プロペラ状の羽根部材を有する送風機を備えている。プロペラ状の羽根部材を有する送風機は、羽根部材の軸線方向(以下、主方向と称する場合がある)に強い風を起こすことができる。ここで本態様の環境形成装置は、羽根部材の側方部及び/又は側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられている。そのため当該開口から側方に風を吹き出させることができる。側面方向に吹き出される送風は、主方向の送風に比べると弱いが、側壁や奥壁に沿った方向に向かう送風を確保することができる。
【0010】
上記した態様において、前記開口の開度を変更可能であることが望ましい。
推奨される態様は、前記物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有し、前記開口の開度を変更可能である構成である。
【0011】
本態様によると、側方に吹き出す風の風量を調節することができる。
【0012】
上記した態様において、前記開口の開度を変更する開度制御手段と、前記物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有し、前記温度センサーの検知温度に応じて前記開度制御手段が前記開口の開度を変更することが望ましい。
【0013】
本態様の環境形成装置では、物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有している。そして温度センサーの検知温度に応じて開度制御手段が開口の開度を変更する。そのため本態様によると、物品配置室内の温度バラツキが、自動的に解消される。
【0014】
上記した態様において、前記送風機の下流側に風向手段が設けられていることが望ましい。
【0015】
本態様によると、送風の向きをかえることにより、所望の位置に重点的に送風することができる。そのため例えば物品配置室内の温度バラツキを小さくすることができる。
【0016】
上記した態様において、前記風向手段を駆動する風向制御手段と、前記物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有し、前記風向制御手段によって前記温度センサーの検知温度が周囲に比べて低い領域又は高い領域に向けて重点的に送風されることが望ましい。
即ち上記した課題を解決するためのもう一つの態様は、物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられ、前記送風機の下流側に風向手段が設けられており、前記風向手段を駆動する風向制御手段と、前記物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有し、前記風向制御手段によって前記温度センサーの検知温度が周囲に比べて低い領域又は高い領域に向けて重点的に送風されることを特徴とする環境形成装置である。
【0017】
本態様の環境形成装置では、物品配置室内の温度分布を測定する複数の温度センサーを有している。そして温度センサーの検知温度が低い領域や高い領域に風向手段が向けられ、周囲に比べて温度が違う領域に重点的に送風される。そのため本態様によると、物品配置室内の温度バラツキが、自動的に解消される。
【0018】
上記した態様において、前記風向手段は、固定部と、前記固定部に包囲され前記固定部に対して第一軸を中心として回動可能な回動部を有することが望ましい。
即ち上記した課題を解決するためのもう一つの態様は、物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、プロペラ状の羽根部材を備えた送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が前記物品配置室に送風される環境形成装置において、少なくとも前記羽根部材の側方部及び/又は前記羽根部材の側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材を有し、当該フード部材に側方に開く開口が設けられ、前記送風機の下流側に風向手段が設けられており、前記風向手段は、固定部と、前記固定部に包囲され前記固定部に対して第一軸を中心として回動可能な回動部を有することを特徴とする環境形成装置である。
【0019】
本態様によると、任意の方向に送風することができる。
【0020】
上記した態様において、前記風向手段は、前記回動部に包囲され、前記回動部に対して第二軸を中心として回動可能な内側回動部を有することが望ましい。
【0021】
本態様によると、任意の方向に送風することができる。
【0022】
上記した態様において、前記空気が吹き出される吹き出し部が、前記物品配置室の少なくとも一つの壁面の中央に設けられることが望ましい。
【0023】
ここで、壁面とは、物品配置室と空調部の間に仕切りを設ける構成における仕切りも含まれる概念である。具体的には、当該仕切りが物品配置室の壁面として機能する。
本態様によると、物品が通常置かれる物品配置室の中央部分に直接送風することができ、当該部分の温度を早期に目的の温度に調整することができる。
【0024】
上記した態様において、前記物品配置室の少なくとも一つの壁面の上下の辺部近傍及び/又は左右の辺部近傍に吸気開口があることが望ましい。
【0025】
本態様によると、物品に衝突させた後の空気を空調部に回収し易いレイアウトを実現することができる。さらに本態様によると、空気の滞留が生じにくい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の環境形成装置は、物品配置室内の温度ばらつきが小さいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態の環境形成装置の斜視図であり、扉を開いた状態を示す。
【
図2】
図1の環境形成装置の概要を示す断面図である。
【
図3】
図3の仕切り壁の中央部及び送風機近傍部分の拡大図である。
【
図5】
図1の環境形成装置の送風機近傍の部材を抜き出して表示した斜視図であり、送風機に風向装置と拡散手段を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】風向装置と拡散手段を分離し、さらに拡散手段を各構成部材に分割した状態を示し、風向装置側から観察した斜視図である。
【
図7】(a)は拡散手段の開度を全開にした状態
における正面図、(b)はそのA方向矢視図であり、(c)は拡散手段の開度を半開にした状態
における正面図、(d)はそのA方向矢視図である。
【
図8】風向装置の内部構造を一部分解して示す斜視図である。
【
図9】(a)は風向装置の風向部材を斜め左方向に傾けた状態を概念的に示す斜視図であり、(b)は風向装置の風向部材を斜め下方向に傾けた状態を概念的に示す斜視図である。
【
図10】(a)(b)は、表示装置の表示画面の例を示す正面図である。
【
図11】(a)(b)は、本発明の他の実施形態の環境形成装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、環境試験装置1を例に挙げて、本発明の環境形成装置を説明する。
説明の便宜上、先に環境試験装置1の概要について説明し、その後で本実施形態の特徴的構成について詳細に説明する。
図1、
図2に示すように、本実施形態の環境試験装置1は、断熱壁2で形成された筐体3を有している。筐体3の前面には開口5があり、開口5には扉6が設けられている。
扉6には観測用の窓7が設けられている。筐体3の内部には試験室(物品配置室)8として機能する空間がある。扉6は、試験室8に供試体200を出し入れする際に開かれるものである。
【0029】
本実施形態では、筐体3及び扉6によって断熱槽10が形成されている。断熱槽10の内部には仕切り壁(仕切り)11があり、仕切り壁11によって断熱槽10内が、大きく、試験室8と空調部15に分かれている。
仕切り壁11には、上下の端部、即ち仕切り壁11の上下の辺部の近傍に吸気開口16、17が設けられている。
また仕切り壁11の中心部には、吹き出し口(吹き出し部)20がある。
本実施形態では、試験室8は、天面壁と、側面壁と、底部と、仕切り壁11によって構成される奥壁と、扉6で囲まれた空間である。
【0030】
空調部15内には、空調機器(空調手段)22及び送風機30が内蔵されている。
空調機器22は、加湿装置23、冷却器25a、25b及び加熱ヒータ26によって構成されている。
冷却器25a、25bは、公知の冷却装置の蒸発器である。本実施形態の冷却装置は、凝縮器(図示せず)の下流側が分岐され、2基の冷却器25a、25bが並列に接続されてそれぞれに冷媒が供給される構成となっている。
加熱ヒータ26は、電気ヒータであり、略環状に形成されている。加湿装置23は、水を溜める加湿皿27と、加湿ヒータ28によって構成されている。
【0031】
送風機30は、軸流送風機であり、プロペラ状の羽根部材32、駆動モータ33及び回転軸35を有している。
駆動モータ33は、公知の誘導モータ又は直流モータであり、出力軸が回転する。
駆動モータ33は、
図2の様に、筐体3の外にあり、筐体3に設けられた貫通孔37に回転軸35が挿通され、筐体3内の羽根部材32に回転力を伝動する。
【0032】
本実施形態では、送風機30は、
図2、
図3の様に当該送風機30の羽根部材32が前記した仕切り壁11の中心部に位置するように取り付けられている。そして後記する様に送風機30の下流側に拡散手段(フード部材)41と風向手段43があり、風向手段43の先端の開口が仕切り壁(仕切り)11に形成された吹き出し口20となっている。
【0033】
2基の冷却器25a、25bは、
図2、
図4の様に、送風機30の吸気部38(
図3参照)の上下の位置にある。
言い換えると、上側の冷却器25aは、上部側の吸気開口16と吸気部38の間に配置されている。
また下側の冷却器25bは、下部側の吸気開口17と吸気部38の間に配置されている。
【0034】
加熱ヒータ26は、吸気部38を取り巻く位置に設けられている。
加湿装置23は、空調部15の下部に設置されている。
また試験室8内であって、吹き出し口20の近傍に、空調用温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。
後記する様に、本実施形態では送風機30の下流側に拡散手段41と風向手段43が設けられている。本実施形態では、送風機30と風向手段43の間に空調用温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。
なお空調用温度センサー12と湿度センサー13の位置は限定されるものではなく、吹き出し口20の近傍に限定されるものでもない。
【0035】
本実施形態の環境試験装置1では、送風機30を起動すると、空調部15と試験室8との間で空気が循環し、試験室8内の温度や湿度が所望の環境に調節される。
送風機30を起動すると、空調部15内が負圧傾向となり、試験室8内の空気が上下の吸気開口16、17から空調部15内に導入される。そして空調部15が通風状態となり、空調機器22に空気が接触して熱交換や湿度調整がなされ、送風機30に吸引される。
そして試験室8内に温度や湿度を調整後の空気が吹き出される。本実施形態では、仕切り壁11の中央の吹き出し口20から試験室8に向かって空調された空気が吹き出されることとなる。
【0036】
環境試験装置1を使用する際には送風機30を運転し、空調用温度センサー12及び湿度センサー13の検出値が、設定環境の温度及び湿度に近づく様に空調機器22が制御される。
【0037】
次に本実施形態の特徴的構成について説明する。
一つの特徴的構成は、
図1、
図2の様に扉6に温度センサー40a、40b、40c、40dが設けられている点である。
もう一つの特徴的構成は、
図2、
図3の様に送風機30に、風向変更手段21が設けられている点である。本実施形態では、風向変更手段21として拡散手段(フード部材)41と、風向手段43が採用されている。
【0038】
即ち本実施形態の環境試験装置1では、
図1、
図2の様に扉6に温度センサー40a、40b、40c、40dが設けられている。
扉6は試験室8を開閉するものであり、閉じた状態において外壁となる外側表面47と、試験室8側となる内側表面46がある。
温度センサー40a、40b、40c、40dは、いずれも検温部が試験室8側となる様に扉6に取り付けられている。
扉6を中心に説明すると、各温度センサー40a、40b、40c、40dは、扉6の内側表面46に取り付けられている。
【0039】
本実施形態では、扉6に窓7が設けられており、当該窓7の周囲であって、窓7の各角に相当する位置に前記温度センサー40a、40b、40c、40dがある。
従って4個の温度センサー40a、40b、40c、40dの取り付け位置の座標は、高さ方向(Y方向)と水平方向(X方向)のいずれかが相違する。
窓7は例えばガラスであり、扉6の他の部分と構成が異なる。そのため扉6の表面(試験室8側)の温度は、試験室8内の温度とは異なる場合がある。そのため前記温度センサー40a、40b、40c、40dは、窓7から熱影響を受けない程度に面方向に離れた位置に取り付けられている。
【0040】
温度センサー40a、40b、40c、40dの動作原理や構造は任意であり、限定するものではないが、本実施形態では、公知の熱電対が採用されている。より具体的には、保護管の中に熱電対が内蔵されたシース熱電対が採用されている。
各温度センサー40a、40b、40c、40dは、先端に検温部があり、当該検温部が試験室8側に突出している。
扉6からの熱影響を少なくするため、温度センサー40a、40b、40c、40dは、扉6から突出させ、先端の検温部を扉6から少し離すことが望ましい。
【0041】
次に拡散手段41について説明する。拡散手段41は、送風機30の送風を側面方向に拡散するものである。即ち拡散手段41は、送風機30の送風を、法線方向に放出させる部材である。
拡散手段41は、
図3、
図5の様に円筒形のフード部材である。拡散手段(フード部材)41は、
図3、
図6の様に、内筒部50と、外筒部51を有している。
内筒部50は薄い金属で作られており、
図6の様に、筒状の胴部52を有し、その両端にフランジ53a、53bが形成されたものである。
胴部52には、
図6の様に複数の開口55が一定間隔をあけて設けられている。複数の開口55は、胴部52を環状に取り巻いて分布している。
本実施形態では、開口55の形状は四角形であるが、円形等の他の形状であってもよい。
【0042】
外筒部51は、
図3、
図5、
図6の様に、前記した内筒部50の胴部52の周囲を環状に取り巻くものである。外筒部51には、内筒部50と同様、複数の開口56が一定間隔をあけて設けられている。複数の開口56は、外筒部51を環状に取り巻いて分布している。
【0043】
本実施形態では、外筒部51は製作の都合上、二つの分割片83a、83bに分割されている。
分割片83a、83bは、金属の薄板を約180度の円弧形状に曲げ加工された円弧部57と、その両端に設けられたフランジ58a、58bを有している。フランジ58a、58bには複数の貫通孔96が設けられている。
外筒部51は、内筒部50の胴部52を挟んだ状態で二つの分割片83a、83bが合致され、フランジ58a、58b同士を合致させ、貫通孔96に図示しないネジや鋲が挿通されて結合されている。
外筒部51は、内筒部50の胴部52の周囲を環状に取り巻いた状態で内筒部50に取り付けられている。外筒部51は、内筒部50に対して回転可能である。
【0044】
外筒部51の具体的構成は半割り状に限定されるものではなく、任意であり、薄板を「C」状に加工して内筒部50の周囲を取り巻くものであってもよい。また外筒部51は分割構造でなく、一体的に成形させたものであってもよい。
【0045】
前記した様に内筒部50には複数の開口55があり、外筒部51にも複数の開口56がある。また外筒部51は、内筒部50の開口55が設けられている領域を覆うと共に内筒部50に対して回転可能である。そのため外筒部51の回転姿勢によって、内筒部50に設けられた開口55と、外筒部51に設けられた開口56の重複状態が変化する。
ここで内筒部50に設けられた開口55と、外筒部51に設けられた開口56が重複する共通開口部が、拡散手段(フード部材)41の側面に開いて内外を連通する実質的開口76となる。
そのため本実施形態では、外筒部51の回転姿勢を変化させることによって、拡散手段41の側面に開く実質的開口76の面積を変化させることができる。なお本実施形態では、実質的開口76の開度をゼロにすることもできる。
【0046】
次に風向手段43について説明する。風向手段43は、送風機30の送風を任意の方向に向けることができるものである。
風向手段43は、
図8の様に、固定筒(固定部)62と、可動外筒(回動部、外側回動部)63及び可動内筒(内側回動部)65を有している。なお、可動内筒(内側回動部)65を有しない構成としてもよい。
可動外筒63は、固定筒62に包囲されており、第一軸66を中心として固定筒62に対して回動可能である。
また可動内筒65は、可動外筒63に包囲され、可動外筒63に対して第二軸77を中心として回動可能である。第一軸66と第二軸77は直交する。
可動内筒65には、
図8の様に、風切り部材67と操作軸78が設けられている。
【0047】
以下、各部材について説明する。
固定筒(固定部)62は、筒状の部材である。固定筒(固定部)62を開口側から見て、中心を通る軸線(第一軸66)上に、回動用の孔68a、68bが設けられている。孔68a、68bには軸受けやブッシュが設けられていることが望ましい。
固定筒62の一端にはフランジ82が設けられている。
【0048】
可動外筒(外側回動部)63は、外径が前記した固定筒62の内径に比べて小さい輪状の部材である。
可動外筒63には、外側へ延びるピン70a、70bが設けられている。ピン70a、70bは可動外筒63の中心を通過する軸線(第一軸66)に沿って延びている。そして可動外筒63のピン70a、70bは、前記した固定筒(固定部)62の孔68a、68bに回転可能に挿入されている。
また可動外筒63には、回動用の孔71a、71bが設けられている。孔71a、71bは、可動外筒63の中心を通過する軸線(第二軸77)上に設けられている。
孔71a、71bには軸受けやブッシュが設けられていることが望ましい。
【0049】
可動内筒65は、外径が前記した可動外筒63の内径に比べて小さい輪状の部材である。可動内筒65には、外側へ延びるピン72a、72bが設けられている。ピン72a、72bは可動内筒65の中心を通過する軸線(第二軸77)に沿って延びている。
可動内筒65のピン72a、72bは、可動外筒63の孔71a、71bに回転可能に挿入されている。
【0050】
可動内筒65の内側には、風切り部材67が設けられている。風切り部材67は、正面視が十字形状の支持板73と、可動内筒65に対して同心円状に配された2枚の輪状板75を有している。なお輪状板75は2枚でなくてもよく、1枚でもよく、3枚以上あってもよい。支持板73及び輪状板75の面状部分は、いずれも可動内筒65が延びる方向に平行である。即ち、支持板73及び輪状板75の面状部分は、可動内筒65を通過する風が流れる方向に沿う方向に延びている。
2枚の輪状板75は、支持板73に取り付けられている。また支持板73の端部が可動内筒65の内側に固定されている。
支持板73の中心から操作軸78が突出している。
【0051】
可動外筒63は、第一軸66を中心として固定筒62に対して回動可能であり、可動内筒65は、可動外筒63に対して第二軸77を中心として回動可能である。また第一軸66と第二軸77は、直交している。そのため固定筒62を固定した状態で、可動内筒65を、固定筒62内でX・Yの2軸方向に回動することができ、可動内筒65に設けられた風切り部材67の向きを任意に変えることができる。
【0052】
本実施形態では、
図3、
図5の様に送風機30の吐出側に、風向変更手段21が設けられている。より詳細には、送風機30の吐出側に拡散手段(フード部材)41が設けられ、さらにその先端に風向手段43が取り付けられている。
図3、
図5の様に送風機30は、プロペラ状の羽根部材32を有し、その周囲をフード80が覆っている。また送風機30のフード80にはフランジ81が設けられている。
拡散手段(フード部材)41及び風向手段43は、実質的に送風機30のフード80を延長するものである。即ち送風機30のフード80に設けられたフランジ81と、拡散手段41に設けられたフランジ53aが合致され、送風機30のフード80に拡散手段41が結合されている。さらに拡散手段41のフランジ53bに風向手段43の固定筒(固定部)62に設けられたフランジ82が合致され、拡散手段41に風向手段43が結合されている。
なお各フランジ81、53a、53b、82を接合する方法は任意であり、例えば、ネジや鋲等の締結部材を使用してもよく、溶接してもよい。
【0053】
羽根部材32の周囲から風が流れる方向に沿って、
図3の様にフード80、拡散手段41及び風向手段43の固定筒62によって囲まれる一連のフードが形成され、当該フード内が送風路となる。また風向手段43の拡散手段41が位置する側と逆側の先端の開口が、試験室8に空調された空気を送風する吹き出し口20として機能する。
拡散手段41は仕切り壁11よりも試験室8側にあり、拡散手段41の実質的開口76は、前記した一連のフードの周面に複数開口している。即ち拡散手段41の実質的開口76は、前記した一連のフードの軸線に対して放射方向に開いている。機能的に表現すると、実質的開口76は仕切り壁11の近傍にあり、上下、斜め、左右という様に仕切り壁11の試験室8側の表面に沿って風が流れる様に開いている。
【0054】
さらに本実施形態では、拡散手段41を遠隔操作する拡散量制御手段(開度制御手段)と、風向手段43を遠隔操作する風向制御手段を有している。
【0055】
即ち
図1、
図4の様に、試験室(物品配置室)8の外側上部に、拡散手段41用の直線駆動機構87と、風向手段43用の直線駆動機構(Y方向側)88が設けられている。また試験室8の外側側面には、
図4の様に風向手段43用の直線駆動機構(X方向側)90が設けられている。
直線駆動機構87、88、90は、ロッド91、92、93を直線方向に移動させるものである。直線駆動機構87、88、90の機構は限定されるものではなく、ラックアンドピニオン、ネジ機構、リンク機構等の回転運動を直線運動に変化させるものであってもよく、シリンダやソレノイド等の直線運動を行うものであってもよい。また直線駆動機構87、88、90は、運動量を検知できるものであることが望ましい。
【0056】
拡散量制御手段(開度制御手段)は、拡散手段41用の直線駆動機構87と、拡散手段41とロッド91によって構成されている。即ち拡散手段41用の直線駆動機構87と、拡散手段41の外筒部51との間は、
図5の様にロッド91で結合されており、直線駆動機構87を直線運動させることによってロッド91が移動し、外筒部51を内筒部50に対して回転させることができる。
その結果、
図7(b)(d)の様に、胴部52の開口55と、外筒部51の開口56との相対位置が変化し、内外を連通する実質的開口76の開口面積が変化する。
即ち外筒部51と内筒部50にはそれぞれ開口55、開口56が設けられており、両開口55、56の合致部分が、拡散部材(フード部材)41の内外を連通する実質的開口76となる。
外筒部51は、内筒部50に対して回動可能であり、外筒部51を回動させることによって、両開口55、56の合致部分の面積が増減する。
【0057】
風向制御手段は、
図5の様に、直線駆動機構(Y方向側)88、直線駆動機構(X方向側)90と、風向手段43と、ロッド92、93によって構成されている。
図8の様に直線駆動機構(Y方向側)88及び直線駆動機構(X方向側)90と、操作軸78との間が、ロッド92、93で結合されている。
具体的には、
図5の様に固定筒62の一部に孔95a、95bがあり、当該孔95a、95bにロッド92、93が挿通され、固定筒62内でロッド92、93が操作軸78と結合されている。
【0058】
直線駆動機構(X方向側)90を直線移動することによって、操作軸78の先端が左右方向に動いて操作軸78の角度姿勢が水平方向に変わり、可動外筒(外側回動部)63が第一軸66を中心として回動する。そして可動外筒63の内部の可動内筒(内側回動部)65が可動外筒63と共に横方向に首振り運動する。その結果、可動内筒65は、
図9(a)の様に横方向に傾き姿勢となる。
【0059】
また直線駆動機構(Y方向側)88を直線移動することによって、可動内筒(内側回動部)65が第二軸77を中心として回動し上下方向に運動する。その結果、可動内筒65は、例えば
図9(b)の様に下向に傾き姿勢となる。
【0060】
本実施形態の環境試験装置1は、さらに
図1の様に表示装置(表示手段)100と、制御装置101を有している。本実施形態では、扉6に設けられた温度センサー40a、40b、40c、40dの信号が、図示しない信号線によって制御装置101に入力される。
本実施形態では、扉6のヒンジ102側の辺
と筐体3側に
、フレキシブルな電線管103が掛け渡されており、当該電線管103の中に温度センサー40a、40b、40c、40dの信号線が挿通されている。
そのため信号線の仕舞いがきれいであり、扉6を開閉した際に信号線が邪魔になったり、切れたりする様な事態が生じにくい。
【0061】
本実施形態の環境試験装置1では、制御装置101が温度センサー40a、40b、40c、40dの検知信号から、試験室8内の温度分布を類推し、これを図形処理して表示装置100に表示する。
【0062】
ここで本実施形態の環境試験装置1では、温度調節された空気を試験室8に吹き出す吹き出し口20が、試験室8の奥壁たる仕切り壁11の中央にある。一方、温度センサー40a、40b、40c、40dは、仕切り壁11と対向する扉6に設けられている。
即ち本実施形態の環境試験装置1では、空調された空気の吹き出し部(吹き出し口20)が扉6に対向する位置に設けられており、当該扉6に温度センサー40a、40b、40c、40dが設けられている。
【0063】
また供試体200は、
図2の様に、吹き出し部(吹き出し口20)と扉6の間にあり、扉6には、吹き出し口20から吹き出されて供試体200に吹きつけられた後の空気が衝突することとなる。即ち、本実施形態のレイアウトでは、吹き出し部(吹き出し口20)と温度センサー40a、40b、40c、40dが設けられた扉6の間に、必然的に供試体200が設置される物品配置部(例えば棚201)がある。
そのため設定温度に温度調節されて吹き出し口20から吹き出された空気が、棚201上の供試体200と接触して熱交換し、その後の空気が扉6に設けられた温度センサー40a、40b、40c、40dと接触する。
【0064】
従って、扉6の内面(試験室8側の面)の温度分布は、単に扉6の温度分布を表すだけではなく、試験室8内の温度分布を示すものであると言える。即ち扉6の内面の温度分布は、試験室8内の温度分布と相関するものである。
本実施形態の環境試験装置1では、扉6に設けられた温度センサー40a、40b、40c、40dが検知する温度のバラツキ状態を表示装置100に表示させることにより、試験室8全体の温度バラツキを監視することができる。
【0065】
表示装置100への表示は、使用者の視覚に訴えるものであることが望ましく、一目して内部の大まかな温度分布が理解できるものであることが望ましい。
例えば
図10(a)の様な温度が等しい部分を繋いだ等温線で表すことが推奨される。
図10(b)は、温度分布を色分けによって表示した例である。例えば温度が高い領域は、高温を暗示する赤色とし、温度が低い領域は、低温を暗示する青色とする。
【0066】
また本実施形態では、試験室8内の温度バラツキを自動的に解消することができる。
本実施形態では、拡散手段41を遠隔操作する拡散量制御手段と、風向手段43を遠隔操作する風向制御手段を有している。
即ち拡散手段41の実質的開口76を調節する直線駆動機構87と、風向手段43の向きを調節する直線駆動機構(Y方向側)88及び直線駆動機構(X方向側)90を有している。本実施形態では、制御装置101により、これらが試験室8内の温度バラツキを解消する様に自動的に駆動される。
【0067】
即ち本実施形態では、送風機30の前方に拡散手段41がある。拡散手段(フード部材)41には、側面に開口(実質的開口76)がある。そのため、送風機30によって起こされた送風は、その一部が、拡散手段(フード部材)41に設けられた開口(実質的開口76)から
図3の矢印の様に側方に放出され、仕切り壁11に沿って流れる。さらに当該送風は、試験室8の天面壁や側面壁に沿って流れ、試験室8の隅々に行き渡る。
【0068】
特に本実施形態では、制御装置101によって直線駆動機構87が制御され、外筒部51を回転し、拡散手段(フード部材)41の側面の実質的な開口面積を増減させることができる。即ち本実施形態の環境試験装置1では、開口の開度を実質的に変更する開度制御手段(拡散量制御手段)を有している。また本実施形態の環境試験装置1は、複数の温度センサー40a、40b、40c、40dを備えている。
例えば試験室8で高温試験を行う場合であって、温度センサー40a、40b、40c、40dの検知温度の分析から、試験室8の辺部の温度が低いと判断された場合には、拡散手段(フード部材)41の実質的開口76の開口面積が自動的に広げられる。逆に試験室8の辺部の温度が高い場合には、実質的開口76を自動的に狭める。
また試験室8で低温試験を行う場合であって温度センサー40a、40b、40c、40dの検知温度の分析から、試験室8内の辺部の温度が高いと判断された場合には、辺部に送風が行き渡る様に拡散手段(フード部材)41の実質的開口76の開口面積が自動的に広げられ、試験室8内の辺部の温度が低い場合には、辺部に行く送風量を制限すべく拡散手段(フード部材)41の実質的開口76が自動的に狭められる。
【0069】
この様に、本実施形態の環境試験装置1では、実質的開口76の開度を変更する開度制御手段と、試験室8内の温度分布を測定する複数の温度センサー40a、40b、40c、40dを有し、温度センサー40a、40b、40c、40dの検知温度に応じて開度制御手段が実質的開口76の開度を変更する機能を備えている。
【0070】
上記した実施形態では、扉6に設けられた温度センサー40a、40b、40c、40dの検知温度に応じて実質的開口76の開度を変更したが、例えば試験室8の辺部にさらに温度センサーを設け、この温度センサーの検知温度に応じて実質的開口76の開度を変更してもよい。
【0071】
また前記した様に、本実施形態は、風向手段43を遠隔操作する風向制御手段を有している。
即ち本実施形態では、送風機30の前方に風向手段43が設けられている。そして風向手段43は、操作軸78を動かすことによって、首振り運動し、送風機30の風向きをX・Y方向に変化させることができる。
特に本実施形態では、操作軸78を直線駆動機構88、90によって動かし、送風機30の風向きをX・Y方向に自動的に変化させることができる。
例えば試験室8で高温試験を行う場合であれば、試験室8内の温度が低い領域に送風が行き渡る様に風向手段43を自動的に向けることができる。即ち扉6に設けられた温度センサー40a、40b、40c、40dの検知温度を参照し、試験室8内の温度が低い領域に送風が行き渡る様に風向手段43を自動的に向けることができる。
また試験室8で低温試験を行う場合であれば、温度センサー40a、40b、40c、40dの検知温度を参照し、試験室8内の温度が高い領域に送風が行き渡る様に風向手段43を自動的に向けることができる。
【0072】
この様に本実施形態の環境試験装置1では、複数設けられた温度センサー40a、40b、40c、40dの検知温度を参照し、試験室8の設定温度に対して温度センサーの検知温度が低い領域又は高い領域に風向手段43を向け、当該領域に重点的に送風することができる。
【0073】
また送風機30の駆動モータ33の回転数をインバータ制御等によって可変とすることも推奨される。即ちインバータ制御等による風量調節手段を有することが推奨される。
さらに、扉6に設けられた温度センサー40a、40b、40c、40dが検知する温度を参照して、空調部15の制御温度を補正することも推奨される。
前記した様に、本実施形態の環境試験装置1では、供試体200と接触して熱交換した後の空気温度が温度センサー40a、40b、40c、40dで検知される。
ここで空調部15で調節された空気の温度と、温度センサー40a、40b、40c、40dで検知される空気の温度に大きな乖離がある場合、空調部15で調節された空気の熱量や冷熱量が適切ではないと考えられる。
【0074】
供試体200自体から発熱が無いことを前提とし、例えば高温試験を実施した場合、吹き出し口20から吹き出される空気の温度に比べて、温度センサー40a、40b、40c、40dで検知される空気の温度が過度に低い場合は、空調部15で調節された空気の熱量が不足していると考えられる。
この場合には、例えば送風機30の回転数を増速し、吹き出し口20から吹き出される風量を増加させる。
あるいは空調部15で調整する空気の温度を上方に補正し、吹き出し口20から吹き出される空気の温度を上昇させる。
【0075】
低温試験を実施した場合も同様であり、吹き出し口20から吹き出される空気の温度に比べて、温度センサー40a、40b、40c、40dで検知される空気の温度が過度に高い場合は、送風機30の回転数を増速し、吹き出し口20から吹き出される風量を増加させる。
あるいは空調部15で調整する空気の温度を下方に補正し、吹き出し口20から吹き出される空気の温度を低下させる。
【0076】
供試体200が発熱するものであって高温試験を実施した場合、吹き出し口20から吹き出される空気の温度に比べて、温度センサー40a、40b、40c、40dで検知される空気の温度が高くなる場合もある。この場合には、空調部15で調整する空気の温度を下方に補正し、吹き出し口20から吹き出される空気の温度を低下させる。
【0077】
本実施形態様の環境試験装置1は、プロペラ状の羽根部材32を有する送風機30から空調された空気が試験室8の中央に向かって直接的に送風される。加えて、環境試験装置1には風向手段43があり、任意の位置により強く送風することができる。そのため供試体200に直接的に空調された空気を当てることができ、短時間の内に供試体200の温度を試験温度に到達させることができる。
その一方で環境試験装置1は拡散手段41を有し、送風機30の送風を前方だけでなく
図3の矢印の様に側方にも流すことができる。
そのため試験室8内の温度バラツキを小さくすることができる。
【0078】
以上説明した実施形態では、扉6に温度センサー40を4個、四角形を構成する配置に取り付けたが、温度センサー40の数は任意であり、1個から3個でもよく、5個以上でもよい。また扉6に温度センサー40を設けることは必須ではなく、他の位置に温度センサーがあってもよい。
扉6に加えて、あるいは扉6に代えて、試験室8の他の内壁に温度センサーを取り付けてもよい。そうすることにより、試験室8内の温度分布を立体的に観察することができる。
【0079】
上記した実施形態では、扉6に設けられた温度センサー40a、40b、40c、40dは、試験室8内の温度分布を観察する目的で設置されたが、この内の幾つかを空調部15の制御に利用してもよい。この場合には、吹き出し口20に設けられた空調用温度センサー12を省略することができる。
なお上記した実施形態では、空調部15を制御する空調用温度センサー12と湿度センサー13を有し、当該空調用温度センサー12と湿度センサー13は送風機30と風向手段43の間に設置されている。
この位置は、風向手段43の向きに係わらず空調された送風が当たる位置である。そのため空調部15を制御する空調用温度センサー12等の位置としては送風機30と風向手段43の間が推奨される。
【0080】
以上説明した実施形態では、拡散手段41を遠隔操作する拡散量制御手段と、風向手段43を遠隔操作する風向制御手段を設けたが、これらの構成は必須ではない。
即ち手動で拡散手段41や風向手段43を操作してもよい。
例えば試験を行う際に予め予備試験を行って試験室8内の温度分布を確認し、人力で、拡散手段41と風向手段43を動かして位置決めした後、試験を開始してもよい。また、試験中に外部から手動で拡散手段41と風向手段43を動かして、送風方向を変更してもよい。
【0081】
以上説明した実施形態では、送風機30の下流に拡散手段41を配置し、さらにその下流に風向手段43を設けた。上記した構成によると、拡散手段41の開口から略均等に風が排出される。しかしながら本発明はこの構成に限定されるものではなく、送風機30の下流に風向手段43を配置し、さらにその下流に拡散手段41を設けてもよい。
また送風機30のフード80に開口を設け、送風機30のフード80に拡散手段の機能を持たせてもよい。
要するに、送風機30が起こした風を周方向(法線方向)に拡散させるための開口は、羽根部材32の側方部及び/又は側方部よりも送風方向下流側の部分を環状に覆うフード部材に設けられていればよい。
上記実施形態では、風向手段43の可動外筒(外側回動部)63が第一軸66を中心として回動し、可動内筒(内側回動部)65が第二軸77を中心として回動する構成としたが、逆でもよい。すなわち、可動外筒(外側回動部)63が第二軸77を中心として回動し、可動内筒(内側回動部)65が第一軸66を中心として回動する構成としてもよい。 また、上記実施形態では第一軸66が鉛直方向に延びる軸方向、第二軸が水平方向に延びる軸方向としたが、軸方向はこれに限られない。第一軸66、第二軸77が、それぞれ斜め方向に延びる軸方向とし、可動外筒(外側回動部)63と可動内筒(内側回動部)65がそれぞれ第一軸66、第二軸77を中心に斜め方向に回動してもよい。
【0082】
上記した実施形態では、前記した様に、仕切り壁11の上下の辺部の近傍に吸気開口16、17を設け、二つの冷却器25a、25bを、吸気開口16、17と吸気部38の間に配置したが、
図11(a)の様に、仕切り壁11の左右の辺部の近傍に吸気開口60、61を設け、二つの冷却器25a、25bを、吸気開口60、61と、吸気部38の間に配置してもよい。
さらに、
図11(b)の様に、仕切り壁11の上下の辺部の近傍と、左右の辺部の近傍に吸気開口16、17、60、61を設け、吸気部38の周囲に冷却器25a、25b、25c、25dを環状に配置してもよい。
上記した実施形態では、仕切り壁11の外側に吸気開口を設けたが、仕切り壁11自体に吸気用の開口を空けて吸気開口を構成してもよい。
【0083】
吸気開口の形状は任意であり、多数の小孔によって構成されていてもよい。またフィルター等が装着されていてもよい。
【0084】
以上説明した実施形態で採用する風向手段43は、第一軸66と第二軸77を中心として回動し、2軸方向に自由度を有する風切り部材67を採用したが、球面軸受けの様に球面の摺動面を有するものであってもよい。
【0085】
以上説明した実施形態は、風向変更手段21として、拡散手段41と風向手段43が採用されているが、風向手段43は必須ではなく、省略することもできる。拡散手段41は、開口の大きさを変化させることができるものでなくてもよい。
【0086】
以上、環境試験装置1を例に挙げて本発明の環境形成装置の構成を説明したが、本発明は、環境試験装置に限定されるものではなく、例えば、基板を熱処理する装置等にも応用することができる。
【0087】
以上説明した実施形態では、風向手段43と、当該風向手段43を遠隔装置する風向制御手段を備えている。この構成自体は、単独で環境形成装置にも適用することができる。
即ち本願発明の関連発明は、物品を配置する物品配置室と、空調機器が収容された空調部と、送風機を有し、前記送風機によって前記空調部を通過した空気が物品配置室に送風される環境形成装置において、前記送風機の吹き出し部に風向手段が設けられていることを特徴とする環境形成装置である。
【0088】
従来技術のおいては、物品配置室に収容する物品の量や入れ方によって、物品配置室内の物品に空調された送風が当たりにくいことがあった。
関連発明によると、風向手段によって任意の位置に風を送ることができるので、物品配置室内の物品に直接風を当てることもできる。
【0089】
また前記風向手段を駆動する風向制御手段を有し、特定の領域に向けて重点的に送風することが可能であることが望ましい。
また、環境形成装置1は、試験室8と空調部15が一つの筐体3内にある構成に限定されず、試験室8と空調部15が別体として構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 環境試験装置(環境形成装置)
8 試験室
11 仕切り壁
15 空調部
16、17、60、61 吸気開口
20 吹き出し口(吹き出し部)
21 風向変更手段
22 空調機器(空調手段)
30 送風機
32 羽根部材
40a、40b、40c、40d 温度センサー
41 拡散手段(フード部材)
43 風向手段
50 内筒部
51 外筒部
55 開口
56 開口
62 固定筒
63 可動外筒(回動部、外側回動部)
65 可動内筒(内側回動部)
66 第一軸
67 風切り部材
76 実質的開口
77 第二軸
78 操作軸
88 直線駆動機構(Y方向側)
90 直線駆動機構(X方向側)
92、93 ロッド