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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】圧着接合装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20220907BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220907BHJP
   G02F 1/1345 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G09F9/00 304B
G09F9/00 338
G02F1/13 101
G02F1/1345
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019066081
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020166104
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】依田 雅秀
(72)【発明者】
【氏名】半田 正人
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-048656(JP,A)
【文献】特開平05-121005(JP,A)
【文献】特開平06-118431(JP,A)
【文献】特開2008-251790(JP,A)
【文献】特開2001-350196(JP,A)
【文献】特開2004-325626(JP,A)
【文献】特開2015-109359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示パネルが載置される載置部と、
前記画像表示パネルを流体により冷却する冷却部と、
前記画像表示パネルに部品を熱圧着により接合する圧着ヘッドと、
を備えた、圧着接合装置であって、
前記載置部には、前記流体を滞留させる凹部が設けられ
前記凹部は、前記画像表示パネルが前記載置部に載置された際に前記画像表示パネルにより閉塞されるように構成され、
前記凹部の内部には、前記流体を送出する流体送出部が設けられている、
ことを特徴とする圧着接合装置。
【請求項2】
前記凹部の内部には、前記流体送出部と前記画像表示パネルの有効画素領域との間に、前記流体の温度を調節する温度調節部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧着接合装置。
【請求項3】
前記温度調節部は、ペルチェ素子で構成されていることを特徴とする請求項に記載の圧着接合装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記画像表示パネルの有効画素領域と対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の画像表示パネルの圧着接合装置。
【請求項5】
前記流体は、気体であることを特徴とする請求項1~の何れか一つに記載の圧着接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示パネルの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は液晶表示パネルにFPC基板が圧着接合された状態を示す(a)断面図、(b)上面図である。図4に示すように、液晶表示パネル1は、集積回路と画素電極を有する非透光性のシリコン基板から成る第一基板4と、透明電極を有する透光性のガラス基板から成る第二基板5とを、電極面を互いに対向させて所定の間隔で貼り合わせることにより形成された隙間に液晶6を封入したものである。液晶表示パネル1の端子電極部8にはフレキシブルプリント回路基板2(以下FPC基板)の端子電極部8が接続されている。接続方法としては、ワイヤーボンディング法により端子電極部8へアルミニウム細線から成るワイヤーを打ち込む方法があるが、ここでは、信頼性試験や長期使用における耐久性の向上、生産性の向上、液晶表示パネル1の省スペース化等といった点から、端子電極部8に配置した異方性導電膜(以下ACF)を介して接続されている。端子電極部8の接続部周辺は封止樹脂16により覆われている。FPC基板2を介して液晶表示パネル1に電圧が供給されることにより、液晶表示パネル1の有効画素領域7に画像が表示される。
【0003】
従来からの一般的なACFによる接続手法としては、まず、液晶表示パネル1を、放熱性を有する圧着ステージ上へ載せ、液晶表示パネル1の端子電極部8にACFを貼り付け、その上にFPC基板2を供給し、FPC基板2の端子電極部8と液晶表示パネル1の端子電極部8とを所定の位置へ重ね合わせる。次に、圧着ヘッドを加熱し、加熱された圧着ヘッドを重ね合わせた端子電極部8へ保護シートを介して押圧し、端子電極部8の圧着接合を行う。
【0004】
図5、6は従来技術におけるACF圧着接合装置を示す断面図である。加熱された圧着ヘッド10を端子電極部8へ保護シート12を介して押圧した際に、圧着ヘッド10からの熱伝導により液晶表示パネル1の画素が熱されると、画素を形成する部材の熱劣化等が生じ易い。その対策として、図5のように気体を送出する送風部14を配置し、上方から液晶表示パネル1の端子電極部8周辺へ向けて気体を送出したり、下方から圧着ステージ9の隙間を介して液晶表示パネル1の端子電極部8周辺へ向けて気体を送出したりすることにより、液晶表示パネル1を冷却する手法が提案されている(特許文献1、2参照)。また、図6のように圧着ステージ9の内部にペルチェ素子13を配置し、その温度調節を行うことにより、液晶表示パネル1を冷却する手法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-211401
【文献】特開2015-197571
【文献】特開2015-109359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されたような従来技術におけるACF圧着接合装置では、圧着ステージに載せた液晶表示パネルへ向けて送風部を設け、送風部から送出された気体により液晶表示パネルを冷却していることから、液晶表示パネルを素早く冷却することができる。しかし、送風部から送出された冷気が逃げてしまい、液晶表示パネルを安定して冷却することができない懸念がある。
【0007】
特許文献3に記載されたような従来技術におけるACF圧着接合装置では、圧着ステージ内部に温度調節用のペルチェ素子を配置し、その温度調節を行うことにより液晶表示パネルを冷却していることから、液晶表示パネルを安定して冷却することができる。しかし、液晶表示パネルはペルチェ素子からの間接的な熱伝導により冷却されるため、液晶表示パネルを素早く冷却することができない懸念がある。
【0008】
以上の問題は、液晶表示パネルにおいてのみ生じる問題ではなく、液晶表示パネル以外の画像表示パネル(有機ELパネル等)においても起こり得る問題である。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みて成されたものであり、画像表示パネルを素早く且つ安定して冷却することが可能な画像表示パネルの冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
画像表示パネルが載置される載置部と、前記画像表示パネルを流体により冷却する冷却部と、を備えた、画像表示パネルの冷却装置であって、前記載置部には、前記流体を滞留させる凹部が設けられている、画像表示パネルの冷却装置とする。
【0011】
前記凹部の内部には、前記流体の温度を調節する温度調節部が配置されている画像表示パネルの冷却装置であっても良い。
【0012】
前記温度調節部は、ペルチェ素子で構成されている画像表示パネルの冷却装置であっても良い。
【0013】
前記凹部は、前記画像表示パネルの有効画素領域と対向する位置に設けられている画像表示パネルの冷却装置であっても良い。
【0014】
前記凹部は、前記画像表示パネルが前記載置部に載置された際に前記画像表示パネルにより閉塞されるように構成されている画像表示パネルの冷却装置であっても良い。
【0015】
前記流体は、気体である画像表示パネルの冷却装置であっても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画像表示パネルを素早く且つ安定して冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】液晶表示パネルにFPC基板を圧着接合する方法を示すフロー図。
図2】本発明の実施例におけるACF圧着接合装置を示す図であり、(a)ペルチェ素子が設置されていないACF圧着接合装置の断面図、(b)ペルチェ素子が設置されているACF圧着接合装置の断面図。
図3】ACFの導電粒子を模式的に示す図であり、(a)電気的な接続が良好な状態の図、(b)電気的な接続が良好でない状態の図。
図4】液晶表示パネルにFPC基板が圧着接合された状態を示す(a)断面図、(b)上面図。
図5】従来技術におけるACF圧着接合装置を示す断面図。
図6】従来技術におけるACF圧着接合装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。
【0019】
図1は液晶表示パネルにFPC基板を圧着接合する方法を示すフロー図である。図2は本発明の実施例におけるACF圧着接合装置を示す図であり、(a)ペルチェ素子が設置されていないACF圧着接合装置の断面図、(b)ペルチェ素子が設置されているACF圧着接合装置の断面図である。
【0020】
図2(a)に示すように、圧着ステージ9には上部が開口した箱状の凹部11が設けられている。凹部11は液晶表示パネル1の有効画素領域7と対向するように配置されている。凹部11の底面には送風部14が設けられている。送風部14からは液晶表示パネル1の有効画素領域7へ向けて空気や窒素等の気体が送出される。送風部14は例えばファンのような送風機や、外部に設置された気体供給装置とパイプを介して接続された噴射ノズルで構成されている。送風部14から送出される気体の温度は例えば常温以下である。送風部14から送出された気体はその周囲の雰囲気よりも温度が低い場合には相対的に重いため、凹部11の内部に滞留し易い。また、凹部11は圧着ステージ9上に載置された液晶表示パネル1により閉塞されるため、気体は凹部11の内部に密閉された状態で滞留する。凹部11の内部に滞留した気体は液晶表示パネル1の第一基板4に接触し、そこで熱交換が行われる。凹部11の内部に気体を滞留させることで、気体を吹き付けるのみの冷却方法と比較して液晶表示パネル1をより安定して冷却することができる。液晶表示パネル1の画素は、例えば120℃以上の熱を加えると液晶分解や色むら等を引き起こす可能性があるため、その場合には画素に加わる熱が120℃よりも低くなるように冷却するのが好ましい。
【0021】
図2(b)に示すように、圧着ステージ9に設けられた凹部11の内部には送風部14から送出された気体の温度を調節するペルチェ素子13が配置されていても良い。ペルチェ素子13は送風部14と液晶表示パネル1の有効画素領域7との間に配置され、送風部14から送出された気体を直接受け、気体を冷却または加熱することにより気体の温度を調整する。凹部11の内部に滞留する気体の温度はペルチェ素子13により直接制御されるため、液晶表示パネル1を素早く且つ安定して冷却することができる。
【0022】
液晶表示パネル1にFPC基板2を圧着接合する際には、まず、図1に示す液晶表示パネル製造工程G1にて、液晶表示パネル1を形成する。液晶表示パネル1は例えば図4に示す液晶表示パネル1と同様のものである。
【0023】
次に、図1に示すACF貼り付け工程G2にて、液晶表示パネル1の端子電極部8にACF3を貼り付ける。具体的には、まず、準備工程として、ACF圧着接合装置の起動と圧着ヘッド10の温度調整、位置調整等の生産前点検を順次行い、液晶表示パネル1およびFPC基板2の端子電極部8の清掃を行う。異物や汚れが端子電極部8へ付着したままACF3の圧着接合を行うと接合が弱くなり接合面が剥離してしまう原因となる。端子電極部8の清掃の後、圧着接合に必要な部品を所定のパーツローダーへ補充し、アンローダー側へ圧着接合された液晶表示パネル1を収納する為のトレイを設置する。その後、液晶表示パネル1の位置を圧着ステージ9に形成された凹部11の開口内に有効画素領域7が収まるように調整し、液晶表示パネル1を圧着ステージ9上へ載置する。なお、圧着ステージ9および圧着ヘッド10は共にx軸方向、y軸方向、z軸方向へエアシリンダーにより動作可能である。
【0024】
これらの準備工程が終了した後、パーツローダーから圧着接合に必要な形状にカットされたACF3が搬送され、液晶表示パネル1の端子電極部8へ貼り付けられる。ACF3を貼り付ける際には端子電極部8とACF3間に気泡が混入しないようにすることが接合強度不足や圧着不具合の懸念を排除できるため好ましい。次にACF3上にFPC基板2が搬送され、液晶表示パネル1の端子電極部8とFPC基板2の端子電極部8との位置が所定の接合位置になるように調整される。また、圧着接合時の加熱によるFPC基板2の反りや熱劣化を防止する保護シート12がFPC基板2上に供給される。
【0025】
次に、図1に示す仮圧着工程G3にて、予め熱しておいた圧着ヘッド10を下方へ動作させ、保護シート12に当接させることにより、液晶表示パネル1の端子電極部8とFPC基板2の端子電極部8との仮圧着接合を行う。仮圧着接合は本圧着接合時よりも低温、短時間で行われる。この時、液晶表示パネル1の画素に圧着ヘッド10による加熱の影響が出難くなるように圧着ヘッド10の押圧位置を端子電極部8の中央部よりも液晶6から遠ざかる側へずらしても良い。また、仮圧着接合を行う際には、図2に示すように送風部14から気体を送出することにより、液晶表示パネル1の冷却を行う。これにより、圧着ヘッド10からの熱による画素の熱劣化等を防止することができる。
【0026】
次に、図1の本圧着接合工程G4にて、圧着ヘッド10をACF3に対し仮圧着時よりも強く均一に加圧し、液晶表示パネル1の端子電極部8とFPC基板2の端子電極部8との本圧着接合を行う。ACF3に伝わる熱は約160℃~200℃の範囲内が望ましく、圧着ヘッド10から保護シート12およびFPC基板2を介してACF3に熱伝導させるため、実際にはその温度よりも圧着ヘッド10の温度を若干高く調整する必要がある。また、本圧着接合を行う際には、図2に示すように送風部14から気体を送出することにより、液晶表示パネル1の冷却を行う。これにより、圧着ヘッド10からの熱による画素の熱劣化等を防止することができる。本圧着接合が行われた液晶表示パネル1はアンローダー側の収納トレイに搬送される。
【0027】
図3はACFの導電粒子を模式的に示す図であり、(a)電気的な接続が良好な状態の図、(b)電気的な接続が良好でない状態の図である。ACF圧着接合では、ACF3内に存在する導電粒子15を全体的に図3(a)のような状態に均等に潰すことが望ましく、圧着ヘッド10の加圧調整が不適切で図3(b)のように導電粒子15が均等に潰されていないと圧着接合部分の接合強度が弱まり、信頼性試験や使用時にACF3の圧着接合部分の剥がれが生じ、導通不良の原因となる。
【0028】
なお、ACF3を用いた圧着接合では、上述した導電粒子15の潰し状態に不備が生じた場合や圧着箇所の位置ズレ等が生じた場合において、リワークが可能である。ACF3はピンセット等で容易に剥がすことが可能で、剥がした後に接合面の付着物等の汚れの清掃を行い、再度ACF3を貼り付け、圧着接合することができる。
【0029】
次に、図1の樹脂固定工程G5にて、熱硬化型または紫外線硬化型の例えばアクリル製の封止樹脂16を圧着接合部周辺に塗布し、硬化させることで図4に示すような液晶表示パネル1が組み上がる。封止樹脂16を塗布することで圧着接合部の強度を高めることができる。
【0030】
ACF3は、圧着接合時に液晶表示パネル1の端子電極部8とFPC基板2の端子電極部8に挟持される導電粒子15が離散してしまい、圧着接合の強度が不足する場合には、導電粒子15が離散し難い粒子整合型ACFを用いても良い。
【0031】
送風部14およびペルチェ素子13は圧着ステージ9の凹部11の内側面等に配置されていても良い。
【0032】
送風部14は水やオイル等の液体を送出する機構であっても良い。但し、気体の方が液体よりも温度を素早く制御することができ、取り扱いも容易であるため、その観点からは、気体の方が好適である。なお、ここでは気体や液体等の流動性を有する媒体を総称して流体と呼ぶ。
【0033】
液晶表示パネル1は、例えば有機エレクトロルミネッセンスパネル(有機ELパネル)等のその他の画像表示パネルであっても良い。
【0034】
本発明はACF圧着接合装置以外の装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 液晶表示パネル
2 フレキシブルプリント回路基板(FPC基板)
3 異方性導電膜(ACF)
4 第一基板
5 第二基板
6 液晶
7 有効画素領域
8 端子電極部
9 圧着ステージ
10 圧着ヘッド
11 凹部
12 保護シート
13 ペルチェ素子
14 送風部
15 導電粒子
16 封止樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6