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特許7137513ガス遮断装置およびガス遮断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ガス遮断装置およびガス遮断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20220907BHJP
   G01F 3/22 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G01F1/00 T
G01F3/22 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019067683
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165854
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 龍志
(72)【発明者】
【氏名】中田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 廣純
(72)【発明者】
【氏名】越智 毅
(72)【発明者】
【氏名】川口 圭史
(72)【発明者】
【氏名】談議 康晴
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-25411(JP,A)
【文献】特開2017-190893(JP,A)
【文献】中国実用新案第206330652(CN,U)
【文献】特開2011-2374(JP,A)
【文献】特開2001-318019(JP,A)
【文献】特開平11-14424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
F17D 5/06
G01M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を介して供給されたガスが流通する計測流路と、
前記計測流路内を流通するガスの流量を計測する流量計測部と、
前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、
前記計測流路の開閉を行う遮断部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記遮断部により前記計測流路が開放されている状態において、前記湿度センサによって検知された湿度の値に基づき湿度が上昇していると判定し、かつ流量計測部によって計測されたガスの流量の値に基づき計測流路内をガスが流れていないと判定した場合、前記配管内に差水が発生していると判定するガス遮断装置。
【請求項2】
外部に情報を知らせる報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記配管内に差水が発生していると判定した場合、配管内に差水が発生していることを示す情報を外部に知らせるように報知部を制御する請求項1に記載のガス遮断装置。
【請求項3】
配管を介して供給されたガスが流通する計測流路と、
前記計測流路内を流通するガスの流量を計測する流量計測部と、
前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、
前記計測流路の開閉を行う遮断部と、を備えるガス遮断装置の制御方法であって、
前記遮断部により前記計測流路が開放されている状態において、前記湿度センサによって検知された湿度の値に基づき湿度が上昇しているか否か判定する第1ステップと、
流量計測部によって計測されたガスの流量の値に基づき計測流路内をガスが流れているか否か判定する第2ステップと、
前記第1ステップにおいて湿度が上昇していると判定し、かつ上記第2ステップにおいて前記計測流路内をガスが流れていないと判定した場合、前記配管内に差水が発生していると判定する第3ステップと、を含むガス遮断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内における差水の発生を検出するガス遮断装置(ガスメータ)およびガス遮断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋設されたガス管の近傍に水道管が埋設されている場合、当該水道管が破損したときに破損箇所からの水流が周辺の土砂や石を巻き込み、当該土砂や石がガス管に衝突するサンドブラストが発生することがある。当該サンドブラストによりガス管が破損した場合、ガス管の内部に泥水が侵入する(以下、差水と呼ぶことがある)ことがある。
【0003】
このように、配管内に差水が発生すると、供給されるガス中に水分が含まれ、ガスの供給不良、またはガス流量の測定不良等が生じる可能性がある。また、ガス需要家宅に備えられているガス機器においてバーナの着火不良が生じたり、バーナにおけるガスの噴出口から水が噴出したりする可能性もある。
【0004】
そこで、上記した問題を解決するために、配管内において差水が発生したことを検出することができるガス遮断装置(ガスメータ/ガス管内差水検出装置)が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
特許文献1に開示されたガス遮断装置(ガスメータ)は、ガスの通路内に、熱式フローセンサを設けて、通過するガスの流速に応じた電位の変化を検出するように構成されている。そして、この電位の変化が比熱の変化に対応するという原理を用いて、ガスの中に含まれる水分を検出することができる。
【0006】
また、特許文献2に開示されたガス遮断装置(ガス管内差水検出装置)は、所定の流路内を流れるガス中の湿度を検出する湿度検出器と、湿度検出器からの出力に基づいて、所定の流路にガスを導くガス管内に水が浸入したか否か判定する判定手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-14424号公報
【文献】特開2001-318019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のガス遮断装置は、配管内に差水が発生しているか否か、ガスが使用される前の時点で適切に判定することができないという問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、配管内に差水が発生しているか否かガスが使用される前の時点で適切に判定することができるガス遮断装置およびガス遮断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るガス遮断装置の一態様(aspect)は、配管を介して供給されたガスが流通する計測流路と、前記計測流路内を流通するガスの流量を計測する流量計測部と、前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、前記計測流路の開閉を行う遮断部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記遮断部により前記計測流路が開放されている状態において、前記湿度センサによって検知された湿度の値に基づき湿度が上昇していると判定し、かつ流量計測部によって計測されたガスの流量の値に基づき計測流路内をガスが流れていないと判定した場合、前記配管内に差水が発生していると判定する。
【0011】
本発明に係るガス遮断装置の制御方法の一態様(aspect)は、配管を介して供給されたガスが流通する計測流路と、前記計測流路内を流通するガスの流量を計測する流量計測部と、前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、前記計測流路の開閉を行う遮断部と、を備えるガス遮断装置の制御方法であって、前記制御部は、前記遮断部により前記計測流路が開放されている状態において、前記湿度センサによって検知された湿度の値に基づき湿度が上昇しているか否か判定する第1ステップと、流量計測部によって計測されたガスの流量の値に基づき計測流路内をガスが流れているか否か判定する第2ステップと、前記第1ステップにおいて湿度が上昇していると判定し、かつ上記第2ステップにおいて前記計測流路内をガスが流れていないと判定した場合、前記配管内に差水が発生していると判定する第3ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、以上の構成により、配管内に差水が発生しているか否かガスが使用される前の時点で適切に判定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】計測流路が開弁された状態でかつガスの不使用期間およびガスの使用期間における計測流路内の湿度変化を示す時系列データの一例である。
図2】本発明の実施の形態に係るガス遮断装置の構成例を示すブロック図である。
図3図2に示すガス遮断装置の差水判定処理に関する構成の一例を示すブロック図である。
図4図2に示すガス遮断装置による差水判定処理の一例を示すフローチャートである。
図5図2に示すガス遮断装置による差水判定処理の変形例の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の一形態を得るに至った経緯)
本発明者らは配管内における差水の発生を検出することができるガス遮断装置として、上記した特許文献1、2に係るガス遮断装置(ガスメータ/ガス管内差水検出装置)について鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0015】
まず、特許文献1に開示されたガス遮断装置(ガスメータ)は、ガス管への取り付け時(遮断弁が閉じ、ガス流路が遮断されている状態の時)におけるフローセンサの出力信号を初期値として記憶部に記憶している。そして、ガス遮断装置は、記憶部に記憶した初期値と、取り付け後の遮断弁が閉じた状態の時におけるフローセンサからの出力信号とを比較し、ガス中に含まれる水分を検出するように構成されている。
【0016】
換言すると特許文献1に開示されたガス遮断装置は、平常時における閉弁時のフローセンサの出力値を初期値として記憶し、有事の際の閉弁時のフローセンサの出力値とその初期値とを比較してその相違からガス中に含まれる水分を検出する構成である。
【0017】
ところで、特許文献1に開示されたガス遮断装置では、このガス中に含まれる水分を検出することができるフローセンサは、ガスの流れ方向において遮断弁よりも下流側に設けられている。このため、ガス中の水分の検出は、遮断弁により閉弁された状態にあるガスの流路内で行われることとなる。
【0018】
それ故、本発明者らは、特許文献1に開示されたガス遮断装置のように、閉弁された状態にあるガスの流路内で水分検出を行う構成では、ガス遮断装置よりも上流側に配置されている配管内の差水の発生状況について確度よく推定することが困難であるという問題を見出した。
【0019】
また、特許文献1に開示されたガス遮断装置は、地震等に起因してガス流路が遮断弁によって遮断された場合に限りガス中の水分の混入を検出することができる構成となっている。このように、地震等が発生しない限りはガス中の水分の混入を検出することができない構成であるため、地域によっては長期間にわたりガス中の水分の混入を検出しない場合があることにも気が付いた。
【0020】
特許文献1に開示されたガス遮断装置が有する上記した問題に対して、特許文献2に開示されたガス遮断装置(ガス管内差水検出装置)では、以下の構成が提案されている。
【0021】
すなわち、所定の流路内を流れるガスの湿度を検出する湿度検出器と、湿度検出器からの出力に基づいて、所定の流路にガスを導く配管内に水が浸入したか否か判定する判定手段を備える。この構成により、ガスの流路を遮断することなく流路内を流れるガスを検出対象としてガス中の水分の混入を検出することができる。
【0022】
つまり、特許文献1に開示されたガス遮断装置は、ガスの流路が閉弁されている時しかガス中の水分の混入を検出することができないのに対して、特許文献2に開示されたガス遮断装置は、ガスの使用時にガス中の水分の混入を検出して、配管内の差水の有無を判定することができる構成となっている。
【0023】
ところで、実際のガス需要家宅におけるガスの使用態様を考えたとき、ガスの不使用時の期間の方が使用時の期間よりも圧倒的に長い。このため、実際のガスの使用態様を考慮すると、特許文献2に開示されたガス遮断装置のように、ガスの使用時に配管内の差水の有無を判定する構成では、配管内に発生した差水をガスが使用される前の時点で事前に検知するためには十分ではない。
【0024】
そこで、本発明者らは、計測流路が開弁された状態でかつガス不使用期間において、配管内に差水が発生している時と、発生していない時とでは湿度の変化に相違があることを発見した。
【0025】
具体的には、図1に示すようにガス不使用期間において、配管に差水が生じている場合、湿度が漸増するが、配管に差水が生じていない場合は湿度の漸増は見られないことを見出した。なお、図1は、計測流路が開弁された状態でかつガスの不使用期間およびガスの使用期間における計測流路内の湿度変化を示す時系列データの一例である。図1において、実線により配管に差水が生じている場合の湿度の時系列変化を示し、一点鎖線により配管に差水が生じていない場合の湿度の時系列変化を示している。
【0026】
より具体的には、図1に示すように、配管内に差水が生じている場合、ガスの不使用期間において徐々に湿度が上昇する。一方、配管内に差水が生じていない場合は、ガスの不使用期間においてほぼ湿度に変化が見られない。さらに、配管内に差水が生じている場合、ガスの使用が開始されると、ガスの流量値とガス配管における差水の位置からガス遮断装置(ガスメータ)までの配管長に応じた時間(例えば、数秒から数時間)が経過後、短時間(数十秒)だけ湿度が急増するピークが生じるが、配管内に差水が生じていない場合はこのようなピークが生じない。
【0027】
このように、本発明者らは、配管内に差水が発生している場合、ガス不使用期間およびガスの使用開始後において湿度の時系列データに特徴的な変化がみられることに気が付いた。
【0028】
そして、配管内に差水が発生している時の図1に示す湿度の特徴的な時系列データの変化から、配管内における差水の有無を判定する構成とすることで、ガスの不使用時においても配管内に差水が発生しているか否かガスが使用される前の時点で適切に判定することができることを見出した。
【0029】
上記した本発明者等の知見は、これまで明らかにされていなかったものであり、顕著な作用効果を奏する新規な技術的特徴を有するものである。そこで、本発明は具体的には以下に示す態様を提供する。
【0030】
本発明の第1の態様に係るガス遮断装置は、配管を介して供給されたガスが流通する計測流路と、前記計測流路内を流通するガスの流量を計測する流量計測部と、前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、前記計測流路の開閉を行う遮断部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記遮断部により前記計測流路が開放されている状態において、前記湿度センサによって検知された湿度の値に基づき湿度が上昇していると判定し、かつ流量計測部によって計測されたガスの流量の値に基づき計測流路内をガスが流れていないと判定した場合、前記配管内に差水が発生していると判定する。
【0031】
上記構成によると、制御部は、計測流路が開放されている状態で、計測流路をガスが流れていない、すなわちガスが使用されていない時でかつ、計測流路内の湿度が上昇しているという、配管内に差水が発生したときの特徴的な計測流路内の湿度変化をとらえ、配管内の差水の有無を判定することができる。
【0032】
つまり、計測流路が開放されている平常時において、ガスの使用がない状態で、配管内に差水が発生しているか否か判定することができる。
【0033】
このため、配管内に差水が発生しているか否かガスが使用される前の時点で適切に判定することができるという効果を奏する。
【0034】
本発明の第2の態様に係るガス遮断装置は、上記した第1の態様において、外部に情報を知らせる報知部をさらに備え、前記制御部は、前記配管内に差水が発生していると判定した場合、配管内に差水が発生していることを示す情報を外部に知らせるように報知部を制御するように構成されていてもよい。
【0035】
上記構成によると、報知部を備えるため、配管内における差水の発生を外部に適切に知らせることができる。
【0036】
なお、報知部による報知だけでなく、遮断部によるガスの遮断も行う構成としてもよい。これにより、差水がガス遮断装置(ガスメータ)の下流のガス機器に流入することを防止することができる。
【0037】
本発明の第3の態様に係るガス遮断装置の制御方法は、配管を介して供給されたガスが流通する計測流路と、前記計測流路内を流通するガスの流量を計測する流量計測部と、前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、前記計測流路の開閉を行う遮断部と、を備えるガス遮断装置の制御方法であって、前記遮断部により前記計測流路が開放されている状態において、前記湿度センサによって検知された湿度の値に基づき湿度が上昇しているか否か判定する第1ステップと、流量計測部によって計測されたガスの流量の値に基づき計測流路内をガスが流れているか否か判定する第2ステップと、前記第1ステップにおいて湿度が上昇していると判定し、かつ上記第2ステップにおいて前記計測流路内をガスが流れていないと判定した場合、前記配管内に差水が発生していると判定する第3ステップと、を含む。
【0038】
上記方法によると、計測流路が開放されている状態で、第1ステップにより計測流路内の湿度の上昇の有無を判定することができる。また、第2ステップにより、計測流路をガスが流れているか否か、すなわちガスが使用されているか否か判定することができる。
【0039】
このため、第3ステップにより、ガスが使用されていない時でかつ、計測流路内の湿度が上昇しているという、配管内に差水が発生したときの特徴的な計測流路内の湿度変化をとらえ、配管内の差水の有無を判定することができる。
【0040】
つまり、計測流路が開放されている平常時において、ガスの使用がない状態で、配管内に差水が発生しているか否か判定することができる。
【0041】
このため、配管内に差水が発生しているか否かガスが使用される前の時点で適切に判定することができるという効果を奏する。
【0042】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0043】
[ガス遮断装置の構成]
本実施の形態に係るガス遮断装置100は、図2に示すように、流量計測部20と、制御部21と、報知部22と、遮断部23と、湿度センサ24とを備えた、ガスメータである。図2は、本発明の実施の形態に係るガス遮断装置100の構成例を示すブロック図である。
【0044】
ガス遮断装置100では、計測流路11は、ガスの流れ方向において上流側の端部で、例えば公道下に敷設された配管(不図示)と接続されている供給管10と第1接続部25を介して接続されている。一方、計測流路11は、下流側の端部で、需要家に引き込まれる室内管12と第2接続部26を介して接続されている。
【0045】
このため、配管を流通するガスは供給管10を介して計測流路11を流れ、室内管12を通じて需要家に設けられたガス機器に供給することができる。
【0046】
なお、計測流路11には、上流側から順に遮断部23、湿度センサ24、および流量計測部20が設けられている。
【0047】
遮断部23は、計測流路11の開閉を行う装置であり、制御部21からの制御指示に応じて計測流路11を遮断して閉状態としたり、開放させて開状態としたりする。遮断部23は、例えば、電磁遮断弁または機械式遮断弁等を挙げることができる。遮断部23は、地震など有事の発生時には、制御部21から送信された電気信号に応じて計測流路11を遮断する構成としてもよいし、感震器(不図示)の動作に応じて、計測流路11を遮断する構成としてもよい。
【0048】
湿度センサ24は、計測流路11内の湿度を検知する装置であり、検知された値は制御部21に送信される。
【0049】
流量計測部20は、計測流路11を流通する単位時間当たりのガスの流量を計測する装置である。流量計測部20は膜式ガスメータであってもよいし超音波式ガスメータであってもよい。あるいは、例えば、電子的な検出原理を利用したフローセンサ、あるいはフルイディック方式等の瞬時流量計によってガス流量を求めるように構成されていてもよい。流量計測部20によって計測されたガスの流量を示す値は制御部21に送信される。
【0050】
制御部21は、ガス遮断装置100が備える各部の各種制御を行うものであり、CPU等の演算部(不図示)、及びROM、RAM等の記憶部(不図示)を備えている。記憶部には、例えば、ガス遮断装置100の基本プログラム及び各種固定データ等の情報が記憶されており、演算部はこの基本プログラム等を読み出して実行することにより、制御部21は各部の動作を制御する。なお、制御部21は、集中制御する単独の制御部によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御部によって構成されていてもよい。
【0051】
報知部22は、外部に情報を知らせる装置であり、例えば、配管内における差水の発生を外部に通知することができる。報知部22は、例えば、音声で通知する場合は音響装置、通信回線網を通じて外部装置に通知する場合は通信インタフェース、光などで通知する場合は発光装置等が例示できる。
【0052】
次に、本実施の形態に係るガス遮断装置100における差水の有無を判定する差水判定処理に関する構成および差水判定処理について図3、4を参照して説明する。図3は、図2に示すガス遮断装置100の差水判定処理に関する構成の一例を示すブロック図である。図4は、図2に示すガス遮断装置100による差水判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
[差水判定処理]
図3に示すように、制御部21は、差水判定処理に関する機能ブロックとして、湿度上昇判定部31、流量演算部32、流通判定部33、および差水判定部34を備える。
【0054】
湿度上昇判定部31は、湿度センサ24によって検知された計測流路11内の湿度の値を所定の間隔で逐次受け付け、湿度が上昇したか否か判定する。湿度上昇判定部31は、湿度センサ24によって検知された湿度の値を逐次受け付け、記憶部(不図示)に時系列データを記憶する。そして、湿度上昇判定部31は、この時系列データの変化に基づき、湿度の上昇の有無を判定する。
【0055】
例えば、湿度上昇判定部31は、時系列データにおいて、直近の湿度の値と前回、受け付けた湿度の値とを比較して湿度の上昇の有無を判定する構成であってもよい。あるいは、湿度上昇判定部31は、時系列データにおける直近のn個(nは任意の自然数)のデータの平均を求めた移動平均の値の変化から湿度の上昇の有無を判定する構成であってもよい。
【0056】
また、湿度の値が所定値以上変化した場合に湿度上昇判定部31は、湿度が上昇したと判定してもよい。換言すると湿度センサ24による湿度の測定誤差に対処するため、湿度の値が所定値以上変化していない場合は、仮に検知された直近の湿度の値が前回、検知された湿度の値よりも大きくなっていても湿度が上昇したとは判定しない。
【0057】
または、湿度の変化量が所定値以上にはならないが、湿度に関して所定の変化が頻発するような場合、この所定の変化における変化量の最小値を第2所定値とし、この第2所定値以上となる回数が所定回数以上、またはこの第2所定値以上となる時間が単位時間当たりに所定時間以上発生したか否によって湿度の上昇の有無を判定する構成としてもよい。
【0058】
湿度上昇判定部31は、湿度が上昇したと判定した場合、その判定結果を差水判定部34に送信する。
【0059】
流量演算部32は、流量計測部20によって計測された値を所定の間隔で逐次受け付ける。そして、流量演算部32は、受け付けた値に基づき、計測流路11を流れるガスの流量値を求める。流量演算部32は、求めたガスの流量値を流通判定部33に送信する。
【0060】
流通判定部33は、流量演算部32から受信したガスの流量値に基づき計測流路11内をガスが流れているか否か判定する。
【0061】
ここで、流通判定部33が、ガスが流れていると判定した場合、ガスが使用されている状態にあることを示す。一方、流通判定部33が、ガスが流れていないと判定した場合、ガスが使用されていない状態にあることを示す。流通判定部33は、ガスが流れているか否かの判定結果を差水判定部34に送信する。
【0062】
差水判定部34は、湿度上昇判定部31から受信した湿度上昇を示す判定結果と、流通判定部33から受信したガスが流れているか否かの判定結果とに基づき配管における差水の有無を判定する。具体的には、差水判定部34は、湿度が上昇していると判定し、かつ計測流路11内をガスが流れていないと判定した場合、配管内に差水が発生していると判定する。
【0063】
差水判定部34は、差水の有無の判定結果において、配管内に差水が生じていると判定した場合、その判定結果を報知部22に送信する。報知部22は、差水判定部34の判定結果を受信すると、外部に対して配管内における差水の発生を報知する。
【0064】
上記した構成を有するガス遮断装置100では、以下のようにして差水判定処理を実施する。
【0065】
すなわち、図4に示すように、遮断部23により計測流路11が開放されている状態(開状態)において、湿度上昇判定部31が湿度センサ24から湿度の値を逐次、受け付ける(ステップS11)。そして、受け付けた湿度の値に基づき、湿度が上昇したか否か判定する(ステップS12)。
【0066】
ここで、湿度上昇判定部31が、湿度が上昇していないと判定した場合(ステップS12において「No」)、ステップS11に戻って、湿度の値を所定の間隔で逐次受け付ける。
【0067】
一方、湿度が上昇したと判定した場合(ステップS12において「Yes」)、流量演算部32が、流量計測部20によって検知された値に基づき、計測流路11内を流れるガスの流量を求める(ステップS13)。流量演算部32によって求められたガスの流量の値に基づき、流通判定部33が計測流路11内をガスが流れているか否か判定する(ステップS14)。
【0068】
ここで、流通判定部33が、計測流路11内をガスが流れていると判定した場合(ステップS14において「No」)、ステップS13に戻って、流量演算部32が、流量計測部20によって計測された値を所定の間隔で逐次受け付け、計測流路11内を流れるガスの流量を求める。
【0069】
一方、流通判定部33が、計測流路11内をガスが流れていないと判定した場合(ステップS14において「Yes」)、差水判定部34は、配管内に差水が発生していると判定する。そして、配管内における差水の発生を報知するように報知部22を制御する(ステップS15)。
【0070】
なお、上記ではステップS11およびステップS12によって湿度の上昇判定を行った後、湿度が上昇している場合に、ステップS13およびステップS14によって計測流路11内をガスが流れているか否か判定する構成であった。
【0071】
しかしながら、ステップS13およびステップS14を先に実行し、計測流路11内をガスが流れていない場合に、ステップS11およびステップS12を実行してもよい。あるいは、ステップS11およびステップS12とステップS13およびステップS14を並行して実行して、湿度が上昇し、かつ計測流路11内をガスが流れていないという条件を満たす場合に配管内において差水が発生していると差水判定部34が判定してもよい。
【0072】
以上のように、本発明の実施の形態に係るガス遮断装置100は、計測流路11が開弁状態でかつ、ガスが流れていない時に、配管内に差水が発生したか否か判定することができる。このため、ガスが使用される前の時点で適切に配管内に差水が発生したか否か判定し、外部に報知することができる。
【0073】
なお、本発明の実施の形態に係るガス遮断装置100では、ガスの不使用期間において計測流路11内の湿度が上昇した場合に配管内に差水が生じていると判定する構成であった。しかしながら、ガスの使用が確認されたタイミング(計測流路11内をガスが流れていると判定したタイミング)から所定期間における湿度の時系列データから所定期間に所定値以上、湿度が上昇し、かつ湿度が下降しているか否か判定し配管内の差水の発生を判定する構成としてもよい。
【0074】
すなわち、ガスの使用開始後の短時間に生じる、湿度が急増しピークが生じる変化から配管内の差水の発生を判定する構成としてもよい。以下、差水判定処理の変形例について説明する。
【0075】
[差水判定処理の変形例]
差水判定処理の変形例に関する制御部21の機能ブロックは、図3に示す機能ブロックと同様であるため説明は省略する。
【0076】
ガス遮断装置100は、図5に示すようにして差水判定処理を実施する。図5は、図2に示すガス遮断装置100による差水判定処理の変形例の一例を示すフローチャートである。
【0077】
すなわち、図5に示すように、遮断部23により計測流路11が開放されている状態(開状態)において、流量演算部32が、流量計測部20によって検知された値に基づき、計測流路11内を流れるガスの流量を求める(ステップS21)。流量演算部32によって求められたガスの流量の値に基づき、流通判定部33が計測流路11内をガスが流れているか否か確認して、ガスの使用が開始されたか否か判定する(ステップS22)。
【0078】
ガスの使用が開始されたと判定されない間(ステップS22において「No」)は、ステップS21に戻って流量演算部32がガスの流量を求める。
【0079】
一方、ガスの使用が開始されたと判定された場合、湿度上昇判定部31が湿度センサ24から湿度の値を逐次、受け付ける(ステップS23)。そして、受け付けた湿度の値に基づき、湿度が所定期間において所定値以上、上昇し、かつその後、降下したか否か判定する(ステップS24)。
【0080】
湿度上昇判定部31が、湿度が所定期間において所定値以上、上昇し、かつその後、降下したと判定した場合(ステップS24において「Yes」)、差水判定部34は、配管内に差水が発生していると判定する。そして、配管内における差水の発生を報知するように報知部22を制御する(ステップS25)。
【0081】
一方、ステップS24において「No」の場合、配管内に差水が発生していないと判定する(ステップS26)。
【0082】
なお、制御部21は、上記した差水判定処理および差水判定処理の変形例の両方を実施し、両方の判定で配管内に差水が発生したと判定した場合に、配管内における差水の発生を報知するように報知部22を制御する構成としてもよい。
【0083】
本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、湿度センサによって検知された値に基づき、配管内に差水が生じたか否か判定することができるガス遮断装置等の分野に広く好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
11 計測流路
20 流量計測部
21 制御部
22 報知部
23 遮断部
24 湿度センサ
31 湿度上昇判定部
32 流量演算部
33 流通判定部
34 差水判定部
100 ガス遮断装置
図1
図2
図3
図4
図5