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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
H02K9/06 G
H02K9/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019172464
(22)【出願日】2019-09-24
(62)【分割の表示】P 2015155618の分割
【原出願日】2015-08-06
(65)【公開番号】P2019213456
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2019-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】沢田 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 拓
(72)【発明者】
【氏名】小池 正敏
(72)【発明者】
【氏名】福岡 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 昌泰
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/031916(WO,A1)
【文献】特開2005-130693(JP,A)
【文献】特開平09-261923(JP,A)
【文献】実公昭32-014426(JP,Y1)
【文献】特開2001-086670(JP,A)
【文献】特開2001-078390(JP,A)
【文献】特開2006-180684(JP,A)
【文献】特開昭63-144739(JP,A)
【文献】特開2014-158342(JP,A)
【文献】実開昭53-152101(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、該固定子の内径側に所定の空隙を介して対向配置された回転子とを備えて成る回転電機であって、
前記固定子は、固定子コアと、該固定子コアの内径側に、軸方向に延伸し周方向に所定間隔をもって複数形成された固定子スロットと、該複数の固定子スロット内に装着された固定子コイルとを備え、
前記回転子は、空気を通風するための空気通路を備えた回転子コアと、前記回転子と一体となって回転するファンと、回転軸方向に延伸する複数の回転子スロットに挿入された界磁部材である複数の回転子バーと、前記回転子バーを両軸端で短絡するエンドリングと、を備え、
前記ファンは、シュラウドと複数の羽根を有しており、
前記回転子の空気通路の数と、前記ファンの羽根枚数とが互いに異なり、かつ、前記ファンの羽根枚数は前記空気通路の数の整数倍とならないようにし、
前記空気通路と前記ファンの吸込み部との空隙が小さくなるように前記シュラウドの内径部が前記エンドリングの内径面まで延伸し、
前記複数の羽根の一部または全部が、前記回転子コアの空気通路の回転軸方向投影面よりも外径側に位置しており、かつ、最内径部が前記エンドリングの内径面まで延伸した前記シュラウドの内径部から回転軸方向と平行になるように形成し、
前記複数ある羽根のうちの一部の羽根の最内径部は、前記空気通路の最外径部よりも外径側にあり、
前記複数ある羽根のうちの前記空気通路がない位置にある一部の羽根の最内径部は、前記回転子コアの空気通路の最外径部よりも内径側にあることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1記載した回転電機において、
前記ファンは回転電機内の空気を循環させるための内扇ファンであることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した回転電機において、
前記回転電機が誘導電動機であることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載した回転電機において、
前記回転電機が永久磁石式同期電動機であることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1からのうちのいずれか1項に記載した回転電機において、
前記回転電機が電動車両駆動用の電動機であることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に係り、特に、空気を用いて冷却する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、電動機として電気的な入力を機械的な出力に変換する際に、あるいは発電機として機械的な入力を電気的な出力に変換する際に、渦電流損失やジュール損失に起因して発熱する。
【0003】
回転電機を構成する材料には、それぞれ上限温度が規定されており、電動機あるいは発電機として動作する際に、各部の温度がそれぞれの上限温度を超えないように冷却する必要がある。
【0004】
回転電機の冷却方式として広く用いられているものに空冷方式がある。
【0005】
空冷方式は、空気を回転電機の発熱部に直接的あるいは間接的にあてることにより熱を取り除き冷却する冷却方式である。
【0006】
さらに空冷方式は、冷却のための空気をファンなどの装置を用いて強制的に流す強制空冷方式と、ファンなどの装置を用いずに自然対流により放熱する自然空冷方式とに分類できる。
【0007】
強制空冷方式を用いた回転電機は、特許文献1及び2などに開示されている。
【0008】
特許文献1及び2では、回転電機の回転子と一体となって回転する通風ファンと、回転子の回転軸方向に設けた空気通路を有し、通風ファンにより回転電機機内の空気を循環させて回転電機を冷却する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-81994号公報
【文献】特開2009-261248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1及び2のような冷却構造においては、回転子の空気通路の数は回転子鉄心の磁気抵抗のバランスを保つために、回転電機の極数の整数倍とする必要がある。
【0011】
一方、通風ファンに起因する流体騒音と、回転電機の電磁加振力に起因する電磁騒音とが増幅しあわないように、通風ファンの羽根枚数は空気通路の数の整数倍にならないようにすることが求められる。
【0012】
しかしながら、回転子の空気通路の数と、通風ファンの羽根枚数とが異なる場合、回転子の空気通路のピッチと通風ファンの羽根ピッチが異なり、回転子の空気通路の位置と通風ファンの羽根間通風路の位置との関係が、回転子の周方向位置によって異なることになる。
【0013】
このため、回転子の空気通路の出口直後に通風ファンの羽根が位置し、回転子の空気通路を流れてきた空気が通風ファンの羽根に衝突して衝突損失を生じ、通風ファンによる送風量の低下や騒音を生じる要因となる。
【0014】
したがって、回転子に回転軸方向の空気通路と、回転子と一体となって回転する通風ファンを有する空気冷却式の回転電機において、騒音を増加させることなく、通風ファンによる送風量を増大して冷却性能を向上することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の回転電機は、固定子と、該固定子の内径側に所定の空隙を介して対向配置された回転子とを備えて成る回転電機であって、前記固定子は、固定子コアと、該固定子コアの内径側に、軸方向に延伸し周方向に所定間隔をもって複数形成された固定子スロットと、該複数の固定子スロット内に装着された固定子コイルとを備え、前記回転子は、空気を通風するための空気通路を備えた回転子コアと、前記回転子と一体となって回転するファンと、回転軸方向に延伸する複数の回転子スロットに挿入された界磁部材である複数の回転子バーと、前記回転子バーを両軸端で短絡するエンドリングと、を備え、前記ファンは、シュラウドと複数の羽根を有しており、前記回転子の空気通路の数と、前記ファンの羽根枚数とが互いに異なり、かつ、前記ファンの羽根枚数は前記空気通路の数の整数倍とならないようにし、前記空気通路と前記ファンの吸込み部との空隙が小さくなるように前記シュラウドの内径部が前記エンドリングの内径面まで延伸し、前記複数の羽根の一部または全部が、前記回転子コアの空気通路の回転軸方向投影面よりも外径側に位置しており、かつ、最内径部が前記エンドリングの内径面まで延伸した前記シュラウドの内径部から回転軸方向と平行になるように形成し、前記複数ある羽根のうちの一部の羽根の最内径部は、前記空気通路の最外径部よりも外径側にあり、前記複数ある羽根のうちの前記空気通路がない位置にある一部の羽根の最内径部は、前記回転子コアの空気通路の最外径部よりも内径側にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、騒音を増加させることなく、高い冷却性能を有する回転電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の回転電機の実施例1を示す断面図である。
図2】本発明の回転電機の実施例1を示す回転軸垂直面の断面図である。
図3】本発明の回転電機の実施例1を示すファンの斜視図である。
図4】本発明の回転電機の実施例1を示すファンの正面図である。
図5図4のA-A’線に沿う断面図である。
図6】従来技術の回転電機を示す断面図である。
図7a】本発明の空気流路と羽根の位置関係を示す模式図である。
図7b】従来技術の空気流路と羽根の位置関係を示す模式図である。
図8】本発明の回転電機の実施例1と、図6に示す従来技術の回転電機の通風量を比較して示す図である。
図9】本発明の回転電機の実施例2における空気流路と羽根の位置関係を示す模式図である。
図10】本発明の回転電機の実施例3の空気通路とファンの羽根との位置関係を表す模式図である。
図11】本発明の回転電機の実施例4の断面図である。
図12】本発明の回転電機の実施例1~4のいずれか1つを鉄道車両駆動用電動機として用いた例を示す模式図である。
図13】本発明の回転電機の実施例1~4のいずれか1つを電気自動車駆動用電動機として用いた例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の回転電機は、例えば、固定子と、該固定子の内径側に所定の空隙を介して対向配置された回転子とを備えて成る回転電機であって、前記固定子は、固定子鉄心と、該固定子鉄心の内径側に、軸方向に伸延し周方向に所定間隔をもって複数形成された固定子スロットと、該複数の固定子スロット内に装着された固定子コイルとを備え、前記回転子は、回転軸方向に連通した空気通路とを備えた回転子鉄心と、前記回転子と一体となって回転するファンとを備え、前記回転子鉄心の空気通路の数と、前記ファンの羽根枚数とが互いに異なり、前記ファンの羽根の最内径位置が前記回転子鉄心の空気通路の最外径位置よりも外径側に位置することを特徴とする。
【0019】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の回転電機を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1及び図2に本発明の回転電機を誘導電動機に適用した実施例1の断面図を示す。
【0021】
また、図3から図5に本発明の回転電機を誘導電動機に適用した実施例1のファンを示す。
【0022】
誘導電動機である回転電機1は、固定子2と回転子3から構成されている。
【0023】
固定子2は固定子コア20と、固定子コア20の内径側に設けられ、かつ、周方向に所定の間隔をもって形成され、回転軸方向に延伸する複数の固定子スロット21に巻き回された固定子コイルと、固定子コア20を保持するハウジング24から構成されている。
【0024】
また、回転子3は、固定子コア20と径方向に所定の空隙をもって対向して配置された回転子コア30と、回転子コア30の外径側に設けられ、かつ、周方向に所定の間隔をもって形成され、回転軸方向に延伸する複数の回転子スロット31に挿入された界磁部材である複数の回転子バー32と、各回転子バーを両軸端で短絡するための導体であるエンドリング33と、各回転子バー32とエンドリング33とを保持するためのリテイニングリング34と、回転子コア30が嵌合されているシャフト36とを備えて構成されている。シャフト36は軸受37に回転可能に保持されている。
【0025】
また、回転子コア20には冷却空気40の通路となる空気通路301が回転軸方向に貫通して設けられている。
【0026】
また、回転子3には、冷却空気40を通風するためのファン35が取り付けられており、ファン35は回転子3と一体となって回転し、冷却空気40を通風する。
【0027】
ファン35は、ハブ351と、シュラウド352と、ハブ351とシュラウド352との間に設けられる複数の羽根353から構成される。
【0028】
ファン35の羽根353の径方向の位置は、最も内径側の位置が回転子コア30に設けた空気通路301の径方向位置の、最も外径側の位置よりも外径に位置している。
【0029】
図7a、図7bに、本発明と従来技術との比較を示す。図7aは本発明の回転電機における、図7bは従来技術の回転電機における、回転子コア30の空気通路301と、ファン35の羽根353との位置関係をそれぞれ示す模式図である。なお、本模式図では、本発明の回転電機及び従来技術の回転電機ともに、空気通路の数を12個、ファンの羽根枚数を17枚としているが、これらは一例であり、この数に限定するものではない。
【0030】
本発明の回転電機においては、ファン35の羽根353の最も内径側の位置を、回転子コア30の空気通路301の最も外径側の位置よりも外径側に設けているので、空気通路301の回転軸方向の投影面に羽根353がなく、空気通路301を通った冷却空気400が、ファン35の羽根353に衝突しない。
【0031】
一方、従来構造の回転電機においては、ファン35の羽根353の最も内径側の位置が、回転子コア30の空気通路301の最も外径側の位置よりも内径側に設けられているので、空気通路301の回転軸方向の投影面に羽根353が存在し、空気通路301を通った冷却空気400が、ファンの羽根353に衝突し、流体損失を生じる。
【0032】
以上により、本発明の回転電機においては、従来構造の回転電機と比較して、冷却空気の流体損失が少なく、ファンの通風量を増大することができ、冷却性能を向上することができる。
【0033】
図8に流体解析により得られた本発明の回転電機の実施例1と、図6に示す従来技術の回転電機のファンによる通風量を示す。従来技術と比較して、本発明では通風量を約1割増加することができる。これにより回転電機の冷却性能を向上することができる。
【実施例2】
【0034】
図9は本発明の回転電機の実施例2における回転電機の断面図である。
【0035】
本実施例と実施例1との違いは、ファン35のシュラウド352の内径部が、回転子3に取り付けられたエンドリング33の内径面まで延伸していることである。
【0036】
ファン35と回転子3の空気通路301との間の空隙が大きいと、ファン35から吐出した冷却空気が、再度ファン35の吸込み部に流れる循環流が生じ、冷却性能が低下する。そこで図9に示すように、ファン35のシュラウド353の内径部を、エンドリング33の内径面まで延伸し、空気通路301とファン35の吸込み部との空隙を小さくすることで、上記の課題を解決することができる。
【実施例3】
【0037】
図10に実施例3の空気通路301とファン35の羽根353との位置関係を表す模式図を示す。
【0038】
図7aに示したように、実施例1では、複数設けた羽根353の全てについて、最も内径側の位置が、空気通路301の最も外径側の位置よりも外径に位置するようにしたが、本実施例では、羽根353の内径方向の延長線上に空気通路301がない位置においては、羽根353の最も内径側の位置を、空気通路301の最も外径側の位置よりも内径側まで延伸させている。すなわち、複数設けた羽根353の径方向の長さを周方向の位置により変えている。これにより、空気通路301からの冷却空気が衝突しない位置における羽根353の面積を広く取ることができるため、ファン35がより多くの仕事をすることができる、すなわち通風量を増大することができる。
【実施例4】
【0039】
図11は本発明の実施例4における回転電機の断面図である。
【0040】
実施例1から実施例3と、実施例4との違いは、回転電機が永久磁石式同期電動機であることである。
【0041】
本発明の効果は、回転電機が誘導電動機か永久磁石同期電動機であるかによらず、同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、実施例1から4は、分布巻の回転電機を例として説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、集中巻の回転電機でも同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0043】
図12に本発明の上述した各実施例のうちの1つの回転電機を鉄道車両駆動用電動機として用いた例を示す。
【0044】
該図に示す如く、鉄道車両5は、台車501に実施例1から4のいずれか1つの回転電機1、増速ギア502、車輪503を備えて構成され、回転電機1が増速ギア502を介して車輪503を駆動するものである。
【0045】
なお、本実施例では1つの台車501に対して2台の回転電機1を取り付けているが、1台又は2台以上となる複数台を搭載してもよい。
【0046】
また本実施例では鉄道車両駆動用としているが、電動建設機械や電動自動車駆動用としても同様に用いることができる。
【実施例6】
【0047】
図13に本発明の上述した各実施例のうちの1つの回転電機を電気自動車駆動用電動機として用いた例を示す。
【0048】
該図に示す如く、電気自動車6は、車輪601によって支持されている。この電気自動車は、前輪駆動であるため、前方の車軸603には、実施例1から4のいずれか1つの回転電機1が直結して取り付けられている。
【0049】
回転電機1は、制御装置602によって駆動トルクが制御される。制御装置602の動力源としては、蓄電装置604が備えられ、蓄電装置604から電力が制御装置602を介して、回転電機1に供給され、回転電機1が駆動されて、車輪601が回転する。
【0050】
本実施例は前輪駆動方式の電気自動車としているが、後輪駆動方式または全輪駆動方式の電気自動車の駆動装置として利用してもよい。また、内燃機関と蓄電装置との両方を備えるハイブリッド自動車の駆動装置として利用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 回転電機
2 固定子
3 回転子
5 鉄道車両
6 電気自動車
20 固定子コア
21 固定子スロット
22 固定子コイル
23 固定子コイルエンド
24 ハウジング
30 回転子コア
31 回転子スロット
32 回転子バー
33 エンドリング
34 リテイニングリング
35 ファン
36 シャフト
37 軸受
38 永久磁石
40 冷却空気
301 空気通路
351 ハブ
352 シュラウド
353 羽根
501 台車
502 増速ギア
503 車輪
601 車輪
602 制御装置
603 車軸
604 蓄電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13