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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】熱処理ロール
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20220907BHJP
   F16C 13/04 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F16C13/00 Z
F16C13/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019188022
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021063543
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390002015
【氏名又は名称】ヒラノ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】溝口 孝史
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-2562(JP,A)
【文献】特開平8-121463(JP,A)
【文献】特公昭49-29043(JP,B1)
【文献】特開昭53-51886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 13/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを搬送する金属製の外筒と、
前記外筒の内部に形成され、流体を溜める空洞部と、
前記外筒の左右両側面から突出した左右一対の回転軸と、
一方の前記回転軸の中心と前記外筒の一方の側面の中心を貫通し、前記外筒の前記空洞部の内部に突出した流体の供給管と、
他方の前記回転軸の中心を貫通し、前記外筒の他方の前記側面の中心に前記流体の排出口を有する排出路と、
を有し、
前記供給管の他方の端部は、前記外筒の他方の前記側面とは非接触であって離れており、かつ、前記ウエブの幅方向における端部の位置と同じ位置であり、
前記供給管の他方の前記端部は閉塞され、
前記供給管には、軸方向に沿って複数の前記流体の供給口が開口している、
熱処理ロール。
【請求項2】
前記供給口は、前記供給管の円周方向に沿って複数開口している、
請求項1に記載の熱処理ロール。
【請求項3】
前記外筒の外径は、5~30cmであり、前記供給管の外径は、1~5cmである、
請求項1に記載の熱処理ロール。
【請求項4】
前記流体は、所定温度まで加熱されたオイルである、
請求項1に記載の熱処理ロール。
【請求項5】
前記流体は、所定温度の水である、
請求項1に記載の熱処理ロール。
【請求項6】
前記回転軸を回転させる駆動手段を有する、
請求項1に記載の熱処理ロール。
【請求項7】
前記流体の供給手段が、前記供給管に接続され、
前記排出路から排出された前記流体は、前記供給手段に循環する、
請求項1に記載の熱処理ロール。
【請求項8】
前記供給手段が、前記流体の加熱手段と、加熱された流体を前記供給管に送るポンプを有する、
請求項に記載の熱処理ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブに対し所定の温度で熱処理を行う熱処理ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送されるフィルム、布などの長尺状のウエブを加熱したり冷却したりするために熱処理ロールが提案されている。この熱処理ロールは、その内部に加熱オイル、熱水、温水、冷却水などを流入させ、熱処理ロールの表面を所定の温度にして、ウエブを熱処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-8813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような熱処理ロールにおいては、例えば、加熱されたオイルは、熱処理ロールの一方の軸から流入し、他方の軸から流出している。そのため、オイルが流入した側の熱処理ロールの表面温度は所定温度まで加熱される。
【0005】
しかし、流出する側の熱処理ロールの表面温度は、加熱されたオイルの温度が下がり、流入側と流出側の熱処理ロールの表面温度の間に温度差が生じるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、熱処理ロールにおける流体の流入側と流出側の表面温度が均一になるようにした熱処理ロールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウエブを搬送する金属製の外筒と、前記外筒の内部に形成され、流体を溜める空洞部と、前記外筒の左右両側面から突出した左右一対の回転軸と、一方の前記回転軸の中心と前記外筒の一方の側面の中心を貫通し、前記外筒の前記空洞部の内部に突出した流体の供給管と、他方の前記回転軸の中心を貫通し、前記外筒の他方の前記側面の中心に前記流体の排出口を有する排出路と、を有し、前記供給管の他方の端部は、前記外筒の他方の前記側面とは非接触であって離れており、かつ、前記ウエブの幅方向における端部の位置と同じ位置であり、前記供給管の他方の前記端部は閉塞され、前記供給管には、軸方向に沿って複数の前記流体の供給口が開口している、熱処理ロールである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱処理ロールの温度が軸方向において均一となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示す熱処理ロールの縦断面図である。
図2】熱処理ロールの平面図である。
図3】外筒と供給管の縦端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態のウエブWの熱処理ロール10について、図1図3を参照して説明する。本実施形態におけるウエブWとしては例えばフィルムが用いられ、このウエブWを、加熱オイルで加熱した熱処理ロール10で加熱する。
【0011】
(1)熱処理ロール10
熱処理ロール10について図1図3を参照して説明する。
【0012】
熱処理ロール10は、外筒12と、外筒12の内筒である供給管14とを有する。外筒12は、ウエブWを抱きかかえて搬送するものであって金属製であり、その内部には空洞部16が形成されている。外筒12の左右両側面からは、左右一対の回転軸18,20が突出している。外筒12の直径は、5~30cmであり、供給管14の外径は、1~5cmである。
【0013】
供給管14は、左側の回転軸18を貫通すると共に外筒12の空洞部16に突出している。外筒12と供給管14とは軸方向に平行であり、外筒12と共に回転する。供給管14の内部は空洞であると共に、右端部は閉塞されている。空洞部16における供給管14の長さは、空洞部16の軸方向の長さよりも短く、少なくとも半分以上の長さを有している。これにより、供給管14の右端部は、外筒12の右側面とは非接触であって離れている。なお、供給管14の長さは、空洞部16の軸方向の長さの半分以上で、かつ、外筒12の右側面から離れ接触しない位置であればどの長さでもよいが、最も好ましいのは熱処理するウエブWの幅方向の位置と同じ位置にするのがよい。供給管14の軸方向には、複数の供給口22が等間隔に開口すると共に、この供給口22は、供給管14の円周部において90°毎に設けられている。
【0014】
外筒12の右側の回転軸20の内部には、排出路を構成する排出管24が貫通している。排出管24は、外筒12の右側面から空洞部16に排出口26が開口している。
【0015】
外筒12の左右一対の回転軸18,20は、それぞれ左右一対の軸受け28,30に回転自在に取り付けられている。また、水平な面に設置された台32からは左右一対の脚部34,36が立設され、左右一対の脚部34,36の上端部に左右一対の軸受け28,30が設けられている。これによって、外筒12は、左右一対の脚部34,36に水平に回転自在に支持されている。
【0016】
左側の回転軸18から突出した供給管14の左端部は、ロータリージョイント38を介して流入管40に接続されている。
【0017】
排出管24の右端部は、ロータリージョイント42を介して流出管44が接続されている。
【0018】
熱処理ロール10は、オイルを所定温度(例えば140℃)に加熱するための加熱部46と、この加熱部46で加熱されたオイルを流入管40を経て供給管14に供給するポンプ48を有している。流出管44から戻るオイルは、加熱部46に循環される。
【0019】
外筒12と軸受け30との間の右側の回転軸20には、スプロケット50が設けられている。また、台32には、外筒12を駆動させるモータ52と、モータ52の回転速度を所定の回転速度まで落とす減速装置54が設けられている。減速装置54の出力軸56には、スプロケット58が取り付けられている。そして、回転軸20のスプロケット50と減速装置54のスプロケット58との間には無端状のベルト60が架け渡されている。これによって、モータ52が回転すると減速装置54で所定の回転速度まで減速され、ベルト60を介して回転軸20が回転し、外筒12が回転する。この減速装置54における回転速度は、ウエブWの搬送速度に合致させる。
【0020】
(2)外筒12の加熱方法
次に、外筒12の加熱方法について説明する。所定の温度まで加熱部46で加熱したオイルはポンプ48によって流入管40を経て供給管14に至る。供給管14に至った加熱オイルは、複数の供給口22から空洞部16に流出し、空洞部16がオイルで満杯となる。空洞部16がオイルで満杯になると、外筒12の表面は加熱されたオイルで一定温度に加熱される。
【0021】
そして、これ以降、ポンプ48は単位時間当たり一定量で加熱されたオイルを流入管40を介して供給管14の左側に送り、送られたオイルは、供給管14の複数の供給口22から空洞部16に流出しつつ、供給管14の閉塞された右端部まで流れる。この場合に、供給管14の直径は、外筒12よりも小さいため、加熱されたオイルの温度が下がることなく供給管14の右端部(流出側近傍)まで流れる。
【0022】
供給管14の複数の供給口22から軸方向の全幅と周方向の全周にわたって流出したオイルは、温度が下がることなく、外筒12の軸方向と周方向において空洞部16内で拡がる、特に、外筒12は、モータ52によってウエブWの搬送速度に合わせて回転しているため、その遠心力によりオイルは、外筒12の周方向において表面まで満遍なく拡がる。したがって、外筒12の表面温度は、オイルの流入側と流出側とで変化がなく加熱され、外筒12に抱きかかえられ搬送されるウエブWを、幅方向に均一に加熱できる。
【0023】
空洞部16の排出口26から排出されたオイルは、排出管24、流出管44を通って加熱部46に循環する。加熱部46では再び所定温度まで加熱されてポンプ48に流れる。
【0024】
(3)効果
本実施形態によれば、加熱されたオイルは、径が細い供給管14の左端部から右端部まで流れて、このときに加熱されたオイルの温度が下がらないため、供給口22から流出するオイルの温度は下がっておらず、外筒12を軸方向(左右方向)において均等に加熱できる。
【0025】
また、外筒12は、モータ52によってウエブWの搬送速度に合わせて回転しているため、その遠心力によりオイルは、外筒12の周方向において表面まで満遍なく拡がる。
【0026】
また、供給管14の右端部は、外筒12の右側面から離れた位置にあるため、オイルの排出口26を外筒12の右側面の中央部に開口でき、排出されるオイルは中央に流れるようになり、スムーズに排出口26から排出できる。
【0027】
また、供給管14は、左側のみ支持された片持ちであるが、供給管14全体が、外筒12の空洞部16に満たされたオイルの中に存在するため、自重によって撓んだりしない。
【0028】
また、モータ52によって外筒12を回転させているが、排出管24は回転軸20の内部に設けられているため、スプロケット50を回転軸20の外周に設けることができる。
【変更例】
【0029】
上記実施形態では、オイルを用いて外筒12を加熱したが、これに代えて熱水、温水を用いて外筒12の表面を加熱し、ウエブWを加熱してもよい。
【0030】
また、上記実施形態では外筒12を加熱したが、これに変えて、冷却水などを用いて外筒12の表面を冷却し、ウエブWを冷却してもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、モータ52によって外筒12を回転させたが、これに代えて、外筒12の駆動手段を用いず、ウエブWの張力によってのみ回転させてもよい。
【0032】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
10・・・熱処理ロール、12・・・外筒、14・・・供給管、16・・・空洞部、18・・・回転軸、20・・・回転軸、22・・・供給口、24・・・排出管、26・・・排出口、28・・・軸受け、30・・・軸受け
図1
図2
図3