(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】アルミ製品の連続生産システム及び連続生産方法
(51)【国際特許分類】
B21C 23/00 20060101AFI20220907BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B21C23/00 A
B22D11/00 E
(21)【出願番号】P 2019553804
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2018040647
(87)【国際公開番号】W WO2019098032
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2017219548
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寿一
(72)【発明者】
【氏名】林 智宏
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-313635(JP,A)
【文献】特開昭52-101656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/00
B22D 11/00,11/04,11/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムの地金を溶解する溶解炉と、前記溶解炉にて溶解したアルミニウムの地金の溶湯に所定の合金成分を投入して添加成分を調整する調整炉と、
前記調整炉にて添加成分が調整された
合金溶湯を
鋳造型に連続的に注入する出湯炉と、
前記
鋳造型で横方向に連続鋳造された円柱ビレットを所定の長さに切断するビレット切断
機と、
前記
ビレット切断機にて切断されたビレットを用いて押出材を押出成形する押出
機とを連続的に備えたことを特徴とするアルミ製品の連続生産システム。
【請求項2】
さらに前記押出機により押し出されてくる押出材をそのまま熱間で曲げ加工を行う熱間曲げ加工
機を有することを特徴とする請求項1記載のアルミ製品の連続生産システム。
【請求項3】
さらに前記熱間曲げ加工機にて曲げ加工された素材をさらに連続的にその他の機械加工を行う機械加工
機を有することを特徴とする請求項2記載のアルミ製品の連続生産システム。
【請求項4】
さらに前記機械加工
機にて加工された加工品の熱処理を行う熱処理
炉を連続的に有することを特徴とする請求項3記載のアルミ製品の連続生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金の成分組成の調整から押出成形までを、さらには機械加工から熱処理までを、連続的に行うことができるアルミ製品の連続生産システム及び連続生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からアルミニウム合金からなる円柱ビレットを押出機に投入し、直接押出法又は間接押出法等により、長尺の押出材を得ることは行われている。
この場合に、1本のビレットから数十mの長さの押出材が得られることから、それ以上の長さを有する40~50m前後の大型のランテーブルや、クーリングテーブルが必要であり、非常に大がかりな押出装置,押出ラインとなっていた。
しかも押出材は、直線状の長い長尺材にならざるを得なかった。
【0003】
また、押出成形に供される円柱ビレットは、アルミインゴット(アルミ地金)を大型の溶解炉で溶解し、合金成分の組成を調整し、フロート式鋳造法,ホットトップ鋳造法等を採用した堅型の鋳造機を用いて生産されており、非常に大型の鋳造機及びその附帯設備が必要であるとともに、その後の調質炉もバッチ処理となっているため、大型の炉が必要であった。
このように、ビレット鋳造と押出装置とは、それぞれ大型の装置や附帯設備が必要であることから、それぞれ異なる企業にて生産されるか、少なくとも異なる建屋にて生産する分業体制になっていた。
さらには、押出材が数十mにも及ぶ長尺材となるため、所定の長さに定尺切断し、曲げ加工及びその他の機械加工を行い、完成品を得る工程は工程毎に分かれたロット生産方式となっていた。
【0004】
このような従来の生産体制にあっては、大きなロット単位による分業生産であるため、原材料,中間製品,完成品等のそれぞれの工程にて大量の在庫管理が必要となるだけでなく、原材料から完成品までの工程が数日間にも及ぶ長期となるリードタイムが長い問題もあった。
【0005】
特許文献1には、押し出しを行うコンテナに、被加工材を押圧供給する押圧供給手段を備えた連続押出成形加工装置を開示するが、アルミニウム合金の成分調整や調質処理が困難であり、実用的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コンパクト,省スペース化ができ、中間在庫が少なく、原材料から完成品までのリードタイムが短いアルミ製品の連続生産システム及びそれによる連続生産方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアルミ製品の連続生産システムは、アルミニウム合金の溶湯の添加成分を調整する組成調整手段と、前記添加成分が調整された溶湯を用いて円柱ビレットを連続鋳造する連続鋳造手段と、前記連続鋳造された円柱ビレットを所定の長さに切断するビレット切断手段と、前記切断されたビレットを用いて押出材を押出成形する押出成形手段とを連続的に備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、添加成分を調整する組成調整手段とは、インゴット等のアルミ地金を炉で溶解し、Mg,Zn,Si,Cu等の各種成分の母合金を加えて、溶湯の成分組成を調整するためのものをいう。
例えば、溶解炉,調整炉,出湯炉等を連設し、それぞれの炉で溶湯を調整しながら出湯炉からビレットの鋳造型に注湯し、円柱ビレットを連続鋳造する連続鋳造手段と組み合せてもよい。
従来は、ホットトップ型等の堅型の鋳造機を用いていたが、本発明は押し出しに必要なビレットを横型の鋳造型を用いて横方向に連続鋳造できる横型連続鋳造機を用いた。
これにより、横方向に鋳造した円柱状の連鋳棒を必要な長さに切断することで、押出用のビレットを得ることができる。
【0010】
上記にて得られた切断ビレットは、押出機に供給され押出成形されるが、その前に調質炉を用いてビレットの均質化処理を行ってもよい。
【0011】
本発明は、さらに押出成形により押し出されてくる押出材をそのまま熱間で曲げ加工を行う熱間曲げ加工手段を有していてもよい。
ここで、押し出されてくる押出材をそのまま熱間で曲げ加工を行うとは、押出ダイスから押し出された押出材は高温であり、冷却される前に必要な曲げ加工を行うことをいう。
この場合に、高温の押出材を所定の長さに切断し、曲げ加工機で曲げてもよい。
また、例えば3点ロール曲げ等、ロールの間に押し出された押出材をそのまま通過させ、連続的に曲げ加工を行うことができるロール曲げ装置を備えてもよい。
また、押し出しながら製品素材を切断できるように、切断機を押出材が押し出されてくる押出スピードに合せて、走行させながら切断する走行型切断機を備えてもよい。
【0012】
本発明は、曲げ加工された素材を穴明けやプレス等のその他の機械加工を行う機械加工手段を連続的に設けてもよい。
また、機械加工された加工品の熱処理を行う熱処理手段を連続的に有していてもよい。
このような生産システムを用いた連続生産方法は、アルミニウム合金の溶湯の成分組成を調整するステップ(1)と、前記成分調整された溶湯を用いて円柱ビレットを連続鋳造するステップ(2)と、前記連続鋳造された円柱ビレットを所定の長さのビレットに切断するステップ(3)と、前記ビレットを用いて押出材を押出成形するステップ(4)と、前記押出材を押出成形直後の熱間状態で曲げ加工するステップ(5)とを有し、前記ステップ(1)~(5)までを連続的に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアルミ製品の連続生産システムは、アルミ地金の溶解工程から押出材の押出成形までをコンパクトな装置で連続的に生産できるので、省スペース化,リードタイムの短縮を図ることができる。
また、従来のビレットの保管等の中間在庫が不要になる。
【0014】
本発明は、曲げ加工,穴明け切断等の機械加工、加工品の熱処理等の工程を連続的に構築すると、さらに中間在庫が減り、リードタイムが短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るアルミ製品の連続生産システムを構成する製造ラインの例を示す。
【符号の説明】
【0016】
1 溶解炉
2 調整炉
3 出湯炉
4 鋳造型
5 切断ソー
6 調質炉
7 押出機
8 ランテーブル
9 曲げ加工機
10 機械加工機
11 熱処理炉
M0 インゴット(地金)
M1 ビレット
M2 押出材
M3 加工品
M4 完成品
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る連続生産システムの構成例を
図1に基づいて説明する。
アルミニウム合金のビレットの鋳造工程は、次のとおりである。
アルミの地金(インゴット)を溶解する溶解炉1を有する。
溶解したアルミの溶湯に、Mg,Si,Zn,Cu等の必要な合金成分を調整すべく、それらの母合金を投入して調整する調整炉2を有する。
次に、成分が調整された溶湯を鋳造型4に連続的に注入する出湯炉3を有する。
これらの一連の構成を
図2に模式的に示す。
溶解炉1にチェーン装置等の投入機を用いてインゴット(地金)M
0を投入し、加熱溶解する。
この地金の溶湯を調整炉2に移し、溶湯の合金成分を調整する。
調整炉2には、脱ガス装置2bが設けられている。
成分調整された溶湯は、出湯炉3に移される。
出湯炉3からは鋳造型4に注入され、横方向にビレットM
1が連続鋳造される。
溶湯を溶解炉1,調整炉2,出湯炉3及び鋳造型4に順次移送する手段としては、各種方法を採用できる。
例えば、フロートによる押圧移送やポンプ移送が例として挙げられる。
連続鋳造されたビレットは、
図1に模式的に示すように切断ソー5にて所定の長さに切断される。
【0018】
切断されたビレットは調質炉6に投入され、460~580℃にて均質化処理される。
均質化処理されたビレットは余熱され、押出機7に備えるコンテナ内に投入され、押出ステムにて押圧し、押出ダイスを介して押出材M2が押出成形される。
押し出された押出材M2はランテーブル8の上を移動する。
この押出材を所定の長さに切断し、曲げ加工機に移して曲げてもよい。
また、押し出された押出材の先にロールによる曲げ加工機9を有し、押出材をそのまま熱間の状態で連続的に曲げ加工してもよい。
【0019】
連続的に曲げ加工した場合には、押出スピードに合せて走行する切断機で、切断される。
押出材M2は、さらに機械加工機9に移され、穴明け等のその他の機械加工が行われる。
所定の曲げと穴明け等の加工がされた加工品M3は、熱処理炉11に投入され、人工時効処理され、完成品M4となる。
なお、曲げ加工やその他の機械加工は、製品に応じて設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係るアルミ製品の連続生産システムは、アルミニウム合金を素材とする各種アルミ製品の製造に利用できる。