(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】再狭窄の処置のための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/573 20060101AFI20220907BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20220907BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220907BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220907BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220907BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220907BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220907BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220907BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220907BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220907BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220907BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220907BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220907BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K31/436
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/26
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/04
A61P9/06
A61P9/10 101
(21)【出願番号】P 2019565179
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(86)【国際出願番号】 US2018034713
(87)【国際公開番号】W WO2018218182
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-12
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511255915
【氏名又は名称】マーケイター メドシステムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スワード, カーク パトリック
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09220716(US,B2)
【文献】国際公開第2017/078405(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0189941(US,A1)
【文献】特表2012-504018(JP,A)
【文献】特表2015-520147(JP,A)
【文献】C. D. Owens et al.,Safety and feasibility of adjunctive dexamethasone infusion into the adventitia of the femoropopliteal artery following endovascular revascularization,J. of Vascular Surgery,2014年,59 (4),1016-1024
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テムシロリムスまたはその薬学的に許容される塩、デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む
、血管疾患の処置における使用のための注射可能な組成物
であって、前記血管疾患が、狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、不整脈、末梢動脈疾患、跛行、重症虚血肢、アテローム性動脈硬化症、バイパスグラフト不全、移植血管障害、血管再狭窄、またはステント内再狭窄であり、前記組成物は血管の周囲の組織に送達されるものであることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記組織が、外膜組織および/または血管周囲組織である、請求項1に記載の注射可能な組成物。
【請求項3】
前記組成物が外膜送達
のためのものである、請求項1
または2に記載の注射可能な組成物。
【請求項4】
前記組成物が膝の下の外膜送達
のためのものである、請求項1
または2に記載の注射可能な組成物。
【請求項5】
前記組成物が膝の上の外膜送達
のためのものである、請求項1
または2に記載の注射可能な組成物。
【請求項6】
前記組成物が膝下膝窩血管または脛骨血管への外膜送達
のためのものである、請求項1
または2に記載の注射可能な組成物。
【請求項7】
前記組成物が大腿血管への外膜送達
のためのものである、請求項1
または2に記載の注射可能な組成物。
【請求項8】
前記組成物が冠状血管への外膜送達
のためのものである、請求項1
または2に記載の注射可能な組成物。
【請求項9】
前記組成物が冠状動脈への外膜送達
のためのものである、請求項1
または2に記載の注射可能な組成物。
【請求項10】
前記テムシロリムスの治療有効量が約1μgから50mgである、請求項1から
9のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項11】
前記テムシロリムスの治療有効量が約10μgから20mgである、請求項1から
10のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項12】
前記テムシロリムスの治療有効量が約100μgから15mgである、請求項1から
10のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項13】
前記テムシロリムスの治療有効量が約100μgから5mgである、請求項1から
10のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項14】
前記治療有効量を、標的罹患動脈の長手方向長さによって決定する、請求項1から1
3のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項15】
前記デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、請求項1から1
4のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項16】
前記デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、前記テムシロリムスの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、請求項1から1
4のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項17】
前記デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、前記テムシロリムスの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、請求項1から1
4のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項18】
前記組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、請求項1から1
7のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項19】
前記組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、請求項1から1
7のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項20】
前記テムシロリムスの注射濃度が約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、請求項1から1
9のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項21】
前記テムシロリムスの注射濃度が約0.1mg/mLから約0.5mg/mLである、請求項1から1
9のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項22】
前記テムシロリムスの注射濃度が約0.4mg/mLである、請求項1から1
9のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【請求項23】
前記薬学的に許容される賦形剤が、0.9%塩化ナトリウム注射液USP、無水アルコール、dl-アルファトコフェロール、無水クエン酸、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、またはそれらの組合せである、請求項1から2
2のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年5月26日に出願された米国仮特許出願番号第62/511,797号および2018年1月31日に出願された米国仮特許出願番号第62/624,528号の利益を主張しており、これらの仮出願は全て、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、一般に、医療の方法およびデバイスに関する。さらに詳細には、本開示は、血管の周囲の組織においてテムシロリムスを分配するための医療の方法およびキットに関する。さらに、本開示は、血管の周囲の組織において糖質コルチコイドと組み合わせたテムシロリムスを分配するための医療の方法およびキットに関する。
【0003】
閉塞は、様々な疾患状態下で血管中に形成される可能性がある。アテローム性動脈硬化症において、身体における、特に心臓、脚、頸動脈および腎臓の解剖学的構造における動脈の狭小化は、血流の欠如からの組織虚血に至ることがある。バルーン血管形成、アテレクトミー、ステント留置または外科的動脈内膜切除などの機械的血行再建方法は、血管を開口するとともに下流組織への血流を改善するために使用される。残念ながら、機械的血行再建は、血管の硬化および血管壁の瘢痕様組織による肥厚化を引き起こす損傷カスケードに至ることがあり、これは血流を低減し、別の血行再建手技を必要とすることがある。機械的血行再建に続く血管の硬化および肥厚化を低減することで、血管の開存性を維持または改善することが強く要望されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本開示は、血管疾患を処置するために血管の周囲の組織に細胞分裂阻害剤と糖質コルチコイドの組合せを分配するための方法、デバイス、および組成物を提供する。
【0005】
テムシロリムスおよび糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を本明細書中に提供する。糖質コルチコイドがデキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩である医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの糖質コルチコイドに対する比(重量基準)(またはその逆も同じ)が10:1から1:1の間である医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。注射可能な投薬形態にある医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの濃度が1.0から8.0mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの濃度が約3.2mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの濃度が4.0mg/mL未満である医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの濃度が0.01から2.0mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの濃度が0.05から0.5mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの濃度が約0.1mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの濃度が約0.4mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。再狭窄の処置における使用のための、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の下の再狭窄の処置における使用のための、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の上の再狭窄の処置における使用のための、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝下膝窩血管または脛骨血管における再狭窄の処置における使用のための、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。
【0006】
テムシロリムスまたはその薬学的に許容される塩、デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む注射可能な組成物を本明細書中に提供する。外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。冠状血管への外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。冠状動脈への外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の下の外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の上の外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝下膝窩血管または脛骨血管への外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。大腿血管への外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの治療有効量が約1μgから50mgである注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの治療有効量が約10μgから20mgである注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの治療有効量が約100μgから15mgである注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの治療有効量が約100μgから5mgである注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。治療有効量を標的罹患動脈の長手方向長さによって決定する、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、テムシロリムスの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、テムシロリムスの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの注射濃度が約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの注射濃度が約0.1mg/mLから約0.5mg/mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの注射濃度が約0.4mg/mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。薬学的に許容される賦形剤が、0.9%塩化ナトリウム注射液USP、無水アルコール、dl-アルファトコフェロール、無水クエン酸、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、またはそれらの組合せである注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。再狭窄の処置における使用のための、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の下の再狭窄の処置における使用のための、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の上の再狭窄の処置における使用のための、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝下膝窩血管または脛骨血管における再狭窄の処置における使用のための、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。
【0007】
それを必要とする対象における血管疾患を処置する方法であって、本明細書中に記載の医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含み、組成物が直接注射によって疾患部位に投与される、方法を本明細書中に提供する。組成物が針付きカテーテルを介して注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、疾患部位の遠位または近位に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、疾患部位から少なくとも約2cm離れて注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、疾患部位にまたはそれに隣接して注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、注射によって血管中に投与される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、血管の周囲の外膜組織に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、血管の周囲の血管周囲組織に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管が動脈である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管が静脈である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。動脈が、冠状動脈または末梢動脈である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。動脈が、腎動脈、大脳動脈、肺動脈、および脚における動脈からなる群から選択される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。動脈が膝の下にある、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管が、膝下膝窩血管または脛骨血管である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、血管壁に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、血管壁の周囲の組織に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの治療有効量が約1μgから50mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの治療有効量が約10μgから20mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの治療有効量が約100μgから15mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの治療有効量が約100μgから5mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、テムシロリムスの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、テムシロリムスの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの注射濃度が約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの注射濃度が、約0.1mg/mLから約0.4mg/mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの注射濃度が約0.4mg/mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。テムシロリムスの注射濃度が、約0.1mg/mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物の投与の12カ月後、疾患部位における血管断面積が、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、60%以下減少している、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物の投与の12カ月後、疾患部位における血管断面積が、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、50%以下減少している、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物の投与の12カ月後、疾患部位における血管断面積が、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、30%以下減少している、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。対象がヒトである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管疾患が、狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、不整脈、末梢動脈疾患、跛行、または重症虚血肢である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、バイパスグラフト不全、移植血管障害、血管再狭窄、またはステント内再狭窄である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物を使用した処置により、テムシロリムスまたは糖質コルチコイドのいずれかを含む医薬組成物を使用した処置と比較して、疾患部位でのアポトーシスが減少する、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物を使用した処置により、テムシロリムスまたは糖質コルチコイドのいずれかを含む医薬組成物を使用した処置と比較して、疾患部位での壊死が減少する、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。
【0008】
それを必要とする個体における血管疾患を処置する方法であって、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含み、第1の医薬組成物がテムシロリムスを含み、第2の医薬組成物が糖質コルチコイドを含み、第1の組成物および第2の組成物を注射によって各々投与する方法を本明細書中に提供する。
【0009】
それを必要とするヒト対象における末梢動脈疾患を処置する方法であって、テムシロリムスまたはその薬学的に許容される塩、および糖質コルチコイドまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の治療有効量をヒト対象に投与することを含み、組成物が、ヒト対象の脈管構造を通って前進させたカテーテルの側方に伸長する注射針を介して、末梢動脈の壁における疾患部位にまたはその近傍に、直接注射によって投与される方法を本明細書中に提供する。組成物が注射を可視化するための造影媒体をさらに含む方法を、本明細書中にさらに提供する。
【0010】
ヒト対象の血管疾患の処置における使用のための、テムシロリムスおよび糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む注射可能な組成物であって、末梢動脈への外膜送達に適切であり、ヒト対象の脈管構造を通って前進させたカテーテルから側方に伸長する針を介して、末梢動脈の壁における血管疾患部位に直接注射するのに適切である、注射可能な組成物を本明細書中に提供する。組成物が注射を可視化するための造影媒体をさらに含む方法を、本明細書中にさらに提供する。
【0011】
細胞分裂阻害剤および糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を本明細書中に提供する。糖質コルチコイドがデキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩である医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の糖質コルチコイドに対する比(重量基準)(またはその逆も同じ)が10:1から1:1の間である、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。注射可能な投薬形態にある医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの濃度が1.0から8.0mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの濃度が約3.2mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの濃度が4.0mg/mL未満である医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の濃度が0.01から2.0mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の濃度が0.05から0.5mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の濃度が約0.1mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の濃度が約0.4mg/mLである医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。再狭窄の処置における使用のための、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の下の再狭窄の処置における使用のための、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の上の再狭窄の処置における使用のための、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝下膝窩血管または脛骨血管における再狭窄の処置における使用のための、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤がパクリタキセルである、医薬組成物を、本明細書中にさらに提供する。
【0012】
細胞分裂阻害剤またはその薬学的に許容される塩、デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む注射可能な組成物を、本明細書中に提供する。外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。冠状血管への外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。冠状動脈への外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の下の外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の上の外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝下膝窩血管または脛骨血管への外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。大腿血管への外膜送達に適切である注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約1μgから50mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約10μgから20mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約100μgから15mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約100μgから5mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。治療有効量を標的罹患動脈の長手方向長さによって決定する、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、細胞分裂阻害剤の治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、細胞分裂阻害剤の治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.1mg/mLから約0.5mg/mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.4mg/mLである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。薬学的に許容される賦形剤が、0.9%塩化ナトリウム注射液USP、無水アルコール、dl-アルファトコフェロール、無水クエン酸、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、またはそれらの組合せである注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。再狭窄の処置における使用のための、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の下の再狭窄の処置における使用のための、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝の上の再狭窄の処置における使用のための、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。膝下膝窩血管または脛骨血管における再狭窄の処置における使用のための、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤がパクリタキセルである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。
【0013】
それを必要とする対象における血管疾患を処置する方法であって、本明細書中に記載の医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含み、組成物が直接注射によって疾患部位に投与される、方法を本明細書中に提供する。組成物が針付きカテーテルを介して注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、疾患部位の遠位または近位に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、疾患部位から少なくとも約2cm離れて注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、疾患部位にまたはそれに隣接して注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、注射によって血管中に投与される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、血管の周囲の外膜組織に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、血管の周囲の血管周囲組織に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管が動脈である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管が静脈である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。動脈が、冠状動脈または末梢動脈である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。動脈が、腎動脈、大脳動脈、肺動脈、および脚における動脈からなる群から選択される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。動脈が膝の下にある、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管が、膝下膝窩血管または脛骨血管である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、血管壁に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物が、血管壁の周囲の組織に注射される、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約1μgから50mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約10μgから20mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約100μgから15mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約100μgから5mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、細胞分裂阻害剤の治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、細胞分裂阻害剤の治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.1mg/mLから約0.4mg/mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.4mg/mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.1mg/mLである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物の投与の12カ月後、疾患部位における血管断面積が、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、60%以下減少している、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物の投与の12カ月後、疾患部位における血管断面積が、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、50%以下減少している、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物の投与の12カ月後、疾患部位における血管断面積が、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、30%以下減少している、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。対象がヒトである、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管疾患が、狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、不整脈、末梢動脈疾患、跛行、または重症虚血肢である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、バイパスグラフト不全、移植血管障害、血管再狭窄、またはステント内再狭窄である、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物を使用した処置により、細胞分裂阻害剤または糖質コルチコイドのいずれかを含む医薬組成物を使用した処置と比較して、疾患部位でのアポトーシスが減少する、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。医薬組成物を使用した処置により、細胞分裂阻害剤または糖質コルチコイドのいずれかを含む医薬組成物を使用した処置と比較して、疾患部位での壊死が減少する、血管疾患を処置する方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤がパクリタキセルである、方法を、本明細書中にさらに提供する。
【0014】
それを必要とする個体における血管疾患を処置する方法であって、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含み、第1の医薬組成物が細胞分裂阻害剤を含み、第2の医薬組成物が糖質コルチコイドを含み、第1の組成物および第2の組成物を注射によって各々投与する、方法を本明細書中に提供する。細胞分裂阻害剤がパクリタキセルである、方法を、本明細書中にさらに提供する。
【0015】
それを必要とするヒト対象における末梢動脈疾患を処置する方法であって、細胞分裂阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および糖質コルチコイドまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の治療有効量をヒト対象に投与することを含み、組成物が、ヒト対象の脈管構造を通って前進させたカテーテルの側方に伸長する注射針を介して、末梢動脈の壁における疾患部位にまたはその近傍に、直接注射によって投与される方法を本明細書中に提供する。組成物が注射を可視化するための造影媒体をさらに含む方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤がパクリタキセルである、方法を、本明細書中にさらに提供する。
【0016】
ヒト対象の血管疾患の処置における使用のための、細胞分裂阻害剤および糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む注射可能な組成物であって、末梢動脈への外膜送達に適切であり、ヒト対象の脈管構造を通って前進させたカテーテルから側方に伸長する針を介して、末梢動脈の壁における血管疾患部位に直接注射するのに適切である、注射可能な組成物を本明細書中に提供する。組成物が注射を可視化するための造影媒体をさらに含む方法を、本明細書中にさらに提供する。細胞分裂阻害剤がパクリタキセルである、注射可能な組成物を、本明細書中にさらに提供する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
テムシロリムスおよび糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
(項目2)
前記糖質コルチコイドがデキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記テムシロリムスの糖質コルチコイドに対する比(重量基準)(またはその逆も同じ)が10:1から1:1の間である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記組成物が注射可能な投薬形態にある、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記組成物が少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記デキサメタゾンの濃度が1.0から8.0mg/mLである、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記デキサメタゾンの濃度が約3.2mg/mLである、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
前記デキサメタゾンの濃度が約4.0mg/mLである、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記デキサメタゾンの濃度が4.0mg/mL未満である、項目1から7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記テムシロリムスの濃度が0.01から2.0mg/mLである、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
前記テムシロリムスの濃度が0.05から0.5mg/mLである、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
前記テムシロリムスの濃度が約0.1mg/mLである、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
前記テムシロリムスの濃度が約0.4mg/mLである、項目1から11のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
テムシロリムスまたはその薬学的に許容される塩、デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む注射可能な組成物。
(項目15)
前記組成物が外膜送達に適切である、項目14に記載の注射可能な組成物。
(項目16)
前記組成物が膝の下の外膜送達に適切である、項目14に記載の注射可能な組成物。
(項目17)
前記組成物が膝の上の外膜送達に適切である、項目14に記載の注射可能な組成物。
(項目18)
前記組成物が膝下膝窩血管または脛骨血管への外膜送達に適切である、項目14に記載の注射可能な組成物。
(項目19)
前記組成物が大腿血管への外膜送達に適切である、項目14に記載の注射可能な組成物。
(項目20)
前記組成物が冠状血管への外膜送達に適切である、項目14に記載の注射可能な組成物。
(項目21)
前記組成物が冠状動脈への外膜送達に適切である、項目14に記載の注射可能な組成物。
(項目22)
前記テムシロリムスの治療有効量が約1μgから50mgである、項目14から21のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目23)
前記テムシロリムスの治療有効量が約10μgから20mgである、項目14から22のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目24)
前記テムシロリムスの治療有効量が約100μgから15mgである、項目14から22のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目25)
前記テムシロリムスの治療有効量が約100μgから5mgである、項目14から22のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目26)
前記治療有効量を、標的罹患動脈の長手方向長さによって決定する、項目14から25のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目27)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、項目14から26のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目28)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、前記テムシロリムスの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、項目14から26のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目29)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、前記テムシロリムスの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、項目14から26のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目30)
前記組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、項目14から29のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目31)
前記組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、項目14から29のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目32)
前記テムシロリムスの注射濃度が約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、項目14から31のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目33)
前記テムシロリムスの注射濃度が約0.1mg/mLから約0.5mg/mLである、項目14から31のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目34)
前記テムシロリムスの注射濃度が約0.4mg/mLである、項目14から31のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目35)
前記薬学的に許容される賦形剤が、0.9%塩化ナトリウム注射液USP、無水アルコール、dl-アルファトコフェロール、無水クエン酸、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、またはそれらの組合せである、項目14から34のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目36)
それを必要とする対象における血管疾患を処置する方法であって、項目1から35のいずれか一項に記載の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含み、前記組成物が直接注射によって疾患部位に投与される、方法。
(項目37)
前記組成物が針付きカテーテルを介して注射される、項目34に記載の方法。
(項目38)
前記組成物が、前記疾患部位の遠位または近位に注射される、項目36または37に記載の方法。
(項目39)
前記組成物が、前記疾患部位から少なくとも約2cm離れて注射される、項目36から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記組成物が、前記疾患部位にまたはそれに隣接して注射される、項目36から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記組成物が、注射によって血管中に投与される、項目36から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記組成物が、血管の周囲の外膜組織に注射される、項目36から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記組成物が、血管の周囲の血管周囲組織に注射される、項目36から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記血管が動脈である、項目36から43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記血管が静脈である、項目36から43のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記動脈が、冠状動脈または末梢動脈である、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記動脈が、腎動脈、大脳動脈、肺動脈、および脚における動脈からなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目48)
前記動脈が膝の下にある、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記血管が、膝下膝窩血管または脛骨血管である、項目46に記載の方法。
(項目50)
前記組成物が、血管壁に注射される、項目36から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記組成物が、血管壁の周囲の組織に注射される、項目36から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記テムシロリムスの治療有効量が約1μgから50mgである、項目36から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記テムシロリムスの治療有効量が約10μgから20mgである、項目36から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記テムシロリムスの治療有効量が約100μgから15mgである、項目36から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記テムシロリムスの治療有効量が約100μgから5mgである、項目36から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、項目36から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、前記テムシロリムスの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、項目36から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、前記テムシロリムスの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、項目36から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、項目36から58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、項目36から58のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記テムシロリムスの注射濃度が約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、項目36から60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記テムシロリムスの注射濃度が、約0.1mg/mLから約0.4mg/mLである、項目36から60のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記テムシロリムスの注射濃度が約0.4mg/mLである、項目36から60のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記テムシロリムスの注射濃度が、約0.1mg/mLである、項目36から60のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記医薬組成物の投与の12カ月後、前記疾患部位における血管断面積が、投与のときの前記疾患部位における血管断面積と比較した場合、60%以下減少している、項目41から63のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記医薬組成物の投与の12カ月後、前記疾患部位における血管断面積が、投与のときの前記疾患部位における血管断面積と比較した場合、50%以下減少している、項目41から65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記医薬組成物の投与の12カ月後、前記疾患部位における血管断面積が、投与のときの前記疾患部位における血管断面積と比較した場合、30%以下減少している、項目41から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記対象がヒトである、項目36から67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記血管疾患が、狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、不整脈、末梢動脈疾患、跛行、または重症虚血肢である、項目36から68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、バイパスグラフト不全、移植血管障害、血管再狭窄、またはステント内再狭窄である、項目36から69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記医薬組成物を使用した処置により、テムシロリムスまたは糖質コルチコイドのいずれかを含む医薬組成物を使用した処置と比較して、前記疾患部位でのアポトーシスが減少する、項目36から68のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記医薬組成物を使用した処置により、テムシロリムスまたは糖質コルチコイドのいずれかを含む医薬組成物を使用した処置と比較して、前記疾患部位での壊死が減少する、項目36から69のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
再狭窄の処置における使用のための、項目1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物または項目14から35のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目74)
膝の下の再狭窄の処置における使用のための、項目73に記載の医薬組成物または注射可能な組成物。
(項目75)
膝の上の再狭窄の処置における使用のための、項目73に記載の医薬組成物または注射可能な組成物。
(項目76)
膝下膝窩血管または脛骨血管における再狭窄の処置における使用のための、項目74に記載の医薬組成物または注射可能な組成物。
(項目77)
それを必要とする対象における血管疾患を処置する方法であって、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含み、前記第1の医薬組成物がテムシロリムスを含み、前記第2の医薬組成物が糖質コルチコイドを含み、前記第1の組成物および前記第2の組成物を注射によって各々投与する、方法。
(項目78)
それを必要とするヒト対象における末梢動脈疾患を処置する方法であって、テムシロリムスまたはその薬学的に許容される塩、および糖質コルチコイドまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の治療有効量をヒト対象に投与することを含み、前記組成物が、前記ヒト対象の脈管構造を通って前進させたカテーテルの側方に伸長する注射針を介して、末梢動脈の壁における疾患部位にまたはその近傍に、直接注射によって投与される、方法。
(項目79)
前記組成物が、前記注射を可視化するための造影媒体をさらに含む、項目78に記載の方法。
(項目80)
ヒト対象の血管疾患の処置における使用のための、テムシロリムスおよび糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む注射可能な組成物であって、末梢動脈への外膜送達に適切であり、前記ヒト対象の脈管構造を通って前進させたカテーテルから側方に伸長する針を介して、前記末梢動脈の壁における血管疾患部位に直接注射するのに適切である、注射可能な組成物。
(項目81)
前記組成物が、前記注射を可視化するための造影媒体をさらに含む、項目80に記載の注射可能な組成物。
(項目82)
細胞分裂阻害剤および糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
(項目83)
前記糖質コルチコイドがデキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩である、項目82に記載の組成物。
(項目84)
前記細胞分裂阻害剤の前記糖質コルチコイドに対する比(重量基準)(またはその逆も同じ)が10:1から1:1の間である、項目82に記載の組成物。
(項目85)
前記組成物が注射可能な投薬形態にある、項目82から84のいずれか一項に記載の組成物。
(項目86)
前記組成物が少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、項目82から85のいずれか一項に記載の組成物。
(項目87)
前記デキサメタゾンの濃度が1.0から8.0mg/mLである、項目82から86のいずれか一項に記載の組成物。
(項目88)
前記デキサメタゾンの濃度が約3.2mg/mLである、項目82から87のいずれか一項に記載の組成物。
(項目89)
前記デキサメタゾンの濃度が約4.0mg/mLである、項目82から87のいずれか一項に記載の組成物。
(項目90)
前記デキサメタゾンの濃度が4.0mg/mL未満である、項目82から86のいずれか一項に記載の組成物。
(項目91)
前記細胞分裂阻害剤の濃度が0.01から2.0mg/mLである、項目82から90のいずれか一項に記載の組成物。
(項目92)
前記細胞分裂阻害剤の濃度が0.05から0.5mg/mLである、項目82から91のいずれか一項に記載の組成物。
(項目93)
前記細胞分裂阻害剤の濃度が約0.1mg/mLである、項目82から92のいずれか一項に記載の組成物。
(項目94)
前記細胞分裂阻害剤の濃度が約0.4mg/mLである、項目82から92のいずれか一項に記載の組成物。
(項目95)
細胞分裂阻害剤またはその薬学的に許容される塩、デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む注射可能な組成物。
(項目96)
前記組成物が外膜送達に適切である、項目95に記載の注射可能な組成物。
(項目97)
前記組成物が膝の下の外膜送達に適切である、項目95に記載の注射可能な組成物。
(項目98)
前記組成物が膝の上の外膜送達に適切である、項目95に記載の注射可能な組成物。
(項目99)
前記組成物が膝下膝窩血管または脛骨血管への外膜送達に適切である、項目95に記載の注射可能な組成物。
(項目100)
前記組成物が大腿血管への外膜送達に適切である、項目95に記載の注射可能な組成物。
(項目101)
前記組成物が冠状血管への外膜送達に適切である、項目95に記載の注射可能な組成物。
(項目102)
前記組成物が冠状動脈への外膜送達に適切である、項目95に記載の注射可能な組成物。
(項目103)
前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約1μgから50mgである、項目95から102のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目104)
前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約10μgから20mgである、項目95から103のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目105)
前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約100μgから15mgである、項目95から103のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目106)
前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約100μgから5mgである、項目95から103のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目107)
前記治療有効量を、血管における疾患部位の長手方向長さによって決定する、項目95から106のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目108)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、項目95から107のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目109)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、前記血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、項目95から107のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目110)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、項目95から107のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目111)
前記組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、項目95から110のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目112)
前記組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、項目95から111のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目113)
前記細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、項目95から112のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目114)
前記細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.1mg/mLから約0.5mg/mLである、項目95から113のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目115)
前記細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.4mg/mLである、項目95から114のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目116)
前記薬学的に許容される賦形剤が、0.9%塩化ナトリウム注射液USP、無水アルコール、dl-アルファトコフェロール、無水クエン酸、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、またはそれらの組合せである、項目95から115のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目117)
それを必要とする対象における血管疾患を処置する方法であって、項目82から116のいずれか一項に記載の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含み、前記組成物が直接注射によって疾患部位に投与される、方法。
(項目118)
前記組成物が針付きカテーテルを介して注射される、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記組成物が、前記疾患部位の遠位または近位に注射される、項目117または118に記載の方法。
(項目120)
前記組成物が、前記疾患部位から少なくとも約2cm離れて注射される、項目117から119のいずれか一項に記載の方法。
(項目121)
前記組成物が、前記疾患部位にまたはそれに隣接して注射される、項目117から119のいずれか一項に記載の方法。
(項目122)
前記組成物が、注射によって血管中に投与される、項目117から121のいずれか一項に記載の方法。
(項目123)
前記組成物が、血管の周囲の外膜組織に注射される、項目117から121のいずれか一項に記載の方法。
(項目124)
前記組成物が、血管の周囲の血管周囲組織に注射される、項目117から121のいずれか一項に記載の方法。
(項目125)
前記血管が動脈である、項目117から124のいずれか一項に記載の方法。
(項目126)
前記血管が静脈である、項目117から125のいずれか一項に記載の方法。
(項目127)
前記動脈が、冠状動脈または末梢動脈である、項目126に記載の方法。
(項目128)
前記動脈が、腎動脈、大脳動脈、肺動脈、および脚における動脈からなる群から選択される、項目126に記載の方法。
(項目129)
前記動脈が膝の下にある、項目128に記載の方法。
(項目130)
前記血管が、膝下膝窩血管または脛骨血管である、項目129に記載の方法。
(項目131)
前記組成物が、血管壁に注射される、項目117から126のいずれか一項に記載の方法。
(項目132)
前記組成物が、血管壁の周囲の組織に注射される、項目117から126のいずれか一項に記載の方法。
(項目133)
前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約1μgから50mgである、項目117から132のいずれか一項に記載の方法。
(項目134)
前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約10μgから20mgである、項目117から133のいずれか一項に記載の方法。
(項目135)
前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約100μgから15mgである、項目117から134のいずれか一項に記載の方法。
(項目136)
前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、約100μgから5mgである、項目117から135のいずれか一項に記載の方法。
(項目137)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである、項目122から136のいずれか一項に記載の方法。
(項目138)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mgであり、前記細胞分裂阻害剤の治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mgである、項目122から136のいずれか一項に記載の方法。
(項目139)
前記デキサメタゾンの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgであり、前記テムシロリムスの治療有効量が、前記血管における前記疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである、項目122から136のいずれか一項に記載の方法。
(項目140)
前記組成物の注射体積が約0.01mLから約50mLである、項目117から139のいずれか一項に記載の方法。
(項目141)
前記組成物の注射体積が約0.5mLから約20mLである、項目117から139のいずれか一項に記載の方法。
(項目142)
前記細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである、項目117から139のいずれか一項に記載の方法。
(項目143)
前記細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.1mg/mLから約0.4mg/mLである、項目117から142のいずれか一項に記載の方法。
(項目144)
前記細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.4mg/mLである、項目117から143のいずれか一項に記載の方法。
(項目145)
前記細胞分裂阻害剤の注射濃度が、約0.1mg/mLである、項目117から144のいずれか一項に記載の方法。
(項目146)
前記医薬組成物の投与の12カ月後、前記疾患部位における血管断面積が、投与のときの前記疾患部位における血管断面積と比較した場合、60%以下減少している、項目117から145のいずれか一項に記載の方法。
(項目147)
前記医薬組成物の投与の12カ月後、前記疾患部位における血管断面積が、投与のときの前記疾患部位における血管断面積と比較した場合、50%以下減少している、項目117から145のいずれか一項に記載の方法。
(項目148)
前記医薬組成物の投与の12カ月後、前記疾患部位における血管断面積が、投与のときの前記疾患部位における血管断面積と比較した場合、30%以下減少している、項目117から145のいずれか一項に記載の方法。
(項目149)
前記対象がヒトである、項目117から148のいずれか一項に記載の方法。
(項目150)
前記血管疾患が、狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、不整脈、末梢動脈疾患、跛行、または重症虚血肢である、項目117から149のいずれか一項に記載の方法。
(項目151)
前記血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、バイパスグラフト不全、移植血管障害、血管再狭窄、またはステント内再狭窄である、項目117から149のいずれか一項に記載の方法。
(項目152)
前記医薬組成物を使用した処置により、テムシロリムスまたは糖質コルチコイドのいずれかを含む医薬組成物を使用した処置と比較して、前記疾患部位でのアポトーシスが減少する、項目117から151のいずれか一項に記載の方法。
(項目153)
前記医薬組成物を使用した処置により、テムシロリムスまたは糖質コルチコイドのいずれかを含む医薬組成物を使用した処置と比較して、前記疾患部位での壊死が減少する、項目117から151のいずれか一項に記載の方法。
(項目154)
再狭窄の処置における使用のための、項目82から116のいずれか一項に記載の医薬組成物または項目117から153のいずれか一項に記載の注射可能な組成物。
(項目155)
膝の下の再狭窄の処置における使用のための、項目154に記載の医薬組成物または注射可能な組成物。
(項目156)
膝の上の再狭窄の処置における使用のための、項目154に記載の医薬組成物または注射可能な組成物。
(項目157)
膝下膝窩血管または脛骨血管における再狭窄の処置における使用のための、項目155に記載の医薬組成物または注射可能な組成物。
(項目158)
それを必要とする対象における血管疾患を処置する方法であって、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含み、前記第1の医薬組成物が細胞分裂阻害剤を含み、前記第2の医薬組成物が糖質コルチコイドを含み、前記第1の組成物および前記第2の組成物を注射によって各々投与する、方法。
(項目159)
それを必要とするヒト対象における末梢動脈疾患を処置する方法であって、細胞分裂阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および糖質コルチコイドまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の治療有効量を前記ヒト対象に投与することを含み、前記組成物が、前記ヒト対象の脈管構造を通って前進させたカテーテルの側方に伸長する注射針を介して、末梢動脈の壁における疾患部位にまたはその近傍に、直接注射によって投与される、方法。
(項目160)
前記組成物が、前記注射を可視化するための造影媒体をさらに含む、項目159に記載の方法。
(項目161)
ヒト対象の血管疾患の処置における使用のための、細胞分裂阻害剤および糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される賦形剤を含む注射可能な組成物であって、末梢動脈への外膜送達に適切であり、前記ヒト対象の脈管構造を通って前進させたカテーテルから側方に伸長する針を介して、前記末梢動脈の壁における血管疾患部位に直接注射するのに適切である、注射可能な組成物。
(項目162)
前記組成物が、前記注射を可視化するための造影媒体をさらに含む、項目161に記載の注射可能な組成物。
(項目163)
前記細胞分裂阻害剤がタキサンである、項目82から162のいずれか一項に記載の方法。
(項目164)
前記細胞分裂阻害剤がパクリタキセルである、項目163に記載の方法。
【0017】
参照による組み込み
この明細書において記述されている全ての公報、特許および特許出願は、個々の公報、特許または特許出願それぞれが具体的におよび個々に参照により組み込まれると示されているかのように同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本開示の新規な特色は、添付の請求項における詳細とともに説明される。本開示の特色および利点のより良好な理解は、本開示の原理が用いられる例示的な実施形態を説明する以下の詳細な記載、および添付の図面の参照によって得られる:
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aは、本開示の方法およびシステムにおける使用に適切な管腔内注射カテーテルの概略斜視図である。
【0020】
【0021】
【0022】
【
図2A】
図2Aは、展開された注射針とともに示されている
図1A~1Cのカテーテルの概略斜視図である。
【0023】
【0024】
【
図3】
図3は、本開示の方法に従って、身体管腔の周囲の外膜空間中へ治療剤を注射する、
図1A~1Cの管腔内カテーテルの概略斜視図である。
【0025】
【
図4】
図4は、本開示の方法において有用な管腔内注射カテーテルの別の実施形態の概略斜視図である。
【0026】
【
図5】
図5は、患者の身体管腔の1つに挿入されるときの、本開示の方法において有用な管腔内注射カテーテルのまた別の実施形態の概略斜視図である。
【0027】
【
図6】
図6は、本開示の方法およびシステムにおいて有用な針注射カテーテルの斜視図である。
【0028】
【
図7】
図7は、退却された構成における注射針とともに示されているカテーテル
図6の断面図である。
【0029】
【
図8】
図8は、本開示による治療剤または診断剤の送達のために管腔組織中へ側方に前進させた注射針とともに示されている、
図7と同様の断面図である。
【0030】
【
図9A】
図9Aは、より高い引張り応力(modulus)のアンカー、フレームワークまたは基体内に自立型低引張り応力パッチを作り出すために用いられる例証的な製作プロセス中のステップの断面図である。
【0031】
【
図9B】
図9Bは、より高い引張り応力のアンカー、フレームワーク、または基体内に自立型低引張り応力パッチを作り出すために用いられる例証的な製作プロセス中のステップの断面図である。
【0032】
【
図9C】
図9Cは、より高い引張り応力のアンカー、フレームワーク、または基体内に自立型低引張り応力パッチを作り出すために用いられる例証的な製作プロセス中のステップの断面図である。
【0033】
【
図9D】
図9Dは、より高い引張り応力のアンカー、フレームワーク、または基体内に自立型低引張り応力パッチを作り出すために用いられる例証的な製作プロセス中のステップの断面図である。
【0034】
【
図9E】
図9Eは、より高い引張り応力のアンカー、フレームワーク、または基体内に自立型低引張り応力パッチを作り出すために用いられる例証的な製作プロセス中のステップの断面図である。
【0035】
【
図10A】
図10Aは、本開示の方法において有用な管腔内注射カテーテルの膨張プロセス中のステップの断面図である。
【0036】
【
図10B】
図10Bは、本開示の方法において有用な管腔内注射カテーテルの膨張プロセス中のステップの断面図である。
【0037】
【
図10C】
図10Cは、本開示の方法において有用な管腔内注射カテーテルの膨張プロセス中のステップの断面図である。
【0038】
【
図10D】
図10Dは、本開示の方法において有用な管腔内注射カテーテルの膨張プロセス中のステップの断面図である。
【0039】
【
図11A】
図11Aは、管腔直径を処置するための能力を例示する、本開示の方法において有用な膨張された管腔内注射カテーテルの断面図である。
【0040】
【
図11B】
図11Bは、管腔直径を処置するための能力を例示する、本開示の方法において有用な膨張された管腔内注射カテーテルの断面図である。
【0041】
【
図11C】
図11Cは、管腔直径を処置するための能力を例示する、本開示の方法において有用な膨張された管腔内注射カテーテルの断面図である。
【0042】
【
図12A】
図12Aは、カテーテルを介する針による注射による医薬組成物の送達を用いた、アテローム性動脈硬化症に罹患した血管の処置ステップの概略図を示す。
【0043】
【
図12B】
図12Bは、カテーテルを介する針による注射による医薬組成物の送達を用いた、アテローム性動脈硬化症に罹患した血管の処置ステップの概略図を示す。
【0044】
【
図12C】
図12Cは、カテーテルを介する針による注射による医薬組成物の送達を用いた、アテローム性動脈硬化症に罹患した血管の処置ステップの概略図を示す。
【0045】
【
図12D】
図12Dは、カテーテルを介する針による注射による医薬組成物の送達を用いた、アテローム性動脈硬化症に罹患した血管の処置ステップの概略図を示す。
【0046】
【
図12E】
図12Eは、カテーテルを介する針による注射による医薬組成物の送達を用いた、アテローム性動脈硬化症に罹患した血管の処置ステップの概略図を示す。
【0047】
【
図12F】
図12Fは、カテーテルを介する針による注射ステップによる医薬組成物の送達を用いた、アテローム性動脈硬化症に罹患した血管の処置の概略図を示す。
【0048】
【
図13】
図13は、対象における血管疾患を処置する方法のフローチャートを示す。
【0049】
【
図14A】
図14Aは、血小板由来増殖因子(PDGF)の存在下でヒト大動脈血管平滑筋細胞(VSMC)の代謝活性を測定する実験における、シロリムス(SIR)、デキサメタゾン(DEX)、またはシロリムス+デキサメタゾン(SIR+CONST.DEX)の存在下での代謝活性および増殖の阻害パーセントを例示する。
【0050】
【
図14B】
図14Bは、血小板由来増殖因子(PDGF)の存在下でヒト大動脈VSMCの代謝活性を測定する実験における、テムシロリムス(TEM)、デキサメタゾン(DEX)、またはテムシロリムス+デキサメタゾン(TEM+CONST.DEX)の存在下での代謝活性および増殖の阻害パーセントを例示する。
【0051】
【
図14C】
図14Cは、血小板由来増殖因子(PDGF)の存在下でヒト大動脈VSMCの代謝活性を測定する実験における、パクリタキセル(PACLI)、デキサメタゾン(DEX)、またはパクリタキセル+デキサメタゾン(PACLI+CONST.DEX)の存在下での代謝活性および増殖の阻害パーセントを描写する。
【0052】
【
図15A】
図15Aは、ヒト大動脈VSMCのTNFα産生を測定する実験における、漸増濃度のシロリムス、デキサメタゾン、またはシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下での組織壊死因子α(TNFα)産生を描写する。
【0053】
【
図15B】
図15Bは、ヒト大動脈VSMCのTNFα産生を測定する実験における、漸増濃度のテムシロリムス、デキサメタゾン、またはテムシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのTNFα産生を描写する。
【0054】
【
図15C】
図15Cは、ヒト大動脈VSMCのTNFα産生を測定する実験における、漸増濃度のパクリタキセル、デキサメタゾン、またはパクリタキセル+50nMデキサメタゾンの存在下でのTNFα産生を描写する。
【0055】
【
図16A】
図16Aは、ヒト大動脈VSMCのIL6サイトカイン産生を測定する実験における、漸増濃度のシロリムス、デキサメタゾン、またはシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのインターロイキン6(IL6)産生を描写する。
【0056】
【
図16B】
図16Bは、ヒト大動脈VSMCのIL6サイトカイン産生を測定する実験における、漸増濃度のテムシロリムス、デキサメタゾン、またはテムシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのIL6産生を描写する。
【0057】
【
図16C】
図16Cは、ヒト大動脈VSMCのIL6サイトカイン産生を測定する実験における、漸増濃度のパクリタキセルまたはパクリタキセル、デキサメタゾン+50nMデキサメタゾンの存在下でのIL6産生を描写する。
【0058】
【
図17A】
図17Aは、ヒト大動脈VSMCにおけるアポトーシスを測定する実験における、漸増濃度のシロリムス、デキサメタゾン、またはシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのカスパーゼ3活性化の測定によるアポトーシスを描写する。
【0059】
【
図17B】
図17Bは、ヒト大動脈VSMCにおけるアポトーシスを測定する実験における、漸増濃度のテムシロリムス、デキサメタゾン、またはテムシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのカスパーゼ3活性化の測定によるアポトーシスを描写する。
【0060】
【
図17C】
図17Cは、ヒト大動脈VSMCにおけるアポトーシスを測定する実験における、漸増濃度のパクリタキセル、デキサメタゾン、またはパクリタキセル+50nMデキサメタゾンの存在下でのカスパーゼ3活性化の測定によるアポトーシスを描写する。
【0061】
【
図18A】
図18Aは、ヒト大動脈VSMCにおける壊死を測定する実験における、漸増濃度のシロリムス、デキサメタゾン、またはシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのLDH放出の測定による壊死を描写する。
【0062】
【
図18B】
図18Bは、ヒト大動脈VSMCにおける壊死を測定する実験における、漸増濃度のテムシロリムス、デキサメタゾン、またはテムシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのLDH放出の測定による壊死を描写する。
【0063】
【
図18C】
図18Cは、ヒト大動脈VSMCにおける壊死を測定する実験における、漸増濃度のパクリタキセル、デキサメタゾン、またはパクリタキセル+50nMデキサメタゾンの存在下でのLDH放出の測定による壊死を描写する。
【0064】
【
図19A】
図19Aは、漸増濃度のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)、およびその後の漸増濃度のDEXと組み合わせた500ナノモル(nM)濃度のTEMまたはPACのいずれかの存在下でのPDGF誘導性VSMC増殖の阻害を描写する。
【0065】
【
図19B】
図19Bは、PDGFおよび漸増濃度のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)、およびその後の漸増濃度のDEXと組み合わせた500ナノモル(nM)濃度のTEMまたはPACのいずれかの存在下での正規化VSMCアポトーシスを描写する。
【0066】
【
図19C】
図19Cは、PDGFおよび漸増濃度のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)、およびその後の漸増濃度のDEXと組み合わせた500ナノモル(nM)濃度のTEMまたはPACのいずれかの存在下での正規化VSMC壊死を描写する。
【0067】
【
図19D】
図19Dは、漸増濃度のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)、およびその後の漸増濃度のDEXと組み合わせた500ナノモル(nM)濃度のTEMまたはPACのいずれかの存在下でのPDGF誘導性インターロイキン-6(IL6)発現を描写する。
【0068】
【
図19E】
図19Eは、漸増濃度のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)、およびその後の漸増濃度のDEXと組み合わせた500ナノモル(nM)濃度のTEMまたはPACのいずれかの存在下でのPDGF誘導性組織壊死因子α(TNFα)を描写する。
【0069】
【
図20】
図20は、漸減濃度(100uMから1nM)のテムシロリムス(TEM)、シロリムス(SIR)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)、ビヒクル対照、または細胞傷害性対照アクチノマイシンD(ACT-D)の存在下でのPDGF誘導性細胞増殖を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
詳細な説明
再狭窄などの心血管疾患の処置のための方法、デバイス、および組成物を本明細書中に提供する。方法、デバイス、および組成物の種々の態様は、mTOR阻害剤(テムシロリムスなど)または細胞分裂阻害剤(パクリタキセルなど)および糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)、またはそれらの薬学的に許容される塩の組合せを含む。一部の場合において、組成物を、疾患部位への直接注射によって投与する。
【0071】
疾患および状態
閉塞は、様々な疾患状態下で血管中に形成される。身体における、特に心臓、脚、頸動脈および腎臓の解剖学的構造における動脈の狭小化または狭窄を引き起こすアテローム性動脈硬化症は、血流の欠如から組織虚血に至る。一部の例において、冠状動脈におけるアテローム性動脈硬化症は、一般的に心臓発作と称される心筋梗塞を引き起こし、これは直ちに致死的となり得るか、またはたとえ生存しても、心臓に傷害を引き起こし、これは患者を無能力にし得る。他の冠疾患としては、うっ血性心不全、脆いまたは不安定なプラーク、および心不整脈が挙げられ、これらは死亡および無能力を引き起こす。加えて、末梢組織における動脈が狭小化する末梢動脈疾患(PAD)は、最も一般的に、脚、腎臓および頸動脈に罹患する。一部の例において、末梢脈管構造における血餅および血栓は、末梢血流を塞ぎ、組織および器官の壊死に至る。PADを有する一部の患者は、潰瘍をもたらすとともに一部の例では最悪の症例において切断を必要とする重症虚血肢を経験する。一部の例において、腎動脈におけるPADは、腎血管性高血圧を引き起こし、頸動脈における血餅は塞栓形成し、脳に移り、虚血性脳卒中を潜在的に引き起こす。
【0072】
下流組織への血流を改善するため、様々な血行再建方法が使用されることで、動脈をバイパスまたは開口する。一部の例において、動脈バイパス手術は、アテローム性動脈硬化症および他の原因に起因する狭窄動脈または狭小化動脈のための有効な処置であるが、それは、高侵襲的手技であり、高価であり、実質的な入院および回復の時間を必要とする。一部の例において、バルーン血管形成、アテレクトミー、ステント留置、または外科的動脈内膜切除を用いる機械的血行再建方法が使用されることで、動脈を開口するまたは広げる。例えば、一般的にバルーン血管形成と称される経皮経管的血管形成術(PTA)は、バイパス手術よりも侵襲的でなく、外傷性でなくおよび著しく高価でない。加えて、バルーン血管形成の有効性は、バルーン血管形成によって処置された動脈内に足場構造の留置を伴うステント留置の導入で改善してきた。ステントは、動脈の急激な再閉鎖を阻害し、過形成に起因する後続の再狭窄を低減することにおいて一部の利益を有する。血管をバイパスするよりはむしろサルベージすることによって、より多くの選択肢が疾患のさらなる処置において医師にとって利用可能になる。
【0073】
残念ながら、一部の例において、機械的血行再建手技は損傷カスケードに至り、これは、動脈が硬化すること、および新生内膜過形成として公知である、動脈壁の瘢痕様組織とともに肥厚化を引き起こす。一部の例において、動脈の内壁(すなわち、内膜)が損傷カスケードに対する応答で肥厚化および硬化するだけでなく、中膜(すなわち、壁の中間組織層)、および外膜(すなわち、壁の外層)が同様に肥厚化および硬化し得る。肥厚化(または過形成)および硬化(または硬化症)は、罹患部位に遠位の組織への血流を低減する。結果として、機械的血行再建手技を受けたことがある患者は、一部の例において、過形成に起因する高い発生率の再狭窄を患う。血管の再狭窄もしくは狭窄の再発または狭小化は、再び、患部領域への別の血行再建手技を必要とすることがある。
【0074】
炎症性の再狭窄および再閉塞は、一部の場合において、過形成および硬化症に起因して発症する。炎症刺激を消散することにより、一部の場合において、血管の硬化、狭小化、または血管運動作用(身体の内分泌系から受け取ったシグナルに基づいて拡張または収縮する能力が含まれる)を有する機能性動脈が生じる。長期間の血管開存性を維持するために、硬化症または過形成を伴わずに血管を治癒させなければならない。
【0075】
本明細書中の一部の実施形態は、機械的血行再建後の硬化症および過形成の発達を低下させるための組成物および方法を記載している。
【0076】
一部の実施形態では、抗増殖薬でコーティングされたステントの移植は、過形成の発生を低減させる。例えば、機械的血管内血行再建は単独で、1年で33~55%、2年で20~50%の開存性率(血管開口性の二元尺度、隣接する非疾患血管と比較して直径が典型的には50%超)に至り、一方、薬物コーティングバルーンおよび外膜薬物送達は、開存性を1年で80%、2年で65~70%よりも良好に改善するという能力が示された。
【0077】
薬学的組成物
細胞分裂阻害剤
細胞分裂阻害剤、糖質コルチコイド(デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩など)、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を、本明細書中に記載する。本明細書中の一部の実施形態は、微小管安定剤(タキサンまたはその薬学的に許容される塩など)、糖質コルチコイド(デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩など)、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を記載している。本明細書中の一部の実施形態は、mTOR阻害剤(テムシロリムスまたはその薬学的に許容される塩など)、糖質コルチコイド(デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩など)、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を記載している。本明細書中の他の実施形態は、タキサン(パクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩など)、糖質コルチコイド(デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩など)、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を記載している。一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書中に記載の疾患および状態の処置(例えば、機械的血行再建後の硬化症および過形成の発達の軽減)に有用である。
【0078】
mTOR阻害剤
ある特定の実施形態では、本明細書中に記載の医薬組成物は、リムス薬物などのmTOR阻害剤を含む。一部の場合において、mTOR阻害剤は、シロリムス、エバロリムス、ゾタロリムス、デフォロリムス、バイオリムス、テムシロリムス、またはそれらの組合せである。本明細書中に開示の医薬組成物は、一部の例において、テムシロリムスまたはその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、mTOR阻害剤はTorisel(登録商標)である。
【0079】
本明細書中に開示の医薬組成物は、一部の例において、テムシロリムスまたはその薬学的に許容される塩を含む。一部の例において、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、さらに、賦形剤(0.9%塩化ナトリウム注射液USP、無水アルコール、dl-アルファトコフェロール、無水クエン酸、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、またはそれらの組合せが含まれる)を含む。一部の例において、医薬組成物は、ナノ粒子製剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、さらに、賦形剤(アルブミンが含まれる)を含む。一部の例において、医薬組成物は、注射可能な組成物中で一般に使用される他の賦形剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、医薬組成物の送達の可視化を補助する造影剤を含む。一部の例において、テムシロリムスを含む医薬組成物は、注射可能である。一部の例において、医薬組成物は、液体、懸濁液、溶液、またはゲルである。
【0080】
タキサン
ある特定の実施形態では、本明細書中に記載の医薬組成物は、タキサン薬などの細胞分裂阻害剤を含む。一部の場合において、細胞分裂阻害剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、またはそれらの組合せである。本明細書中に開示の医薬組成物は、一部の例において、パクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、細胞分裂阻害剤はAbraxane(登録商標)である。
【0081】
本明細書中に開示の医薬組成物は、一部の例において、パクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩を含む。一部の例において、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、さらに、賦形剤(cremophorEL、エタノール、またはそれらの組合せが含まれる)を含む。一部の例において、医薬組成物は、ナノ粒子製剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、さらに、賦形剤(アルブミンが含まれる)を含む。一部の例において、医薬組成物は、注射可能な組成物中で一般に使用される他の賦形剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、医薬組成物の送達の可視化を補助する造影剤を含む。一部の例において、パクリタキセルを含む医薬組成物は、注射可能である。一部の例において、医薬組成物は、液体、懸濁液、溶液、またはゲルである。一部の例において、医薬組成物は、抗ヒスタミンを含む。一部の例において、医薬組成物は、溶解補助剤(ポリオール、グリコール、またはグリセロールなど)を含む。一部の例において、医薬組成物は、マクロゴールグリセロールリシノレアートを含む。
【0082】
糖質コルチコイド
一部の例において、本明細書中に開示の医薬組成物は、1またはそれを超える糖質コルチコイド(デキサメタゾン、プレニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン(triamcinoclone)、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpredinisolone)、ブデソニド、ベタメタゾン、デフラザコルト、ベクロメタゾン、コルチゾンなど)、または糖質コルチコイド受容体(GR)を標的にする任意の他の化合物を含む。一部の実施形態では、糖質コルチコイドはデキサメタゾンである。
【0083】
本明細書中に開示の医薬組成物は、一部の例において、デキサメタゾンまたはその薬学的に許容される塩を含む。一部の例において、デキサメタゾンは、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射である。一部の例において、医薬組成物は、さらに、無水クエン酸、亜硫酸ナトリウム、ベンジルアルコール、クエン酸ナトリウム、注射用蒸留水、またはそれらの組合せを含む。一部の例において、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、注射可能な組成物中で一般に使用される他の賦形剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、医薬組成物の送達の可視化を補助する造影剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、注射可能である。一部の例において、医薬組成物は、液体、懸濁液、溶液、またはゲルである。
【0084】
細胞分裂阻害剤と糖質コルチコイドの組合せ
mTOR阻害剤および糖質コルチコイド
ある特定の実施形態では、本明細書中に記載のmTOR阻害剤および/または糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)などの細胞分裂阻害剤を、純粋な化学物質として投与する。他の実施形態では、本明細書中に記載のmTOR阻害剤と糖質コルチコイドの組合せを、選択された投与経路および、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005))に記載の標準的薬務に基づいて選択された薬学的に適切なまたは許容される担体(本明細書中で薬学的に適切な(または許容される)賦形剤、生理学的に適切な(または許容される)賦形剤、または生理学的に適切な(または許容される)担体とも呼ばれる)と組み合わせる。一部の実施形態では、mTOR阻害剤(テムシロリムスなど)および糖質コルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を、個別の組成物として各々投与する。一部の実施形態では、mTOR阻害剤または糖質コルチコイドの個別の組成物を、適切なまたは許容される賦形剤と組み合わせる。
【0085】
一部の実施形態では、mTOR阻害剤(テムシロリムスなど)および糖質コルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を、単一の組み合わせた組成物として投与する。
【0086】
mTOR阻害剤および糖質コルチコイドを1またはそれを超える薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を本明細書中に提供する。担体(単数または複数)(または賦形剤(単数または複数))は、担体が組成物の他の成分と適合し、組成物のレシピエント(すなわち、対象または患者)に有害でない場合、許容されるまたは適切である。
【0087】
ある特定の実施形態では、本明細書中に記載のmTOR阻害剤および/または糖質コルチコイドは、約5%未満、または約1%未満、または約0.1%未満の他の有機小分子(例えば、合成方法の1またはそれを超えるステップにおける未反応の中間体または作出された合成副生成物など)を含むという点で、実質的に純粋である。
【0088】
一部の例において、医薬組成物は、mTOR阻害剤および糖質コルチコイド、ならびに1またはそれを超える薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の例において、mTOR阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組合せを含む医薬組成物は、(非限定的な例として)賦形剤(0.9%塩化ナトリウム注射液USP、無水アルコール、dl-アルファトコフェロール、無水クエン酸、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クエン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アルブミン、またはその任意の組合せなど)を含む。一部の例において、医薬組成物は、ナノ粒子を含む。一部の例において、医薬組成物は、注射可能な組成物中で一般に使用される他の賦形剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、医薬組成物の送達の可視化を補助する造影剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、液体、懸濁液、溶液、またはゲルを含む。一部の例において、mTOR阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組合せを含む医薬組成物は、注射可能である。一部の例において、医薬組成物は、mTOR阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組合せを可溶化する賦形剤を含む。別の実施形態では、mTOR阻害剤および糖質コルチコイドを含む医薬組成物は、1またはそれを超える薬学的に許容される賦形剤または担体を含む非経口投与用の投薬形態で提供される。一部の例において、mTOR阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組合せを含む医薬組成物は、注射可能である。医薬組成物を静脈内注射、皮膚注射、または皮下注射用に製剤化する場合、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性、および安定性を有する非経口で許容される水溶液の形態である。当業者は、例えば、等張ビヒクル(塩化ナトリウム注射、リンゲル注射液、または乳酸加リンゲル注射液など)を使用して適切な溶液を十分に調製することができる。一部の実施形態では、防腐剤、安定剤、賦形剤、緩衝液、抗酸化剤、および/または他の添加物が含まれる。
【0089】
一部の例において、mTOR阻害剤(テムシロリムスなど)および糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)を含む医薬組成物を、両方の薬物を含む製剤として投与する。一部の例において、テムシロリムスの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、10:1から1:1である。一部の例において、テムシロリムスの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、7:1から2:1である。一部の例において、テムシロリムスの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、5:1から1:1である。一部の例において、テムシロリムスの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、3:1から1:1である。一部の例において、テムシロリムスの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、約10:1、または約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。一部の例において、テムシロリムスの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、10:1から1:1、7:1から2:1、5:1から1:1、または3:1から1:1である。
【0090】
タキサンおよび糖質コルチコイド
ある特定の実施形態では、本明細書中に記載の細胞分裂阻害剤(パクリタキセルなど)および/または糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)の組合せを、純粋な化学物質として投与する。他の実施形態では、本明細書中に記載の細胞分裂阻害剤と糖質コルチコイドの組合せを、選択された投与経路および、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005))に記載の標準的薬務に基づいて選択された薬学的に適切なまたは許容される担体(本明細書中で薬学的に適切な(または許容される)賦形剤、生理学的に適切な(または許容される)賦形剤、または生理学的に適切な(または許容される)担体とも呼ばれる)と組み合わせる。一部の実施形態では、細胞分裂阻害剤(パクリタキセルなど)および糖質コルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を、個別の組成物として各々投与する。一部の実施形態では、細胞分裂阻害剤または糖質コルチコイドの個別の組成物を、適切なまたは許容される賦形剤と組み合わせる。
【0091】
一部の実施形態では、細胞分裂阻害剤(パクリタキセルなど)および糖質コルチコイド(例えば、デキサメタゾン)を、単一の組み合わせた組成物として投与する。
【0092】
細胞分裂阻害剤および糖質コルチコイドを1またはそれを超える薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を本明細書中に提供する。担体(単数または複数)(または賦形剤(単数または複数))は、担体が組成物の他の成分と適合し、組成物のレシピエント(すなわち、対象または患者)に有害でない場合、許容されるまたは適切である。
【0093】
ある特定の実施形態では、本明細書中に記載の細胞分裂阻害剤および/または糖質コルチコイドは、約5%未満、または約1%未満、または約0.1%未満の他の有機小分子(例えば、合成方法の1またはそれを超えるステップにおける未反応の中間体または作出された合成副生成物など)を含むという点で、実質的に純粋である。
【0094】
一部の例において、医薬組成物は、細胞分裂阻害剤および糖質コルチコイド、ならびに1またはそれを超える薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の例において、細胞分裂阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組合せを含む医薬組成物は、(非限定的な例として)賦形剤(0.9%塩化ナトリウム注射液USP、無水アルコール、dl-アルファトコフェロール、無水クエン酸、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クエン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、cremophorELアルブミン、またはその任意の組合せなど)を含む。一部の例において、医薬組成物は、ナノ粒子を含む。一部の例において、医薬組成物は、注射可能な組成物中で一般に使用される他の賦形剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、医薬組成物の送達の可視化を補助する造影剤を含む。一部の例において、医薬組成物は、液体、懸濁液、溶液、またはゲルを含む。一部の例において、細胞分裂阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組合せを含む医薬組成物は、注射可能である。一部の例において、医薬組成物は、細胞分裂阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組合せを可溶化する賦形剤を含む。別の実施形態では、細胞分裂阻害剤および糖質コルチコイドを含む医薬組成物は、1またはそれを超える薬学的に許容される賦形剤または担体を含む非経口投与用の投薬形態で提供される。一部の例において、細胞分裂阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組合せを含む医薬組成物は、注射可能である。医薬組成物を静脈内注射、皮膚注射、または皮下注射用に製剤化する場合、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性、および安定性を有する非経口で許容される水溶液の形態である。当業者は、例えば、等張ビヒクル(塩化ナトリウム注射、リンゲル注射液、または乳酸加リンゲル注射液など)を使用して適切な溶液を十分に調製することができる。一部の実施形態では、防腐剤、安定剤、賦形剤、緩衝液、抗酸化剤、および/または他の添加物が含まれる。
【0095】
一部の例において、細胞分裂阻害剤(パクリタキセルなど)および糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)を含む医薬組成物を、両方の薬物を含む製剤として投与する。一部の例において、パクリタキセルの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、10:1から1:1である。一部の例において、パクリタキセルの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、7:1から2:1である。一部の例において、パクリタキセルの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、5:1から1:1である。一部の例において、パクリタキセルの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、3:1から1:1である。一部の例において、パクリタキセルの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、約10:1、または約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。一部の例において、パクリタキセルの糖質コルチコイドに対する(またはその逆も同じ)重量パーセントは、10:1から1:1、7:1から2:1、5:1から1:1、または3:1から1:1である。
【0096】
処置方法
アテローム性動脈硬化症、バイパスグラフト不全、移植血管障害、およびステント内再狭窄では、血管壁中に存在する血管平滑筋細胞(VSMC)の活性化および増殖は、これらの病態生理学的疾患で認められる炎症、アポトーシス、および基質変化に関連する。これらの状態の処置のための確立されたストラテジーは、パクリタキセルの使用によって細胞の増殖を阻害することである。パクリタキセルは、細胞傷害効果を有し、血管病理のための最も永続性のある解決法を提供しないかもしれない。本明細書中の一部の実施形態は、パクリタキセルなどの抗増殖薬と比較してより安全かつより優れた活性化VSMC制御アプローチを提供するための糖質コルチコイドと組み合わせたmTOR阻害剤の使用を記載している。本明細書中の他の実施形態は、パクリタキセルなどの抗増殖薬の単独使用と比較してより安全かつより優れた活性化VSMC制御アプローチを提供するための糖質コルチコイドと組み合わせたパクリタキセルなどの細胞分裂阻害剤の使用を記載している。
【0097】
ラパマイシン(mTOR)阻害剤の機構的標的は、血管疾患を処置するための薬物であると認められている。ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ関連キナーゼ(PI3K)ファミリーのメンバーであるmTORは、細胞成長、増殖、細胞生存および血管形成を調節することに関与する。血行再建手技の物理的侵害に対する応答において、血管における平滑筋および内皮細胞は、細胞増殖、炎症促進性媒介物質および細胞外マトリックス成分の分泌ならびに最終的に再狭窄に至るストレス応答経路を活性化する。一部の例において、1またはそれを超えるストレス応答経路を遮断するのに成功する薬物は、再狭窄の程度を減少させる。特定の例において、mTOR阻害剤は、細胞の増殖および炎症を低減させ、インスリン、成長因子およびアミノ酸に対する応答においてmTOR活性化を遮断することによって、グラフト対宿主病に、臓器移植におよび一部のがんに首尾よく使用されている。
【0098】
mTOR阻害剤としては、本来のmTOR阻害剤、ラパマイシンとしても公知であるシロリムス、およびシロリムスの類似体が挙げられる。これらの類似体としては、エバロリムス、ゾタロリムス、デフォロリムス、バイオリムスおよびテムシロリムスが挙げられる。
【0099】
テムシロリムスは、腎細胞癌腫(RCC)の処置について承認されているが、それは血管再狭窄の処置について承認されていない。テムシロリムスは、シロリムスのプロドラッグと説明されている(すなわち、テムシロリムスは、活性薬剤シロリムスに代謝される)。肝臓(ここで、一般に全身薬が代謝される)と比較して血管組織中の代謝反応数が少ないので、血管および他の管腔壁に直接投与した場合にテムシロリムスが有効であるとは予想されないであろう。本明細書中に提供した一部の実施形態は、mTORの阻害および細胞の有糸分裂の破壊に有用な活性薬剤としてのテムシロリムスを記載している。一部の実施形態では、テムシロリムスは、血管疾患の処置に有用である。さらなるまたは追加の実施形態では、テムシロリムスは、血管または他の管腔壁中への直接注射を介した血管疾患の処置に有用である。さらなるまたは追加の実施形態では、糖質コルチコイド(例えば、デキサメタゾン)と組み合わせたテムシロリムスは、血管または他の管腔壁中への直接注射を介した血管疾患の処置に有用である。
【0100】
一部の実施形態では、過形成および硬化症を生じるシグナルを低下させ、見かけ上過形成および硬化症を生じる細胞活動をさらに低下させる能力について、リムス類似体(テムシロリムスなど)のコルチコステロイド(デキサメタゾンなど)との組合せに相乗効果が認められる、方法、デバイス、および組成物も本明細書中に記載する。治癒過程に影響を及ぼす試みにおいて、デキサメタゾンおよびテムシロリムス(それぞれ、コルチコステロイド(糖質コルチコイドなど)およびmTOR阻害剤のカテゴリーから選択された例示的薬剤)の組合せが疾患過程を標的にする方法を、本明細書中にさらに記載する。本明細書中に記載の他の方法では、デキサメタゾンおよびパクリタキセルの組合せ(それぞれ、コルチコステロイド(糖質コルチコイドなど)および細胞分裂阻害剤のカテゴリーから選択された例示的薬剤)は、疾患過程を標的にする。本明細書中に記載の他の方法では、デキサメタゾンおよびパクリタキセルの組合せ(それぞれ、コルチコステロイド(糖質コルチコイドなど)および細胞分裂阻害剤のカテゴリーから選択された例示的薬剤)は、治癒過程に影響を及ぼす。一部の実施形態では、薬物コーティングバルーンまたは加圧カテーテルを介して管腔側から、または動脈の内側から外側に針を配置する針注射カテーテルを使用した血管壁内(中膜、外膜、または血管周囲組織)から薬物を配置するか送達させる。一部の実施形態では、併用薬に標的組織を浸すために、超音波誘導および針の穿通を使用して皮膚および周囲組織を通して血管周囲領域に薬物を送達させる。
【0101】
本明細書において開示されている方法によって処置される対象は、血管疾患を呈することがある。1つの例において、血管疾患は、心臓、脚、頸動脈または腎臓の血管におけるアテローム性動脈硬化症である。別の例において、血管疾患は、末梢動脈疾患(PAD)である。別の例において、血管疾患は、狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、不整脈、末梢動脈疾患、跛行または重症虚血肢である。別の例において、血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、バイパスグラフト不全、移植血管障害、ステント内再狭窄または再狭窄である。1つの例において、血管疾患は、組織および器官の壊死に至る末梢血流を塞ぎ得る血餅、血栓、または血管中の他の閉塞である。1つの例において、血管疾患は、腎動脈または頸動脈におけるPADである。一部の例において、再狭窄を有する対象は、血管の開存性を改善する手技または血行再建手技を以前に受けていた。一部の例において、血管疾患は再狭窄である。
【0102】
一部の場合において、血管疾患の疾患部位は、血管および血管の周囲の組織を含む。対象の脈管構造は、循環系を指し、一部の例において、動脈系、静脈系、または動脈および静脈系の両方、ならびにそれらの系内の血管を含む。一部の例において、血管は、動脈、細動脈、または動脈系の他の血管である。一部の例において、血管は、静脈、細静脈、または静脈系の他の血管である。1つの例において、動脈は、冠状動脈または末梢動脈である。1つの例において、動脈は、膝の下にある。別の例において、動脈は、膝の上の脚にある。別の例において、血管は、膝下膝窩血管または脛骨血管である。一部の例において、血管は大腿血管である。一部の例において、動脈は、腎動脈、頸動脈、大脳動脈、肺動脈、または脚における動脈である。一部の例において、動脈は大腿動脈である。
【0103】
再狭窄は、身体における様々な組織および血管にある。一部の例において、再狭窄は、冠状血管にある。一部の例において、再狭窄は、冠状動脈にある。一部の例において、再狭窄は、末梢動脈にある。一部の例において、再狭窄は、脚にある。他の例において、再狭窄は、膝の下にまたは膝の上の脚にある。一部の例において、再狭窄は、膝下膝窩血管または脛骨血管にある。一部の例において、再狭窄は、大腿血管にある。他の例において、再狭窄は、大腿動脈にある。
【0104】
一部の例において、血管の周囲の組織は、断面において血管の管腔から半径方向にある血管の内皮細胞壁の外側の任意の組織を指し、プラークおよび石灰化を含む。一部の例において、血管の周囲の組織は、血管の外膜組織、血管周囲組織、または内皮壁の周囲の任意の組織を含む。一部の例において、外膜組織は、外膜(adventitia)または外膜(tunica adventitia)または外膜(tunica externa)としても公知である。一部の例において、外膜組織は、外部弾性膜の外側にある。一部の例において、血管の周囲の組織は、血管の内膜の外側の組織である。一部の例において、血管の周囲の組織は、血管の中膜の外側の組織である。一部の例において、血管の周囲の組織は、内部弾性膜の外側の組織である。一部の例において、組織は結合組織である。一部の例において、組織は、患部組織、例えばプラーク、線維症、石灰化、または罹患組織および健常組織の組合せである。
【0105】
一部の例において、「開存性」は、血管開口性を指す。一部の例において、疾患部位における開存性は、疾患部位における血管の開存性または血管開口性を指す。一部の例において、疾患部位における血管断面積は、疾患部位における血管の開存性を指す。一部の例において、血管断面積は、血管造影によって決定される。一部の例において、血管造影は、定量的血管造影(QVA)である。他の例において、血管断面積は、血管内超音波(IVUS)によって決定される。一部の例において、開存性は、開いているとともに閉塞されていない血管の管腔の直径のパーセントとして記載される。一部の例において、開存性は、開いているとともに閉塞されていない血管の管腔の断面積または血管断面積のパーセントとして記載される。他の例において、開存性は、開いているとともに閉塞されていない管腔体積のパーセントである。一部の例において、開存性は、血管の内皮壁の境界の決定を必要とする。一部の例において、完全に開いているとともに閉塞されていない血管は、100%開存性を有し;即ち、血管は、健常であるとともに身体の同じ部分における正常の健常な血管の典型である断面積を有する。一部の例において、完全に遮断および閉塞されている血管は、0%の開存性を有する。一部の例において、開存性は、隣接する非疾患血管と比較して、直径が50%超の開口性の二元尺度である。一部の例において、開存性は、隣接する非疾患血管と比較して、断面積が50%超の開口性の二元尺度である。一部の例において、開存性は、隣接する非疾患血管と比較して、管腔体積が50%超の開口性の二元尺度である。
【0106】
投薬量/投与
一部の例において、「治療有効量」は、疾患部位における血管断面積を増大させる薬物(例えば、テムシロリムスまたはデキサメタゾン)の量を指す。一部の例において、治療的に有効というのは、医薬組成物の投与後の疾患部位で血管断面積を増加させることを指す。一部の例において、治療的に有効というのは、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、投与後の疾患部位における血管断面積の減少を最小限にすることを指す。一部の例において、治療的に有効というのは、疾患部位で血管断面積を増加させることを指す。一部の例において、治療的に有効というのは、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、投与後の疾患部位で血管断面積を最小限に増加させることを指す。一部の例において、治療的に有効というのは、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、疾患部位における血管断面積を30%、20%、10%または0%以下減少させることを指す;言い換えると、開存性は、投与のときの疾患部位における開存性と比較した場合、30%、20%、10%または0%以下減少する。一部の例において、疾患部位における血管断面積は、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、60%、50%、40%、30%、20%または10%以下減少する。一部の例において、疾患部位における血管断面積は、投与のときの疾患部位における血管断面積と比較した場合、少なくとも60%、50%、40%、30%、20%または10%増加する。
【0107】
一部の例において、医薬組成物は、疾患部位のまたはその近傍の様々な位置で注射される。一部の例において、疾患部位は、血管疾患に罹患した血管を指す。一部の例において、疾患部位は、管腔を部分的または全体的に閉塞するものを有する血管を指す。一部の例において、疾患部位は、血管壁から決定される場合に非閉塞血管の血管断面積の100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%未満、または0%の血管断面積を有する血管を指す。一部の例において、医薬組成物は、疾患部位に遠位または近位で注射される。一部の例において、医薬組成物は、疾患部位から少なくとも約2cm離れて注射される。一部の例において、医薬組成物は、疾患部位にまたはそれに隣接して注射される。一部の例において、医薬組成物は、血管に注射される。一部の例において、医薬組成物は、血管の周囲の外膜組織に注射される。一部の例において、医薬組成物は、血管の周囲の血管周囲組織に注射される。
【0108】
一部の例において糖質コルチコイドとの併用療法の一部として投与されるテムシロリムスは、血管疾患の処置に治療的に有効な用量の範囲を有する。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、約1μgから50mg、約10μgから20mg、約25μgから10mg、約1μgから2mg、約10μgから500μg、約100μgから約2mg、または約100μgから500μgである。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、約100μgから5mgである。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、約100μgから15mgである。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、約10μg、約25μg、約50μg、約100μg、約500μg、約1.0mg、約5.0mg、約10.0mgまたは約15.0mgである。一部の例において、テムシロリムスの治療的に有効な体積は、約0.01mlから約50ml、約0.5mlから約20ml、約0.5mlから約25ml、約0.5mlから約5ml、または約1mlから約5mlである。一部の例において、テムシロリムスの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mLから約0.4mg/mL、約0.1mg/mLから約0.5mg/mL、または約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである。一部の例において、テムシロリムスの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、約2.5mg/ml、または3.0mg/mlである。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから2mg、または血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから1mgである。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、血管の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである。病変の長手方向長さとしても知られる、血管における疾患部位の長手方向長さは、約1cm、5cm、10cm、20cm、30cm、40cmまたは50cmである。
【0109】
一部の例において糖質コルチコイドとの併用療法の一部として投与されるパクリタキセルは、血管疾患の処置に治療的に有効な用量の範囲を有する。一部の例において、パクリタキセルの治療有効量は、約1μgから50mg、約10μgから20mg、約25μgから10mg、約1μgから2mg、約10μgから500μg、約100μgから約2mg、または約100μgから500μgである。一部の例において、パクリタキセルの治療有効量は、約10μg、約25μg、約50μg、約100μg、約500μg、約1.0mg、約5.0mg、約10.0mgまたは約15.0mgである。一部の例において、パクリタキセルの治療的に有効な体積は、約0.01mlから約50ml、約0.5mlから約20ml、約0.5mlから約25ml、約0.5mlから約5ml、または約1mlから約5mlである。一部の例において、パクリタキセルの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mLから約0.4mg/mL、約0.1mg/mLから約0.5mg/mL、または約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである。一部の例において、パクリタキセルの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、約2.5mg/ml、または3.0mg/mlである。一部の例において、パクリタキセルの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから2mg、または血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから1mgである。一部の例において、パクリタキセルの治療有効量は、血管の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである。病変の長手方向長さとしても知られる、血管における疾患部位の長手方向長さは、約1cm、5cm、10cm、20cm、30cm、40cmまたは50cmである。
【0110】
テムシロリムスと組み合わせて投与される糖質コルチコイドは、血管疾患の処置に治療有効な投薬量の範囲を含む。一部の例において、糖質コルチコイドはデキサメタゾンである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、約1μgから50mg、約10μgから20mg、約25μgから10mg、約1μgから2mg、約10μgから500μg、約100μgから50mg、約100μgから20mg、約100μgから10mg、約100μgから1mg、または約100μgから500μgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、約10μg、約25μg、約50μg、約100μg、約500μg、約1.0mg、約5.0mg、約10.0mg、約20.0mg、約30.0mg、約40.0mg、または約50.0mgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な体積は、約0.01mLから約50mL、約0.5mLから約20mL、約0.5mLから約25mL、約0.5mLから約5mL、1mLから10mL、または約1mLから約5mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mLから約0.4mg/mL、約0.1mg/mLから約0.5mg/mL、約0.01mg/mLから約2.0mg/mL、または約1.0mg/mLから約10.0mg/mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、約2.5mg/ml、約3.0mg/ml、約4.0mg/mL、約6.0mg/mL、約8.0mg/mL、または約10.0mg/mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから7mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから4mg、または血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgである。病変の長手方向長さとしても知られる、血管における疾患部位の長手方向長さは、約1cm、5cm、10cm、20cm、30cm、40cmまたは50cmである。
【0111】
パクリタキセルと組み合わせて投与される糖質コルチコイドは、血管疾患の処置に治療有効な投薬量の範囲を含む。一部の例において、糖質コルチコイドはデキサメタゾンである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、約1μgから50mg、約10μgから20mg、約25μgから10mg、約1μgから2mg、約10μgから500μg、約100μgから50mg、約100μgから20mg、約100μgから10mg、約100μgから1mg、または約100μgから500μgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、約10μg、約25μg、約50μg、約100μg、約500μg、約1.0mg、約5.0mg、約10.0mg、約20.0mg、約30.0mg、約40.0mg、または約50.0mgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な体積は、約0.01mLから約50mL、約0.5mLから約20mL、約0.5mLから約25mL、約0.5mLから約5mL、1mLから10mL、または約1mLから約5mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mLから約0.4mg/mL、約0.1mg/mLから約0.5mg/mL、約0.01mg/mLから約2.0mg/mL、または約1.0mg/mLから約10.0mg/mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、約2.5mg/ml、約3.0mg/ml、約4.0mg/mL、約6.0mg/mL、約8.0mg/mL、または約10.0mg/mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから7mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから4mg、または血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.8mgから8mgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgである。病変の長手方向長さとしても知られる、血管における疾患部位の長手方向長さは、約1cm、5cm、10cm、20cm、30cm、40cmまたは50cmである。
【0112】
糖質コルチコイドと組み合わせて投与されるテムシロリムスの医薬組成物は、血管疾患の処置に治療有効な投薬量の範囲を含む。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、約1μgから50mg、約10μgから20mg、約25μgから10mg、約1μgから2mg、約10μgから500μg、約100μgから約2mg、または約100μgから500μgである。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、約10μg、約25μg、約50μg、約100μg、約500μg、約1.0mg、約5.0mg、約10.0mgまたは約15.0mgである。一部の例において、テムシロリムスの治療的に有効な体積は、約0.01mlから約50ml、約0.5mlから約20ml、約0.5mlから約25ml、約0.5mlから約5ml、または約1mlから約5mlである。一部の例において、テムシロリムスの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mLから約0.4mg/mL、約0.1mg/mLから約0.5mg/mL、または約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである。一部の例において、テムシロリムスの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、約2.5mg/ml、または3.0mg/mlである。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから2mg、または血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから1mgである。一部の例において、テムシロリムスの治療有効量は、血管の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである。病変の長手方向長さとしても知られる、血管における疾患部位の長手方向長さは、約1cm、5cm、10cm、20cm、30cm、40cmまたは50cmである。
【0113】
代替として、糖質コルチコイドと組み合わせて投与されるパクリタキセルの医薬組成物は、血管疾患の処置に治療有効な投薬量の範囲を含む。一部の例において、パクリタキセルの治療有効量は、約1μgから50mg、約10μgから20mg、約25μgから10mg、約1μgから2mg、約10μgから500μg、約100μgから約2mg、または約100μgから500μgである。一部の例において、パクリタキセルの治療有効量は、約10μg、約25μg、約50μg、約100μg、約500μg、約1.0mg、約5.0mg、約10.0mgまたは約15.0mgである。一部の例において、パクリタキセルの治療的に有効な体積は、約0.01mlから約50ml、約0.5mlから約20ml、約0.5mlから約25ml、約0.5mlから約5ml、または約1mlから約5mlである。一部の例において、パクリタキセルの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mLから約0.4mg/mL、約0.1mg/mLから約0.5mg/mL、または約0.01mg/mLから約2.0mg/mLである。一部の例において、パクリタキセルの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、約2.5mg/ml、または3.0mg/mlである。一部の例において、パクリタキセルの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.005mgから5mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから2mg、または血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから1mgである。一部の例において、パクリタキセルの治療有効量は、血管の長手方向長さの1cm当たり約0.025mgから1mgである。病変の長手方向長さとしても知られる、血管における疾患部位の長手方向長さは、約1cm、5cm、10cm、20cm、30cm、40cmまたは50cmである。
【0114】
テムシロリムスと組み合わせて投与される糖質コルチコイドの医薬組成物は、血管疾患の処置に治療有効な投薬量の範囲を含む。一部の例において、糖質コルチコイドはデキサメタゾンである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、約1μgから50mg、約10μgから20mg、約25μgから10mg、約1μgから2mg、約10μgから500μg、約100μgから50mg、約100μgから20mg、約100μgから10mg、約100μgから1mg、または約100μgから500μgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、約10μg、約25μg、約50μg、約100μg、約500μg、約1.0mg、約5.0mg、約10.0mg、約20.0mg、約30.0mg、約40.0mg、または約50.0mgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な体積は、約0.01mLから約50mL、約0.5mLから約20mL、約0.5mLから約25mL、約0.5mLから約5mL、1mLから10mL、または約1mLから約5mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mLから約0.4mg/mL、約0.1mg/mLから約0.5mg/mL、約0.01mg/mLから約2.0mg/mL、または約1.0mg/mLから約10.0mg/mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療的に有効な濃度は、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、約2.5mg/ml、約3.0mg/ml、約4.0mg/mL、約6.0mg/mL、約8.0mg/mL、または約10.0mg/mLである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから10mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.05mgから7mg、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから4mg、または血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgである。一部の例において、デキサメタゾンの治療有効量は、血管における疾患部位の長手方向長さの1cm当たり約0.1mgから2mgである。病変の長手方向長さとしても知られる、血管における疾患部位の長手方向長さは、約1cm、5cm、10cm、20cm、30cm、40cmまたは50cmである。
【0115】
本明細書中に記載のテムシロリムスおよび糖質コルチコイドを含む組成物の用量は、患者の状態、すなわち、疾患の病期、全身健康状態、年齢、および他の要因に応じて異なる。
【0116】
本明細書中に記載のパクリタキセルおよび糖質コルチコイドを含む組成物の用量は、患者の状態、すなわち、疾患の病期、全身健康状態、年齢、および他の要因に応じて異なる。
【0117】
本明細書中に記載の医薬組成物を、疾患が処置される(または防止される)のに適切な様式で投与する。投与の妥当な用量および適切な持続期間および頻度は、患者の状態、患者の疾患のタイプおよび重症度、有効成分の特定の形態、および投与方法などの要因によって決定されるであろう。一般に、妥当な用量および処置レジメンにより、治療上および/または予防上の利点(例えば、臨床アウトカムの改善)を得るか、症状の重症度を低下させるのに十分な量の組成物(単数または複数)が得られる。最適な用量を、一般に、実験モデルおよび/または臨床試験を使用して決定する。最適な用量は、患者のボディ・マス、体重、または血液量に依存する。
【0118】
1つの実施形態では、本明細書中に記載のテムシロリムスおよび糖質コルチコイド、またはそれらの薬学的に許容される塩の医薬組成物を、開示の化合物のうちのいずれか1つの投与から恩恵を受けるであろう哺乳動物の疾患または状態の処置のための医薬の調製で使用する。1つの実施形態では、本明細書中に記載のパクリタキセルおよび糖質コルチコイド、またその薬学的に許容される塩の医薬組成物を、開示の化合物のうちのいずれか1つの投与から恩恵を受けるであろう哺乳動物の疾患または状態の処置のための医薬の調製で使用する。かかる処置を必要とする哺乳動物における本明細書中に記載の疾患または状態のうちのいずれかの処置方法は、少なくとも1つの本明細書中に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、活性代謝産物、プロドラッグ、または薬学的に許容される溶媒和物を、前述の哺乳動物の治療有効量で含む医薬組成物の投与を含む。
【0119】
ある特定の実施形態では、本明細書中に記載のテムシロリムスおよび糖質コルチコイドの医薬組成物を、予防上および/または治療上の処置のために投与する。ある特定の実施形態では、本明細書中に記載のパクリタキセルおよび糖質コルチコイドの医薬組成物を、予防上および/または治療上の処置のために投与する。特定の治療への応用において、組成物を、疾患または状態に既に罹患している患者に、疾患または状態の症状のうちの少なくとも1つを治癒または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与する。この使用有効量は、疾患または状態の重症度および経過、薬歴、患者の健康状態、体重、および薬物に対する応答、ならびに処置を担当する医師の判断に依存する。治療有効量を、必要に応じて、用量漸増および/または用量設定臨床試験が含まれるが、これらに限定されない方法によって決定する。
【0120】
予防への応用において、本明細書中に記載のテムシロリムスおよび糖質コルチコイドの医薬組成物を、特定の疾患、障害、または状態に罹患しやすいか、そうでなければリスクのある患者に投与する。予防への応用において、本明細書中に記載のパクリタキセルおよび糖質コルチコイドの医薬組成物を、特定の疾患、障害、または状態に罹患しやすいか、そうでなければリスクのある患者に投与する。かかる量を、「予防的に有効な量または用量」であると定義する。この使用において、正確な量はまた、患者の健康状態および体重などに依存する。患者に使用する場合、この使用のための有効量は、疾患、障害、または状態の重症度および経過、薬歴、患者の健康状態および薬物に対する応答、ならびに処置を担当する医師の判断に依存するであろう。1つの態様では、予防的処置は、疾患または状態の症状の再発を防止するために、哺乳動物(この哺乳動物は、処置される疾患の少なくとも1つの症状を以前に経験しており、現在は寛解している)に、本明細書中に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0121】
患者の状態が改善しないある特定の実施形態では、医師の裁量により、テムシロリムスおよび糖質コルチコイドの医薬組成物を、慢性的に、すなわち、患者の疾患または状態の症状を回復させるか、そうでなければ制御または制限するために、長期間(患者の寿命の間が含まれる)投与する。患者の状態が改善しないある特定の実施形態では、医師の裁量により、パクリタキセルおよび糖質コルチコイドの医薬組成物を、慢性的に、すなわち、患者の疾患または状態の症状を回復させるか、そうでなければ制御または制限するために、長期間(患者の寿命の間が含まれる)投与する。
【0122】
患者の状態が改善した時点で、必要ならば維持注射を施す。引き続いて、特定の実施形態では、投薬量または投与頻度またはその両方を、症状に応じて、疾患、障害、または状態の改善が保持されるレベルまで低下させる。しかし、ある特定の実施形態では、患者は、症状の任意の再発の際は、長期間を原則として間欠的処置を必要とする。
【0123】
かかる治療レジメンの毒性および治療有効性を、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手技(LD50およびED50の決定が含まれるが、これらに限定されない)によって決定する。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50とED50との間の比で表す。ある特定の実施形態では、細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータを、哺乳動物(ヒトが含まれる)での使用のための治療に有効な1日投薬量範囲および/または治療に有効な単位投薬量の製剤化で使用する。一部の実施形態では、本明細書中に記載の化合物の投薬量は、毒性が最低のED50を含む循環濃度の範囲内にある。ある特定の実施形態では、投薬量範囲および/または単位投薬量は、使用した投薬形態および利用した投与経路に応じて、この範囲内で変動する。
【0124】
前述の態様のうちのいずれかでは、さらなる実施形態は、本明細書中に記載のテムシロリムスおよび糖質コルチコイドの医薬組成物の有効量の単回投与(組成物を1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、4ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、または6ヶ月毎に1回投与するさらなる実施形態が含まれる)を含む。
【0125】
前述の態様のうちのいずれかでは、さらなる実施形態は、本明細書中に記載のパクリタキセルおよび糖質コルチコイドの医薬組成物の有効量の単回投与(組成物を1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、4ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、または6ヶ月毎に1回投与するさらなる実施形態が含まれる)を含む。
【0126】
患者の状態が改善しないある特定の実施形態では、薬物の投与用量を、特定の期間(例えば、「休薬期間」)にわたって一過性に減少させるか、一過性に中止する。特定の実施形態では、休薬期間の長さは、1ヶ月間と5年間との間(ほんの一例として、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、または5年間超が含まれる)である。休薬期間中の用量の低下は、ほんの一例として、10%から100%(ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%が含まれる)である。さらなるまたは別の実施形態では、本方法は、化合物の投与を一過性に中止するか、化合物の投与用量を一過性に減少させる休薬期間を含み;休薬期間の終了時に、化合物の投与を再開する。1つの実施形態では、休薬期間の長さは、6ヶ月間から2年間までで変動する。1つの実施形態では、休薬期間の長さは、1年間である。1つの実施形態では、休薬期間の長さは、2年間である。1つの実施形態では、休薬期間の長さは、3年間である。
【0127】
投与のためのデバイス
医薬組成物を投与するためのデバイスおよび方法を、本明細書中に記載する。ステントベースの管腔薬物送達の代替法として、血管および他の管腔壁中への薬物の直接送達は、一部の例において、標的化組織中の医薬剤の治療濃度を上昇させる。例えば、一部の場合において、方法が、標的化組織領域内の薬剤の治療投与量レベルを提供するために、注射部位(単数または複数)から長手方向および半径方向の両方の拡散を含めて送達された医薬剤の体積分配の拡張を提供することが特に望ましい。一部の例において、デバイスは、標的化組織中への薬物を効果的に送達し、管腔血流中への薬物の損失を制限または回避する。一部の例において、組織における医薬剤のこうした治療濃度の持続が、特に血管壁の周囲の外膜組織を含めて血管壁から離れている標的化組織においても増加される。一部の例において、血管の周囲の外膜および他の組織の遠隔の、拡張された、および分配された領域にわたる医薬剤送達の均一性および程度が増加される。一部の例において、医薬剤が血管内の非疾患部位で血管壁を通して送達され、ここで、次いで、薬剤は外膜または他の組織を通って患部(単数または複数)へ移行する。一部の例において、医薬剤の血管内送達は、脈管構造に直接的に関連するものに加えて組織および臓器の疾患および状態を処置する。
【0128】
一部の例において、薬物の注射または注入のカテーテルおよびデバイスは、血管に医薬組成物を注射することで再狭窄を処置するための本明細書に記載されている方法との使用に適切である。デバイスの例としては、Mercator MedSystems、Emeryville、CAから入手可能なMercator Bullfrog(登録商標)Micro-Infusionデバイスが挙げられる。他の例としては、全開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第14/605,865号および同第15/691,138号に記載されたデバイスが挙げられる。適切なデバイスおよびそれらの使用の例は、以下の通りに記載されている。一部の例において、針またはマイクロニードルを使用して注射する。
【0129】
一部の例において、血管疾患を処置するための医薬組成物は、薬物注射または注入カテーテルを使用して、血管の周囲の組織に送達される。
図1A~2Bに示されている通りの薬物注射または注入カテーテルの1つの例において、微細製作された管腔内カテーテル10は、アクチュエータ本体12aおよび中心長手軸12bを有するアクチュエータ12を含む。アクチュエータ本体は、実質的にその長さに沿って伸長する開口またはスリット12dを有するほぼC形状外形を形成する。マイクロニードル14は、アクチュエータがその非駆動状態(折り畳み状態)である場合、より詳細に下記で考察されている通り、アクチュエータ本体内に配置されている(
図1B)。マイクロニードルは、アクチュエータがその駆動状態(展開状態)であるように作動される場合、アクチュエータ本体の外側に移動される(
図2B)。一部の例において、アクチュエータは、その近位端部12eおよび遠位端部12fで、治療用カテーテル20のリード端部16および先端部18でそれぞれキャップされている。カテーテル先端部は、放射線不透過性のコーティングまたはマーカーの使用によって身体管腔の内側にアクチュエータを配置する手段として供される。カテーテル先端はその上、アクチュエータの遠位端部12fでシールを形成する。カテーテルのリード端部は、アクチュエータの近位端部12eで、必要な相互接続(流体的、機械的、電気的または光学的)を提供する。
【0130】
保持リング22aおよび22bは、アクチュエータの遠位端部および近位端部にそれぞれ配置されている。カテーテル先端は保持リング22aに接合され、一方、カテーテルリードは保持リング22bに接合されている。保持リングは、10ミクロンから100ミクロン(μm)ほどの細い、実質的に可撓性であるが相対的に非膨張性の材料、例えばパリレン(C型、D型またはN型)、または金属、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、金、チタンまたはタングステンで作製されている。保持リングは、アクチュエータの各端部で、可撓性であるが相対的に非膨張性の略「C」形状構造を形成する。一部の例において、カテーテルは、例えば突き合わせ溶接、超音波溶接、一体型ポリマーカプセル化、またはエポキシなどの接着剤によって保持リングに接合される。
【0131】
アクチュエータ本体は、保持リング22aと22bとの間に配置されている中央の拡大可能なセクション24をさらに含む。拡大可能なセクション24は、活性化用流体がその領域に供給される場合、急速な拡大のための内部開口領域26を含む。中央セクション24は、ポリマー、例えば、パリレン(C型、D型またはN型)、シリコーン、ポリウレタンまたはポリイミドなど、細い、半可撓性であるが相対的に非膨張性の、または可撓性であるが相対的に非膨張性の拡大可能な材料で作製されている。中央セクション24は、駆動の際に、バルーンデバイスのように幾分拡大可能である。
【0132】
中央セクションは、開口領域26への活性化用流体の印加の際に最大約200psiまでの圧力に耐えられる。中央セクションが作製される材料は、活性化用流体が開口領域26から除去される場合に中央セクションがその本来の構成および配向(非駆動状態)に実質的に戻るという点において、可撓性であるが相対的に非膨張性、または半可撓性であるが相対的に非膨張性である。したがって、この意味において、中央セクションは、本質的に安定な構造を有さないバルーンとは非常に異なる。
【0133】
アクチュエータの開口領域26は、カテーテルのリード端部からアクチュエータの近位端部へと伸長する送達導管、チューブまたは流体経路28に接続されている。活性化用流体は、送達チューブを介して開口領域に供給される。送達チューブはしばしば、Teflon(登録商標)または他の不活性プラスチックで構築される。活性化用流体はしばしば、生理食塩溶液または放射線不透過性染料である。
【0134】
一部の例において、マイクロニードル14は、中央セクション24のほぼ中央に配置される。しかしながら、下記で考察されている通り、これは、とりわけ複数のマイクロニードルが使用される場合には必ずしも必要ではない。マイクロニードルは、中央セクションの外部表面24aに貼り付けられている。マイクロニードルは、シアノアクリレートなどの接着剤によって表面24aに貼り付けられている。代替として、マイクロニードルは、接着剤によって表面24aにそれ自体貼り付けられている金属またはポリマーのメッシュ様構造30によって表面24aに接合される(
図4を参照されたい)。メッシュ様構造はしばしば、例えば鋼またはナイロンで作製される。
【0135】
マイクロニードルは、鋭い先端14aおよびシャフト14bを含む。マイクロニードル先端は、挿入端または挿入点を提供することができる。シャフト14bは中空であってよく、先端は出口ポート14cを有することができ、患者への医薬品または薬物の注射を可能にする。しかしながら、マイクロニードルは、他の作業を達成するために神経プローブのようにしばしば構成されるので、必ずしも中空でなくてもよい。
【0136】
示されている通り、マイクロニードルは、表面24aからおよそ垂直に伸長する。したがって、記載されている通り、マイクロニードルは、挿入された管腔の軸に実質的に垂直に移動することで、身体管腔壁の直接的な穿刺または突破を可能にする。
【0137】
マイクロニードルは、カテーテルリード端部で適切な流体相互接続との流体連通にマイクロニードルを留置する、医薬品もしくは薬物供給の導管、チューブまたは流体経路14dをさらに含む。この供給チューブはしばしば、シャフト14bと一体的に形成されるか、またはそれはしばしば、例えばエポキシなどの接着剤によってシャフトに後に接合される別個の部品として形成される。
【0138】
一部の例において、針14は、30ゲージまたはそれより小さい鋼針である。代替として、マイクロニードルは、ポリマー、他の金属、金属合金または半導体材料から微細製作される。針は、例えば、パリレン、シリコンまたはガラスで作製される。マイクロニードルおよび製作方法は、2001年6月8日に出願され、「Microfabricated Surgical Device」と題され、本出願の譲受人に譲渡された米国出願番号第09/877,653号に記載されており、この全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
カテーテル20は、使用時に、身体における開口を通って(例えば、気管支または副鼻腔の処置の場合)または経皮穿刺部位を通って(例えば、動脈または静脈の処置の場合)挿入され、患者の身体通路32内を移動された後、特定の標的化領域34に到達する(
図3を参照されたい)。標的化領域34は組織傷害の部位であるか、またはより通常には、典型的には100mm内またはそれより小さい部位に隣接していることで、治療剤または診断剤の移行を可能にする。カテーテルベースのインターベンション手技において周知である通り、カテーテル20は、患者に前もって挿入されたガイドワイヤ36に続く。必要に応じて、カテーテル20は、ガイドワイヤを包含する前もって挿入されたガイドカテーテル(示されていない)の進路に続く。
【0140】
カテーテル20の操作中、蛍光透視法または磁気共鳴画像法(MRI)の周知の方法が使用されることで、カテーテルを画像化し、標的領域にアクチュエータ12およびマイクロニードル14を位置付けるのを補助することができる。カテーテルは患者の身体の内側でガイドされるので、マイクロニードルは、外傷が身体管腔壁に引き起こされないように、アクチュエータ本体の内側に折り畳まれているまたは保持されているままである。
【0141】
標的領域34に位置付けられた後、カテーテルの移動は終了され、活性化用流体がアクチュエータの開口領域26に供給され、拡大可能なセクション24の急速な展開を引き起こし、アクチュエータ本体12aの長手方向の中心軸12bに対して実質的に垂直方向にマイクロニードル14を移動させることで、身体管腔壁32aを穿刺する。一部の例において、マイクロニードルがその折り畳み状態からその展開状態に移動するのに、およそ100ミリ秒から5秒の間だけかかる。
【0142】
保持リング22aおよび22bでのアクチュエータの端部は、カテーテル20に固定されたままである。したがって、それらは駆動中に変形しない。アクチュエータは折り畳み構造として開始するので、そのいわゆる含蓄形状は、不安定な座屈モードとして存在する。この不安定性は、一部の例において、駆動時に、アクチュエータ本体の中心軸におよそ垂直のマイクロニードルの大規模な動きを生成し、大きな運動量の移送なく身体管腔壁の急速な穿刺を引き起こす。結果として、マイクロスケール開口は、周囲組織に対する非常に最小の傷害で生成される。その上、運動量の移送は相対的に小さいので、無視できるほどの付勢力だけが、駆動および穿刺中にカテーテルおよびアクチュエータをその場に保持するために必要とされる。
【0143】
マイクロニードルアパーチャは、実際に、それが身体管腔組織32b、ならびに身体管腔の周囲の外膜、中膜または内膜に進入することができるような力で動いていく。追加として、アクチュエータは駆動前に「停止」または中断されるので、より正確な留置および身体管腔壁の浸透に対する制御が得られる。
【0144】
マイクロニードルの駆動およびマイクロニードルを介する標的領域への薬剤の送達の後、活性化用流体はアクチュエータの開口領域26から排出され、拡大可能なセクション24がその本来の折り畳み状態に戻ることを引き起こす。これは、マイクロニードルが身体管腔壁から引き抜かれることも引き起こす。引き抜かれているマイクロニードルは、アクチュエータによって再び覆われる。
【0145】
様々な微細製作されたデバイスが、針、アクチュエータおよびカテーテルに一体化されることで、流量を計測し、生物学的な組織の試料を捕捉し、pHを測定することができる。デバイス10は、例えば、マイクロニードルを介して流量を、ならびに配備されている医薬品のpHを測定するために電気センサーを含むことができる。デバイス10は、血管壁を配置するための血管内超音波センサー(IVUS)、および標的領域を見るための当技術分野において周知である通りの光ファイバーも含むことができる。こうした完全なシステムのため、高統合性の電気的、機械的および流体的接続が提供されることで、確実に電力、エネルギー、および医薬品または生物学的薬剤を移送させる。
【0146】
例として、マイクロニードルは、約200ミクロンから3,000ミクロン(μm)の間の全長を有する。シャフト14bおよび供給チューブ14dの内部断面寸法はしばしば、20umから250umほどであり、一方、チューブおよびシャフトの外部断面寸法はしばしば、約100μmから500μmの間である。アクチュエータ本体の全長はしばしば、約5ミリメートルから50ミリメートル(mm)の間であり、一方、アクチュエータ本体の外部および内部の断面寸法は、それぞれ約0.4mmから4mmの間および0.5mmから5mmの間であり得る。アクチュエータの中央セクションが展開するギャップまたはスリットは、一部の例において、約4~40mmの長さ、および約50~500μmの断面寸法を有する。活性化用流体のための送達チューブの直径はしばしば、約100μmである。カテーテルサイズはしばしば、1.5フレンチから15フレンチ(Fr)の間である。
【0147】
本開示の変動は、活性化用流体のための単一の供給チューブを有する多重座屈型アクチュエータを含む。多重座屈型アクチュエータは、異なる位置または時間で注射を提供するために管腔壁にまたはそれを介して挿入することができる複数の針を含む。
【0148】
例えば、
図4に示されている通り、アクチュエータ120は、中央の拡大可能なセクション240の長さまたは長手方向寸法に沿って異なるポイントに配置されているマイクロニードル140および142を含む。活性化用流体の作動圧力は、マイクロニードルが同時に移動するように選択される。代替として、活性化用流体の圧力は、マイクロニードル140がマイクロニードル142の前に移動するように選択される。
【0149】
具体的に、マイクロニードル140は、同じ活性化用流体圧力に対してマイクロニードル142が配置されている拡大可能なセクション(より高い活性化圧力)の部分の前に、外向きに座屈する拡大可能なセクション240(より低い活性化圧力)の部分に配置される。したがって、例えば、拡大可能なセクション240の開口領域内の活性化用流体の作動圧力が1平方インチ当たり2ポンド(psi)であるならば、マイクロニードル140はマイクロニードル142の前に移動する。マイクロニードル142が移動するのは、例えば、作動圧力が4psiに増加される場合だけである。したがって、この作動モードは、マイクロニードル140が時間t1および圧力p1で移動し、マイクロニードル142が時間t2およびp2で移動する段階的座屈を提供し、t1およびp1は、それぞれt2およびp2よりも小さい。
【0150】
この種類の段階的座屈は、その上、各部分が個々のマイクロニードルを含む中央セクション240の異なる部分での異なる空気圧または油圧接続を用いて提供され得る。
【0151】
その上、
図5に示されている通り、アクチュエータ220は、その針222および224Aが異なる方向に移動するように構築することができる。示されている通り、駆動時に、針は互いにおよそ90°の角度で移動することで、管腔壁の異なる部分を穿刺する。針224B(ファントムに示されている通り)は、代替として、針224Aに対して約180°の角度で移動するように配列することができる。
【0152】
ここで
図6を参照すると、本開示の原理に従って構築された針注射カテーテル310は、遠位端部314および近位端部316を有するカテーテル本体312を含む。通常、ガイドワイヤ管腔313は、カテーテルの遠位突出部352に提供されるが、オーバーザワイヤ、およびガイドワイヤ留置を必要としない実施形態も、本開示の範囲内である。2ポートハブ320は、カテーテル本体312の近位端部316に付着されており、例えばシリンジ324を使用する作動液の送達のための第1のポート322、および例えばシリンジ328を使用する医薬剤を送達するための第2のポート326を含む。往復可能な偏向可能針330は、カテーテル本体312の遠位端部の近傍に搭載され、
図6におけるその側方に前進させた構成で示されている。
【0153】
ここで
図7を参照すると、カテーテル本体312の近位端部314は、針330、往復可能なピストン338および作動液送達チューブ340を保持する主要管腔336を有する。ピストン338は、レール342上を摺動するように搭載され、針330に固定して付着されている。したがって、管腔341チューブ340を通って蛇腹構造344中へ加圧された作動液を送達することによって、ピストン338はしばしば、遠位先端に向かって軸方向に前進させることで、カテーテル突出部352において形成された偏向進路350を介して針が通過するのを引き起こす。
【0154】
図8において見ることができる通り、カテーテル310はしばしば、従来の方式にてガイドワイヤGW上で冠動脈血管BVに位置付けられる。ピストン338の遠位前進は、それが血管中に存在する場合、針330を、カテーテルに隣接する管腔組織T中へ前進させる。治療剤または診断剤がしばしばシリンジ328を使用してポート326を通って導入されることで、
図8に例示されている通りに心臓組織中に薬剤のプルームPを導入する。プルームPは、上に記載した通りに組織傷害の領域内にあるか、またはそれに隣接する。
【0155】
一部の例において、針330は、カテーテル本体312の全長にわたり伸長しているか、またはより通常には、チューブ340における治療剤または診断剤の送達管腔337中のみに部分的に伸長させる。針の近位端部が管腔337とともに摺動シールを形成することで、針を通る
薬剤の加圧送達を可能にすることができる。
【0156】
針330は、弾性材料、典型的には弾性または超弾性金属でできており、典型的にはニチノールまたは他の超弾性金属である。代替として、針330は、それが偏向進路を介して通過するように形状化される非弾性的に変形可能な金属または可鍛性金属から形成することができる。しかしながら、非弾性的に変形可能な金属の使用は好ましくなく、というのは、こうした金属は一般に、それらが偏向進路を介して通過した後にそれらの真っすぐな構成を保持しないからである。
【0157】
一部の例において、蛇腹構造344は、パリレンまたは別の共形ポリマー層をマンドレル上に堆積させることおよび次いでポリマーシェル構造内からマンドレルを溶解させることによって作製される。代替として、蛇腹344は、バルーン構造を形成するためのエラストマー材料から作製することができる。またさらなる代替において、ばね構造は、蛇腹の中、上または至る所で利用されることで、その中の加圧された作動液の非存在下で閉鎖位置へ蛇腹を推進させることができる。
【0158】
治療材料が、
図8に示されている通りに針330を介して送達された後、針は退却され、カテーテルは、さらなる薬剤送達のために再び位置付けられるかまたは引き抜かれるかのいずれかである。一部の実施形態では、針は、蛇腹344から作動液を吸引することによって単純に退却することができる。他の実施形態では、針退却は、例えばピストン338の遠位面と遠位先端352の近位壁(示されていない)との間に固定化されている戻りばねによって、および/またはピストンに付着されているとともに管腔341を通り抜ける引きワイヤによって補助することができる。
【0159】
図9A~9Eは、本開示の原理に従って二重引張り応力バルーン構造または係留膜構造を製作するための例証的なプロセスを例示する。製作プロセスの第1のステップは、
図9Aで見られ、ここで、低引張り応力「パッチ」、または膜、材料400は、除去可能な(例えば溶解可能な)基体401と402との間の層状である。基体401はパッチ400の1つの全面を被覆し、一方、基体402は対向面の一部だけを被覆し、末梢周囲の曝露端または境界領域を残す。
【0160】
図9Bにおいて、「可撓性であるが相対的に非膨張性の」材料403の層は、
図9Aからのサンドイッチ構造の片側上へ堆積されることで、低引張り応力パッチが付着されているフレームを提供する。この材料は、例えば、パリレンN、C、またはDであるが、それは、多くの他のポリマーまたは金属のうちの1つであり得る。可撓性であるが相対的に非膨張性の材料がパリレンであり、パッチ材料がシリコーンまたはシロキサンポリマーである場合、化学機械的結合が層間に形成され、2つの材料間に強いおよび漏れのない接合部を創出する。2つの材料間に形成される接合部は、通常少なくとも0.05N/mm
2、典型的には少なくとも0.1N/mm
2、頻繁には少なくとも0.2N/mm
2のピール強度または界面強度を有する。
【0161】
図9Cにおいて、「可撓性であるが相対的に非膨張性の」フレームまたはアンカー材料403は、それが除去され得るようにトリミングまたはエッチングされていることで、基体材料402を曝露する。材料401および402は、多くの化学溶媒の1種によって除去することができる溶解可能なポリマーである。
図9Dにおいて、材料401および402は溶解によって除去されており、材料400および403を端と端で接合させておくことで、概して可撓性であるが相対的に非膨張性の材料403のフレーム内に低引張り応力またはエラストマーのパッチ400を形成する。
【0162】
図9Eに示されている通り、陽圧+ΔPが構造の片側405に適用されると、非膨張性フレーム403はわずかだけ変形し、一方、エラストマーパッチ400はいっそう変形する。一部の例において、低引張り応力材料は、高引張り応力材料の材料引張り応力よりも常に低いとともに典型的には0.1MPaから1,000MPaの範囲、より典型的には1MPaから250MPaの範囲である材料引張り応力を有する。高引張り応力材料は、1MPaから50,000MPaの範囲における、より典型的には10MPaから10,000MPaの範囲における材料引張り応力を有することができる。材料厚はしばしば、両方の場合において、意図される製品の最終サイズに依存して、およそ1ミクロンから数ミリメートルの範囲である。大部分の身体管腔の処置ため、材料層402および403の両方の厚さは、10ミクロンから2mmの範囲である。
【0163】
図10A~10Dを参照すると、
図9A~9Dのエラストマーパッチは、
図1~5の管腔内カテーテルに一体化される。
図10A~Dにおいて、こうした構造の漸進的加圧を、圧力が増加する順番で表示する。
図10Aにおいて、バルーンは、身体管腔L内に留置される。管腔壁Wは、特定の管腔の解剖学的構造に依存して、管腔周囲組織Tまたは外膜A
*から管腔を分割する。圧力は中立であり、非膨張性構造は、針14が覆われている
図1におけるものと同様のU形状の内側に曲がったバルーン12を形成する。この略図において針が表示されているが、切刃、レーザーもしくは光ファイバー先端、高周波送信機を含めた他の作業要素または他の構造が針と置換され得る。しかしながら、全てのこうした構造に関し、エラストマーパッチ400は通常、針14から内側に曲がったバルーン12の反対側に置かれる。
【0164】
バルーン12の駆動は正加圧で生じる。
図10Bにおいて、圧力(+ΔP
1)が加えられると、可撓性であるが相対的に非膨張性の構造が変形し始め、バルーンが内側に曲がることが、丸い圧力容器のより低いエネルギー状態に向けて、反転を開始することになる。
図10Cにおけるより高い圧力+ΔP
2で、可撓性であるが相対的に非膨張性のバルーン材料は、その丸くなった形状に達し、エラストマーパッチは拡張し始める。最終的に、
図10Dにおいて、またより高い圧力+ΔP
3で、エラストマーパッチは、管腔全直径に適応するまで拡張し、針先端に対向力を提供し、管腔壁を介しておよび外膜中に針を摺動させる。この図において企図されている身体管腔に関する典型的寸法は、0.1mmから50mmの間、より頻繁には0.5mmから20mmの間、最も頻繁には1mmから10mmの間である。管腔と外膜との間の組織の厚さは、典型的には0.001mmから5mmの間、より頻繁には0.01mmから2mmの間、最も頻繁には0.05mmから1mmの間である。バルーンの駆動を引き起こすための有用な圧力+ΔPは、典型的には0.1気圧から20気圧の範囲、より典型的には0.5気圧から20気圧の範囲、頻繁には1気圧から10気圧の範囲である。
【0165】
図11A~11Cに例示されている通り、本明細書において形成される二重引張り応力構造は、管腔内医療デバイスの低圧力(即ち、体組織を傷害し得る圧力未満)駆動を提供することで、管腔壁との接触でまたはそれを介して針などの作業要素を留置する。定圧の膨張によって、エラストマー材料は、管腔直径と一致することで、完全並置を提供する。二重引張り応力バルーン12は、
図11A、11Bおよび11Cで、3つの異なる管腔直径において圧力+ΔP
3に膨張される。パッチ400の漸進的に大きくなる膨張は、直径にかかわらず血管壁を介する針の最適な並置を提供する。したがって、しばしば同じカテーテルがある範囲の直径内である身体全体にわたる管腔において用いられる可変直径システムが作り出される。これは、大部分の医療製品が、管腔が使用され得る非常に厳格な制約(典型的には0.5mm内)に制限されるので、有用である。一部の例において、この開示に記載される通りのシステムは、それらが有用である管腔直径における数ミリメートルの可変性に適合する。
【0166】
図12A~12Fは、対象における血管疾患の例証的処置の概略図を示す。
図12Aは、アテローム性動脈硬化症に罹患している下肢の血管1210、または血管の管腔のプラーク1220を示す。
図12Bは、血管形成またはアテレクトミーなどの、血管の管腔直径を増加させるための血行再建手技後の罹患血管1210を示す。一部の例において、罹患血管の周囲の組織の標的領域は、血行再建手技を以前に受けていた可能性がある。
図12Cは、対象の脈管構造を介する標的領域中への処置用カテーテル10の送達を示す。
図12Dは、処置用カテーテルの針14で、血管の周囲の標的組織1260中に穿刺するための処置用カテーテルの拡大可能な要素12の拡大を示す。拡大可能な要素12はしばしば、アクチュエータとしても公知である。
図12Eは、血管1260の周囲の標的組織中への、テムシロリムス、デキサメタゾン、パクリタキセルまたはそれらの組み合わせ1270を含む医薬組成物の送達を示す。
図12Fは、拡大可能な要素12の収縮および血管の周囲の標的組織1260からの針14の引き抜きの後の処置用カテーテル10の引き抜きを示す。
【0167】
図13は、対象における血管疾患を処置する方法1300のフローチャートを示す。ステップ1305において、血管疾患を処置するのに適切な対象が同定される。血管疾患は、一部の例において、上記および本明細書に記載される任意の血管疾患である。例証的な実施形態では、血管疾患は血管形成後の再狭窄である。ステップ1310において、処置のために標的化する対象における血管(単数)または血管(複数)が同定されることが多い。一部の例において、血管は、大腿動脈など、上記および本明細書に記載される任意の血管である。ステップ1315において、処置用カテーテルを、テムシロリムスおよびデキサメタゾンを含む医薬組成物を用いて調製することが多いが、テムシロリムス、デキサメタゾン、パクリタキセル、造影剤、またはそれらの組合せを最適な治療剤として使用することができる。代替の医薬組成物は同様に使用されることが多く、処置用カテーテルは、本明細書および上に記載される薬物注射および注入デバイスのいずれかを含むことが多い。ステップ1320において、カテーテルは、プラークが血管形成によって圧縮されている血管中の標的領域などの標的領域に、対象の脈管構造を通って前進することが多い。ステップ1325において、カテーテルは、血管の標的領域(単数または複数)にまたはその近傍に位置付けることが多い。ステップ1330において、カテーテルの拡大可能な要素が拡大されることで、バルーン上の針で標的領域を穿刺することが多い。拡大可能な要素は、処置用カテーテルの拡大可能なセグメント、拡大可能なセクションまたはバルーンであることが多い。針はマイクロニードルであることが多い。ステップ1335において、処置用カテーテルの針は、針のアパーチャが標的組織に位置付けられることが多いように、血管の周囲の組織中に位置付けることが多い。ステップ1340において、テムシロリムスおよびデキサメタゾン(または前述の薬剤の他の組合せ)を含む医薬組成物の治療量が、血管の周囲の標的組織に注射されることが多い。標的組織は、血管の周囲の外膜組織、血管周囲組織または結合組織であることが多い。ステップ1345において、針は組織から引き抜くことが多く、拡大可能な要素は収縮することが多い。ステップ1350において、収縮された拡大可能な要素および針を有する処置用カテーテルは、対象の脈管構造から除去することが多い。
【0168】
上記のステップは、実施形態に従って、
図12、および
図13において血管疾患を処置する方法1300を示すが、当業者は、本明細書に記載される教示に基づく多くの変化形を認識されよう。ステップは、一部の場合において、異なる順序で完了する。ステップは、追加または削除されることが多い。ステップのいくつかは、一部の例において、サブステップを含む。ステップの多くは、処置に有益な限り頻繁に反復することが多い。
【実施例】
【0169】
実施例
in-vitroプロトコールおよび方法
ある範囲の薬物または薬物の組合せの細胞活性化の能力および細胞活性化に及ぼす影響を査定するために、in vitroでのPDGF刺激した大動脈平滑筋細胞における炎症促進性サイトカイン産生および細胞傷害性を試験した。mTOR阻害剤であるシロリムスおよびテムシロリムスならびに糖質コルチコイドであるデキサメタゾンの濃度範囲を、それらの組合せに加えて、分裂阻止因子であるパクリタキセルと比較して、スクリーニングした。
【0170】
実施例1:選択した薬物の存在下でのVSMCの代謝活性。
培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で一晩刺激した。成長因子PDGFによって媒介されたVSMC刺激についての確立されたプロトコールを利用して、薬物を、0、1、10、100、500ナノモル(nM)の濃度範囲で、50nMデキサメタゾンの存在下または非存在下にて、12または48時間インキュベートした。細胞代謝活性、炎症促進性サイトカイン産生、および細胞傷害性に及ぼす薬物特異的影響を試験した。代謝活性の破壊のための細胞傷害性対照として、アクチノマイシンD(100ng/mLまたは398nM)を使用した。ネガティブコントロールとして、ビヒクル(生理食塩水中5%(v/v)滅菌DMSO)を使用した。薬物の存在下での8時間のインキュベーションおよび刺激(PDGF)後、MTT基質を添加し、さらに4時間のインキュベーション後に測定した。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。データは、平均の吸光度の読み取りを示す。エラーバーは、反復の標準偏差を示す。
図14Aは、シロリムスまたはシロリムス+デキサメタゾンの存在下での代謝活性および増殖の阻害パーセントを示す。
図14Bは、テムシロリムスまたはテムシロリムス+デキサメタゾンの存在下での代謝活性および増殖の阻害パーセントを示す。
図14Cは、パクリタキセルまたはパクリタキセル+デキサメタゾンの存在下での代謝活性および増殖の阻害パーセントを示す。データは、条件あたりの9つの反復ウェルの平均を示し、エラーバーは、9つの反復の標準偏差を示す。
【0171】
PDGFの存在下で、MTT基質の比色生成物への変換は、培地対照と比較して、有意に高い程度に起こるはずである。実際に、
図14Aでは、10ng/mL PDGFで刺激したVSMCは、ビヒクル対照(生理食塩水中5% DMSO(v/v))および細胞傷害性対照(100ng/mLの転写阻害剤アクチノマイシンD)と比較して、代謝産物の蓄積が増加した。薬物、具体的には、より高い濃度のテムシロリムス、シロリムス、およびパクリタキセルは、MTTアッセイにおいて阻害活性を有していた(
図14AからC)。
【0172】
なおさらなる実験では(
図19A)、培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で刺激した。単回の複数の用量設定のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)を投与するか(0、10、50、500nM)、固定高用量のパクリタキセルまたはテムシロリムスを、複数のデキサメタゾン用量設定(10、50、500nM)と組み合わせて投与した。8時間のインキュベーション後、MTT基質を添加し、さらに4時間インキュベーション後、測定した(T=12時間)。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。データは、平均の吸光度の読み取りを示す。エラーバーは、反復の標準偏差を示す。テムシロリムス、パクリタキセル、およびデキサメタゾンの抗増殖濃度を、複数の用量(用量範囲1、10、50、500nM)でのPDGF媒介増殖を抑制する能力について本研究においてさらに分析した。
図19Aは、単一の薬物または併用薬の存在下で同定された阻害パーセントを示す。個別に投与した低用量の全ての薬物は、高用量の各薬物と比較して、阻害特性が最小であった。高用量のパクリタキセルまたはテムシロリムスへのデキサメタゾンの添加により、各々の場合において抗増殖効果が増加した。
【0173】
実施例2:選択した薬物の存在下でのVSMC TNFαサイトカイン産生。
培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で一晩刺激した。ネガティブコントロール(0nM薬物))として、ビヒクル(生理食塩水中5%(v/v)滅菌DMSO)を使用した。薬物および刺激薬(PDGF)の存在下での48時間のインキュベーション後、50uLの各ウェル由来の上清を回収し、ELISAを実施してTNFαレベルを測定した。炎症促進性サイトカイン発現を、酵素結合免疫測定(ELISA;Peprotech番号900-T16、番号900-T25)によって48時間後に細胞上清中のTNFαレベルを測定することによって、これらの条件下で試験した。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。
図15Aは、漸増濃度のシロリムスまたはシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのTNFα産生を示す。
図15Bは、漸増濃度のテムシロリムスまたはテムシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのTNFα産生を示す。
図15Cは、漸増濃度のパクリタキセルまたはパクリタキセル+50nMデキサメタゾンの存在下でのTNFα産生を示す。データは、条件あたりの9つの反復ウェルの平均を示し、エラーバーは、9つの反復の標準偏差を示す。mTOR阻害剤は、より高い用量でTNFα産生を減少させ、mTOR阻害剤と組み合わせた場合にデキサメタゾンの存在により、TNFα産生が減少した。デキサメタゾン単独で用量依存性にTNFα産生が強く減少した。逆に、パクリタキセルは炎症促進性サイトカイン発現を活性化し、50nMデキサメタゾンの添加によって改善した。
【0174】
なおさらなる実験では(
図19E)培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で刺激した。単回の複数の用量設定のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)を投与するか(0、10、50、500nM)、固定高用量のパクリタキセルまたはテムシロリムスを、複数のデキサメタゾン用量設定(10、50、500nM)と組み合わせて投与した。細胞を48時間インキュベートし、TNFαレベルを、ELISA(Peprotech)によって測定した。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。データは、平均の吸光度の読み取りを示す。エラーバーは、三連のプレートの三連のウェルの間の標準偏差を示す。この実験では、パクリタキセルは、炎症促進性サイトカインTNFαの用量依存性の上方制御を誘導し、一方で、個別投与したテムシロリムスおよびデキサメタゾンは、同一サイトカインの用量依存性の低下を誘導した。デキサメタゾンは、この研究において抗炎症効果が同様に証明された。さらに、高用量(500nM)パクリタキセルでは、TNFα発現レベルは最高であり;任意の用量(10、50、500nM)のデキサメタゾンの添加により、パクリタキセルの炎症促進性サイトカイン産生が有意に低下した。
【0175】
実施例3:選択した薬物の存在下でのVSMC IL6サイトカイン産生。
培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で一晩刺激した。ネガティブコントロール(0nM薬物)として、ビヒクル(生理食塩水中5%(v/v)滅菌DMSO)を使用した。薬物および刺激薬(PDGF)の存在下での48時間のインキュベーション後、50uLの各ウェル由来の上清を回収し、ELISAを実施してIL6レベルを測定した。炎症促進性サイトカイン発現を、酵素結合免疫測定(ELISA;Peprotech番号900-T16、番号900-T25)によって48時間後に細胞上清中のIL6レベルを測定することによって、これらの条件下で試験した。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。
図16Aは、漸増濃度のシロリムスまたはシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのIL6産生を示す。
図16Bは、漸増濃度のテムシロリムスまたはテムシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのIL6産生を示す。
図16Cは、漸増濃度のパクリタキセルまたはパクリタキセル+50nMデキサメタゾンの存在下でのIL6産生を示す。データは、条件あたりの9つの反復ウェルの平均を示し、エラーバーは、9つの反復の標準偏差を示す。パクリタキセルを除いて、mTOR阻害剤および糖質コルチコイドは、用量依存性にIL6産生を阻害した(
図16AからC)。
【0176】
ビヒクル対照レベル(ベースラインとして設定)と比較したTNFαレベルおよびIL6レベルの変化率も分析し、
図15AからCおよび
図16AからCにそれぞれ示す。mTOR阻害剤は各々、50から500nMで存在する場合にTNFαレベルを減少させた。パクリタキセルは、試験した全ての用量でSMCによるIL6産生およびTNFα産生を誘導した。さらに、TNFαレベルは、パクリタキセル濃度の増加につれて着実に増加し、50nMと500nMとの間の薬物でIL6レベルは有意に変化しなかった。デキサメタゾンは、VSMCにおけるパクリタキセル誘導性のTNFα産生およびIL6産生を改善した。mTOR阻害剤単独でIL6産生を用量依存性に減少させ、これはデキサメタゾンに類似していたという予想外の所見も非常に注目に値する。mTOR阻害剤+デキサメタゾンは、VSMCによるIL6産生の阻害能力を増強させた。
【0177】
なおさらなる実験では(
図19D)培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で刺激した。単回の複数の用量設定のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)を投与するか(0、10、50、500nM)、固定高用量のパクリタキセルまたはテムシロリムスを、複数のデキサメタゾン用量設定(10、50、500nM)と組み合わせて投与した。細胞を48時間インキュベートし、IL6レベルを、ELISA(Peprotech)によって測定した。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。データは、平均の吸光度の読み取りを示す。エラーバーは、三連のプレートの三連のウェルの間の標準偏差を示す。この実験では、パクリタキセルは、炎症促進性サイトカインIL6の用量依存性の上方制御を誘導し、一方で、個別投与したテムシロリムスおよびデキサメタゾンは、同一サイトカインの用量依存性の低下を誘導した。デキサメタゾンは、この研究において抗炎症効果が同様に証明された。さらに、高用量(500nM)パクリタキセルでは、IL6発現レベルは最高であり;任意の用量(10、50、500nM)のデキサメタゾンの添加により、パクリタキセルの炎症促進性サイトカイン産生が有意に低下した。
【0178】
実施例4:薬物処置VSMCにおけるアポトーシス。
培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で刺激した。薬物(シロリムス;テムシロリムス;パクリタキセル;デキサメタゾン)またはビヒクル対照を、12時間インキュベートした。回収時に、細胞を穏やかに溶解し、カスパーゼ3ELISAを行った(Cell Signaling Technologies、Cat番号7190)。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。
図17Aは、漸増濃度のシロリムスまたはシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのカスパーゼ3活性化を示す。
図17Bは、漸増濃度のテムシロリムスまたはテムシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのカスパーゼ3活性化を示す。
図17Cは、漸増濃度のパクリタキセルまたはパクリタキセル+50nMデキサメタゾンの存在下でのカスパーゼ3活性化を示す。データは、条件あたりの9つの反復ウェルの平均を示し、エラーバーは、9つの反復の標準偏差を示す。VSMCアポトーシスのベースラインレベルを、ビヒクル対照を使用して得、値をゼロに設定した。薬物の存在下でのアポトーシスの変化率を、ベースラインから決定した(
図17AからC)。アポトーシスは、全てのmTOR阻害剤およびパクリタキセルで用量依存性に誘導されることが認められ、パクリタキセルは、試験条件下でアポトーシスの増加を平均で最大173%誘導した。興味深いことに、デキサメタゾンは、有意なアポトーシスを誘導しなかった。データは、低用量のデキサメタゾンがmTOR阻害剤誘導性効果を低下させることも示していた。
【0179】
さらに別の実験では(
図19B)、培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で刺激した。単回の複数の用量設定のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)を投与するか(0、10、50、500nM)、固定高用量のパクリタキセルまたはテムシロリムスを、複数のデキサメタゾン用量設定(10、50、500nM)と組み合わせて投与した。次いで、細胞を12時間インキュベートした。回収時に、プレートを臨床遠心機中にて800rpmで遠心分離し、上清を慎重に除去した。次いで、細胞を固定し、透過処理し、製造者(Cell Signaling Technologies)の説明書にしたがってELISAによって細胞質のカスパーゼ3レベルについてアッセイした。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。データは、平均の吸光度の読み取りを示す。エラーバーは、反復の標準偏差を示す。この実験を使用して、種々の処置条件下での活性化カスパーゼ3酵素の存在量を測定することによって、パクリタキセル、テムシロリムス、またはデキサメタゾンが低用量(1、10、50、500nM)でアポトーシス機序による細胞傷害性を誘導することができるかどうかを再検討した。
図19Bは、ビヒクル対照と比較したアポトーシス阻害量を示す。簡潔に述べれば、パクリタキセルは、全ての試験用量で、アポトーシスを促進することが示され(阻害の欠如)、これは、デキサメタゾンの添加によって救出された。漸増濃度のデキサメタゾンの同一の救出効果が、高用量テムシロリムスと併せて使用した場合にも認められた。
【0180】
実施例5:薬物処置したVSMCにおける壊死性LDH測定
培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で刺激した。薬物(シロリムス;テムシロリムス;パクリタキセル;デキサメタゾン)またはビヒクル対照を、12時間インキュベートした。回収時に、プレートを臨床遠心機中にて800rpmで遠心分離し、上清を慎重に除去し、製造者の説明にしたがってELISAによって培養培地中に放出されたLDHを測定することによって溶解細胞についてアッセイした。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。また、テムシロリムス、シロリムス、パクリタキセル、およびデキサメタゾンを、PDGF処置したVSMCにおける壊死および細胞溶解を測定するためのLDH放出アッセイを使用して毒性について査定した(
図18AからC)。
図18A中のデータは、漸増濃度のシロリムスまたはシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのLDH放出を示す。
図18Bは、漸増濃度のテムシロリムスまたはテムシロリムス+50nMデキサメタゾンの存在下でのLDH放出を示す。
図18Cは、漸増濃度のパクリタキセルまたはパクリタキセル+50nMデキサメタゾンの存在下でのLDH放出を示す。データは、条件あたりの9つの反復ウェルの平均を示し、エラーバーは、9つの反復の標準偏差を示す。mTOR阻害剤およびパクリタキセルを用いた場合に用量依存性の関係が認められた。デキサメタゾンは、ビヒクルと比較して、任意の用量でLDH放出を誘導せず、LDH放出が抑制された。濃度50nMのデキサメタゾンも、これらの研究において、mTORおよびパクリタキセルに媒介されたLDH放出を減少させた。
【0181】
なおさらなる実験では(
図19C)、培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート(Corning)中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で刺激した。単回の複数の用量設定のテムシロリムス(TEM)、パクリタキセル(PAC)、またはデキサメタゾン(DEX)を投与するか(0、10、50、500nM)、固定高用量のパクリタキセルまたはテムシロリムスを、複数のデキサメタゾン用量設定(10、50、500nM)と組み合わせて投与した。次いで、処置した細胞を12時間インキュベートした。回収時に、プレートを臨床遠心機中にて800rpmで遠心分離し、上清を慎重に除去し、製造者の説明書にしたがってELISAによってLDHについてアッセイした。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。データは、平均の吸光度の読み取りを示す。エラーバーは、反復の標準偏差を示す。壊死機序によるパクリタキセルの毒性は、本発明者らの以前の研究で示されている。本研究では、本発明者らは、VSMCにより安全で忍容性が高い薬物範囲を同定することができるかどうかを確認するために、より低い薬物濃度1、10、50、500nMを査定した。
図19Cは、全ての試験濃度のパクリタキセルで壊死性細胞傷害性が実証されたことを示すデータを示す。さらに、パクリタキセルを含む薬物の組合せでは、同様に壊死活性が実証されたが、デキサメタゾンの存在によってこの活性は救出された。対照的に、デキサメタゾンについては、いかなる試験濃度においても壊死性の毒性は認められなかった。
【0182】
実施例6:大腿血管損傷のブタモデル
大腿動脈損傷のブタモデルにおいて、テムシロリムス、デキサメタゾン、またはそれらの組合せの用量を、損傷動脈の周りの組織中に、針付きカテーテルを介して直接投与する。ブタ血管の解剖学的構造は、ヒトの解剖学的構造と同様であり、ヒトにおける使用が意図される医療機器の研究を可能にする。ブタ血管病理は、ヒトにおける使用が意図される抗狭窄または抗再狭窄の治療の研究のための狭窄動脈の発症を可能にする。
【0183】
24匹のヨークシャーブタにおいて、各脚(後脚)における大腿動脈を、両側性損傷および注射のために、血管形成の過剰拡張によって損傷させ、その後テムシロリムス、デキサメタゾン、両方の薬物の組合せ、または対照生理食塩水注射が続く。血管形成バルーンを損傷させた動脈の基準直径よりも40~60%大きいように選択し、頸動脈アクセスによって標的損傷部位へカテーテルによって送達させる。血管形成バルーンを標的損傷部位で30秒の各膨張の間3回10~20気圧に膨張させる。バルーンを除去した後、マイクロニードルカテーテル付きのMercator MedSystems Bullfrog(登録商標)Micro-Infusionデバイスを使用することで、テムシロリムス、デキサメタゾン、両方の薬物の組合せ、または対照生理食塩水のいずれかを、注射によって各標的損傷部位の中央の損傷動脈の周りの外膜および血管周囲組織中に送達する。注射を蛍光透視法下で投与し、それによって検証する。動物を手技の前、最中および後にモニタリングしたところ、全ての動物が屠殺まで有害な出来事なく生存したことが確認される。
【0184】
テムシロリムス調製。25mg/mLのTorisel(登録商標)(テムシロリムス)を供給された希釈液で10mg/mlに希釈し、0.9%塩化ナトリウム溶液にて1.0mg/mLにさらに希釈する。次いで、1.0mg/mLテムシロリムスを、4部のテムシロリムスに対して2部の造影媒体IsoVUE370および4部の0.9%塩化ナトリウム溶液の比率で希釈して、テムシロリムスの最終濃度を400μg/mlにする。このテムシロリムス調製物を引き続いてテムシロリムス処置群ブタに投与する。同様に、0.9%塩化ナトリウム溶液を造影媒体Isovue-370と4:1比で混合することによって、対照溶液を調製する。この対照溶液を対照群ブタに投与する。
【0185】
デキサメタゾンの調製。10mg/mLのデキサメタゾン溶液を、0.9%塩化ナトリウム溶液で5mg/mLに希釈する。次いで、5mg/mLデキサメタゾンを、造影媒体Isovue-370と4:1の比で混合して、デキサメタゾンの最終濃度を4mg/mLにする。このデキサメタゾン調製物を、引き続いてデキサメタゾン処置群のブタに投与する。
【0186】
テムシロリムス/デキサメタゾン組合せの調製。1.0mg/mLテムシロリムス溶液および10mg/mLデキサメタゾン溶液を、造影媒体Isovue-370と2:2:1の比で混合して、テムシロリムスの最終濃度を0.4mg/mLにし、デキサメタゾンの最終濃度を4.0mg/mLにする。このテムシロリムス/デキサメタゾン調製物を引き続いてテムシロリムス/デキサメタゾン処置群ブタに投与する。
【0187】
テムシロリムス処置群。6匹のブタが、1匹の動物当たり2つの用量の合計で、各3cm損傷大腿動脈区域の周りの組織におけるテムシロリムスの単回用量(400μg/mLのテムシロリムス1.5mL)の投与を受ける。各場合において、全てのテムシロリムス処置動物が、大腿動脈外膜中への血管周囲注入を受けている。2匹のブタを手技後3日、7日および28日の各時点で屠殺し、各ブタを組織病理、薬物動態および安全性評価について分析する。
【0188】
デキサメタゾン処置群。6匹のブタが、1匹の動物当たり2つの用量の合計で、各損傷大腿動脈の周りの組織におけるデキサメタゾンの単回用量(4.0mg/mLデキサメタゾン1.5mL)の投与を受ける。各場合において、全てのデキサメタゾン処置動物が、大腿動脈外膜中への血管周囲注入を受けている。2匹のブタを手技後3日、7日および28日の各時点で屠殺し、各ブタを組織病理、薬物動態および安全性評価について分析する。
【0189】
テムシロリムス/デキサメタゾン併用処置群。6匹のブタが、1匹の動物当たり2つの用量の合計で、各損傷大腿動脈の周りの組織におけるテムシロリムス/デキサメタゾン組成物の単回用量(400μg/mLのテムシロリムス/4.0mg/mLデキサメタゾン1.5ml)の投与を受ける。各場合において、全てのテムシロリムス処置動物が、大腿動脈外膜中への血管周囲注入を受けている。2匹のブタを手技後3日、7日および28日の各時点で屠殺し、各ブタを組織病理、薬物動態および安全性評価について分析する。
【0190】
対照群。6匹のブタを対照動物とする。各ブタの大腿動脈に2箇所の損傷部位を設け、6匹の損傷箇所は合計12である。各損傷部位は、造影媒体(Isovue-370)で4:1の比率で希釈された1.5mlの0.9%塩化ナトリウム(生理食塩水)を受ける。2匹のブタを手技後3日、7日および28日の各時点で屠殺し、各ブタを組織病理、薬物動態および安全性評価について分析する。
【0191】
全ての処置群および対照群の動物は、大腿動脈の外膜および血管周囲組織に直接投与されたそれぞれの注射を首尾よく受けるであろう。2つの対照部位を除く全ての注射部位は、注射による標的部位の全体的または部分的な外周および長手方向の被覆を有するであろう。
【0192】
安全性評価。生存持続期間中かまたは死後組織の分析によるかのいずれかで、臨床的観察および臨床的病理によって局所的および全身的毒性を査定する。
【0193】
アウトカム。処置群および対照群についてのKi-67発現、BrdU発現、組織病理、薬物動態、および安全性評価によって測定した細胞の増殖を比較して、ブタモデルにおける再狭窄に及ぼす併用療法の影響を確認するであろう。
【0194】
実施例8:継続併用療法を用いた大腿血管損傷のブタモデル
実施例7の一般的方法に従うが、研究者が求める両方の薬物の逐次処置効果の研究を行えるように修正を加えている。テムシロリムス/デキサメタゾン併用処置群を除去し、処置の24時間後にテムシロリムス群にデキサメタゾンを注射し、処置の24時間後にデキサメタゾン群にテムシロリムスを注射する。アウトカムを類似の様式で評価し、逐次処置の効果を確認する。
【0195】
実施例9:パクリタキセルを用いた大腿血管損傷のブタモデル
実施例7の一般的方法に従うが、本明細書中に記載の投薬量でテムシロリムスをパクリタキセルに置換する修正を加えている。アウトカムを類似の様式で評価する。
【0196】
実施例10:逐次パクリタキセル併用療法を用いた大腿血管損傷のブタモデル
実施例8の一般的方法に従うが、本明細書中に記載の投薬量でテムシロリムスをパクリタキセルに置換する修正を加えている。アウトカムを類似の様式で評価し、逐次処置の効果を確認する。
【0197】
実施例11:in-vitro細胞傷害性研究
ある範囲の薬物または薬物の組合せがin vitroでPDGF刺激された大動脈平滑筋細胞および大動脈内皮細胞の細胞傷害性を誘導する能力を査定するための研究を行った。培養ヒト大動脈VSMC(4×10
5細胞/mL)を、96ウェルプレート中の完全DMEM中で成長させ、10ng/mLのPDGF(Peprotech)で刺激した。ある濃度範囲の薬物(SIR、シロリムス;TEM、テムシロリムス;PAC、パクリタキセル;DEX、デキサメタゾン)およびビヒクル対照または細胞傷害性対照(ACT D、アクチノマイシンD)をスクリーニングした(
図20)。成長因子PDGFによって媒介されるEC刺激およびVSMC刺激のためのプロトコールを利用して、細胞を、0、1、10、100nM、1、10、100μMの濃度範囲の薬物中で12時間インキュベートした後、細胞活性化および細胞傷害性を査定した。回収前に、DNAを組み込むために、BrdUを各ウェルに6時間添加した。マイクロタイタープレートリーダー(Tecan)を使用して吸光度を読み取った。データは、平均の吸光度の読み取りを示す。エラーバーは、反復の標準偏差を示す。細胞活性化を、代謝活性および細胞の増殖によってモニタリングした。MTTアッセイを使用して代謝活性を測定して酵素依存性代謝産生をモニタリングし、一方で、5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)ELISAを使用して増殖を測定して、DNA合成をモニタリングした。
【0198】
十分な栄養素および成長因子(PDGFなど)の存在下で、PDGF受容体(VSMCおよびECなど)を発現する細胞は、成長および増殖を支持するためにその細胞代謝を上方制御する。10ng/mL PDGFで刺激したVSMCは、培地対照および細胞傷害性対照(100ng/mLの転写阻害剤アクチノマイシンD)と比較して、代謝産物の蓄積が増加した。ビヒクル対照(生理食塩水中5%DMSO(v/v))は、代謝活性を妨害しなかった。より高い濃度のテムシロリムス、シロリムス、およびパクリタキセルは、MTTアッセイにおいて阻害活性を有していた。PDGFの存在下での細胞の増殖は、ビヒクル対照と比較してBrdU組み込みの用量依存性阻害が示され、アクチノマイシンDの阻害度に達するテムシロリムス、シロリムス、およびパクリタキセルの濃度を同定した。
【0199】
実施例12:テムシロリムスのブタ研究
概要。第1の研究の目的は、Mercator MedSystems Bullfrog(登録商標)Micro-Infusionデバイスを介して大腿動脈の外膜および血管周囲組織に直接投与したテムシロリムスの薬物動態学プロフィールを査定することであった。特定の組織病理および組織形態計測のエンドポイントを使用して、テムシロリムス治療の有効性を判定した。
【0200】
デザイン。
【0201】
研究デザインは合計で十一(11)匹の動物を含んでいた;8匹に血管形成の過剰拡張を受けさせた後、生存中に1時間(n=2)、3日間(n=2)、7日間(n=2)、および28日間(n=2)にわたって両側浅大腿動脈に単回用量の被験物質を投与し、対照とした3匹のさらなる動物に、血管形成の過剰拡張を受けさせた後、生理食塩水を注入し、3日間(n=1)、7日間(n=1)、および28日間(n=1)生存させた。全てのインターベンション手技のために頸動脈アクセスを利用した。各場合において、全てのテムシロリムス処置動物が、大腿動脈外膜中への血管周囲注入を受けた。詳細な組織病理および安全性評価のために、動物を1時間(n=2)、3日間(n=2)、7日間(n=2)、および28日間(n=2)まで生存させた。指定のエンドポイントまでの生存後、動物から採血し、次いで、安楽死させ、剖検を行った後、組織学的試験を行った。
【0202】
単回用量(1.5ml中357μg)の外膜送達させた治験薬(Torisel(登録商標))の前向き研究を行った。全ての用量には、分配追跡のための50%造影媒体を含んでいた。各ブタの大腿中央領域に、両側注射を受けさせた。1時間、3日目、7日目、および28日目に、各々2匹のブタ、合計で8匹のブタを屠殺した。以下の2つの期間にこれを行った:テムシロリムスおよびシロリムスの存在および濃度を確認するために使用され、3匹の動物、各1匹を1時間、3日間、および7日間で利用した第1の期間。第1の期間での薬物濃度を確認後に、残りの5匹(1時間、3日間、および7日間に各1匹、ならびに28日間に2匹)を含む第2の期間。3匹のブタを対照として使用し、これらのブタにおいて、処置部位に過剰拡張損傷を受けさせた後に、Mercator Bullfrog(登録商標)カテーテルを介して生理食塩水を注入し、3日目、7日目、または28日目(各時点でブタ1匹)に屠殺した。
【0203】
損傷モデルは、血管形成の過剰拡張40から60%、少なくとも10atm、各々30秒間で3回の膨張、および30秒間のフローであった。過剰拡張損傷後に直接外膜送達させた。各注入に続いて、5分、20分、1時間および次いで24時間で、ならびに屠殺時に、全血試料を採取した。循環するテムシロリムスおよびシロリムスの濃度について、全血試料を分析した。動脈に乳酸加リンゲル液(LRS)を灌流し、摘出し、5mm切片に連続切断し、テムシロリムスレベルおよびシロリムスレベルの両方の免疫組織学的解析のために1つおきの切片をホルマリンで固定し(灌流固定しない)、LC/MS/MS分析のために1つおきの切片を凍結した。組織病理および組織形態計測のエンドポイントを使用して、ラパマイシン治療の有効性を判定した。
【0204】
結果。全動物が首尾よく浅大腿動脈に過剰拡張損傷を受けた後、被験物質または対照を投与した。試験群および対照群の両方の全動物は、いかなる合併症もなくMercator MedSystems Bullfrog(登録商標)Micro-Infusionデバイスによって被験物質または対象物質が首尾よく投与され、指定のエンドポイントまで生存した。生存期間は、いかなる被験物質/デバイスや手技に関連する事象も受けていなかった。混合物中のテムシロリムス濃度(50%テムシロリムスおよび50%Isovue-370から構成される)は1.5mL当たり357μg(238μg/mL)であり、これは、処置動物の投与濃度を示す。全処置動物の両方の大腿動脈に投与したので、各処置動物に投与された総用量は714μgであった。投与前の全てのブタにおける平均全血ベースラインテムシロリムスレベルは、定量限度(シロリムスについては0.200ng/mlおよびテムシロリムスについては0.500ng/ml)未満であった。投与後、平均テムシロリムスレベルは、最初の注射から1時間後に最高になり(32.1±11.0ng/mL)、24時間以内に2.4±1.0ng/mLに減少した。濃度は、3日目までほとんど検出不可能なレベルまで減少し続け、7日目になると、シロリムスおよびテムシロリムスについて分析した全ての血液は、定量限度未満であることが認められた。
【0205】
同様の傾向が局所性血管組織中のシロリムス濃度において観察されたが、テムシロリムスの存在はいっそう持続的であり、投薬後最大28日まで組織中で測定された。生存持続期間にわたる臨床的病理により、血液学の試験デバイス/薬物に関連する影響はなかったことが明らかとなった。臨床化学で認められた変化は、生物学的および/または手技に関連する変動の予想範囲内とみなされた。処置血管に対する局所毒性の証拠はなく、Mercator MedSystems Micro-Infusionデバイスを用いたTorisel(登録商標)注射の際の局所血管刺激の証拠もなかった。Mercator MedSystems Bullfrog(登録商標)Micro-Infusionデバイスを用いたTorisel(登録商標)の全ての注射は、このモデルにおいて安全なようであった。注射手技による壁在性の損傷は生じていなかったが、微視的には検出可能かもしれない。0日、3日および7日で、過剰拡張の血管形成手技に起因し得る構造損傷がなかったか、または副次的構造損傷があった。中膜の単一細胞の壊死および/または中膜の低細胞充実の形態での圧縮性の損傷の証拠がいくつか認められた。血栓症または狭窄症の証拠はなかった。28日目に、2つの処置血管が、可視性のバルーン過剰拡張損傷を示し、これは、最適に二次的に治癒した。壁性炎症は、全ての時点で存在しないか、非常に小さく、前述の壁在性の圧縮性損傷または過剰拡張損傷がわずかであったことに関連していた。
【0206】
処置血管は、早くも7日目に完全にまたはほぼ完全に治癒され、一般に正常壁を示し、病理的意義がないと考えられる最小から軽度の血管周囲または外膜の線維症および低重症の非特定および局在化の壁性炎症を時折呈する。完全なまたは完全に近い再内皮化があり、新生内膜形成がないかまたは最小から軽度のおよび非狭窄性の新生内膜形成があった。Ki67染色は、7日目の対照血管壁のピークにおいて細胞の増殖を示した。Ki67陽性核の定量解析により、3日目、7日目、および28日目に平均増殖値の処置に関連する減少が示された。減少は、血管長に沿って実質的であり、一貫していた。平滑筋アクチン(SMA)の染色により、3日目に外膜中のSMA陽性細胞が示され、7日目および28日目にわずかに増加し、これは主に筋線維芽細胞に関連し、より低い程度で血管新生に関連していた。この変動は、血管損傷に対する外膜治癒反応を反映していた。
【0207】
結論。Mercator MedSystems Bullfrog(登録商標)Micro-Infusionデバイスを介したテムシロリムス投与後、全血中の平均リン酸テムシロリムスナトリウムレベルは、投与1時間後に最高になり、投与24時間後に減少した。投与3日後までに、全血テムシロリムス濃度は、ほとんど検出不可能なレベルまで低下した。投与7日後および28日後、全血テムシロリムスレベルは、定量限度未満であった。研究28日目の剖検の時点で、処置したブタにおける局所血管組織中のテムシロリムスの存在レベルは検出可能なままであった。
【0208】
微量注入カテーテル(Mercator MedSystems)を用いて末梢大腿動脈の外膜中にTorisel(登録商標)または対照のいずれかを投与し、処置0日後(処置1時間後)、3日後、7日後、および28日後に安楽死させた十一(11)匹のブタ由来の組織の評価により、処置血管の有害または毒物学的意義のある変化は認められなかった。手技による損傷は認められなかったか、最小から軽度で認められ、これは、研究終了時(28日目)に治癒し、処置血管の開存性または治癒に対する有害な帰結は生じなかった。細胞増殖が3日目に血管壁および外膜において増加し、7日目にピークになり、その後わずかに減少した。特に、それぞれの対照と比較して、全ての期間(3日目、7日目および28日目)で、血管壁全体にわたってTorisel(登録商標)処置血管の増殖指数が中程度から著しく減少した。この減少は、処置に関連すると見なされた。
【0209】
本研究由来のデータは、Mercator MedSystems Bullfrog(登録商標)Micro-Infusionデバイスを介したブタの大腿動脈の外膜へのTorisel(登録商標)の直接注入が生存持続期間中の臨床的観察および臨床的病理または死後組織分析における組織病理によって査定した場合に局所または全身性の毒性の証拠がないことを示す。
【0210】
実施例13:テムシロリムスのブタ研究
概要。第2の前臨床研究の目的は、以下の2要素であった:(1)52mgまでのTorisel(登録商標)(テムシロリムス)(10mg/末梢動脈を4動脈および4mg/冠状動脈を3動脈)および5.2mgまでのTorisel(登録商標)(1mg/末梢動脈を4動脈および0.4mg/冠状動脈を3動脈)の安全性を生理食塩水と比較して確認する;全ての薬剤は20%造影媒体を含んでおり、冠状動脈および末梢動脈の周囲の血管周囲組織に送達させ、(2)バルーン過剰拡張による動脈狭窄症のブタモデルにおいてTorisel(登録商標)(テムシロリムス)を大腿動脈および冠状動脈の周囲の外膜および血管周囲組織に送達させた後に、組織試料および血液試料におけるテムシロリムスおよびシロリムスの薬物動態学プロフィールを判定する。
【0211】
方法。12匹の動物を、組織安全性ならびに血液および組織の薬物動態学プロフィールについて評価した。動物に、約20から30%過剰拡張させたバルーンの過剰拡大によって誘導される血管損傷を受けさせ、次いで、4mg/mL Torisel(登録商標)または生理食塩水プラセボ対照を、Bullfrog(登録商標)カテーテルで冠状動脈および大腿動脈の周囲の外膜および血管周囲組織中に送達させた。薬物動態学的解析のための血液試料を、5分後、30分後、1時間後、24時間後、72時間後、7日後、28日後、および屠殺時に採取した。90日目に動物を屠殺した。全ての処置した組織および周囲構造に肉眼的検査を行った。薬物動態学的解析のために各動物(注記:1匹の動物は冠状血管を採取しなかった)由来の1つの冠状動脈および1つの大腿動脈および周囲組織をひとまとめにして回収し、急速冷凍した。全ての他の回収した動脈組織に組織学的分析を行った。
【0212】
結果。
【0213】
エンドポイント1:動物の健康全般。全動物は、全般的に健康であり、研究期間中に体重が増加した。処置に関連する有害な臨床的所見は認められなかった。全ての理学的検査は、研究期間を通して正常であった。
【0214】
エンドポイント2:薬物に対する組織の応答。死亡や剖検での処置動脈において留意された異常は認められなかった。組織学的に、試験群で試験した任意の切片において、全ての動脈が開存性を示し、管腔の血栓や閉塞は存在しなかった。いずれかの処置部位において、試験群と対照群の間で処置血管の全ての等級パラメーターに組織学的に顕著な相違はなかった。対照群および試験群において、処置した冠状動脈および大腿動脈に薄い新生内膜形成、中膜SMCの喪失、および中膜線維症が認められ、これらは、この動物モデルにおけるバルーン過剰拡張損傷に原因する可能性が最も高かった。形態測定し、計算したパラメーターは、対照群と処置群との間で類似していた。低試験群および高試験群において処置に起因するいかなる臨床的に有意な所見も認められず、したがって、この動物モデルにおいて安全性に対する懸念は生じなかった。まとめると、これらの所見は、90日目の時点でのこれらの動物モデルにおいて使用した処置が安全であることが示唆される。
【0215】
エンドポイント3:全血中のテムシロリムスおよびシロリムスのレベル。全ての処置動物の血中レベルは、初期の時点でピークに到達し、7日目まで経時的に低下し、28日目および屠殺時にLLOQ未満となった。一般に、認められた濃度は、用量に比例していた。
【0216】
エンドポイント4:均一化した血管組織中のテムシロリムスおよびシロリムスのレベル。全動物の組織レベルは、全てLLOQ未満であった。
【0217】
結論。全動物は、関連する欠損症もなく90日目まで処置手技を生き抜いた。病理組織学的分析を用いて査定した場合に、生理食塩水と比較してTorisel(登録商標)の血管毒性は認められなかった。
【0218】
実施例14:テムシロリムスおよびデキサメタゾンの組合せのブタ研究
概要:本研究の目的は、バルーン過剰拡張による動脈狭窄症のブタモデルにおいて末梢脈管構造に過剰用量を到達させたときの、Torisel(登録商標)およびデキサメタゾンの安全性および薬物動態学プロフィール(pharmokinetic profile)を評価することであった。
【0219】
方法: 4匹の幼若ブタ対象を、組織の安全性および薬物動態学プロフィールを査定するために本研究で使用した。動物に、バルーンの過剰拡大(約20から30%過剰拡張)によって誘導される大腿動脈損傷を受けさせた。3匹の動物に、引き続いて、Bullfrog(登録商標)カテーテルを用いて、デキサメタゾン(6mg/mL)および造影媒体(20%)を有するTorisel(登録商標)(2mg/mL)で、末梢動脈の周囲の外膜および血管周囲組織中を処置した。第4の動物を、引き続いて、Bullfrog(登録商標)カテーテルを用いて、生理食塩水および造影媒体(20%)で、末梢動脈の周囲の外膜および血管周囲組織中を処置した。血液試料を、ベースライン、および移植20分後、1時間後、4時間後、24時間後、3日間後、7日間後、ならびに薬物動態学査定の終了直前に採取した。1匹の動物は、移植4日後の早期に死亡した。他の3匹の動物は、14日間生存した。14日目に採血し、動物を安楽死させ、剖検を行った。
【0220】
結果。
【0221】
エンドポイント1:動物の健康全般4匹中3匹の動物が研究期間にわたって生存し、研究期間を通して全般的に健康であった。第4の動物は死亡した。全ての生存動物は、研究期間にわたって肯定的な体重増加を示した。死亡した動物は、1日目で昏睡状態であった。4日目に動物が死亡するまで、昏睡状態が続いた。2日目に、分析のために血液試料を採取したが、確証的な結果は得られなかった。4日目に動物が死亡する前の3日目に発熱および頻拍が認められた。生前診断は行わなかった。臨床的病理における有意な所見は認められなかった。
【0222】
エンドポイント2:デバイスに対する組織の応答。試験動物および対照動物の両方は、血管壁の変化がなしから中程度に変化する。血管周囲および骨格筋の変化も、試験動物および対照動物の両方で、なしから中程度の範囲であった。試験した対照動物の組織において石灰化は認められなかった。しかし、石灰化は以前に4mg/mLテムシロリムスの投薬量を用いても認められなかったので、この用量での溶液中のエタノール濃度の高さに起因する可能性が高いと見なされる。
【0223】
エンドポイント3:血中テムシロリムスおよびデキサメタゾンレベル(pK査定)。全ての試験動物における血中テムシロリムスレベルは、初期の時点でピークに到達し、7日目まで経時的に低下し、屠殺時に定量下限(LLOQ)未満となった。血漿中デキサメタゾンレベルも初期の時点でピークに到達し、24時間の時点およびその後にLLOQ未満となった。14日目に、デキサメタゾン組織レベルは全てLLOQ未満であり、両方の試験動物において低レベルのテムシロリムスが認められた。
【0224】
エンドポイント4:均一化した血管組織中のテムシロリムスおよびデキサメタゾンのレベル。複数のテムシロリムスレベル(50.3ng/gおよび97.5ng/g、それぞれ、48.8nMおよび94.7nMに等しい)は、試験溶液で処置した2匹の動物について、期間終了時に血管組織中で認められた;対照動物の血管内にテムシロリムスは認められなかった。デキサメタゾンレベルは、全動物について、期間終了時に血管組織中にLLOQ(10.0ng/mLホモジネート、100ng/g組織、すなわち255nMに等しい)未満であった。
【0225】
実施例15:テムシロリムスおよびデキサメタゾンの組合せのウサギ研究
概要。バルーン過剰拡張による動脈狭窄症のワタナベ遺伝性高脂血症(WHHL)ウサギモデルの末梢脈管構造に組み合わせまたは単独で送達させたときのTorisel(登録商標)(Tem)およびデキサメタゾン(Dex)の組織への影響を評価するためにウサギ研究を行った。各動物の二つの(2)外腸骨動脈の各々において、バルーン血管形成および処置を行った。4匹の対象を、以下の3群に各々割り当てた:Torisel(登録商標)、デキサメタゾン、または組合せ。3匹の対象を、以下の2群に各々割り当てた:対照(ビヒクル送達)またはバルーンのみ。2匹のニュージーランドホワイト系ウサギを、1つの腸骨動脈におけるバルーンのみでの処置に割り当て、他の腸骨動脈ではいかなる処置も行わなかった。
【0226】
方法。20匹の動物を、被験物質および対照物質の血管周囲注射の組織への影響について評価した。2匹の動物が早期に死亡し、交換したので、22匹の動物に、本研究の手技を受けさせた。動物に、バルーンの過剰拡大(約20から30%過剰拡張)によって誘導される血管損傷を受けさせた。動物を、様々なバルーン損傷標的および被験物質および対照物質の種々の組合せを用いた6群に分けた。被験物質および対照物質を、Bullfrog(登録商標)カテーテルを使用して血管周囲組織に注射した。動物を回復させ、約28日間生存させた。約28日目に動物を屠殺し、肉眼的病理学試験を行い、組織病理分析のために組織を採取した。
【0227】
結果。
【0228】
エンドポイント1:動物の健康全般(瀕死)。この研究において、合計22匹の動物を利用した。2匹の動物は、死亡したか、早期に安楽死させた。これらの動物における死亡または安楽死の理由は、被験物質/対照物質に関連したのではなく、麻酔および外科的介入に起因する可能性が高かった。一部の例として食欲不振(inappetance)が認められたが、臨床的に有意な体重減少を経験した動物は認められなかった。多くのウサギに高血糖症および高脂血症が認められたが、これは、WHHLウサギの遺伝モデルから予想されるものと一致する。一連の研究を通して、他の有意な健康上の問題は同定されなかった。
【0229】
エンドポイント2:デバイスに対する組織の応答。併用療法(Tem+Dex)群は、テムシロリムス群、デキサメタゾン群、およびビヒクル群と比較して、新生内膜の厚さ(47.40±14.84um)および領域(0.19±0.06mm2)が低下した。血管平滑筋細胞生存度のマーカーとしての%HHF-35陽性内膜/中膜領域は、デキサメタゾン単独群またはビヒクル群と比較して、併用療法群またはテムシロリムス単独群で小さかった。内膜および中膜を含むBrdUおよびTUNEL陽性細胞数は、これらの群の間で統計的差異はなかった。
【0230】
22匹の動物中20匹が28日目まで生存し、20匹の動物のうちの1匹を、28日目に急性虚脱に起因して獣医師の指示にしたがって安楽死させた。動物の初期の死亡について、死亡は、被験物質/対照物質ではなく麻酔および外科的介入に関連していた。全ての他の動物は、動物モデルおよび実施した手技に基づいた通常の寿命で生存した。組織病理によっていかなる試料についても血管毒性は認められなかった。
【0231】
併用療法(Tem+Dex)群は、テムシロリムス群、デキサメタゾン群、およびビヒクル群と比較して、新生内膜の厚さ(47.40±14.84um)および領域(0.19±0.06mm2)が低下した。血管平滑筋細胞生存度のマーカーとしての%HHF-35陽性内膜/中膜領域は、デキサメタゾン単独群またはビヒクル群と比較して、併用療法群またはテムシロリムス単独群で小さかった。内膜および中膜を含むBrdUおよびTUNEL陽性細胞数は、これらの群の間で統計的差異はなかった。しかし、バルーンのみ群は、有意な新生内膜または狭窄症を示さず、したがって、治療はバルーンのみ群を超える特定の利点を示さなかった。バルーンのみ群はまた、他の群のいずれかと類似の増殖マーカーを示さず、このウサギ群において増殖性損傷の誘導の欠如または異なる病期が示唆された。
【0232】
結論。バルーン過剰拡張による動脈狭窄症のワタナベ遺伝性高脂血症(WHHL)ウサギモデルにおけるTorisel(登録商標)およびデキサメタゾンの末梢脈管構造への送達は、安全かつ有効であることが認められた。動物は、被験物質に関連する有意な欠損症を伴わずに約28日間の研究期間を生存した。種々の群の組織病理評価では、Toriselおよびデキサメタゾンで処置した動物は、Toriselのみ群、デキサメタゾンのみ群、およびビヒクル群と比較したときに、新生内膜の厚さおよび領域が低下した。
【0233】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明したが、こうした実施形態はほんの一例として提供されていることが当業者であれば明白であると予想される。ここで、多数の変化、変更および置き換えが本開示から逸脱することなく当業者に想起されると予想される。本開示を実践する際に、本明細書に記載される本開示の実施形態の様々な代替が用いられ得ることが理解されるものとする。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義すること、ならびにこれらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物がそれに包含されることが意図される。