(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】電気化学バイオセンサーを用いた検体検出のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220907BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G01N27/416 336B
G01N27/327 353R
G01N27/416 336H
G01N27/416 336J
G01N27/416 338
G01N27/416 336G
G01N27/416 336C
(21)【出願番号】P 2019572054
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 US2018040471
(87)【国際公開番号】W WO2019006413
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-02-26
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エム.オジャ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン フェルドマン
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-541441(JP,A)
【文献】国際公開第2015/020149(WO,A1)
【文献】特表平07-506674(JP,A)
【文献】特表2015-534483(JP,A)
【文献】KULYS, J. J et al.,Chronoampereometric stripping analysis following biocatalytic preconcentration,Analytical Chimica Acta,1982年,Vol.138,pp.19-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
A61B 5/145-5/1495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用電極を含むセンサーを利用して検体を感知する方法であって、
前記作用電極に検体特異的酵素及びレドックスメディエーターを提供し、
前記作用電極を前記検体に提供し、
前記検体を前記検体特異的酵素と所定期間反応させることにより、前記レドックスメディエーターに電荷を蓄積し、
前記所定期間後に前記作用電極を回路に接続し、
蓄積された電荷からの信号を測定することを含み、
前記レドックスメディエーターは、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(ピロール)、およびポリ(アセチレン)から選択される重合体と結合したオスミウム、ルテニウム、鉄、コバルト およびそれらの化合物または錯体から選択されるレドックス種を含
み、
前記の蓄積された電荷からの信号の測定が、前記信号を3.2ヘルツ(Hz)の周波数でフィルタリングすることを含む、方法。
【請求項2】
前記作用電極を検体に提供する前に、前記方法が更に、前記作用電極を前記回路に接続することを含むと共に、前記作用電極を前記検体に提供した後に、前記作用電極と前記回路との接続を切ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作用電極を前記検体に提供した後に、前記方法が更に、前記作用電極を前記回路に接続すること、電流測定電流を測定すること、その後前記作用電極と前記回路との接続を切って電荷の蓄積を開始することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記センサーが、酵素電気化学的バイオセンサーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記レドックスメディエーターが、固定化されたレドックスポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記検体が、コルチゾール、グルコース、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、アルコール、ピルビン酸、グルタミン酸、テオフィリン、及びクレアチニンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記検体特異的酵素が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性デヒドロゲナーゼ、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性オキシダーゼ、及びフラビンモノヌクレオチド(FMN)依存性オキシダーゼからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検体特異的酵素が、11β-ヒドロキシステロイド デヒドロゲナーゼ2型(11β-HSD-2)、グルコースオキシダーゼ、NAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、FAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、NAD-乳酸デヒドロゲナーゼ、NAD-アルコールデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、NAD-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、及びキサンチンオキシダーゼからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記検体の濃度が4.7ナノモル程度の低濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の蓄積された電荷からの信号の測定が、前記信号のピーク高さを測定すること、及び/又は、前記信号のピーク面積を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が更に、前記測定されたピーク高さを較正することにより、前記検体の濃度を提供することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が更に、前記測定されたピーク面積を較正することにより、前記検体の濃度を提供することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記の蓄積された電荷からの信号の測定が、前記信号を0.1~0.5ヘルツ(Hz)のサンプリングレートで記録するこ
とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記作用電極が、前記検体特異的酵素と前記レドックスメディエーターとを含む感知要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記感知要素が更に、カーボンナノチューブを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
検体を感知するためのシステムであって、
前記システムが、作用電極と、該作用電極上に配置された感知要素と、回路とを含み、
前記感知要素が、検体特異的酵素と、レドックスメディエーターとを含み、かつ前記検体を前記検体特異的酵素と所定期間反応させることにより、前記レドックスメディエーターに電荷を蓄積するように構成され、
前記感知要素が、前記検体特異的酵素及び前記レドックスメディエーターと反応する前記検体に由来する電荷を所定期間に亘り蓄積するように構成され、
前記回路が、前記所定期間後に前記作用電極と接続され、前記蓄積された電荷からの信号を測定するように構成されており、
前記レドックスメディエーターは、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(ピロール)、およびポリ(アセチレン)から選択される重合体と結合したオスミウム、ルテニウム、鉄、コバルト およびそれらの化合物または錯体から選択されるレドックス種を含
み、
前記の蓄積された電荷からの信号の測定が、前記信号を3.2ヘルツ(Hz)の周波数でフィルタリングすることを含む、システム。
【請求項17】
前記システムが更に、少なくとも前記感知要素を被覆する外膜を含む、請求項
16に記載のシステム。
【請求項18】
前記検体特異的酵素が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性デヒドロゲナーゼ、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性オキシダーゼ、及びフラビンモノヌクレオチド(FMN)依存性オキシダーゼからなる群より選択される、請求項
16に記載のシステム。
【請求項19】
前記検体特異的酵素が、11β-ヒドロキシステロイド デヒドロゲナーゼ2型(11β-HSD-2)、グルコースオキシダーゼ、NAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、FAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、NAD-乳酸デヒドロゲナーゼ、NAD-アルコールデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、NAD-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、及びキサンチンオキシダーゼからなる群より選択される、請求項
16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国特許出願第16/024,353号(2018年6月29日出願);米国特許仮出願第62/527,981号(2017年6月30日出願);米国特許仮出願第62/544,692号(2017年8月11日出願);及び米国特許仮出願第62/545,252号(2017年8月14日出願)に基づく優先権の利益を伴う。これらの出願の内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、国防脅威削減局により授与された契約番号HDTRA-1-16-C-0048の下で、政府の支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示の一部の態様は、電気化学的酵素バイオセンサーを用いた検体の感知に関する。例えば、本開示の一部の態様は、検体をバイオセンサー上に蓄積させることにより、低濃度の検体の検出を可能にする方法及び酵素バイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0004】
標的検体の生体認識要素となるトランスデューサーを酵素と組み合わせて用いる酵素バイオセンサーが開発され、利用されている。種々の異なる信号変換方法が用いられてきたが、最も頻繁に使用されているのは電気化学的信号である。電気化学バイオセンサーは、生物学的事象(検体検出等)を電気信号に直接変換できるため、複雑な機器を必要とせず、その結果、電気化学バイオセンサーはサイズ、費用、及び携帯性の点で望ましい特徴を有する。信号変換に用いられる電気化学的手法の中では、アンペロメトリー(amperometry)がよく使用される。アンペロメトリー測定は、センサーの作用電極を一定の電位(電圧)に維持しながら、センサーを流れる電流を測定する方式である。斯かるセンサーは、検体濃度に依存した電流が流れるように設計される。
【0005】
アンペロメトリーを用いた酵素バイオセンサーの例としては、連続グルコースセンサーが挙げられる。これはウェアラブルなインビボの(in vivo)デバイスで、ユーザーが血中グルコース濃度を頻繁に測定できるように設計されている。これらのデバイスは、グルコース検出要素として、作用電極に固定されたグルコースオキシダーゼ(GOx)等のグルコースオキシドレダクターゼ酵素を利用する。電子はまずグルコースから酵素的酸化を介して酵素に渡され、次に酸素(O2)又はオスミウム(Os)含有レドックスポリマー等のレドックスメディエーターを介して作用電極に渡される。アンペロメトリーは、比較的高い生理的濃度(5ミリモル(mM)以上)で存在するグルコース等の検体の測定には有効性が証明されているものの、低濃度で存在する検体の測定には適さない場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の態様は、検体を酵素バイオセンサーに蓄積させることにより、低濃度(例えば5mM以下、1ナノモル(nM)から5mM、又は、4.7nMから5mM)の検体を検出する方法に関する。
【0007】
本開示の一部の態様によれば、作用電極を有するセンサーを利用して検体を感知する方法であって、作用電極に検体特異的酵素及びレドックスメディエーターを提供し、作用電極を検体に提供し、検体特異的酵素及びレドックスメディエーターと反応する検体に由来する電荷を所定期間に亘り蓄積し、所定期間後に作用電極を回路に接続し、及び蓄積された電荷からの信号を測定することを含む方法が提供される。
【0008】
本開示の一部の態様によれば、前記方法は、作用電極を検体に提供する前に、作用電極を回路に接続することを含むと共に、作用電極を検体に提供する前に、作用電極と回路との接続を切ることを含む。
【0009】
本開示の一部の態様によれば、前記方法は、作用電極を検体に提供する前に、作用電極が回路に接続されると共に、作用電極を検体に提供する前に、作用電極と回路との接続を切ることを含む。
【0010】
本開示の一部の態様によれば、前記センサーは、酵素電気化学的バイオセンサーである。
【0011】
本開示の一部の態様によれば、前記レドックスメディエーターは、固定化されたレドックスポリマーである。
【0012】
本開示の一部の態様によれば、前記固定化されたレドックスポリマーは、レドックス種及びポリマーを含み、前記レドックス種は、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、又はコバルト(Co)含有ポリマーから選択され、前記ポリマーは、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(ピロール)、又はポリ(アセチレン)から選択される。
【0013】
本開示の一部の態様によれば、前記固定化されたレドックスポリマーは、Os含有ポリ(ビニルピリジン)である。
【0014】
本開示の一部の態様によれば、前記検体は、コルチゾール、グルコース、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、アルコール、ピルビン酸、グルタミン酸、テオフィリン、又はクレアチニンから選択される。
【0015】
本開示の一部の態様によれば、前記検体特異的酵素は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性デヒドロゲナーゼ、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性オキシダーゼ、及び/又は、フラビンモノヌクレオチド(FMN)依存性オキシダーゼである。
【0016】
本開示の一部の態様によれば、前記検体特異的酵素は、11β-ヒドロキシステロイド デヒドロゲナーゼ2型(11β-HSD-2)、グルコースオキシダーゼ、NAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、FAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、NAD-乳酸デヒドロゲナーゼ、NAD-アルコールデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、NAD-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、又はキサンチンオキシダーゼから選択される。
【0017】
本開示の一部の態様によれば、前記の電荷の蓄積は、電子の蓄積を含む。
【0018】
本開示の一部の態様によれば、前記センサーは対象の皮下に配置される。
【0019】
本開示の一部の態様によれば、前記検体は4.7ナノモル(nM)という低濃度である。
【0020】
本開示の一部の態様によれば、前記所定期間は、60秒から30分の範囲である。一部の態様によれば、前記所定期間は、120秒から30分の範囲である。一部の態様によれば、前記所定期間は、120秒から10分の範囲である。
【0021】
本開示の一部の態様によれば、前記センサーは外膜を含む。一部の態様によれば、前記外膜は流量制限膜である。一部の態様によれば、前記外膜は検体透過性膜である。
【0022】
本開示の一部の態様によれば、前記の蓄積された電荷からの信号の測定は、前記信号のピーク高さを測定すること、及び/又は、前記信号のピーク面積を測定することを含む。
【0023】
一部の態様によれば、前記方法は更に、前記測定されたピーク高さを較正することにより、前記検体の濃度を提供することを含む。
【0024】
一部の態様によれば、前記方法は更に、前記測定されたピーク面積を較正することにより、前記検体の濃度を提供することを含む。
【0025】
一部の態様によれば、前記の蓄積された電荷からの信号の測定は、前記信号を0.1~0.5ヘルツ(Hz)のサンプリングレートで記録すること、及び/又は、前記信号を0.032~3.2ヘルツ(Hz)の周波数でフィルタリングすることを含む。
【0026】
本開示の一部の態様によれば、前記作用電極は、前記検体特異的酵素と前記レドックスメディエーターとを含む感知要素を含む。一部の態様によれば、前記感知要素は、カーボンナノチューブを含む。
【0027】
一部の態様によれば、検体特異的酵素及びレドックスメディエーターを含む作用電極を含むセンサーを利用して検体を感知する方法であって、作用電極を検体に提供し、検体特異的酵素及びレドックスメディエーターと反応する検体に由来する電荷を蓄積し、前記信号のピーク高さを測定し、及び/又は、前記信号のピーク面積を測定することにより蓄積された電荷からの信号を測定することを含む方法を提供する。
【0028】
本開示の一部の態様によれば、作用電極と、感知要素と、回路とを含む、検体を感知するためのシステムであって、前記感知要素は検体特異的酵素及びレドックスメディエーターを含み、前記感知要素は、前記作用電極上に配置され、前記検体特異的酵素及び前記レドックスメディエーターと反応する前記検体に由来する電荷を所定期間に亘り蓄積するように構成され、前記回路は、所定期間後に前記作用電極に接続され、前記前記蓄積された電荷からの信号を測定するように構成される、システムを提供する。一部の態様によれば、本システムの感知要素は、カーボンナノチューブを含む。一部の態様によれば、本システムは、少なくとも前記感知要素を被覆する外膜を含む。一部の態様によれば、本システムの検体特異的酵素は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性デヒドロゲナーゼ、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性オキシダーゼ、又はフラビンモノヌクレオチド(FMN)依存性オキシダーゼから選択される。例えば、一部の態様によれば、本システムの検体特異的酵素は、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型(11β-HSD-2)、グルコースオキシダーゼ、NAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、FAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、NAD-乳酸デヒドロゲナーゼ、NAD-アルコールデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、NAD-グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、及びキサンチンオキシダーゼから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による行為10、15、20、25、及び30を含む蓄積モードの感知方法を説明する流れ図である。
【0030】
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による蓄積モードの感知に用いられる電極の設定を示す概略図である。左のこまに示すように回路が接続されている場合は、作用電極は定常状態条件で検体の酸化還元反応を駆動するのに十分な電位(電圧)にあり、右のこまに示すように回路が切断されると、作用電極は回路から電気的に切断されて、作用電極が回路と再接続されるまで検体からの電子をレドックスポリマーに蓄えることができ、蓄えられた電荷を測定することができる。
【0031】
【
図3A】
図3Aは、本開示の実施形態による蓄積モードでの感知における時間信号に対する予測電流及び特定の定量パラメータ(図示のように回路が切断された時の蓄積時間、ピーク面積、及びピーク高さ)を示す。
【0032】
【
図3B】
図3Bは、本開示の実施形態による、オスミウムレドックスポリマー(Os
3
+)で共固定されたオキシダーゼ酵素(AO
x)を用いた易酸化性検体(検体A)の蓄積モードの感知時(図示のように「回路を切断」として回路が示されている)に起こる酸化還元反応の概略を示す。
【0033】
【
図3C】
図3Cは、一例としてのグルコースセンサー(斜線で示すように+40mVで)を用いて5つの異なる蓄積時間で測定された、本開示の実施形態による2μMのグルコースの蓄積モードの感知(白色で表示)で得られた時間に対する電流の波形を示す。
【0034】
【
図3D】
図3Dは、本開示の実施形態による、
図3Cに示す電流測定と蓄積時間に対するピーク高さ又はピーク面積により測定された蓄積モード信号の較正曲線を示す。
【0035】
【
図4A】
図4Aは、本開示の実施形態による、各検出での60秒の蓄積時間(回路が白色で示されている時)で一例としてのグルコースセンサー(斜線で示すように+40mVで)による蓄積モードでの感知を用いた較正実験についての代表的な時間に対する電流の波形を示す。
【0036】
【
図4B】
図4Bは、電流測定と、
図4Aに示す本開示の実施形態による感知実験で測定された蓄積モード信号から得た較正曲線の比較を示す。
【0037】
【
図5】
図5は、示されているように、本開示の実施形態によるグルコース濃度が0、50、100、200、及び500μMで1分(菱形)、2分(三角形)、5分(四角形)、及び10分(丸)の蓄積時間で行った電流測定と蓄積モードでの感知(ピーク高さ及びピーク面積)についての較正曲線を示す。各較正曲線は、4個のセンサーの平均応答を示している。
【0038】
【
図6A】
図6Aは、本開示の実施形態による、図示のとおりの様々なナノモル(nM)濃度のグルコースを感知する開回路電位法を用いて得られた模範的なグルコースセンサーの時間信号に対する電位のグラフを示す。
【0039】
【
図6B】
図6Bは、本開示の実施形態による
図6Aのグラフのデータの較正曲線(グルコース濃度(nM)に対する傾き)を示す。
【0040】
【
図6C】
図6Cは、本開示の実施形態による、図示のような様々なnM濃度のグルコースを検出するための開回路電位法を用いて得られた模範的なグルコースセンサーの時間信号に対する電位のグラフを示す。
【0041】
【
図6D】
図6Dは、本開示の実施形態による
図6Cのグラフのデータの較正曲線(グルコース濃度(nM))に対する傾きを示す。
【0042】
【
図6E】
図6Eは、本開示の実施形態による開回路電位法を用いたグルコースの生体外検出から得た、模範的なグルコースセンサー(黒丸のデータ点、n=8)と対照センサー(白丸のデータ点、n=4)の複合較正曲線を示す。
【0043】
【
図6F】
図6Fは、本開示の実施形態による0~200nMのグルコースから得た
図6Eの較正曲線の拡大図を示す。
【0044】
【
図6G】
図6Gは、本開示の実施形態による、図示のような様々なnM濃度のグルコースを感知する模範的なグルコースセンサーを作用電極として、対照センサー(レドックスポリマーを含むがグルコースオキシダーゼは含まない)を基準電極として用いた開回路電位法を用いて得られた模範的なグルコースセンサーの電位対時間信号のグラフを示す。
【0045】
【
図6H】
図6Hは、本開示の実施形態による
図6Gのグラフのデータの較正曲線(グルコース濃度(nM))に対する傾きを示す。
【0046】
【
図7】
図7は、本開示の実施形態による、異なるフィルタリング周波数すなわち3.2Hz(黒色の実線で示す)と0.032Hz(破線で示す)での蓄積モード信号の形状を比較したものを示す。
【0047】
【
図8A】
図8Aは、本開示の実施形態による堆積させたグルコース感知試薬でカーボンナノチューブ(CNT)含むものの顕微鏡写真(右のこま)とCNTを含まないものの顕微鏡写真(左のこま)を示す。
【0048】
【
図8B】
図8Bは、本開示の実施形態による、異なるフィルタリング周波数(丸印の0.032Hzと三角印の3.2Hz)とCNTを含む感知試薬と含まない感知試薬を用いた電流測定及び蓄積モード検出(ピーク高さ及びピーク面積)の較正曲線を示す。
【0049】
【
図9A】
図9Aは、本開示の実施形態による、0~200nMのグルコース濃度を用いた較正実験時に代表的なグルコースセンサーで得られた蓄積モード信号を示す。この実験では各検出で蓄積時間を30分とし、信号を3.2Hzでフィルターして、CNTを感知試薬に加えた。
【0050】
【
図9B】
図9Bは、本開示の実施形態による、
図8Aに示される感知実験で測定された電流測定及び蓄積モード信号から得られた、対応する一次回帰較正曲線を示す。各信号は8個のセンサーの背景を減じた平均であり、誤差棒は標準偏差を示す。プロットの下の行は0~50nMのグルコース濃度を示す拡大図である。
【0051】
【
図10A】
図10Aは、本開示の実施形態による、背景条件([グルコース]=0)下、大気中(太線)及び酸素でパージした緩衝液(細線)中での代表的なグルコースセンサーからの蓄積モード信号を示す。
【0052】
【
図10B】
図10Bは、本開示の実施形態による、背景電流測定と
図10Aに示される実験からの蓄積モード信号の概略を示す。ここで、信号は4個のセンサーの平均であり、酸素でパージした場合のデータは黒丸で示され、大気中でのデータは白丸で示されている。
【0053】
【
図11】
図11は、本開示の実施形態による、0~200μMのグルコース濃度で行った感知実験中の電流測定と蓄積モードでの感知(ピーク高さ及びピーク面積)について得た較正曲線を示す。ここで各直線は0~200nMの濃度で得られた一次最良適合線をそれより高濃度に外挿したもので、各信号は8個のセンサーの平均である。
【0054】
【
図12】
図12は本開示の実施形態による検体センサーの概略図を示す。
【0055】
【
図13】
図13は、本開示の1つ以上の実施形態に適合する検体センサーの一部を示す断面図である。
【0056】
【
図14A】
図14Aは、本開示の1つ以上の実施形態に適合する埋め込み可能な検体センサーの平面図を示す。
【0057】
【
図14B】
図14Bは、本開示の1つ以上の実施形態に適合する膜を有する任意の検体センサーの一部を示す断面図である。
【0058】
【
図14C】
図14Cは、本開示の実施形態による外膜に覆われた感知層、作用電極、及び基板の拡大図を示す。
【0059】
【
図14D】
図14Dは、本開示の実施形態による、作用電極での検体の検体特異的酵素とレドックスメディエーターとの酸化還元反応を示す概略図である。
【0060】
【
図15】
図15は、本開示の実施形態による検体監視システムの一実施形態のブロック図である。
【0061】
【
図16】
図16は、本開示の実施形態による
図15の検体監視システムの読み取り装置の一実施形態のブロック図である。
【0062】
【
図17】
図17は、本開示の実施形態による
図15の検体監視システムのセンサー制御装置の一実施形態のブロック図である。
【発明の詳細な説明】
【0063】
本開示の実施形態は、生体外及び生体内で低ナノモル濃度の検体を測定する電気化学センサーを用いる電気化学測定方法を提供する。本開示の実施形態は、低ナノモル濃度の検体を測定するように改良された酵素バイオセンサー等の電気化学センサーを含む。
【0064】
数値範囲が提供される場合、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限の間にある各値もまた具体的に開示されるものとする。明示された範囲内の任意の明示された値又はその間の値、及びその明示された範囲内の任意の他の明示された値又は間の値の間に含まれるそれぞれのより小さい範囲は、本開示に包含される。これらより範囲より狭い範囲の上限及び下限は独立して、上記範囲に含まれるかそこから除外される。上限、下限の一方又は両方が上記のより狭い範囲に含まれない、或いは両方が含まれるような各範囲もまた本開示に包含され、明示された範囲内で任意の具体的に除外された限界となる。明示された範囲は上記上限、下限の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる上限、下限の一方又は両方を除外する範囲もまた本開示に含まれる。
【0065】
本明細書で用いられるように、用語「実質的に」、「約」、及び類似の用語は、程度の用語ではなく近似の用語として用いられ、当業者には自明であるような測定値又は計算値の内在的な逸脱を説明することを意図している。
【0066】
自明であるように、本明細書で開示される記載において黙示的或いは明示的に断りがなければ、単数形の単語は複数形を包含し、複数形の単語は単数形を包含する。単なる例示として、黙示的或いは明示的に断りがなければ、「an」又は「the」を伴う「検体」を述べる場合、単一の検体に加えて、2つ以上の異なる検体の組み合わせ及び/又は混合物をも包含する。また、「an」又は「the」を伴う「濃度値」を述べる場合、単一の濃度値に加えて、2つ以上の濃度値をも包含する。更に、自明であるように、黙示的或いは明示的に断りがなければ、本明細書で記載する任意の所与の成分について、一般に、その成分について挙げられた可能な候補又は選択肢の何れかを個々に用いても互いに組み合わせで用いてもよい。また、自明であるように、黙示的或いは明示的に断りがなければ、そのような候補又は選択肢の任意のリストは単なる例示であり、限定ではない。
【0067】
本明細書で用いられるように、用語「測定する」、「測定」、及び「測定された」は、用語「決定する」、「決定」、「決定された」、「計算する」、「計算」、及び「計算された」のそれぞれ1つの意味を包含していてもよい。
【0068】
本明細書で用いられるように、「電気化学センサー」は、センサー表面での電気化学酸化還元反応を介して試料中の検体の存在を検出し、かつ/又はそのレベルを測定するようになっている装置である。これらの反応は、試料中の検体の量、濃度、又はレベルに相関していてもよい電気信号に変換される。
【0069】
本明細書で用いられるように、「作用電極」は、検体(又は、そのレベルが検体のレベルに依存する第二の化合物)が電子移動剤の作用により、或いは作用無しで電気酸化又は電気還元される電極である。
【0070】
本明細書で用いられるように、「対向電極」は、作用電極と対になる電極を指す。対向電極には、作用電極を通る電流と大きさが等しく、符号が反対の電流が流れる。本開示の実施形態の文脈において、特に断りがなければ、用語「対向電極」は、a)対向電極とb)基準電極としても機能する対向電極(すなわち、対向電極/基準電極)の両方を含む。
【0071】
本明細書で用いられるように、特に断りがなければ、「基準電極」は、a)基準電極とb)対向電極としても機能する基準電極(すなわち、対向電極/基準電極)の両方を含む。
【0072】
本明細書で用いられるように、「電解」は、電極で、直接或いは1種以上の電子移動剤を介して化合物の電気酸化又は電気還元をすることである。
【0073】
本明細書で用いられるように、例えば、成分がセンサーの構成要素に捕捉され、或いは共有結合、イオン結合、又は配位結合しており、かつ/又は移動を妨げる重合体、ゾルゲルマトリックス、又は膜に捕捉されている場合、成分はセンサー内に「固定化」されている。
【0074】
本明細書で用いられるように、「電子移動剤」は、検体と作用電極の間で直接、又は他の電子移動剤と共同して電子を担持する化合物である。電子移動剤の一例はレドックスメディエーターである。
【0075】
本明細書で用いられるように、「レドックスメディエーター」は、検体、検体を還元又は酸化する酵素、及び電極の間で直接、或いは1種以上のさらなる電子移動剤を介して電子を担持する電子移動剤である。重合体主鎖を含むレドックスメディエーターを「レドックスポリマー」と言う場合もある。
【0076】
本明細書で用いられるように、用語「前駆体重合体」は、様々な変性剤基が付加されて変性重合体を形成する前の開始重合体を指す。
【0077】
本明細書で用いられるように、「感知層」は、検体の電解を容易にする構成要素を含むセンサーの成分である。感知層は、電子移動剤(例えば、レドックスメディエーター又はレドックスポリマー)、検体の反応を触媒して作用電極での応答を生成する触媒(例えば、検体特異的酵素)、又は電子移動剤と触媒の両方等の構成要素を含んでいてもよい。本開示の実施形態によっては、センサーは、作用電極付近又はその表面で浸出しないように設けられた感知層を含む。
【0078】
本明細書で用いられるように、「感知要素」は感知層と共に設けられた検体特異的酵素の塗布又は領域である。従って、感知要素は検体と相互作用することができる。感知層は、作用電極表面に設けられた検体検出領域を形成する2種以上の感知要素を有していてもよい。実施形態によっては、感知要素は、検体特異的酵素と電子移動剤(例えば、レドックスメディエーター)を含む。実施形態によっては、感知要素は検体特異的酵素、電子移動剤、及び架橋剤を含む。
【0079】
本明細書で用いられるように、「非浸出性」又は「非放出性」化合物、或いは「浸出しないように設けられた」化合物は、センサーが用いられる間(例えばセンサーが患者に埋め込まれている間、或いは試料を測定する間)作用電極の感知層から実質的に拡散しないようにセンサーに付加された化合物を規定することを意味する。
【0080】
本明細書で用いられるように、「架橋剤」は、少なくとも2つの分子を結合する、或いは同じ分子の少なくとも2つの部分を結合することができる少なくとも2つの反応性基を含む分子である。少なくとも2つの分子の結合は分子間架橋と言い、同じ分子の少なくとも2つの部分の結合は分子内架橋と言う。3つ以上の反応性基を有する架橋剤は、同時に分子間架橋と分子内架橋の両方が可能である。
【0081】
「膜溶液」は、複素環窒素基を含む変性重合体、架橋剤、緩衝液又はアルコール/緩衝液混合溶媒を含む架橋及び膜形成に必要な全ての成分を含む溶液である。
【0082】
本明細書で用いられるように、「体液」又は「生体液」は、その中で検体を測定してもよい任意の体液又は体液誘導体であり、例えば、血液、間質液、血漿、皮膚液、汗、及び涙が挙げられる。
【0083】
本明細書で用いられるように、「蓄積モードでの感知」は、検体の酸化から生成された電子の蓄積を指す。この酸化は、回路に接続されていない作用電極の感知要素で、或いはその表面で起こり、これによって電子が蓄積される。
【0084】
蓄積モードでの感知
図1の方法の流れ図を参照すると、本開示の実施形態によっては、作用電極及び他の電極(例えば、対向電極及び/又は基準電極)を含むセンサーを利用して検体から信号を得る方法を含むものがある。前記作用電極は触媒(例えば、検体特異的酵素)及び電子移動剤(例えば、レドックスメディエーター)と共に提供される、或いはそれで変性されている(10)。検体特異的酵素とレドックスメディエーターで変性された作用電極の面積は、作用電極の感知要素又は感知層という場合もある。
図1に示すように、検体特異的酵素と共に提供される(例えば、それで変性されている)作用電極は、検体と共に提供される(15)。検体の存在下、変性された作用電極は検体を酸化し、反応から生成された電荷の量として酸化の量が測定される。作用電極が他の電極と接続されない限り、酸化還元反応からの電荷は作用電極表面に蓄積し続ける(20)。体内での濃度が低い検体(例えば、コルチゾール)では、所定期間電荷(電子)が蓄積されると、低濃度の検体から信号出力が得られるが、この信号出力を測定及び定量するのは他の周知の方法に比べて容易である。所定期間(例えば、120秒まで、3分まで、5分まで、10分まで、15分まで、20分まで、25分まで、又は30分まで)電荷を蓄積した後、作用電極を少なくとも1つの他の電極(例えば、対向電極及び/又は基準電極)と接続して回路を形成する(25)。回路が形成されると、作用電極表面に蓄積された電子は、電気信号として放出され、その振幅が測定されて(30)作用電極に存在する検体量と相互に関係付けられる。従って、
図1の行為10、15、20、25、及び30として示されている本開示の実施形態による以下の方法によれば低濃度(例えば、4.7nM等のナノモル量)の検体を容易に検出・測定することができる。
【0085】
図2を参照して、3つの電極の設定例として、本開示の実施形態による蓄積モードでの感知に用いられる作用電極40、基準電極50、及び対向電極60が示されている。この図では、左のこまに示されているように回路70は接続されており、作用電極は定常状態条件で検体の酸化還元反応を駆動するのに十分な電位(電圧)にある。例えば、本明細書で用いられるグルコースセンサーでは、酸化還元反応を駆動するのに十分な電位(電圧)はAg/AgClに対して+40mVである。右のこまに示されているように回路70が接続されていない場合、作用電極40は回路70から電気的に切断されており、作用電極40が回路70と再接続されるまでは検体からの電荷(例えば、電子)をレドックスポリマーに蓄えることができ、蓄えた電荷が測定される。
【0086】
図3A及び
図3Bを参照して、電気化学酵素バイオセンサーの例が蓄積モードの概念図に示されている。この例では、検体(A)は、レドックスポリマーを介してセンサーの作用電極に電気的に「接続」される酸化還元酵素(AO
x)を持つことで感知される。通常の電流測定による感知時に、電極は、検体が一定の速度で反応するような電位(電圧)にある。反応速度は検体濃度に比例する。検体の酸化反応(AがA
+になる)では、
図3Bに示すように、電子は一定の速度で検体(A)から検体特異的酵素(AO
x)、レドックスポリマー(例えば、Os
3
+)、作用電極へと流れて、
図3Aに示すように定常状態電流を生成する。作用電極が回路から切断されると、レドックスポリマーから作用電極への電子の流れが止まり、回路を電流が流れなくなる。しかしながら、検体はまだ酵素による酸化を受けており、その結果レドックスポリマーが還元される(Os
3
+からOs
2
+)。検体からの電子(e
-)はレドックスポリマーに蓄えられているので、これにより、経時的にレドックスポリマーの還元形態(Os
2
+)の積層(Os
2
+の「雲」によって示されている)が形成される。作用電極が回路に再接続されて元の電位(電圧)になると、レドックスポリマーの積層が酸化されて、
図3Aに示すような大きな電流のスパイクが得られる。次いで、レドックス系が再び定常状態になると、電流は元の電流測定電流まで低下する。この2工程の過程は、蓄積モードでの感知の基礎を形成する。最初の工程では、センサーの作用電極が所定期間(蓄積時間とも言う)回路から切断される、すなわち回路に接続されていないことにより、検体からの電荷をレドックスポリマーに「蓄積」することができる。次の工程では、蓄積時間の後、センサーの作用電極を回路に接続することで、蓄積された電荷を放出して、急峻なピークとして測定することができる。
【0087】
図3C及び
図3Dを参照して、スクリーン印刷された炭素電極に堆積させたグルコース特異的感知試薬からなる開発したグルコースセンサーを用いた蓄積モードでの感知の一例を示す。このグルコース感知試薬は、Os
-レドックスポリマーに架橋したグルコースオキシダーゼ酵素からなる。この試薬は、既に、グルコースバイオ燃料電池ならびに自己出力型及び定電位電解出力型連続グルコースセンサーの両方での使用が示されている。例えば、Mao et al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125:4951-4957; Mano et al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125:6588-6594; Liu et al., Anal. Chem. 2012, 84:3403-3409; Feldman et al., Diabetes Technol. Ther. 2003, 5:769-779; Hoss et al., J. Diabetes Sci. Technol. 2013, 7:1210-1219; and Hoss et al., J. Diabetes Sci. Technol. 2014, 8:89-94を参照のこと。その全内容は本明細書に参照により組み込まれる。本開示の実施形態によっては、蓄積モードでの感知方法を用いて電気化学測定の感度を高めてもよい。
図3C及び
図3Dに示す実験では、グルコースセンサーを2μMのグルコースと100mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の溶液に入れて、センサーの電流を監視しつついくつかの蓄積モード測定を行った。それぞれの測定で、センサーは始め、+40mVにあって定常状態のグルコース酸化を駆動し、次いで作用電極が所定期間(蓄積時間)電気的に切断されて電荷を蓄積し、作用電極が再接続されて蓄積された電荷が測定された。図示のように、蓄積時間が長くなるにつれて酸化電流スパイクの大きさが大きくなる。従って、単に蓄積時間(例えば、30秒、60秒、又は120秒まで)を長くすることで、このグルコースセンサーとグルコース濃度での測定の感度が高められる。
図3Dで、定常状態のセンサー電流として測定された電流測定信号と、
図3Cで測定された電流スパイクのピーク高さ及びピーク面積を蓄積時間に対してプロットした。図示のように、電流測定電流は蓄積時間に依存せず一定である。しかしながら、電流スパイクの高さと面積は何れも、蓄積時間に対して線形の依存性を示しており、従来の電流測定よりも利点がある蓄積モードでの感知であることを強調している。すなわち、測定技術の容易に調節可能なパラメータ(例えば、電荷を蓄積する時間)を変更することでセンサーの感度を調整してもよい。
【0088】
本開示の実施形態によれば、蓄積モードでの感知方法は、ある範囲の検体濃度に亘って信号を提供する。
図4A及び
図4Bは、100μMまでのグルコース濃度で例示的なグルコースセンサーを用いた較正実験の一例を示す。図示のように、各検出で60秒の蓄積時間を用いた。
図4Aは、この実験の時間に対する得られた電流の波形を示す。図示のように、定常状態の電流測定電流と蓄積モードの電流ピークの大きさは、グルコース濃度が高くなるにつれて増加する。
図4Bは、グルコース濃度の関数として電流測定電流と、電流スパイクのピーク高さ及びピーク面積のプロットを示す。3つの全ての信号は、検体濃度に対する線形依存性を示している。従って、これらの結果から、ピーク高さ又はピーク面積を用いて測定された蓄積モードでの感知から線形の較正曲線が得られること、従って、感度を高めた状態で蓄積モードでの感知を従来の電流測定に類似した方法で感知に利用してもよいことが分かった。従って、蓄積モードでの感知から得られたピーク高さを電流単位で測定するので、この測定方法の感度を電流測定の感度と定量的に比較してもよい。例えば、この測定方法の感度を
図4Bに示す較正曲線の傾きを比較することで比較してもよい。比較によって、電流測定は0.44nA/μMの感度を有し、蓄積モードでの感知(ピーク高さ測定を用いた)は1.69nA/μMの感度を有する、従って、蓄積時間が60秒の場合、本開示の実施形態による蓄積モードでの感知は、電流測定に比べて約4倍電気化学測定の感度が高められている。
【0089】
更に、本開示の実施形態によっては、ピーク高さとピーク面積の両方が同じ結果と感度を提供する。作用電極の得られた電流信号を測定する手段は、ピーク高さ及び/又はピーク面積を計算することを含む。
【0090】
本開示の実施形態によっては、外膜を有するセンサーを用いて蓄積モードでの感知を行う。電気化学センサーは、感知試薬に安定性、大量輸送の制限、生体適合性を与えるため、かつ/又は電極への付着物を防止するために外膜(例えば、重合体膜)で覆われていることが多いため、重合体で被覆したセンサーを試験して、予測通りに蓄積モードでの感知が確実に行われるようにした。
図5を参照して、流量制限重合体外膜で被覆したグルコースセンサーを用いて、0μM、50μM、100μM、200μM、及び500μMのグルコース濃度で電流測定と蓄積モードでの感知により較正曲線を得た。
図5のデータ点で示すようにそれぞれのグルコース濃度で異なる蓄積時間(1分、2分、5分、及び10分)で4つの連続した測定を行った。
【0091】
図5に示すように、電流測定(左のグラフ)と蓄積モード測定(真ん中と右のグラフ)から検体濃度に対して線形の応答が得られた。予測通り、電流測定(
図5の左のグラフ)を用いると、センサーの感度は蓄積時間とは独立している。しかしながら、蓄積モードでの感知(
図5の真ん中と右のグラフ)を用いると、センサーの感度は蓄積時間が長くなるにつれて高まる。流量制限外膜により、電流測定及び蓄積モードでの感知の両方を用いたセンサーの感度は、外膜のないセンサーの感度よりもずいぶん低い。これは、外膜が検体の感知試薬への拡散を制限するため、予測される。しかしながら、
図5に示すように、重合体外膜をセンサーに付加した場合に蓄積モードでの感知が予測通り行われて、蓄積時間を変化することでセンサーの感度をどのように調節することができるかという他の例を示している。なお、連続監視センサーによる蓄積モードでの感知を用いた電荷の蓄積のための所定期間が10分を超えると、センサーの時間分解性能に悪影響を及ぼすことがある。従って、本開示の実施形態によっては、電荷の蓄積のための所定期間を10分までとして外膜を有するセンサーを用いて蓄積モードでの感知が行われる。
【0092】
更に、流量制限外膜等の外膜は、低濃度で検体を測定する場合、電極への付着物を防止するのに必ずしも必要でないが、外膜は生体内環境との生体適合性界面として機能し、かつ/又はその下の感知層(その上に電子移動剤及び/又は検体特異的酵素を含む)を安定にすることがある。外膜が用いられる蓄積モードでの感知において、電荷を蓄積する所定期間を長くして、検体の総濃度を酸化してもよい。本開示の実施形態によっては、外膜を有するセンサーを用いた蓄積モードでの感知方法は、作用電極に存在する全ての検体を完全に反応させるため、電荷を蓄積する所定期間を1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、又は10分まで長くすることを含む。本開示の実施形態によっては、外膜を有するセンサーを用いた蓄積モードでの感知方法は、電荷を蓄積する所定期間を10分から30分まで長くすることを含む。
【0093】
或いは、本開示の実施形態によっては、外膜は高透過性材料で形成されていてもよく、従って、この透過性膜が、検体が作用電極の感知層に到達する速度を低下させずに安定性、大量輸送の制限、及び/又は生体適合性を可能にしてもよい。高透過性膜の材料の非限定的な例としては、高分子量(MW:400g/モル以上)ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルと架橋されたポリビニルピリジン、高分子量(MW:400g/モル以上)ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルと架橋された誘導体化ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びポリメタクリル酸が挙げられる。
【0094】
図6A~
図6Bを参照して、生体外実験で電気化学グルコースセンサーを用いて0~1000ナノモル(nM)の範囲の濃度のグルコースを測定(例えば、感知)した。この例では、センサーの作用電極は、Os系レドックスポリマーに架橋されたグルコースオキシダーゼ酵素を含んでいた。Os系レドックスポリマーは、スクリーン印刷された炭素電極に堆積されて、固定されている。この実験は、本明細書で開示されるように行われた(例えば、実施例8)。また、スクリーン印刷された炭素対向電極とAg/AgCl基準電極を用いた。各測定の前に、作用電極をAg/AgClに対して+40mVで3分間保持し、その後、電極の開回路電位を3分間測定した。
図6Aのグラフは、示されたグルコース濃度(0~1000nMのグルコース)について得られた時間に対する電位の変化を示す。従って、図示のように、グルコース濃度が高い程、電位ドリフト率が高くなる。本開示の実施形態によっては、ドリフト率は、時間に対する電位の傾きとして計算される。
図6Bは、グルコース濃度に対するドリフト率(30~180秒の傾きとして計算)のプロットを示す較正曲線である。
図6Bに示すように、電位のドリフト率は、グルコース濃度に対して線形の依存性を示す。
【0095】
図6C~
図6Dを参照して、
図6A~
図6Bの実験で用いたのと同じ電気化学グルコースセンサーを生体外実験に用いて、0~750nMの範囲(100nM未満(例えば、10nM、25nM、及び50nM)を含む)のグルコースの濃度を測定した。
図6Cのグラフは、図示のグルコース濃度について得られた時間に対する電位の変化を示す。従って、
図6Dに示されるように、この実験でプロットされたドリフト率は10nMまでグルコース濃度が減少するまで線形のままである。この相関は更に
図6Eに示されている。
図6Eは、8個の個々のグルコースセンサーの試験から得られた較正曲線を示す。また、グルコースオキシダーゼ酵素を含まない(だが、Osレドックスポリマーを含む)対照センサーもまたこの実験で試験した。
図6E及び
図6Fに示すように、白丸で表されている対照センサーのドリフト率はグルコース濃度への依存性を示さなかった。
【0096】
本開示の実施形態によっては、現在開示されている方法を用いて背景信号(例えば、[検体]=0の信号)を低減してもよい。
図6G~
図6Hを参照して、
図6Aに示す実験で用いたグルコースセンサーを作用電極として用いて実験を行った。また、開回路電位測定時に、グルコースオキシダーゼ酵素を含まないがOsレドックスポリマーを含む対照センサーを基準電極として用いた。この構成を用いて、測定されるグルコースの酸化に由来しない信号の量を最小にする。例えば、グルコースオキシダーゼを含まない対照センサーを基準電極として用いる場合、背景信号(グルコース濃度がゼロの時の時間に対する電位の傾き)はほぼゼロである。
図6Hに示される較正曲線の切片は、Ag/AgCl基準電極を用いて得られた
図6Fに示される較正曲線の切片よりも2桁小さい。従って、本開示の方法及びシステムは、背景を低減する有効な方法として開回路電位測定時にグルコースオキシダーゼを含まない対照センサーを基準電極として用いることを含む。
【0097】
本開示の実施形態によっては、作用電極の感知層で検体の酸化還元反応から生成された信号を調整又は修正して、任意の所与のセンサー及び/又は検体濃度について信号出力を高めてもよい。本開示の実施形態によっては、電流信号が記録された周波数を修正することで信号は増強される。例えば、
図7に示すように、蓄積検出の電流スパイクで測定されたピーク高さを最大にするため、本明細書で開示され、
図3A~
図3D、
図4A~
図4B、及び
図5に示される蓄積モードでの感知実験で用いた0.5Hzのサンプリングレートと0.03Hzのフィルター周波数に比べて、信号をより速いサンプリングレート(例えば、0.1Hz)で記録しより高い周波数(例えば、3.2Hz)でフィルターにかけてもよい。
図7に示すように、検出ピークは、3.2Hzよりも高い周波数で非常に急峻であり、より大きいピーク高さが得られる。従って、本開示の実施形態によっては、蓄積モードでの感知方法は、信号の大きさを最大にするためにフィルターの周波数を3.2Hzまで高くすることを含む。なお、周波数が3.2Hzよりも高いと、信号対ノイズ比が大きくなりすぎて、電流測定電流又は蓄積ピーク測定を用いても正確な測定ができない。
【0098】
本開示の実施形態によっては、カーボンナノチューブ(CNT)を作用電極の感知要素に加える。例えば、レドックスメディエーターと検体特異的酵素を含む感知試薬にCNTを加えて、作用電極に塗布する。
図8Aを参照して、右の顕微鏡写真ではCNTを感知試薬に加えたが、左の顕微鏡写真ではCNTを加えなかった。CNTがある場合とない場合で蓄積モードでの感知を測定した。
図8Bに示すように、作用電極表面の感知要素にCNTを加えると、蓄積モードの電流スパイクのピーク高さはより大きくなる。
【0099】
本開示の実施形態によっては、蓄積モードでの感知は、30分の蓄積時間(例えば、電荷を蓄積する所定期間)を持つセンサー、3.2Hzの信号周波数フィルター、及びカーボンナノチューブ(CNT)を加えた作用電極表面の感知要素を用いることを含む。
図9Aは、代表的なグルコースセンサーにおいてCNTの存在下、0~200nMのグルコース濃度で、蓄積時間を30分とし、信号を3.2Hzでフィルターして得られた蓄積モード信号を示す。従って、
図9Bの信号較正曲線に示すように、電流測定と比較して、本開示の実施形態による蓄積モードでの感知では濃度の低い検体で感度が高められている。図から明らかなように、蓄積時間が30分の場合、ピーク高さ測定を用いた蓄積モードでの感知は、電流測定に比べて800倍も感度が高まっている。検出限界については、ピーク面積測定を用いた蓄積モードでの感知は電流測定よりも優れており、4.7±1.4nMというより低い検出限界(LOD)が得られた。これは電流測定に比べて25倍の向上である。蓄積モードでの感知での線形の範囲は電流測定の範囲よりもより限定されているが、この範囲はより短い蓄積時間を用いることでより高い濃度に移動させてもよい。
【0100】
蓄積モード感知用センサー
本明細書で記載するセンサーは、生体内センサー又は生体外センサー(すなわち別個の監視試験片)であってもよい。そのようなセンサーを基板、例えば実質的に平面状の基板に形成してもよい。特定の実施形態では、前記センサーは配線、例えば、作用電極に関連付けられた(例えば、その表面を包み込むことを含む)1つ以上の他の電極を持つ作用電極配線内側部分である。前記センサーはまた、少なくとも1つの対向電極(或いは対向/基準電極)及び/又は少なくとも1つの基準電極或いは少なくとも1つの基準/対向電極を含んでいてもよい。
【0101】
図12は、本開示の実施形態による検体センサー800の一実施形態の概略を示す。このセンサーは、基材804の上に電極801、802、及び803を含む。電極(及び/又は他の構造部)は直接或いは加工を伴って、任意の好適な技術(例えば、化学気相蒸着(CVD)、物理気相成長、スパッタリング、反応性スパッタリング、印刷、コーティング、アブレーション(例えば、レーザーアブレーション)、塗装、ディップコーティング、エッチング等)を用いて形成されてもよい。材料は、アルミニウム、炭素(グラファイトを含む)、コバルト、銅、ガリウム、金、インジウム、イリジウム、鉄、鉛、マグネシウム、水銀(水銀合金として)、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、セレン、ケイ素(例えば、ドープされた多結晶シリコン)、銀、タンタル、スズ、チタン、タングステン、ウラン、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの混合物、及びこれら元素の合金、酸化物、又は金属化合物のうちの任意の1種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
検体センサー800は、その全体が使用者に埋め込み可能であってもよく、或いは一部のみが使用者の体内(内側)に位置し、他の一部は使用者の体外(外側)に位置するようになっていてもよい。例えば、センサー800は、皮膚810の表面の上に配置可能な第一の部分と、皮膚の表面の下に配置可能な第二の部分を含んでいてもよい。そのような実施形態では、外側部分は、(配線で第二の部分の各電極に接続された)接点を含み、使用者の外側の他の装置(例えば、送信機)と接続してもよい。
図12の実施形態では3つの電極801、802、及び803が基材804の同じ表面に隣接して配置されているのが示されているが、他の構成も考えられる。例えば、電極の数を増減する、電極の一部或いは全部を基材の異なる表面又は他の基材に配置する、電極の一部或いは全部を積層する、材料と大きさが異なる電極を用いる等である。
【0103】
図13は、皮膚の表面の上に配置可能な第一の部分(本実施形態では主要部として特徴づけられてもよい)と、皮膚の表面の下に配置可能な(例えば、皮膚(真皮)を皮下空間まで貫通して、装着者の生体液(例えば間質液)に接触する)第二の部分(本実施形態では、非主要部として特徴づけられてもよい)を持つ検体センサー500の一実施形態の断面図を示す。検体センサー500は、センサー尾部530(また、本明細書では挿入先端と言うことがある)を含む。電極接点(図示せず)は、皮膚表面の上に配置されたセンサー500の第一の部分にあり、センサー尾部530のある位置まで延びている。作用電極501、基準電極502、及び対向電極503は、センサー500の第二の部分、及び特にセンサー尾部530の底部に示されている。自明であるが、本開示の範囲を逸脱することなく、センサーに設けられる電極の数を増減することができる。例えば、センサーは2つ以上の作用電極を含んでいてもよく、更に個別の対向電極と基準電極は単一の対向/基準電極であってもよい。
【0104】
更に
図13を参照すると、センサー500は、基質(又は基質層)504と第一の導電層508(例えば、炭素、金等)を含む。第一の導電層508は感知領域509と電気的に連通して、これにより共に作用電極501を規定する。センサー500の1つ以上の構成要素に抗菌性品質を付与することで、感知領域509は微生物から保護されて装着者の皮膚の健康を保護し、かつ/又はそのような微生物による干渉の可能性(例えば、微生物の移行の可能性による生物膜の形成)から感知領域509を保護してもよい。様々な電極と
図13のセンサー尾部530の底部に規定された感知領域をまとめて感知領域としてもよく、本明細書で記載するセンサー尾部に付与された任意の抗菌性品質は前記領域の上(例えば、感知領域509の上、或いは電極503の上)のセンサー尾部530の上部(上25%)に付与される。
【0105】
実施形態によっては、第一の誘電性層等の第一の絶縁層505を第一の導電層508の少なくとも一部に設けるか積層してもよく、更に、第二の導電層511を第一の絶縁層(又は誘電性層)505の少なくとも一部の上に設けるか積層してもよい。
図13に示すように第二の導電層511と第二の導電性材料510(例えば、銀/塩化銀(Ag/AgClの層))で基準電極502を提供してもよい。
図14Bに、これらの層を被覆する外膜520と共に、第二の導電性材料510の他の配置の可能性を示す。
【0106】
実施形態によっては、第二の誘電性層等の第二の絶縁層506を第二の導電層511の少なくとも一部に設けるか積層してもよい。更に、第三の導電層513を第二の絶縁層506の少なくとも一部に設けて対向電極503を提供してもよい。最後に、第三の絶縁層507を第三の導電層513の少なくとも一部に設けるか積層してもよい。このように、センサー500は、導電層のそれぞれの少なくとも一部が絶縁層(例えば、誘電性層)によって分離されるように積層されてもよい。
図14Bに他の層構成の可能性が示されている。
図13及び
図14Bの実施形態では異なる長さの層が示されているが、本開示の範囲を逸脱することなく、これらの層の一部又は全てが同じ或いは異なる長さと幅を持っていてもよい。
【0107】
何れか1つ或いは全ての実施形態で、電極501、502、及び503の一部又は全部を上記の積層構築物の基質504の同じ側に設けてもよく、或いは、2つ以上の電極が基質504の同じ面に(例えば、隣接して、平行に、互いに角度をつけて)配置される共平面状に設けられてもよい。例えば、共平面にある電極は、その間に好適な空間を含んでいてもよく、かつ/又は導電層/電極の間に設けられた誘電性材料又は絶縁性材料を含んでいてもよい。更に、実施形態によっては、電極501、502、及び503のうちの1つ以上を基質504の異なる側に設けてもよい。そのような実施形態では、各接触パッドは基質の同じ側或いは異なる側にあってもよい。例えば、電極は第一の側にあり、その接触部は第二の側になってもよく、例えば、電極を接続する配線と接触部は基質を横切っていてもよい。
【0108】
ここで
図14Aを参照して、本開示の1つ以上の実施形態による
図13及び
図14Bのセンサー500の変形を表す検体センサーの他の実施形態を示す。
図14Aを参照すると、感知要素931を含む作用電極922を含む本開示の1つ以上の実施形態による埋め込み可能な(例えば、皮下又は経皮の)感知領域920が示されている。近位端940は、感知領域920の出力信号を送信するための様々な電気接続部と接続されるようになっている。遠位端925と近位端940は共にセンサー尾部を形成している。感知領域920は、センサー尾部の底部を包含している。図示のように、感知領域920は丸みを帯びた先端を含むが、装着者の皮膚に容易に挿入することができる他の先端形状であってもよい。
【0109】
また、1つ以上の実施形態で、感知領域920は、
図13及び
図14Bに示すように、基準電極、対向電極、又は対向/基準電極を含んでいてもよい。本開示の範囲から逸脱することなく別の電極構成を用いてもよい。
【0110】
図13、
図14A、及び
図14Bを参照して、センサー(又は感知領域)500、920は、それぞれのセンサー尾部の遠位部分に感知機能を含んでいる。上述のように、この場所は、装着者の皮膚の下(例えば、皮下の空間)のより深い場所との接触を高めることができ、装着者の間質液により近づくことで測定対象の検体(例えば、その濃度)により近づくことができる。すなわち、感知領域を装着者の皮膚内に十分に深く設置すると特定の検体を正確に測定することができるが、皮膚表面により近い場所に感知領域を設けると所望の検体の濃度或いは他の特徴を正しく決定するのに不適切な場合がある。
【0111】
図13及び
図14B~
図14Dを参照して、本開示の1つ以上の実施形態は、感知領域509を含む作用電極501又は320を含む。感知領域509は、例えば、検体特異的酵素323と電子移動剤(例えば、レドックスメディエーター)324を含む少なくとも1つの感知要素322を含む。作用電極501又は320は、基質504又は325の上に設けられている。基質504又は325は、作用電極501又は320と対向電極503の間にこれらと接触して配置されている。第一の絶縁層505は、基質504又は325と接触していない作用電極501又は320の表面と接触して設けられている。基準電極502は、作用電極501又は320と接触していない第一の絶縁層505の表面と接触して設けられており、第二の導電性材料(又は層)510は第一の絶縁層505と接触していない基準電極502の表面と接触して設けられている。
【0112】
また、
図14Cに示されるように、感知要素322が作用電極320の少なくとも一部に設けられている。本開示の実施形態によっては、2つ以上の感知要素322を作用電極の感知層に設けてもよく、これら2つ以上の感知要素は互いに横方向に設けられている。
【0113】
本開示の実施形態によっては、感知要素322の任意の好適な構成を作用電極320の上に設けてもよい。感知要素のさらなる構成は、例えばHoss ら(米国2012/0150005号)に開示されており、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0114】
本開示の実施形態によっては、
図14Bを参照して、センサー500は、少なくとも作用電極501と感知領域509を覆う外膜520を含む。他の実施形態では、外膜520はセンサー500全体を覆う。実施形態によっては、外膜520はセンサー500の全ての活性領域を覆う。例えば、センサー500の活性領域は
図14Aに示す感知領域920及び
図14Bに示す感知領域509に示されている。実施形態によっては、外膜520は感知領域920又は感知領域509の上の作用電極、対向電極、及び/又は基準電極を覆う。
【0115】
図14Cは、外膜335の拡大斜視図を示す。外膜335は、基質325の上に設けられた作用電極320の上に設けられた感知要素322を覆っている。図示のように、外膜335は覆う工程の途中である。外膜335は少なくとも感知要素322全体を覆う。
【0116】
検体特異的酵素及び電子移動剤(レドックスメディエーター)
本開示の実施形態によっては、本開示のセンサーは直接検体を測定することができない。すなわち、センサー上の電極は検体と直接相互作用することができない。従って、検体分子と直接相互作用することができる酵素タンパク質により検体を検出する。しかしながら、(例えば、グルコースオキシダーゼ等)酵素によっては、電極と直接電子を交換することができない。なぜなら、その酸化還元活性部位は酵素タンパク質構造の奥深くに埋まっているからである。従って、酵素の酸化還元活性部位と電極との間で電子を移動させるため、電子移動剤(すなわち、レドックスメディエーター)が用いられる。固定化された分子は電子を中継することができるので、感知層に電子移動剤と検体特異的酵素と固定することで、「配線」というものを形成する。従って、「電気的に接続」される。また、検体特異的酵素を「接続された酵素」とも言う。接続された酵素は、例えば、Gregg ら(米国特許第5,262,035号)、Say ら(米国特許第6,134,461号)、及びHoss ら(米国特許公開第2012/0150005号)に開示されており、その全内容を引用により本明細書に組み込む。実施形態によっては、検体特異的酵素は電子移動剤に架橋されている。
【0117】
本開示の実施形態によっては、電子移動剤(例えば、レドックスメディエーター)は、標準塩化第一水銀電極(SCE)の酸化還元電位(電圧)より数百ミリボルト高いか低い酸化還元電位(電圧)を持つ易電気還元性及び易電気酸化性イオン又は分子である。実施形態によっては、電子移動剤は、SCEに対して約-150mVで還元性であり、約+400mVで酸化性である。レドックスポリマーの形態での好適なレドックスメディエーターの例が、例えばMaoら(米国特許第6,605,200号)に開示されており、その全内容を引用により本明細書に組み込む。
【0118】
本開示の実施形態によれば、
図14Dに示すように、電子移動剤324は作用電極320に固定されている。実施形態によっては、電子移動剤324と検体特異的酵素323は何れも、任意の好適な手段で作用電極320に固定されている。実施形態によっては、電子移動剤と検体特異的酵素は任意の好適な架橋剤により作用電極に共固定されている。実施形態によっては、電子移動剤と検体特異的酵素は、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)等の化学架橋剤により共固定されている。
【0119】
本開示の実施形態によっては、蓄積モードでの感知に用いられる電子移動剤は、ポリビニルピリジン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、又はポリアセチレンから選択される重合体と結合させたオスミウム、ルテニウム、鉄、又はコバルトから選択されるレドックス種を含む。実施形態によっては、電子移動剤は、式Iのオスミウム(Os)含有ポリビニルピリジンレドックスポリマーである。
【化1】
【0120】
本開示の実施形態によっては、電子移動剤は有機レドックス種、有機金属レドックス種、又は無機レドックス種であってもよい。有機レドックス種の例は、キノン及びその酸化状態でキノイド構造を有する種、例えば、ナイルブルー及びインドフェノールである。いくつかのキノン及び部分的に酸化されたキンヒドロンは、システインのチオール基、リシン及びアルギニンのアミン基、チロシンのフェノール基等、タンパク質の官能基と反応する。検体を含む流体内に干渉タンパク質が存在するため、これらの基により前記レドックス種は本開示のセンサーのうちのいくつかに対しては不適切になる場合がある。なお、大部分の置換キノンとキノイド構造を有する分子は、タンパク質との反応性は低い。実施形態によっては、テトラ置換キノンは1、2、3、及び4位に炭素原子を持つ。
【0121】
本開示の実施形態による蓄積モードでの感知方法に用いられる好適な電子移動剤は、試料を分析している最中に電子移動剤の拡散損失を防ぐか実質的に低減するような構造又は電荷を持っている。本開示の実施形態によっては、電子移動剤は、作用電極の感知層に固定することができる重合体に結合させたレドックス種を含む。レドックス種と重合体の結合は、共有結合、配位結合、又はイオン結合であってもよい。有用な電子移動剤とこれらを製造する方法は、米国特許第5,264,104号;第5,356,786号;第5,262,035号;及び第5,320,725号に記載されており、その全内容を引用により本明細書に組み込む。有機レドックス種又は有機金属レドックス種は何れも重合体に結合させて、電子移動剤として用いてもよいが、本開示の実施形態によっては、レドックスメディエーターは遷移金属化合物又は錯体である。実施形態によっては、遷移金属化合物又は錯体は、オスミウム、ルテニウム、鉄、及びコバルトの化合物又は錯体を含む。自明であるが、電子移動剤の浸出が容認可能な担体流体又はセンサーの感知層においては、本明細書で記載するレドックスメディエーター種の多くは、例えば重合体成分なしでも電子移動剤として用いられてもよい。
【0122】
非放出性重合体電子移動剤の一種は、重合体組成物に共有結合したレドックス種を含む。この種のメディエーターの一例はポリビニルフェロセンである。
【0123】
別の種類の非放出性重合体電子移動剤は、イオン結合レドックス種を含む。典型的には、この種のメディエーターは、反対の電荷を帯びたレドックス種に結合させた電荷を帯びた重合体を含む。この種のメディエーターの例としては、正に帯電したレドックス種(例えば、オスミウム、ルテニウム、鉄、又はコバルトに結合させたポリピリジル陽イオン)に結合させた負に帯電した重合体(例えば、ナフィオン(Dupont))が挙げられる。イオン結合メディエーターの他の例は、負に帯電したレドックス種(例えば、フェリシアン化物又はフェロシアン化物)に結合させた正に帯電した重合体(例えば、四級化ポリ(4-ビニルピリジン)又はポリ(1-ビニルイミダゾール))である。本開示の実施形態によっては、結合させたレドックス種は、反対の電荷を帯びたレドックスポリマー内に結合させた高い電荷を帯びたレドックス種である。
【0124】
本開示の他の実施形態では、好適な非放出性重合体電子移動剤は、重合体に配位結合させたレドックス種を含む。例えば、このメディエーターは、オスミウム又はコバルトの2,2’-ジピリジル錯体をポリ(1-ビニルイミダゾール)又はポリ(4-ビニルピリジン)に配位することで形成されてもよい。
【0125】
本開示の実施形態によっては、電子移動剤は、1種以上の配位子を持つオスミウム遷移金属錯体であり、各配位子は窒素含有複素環(例えば、2,2’-ジピリジン、1,10-フェナントロリン、又はそれらの誘導体)を有する。更に、実施形態によっては、電子移動剤は、重合体に共有結合した1種以上の配位子を持ち、各配位子は少なくとも1個の窒素含有複素環(例えば、ピリジン、イミダゾール、又はそれらの誘導体)を有する。これらの好ましい電子移動剤は、錯体を素早く酸化或いは還元するように、それぞれの電子移動剤と作用電極との間で素早く電子を交換する。
【0126】
本開示の実施形態によっては、電子移動剤は、(a)ピリジン又はイミダゾール官能基を有する重合体又は共重合体と、(b)2つの配位子と錯体を形成するオスミウム陽イオン(各配位子は2,2’-ジピリジン、1,10-フェナントロリン、又はそれらの誘導体を含み、前記2つの配位子は必ずしも同じである必要はない)を含む。実施形態によっては、オスミウム陽イオンと錯体を形成する2,2’-ジピリジンの誘導体は、4,4’-ジメチル-2,2’-ジピリジン、及びモノ-、ジ-、及びポリアルコキシ-2,2’-ジピリジン(例えば、4,4’-ジメトキシ-2,2’-ジピリジン)が用いられる。実施形態によっては、オスミウム陽イオンと錯体を形成する1,10-フェナントロリンの誘導体は、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、及びモノ-、ジ-、及びポリアルコキシ-1,10-フェナントロリン(例えば、4,7-ジメトキシ-1,10-フェナントロリン)である。本開示の実施形態によっては、オスミウム陽イオンと錯体を形成する重合体は、ポリ(1-ビニルイミダゾール)(「PVI」と言う)及びポリ(4-ビニルピリジン)(「PVP」と言う)の重合体及び共重合体である。ポリ(1-ビニルイミダゾール)の好適な共重合体置換基としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、及び置換又は四級化N-ビニルイミダゾールが挙げられる。実施形態によっては、電子移動剤は、ポリ(1-ビニルイミダゾール)の重合体又は共重合体と錯体を形成しているオスミウムを含む。
【0127】
本開示の実施形態によれば、電子移動剤は、標準塩化第一水銀電極(SCE)に対して-100mVから約+150mVの範囲の酸化還元電位(電圧)を有する。より具体的には、電子移動剤の電位(電圧)は、-100mVから+150mVの範囲である。実施形態によっては、電位(電圧)は-50mVから+50mVの範囲である。本開示の他の実施形態では、電子移動剤は、オスミウム、ルテニウム、鉄、又はコバルトの酸化還元中心を持ち、SCEに対して+50mVから-150mVの範囲の酸化還元電位(電圧)を持つ。
【0128】
検体特異的酵素の例
本開示の実施形態によっては、検体特異的酵素は、測定する検体の酸化を触媒するため、作用電極表面に提供される(例えば、固定されている)。本明細書で用いられるように、検体特異的酵素はまた、検体酸化酵素と言う場合がある。本開示の実施形態によっては、検体特異的酵素は、グルコースオキシダーゼ、NAD-グルコースデヒドロゲナーゼ、及びグルコースを酸化するFAD-グルコースデヒドロゲナーゼから選択される。実施形態によっては、検体特異的酵素は乳酸オキシダーゼ又は乳酸塩を酸化するNAD-乳酸デヒドロゲナーゼである。実施形態によっては、検体特異的酵素は3-ヒドロキシ酪酸を酸化するNAD-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼである。実施形態によっては、検体特異的酵素は、コルチゾールを酸化する11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型である。実施形態によっては、検体特異的酵素はアルコールを酸化するNAD-アルコールデヒドロゲナーゼである。実施形態によっては、検体特異的酵素はピルビン酸を酸化するピルビン酸オキシダーゼである。実施形態によっては、検体特異的酵素はグルタミン酸塩を酸化するNAD-グルタミン酸デヒドロゲナーゼである。実施形態によっては、検体特異的酵素はテオフィリンを酸化するキサンチンオキシダーゼである。
【0129】
当業者には自明だが、対応する検体の基質を酸化するため、任意のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はフラビンオキシダーゼ酵素を作用電極の感知層に結合或いは固定してもよい。
【0130】
本開示の実施形態によっては、NAD依存性酵素の例としては以下のものが挙げられる:(-)-ボルネオールデヒドロゲナーゼ、(+)-ボルネオールデヒドロゲナーゼ、(+)-サビノールデヒドロゲナーゼ、(+)-トランス-カルベオールデヒドロゲナーゼ、(3S,4R)-3,4-ジヒドロキシシクロヘキサ-1,5-ジエン-1,4-ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ、(R,R)-ブタンジオールデヒドロゲナーゼ、(R)-2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ、(R)-2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ、(R)-4-ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ、(R)-アミノプロパノールデヒドロゲナーゼ、(R)-デヒドロパントイン酸デヒドロゲナーゼ、(S,S)-ブタンジオールデヒドロゲナーゼ、(S)-2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ、(S)-カルニチン-3-デヒドロゲナーゼ、(S)-ウスニン酸レダクターゼ、1,2-ジヒドロキシ-6-メチルシクロヘキサ-3,5-ジエンカルボン酸デヒドロゲナーゼ、1,3-プロパンジオールデヒドロゲナーゼ、1,6-ジヒドロキシシクロヘキサ-2,4-ジエン-1-カルボン酸デヒドロゲナーゼ、2-(R)-ヒドロキシプロピル-CoMデヒドロゲナーゼ、2-(S)-ヒドロキシプロピル-CoMデヒドロゲナーゼ、2-アルケナールレダクターゼ、2-アルキン-1-オルデヒドロゲナーゼ、2-アミノベンゼンスルホン酸-2,3-ジオキシゲナーゼ、2-クロロ安息香酸-1,2-ジオキシゲナーゼ、2-クマル酸レダクターゼ、2-デヒドロ-3-デオキシ-D-グルコン酸-5-デヒドロゲナーゼ、2-デオキシ-D-グルコン酸-3-デヒドロゲナーゼ、2-エン酸レダクターゼ、2-ヒドロキシ-1,4-ベンゾキノンレダクターゼ、2-ヒドロキシ-3-オキソプロピオン酸レダクターゼ、2-ヒドロキシビフェニル-3-モノオキシゲナーゼ、2-ヒドロキシメチルグルタル酸デヒドロゲナーゼ、2-ヒドロキシキノリン-5,6-ジオキシゲナーゼ、2-ヒドロキシキノリン-8-モノオキシゲナーゼ、2-オキソアジピン酸レダクターゼ、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD+)、2-オキソイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ(アシル化)、2,3-ジヒドロ-2,3-ジヒドロキシ安息香酸デヒドロゲナーゼ、2,3-ジヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-p-クミン酸デヒドロゲナーゼ、2,4-ジアミノペンタン酸デヒドロゲナーゼ、2,6-ジヒドロキシピリジン-3-モノオキシゲナーゼ、2’-ホスホトランスフェラーゼ、3-(イミダゾール-5-イル)乳酸デヒドロゲナーゼ、3”-デアミノ-3”-オキソニコチアナミンレダクターゼ、3-デヒドロ-L-グロン酸-2-デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシ-2-メチルブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシ-2-メチルピリジンカルボン酸ジオキシゲナーゼ、3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシ安息香酸-6-モノオキシゲナーゼ、3-ヒドロオキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシフェニル酢酸-6-ヒドロキシラーゼ、3-ヒドロキシピメロイル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ、3-メチルブタナールレダクターゼ、3-オキソアシル-(アシル担体タンパク質)レダクターゼ(NADH)、3-フェニルプロパン酸ジオキシゲナーゼ、3(又は17)a-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3α-ヒドロキシ-5β-アンドロスタン-17-オン-3α-デヒドロゲナーゼ、3α-ヒドロキシコラン酸デヒドロゲナーゼ、3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(A-特異的)、3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(B-特異的)、3α,7α,12α-トリヒドロキコレスタン-26-アル-26-オキシドレダクターゼ、3α(17β)-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(NAD+)、3α(又は20β)-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、4-(ヒドロキシメチル)ベンゼンスルホン酸デヒドロゲナーゼ、4-アミノ安息香酸-1-モノオキシゲナーゼ、4-クロロフェニル酢酸-3,4-ジオキシゲナーゼ、4-ホルミルベンゼンスルホン酸デヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシ-テトラヒドロジピコリン酸レダクターゼ、4-ヒドロキシベンズアルデヒドデヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシ安息香酸-1-ヒドロキシラーゼ、4-ヒドロキシ安息香酸-3-モノオキシゲナーゼ(NAD(P)H)、4-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸デヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシムコン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシフェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシフェニル酢酸-1-モノオキシゲナーゼ、4-ヒドロキシキノリン-3-モノオキシゲナーゼ、4-ヒドロキシトレオニン-4-リン酸デヒドロゲナーゼ、4-ニトロフェノール-2-モノオキシゲナーゼ、4-オキソプロリンレダクターゼ、4-ホスホエリトロン酸デヒドロゲナーゼ、4-スルホ安息香酸-3,4-ジオキシゲナーゼ、4-トリメチルアンモニオブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、5-カルボキシメチル-2-ヒドロキシムコン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、5,6-ジヒドロキシ-3-メチル-2-オキソ-1,2,5,6-テトラヒドロキノリンデヒドロゲナーゼ、6-エンド-ヒドロキシシネオールデヒドロゲナーゼ、6-ヒドロキシヘキサン酸デヒドロゲナーゼ、6,7-ジヒドロプテリジンレダクターゼ、7-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、15-ヒドロキシイコサテトラエン酸デヒドロゲナーゼ、15-ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ(NAD+)、15-オキソプロスタグランジン-13-オキシダーゼ、16-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、20-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、21-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(NAD+)、ADP-グリセロマンノ-ヘプトース-6-エピメラーゼ、アラニンデヒドロゲナーゼ、アラノピンデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ(NAD(P)+)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD(P)+)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD+)、アルドース-1-デヒドロゲナーゼ、アルケンモノオキシゲナーゼ、α-サントニン-1,2-レダクターゼ、アミノブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、アミノムコン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、アントシアニジンレダクターゼ、アントラニル酸-1,2-ジオキシゲナーゼ(脱アミノ化、脱カルボキシル化)、アントラニロイル-CoAモノオキシゲナーゼ、アピオース-1-レダクターゼ、アクアコバラミンレダクターゼ、アロゲン酸デヒドロゲナーゼ、アロゲン酸デヒドロゲナーゼ(NAD(P)+)、アリール-アルコールデヒドロゲナーゼ、アリール-アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アスパラガス酸レダクターゼ、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ、ATP依存性NAD(P)H-水和物デヒドラターゼ、ベンズアルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD+)、ベンゼン-1,2-ジオキシゲナーゼ、安息香酸-1,2-ジオキシゲナーゼ、β-アラノピンデヒドロゲナーゼ、ベタイン-アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ビフェニル-2,3-ジオキシゲナーゼ、ブタナールデヒドロゲナーゼ、カルニチン-3-デヒドロゲナーゼ、CDP-4-デヒドロ-6-デオキシグルコースレダクターゼ、CDP-グルコース-4,6-デヒドラターゼ、CDP-パラトース-2-エピメラーゼ、コレスト-5-エン-3β,7α-ジオール-3β-デヒドロゲナーゼ、コレスタンテトラオール-26-デヒドロゲナーゼ、シス-1,2-ジヒドロ-1,2-ジヒドロキシナフタレンデヒドロゲナーゼ、シス-1,2-ジヒドロベンゼン-1,2-ジオールデヒドロゲナーゼ、シス-1,2-ジヒドロキシ-4-メチルシクロヘキサ-3,5-ジエン-1-カルボン酸デヒドロゲナーゼ、シス-2,3-ジヒドロビフェニル-2,3-ジオールデヒドロゲナーゼ、シス-3,4-ジヒドロフェナントレン-3,4-ジオールデヒドロゲナーゼ、シス-ジヒドロエチルカテコールデヒドロゲナーゼ、CoA-ジスルフィドレダクターゼ、コバラミン(II)レダクターゼ、コニフェリル-アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ククルビタシンδ23-レダクターゼ、シクロヘキサン-1,2-ジオールデヒドロゲナーゼ、シクロヘキサノールデヒドロゲナーゼ、シクロペンタノールデヒドロゲナーゼ、シスチンレダクターゼ、D-アラビニトール-2-デヒドロゲナーゼ、D-アラビニトール-4-デヒドロゲナーゼ、D-アラビノース-1-デヒドロゲナーゼ、D-アラビノース-1-デヒドロゲナーゼ(NAD(P)+)、D-イディトール-2-デヒドロゲナーゼ、D-リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(脱カルボキシル化)、D-トレオ-アルドース-1-デヒドロゲナーゼ、D-キシロース-1-デヒドロゲナーゼ、D-キシルロースレダクターゼ、ジベンゾチオフェンジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ。二鉄トランスフェリンレダクターゼ、ジヒドロウラシルデヒドロゲナーゼ(NAD+)、ジヨードフェニルピルビン酸レダクターゼ、ジメチルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、DTDP-グルコース-4,6-デヒドラターゼ、エフェドリンデヒドロゲナーゼ、エリトロース-4-リン酸デヒドロゲナーゼ、エストラジオール-17α-デヒドロゲナーゼ、エストラジオール-17β-デヒドロゲナーゼ、脂肪酸-アシル-CoAシンターゼ、フェレドキシン-NAD(+)レダクターゼ、第二鉄キレートレダクターゼ、フルオレン-9-オルデヒドロゲナーゼ、フルオロアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、FMNレダクターゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、フルクツロン酸レダクターゼ、フマル酸レダクターゼ(NADH)、フリルフラマイドイソメラーゼ、ガラクチトール-2-デヒドロゲナーゼ、ガラクチトール-1-リン酸-5-デヒドロゲナーゼ、ガラクトース-1-デヒドロゲナーゼ、γ-グアニジノブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、GDP-4-デヒドロ-6-デオキシ-D-マンノースレダクターゼ、GDP-4-デヒドロ-D-ラムノースレダクターゼ、GDP-6-デオキシ-D-タロース-4-デヒドロゲナーゼ、GDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ、GDP-マンノース-6-デヒドロゲナーゼ、グルコン酸-5-デヒドロゲナーゼ、グルコース-1-デヒドロゲナーゼ、グルコース-1-デヒドロゲナーゼ(NAD+)、グルタミン酸シンターゼ(NADH)、グルタル酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(NAD(P)+)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ホスホリル化)、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(NAD(P)+)、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(NAD+)、グリシン切断系、グリシンデヒドロゲナーゼ、グリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ、グリオキシル酸レダクターゼ、ヘキサデカナールデヒドロゲナーゼ(アシル化)、ヘキサデカノールデヒドロゲナーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ホモイソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、水素デヒドロゲナーゼ、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸デヒドロゲナーゼ、ヒドロキシルアミンレダクターゼ(NADH)、ヒドロキシマロン酸デヒドロゲナーゼ、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ、ヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ、ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ、次亜硝酸レダクターゼ、ヒポタウリンデヒドロゲナーゼ、イコサノイル-CoAシンターゼ、イミダゾール酢酸-4-モノオキシゲナーゼ、IMPデヒドロゲナーゼ、インダノールデヒドロゲナーゼ、インドール-3-アセトアルデヒドレダクターゼ(NADH)、インドール乳酸デヒドロゲナーゼ、イノシトール-2-デヒドロゲナーゼ
、イノシトール-3-リン酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、イソピペリテノールデヒドロゲナーゼ、キヌレン酸-7,8-ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ、L-アミノ酸デヒドロゲナーゼ、L-アミノアジピン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、L-アラビニトール-2-デヒドロゲナーゼ、L-アラビニトール-4-デヒドロゲナーゼ、L-アラビノース-1-デヒドロゲナーゼ、L-エリトロ-3,5-ジアミノヘキサン酸デヒドロゲナーゼ、L-グリコールデヒドロゲナーゼ、L-グロン酸-3-デヒドロゲナーゼ、L-イディトール-2-デヒドロゲナーゼ、L-イドン酸-5-デヒドロゲナーゼ、L-ラムノース-1-デヒドロゲナーゼ、L-トレオン酸-3-デヒドロゲナーゼ、L-トレオニン-3-デヒドロゲナーゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ラクトアルデヒドレダクターゼ、ラトステロールオキシダーゼ、レグヘモグロビンレダクターゼ、ロイシンデヒドロゲナーゼ、長鎖アルコールデヒドロゲナーゼ、リジンデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(脱カルボキシル化)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(オキサロ酢酸-脱カルボキシル化)、マレイル酢酸レダクターゼ、マロン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、マロン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)、マンニトール-2-デヒドロゲナーゼ、マンニトールデヒドロゲナーゼ、マンニトール-1-リン酸-5-デヒドロゲナーゼ、マンヌロン酸レダクターゼ、メリロト酸-3-モノオキシゲナーゼ、メソ酒石酸デヒドロゲナーゼ、メタノールデヒドロゲナーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NAD+)、メチルグリオキサ-ルレダクターゼ(NADH依存性)、メチルマロン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アシル化)、メバルド酸レダクターゼ、モノデヒドロアスコルビン酸レダクターゼ(NADH)、モルヒネ-6-デヒドロゲナーゼ、マイコチオール依存性ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、マイコチオンレダクターゼ、ミリストイル-CoA-11-(E)デサチュラーゼ、ミリストイル-CoA-11-(Z)デサチュラーゼ、N-アセチルヘキソサミン-1-デヒドロゲナーゼ、N-アシルマンノサミン-1-デヒドロゲナーゼ、N-ヒドロキシ-2-アセトアミドフルオレンレダクターゼ、NAD(+)-二窒素-レダクターゼ、ADP-D-リボシルトランスフェラーゼ、NAD(+)-ジフタミド-ADP-リボシルトランスフェラーゼ、NAD(P)(+)-タンパク質-アルギニン-ADP-リボシルトランスフェラーゼ、NAD(P)+ヌクレオシダーゼ、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Re/Si-特異的)、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Si-特異的)、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ(キノン1)、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ(キノン)、NAD+ジホスファターゼ、NAD+ヌクレオシダーゼ、NAD+シンターゼ、NAD+シンターゼ(グルタミン加水分解)、NADHデヒドロゲナーゼ(キノン)、NADHペルオキシダーゼ、ナフタレン-1,2-ジオキシゲナーゼ、ニコチンアミド-ヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ、酸化窒素ジオキシゲナーゼ、亜硝酸レダクターゼ(NAD(P)H)、ニトロキノリン-N-オキシドレダクターゼ、オクタノールデヒドロゲナーゼ、ω-ヒドロキシデカン酸デヒドロゲナーゼ、オピンデヒドロゲナーゼ、オルシノール-2-モノオキシゲナーゼ、オルニチンシクロデアミナーゼ、オロチン酸レダクターゼ(NADH)、オキサログリコール酸レダクターゼ(脱カルボキシル化)、パントイン酸-4-デヒドロゲナーゼ、ペリリルアルコールデヒドロゲナーゼ、フェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、フェニルグリオキシル酸デヒドロゲナーゼ(アシル化)、ホスファチジルコリン-12-モノオキシゲナーゼ、ホスファチジルコリンデサチュラーゼ、ホスホグルコン酸-2-デヒドロゲナーゼ、ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホン酸デヒドロゲナーゼ、フタル酸-4,5-シス-ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ、フタル酸-4,5-ジオキシゲナーゼ、ピメロイル-CoAデヒドロゲナーゼ、プレコリン-2ヒドロゲナーゼ、プレコリン-3Bシンターゼ、プレフェン酸デヒドロゲナーゼ、プロパンジオール-リン酸デヒドロゲナーゼ、タンパク質-ジスルフィドレダクターゼ、ピリドキーサル-4-デヒドロゲナーゼ、ピロリン-2-カルボキシル酸レダクターゼ、ピロリン-5-カルボキシル酸レダクターゼ、キナ酸デヒドロゲナーゼ、レチナールデヒドロゲナーゼ、レチノールデヒドロゲナーゼ、リビトール-2-デヒドロゲナーゼ、リビトール-5-リン酸-2-デヒドロゲナーゼ、ルブレドキシン-NAD(+)レダクターゼ、ルブレドキシン-NAD(P)(+)レダクターゼ、S-(ヒドロキシメチル)グルタチオンデヒドロゲナーゼ、サッカロピンデヒドロゲナーゼ(NAD+、L-グルタミン酸塩形成)、サッカロピンデヒドロゲナーゼ(NAD+、L-リシン形成)、サリチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、サリチル酸-1-モノオキシゲナーゼ、セクオイトールデヒドロゲナーゼ、セリン-2-デヒドロゲナーゼ、Sn-グリセリン-1-リン酸デヒドロゲナーゼ、ソルビトール-6-リン酸-2-デヒドロゲナーゼ、ステロイド-17α-モノオキシゲナーゼ、ステロール-4α-カルボキシル酸-3-デヒドロゲナーゼ(脱カルボキシル化)、ストロンビンデヒドロゲナーゼ、コハク酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、コハク酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD(P)+)、スクシニルグルタミン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、スルカトンレダクターゼ、タガツロン酸レダクターゼ、酒石酸デヒドロゲナーゼ、タウロピンデヒドロゲナーゼ、タキシフォリン-8-モノオキシゲナーゼ、テレフタル酸-1,2-シス-ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ、テレフタル酸-1,2-ジオキシゲナーゼ、テストステロン-17β-デヒドロゲナーゼ、テトラヒドロキシプテリジンシクロイソメラーゼ、チオモルホリン-カルボン酸デヒドロゲナーゼ、TM0436、トルエンジオキシゲナーゼ、トランス-2-エノイル-CoAレダクターゼ(NAD+)、トリメチルアミン-N-オキシドレダクターゼ、トリプトファンデヒドロゲナーゼ、UDP-グルコース-4-エピメラーゼ、UDP-グルコース-6-デヒドロゲナーゼ、UDP-グルクロン酸-5’-エピメラーゼ、UDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン-6-デヒドロゲナーゼ、ウレイドグリコール酸デヒドロゲナーゼ、ウロン酸デヒドロゲナーゼ、バニリン酸モノオキシゲナーゼ、バニリンデヒドロゲナーゼ、ヴォミフォリオールデヒドロゲナーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼ、キサントンマチンレダクターゼ、又はキサントキシンデヒドロゲナーゼ。
【0131】
本開示の実施形態によっては、検体特異的酵素は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性オキシダーゼ又はフラビンモノヌクレオチド(FMN)依存性オキシダーゼ等のフラビンオキシダーゼを含む。FAD依存性又はFMN依存性オキシダーゼの例としては以下のものが挙げられる:(R)-6-ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、(S)-2-ヒドロキシ酸オキシダーゼ、(S)-6-ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、2-エン酸レダクターゼ、2-メチル-分岐鎖-エノイル-CoAレダクターゼ、2-ニトロプロパンジオキシゲナーゼ、2,4-ジクロロフェノール-6-モノオキシゲナーゼ、2,6-ジヒドロキシピリジン-3-モノオキシゲナーゼ、3-aci-ニトロプロパノアートオキシダーゼ、3-ヒドロキシ-2-メチルピリジンカルボン酸ジオキシゲナーゼ、3-ヒドロキシ安息香酸-4-モノオキシゲナーゼ、3-ヒドロキシ安息香酸-6-モノオキシゲナーゼ、3-ヒドロキシフェニル酢酸-6-ヒドロキシラーゼ、4-アミノ安息香酸-1-モノオキシゲナーゼ、4-クレゾールデヒドロゲナーゼ(ヒドロキシル化)、4-ヒドロキシ安息香酸-1-ヒドロキシラーゼ、4-ヒドロキシ安息香酸-3-モノオキシゲナーゼ、4-ヒドロキシ安息香酸-3-モノオキシゲナーゼ(NAD(P)H)、4-ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ、4-ヒドロキシフェニル酢酸-1-モノオキシゲナーゼ、4-ヒドロキシフェニル酢酸-3-モノオキシゲナーゼ、4-ニトロフェノール-2-モノオキシゲナーゼ、4-スルホ安息香酸-3,4-ジオキシゲナーゼ、5-ピリドキシン酸ジオキシゲナーゼ、アシル-CoAオキシダーゼ、アデニリル-硫酸レダクターゼ、アルベンダゾールモノオキシゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アントラニロイル-CoAモノオキシゲナーゼ、アクアコバラミンレダクターゼ、アクアコバラミンレダクターゼ(NADPH)、アルギニン-2-モノオキシゲナーゼ、ベンゼン-1,2-ジオキシゲナーゼ、安息香酸-1,2-ジオキシゲナーゼ、β-シクロピアゾン酸デヒドロゲナーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ(受容体)、コリンオキシダーゼ、CoA-グルタチオンレダクターゼ、コバラミン(II)レダクターゼ、シアノコバラミンレダクターゼ(シアニド除去)、シクロヘキシルアミンオキシダーゼ、D-2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ、D-アラビノノ-1,4-ラクトンオキシダーゼ、D-アスパラギン酸オキシダーゼ、D-グルタミン酸(D-アスパラギン酸)オキシダーゼ、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(シトクロム)、D-ソルビトールデヒドロゲナーゼ(受容体)、デヒドログルコン酸デヒドロゲナーゼ、デオキシリボジピリミジンフォトリアーゼ、ジヒドロウラシルオキシダーゼ、ジメチルアミンデヒドロゲナーゼ、ジメチルグリシンデヒドロゲナーゼ、ジメチルグリシンオキシダーゼ、フェレドキシン-NADP(+)レダクターゼ、グルコン酸-2-デヒドロゲナーゼ(受容体)、グルコースデヒドロゲナーゼ(受容体)、グルコシド-3-デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸シンターゼ(フェレドキシン)、グルタミン酸シンターゼ(NADH)、グルタミン酸シンターゼ(NADPH)、グルタチオンオキシダーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、水素デヒドロゲナーゼ、ヒドロキシルアミンレダクターゼ、イミダゾール酢酸-4-モノオキシゲナーゼ、インドール-2,3-ジオキシゲナーゼ、インドール-3-アセトアルデヒドオキシダーゼ、イソバレリル-CoAデヒドロゲナーゼ、キヌレニン-3-モノオキシゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、L-アスパラギン酸オキシダーゼ、L-ガラクトノラクトンオキシダーゼ、L-グルタミン酸オキシダーゼ、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(シトクロム)、乳酸-2-モノオキシゲナーゼ、ラトステロールオキシダーゼ、ラティアルシフェリンモノオキシゲナーゼ(脱メチル化)、長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、リジン-2-モノオキシゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(キノン)、リンゴ酸オキシダーゼ、マンデロニトリルリアーゼ、メリロト酸-3-モノオキシゲナーゼ、N-メチル-L-アミノ酸オキシダーゼ、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Si-特異的)、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ(キノン1)、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ(キノン)、NADHペルオキシダーゼ、NADPHデヒドロゲナーゼ、NADPHデヒドロゲナーゼ(キノン)、NADPH-シトクロム-c2レダクターゼ、NADPH-ヘモタンパク質レダクターゼ、ニコチン酸デヒドロゲナーゼ、ニコチンデヒドロゲナーゼ、亜硝酸レダクターゼ(NAD(P)H)、亜硝酸レダクターゼ(NO形成)、オルシノール-2-モノオキシゲナーゼ、オロチン酸レダクターゼ(NADH)、オロチン酸レダクターゼ(NADPH)、シュウ酸オキシダーゼ、フェノール-2-モノオキシゲナーゼ、フェニルグリオキシル酸デヒドロゲナーゼ(アシル化)、フタル酸-4,5-ジオキシゲナーゼ、ポリアミンオキシダーゼ、プロリンデヒドロゲナーゼ、プトレシンオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ピリドキシン-4-オキシダーゼ、ピリドキシン-5-デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(シトクロム)、ピルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ(CoA-アセチル化)、レチナールデヒドロゲナーゼ、ルブレドキシン-NAD(+)レダクターゼ、サリチル酸-1-モノオキシゲナーゼ、サルコシンデヒドロゲナーゼ、短鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、スペルミジンデヒドロゲナーゼ、ステロイド-9α-モノオキシゲナーゼ、タルトロン酸-セミアルデヒドシンターゼ、タキシフォリン-8-モノオキシゲナーゼ、チアミンオキシダーゼ、トリパノチオンジスルフィドレダクターゼ、UDP-N-アセチルムラミン酸デヒドロゲナーゼ、又はバニリルアルコールオキシダーゼ。
【0132】
センサー膜
本開示の実施形態によっては、
図13及び
図14B~
図14Dを参照して、センサー500又はセンサー500の一部は外膜520又は335を含む。外膜520又は335は、少なくとも作用電極501又は320と感知要素322又は感知領域509に重なっている。感知試薬(例えば、検体特異的酵素323及びレドックスメディエーター324)に安定性をもたらすため、また、大量輸送の制限、生体適合性を与え、かつ/又は電極への付着物を防ぐため、電気化学センサーは外膜520又は335(例えば、重合体膜)で覆われていることが多い。
【0133】
本開示の実施形態によっては、膜は、親水性(水を好む)重合体と架橋剤という2つの成分からなる。架橋剤は、重合体分子同士を結合させて、重合体分子をセンサーの感知層に結合させる。約5mMの濃度で生体内で見られるグルコース等の検体の場合、電極への付着物を防ぐために流量制限膜が必要である。流量制限センサー膜は、例えば、Maoらの米国特許第6,932,894号に開示されており、その全内容を引用により本明細書に組み込む。
【0134】
濃度が低い検体の場合、蓄積時間を(例えば30分まで)長くして、流量制限膜を用いてもよい。或いは、濃度が低い検体の場合、センサーの生体適合性を高める膜を持ちつつ、検体の感知層への自然の流れを維持するために透過性の高い膜を用いてもよい。例えば、親水性膜の表面は、身体の免疫系に負荷をかけず、これによりセンサーの性能を損なう可能性がある炎症及び他の応答の危険性を低減する。
【0135】
検体監視システム
従って、これらの実施形態は、体液中の検体を生体内で検出するため、少なくともその一部が使用者の皮膚表面下に配置可能な検体センサーを含む検体監視装置及びシステムを含む。検体監視システムはSayら(米国特許第6,134,461号)及びHossら(米国特許出願公開第2012/0150005号)に開示されており、何れもその全内容を引用により本明細書に組み込む。本開示の実施形態は、全体を埋め込み可能な検体センサー、及びセンサーの一部のみを皮膚の下に配置して、例えば、センサー制御装置(送信装置を含んでいてもよい)、受信装置/表示装置、送受信装置、処理装置等と交信するためにセンサーの別の一部は皮膚の上にある検体センサーを含む。前記センサーは、使用者の間質液中の検体濃度を連続して、又は定期的に監視するため、例えば、使用者の皮下に配置してもよい。この記載の目的で、特に断りがなければ、連続監視と定期的監視は互いに言い換え可能である。センサー応答は、血液又は他の流体中の検体濃度と相関させてもよく、かつ/又はそれに変換してもよい。特定の実施形態では、検体センサーは間質液と接触するように配置されて、検体濃度を検出してもよい。この検体濃度を用いて、使用者の血流中の検体濃度を推定してもよい。検体センサーは、静脈、動脈、又は流体を含む身体の他の部分に挿入可能であってもよい。実施形態によっては、検体センサーは、ある期間検体の濃度を監視するようになっていてもよく、その期間は秒、分、時間、日、週、月、或いはそれより長い範囲であってもよい。
【0136】
本開示の実施形態によっては、検体センサーは、1時間以上、例えば、数時間以上、数日以上、3日以上、5日以上、7日以上、数週間以上、或いは1ヶ月以上検体を生体内で検出することができる。例えば、時間t0での現在の検体濃度、検体の変化率等得られた情報に基づいて将来の検体濃度を予測してもよい。予測アラームにより、使用者の検体濃度が将来の予測検体濃度に達する前に、懸念すべき予測検体濃度を使用者に知らせてもよい。これにより、修正する行動を取る機会を使用者に与える。
【0137】
図15は、本開示の特定の実施形態によるデータ監視及び管理システム、例えば、検体監視システム400を示す。本開示の実施形態の側面は、更に、グルコース監視装置及びシステム、ならびにグルコースの検出方法について主に記載される。この記載は簡便さのためのみであり、実施形態の範囲を限定する意図では全くない。自明であるが、前記検体監視システムは、同時又は別々の時に本明細書で開示される様々な検体を監視するようになっていてもよい。
【0138】
監視され得る検体は、グルコース、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、コルチゾール、アルコール、ピルビン酸、グルタミン酸、テオフィリン、アセチルコリン、アミラーゼ、ビリルビン、コレステロール、絨毛膜ゴナドトロピン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)、クレアチンキナーゼ(例えば、CK-MB)、クレアチン、クレアチニン、DNA、フルクトサミン、グルコース誘導体、グルタミン、成長ホルモン、ホルモン、3-ヒドロキシ酪酸、ケトン、ケトン体、過酸化物、前立腺特異的抗原、プロトロンビン、RNA、甲状腺刺激ホルモン、及びトロポニンを含むが、これらに限定されない。検体はまた、例えば、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、バンコマイシン等)、ジギトキシン、ジゴキシン、乱用薬物、テオフィリン、及びワルファリン等の薬物を含み、これらを監視してもよい。実施形態によっては、2種以上の検体を監視し、それらの検体を同時又は別々の時に監視してもよい。
【0139】
検体監視システム400は、検体センサー401、センサー401に接続可能なデータ処理装置402、及び第一の受信装置404を含む。例によっては、第一の受信装置404は、通信リンク403を介してデータ処理装置402と通信するようになっている。特定の実施形態では、第一の受信装置404は更に、データをデータ処理端末405に送信して、第一の受信装置404が受信したデータを評価、処理、或いは初期化するようになっていてもよい。データ処理端末405は、通信リンク407を介してデータ処理装置402から直接データを受信するようになっていてもよく、通信リンク407は任意で双方向通信ができるようになっていてもよい。更に、データ処理装置402は、第一の受信装置404及び/又はデータ処理端末405及び/又は任意で第二の受信装置406とデータを送信及び/又は受信する送信装置又は送受信装置を含んでいてもよい。
【0140】
また、
図15に示すように、任意の第二の受信装置406は、操作により通信リンク403と接続されて、データ処理装置402から送信されたデータを受信するようになっている。第二の受信装置406は、第一の受信装置404とデータ処理端末405と通信するようになっていてもよい。実施形態によっては、第二の受信装置406は、第一の受信装置404及びデータ処理端末405と双方向無線通信するようになっていてもよい。以下で詳細に記載するように、例によっては、第二の受信装置406は、第一の受信装置404に比べて機能の少ない受信装置であってもよく、例えば、第二の受信装置406は第一の受信装置404に比べて機能の数が限定されているか最小になっていてもよい。従って、第二の受信装置406は、(全ての寸法を含むがそのうちの1つ以上で)より小型の筐体を含む、或いは腕時計、腕バンド、電子手帳、mp3プレーヤー、携帯電話等を含む装置において具現化されてもよい。或いは、第二の受信装置406は、第一の受信装置404と同じか実質的に類似の機能を持つようになっていてもよい。第二の受信装置406は、例えば、夜間の監視用に枕元に置く卓上ホルダ装置及び/又は双方向通信装置と噛み合うようになっている接続部を含んでいてもよい。卓上ホルダは電源の再充電をすることができる。
【0141】
図15に示す検体監視システム400の実施形態には検体センサー401、データ処理装置402、及びデータ処理端末405が1つのみ示されている。しかしながら、当業者には自明だが、検体監視システム400は、2つ以上のセンサー401及び/又は2つ以上のデータ処理装置402、及び/又は2つ以上のデータ処理端末405を含んでいてもよい。複数のセンサーは、同時又は別々の時に検体を監視するように使用者の体内に配置されてもよい。特定の実施形態では、使用者の体内に配置された第一のセンサーによって得られた検体情報を第二のセンサーによって得られた検体情報と比較して用いてもよい。これは、これらセンサーの一方又は両方から得られた検体情報を確認或いは立証するのに有用な場合がある。検体情報について重要な治療に関する決定で熟考する場合、このような冗長さが有益な場合がある。特定の実施形態では、第一のセンサーを用いて第二のセンサーを較正してもよい。
【0142】
検体監視システム400は、連続監視システム、半連続監視システム、又は個別監視システムであってもよい。複数の構成要素環境では、通信の衝突が検体監視システム400内の様々な構成要素間で容易に解決されるように、各構成要素はシステム内の他の構成要素の1つ以上によって固有に識別されるようになっていてもよい。例えば、固有のID、通信チャンネル等を用いてもよい。
【0143】
特定の実施形態では、センサー401は、検体濃度の監視を行っている使用者の体内又は体表に物理的に配置されている。センサー401は、使用者の検体濃度を少なくとも定期的に採取して、データ処理装置402により送信するために前記採取した検体濃度を対応する信号に変換するようになっていてもよい。データ処理装置402は、センサー401と接続することができ、何れの装置も利用者の体内又は体表に配置されるが、検体センサー401の少なくとも一部は経皮的に配置されている。データ処理装置は、データ処理装置を使用者の身体に固定するための固定要素(例えば、接着剤)を含んでいてもよい。使用者に装着可能でデータ処理装置402と噛み合う取付具を用いてもよい。例えば、取付具は接着剤表面を含んでいてもよい。データ処理装置402は、データ処理機能を実行する。そのような機能は、これらに限定されないが、データ信号のフィルタリング及び符号化を含んでいてもよい。データ信号のそれぞれは、採取された使用者の検体濃度に対応し、通信リンク403を介して第一の受信装置404に送信される。実施形態によっては、センサー401又はデータ処理装置402、或いはセンサー/データ処理装置の組み合わせは、その全体を使用者の皮膚表面下に埋め込み可能になっていてもよい。
【0144】
特定の実施形態では、第一の受信装置404は、RF受信部と、通信リンク403を介してデータ処理装置402と通信するようになっているアンテナとを含むアナログインターフェース部と、データ処理装置402から受信したデータを処理するデータ処理部を含んでいてもよい。前記処理は、データの復号化、エラー検出及び補正、データクロックの生成、データビットの回復、或いはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0145】
操作において、特定の実施形態の第一の受信装置404は、データ処理装置402と同期して、例えば、データ処理装置402の識別情報に基づいてデータ処理装置402を固有に識別し、その後、センサー401によって検出された監視検体濃度と関連付けられ、データ処理装置402から送信された信号を定期的に受信するようになっている。
【0146】
再度、
図15を参照して、データ処理端末405は、パソコン、携帯用コンピュータ(ラップトップ又は手持ち式装置(例えば、電子手帳(PDA)、電話機(携帯電話、例えば、iPhone(登録商標)、Blackberry(登録商標)、又は類似の電話機を含むマルチメディアのインターネット接続可能な携帯電話を含む)、mp3プレーヤー(例えば、iPOD(登録商標)等)、ポケットベル等を含む)、及び/又は薬物送達装置(例えば、点滴装置)を含んでいてもよい。これらはそれぞれ、有線又は無線接続により受信装置とデータ通信をするようになっていてもよい。また、データ処理端末405は更にデータネットワーク(図示せず)と接続して、使用者の検出された検体濃度に対応するデータを保存、検索、更新、及び/又は分析してもよい。
【0147】
データ処理端末405は、薬物送達装置(例えば、インスリン注入ポンプ等の点滴装置)を含んでいてもよい。この薬物送達装置は、使用者に薬物(例えば、インスリン)を投与するようになっていてもよく、第一の受信装置404と通信して、とりわけ測定された検体濃度を受信するようになっていてもよい。或いは、例えば、基礎量を投与又は修正する、とりわけ、データ処理装置402から受信した検出検体濃度に基づいて投与するための適切なボーラス(急速静注)投与量を決定するため、第一の受信装置404はその中に点滴装置を組み込んであってもよく、その結果、第一の受信装置404は適切な薬物(例えば、インスリン)を使用者に投与するようになっている。点滴装置は、外部装置、或いは使用者にその全体を埋め込み可能な装置等の内部装置であってもよい。
【0148】
特定の実施形態では、データ処理端末405は、例えばインスリンポンプ等の点滴装置を含んでいてもよく、データ処理装置402からの検体信号を受信するようになっていてもよい。従って、第一の受信装置404の機能(使用者のインスリン治療や検体の監視を管理するためのデータ処理を含む)を組み込んでいてもよい。特定の実施形態では、通信リンク403と
図15に示す1つ以上の他の通信インターフェースは、1つ以上の無線通信プロトコルを用いてもよい。そのようなプロトコルは、これらに限定されないが、RF通信プロトコル、赤外線通信プロトコル、ブルートゥースが可能な通信プロトコル、802.11x無線通信プロトコル、又はデータの衝突や干渉の可能性を回避しつつ、(例えば、医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPPA)の要件ごとに)数単位の安全な無線通信を可能にするこれらと等価な無線通信プロトコルを含む。
【0149】
さらなる実施形態では、データ処理装置402及び/又は第一の受信装置404及び/又は第二の受信装置406及び/又はデータ処理端末(点滴装置)405は、例えば、血液検体計から通信リンクを介して無線で検体の値を受信するようになっていてもよい。さらなる実施形態では、検体監視システム400(
図15)を操作又は使用する使用者は、例えば、データ処理装置402、第一の受信装置404、第二の受信装置406、データ処理端末(点滴装置)405のうちの1つ以上に組み込まれたユーザーインターフェース(例えば、キーボード、キーパッド、音声による命令等)を用いて検体の値を手動で入力してもよい。
【0150】
本明細書で開示される低ナノモル濃度の検体を測定するセンサー(例えば、酵素バイオセンサー)を生体内監視システムで用いてもよい。前記生体内監視システムは、使用者(例えば、ヒト対象者)の生体内に配置されて、使用者の体液と接触し、その中に含まれる1種以上の検体の濃度を感知する。生体内監視システムは、感知した検体データをセンサー制御装置から受信する1つ以上の読取り装置を含んでいてもよい。これらの読取り装置は、感知した検体データ又はセンサーのデータを処理及び/又は使用者に対して任意の数の形態で表示してもよい。
【0151】
図16を参照して、実施形態によっては、読取り装置120は専用の読取り装置等の移動通信装置(センサー制御装置102(
図17)と必要に応じてコンピュータシステムと通信するが移動電話通信能を持たないようになっている)であってもよく、或いは携帯電話(Wi-Fi又はインターネット通信が可能なスマートフォン、タブレット、又は電子手帳(PDA)が挙げられるが、これらに限定されない)であってもよい。スマートフォンの例としては、インターネット接続及び/又はローカルエリアネットワーク(LAN)を介するデータ通信のデータネットワーク接続機能を持つWindows(登録商標)オペレーティングシステム、Android(登録商標)オペレーティングシステム、iPhone(登録商標)オペレーティングシステム、Palm(登録商標)、WebOS(登録商標)、Blackberry(登録商標)オペレーティングシステム、又はSymbian(登録商標)オペレーティングシステムに基づく携帯電話が挙げられる。
【0152】
読取り装置120はまた、移動スマート装着可能電子アセンブリ、例えば、使用者の目又はそれに隣接して装着される光学アセンブリ(例えば、移動通信装置であるGoogle眼鏡等の眼鏡型端末(スマートグラス))として構成されていてもよい。この光学アセンブリは、使用者に使用者の検体濃度に関する情報を表示する透明ディスプレイを持っていてもよく、この表示装置は同時に使用者の視野全体をできるだけ遮らないように表示装置を通して使用者が見えるようになっている。この光学アセンブリは、スマートフォンに類似した無線通信を行うことができる場合もある。装着可能な電子機器の他の例としては、使用者の手首(例えば、時計等)、首(例えば、ネックレス)、頭(例えば、ヘッドバンド、帽子等)、胸等の周り或いはその付近に装着する装置が挙げられる。
【0153】
図16は、スマートフォンとして構成された読取り装置120の例示的な実施形態のブロック図である。ここで、読取り装置120は入力部121、表示装置122、及び処理回路206を含む。処理回路206は、1つの以上の処理装置、超小型処理装置、制御装置、及び/又は超小型御装置を含んでいてもよく、それぞれは個別のチップであってもよく、複数の異なるチップ(及びその一部)間に分散されていてもよい。ここで、処理回路206は、搭載メモリ203を有する通信処理装置202と、搭載メモリ205を有するアプリケーション処理装置204を含む。読取り装置120は更に、RFアンテナ209と接続されたRF通信回路208、メモリ210、1つ以上の関連づけられたアンテナ214を持つ多機能回路212、電源216、電源管理回路218、及び時計219を含む。
図16は、典型的なハードウェアとスマートフォン内にある機能の表示が省略されている。当業者には自明であるように、他のハードウェア及び機能(例えば、コーデック、ドライバ、グルーロジック)もまた含まれていてもよい。
【0154】
また
図16に示すように、通信処理装置202はRF通信回路208と接続して、アナログ/デジタル変換、符号化及び復号化、デジタル信号処理、及び音声、動画、及びデータ信号のRF通信回路208に提供するのに好適なフォーマット(例えば、同相及び直角位相)への変換を容易にする他の機能を実行してもよい。その後、RF通信回路208は信号を無線で送信してもよい。通信処理装置202はまた、RF通信回路208と接続して、無線送信信号を受信してそれをデジタルデータ、音声、及び動画に変換するのに必要な逆の機能を行ってもよい。RF通信回路208は、送信部と受信部(例えば、送受信部として統合された)、及び関連づけられた符号器の論理を含んでいてもよい。
【0155】
また
図16を参照して、アプリケーション処理装置204は、オペレーティングシステム及び読取り装置120にある任意のソフトウェアアプリケーションを実行し、動画及び画像を処理し、RFアンテナ209を介して送受信される通信の処理に関係しない他の機能を行うようになっていてもよい。スマートフォンのオペレーティングシステムは、読取り装置120の複数のアプリケーションと共に動作する。読取り装置120では任意の数のアプリケーション(「ユーザーインターフェイスアプリケーション」としても知られている)がどの時点においても実行中であってよく、糖尿病監視計画に関連した1つ以上のアプリケーションに加えて、そのような計画に関係ない他の一般に使用されるアプリケーション(例えば、Eメール、カレンダー、天気、サポート、ゲーム等)を含んでいてもよい。例えば、読取り装置が受信した感知された検体濃度と生体外血液検体測定を示すデータは、読取り装置120のメモリ210にあるユーザーインターフェイスアプリケーションと安全に通信してもよい。そのような通信は、例えば、モバイルアプリケーションのコンテナ化やラッピング技術を用いて安全に行われてもよい。
【0156】
メモリ210は、読取り装置120内に存在する1つ以上の様々な機能単位によって共有されていてもよく、或いは(例えば、異なるチップ内に存在する個別のメモリとして)それらのうちの2つ以上の間に分散されていてもよい。メモリ210はまた、それ自体が個別のチップであってもよい。メモリ203、205、及び210は非一過性であり、揮発性メモリ(例えば、RAM等)及び/又は不揮発性メモリ(例えば、ROM、フラッシュメモリ、F-RAM等)であってもよい。多機能回路212は、1つ以上のチップ及び/又は構成要素(例えば、送信部、受信部、送受信部、及び/又は他の通信回路)として実施されてもよい。これらは適切なプロトコル(例えば、Wi-Fi、Bluetooth、Bluetooth Low Energy、近距離無線通信(NFC)、無線自動識別(RFID)、独占所有権のあるプロトコル、及びその他のプロトコル)で、例えば、センサー制御装置102と共にローカル無線通信等の他の機能を実行して読取り装置120の地理的位置を決定する(例えば、全地球測位システム(GPS)ハードウェア)。1つ以上の他のアンテナ214は必要に応じて機能回路212と関連づけられて、様々なプロトコル及び回路と共に動作する。
【0157】
電源216は1つ以上の電池を含んでいてもよい。これらの電池は再充電可能であってもよく、使い捨て電池であってもよい。電源管理回路218は、電池の充電、電源の監視を調整し、電力を上げてDC変換を行ってもよい。
【0158】
読取り装置120はまた、例えば、共通の筺体を共有するように薬物(例えば、インスリン等)送達装置を含む、或いはそれに組み込まれていてもよい。そのような薬物送達装置の例としては、体内に置いて数時間或いは数日点滴をすることができるカニューレを有する薬物ポンプ(例えば、基礎量及びボーラス投与量のインスリンを送達する装着可能なポンプ)が挙げられる。薬物ポンプと組み合わせた場合、読取り装置120は薬物を保存する容器、輸送管と接続可能なポンプ、及び点滴カニューレを含んでいてもよい。ポンプにより、薬物を容器から管、そして体内に挿入したカニューレを介して糖尿病患者の体内に送り込んでもよい。読取り装置120に含まれる(或いは組み込まれる)ことがある薬物送達装置の他の例としては、送達ごとにのみ皮膚に刺して、その後抜き取られる携帯注射装置(例えば、インスリンペン)が挙げられる。携帯注射装置と組み合わせた場合、読取り装置120は、注射針、薬物を担持するカートリッジ、送達する薬物の量を調整するためのインターフェース、及び注射を引き起こすアクチュエーターを含んでいてもよい。薬物がなくなるまで前記装置を繰り返し用いてもよい。薬物がなくなった時点で、組み合わせた装置を捨ててもよいし、或いはカートリッジを新しいものと交換してもよい。この時、組み合わせた装置は繰り返し再利用してもよい。各注射の後に針を交換してもよい。
【0159】
組み合わせた装置は、閉ループ系(例えば、動作するのに使用者の介入が不要な人工膵臓系)又は半閉ループ系(例えば、投与量の変更を確認する等、動作するのに使用者の介入がほとんといらないインスリンループ系)の一部として機能してもよい。例えば、糖尿病患者の検体濃度をセンサー制御装置102により自動で繰り返し監視してもよい。その後、センサー制御装置102は、監視した検体濃度を読取り装置120と通信して、糖尿病患者の検体濃度を調整するのに適切な薬物投与量を自動で決定して、糖尿病患者の体内に送達してもよい。ポンプ及び送達されるインスリンの量を制御するソフトウェアの指示は、読取り装置120のメモリに保存されていて、読取り装置の処理回路によって実行されてもよい。また、これらの指示により、センサー制御装置102から直接又は間接的に得た検体濃度測定に基づいて薬物送達量と継続期間(例えば、ボーラス投与量及び/又は基礎投与量)の計算をさせてもよい。実施形態によっては、センサー制御装置102は、薬物投与量を決定して、それを読取り装置120に通信してもよい。
【0160】
図17は、センサー制御装置102の例示的な実施形態を示すブロック図である。センサー制御装置102は、検体センサー104と、最終結果データを使用者に表示するのに好適な形にする処理能力の主要部を有していてもよいセンサー電子機器250(検体監視回路を含む)を含む。
図17では、単一の半導体チップ251が示されているが、これは特注の特定用途向け集積回路(ASIC)であってもよい。ASIC251内には、アナログフロントエンド(AFE)252、電源管理(すなわち制御)回路254、処理装置256、及び通信回路258(送信部、受信部、送受信部、受動回路として、或いは通信プロトコルに従って実施され得る)を含む特定の高次機能単位が示されている。この実施形態では、AFE252と処理装置256の両方を検体監視回路として用いたが、他の実施形態では何れかの回路が検体監視機能を実行してもよい。処理装置256は1つ以上の処理装置、超小型処理装置、制御装置、及び/又は超小型制御装置を含んでいてもよく、それぞれは分離されたチップで複数の異なるチップ(及びその一部)の間に分散されていてもよい。
【0161】
メモリ253はまたASIC251内に含まれていてもよく、ASIC251内に存在する様々な機能単位によって共有されている、或いはそれらの2つ以上の間で分散されていてもよい。メモリ253はまた分離されたチップであってもよい。メモリ253は非一過性であり、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリであってもよい。この実施形態では、ASIC251は電源260と接続されている。電源260はコイン型電池等であってもよい。AFE252は生体内検体センサー104と接続して、そこから測定データを受信し、そのデータをデジタル形式で処理装置256に出力する。次いで、処理装置256は、実施形態によっては、任意の好適な方法で処理を行う。このデータは、通信回路258に供給されて、例えば、アンテナ261により読取り装置120に送信されてもよい。読取り装置120では、データを表示するためには在中するソフトウェアアプリケーションにより最小のさらなる処理が必要である。アンテナ261はアプリケーションと通信プロトコルの必要に応じて構成されてもよい。アンテナ261は、例えば、プリント配線基板(PCB)配線アンテナ、セラミックアンテナ、又は個別の金属アンテナであってもよい。アンテナ261は、単極アンテナ、双極アンテナ、F型アンテナ、ループアンテナ、及びその他のアンテナとして構成されてもよい。
【0162】
情報は、センサー制御装置102又は読取り装置120の主導でセンサー制御装置102から第二の装置(例えば、読取り装置120)に通信されてもよい。例えば、情報は、検体情報が利用できる場合は自動的に及び/又は繰り返し(例えば、連続して)、或いは予定に従って(例えば、約1分ごと、約5分ごと、約10分ごと等)センサー制御装置102により通信されてもよい。後者の場合、情報は後で通信するためセンサー制御装置102のメモリに保存或いは記録されていてもよい。第二の装置による要求を受信したことに応答してセンサー制御装置102から情報を送信してもよい。この要求は、自動化された要求、例えば、予定に従って第二の装置により送信された要求であってもよく、或いは使用者の主導で生成された要求(例えば、その場限りの要求或いは手動の要求)であってもよい。実施形態によっては、手動によるデータの要求をセンサー制御装置102の「走査」或いは装置102からの「要求対応型」データ送信と言う。実施形態によっては、第二の装置はポーリング信号又はデータパケットをセンサー制御装置102に送信してもよく、装置102は各ポール(又は特定の時間間隔で生じた複数のポール)をデータの要求として処理し、データが利用できる場合は、そのデータを第二の装置に送信してもよい。多くの実施形態では、センサー制御装置102と第二の装置間の通信は安全である(例えば、暗号化されている通信及び/又は認証済み装置間での通信)が、実施形態によっては、安全でない方法で、例えば、その範囲にある全ての視聴装置への放送としてデータをセンサー制御装置102から送信してもよい。
【0163】
異なる種類及び/又は形態及び/又は量の情報を各通信の一部として送信してもよい。そのような情報としては、これらに限定されないが、1つ以上の電流センサー測定 (例えば、読取りが開始された時間に時間的に対応する直近に得られた検体濃度情報)、所定時間の間に測定された測定値の変化率、測定値の変化率の速度(変化率の上昇率)、又は所定の読取りの前に得られ、センサー制御装置102のメモリに保存された測定値情報に対応する測定値履歴情報が挙げられる。
【0164】
リアルタイム情報、履歴情報、変化率情報、変化率の速度(例えば、上昇率或いは低下率)情報のいくつか又は全部、所与の通信又は送信で読取り装置120に送信されてもよい。特定の実施形態では、読取り装置120に送信される情報の種類及び/又は形式及び/又は量は、予めプログラムされていて、かつ/又は変更不可(例えば、製造時に予め設定されている)であってもよく、或いは(例えば、システムのスイッチを入れることにより)選択可能であり、かつ/又は現場で1回以上変更することができるように予めプログラムされておらず、かつ/又は変更不可ではなくてもよい。従って、特定の実施形態では、読取り装置120は、現在の(リアルタイム)センサー由来の検体値(例えば、数値の形式で)、現在の検体の変化率(例えば、現在の率を示す方向を指す矢印等、検体の変化率の指示表示の形態で)、及びセンサー制御装置102のメモリにより取得されて保存されたセンサー読取りに基づく検体傾向履歴データ(例えば、グラフの形態で)を出力してもよい。また、皮膚表面或いはセンサーの温度読取り又は測定を任意の温度センサー257によって収集してもよい。これらの読取り又は測定をセンサー制御装置102から他の装置(例えば、読取り装置又は読取り装置120)に(個々に、或いは経時的に集計した測定値として)通信してもよい。しかしながら、実際に温度測定を使用者に表示する代わりに、或いはそれに加えて、温度読取り又は測定を読取り装置120によって実行されるソフトウェアのルーチンと共に用いて、使用者への検体測定出力を補正又は補償してもよい。
【0165】
以下の実施例は、例示の目的のみのために示すものであり、本出願の範囲又は内容を限定するものではない。
【実施例】
【0166】
実施例1:重合体被覆センサーと長時間蓄積を用いた蓄積モード検出の感度の計算
図5は、0~500μMのグルコース濃度で重合体被覆グルコースセンサーを用いて電流測定と蓄積モードでの感知により得られた較正曲線を示す。各較正曲線は、4つのセンサーの平均応答である。しかしながら、電流測定とは異なり、蓄積モードでの感知によってセンサーの感度は、蓄積時間を変化させて容易に調整することができる。ピーク高さ測定とピーク面積測定の両方で、蓄積時間を1分から10分に延ばすとセンサーの感度は約10倍になる。
図5に示す各較正曲線の感度は、表1に示す集計データにより一次回帰の傾きから算出された。
【0167】
【0168】
ピーク高さの測定と電流測定は同じ単位で行われるので、これらの感度を直接比較してもよい。
図5に示すように流量制限膜センサーからのデータを用いて、等価なセンサー条件での蓄積モードでの感度の電流測定での感度に対する比(すなわち、増加の倍率)を表2に示すデータ集計により算出した。図示のように、蓄積時間が1分の場合、蓄積モードでの感知を用いるとセンサーの感度は、電流測定に比べて2倍高くなる。従って、蓄積時間を10分まで増やすことで、感度の差は15倍まで増加する。
【0169】
【0170】
実施例2:周波数を上げてカーボンナノチューブを加えて蓄積モード信号を高感度検出に最適化する
図7は、0.032Hzと3.2Hzという2つの異なる信号フィルタリング周波数での200nMのグルコースの蓄積モードによる検出を示す。図示のように、高周波数フィルターを用いると検出ピークは非常に急峻であり、ピーク高さがより大きくなる。しかしながら、2つの曲線下の面積は変わらない。これは、ピーク高さ測定を用いる場合、信号の大きさを最適にするには高周波数フィルターが理想的であることを示している。特に、フィルタリング周波数を0.032Hzから3.2Hzに変更すると、ピーク高さ信号が2~3倍高まることが分かった。更に、フィルタリング周波数が3.2Hzより高いと、信号ノイズが大きくなりすぎて、電流測定電流と蓄積ピーク特性(ピーク高さ及びピーク面積)の何れでも正確な測定ができなかった。
【0171】
蓄積モード信号を高める機構手段としては、カーボンナノチューブ(CNT)を加えて、より均一に堆積させた感知試薬をより電気導電性にして、これによりレドックスメディエーターを媒介させた酸化工程の動力学を高めた。動力学を高めたことで、蓄積モードの電流スパイクはより大きいピーク高さを有していた。
図8Aは、CNTを含む場合と含まない場合の堆積・硬化させたグルコース感知試薬の顕微鏡写真を示している。図示のように、CNTを含む感知試薬は、より均一に堆積しているが、CNTを含まない感知試薬は「コーヒーの環染み効果」を顕著に示した。感知試薬にCNTを加えるとピーク高さ信号が5~6倍高まることが分かった。
【0172】
また、
図8Bは、信号フィルタリング周波数とCNTの感知試薬への添加の両方のセンサー感度に及ぼす効果を証明する実験結果を示す。この実験では電流測定と蓄積モードでの感知を用いて、図示のように例示的なグルコースセンサーを0~200nMのグルコース濃度で用いてピーク高さとピーク面積により測定を行った。両方の種類(感知試薬にCNTを含むものと含まないもの)の4つのセンサーを試験した。各較正曲線は示した4つのセンサーの平均応答である。各蓄積モード検出で用いた蓄積時間は10分であった。各グルコース濃度で2回連続して測定を行った。1回は0.032Hzのフィルタリング周波数を用いて、もう1回は3.2Hzのフィルタリング周波数を用いた。
【0173】
図8Bに示す各較正曲線の感度は、一次回帰の傾きとして算出されたものである。表3に集計したデータを示す。自明であるように、電流測定のセンサー感度は、フィルタリング周波数とCNTの有無に対して変化が小さく、全ての条件で0.0003nA/nM未満である。ピーク面積を用いた蓄積モード測定では、センサー感度はフィルタリング周波数に対しては変わらないが、CNTを感知試薬に添加した場合、わずかに高まる。ピーク高さを用いた蓄積モード測定ではセンサー感度で最も大きな変化が観察された。フィルタリング周波数とCNTの感知試薬への添加の両方によりセンサー感度が高まる。フィルタリング周波数を0.032Hzから3.2Hzに上げると感度は約2.5倍感高まるが、CNTを感知試薬に添加すると感度は約5.5倍高まる。更に、フィルター周波数をCNTの添加と組み合わせた場合、蓄積モード測定の感度は約14倍高まる。
【0174】
【0175】
ピーク高さ測定と電流測定は同じ単位で測定されるので、それらの感度を直接比較してもよい。表4に、等価なセンサー条件での電流測定の感度に対する蓄積モードの感度の比を示す。図示のように、フィルタリング周波数が0.032Hzで感知試薬にCNTを含まない場合でも、蓄積モードでの感知を用いるとセンサー感度は電流測定に比べて30倍高い。従って、フィルタリング周波数を上げて、CNTを感知試薬に加えることで蓄積モードのピーク高さを最適にして、感度の差を400倍近くまで高めることができる。
【0176】
【0177】
実施例3:蓄積時間30分、3.2Hzの信号周波数でカーボンナノチューブを添加した電流測定と蓄積モードでの感知における感度、検出限界、及び線形範囲の比較
図9Bに示すように、電流測定に関連づけられた電流は非常に低く(<50pA)、100nM未満で線形性を失うが、蓄積モードでの感知の信号は非常に高く100nM未満で線形性をよく保っている。以下の表5は、感度、低い検出限界(LOD)(標準法1を用いて3σ/傾きとして算出)、及び実施例5に開示されるこれら測定に関連づけられた線形検出範囲を示している。標準法1は、Mocak ら, Pure Appl. Chem. 1997, 69:297-328に開示されており、その全内容を引用により本明細書に組み込む。特に、標準法1は、LODを「3σ/傾き」として算出する方法であり、「σ」は空試験の標準偏差であり、「傾き」は較正曲線の傾きである。
【0178】
【0179】
実施例4:背景信号の分析
図9A及び
図9Bを参照して、大気に曝されている緩衝液中で感知を行うと負の(陰極の)背景信号が観察される。いかなる理論によっても限定されないが、酸素還元反応はこの負の背景に関係があると思われる。具体的には、オスミウムレドックスメディエーターとCNTは、酸素還元反応を触媒することがあり、その結果、オスミウムメディエーターが酸化されて、蓄積期間に回路が切断されるとOs
3
+が堆積する。回路が再接続されると、Os
3
+のこの堆積は減少して、陰極のピークが得られる。この仮説を試験するため、大気条件及び(例えば、空気吹込により)酸素でパージした条件でグルコースを含まない100mMのリン酸緩衝液中で例示的なグルコースセンサーを試験した。
図10Aは、図示のように大気条件及び酸素パージ条件で2分、5分、及び10分の蓄積時間で代表的なセンサーにより得られた蓄積モード信号を示す。観察されるように、信号は大気条件で陰極のピークであり、酸素パージ条件でより小さい陽極のピークである。4つのセンサーの中央(平均)信号は
図10Bに描かれている。図示のように、電流測定信号は大気条件でわずかに負であり、酸素パージ条件でわずかに正として観察される。この実験の結果から、負の背景は、Os触媒された酸素還元によるものであることが判明した。
【0180】
実施例5:線形検出範囲
蓄積モードでの感知の線形検出範囲を決定するため、
図9A及び
図9Bに示す較正実験をグルコース濃度200μMまで行った。得られた電流測定と蓄積モードの較正曲線を
図11に示す。0~200nMの濃度に対して決定された一次最良適合線は、高濃度に対して予測された。図から分かるように、電流測定信号は、少なくとも100μMまでは線形であった。一方、蓄積モード信号は、2~5μMまでは線形であり、それより高い濃度で平坦になった。Osレドックスメディエーターが有限の電荷蓄積能を有するので、これは予測されたことである。この実験で用いられたセンサーでは、この能力は約5000nCまでであると思われる。なお、より短い蓄積時間を用いると蓄積モードでの感知の線形範囲はより高濃度にシフトし得る。ここで示すデータでは、比較的長い(例えば、30分)蓄積時間を用いて高感度を得た。
【0181】
実施例6:材料
PET基板にスクリーン印刷した炭素センサーをSteven Label, Inc.(カリフォルニア州サンタフェスプリングス)から入手した。作用電極の活性領域は、堆積面積が約0.1mm2であるグルコース酸化触媒によって規定された。グルコースオキシダーゼ(GOx)配線に用いる占有技術のレドックスポリマーと占有技術の流量制限膜重合体は公開されている手順に従って合成され、それぞれNanosyn, Inc.(カリフォルニア州サンタローザ)とRegis Technologies, Inc.(イリノイ州モートングローブ)から得た。アスペルギルス属II由来のグルコースオキシダーゼ(GOx、EC1.1.3.4、活性:130U/mg)を東洋紡株式会社(日本国大阪)から入手した。ポリエチレングリコール(400)ジグリシジルエーテル(PEGDGE400)とグリセリルトリグリシジルエーテルはPolysciences, Inc.(ペンシルバニア州ワーリントン)から入手した。多層カーボンナノチューブ(CNT、外径:20~40nm、長さ:10~20μm)をMK Nano(カナダ国オンタリオ、ミシサーガ)から入手した。グルコースと緩衝液に用いた共通する薬品Sigma-Aldrich (ミズーリ州セントルイス)から入手した。Thermo Scientific製Barnstead E-Pure 超純水精製システムから得た18.0MΩ・cm-1超の脱イオン水を用いて全ての水溶液を調製した。
【0182】
実施例7:センサーの作製
CNTを含むものと含まないものの2種の異なるグルコース感知試薬を用いた。非CNT試薬を以下のようにして調製した。まず、4%(w/v)のレドックスポリマー、8.08%(w/v)のGO
x、及び8.08%(w/v)のPEGDGE400の3つの溶液を、10mMの4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH:8)で調製した。これら3つの溶液を3.04:5.1:1.86の比で混合して、グルコース感知試薬を得た。CNTを含むグルコース感知試薬を調製するため、上記の手順に従ったが、4%のレドックスポリマー溶液と8.08%のPEGDGE400溶液を10mMのHEPES溶液ではなく、5%(w/v)のCNT水溶液で調製した。調製後、マイクロ注射器(Hamilton Co.)によりグルコース感知試薬を15nLずつセンサーの炭素作用電極に供給した。各作用電極の活性領域を供給した感知試薬の液滴の面積により規定した。この面積は、典型的には0.1mm
2であった。感知試薬を供給した後、センサーを25℃、相対湿度60%で少なくとも12時間硬化した。
図5に示す実験に用いられたセンサーでは、センサーを流量制限重合体外膜で被覆した。この膜は、80/20のエタノール/水の14%(w/v)の膜重合体と3.5%(w/v)グリセリルトリグリシジルエーテルの4:1の体積混合物からなり、上述のLiu ら, Anal. Chem. 2012, 84:3403-3409(その全内容を引用により本明細書に組み込む)に記載したようにディップコーティングにより塗布した。
【0183】
実施例8:電気化学測定
特に断りがなければ、作用電極としてグルコースセンサー、Ag/AgCl基準電極(3MのKCl溶液; Bioanalytical Systems, Inc.)、及びスクリーン印刷された炭素対向電極を有する好適な3つの電極セルを用いて全ての電気化学測定を行った。定電位電解装置を用いた蓄積モード実験を通して、センサーの時間に対する電流を測定した。蓄積モード測定では、作用電極は設定量の時間(蓄積時間)の間定電位電解装置から電気的に切断した。その後、作用電極を回路に再接続した。
図2は、電極の概略図を示す。センサーの作用電極が電気的に接続されると、+40mVとなった。
図3A~
図3D、
図4A~
図4B、
図5、及び
図6A~
図6Hに示す実験では、BASi Petit Ampere定電位電解装置(モデル:LC-3D; Bioanalytical Systems, Inc.、イリノイ州ウエストラファエット)を電流の測定に用いた。0.5秒のサンプリング間隔で0.03Hzのフィルターを用いた。電流信号を社内でLabView (National Instruments) ソフトウェアを用いて記録した。他の全ての実験で、高められた時間分解性能が望まれた。従って、高い時間分解性能を持つ定電位電解装置を用いた(モデル:1030C; CH Instruments, Inc.、テキサス州オースチン)。この定電位電解装置では、
図7及び
図8Bに示すものを除き、0.1秒のサンプリング間隔で3.2Hzのフィルターを用いた。図示のように、これらの実験で、この定電位電解装置は0.1秒のサンプリング間隔と3.2Hzフィルター又は0.032Hzフィルターの何れかを用いた。この信号は、製造者が提供しているソフトウェアを用いて記録された。時間に対する電流のピーク面積、ピーク高さ、及び電流測定電流の測定は、Graphpad Prism 6ソフトウェアを用いて行った。全ての実験は、33℃の100mMのPBS緩衝液(pH=7.4、100mMのNaCl)中で行われた。
【0184】
本明細書を通して開示・図示されたように、本開示の実施形態による蓄積モードでの感知を用いて、低検体濃度で電流測定よりも優れた検出を提供し得る。
【0185】
特定の例示的な態様を参照しながら本開示を例示及び説明したが、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲に規定される本開示の思想及び範囲から逸脱することなく、説明した態様に種々の修正や変更を加えることが可能である。