(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】光電素子及びそれを利用するディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220907BHJP
G09F 9/35 20060101ALI20220907BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220907BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220907BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20220907BHJP
H01L 31/075 20120101ALI20220907BHJP
H04N 5/369 20110101ALI20220907BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20220907BHJP
H01L 31/054 20140101ALI20220907BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G09F9/35
G09F9/30 349B
G09F9/30 349C
G02F1/1335 505
G02F1/1333
H01L31/06 500
H04N5/369
H01L31/02 D
H01L31/04 620
(21)【出願番号】P 2020095480
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501134691
【氏名又は名称】凌巨科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Giantplus Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】15 Industrial Rd., Toufen, Miao-Li, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 康志
(72)【発明者】
【氏名】康 鎮璽
(72)【発明者】
【氏名】周 凱茹
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103941471(CN,A)
【文献】特開2012-134476(JP,A)
【文献】特開2010-244042(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102540565(CN,A)
【文献】特開2010-267934(JP,A)
【文献】特開2009-099468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G09F 9/35
G09F 9/30
G02F 1/1335
G02F 1/1333
H01L 31/075
H04N 5/369
H01L 31/0232
H01L 31/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された光を、カラーフィルタ構造により配色して、表示画面から出射するディスプレイパネルであって、
前記カラーフィルタ構造は、少なくとも一部のカラーレジストに代えて、P型ドープ層及びN型ドープ層がアンドープ層で隔てられたPIN構造を備える複数の光電素子が設けられ、
該複数の光電素子は、赤色の光透過パターンを実現する第1の光電素子と、緑色の光透過パターンを実現する第2の光電素子と、青色の光透過パターンを実現する第3の光電素子とのうち、少なくとも1種の光電素子を含み、前記第1~第3の光電素子は、バンドギャップが互いに異なる3種の半導体により各々の前記アンドープ層が形成され
、
前記カラーフィルタ構造は、前記複数の光電素子を挟み込む態様で配置される一対の透明な電極層と、該一対の電極層のいずれか一方を介して、前記第1~第3の光電素子のうち前記複数の光電素子に含まれる光透過用の光電素子と接続される複数のTFT素子と、を含むと共に、センシングモードとして動作可能に構成され、
該センシングモード時に、
前記カラーフィルタ構造は、前記光源から照射された光が、前記表示画面から赤色光として出射されるように配色し、
前記複数のTFT素子は、前記光透過用の光電素子へ逆バイアスを提供し、
前記光透過用の光電素子の各々は、前記表示画面から出射して、該表示画面に接触ないし近接する物体により反射された反射光を、前記アンドープ層を形成する半導体の光吸収特性に応じて吸収し、
前記一対の電極層は、前記光透過用の光電素子から電流を取り出し、取り出した電流毎に、電流の強弱に応じた電気信号を生成し、該電気信号が、前記表示画面に接触ないし近接した物体の凹凸情報の抽出に用いられることを特徴とするディスプレイパネル。
【請求項2】
前記電気信号は、前記表示画面に接触ないし近接した物体の凹凸情報の抽出に用いられる際に、取り出し元の前記光透過用の光電素子の位置情報が加味されることを特徴とする請求項1記載のディスプレイパネル。
【請求項3】
前記光源が、バックライトモジュールであることを特徴とする請求項
1又は2記載のディスプレイパネル。
【請求項4】
前記複数の光電素子は、前記3種の半導体が重ねられて前記アンドープ層が形成された第4の光電素子を含み、該第4の光電素子によってブラックマトリクスが実現されることを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項記載のディスプレイパネル。
【請求項5】
前記第1の光電素子は、波長が635~730nmの光を透過させるように、バンドギャップが1.7~1.95eVに調整されたアモルファスシリコンによって、前記アンドープ層が形成されることを特徴とする請求項
1から
4のいずれか1項記載のディスプレイパネル。
【請求項6】
前記第2の光電素子は、波長が550~688nmの光を透過させるように、バンドギャップが1.8~2.26eVに調整されたリン化ガリウムによって、前記アンドープ層が形成されることを特徴とする請求項
1から
5のいずれか1項記載のディスプレイパネル。
【請求項7】
前記第3の光電素子は、波長が388~590nmの光を透過させるように、バンドギャップが2.1~3.2eVに調整された窒化インジウムガリウムによって、前記アンドープ層が形成されることを特徴とする請求項
1から
6のいずれか1項記載のディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電素子及び光電素子を利用するディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶のディスプレイパネルは、例えば、特許文献1に開示されるような構造や、
図5に示すような構造を備えている。
図5を参照して、従来のディスプレイパネル100は、ガラス基板30と、カラーフィルタ構造102と、液晶40と、アレイ基板52と、ガラス基板54と、バックライトモジュール60とを含んでいる。バックライトモジュール60から照射される光は、液晶分子配列が電気的に制御された液晶40を通過し、カラーフィルタ構造102において色相が付与されて出射される。すなわち、赤色のカラーレジスト(R)を通過する光は赤色光RLとして出射され、緑色のカラーレジスト(G)を通過する光は緑色光GLとして出射され、青色のカラーレジスト(B)を通過する光は青色光BLとして出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような従来のディスプレイパネル100のカラーフィルタ構造102は、RGBの3原色を利用して様々な色を作り出すこと、ブラックマトリクス(BM)のシェーディングによって隣接する2色の光の混合を防止することなどができるが、それ以外に有効な用途がなく、改善の余地があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディスプレイパネルのカラーフィルタ構造の利用価値を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)P型ドープ層及びN型ドープ層がアンドープ層で隔てられたPIN構造を備える光電素子であって、バンドギャップが調整されて所定範囲の波長の光透過特性が付与された少なくとも1種の半導体により、前記アンドープ層が形成されていることで、ディスプレイパネルのカラーフィルタ構造において、RGBの光透過パターン及び/又はブラックマトリクスとして利用される光電素子。
【0007】
本項に記載の光電素子は、P型ドープ層及びN型ドープ層がアンドープ層で隔てられたPIN構造を備えるものであり、アンドープ層が少なくとも1種の半導体により形成される。そして、このアンドープ層を形成する少なくとも1種の半導体は、所定範囲の波長の光透過特性が付与されるように、バンドギャップが調整されたものである。このため、赤色光を透過するように調整された半導体と、緑色光を透過するように調整された半導体と、青色光を透過するように調整された半導体との、3種の半導体の夫々によってアンドープ層が形成された3種の光電素子により、三原色であるRGBの光透過パターンが実現される。
【0008】
更に、例えばバンドギャップが調整された複数の半導体の組み合わせによって、RGBのいずれの波長の光も遮断するようにアンドープ層が形成された光電素子により、ブラックマトリクスが実現される。従って、これらの光電素子は、ディスプレイパネルのカラーフィルタ構造において、カラーレジストに代えて、RGBの光透過パターン及びブラックマトリクスとして利用されるものとなる。これにより、そのようなカラーフィルタ構造において、配色だけでなく、光電素子を利用した様々な機能が実現されることとなるため、カラーフィルタ構造の利用価値が向上されるものとなる。
【0009】
(2)光源から照射された光を、カラーフィルタ構造により配色して、表示画面から出射するディスプレイパネルであって、前記カラーフィルタ構造は、少なくとも一部のカラーレジストに代えて、P型ドープ層及びN型ドープ層がアンドープ層で隔てられたPIN構造を備える複数の光電素子が設けられ、該複数の光電素子は、赤色の光透過パターンを実現する第1の光電素子と、緑色の光透過パターンを実現する第2の光電素子と、青色の光透過パターンを実現する第3の光電素子とのうち、少なくとも1種の光電素子を含み、前記第1~第3の光電素子は、バンドギャップが互いに異なる3種の半導体により各々の前記アンドープ層が形成されているディスプレイパネル。
【0010】
本項に記載のディスプレイパネルは、光源から照射された光を、カラーフィルタ構造を通して配色して表示画面から出射するものであり、そのカラーフィルタ構造に、少なくとも一部のカラーレジストに代えて、複数の光電素子が設けられたものである。これら複数の光電素子は、P型ドープ層及びN型ドープ層がアンドープ層で隔てられたPIN構造を備えるものであり、第1~第3の光電素子のうちの少なくとも1種の光電素子を含んでいる。これら第1~第3の光電素子は、RGBの夫々の光透過パターンを実現するように、バンドギャップが互いに異なる3種の半導体によってアンドープ層が形成されている。
【0011】
すなわち、例えば第1の光電素子は、赤色光を透過するように調整された半導体によりアンドープ層が形成され、第2の光電素子は、緑色光を透過するように調整された半導体によりアンドープ層が形成され、第3の光電素子は、青色光を透過するように調整された半導体によりアンドープ層が形成される。これにより、本項に記載のディスプレイパネルは、複数の光電素子のアンドープ層を形成する半導体のバンドギャップ調整によって、カラーフィルタの機能が実現されるものとなる。更に、光源から照射される光への配色機能に加えて、複数の光電素子を利用した様々な機能が、カラーフィルタ構造によって実現されることとなるため、カラーフィルタ構造の利用価値が向上されるものとなる。
【0012】
(3)上記(2)項において、前記光源が、バックライトモジュールであるディスプレイパネル。
本項に記載のディスプレイパネルは、光源がバックライトモジュールであることで、表示装置として適切な光量が容易に得られるものである。
【0013】
(4)上記(2)(3)項において、前記複数の光電素子は、前記3種の半導体が重ねられて前記アンドープ層が形成された第4の光電素子を含み、該第4の光電素子によってブラックマトリクスが実現されるディスプレイパネル。
本項に記載のディスプレイパネルは、カラーフィルタ構造に用いられる複数の光電素子に、第1~第3の光電素子に加えて第4の光電素子が含まれたものである。この第4の光電素子は、第1~第3の光電素子のアンドープ層を形成する3種の半導体が重ねられて、アンドープ層が形成されている。
【0014】
すなわち、赤色光を透過するようにバンドギャップが調整された半導体と、緑色光を透過するようにバンドギャップが調整された半導体と、青色光を透過するようにバンドギャップが調整された半導体とが重ねられている。換言すれば、赤色光以外の波長の光を吸収する半導体と、緑色光以外の波長の光を吸収する半導体と、青色光以外の波長の光を吸収する半導体とが重ねられている。これにより、第4の光電素子によって、RGBのいずれの波長の光も遮断するブラックマトリクスが実現されるため、第1~第3の光電素子と異なる半導体を利用してブラックマトリクスを実現する場合と比較して、コストが抑制されるものとなる。
【0015】
(5)上記(2)から(4)項において、前記カラーフィルタ構造は、前記複数の光電素子を挟み込む態様で配置される一対の透明な電極層を含むと共に、発電モードとして動作可能に構成され、該発電モード時に、前記第1~第3の光電素子のうち前記複数の光電素子に含まれる光透過用の光電素子の各々は、前記電極層の各々を通過して到達した前記光源及び/又は周囲からの入射光を、前記アンドープ層を形成する半導体の光吸収特性に応じて吸収し、前記一対の電極層は、前記光透過用の光電素子から電流を取り出すディスプレイパネル。
【0016】
本項に記載のディスプレイパネルは、カラーフィルタ構造が一対の透明な電極層を含み、これら一対の電極層の間に複数の光電素子が配置されることで、カラーレジストに代えて複数の光電素子が設けられた部分は、一方の電極層、P型/N型ドープ層、アンドープ層、N型/P型ドープ層、及び他方の電極層が、この記載順序で積層された構造となる。又、カラーフィルタ構造は、発電モードとして動作可能に構成されており、この発電モード時に、第1~第3の光電素子のうち複数の光電素子に含まれる光透過用の光電素子の各々は、光源及び/又は周囲からの入射光を吸収する。すなわち、光透過用の光電素子の各々は、光源の位置に応じていずれかの透明の電極層を通過した光源からの入射光と、表示画面側の透明の電極層を通過した周囲からの入射光、換言すれば、表示画面を介して入射するディスプレイパネルが配置された周囲環境からの入射光との、少なくともいずれか一方の入射光を、アンドープ層を形成している半導体によって吸収する。ここで、光透過用の光電素子とは、複数の光電素子に含まれる第1~第3の光電素子を示しており、例えば、複数の光電素子に第1の光電素子のみが含まれている場合は、その第1の光電素子を示す。又、複数の光電素子に第1の光電素子と第3の光電素子とが含まれている場合は、それらの第1及び第3の光電素子を示し、複数の光電素子に第1~第3の全ての光電素子が含まれている場合は、それら第1~第3の全ての光電素子を示すことになる。
【0017】
より詳しくは、例えば第1の光電素子は、赤色光を透過するようにバンドギャップが調整された半導体によりアンドープ層が形成されていることで、その半導体によって緑色光や青色光といった赤色光以外の波長の光を吸収する。このため、光透過用の光電素子により、各々のアンドープ層を形成する半導体の光吸収特性に応じた波長の光を吸収して、各々のアンドープ層に電子正孔対を生成して内蔵電界を生じさせる。そして、発電モード時に、一対の電極層は、光透過用の光電素子において、P型ドープ層及びN型ドープ層を介した電子正孔対の分離により生じる光起電力から、電流を取り出すように形成される。これにより、本項に記載のディスプレイパネルのカラーフィルタ構造は、光源からの光及び/又は周囲環境からの光を利用し、太陽電池の如く機能して発電を行うものとなり、その利用価値が一層向上されるものとなる。
【0018】
(6)上記(2)から(4)項において、前記カラーフィルタ構造は、前記複数の光電素子を挟み込む態様で配置される一対の透明な電極層と、該一対の電極層のいずれか一方を介して、前記第1~第3の光電素子のうち前記複数の光電素子に含まれる光透過用の光電素子と接続される複数のTFT素子と、を含むと共に、センシングモードとして動作可能に構成され、該センシングモード時に、前記カラーフィルタ構造は、前記光源から照射された光が、前記表示画面から赤色光として出射されるように配色し、前記複数のTFT素子は、前記光透過用の光電素子へ逆バイアスを提供し、前記光透過用の光電素子の各々は、前記表示画面から出射して、該表示画面に接触ないし近接する物体により反射された反射光を、前記アンドープ層を形成する半導体の光吸収特性に応じて吸収し、前記一対の電極層は、前記光透過用の光電素子から電流を取り出し、取り出した電流毎に、電流の強弱に応じた電気信号を生成し、該電気信号が、前記表示画面に接触ないし近接した物体の凹凸情報の抽出に用いられるディスプレイパネル。更に、前記電気信号は、前記表示画面に接触ないし近接した物体の凹凸情報の抽出に用いられる際に、取り出し元の前記光透過用の光電素子の位置情報が加味されるディスプレイパネル。
【0019】
本項に記載のディスプレイパネルは、カラーフィルタ構造が、一対の透明な電極層と複数のTFT素子とを含むものである。一対の透明な電極層は、複数の光電素子を挟み込むように配置されることで、カラーレジストに代えて複数の光電素子が設けられた部分は、一方の電極層、P型/N型ドープ層、アンドープ層、N型/P型ドープ層、及び他方の電極層が、この記載順序で積層された構造となる。複数のTFT素子は、一対の電極層のいずれか一方を介して、第1~第3の光電素子のうち複数の光電素子に含まれる光透過用の光電素子と接続されるものである。すなわち、上述した積層構造の上側或いは下側に、複数のTFT素子が配置される層が形成される。ここでの光透過用の光電素子とは、上記(5)項で説明した光透過用の光電素子と同様のものである。
【0020】
又、カラーフィルタ構造は、センシングモードとして動作可能に構成されており、このセンシングモード時に、光源から照射された光が、表示画面から赤色光として出射されるように、複数の光電素子などを制御して配色する。更に、センシングモード時に、複数のTFT素子は、接続先の光透過用の光電素子へ逆バイアスを提供し、これら光透過用の光電素子の各々は、表示画面から赤色光として出射して、表示画面に接触ないし近接する物体により反射された反射光を吸収する。すなわち、光透過用の光電素子により、各々のアンドープ層を形成する半導体の光吸収特性に応じた波長の光を吸収し、これによって、各々のアンドープ層に電子正孔対を生成して内蔵電界を生じさせる。又、同じくセンシングモード時に、一対の電極層は、光透過用の光電素子から電流を取り出し、取り出した電流毎に、電流の強弱に応じた電気信号を生成する。
【0021】
ここで、表示画面に接触ないし近接する物体により反射された反射光は、物体の表面の凹凸などに応じた反射特性や散乱特性により、様々な明暗のレベルで反射されている。このため、光透過用の光電素子の各々から取り出される電流は、吸収した反射光の明暗のレベルに応じて強弱が変化する。そこで、一対の電極層は、光透過用の光電素子から取り出した電流毎に、電流の強弱に応じた大きさの電気信号を生成する。そして、これらの電気信号の各々に、取り出し元の光電素子の位置情報が加味されることで、光透過用の光電素子の配置に応じた平面的な信号情報が得られることになる。これにより、表示画面に接触ないし近接する物体の凹凸情報が平面的に得られるため、指紋などを検知する光センサの如く機能するものとなり、カラーフィルタ構造の利用価値がより向上されるものとなる。
【0022】
(7)上記(2)から(6)項において、前記第1の光電素子は、波長が635~730nmの光を透過させるように、バンドギャップが1.7~1.95eVに調整されたアモルファスシリコンによって、前記アンドープ層が形成されるディスプレイパネル。
本項に記載のディスプレイパネルは、赤色光を透過させる第1の光電素子のアンドープ層を形成する半導体を規定するものである。すなわち、第1の光電素子のアンドープ層は、バンドギャップが1.7~1.95eVに調整されたアモルファスシリコンによって形成され、波長が635~730nmの光を透過させる。これにより、赤色光を透過させる第1の光電素子が容易に実現されるものとなる。
【0023】
(8)上記(2)から(7)項において、前記第2の光電素子は、波長が550~688nmの光を透過させるように、バンドギャップが1.8~2.26eVに調整されたリン化ガリウムによって、前記アンドープ層が形成されるディスプレイパネル。
本項に記載のディスプレイパネルは、緑色光を透過させる第2の光電素子のアンドープ層を形成する半導体を規定するものである。すなわち、第2の光電素子のアンドープ層は、バンドギャップが1.8~2.26eVに調整されたリン化ガリウムによって形成され、波長が550~688nmの光を透過させる。これにより、緑色光を透過させる第2の光電素子が容易に実現されるものとなる。
【0024】
(9)上記(2)から(8)項において、前記第3の光電素子は、波長が388~590nmの光を透過させるように、バンドギャップが2.1~3.2eVに調整された窒化インジウムガリウムによって、前記アンドープ層が形成されるディスプレイパネル。
本項に記載のディスプレイパネルは、青色光を透過させる第3の光電素子のアンドープ層を形成する半導体を規定するものである。すなわち、第3の光電素子のアンドープ層は、バンドギャップが2.1~3.2eVに調整された窒化インジウムガリウムによって形成され、波長が388~590nmの光を透過させる。これにより、青色光を透過させる第3の光電素子が容易に実現されるものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上記のような構成であるため、ディスプレイパネルのカラーフィルタ構造の利用価値を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の形態に係るディスプレイパネルの構造の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1のカラーフィルタ構造のブラックマトリクスの構造の一例を示すイメージ断面図である。
【
図3】
図1のディスプレイパネルを発電モードやセンシングモードで利用する場合の、光電素子単位でのイメージ構造図である。
【
図4】
図1のディスプレイパネルを発電モードやセンシングモードで利用する場合の、第1~第4の光電素子を含む構成におけるイメージ構造図である。
【
図5】従来のディスプレイパネルの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分若しくは対応する部分は、同一の符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係るディスプレイパネル10の構造を模式的に示している。図示のように、ディスプレイパネル10は、ガラス基板30、カラーフィルタ構造14、液晶40、アレイ基板52、ガラス基板54、及び光源60としてバックライトモジュール60を含んでいる。そして、液晶分子配列が電気的に制御された液晶40を通過する、バックライトモジュール60から照射された光を、カラーフィルタ構造14により配色して、表示画面12から出射するようになっている。
【0028】
カラーフィルタ構造14は、
図5に示したような従来のカラーフィルタ構造102を構成するカラーレジストに代えて、複数の光電素子16が縦横平面状(
図1における左右方向と紙面と直交する方向とで規定される平面状)に並べられて設けられている。これら複数の光電素子16の各々は、P型ドープ層18及びN型ドープ層20がアンドープ層22で隔てられたPIN構造を備えている。なお、P型ドープ層18及びN型ドープ層20は、アンドープ層22を挟んで対向する位置関係にあれば、アンドープ層22の
図1における上側或いは下側のどちらにあってもよい。更に、複数の光電素子16は、一対の透明な電極層26、28によって挟み込まれており、これらの電極層26、28に接続されている。
【0029】
複数の光電素子16は、第1~第4の光電素子16A~16Dを含み、これら第1~第4の光電素子16A~16Dは、アンドープ層22が互いに異なる半導体によって形成されている。本実施形態において、第1の光電素子16Aは、赤色光RLを透過させる(換言すれば、赤色光RL以外の波長の光を吸収する)ようにバンドギャップが調整された半導体によってアンドープ層22が形成されており、各図面では、第1の光電素子16Aのアンドープ層22Aを「R」として図示している。このため、バックライトモジュール60から照射された光のうち、第1の光電素子16Aを通過する光は、赤色光RLとして表示画面12から出射される。第1の光電素子16Aのアンドープ層22Aには、例えば、アモルファスシリコン(a-Si:H)が用いられ、そのバンドギャップが1.7~1.95eVに調整されて、波長が635~730nmの光を透過させる。
【0030】
一方、第2の光電素子16Bは、緑色光GLを透過させる(換言すれば、緑色光GL以外の波長の光を吸収する)ようにバンドギャップが調整された半導体によってアンドープ層22が形成されており、各図面では、第2の光電素子16Bのアンドープ層22Bを「G」として図示している。このため、バックライトモジュール60から照射された光のうち、第2の光電素子16Bを通過する光は、緑色光GLとして表示画面12から出射される。第2の光電素子16Bのアンドープ層22Bには、例えば、リン化ガリウム(GaP)が用いられ、そのバンドギャップが1.8~2.26eVに調整されて、波長が550~688nmの光を透過させる。
【0031】
又、第3の光電素子16Cは、青色光BLを透過させる(換言すれば、青色光BL以外の波長の光を吸収する)ようにバンドギャップが調整された半導体によってアンドープ層22が形成されており、各図面では、第3の光電素子16Cのアンドープ層22Cを「B」として図示している。このため、バックライトモジュール60から照射された光のうち、第3の光電素子16Cを通過する光は、青色光BLとして表示画面12から出射される。第3の光電素子16Cのアンドープ層22Cには、例えば、窒化インジウムガリウム(InGaN)が用いられ、そのバンドギャップが2.1~3.2eVに調整されて、波長が388~590nmの光を透過させる。
【0032】
他方、第4の光電素子16Dは、
図2に示すように、第1~第3の光電素子16A~16Cのアンドープ層22A~22Cに用いられる3種の半導体が重ねられて、アンドープ層22が形成されており、各図面では、第4の光電素子16Dのアンドープ層22Dを、ブラックマトリクスを示す「BM」として図示している。このため、バックライトモジュール60から照射された光のうち、第4の光電素子16Dに至る光は、3種の半導体の各々が有する光の吸収特性に応じた全ての波長が吸収され、表示画面12から出射されずに吸収される。第4の光電素子16Dは、第1~第3の光電素子16A~16Cが直接的に隣合って配置されないように、第1~第3の光電素子16A~16Cの間に介在して配置される。なお、
図2では、上からRGB(22A、22B、22C)の順序で3種の半導体が重ねられているが、重ね合わせの順序は任意である。
【0033】
図1には、第1~第3の光電素子16A~16Cが1つずつ図示されているが、これら3つの光電素子16A~16Cを構成単位として、
図1における左右方向及び紙面と直交する方向に並べられて、平面視で格子状に光電素子16A~16Cが配置されている。それらを挟み込む一対の透明な電極層26、28は、例えばITOなどの透明導電膜(TCO)として形成され、複数の光電素子16から電流を取り出すように形成されている。又、カラーフィルタ構造14の上にはガラス基板30を備えており、
図1の例では、このガラス基板30の上面を表示画面12として図示している。しかしながら、ガラス基板30の上側に偏光板などを備えていてもよく、この場合には、偏光板などの一方の面が表示画面12となる。
【0034】
ここで、本発明の実施の形態に係るディスプレイパネル10のカラーフィルタ構造14は、発電モード或いはセンシングモードとして動作可能に構成されている。発電モードとして動作可能に構成される場合、カラーフィルタ構造14は、例えば
図3及び
図4に示すように動作する。まず、第1の光電素子16Aを例にして1つの光電素子16単位で説明すると、
図3の左図に示すように、カラーフィルタ構造14の複数の光電素子16に含まれる、光透過用の光電素子16の各々には、
図3の上側から入射する入射光IAと、
図3の下側から入射する入射光IBとが入射する。
図3の上側から入射する入射光IAは、
図1も参照して、ディスプレイパネル10が設置される周囲環境からの光であり、照明の光や太陽光がそれに相当し、ガラス基板30を通って光電素子16へ入射する。これに対し、
図3の下側から入射する入射光IBは、バックライトモジュール60からの光であって、ガラス基板54、アレイ基板52、及び液晶40を通って光電素子16へ入射する。
【0035】
そして、発電モード時に、複数の光電素子16の各々は、周囲環境からの入射光IAを、アンドープ層22を形成している半導体の光吸収特性に応じて吸収する。すなわち、
図3の例において、第1の光電素子16Aは、そのアンドープ層22Aを形成している半導体の光吸収特性に応じて、入射光IA中の、半導体自体の波長よりも短い波長帯域の光を吸収する。すると、アンドープ層22Aに電子正孔対が生成され、内蔵電界が生じるため、N型ドープ層20/P型ドープ層18までに電子正孔対が分離され、それによって生じる光起電力から、透明な電極層28によって電流が引き出される。
図3の右上図には、そのようなイメージを図示している。
【0036】
更に、複数の光電素子16の各々は、発電モード時に、バックライトモジュール60からの入射光IBを、アンドープ層22を形成している半導体の光吸収特性に応じて吸収する。すなわち、
図3の例において、第1の光電素子16Aは、そのアンドープ層22Aを形成している半導体の光吸収特性に応じて、入射光IB中の、半導体自体の波長よりも短い波長帯域の光を吸収する。すると、アンドープ層22Aに電子正孔対が生成され、内蔵電界が生じるため、P型ドープ層18/N型ドープ層20までに電子正孔対が分離され、それによって生じる光起電力から、透明な電極層26によって電流が引き出される。
図3の右下図には、そのようなイメージを図示している。
【0037】
なお、
図3には、第1の光電素子16Aのみが図示されているが、
図4に示すように、第2及び第3の光電素子16B、16Cによっても、それらのアンドープ層22B、22Cを形成している半導体の光吸収特性に応じた光の吸収が行われる。そして、周囲環境からの入射光IA又はバックライトモジュール60からの入射光IBにより、光電素子16B、16Cの各々において光起電力が生じ、そこから透明な電極層26、28によって電流が取り出される。このような構成であるため、複数の光電素子16は、アンドープ層22を厚くして光吸収率を高めると共に、P型ドープ層18及びN型ドープ層20を薄くしてアンドープ層22に到達するまでの光の吸収を抑制することが好ましい。これにより、光からの変換効率が向上して取り出される電流量が多くなる。
【0038】
続いて、
図4を参照して、カラーフィルタ構造14がセンシングモードとして動作する場合について説明する。なお、光電素子16単体での動作イメージは、
図3に示した通りである。
図4に示すように、カラーフィルタ構造14は、複数のTFT素子70を含み、これら複数のTFT素子70は、
図4(a)に示すように、一方の電極層28を介して光透過用の第1~第3の光電素子16A~16Cと接続されるか、或いは、
図4(b)に示すように、もう一方の電極層26を介して光透過用の第1~第3の光電素子16A~16Cと接続される。電極層28を介して接続される場合は、アレイ基板52側に配置されることになり、所謂COA(Color filter on Array)が形成される。いずれの場合であっても、TFT素子70の各々は、ドレイン及びソース74がチャネル層78を挟んでゲート76と反対側に配置されるように、基板72によって保持された構造を有し、ドレイン及びソース74を介して第1~第3の光電素子16A~16Cと接続されている。そして、複数のTFT素子70は、センシングモード時に、第1~第3の光電素子16A~16Cへ逆バイアスを提供するように形成されている。なお、TFT素子70の基板72は、断熱材やその他の用途のものであってもよい。
【0039】
又、
図1も参照して、センシングモード時に、カラーフィルタ構造14は、バックライトモジュール60から照射された光が、表示画面12から赤色光として出射されるように配色を行う。このとき、表示画面12に物体が接触ないし近接していると、周囲環境などからの光は、その物体の直下ではその物体に遮られて表示画面12から入射せず、表示画面12から出射した赤色光は、その物体により反射された反射光として表示画面12から入射する。例えば、人間の指が表示画面12に接触していた場合、指紋の谷で全反射を生じ、指紋の山で青/緑の光領域で拡散するなど、指紋の山谷に応じて異なる光のレベルで反射する。そして、第1~第3の光電素子16A~16Cの各々は、表示画面12から入射したそのような反射光を、各々のアンドープ層22A~22Cを形成する半導体の光吸収特性に応じて吸収する。
【0040】
更に、
図4(a)に示す構成では一方の電極層28が、
図4(b)に示す構成ではもう一方の電極層26が、センシングモード時に、TFT素子70により逆バイアスが提供されている第1~第3の光電素子16A~16Cから、上記のような光の吸収によって生じる電流を取り出し、取り出した電流毎に、電流の強弱に応じた電気信号を生成する。このとき、第1~第3の光電素子16A~16Cの各々において、空乏層の増加により静電容量が減少するため、応答時間が短縮される。そして、生成された電気信号の各々は、電流が取り出された光電素子16の位置情報と併せて利用されることで、表示画面12に接触ないし近接した物体の凹凸情報などの抽出に用いられる。
【0041】
ここで、本発明の実施の形態に係るディスプレイパネル10は、
図1~
図4に示した構成に限定されるものではなく、別の構成であってもよい。例えば、ディスプレイパネル10は、その機能が妨げられない限り、
図1に示す構成要素以外の構成要素を任意の位置に含んでいてもよい。又、カラーフィルタ構造14は、そのカラーフィルタを形成している部分の全てが光電素子16に置き換わっていなくてもよく、一部に従来のものと同様のカラーレジストが利用されていてもよい。すなわち、第1~第4の光電素子16A~16Dの一部のみが使用され、残りにカラーレジストが利用されていてもよい。又、カラーフィルタ構造14のブラックマトリクスを形成する第4の光電素子16Dのアンドープ層22Dは、
図2に示したような3種の半導体が重ねられた構造に限定されず、1種や2種、又は4種以上の半導体で構成されていてもよい。更に、カラーフィルタ構造14の位置は、ガラス基板30と液晶40との間に限定されることなく、アレイ基板52やガラス基板54に隣接する位置に配置されてもよい。又、光源60もバックライトモジュールに限定されず、例えば自発光材料で形成されるものであってもよく、バックライトモジュールである場合も、直下型方式とエッジライト方式とのいずれであってもよい。
【0042】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るディスプレイパネル10は、
図1に示すように、光源60から照射された光を、カラーフィルタ構造14を通して配色して表示画面12から出射するものであり、そのカラーフィルタ構造14に、少なくとも一部のカラーレジストに代えて、複数の光電素子16が設けられたものである。これら複数の光電素子16は、P型ドープ層18及びN型ドープ層20がアンドープ層22で隔てられたPIN構造を備えるものであり、第1~第3の光電素子16A~16Cのうちの少なくとも1種の光電素子を含んでいる。これら第1~第3の光電素子16A~16Cは、RGBの夫々の光透過パターンを実現するように、バンドギャップが互いに異なる3種の半導体によってアンドープ層22が形成されている。
【0043】
すなわち、例えば第1の光電素子16Aは、赤色光RLを透過するように調整された半導体によりアンドープ層22Aが形成され、第2の光電素子16Bは、緑色光GLを透過するように調整された半導体によりアンドープ層22Bが形成され、第3の光電素子16Cは、青色光BLを透過するように調整された半導体によりアンドープ層22Cが形成される。これにより、ディスプレイパネル10は、複数の光電素子16のアンドープ層22を形成する半導体のバンドギャップ調整によって、カラーフィルタの機能を実現することができる。更に、光源60から照射される光への配色機能に加えて、複数の光電素子16を利用した様々な機能を、カラーフィルタ構造14によって実現することができるため、カラーフィルタ構造14の利用価値を向上させることが可能となる。
又、本発明の実施の形態に係るディスプレイパネル10は、光源60がバックライトモジュールであることで、表示装置として適切な光量を容易に得ることができる。
【0044】
又、本発明の実施の形態に係るディスプレイパネル10は、カラーフィルタ構造14に用いられる複数の光電素子16に、第1~第3の光電素子16A~16Cに加えて第4の光電素子16Dが含まれたものである。この第4の光電素子16Dは、
図2に示すように、第1~第3の光電素子16A~16Cのアンドープ層22A~22Cを形成する3種の半導体が重ねられて、アンドープ層22Dが形成されている。すなわち、赤色光RL以外の波長の光を吸収する半導体と、緑色光GL以外の波長の光を吸収する半導体と、青色光BL以外の波長の光を吸収する半導体とが重ねられている。これにより、第4の光電素子16Dによって、RGBのいずれの波長の光も遮断するブラックマトリクスを実現することができるため、第1~第3の光電素子16A~16Cと異なる半導体を利用してブラックマトリクスを実現する場合と比較して、コストを抑制することができる。
【0045】
更に、本発明の実施の形態に係るディスプレイパネル10は、
図1に示すように、カラーフィルタ構造14が一対の透明な電極層26、28を含み、これら一対の電極層26、28の間に複数の光電素子16が配置される。このため、カラーレジストに代えて複数の光電素子16が設けられた部分は、一方の電極層26、P型/N型ドープ層18/20、アンドープ層22、N型/P型ドープ層20/18、及び他方の電極層28が、この記載順序で積層された構造となる。又、カラーフィルタ構造14は、発電モードとして動作可能に構成されており、この発電モード時に、第1~第3の光電素子16A~16Cのうち複数の光電素子16に含まれる光透過用の光電素子16の各々は、
図3に示すように、光源60及び/又は周囲からの入射光IB、IAを吸収する。すなわち、光透過用の光電素子16A~16Cの各々は、光源60としてのバックライトモジュール60側の透明の電極層28を通過したバックライトモジュール60からの入射光IBと、バックライトモジュール60の反対に位置する表示画面12側の透明の電極層26を通過した周囲からの入射光IA、換言すれば、表示画面12を介して入射するディスプレイパネル10が配置された周囲環境からの入射光IAとの、少なくともいずれか一方の入射光を、アンドープ層22を形成している半導体によって吸収する。
【0046】
より詳しくは、例えば第1の光電素子16Aは、赤色光RLを透過するようにバンドギャップが調整された半導体によりアンドープ層22Aが形成されていることで、その半導体によって緑色光GLや青色光BLといった赤色光RL以外の波長の光を吸収する。このため、光透過用の光電素子16A~16Cにより、各々のアンドープ層22を形成する半導体の光吸収特性に応じた波長の光を吸収して、各々のアンドープ層22に電子正孔対を生成して内蔵電界を生じさせる。そして、発電モード時に、一対の電極層26、28は、光透過用の光電素子16A~16Cにおいて、P型ドープ層18及びN型ドープ層20を介した電子正孔対の分離により生じる光起電力から、電流を取り出すように形成される。これにより、カラーフィルタ構造14は、光源60からの光及び/又は周囲環境からの光を利用し、太陽電池の如く機能して発電を行うことができ、その利用価値を一層向上させることが可能となる。
【0047】
加えて、本発明の実施の形態に係るディスプレイパネル10は、カラーフィルタ構造14が、センシングモードとして動作可能に構成されていてもよいものである。この場合、カラーフィルタ構造14は、
図4に示すように、更に複数のTFT素子70を含んでいる。これら複数のTFT素子70は、一対の電極層26、28のいずれか一方を介して、第1~第3の光電素子16A~16Cのうち複数の光電素子16に含まれる光透過用の光電素子16と接続されるものである。又、センシングモード時に、カラーフィルタ構造14は、光源60としてのバックライトモジュール60から照射された光が、表示画面12から赤色光として出射されるように、複数の光電素子16などを制御して配色する。
【0048】
更に、センシングモード時に、複数のTFT素子70は、接続先の光透過用の光電素子16A~16Cへ逆バイアスを提供し、これら光透過用の光電素子16A~16Cの各々は、表示画面12から赤色光として出射して、表示画面12に接触ないし近接する物体により反射された反射光を吸収する。すなわち、光透過用の光電素子16A~16Cにより、各々のアンドープ層22A~22Cを形成する半導体の光吸収特性に応じた波長の光を吸収し、これによって、各々のアンドープ層22A~22Cに電子正孔対を生成して内蔵電界を生じさせる。又、同じくセンシングモード時に、一対の電極層26、28は、光透過用の光電素子16A~16Cから電流を取り出し、取り出した電流毎に、電流の強弱に応じた電気信号を生成する。
【0049】
ここで、表示画面12に接触ないし近接する物体により反射された反射光は、物体の表面の凹凸などに応じた反射特性や散乱特性により、様々な明暗のレベルで反射されている。このため、光透過用の光電素子16A~16Cの各々から取り出される電流は、吸収した反射光の明暗のレベルに応じて強弱が変化する。そこで、一対の電極層26、28は、光透過用の光電素子16A~16Cから取り出した電流毎に、電流の強弱に応じた大きさの電気信号を生成する。そして、これらの電気信号の各々に、取り出し元の光電素子16の位置情報を加味することで、光透過用の光電素子16A~16Cの配置に応じた平面的な信号情報を得ることができる。これにより、表示画面12に接触ないし近接する物体の凹凸情報を平面的に得ることができるため、指紋などを検知する光センサの如く機能することができ、カラーフィルタ構造14の利用価値をより向上させることが可能となる。
【0050】
他方、本発明の実施の形態に係る光電素子16は、
図1に示すように、P型ドープ層18及びN型ドープ層20がアンドープ層22で隔てられたPIN構造を備えるものであり、アンドープ層22が少なくとも1種の半導体により形成される。そして、このアンドープ層22を形成する少なくとも1種の半導体は、所定範囲の波長の光透過特性が付与されるように、バンドギャップが調整されたものである。このため、赤色光RLを透過するように調整された半導体と、緑色光GLを透過するように調整された半導体と、青色光BLを透過するように調整された半導体との、3種の半導体の夫々によってアンドープ層22が形成された3種の光電素子16A~16Cにより、三原色であるRGBの光透過パターンを実現することができる。
【0051】
そして、3種の光電素子16A~16Cのアンドープ層22A~22Cは、以下のような半導体で形成されるものである。すなわち、第1の光電素子16Aのアンドープ層22Aは、バンドギャップが1.7~1.95eVに調整されたアモルファスシリコンによって形成され、波長が635~730nmの光を透過させる。又、第2の光電素子16Bのアンドープ層22Bは、バンドギャップが1.8~2.26eVに調整されたリン化ガリウムによって形成され、波長が550~688nmの光を透過させる。更に、第3の光電素子16Cのアンドープ層22Cは、バンドギャップが2.1~3.2eVに調整された窒化インジウムガリウムによって形成され、波長が388~590nmの光を透過させる。このようにして、RGBの夫々の光を透過させる第1~第3の光電素子16A~16Cを、容易に実現することができる。
【0052】
更に、例えば
図2のように、バンドギャップが調整された複数の半導体の組み合わせによって、RGBのいずれの波長の光も遮断するようにアンドープ層22が形成された第4の光電素子16Dにより、ブラックマトリクスを実現することができる。従って、これらの光電素子16は、ディスプレイパネル10のカラーフィルタ構造14において、カラーレジストに代えて、RGBの光透過パターン及びブラックマトリクスとして利用することができる。これにより、そのようなカラーフィルタ構造14において、配色だけでなく、光電素子16を利用した様々な機能を実現することができるため、カラーフィルタ構造14の利用価値を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、カラーフィルタ構造の配色用素子として光電素子を用いるため、ディスプレイパネルのみではなく、太陽光発電や光センサにも利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10:ディスプレイパネル、12:表示画面、14:カラーフィルタ構造、16(16A~16D):光電素子、18:P型ドープ層、20:N型ドープ層、22(22A~22D):アンドープ層、26、28:透明な電極層、60:光源(バックライトモジュール)、70:TFT素子