(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】積層膜、積層膜を備える移植組織、および積層膜を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2020126929
(22)【出願日】2020-07-28
(62)【分割の表示】P 2019563601の分割
【原出願日】2018-05-18
【審査請求日】2020-07-28
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514222743
【氏名又は名称】クリアストリーム・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ウォール,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ブレイディ,コナー
(72)【発明者】
【氏名】フォード,コリン
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラン,マイケル
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-200291(JP,A)
【文献】特開2004-089718(JP,A)
【文献】特表2010-500110(JP,A)
【文献】国際公開第2011/158642(WO,A1)
【文献】特表2013-501857(JP,A)
【文献】国際公開第2016/130674(WO,A1)
【文献】特表2015-515358(JP,A)
【文献】特表2000-504594(JP,A)
【文献】特開2008-119022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植組織のための積層膜の製造方法であって、
内層厚を有する内層を提供するステップと、
前記内層の一方の側に、第1の被覆層厚を有する第1の被覆層を提供するステップと、
前記内層の他方の側に、第2の被覆層厚を有する第2の被覆層を提供するステップと
を含み、
前記内層は、ポリウレタンとポリテトラフルオロエチレンとの複合材料を含むか、またはポリウレタンとポリテトラフルオロエチレンとの複合材料のみから構成され、前記第1の被覆層および前記第2の被覆層のうちの少なくとも一方は、親水性材料を含むか、または親水性材料のみから構成される、積層膜の製造方法。
【請求項2】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層のうちの少なくとも一方は、前記内層が作られる材料よりも低摩擦の材料から作られる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記内層の剛性は、前記第1の被覆層および前記第2の被覆層のうちの少なくとも一方の剛性よりも高い、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層のうちの少なくとも一方の弾性は、前記内層の弾性より高いか、または同じである、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層のうちの少なくとも一方は、前記積層膜の外面層である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記内層、前記第1の被覆層、および前記第2の被覆層のうちの少なくとも1つは、電界紡糸、押し出し成形、フィルム成形、ディップ成形、回転成形、噴霧堆積、または蒸気堆積から作られる、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記内層は、第1の被覆層および第2の被覆層のうちの少なくとも一方よりも高い弾性復元力、引裂き抵抗性、および透水性のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層のうちの少なくとも一方は、前記内層よりも低い表面エネルギーを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記内層厚は4~8μmであり、前記第1の被覆層厚および前記第2の被覆層厚のうちの少なくとも一方は1~3μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記内層厚は6~10μmであり、前記第1の被覆層厚および前記第2の被覆層厚のうちの少なくとも一方は1~4μmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記内層と前記第1の被覆層との間の結合層、および前記内層と前記第2の被覆層との間の結合層のうちの少なくとも一方を備える、請求項1~
10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1の被覆層厚および前記第2の被覆層厚のうちの少なくとも一方は、前記内層厚より小さい、請求項1~
11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層のうちの少なくとも一方は、前記内層の前記一方の側または前記他方の側をそれぞれ完全に被覆する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層は共に、前記内層の全ての外表面を被覆する、請求項
13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記内層の剛性は0.9~2.5GPa、または1.1~2.3GPa、または1.3~2.1GPaである、請求項1~
14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層のうちの少なくとも一方の剛性は、0.1~0.75GPa、または0.25~0.65GPa、または0.4~0.55GPaである、請求項1~
15のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層膜、積層膜を備える移植組織、および積層膜を製造する方法に関する。より具体的には、本開示は、内層、内層の一方の側に配設された第1の被覆層、および内層の他方の側に配設された第2の被覆層を有する積層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の内腔を塞ぐための塞栓形成装置は、WO2014/140325A1およびWO2016/041961A2で開示されており、それらは両方、本明細書に参照として組み込まれる。
【0003】
このような閉塞形成装置は、コア、およびコアから径方向外側に延びる複数の可撓性剛毛を有し得る。閉塞形成装置には、収縮送達構成、および拡張展開構成を有する膜も提供され得る。収縮送達構成は、閉塞形成装置が送達カテーテルの中に搭載され得るものであり、閉塞形成装置を、身体の内腔に送達するための送達カテーテルを通して、移動させることができる。
【0004】
しかし、送達カテーテルを通して移動させる間に、閉塞形成装置の膜は、例えば移動中に膜に作用する力により、当初の収縮送達構成から折れることによって変形し得る。このような力は、閉塞形成装置の剛毛および/または送達カテーテルの内壁によって作用され得る。
【0005】
さらに、身体の内腔へ送達した際に、送達カテーテルを通した移動中の膜の、この変形のために、収縮送達構成から拡張展開構成への膜の拡張が、確実には生じ得ない。このような場合において、膜は、その意図された拡張展開構成まで完全には拡張しないか、またはその表面にうねりを呈し得る。これに加えて、送達した際に、膜に隣接する剛毛も確実には拡張し得ない。例えば、剛毛は、装置の周辺に均一に配分されずに凝集され得る。これらの問題は、身体の内腔の閉塞を損ねる結果となり、剛毛の不均一な配分のために固定する力が弱まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、送達カテーテルを通した移動中に膜の変形を最小限に抑える一方で、膜および隣接する剛毛を、拡張展開構成まで確実に拡張することも可能にする、改善された閉塞形成装置が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、内層厚を有する内層と、内層の一方の側に配設され、第1の被覆層厚を有する第1の被覆層と、内層の他方の側に配設され、第2の被覆層厚を有する第2の被覆層とを備える、移植組織のための積層膜が提供される。
【0008】
第2の態様において、収縮送達構成および拡張展開構成を有するよう構成された、第1の態様の積層膜を備える移植組織が提供される。
第3の態様において、内層厚を有する内層を提供することと、内層の一方の側に、第1の被覆層厚を有する第1の被覆層を提供することと、内層の他方の側に、第2の被覆層厚を有する第2の被覆層を提供することとを含む、移植組織のための積層膜を製造する方法が提供される。
【0009】
本開示のより良好な理解のため、および、いかに本開示が実施され得るかを示すために、以下の例示的な図を、例としてのみ参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の1つの実施形態による積層膜の断面図である。
【
図2】本開示の別の実施形態による積層膜の断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態による積層膜を伴う、閉塞形成装置の図である。
【
図4】身体の内腔において拡張展開構成にある、
図3に示した閉塞形成装置の図である。
【
図5】送達カテーテル内で収縮送達構成にある、
図3に示した閉塞形成装置の図である。
【
図6】本開示の実施形態による積層膜の平面図である。
【
図7】本開示の別の実施形態による積層膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示の一実施形態による積層膜10の断面図である。積層膜10は、内層厚Xを有する内層11、第1の被覆層厚Yを有する第1の被覆層12、および第2の被覆層厚Zを有する第2の被覆層13を備える。第1の被覆層12は、内層11の一方の側に配設される。第2の被覆層13は、内層11の他方の側に配設される。この実施形態において、第1の被覆層12は内層11の一方の側に配設され、かつ第2の被覆層13は内層11の反対の側に配設される。
【0012】
図6に示すように、積層膜10、ならびに内層11、第1の被覆層12および第2の被覆層13の各々は円板形状であってよい。積層膜10は、中央の貫通穴Hを有し得る。
第1の被覆層12は、内層11の一方の側を全体に被覆し得る。第2の被覆層13は、内層12の他方の側を全体に被覆し得る。
【0013】
積層膜10は、収縮送達構成および拡張展開構成を有するように構成され得る。収縮送達構成(
図5参照)において、積層膜10は、拡張展開構成(
図4参照)よりも小さい径方向幅を伴う円錐形状を形成する。
【0014】
内層11は、剛性および弾性などの積層膜10の構造特性をもたらす、積層膜10の根幹部を提供する。この実施形態において、第1の被覆層12および第2の被覆層13は、積層膜10の最も外側の表面層である。第1の被覆層12および第2の被覆層13は、摩擦特性および表面エネルギーなどの、積層膜10の外表面における特性を定める。
【0015】
第1の被覆層12および第2の被覆層13は各々、内層11が作られる材料よりも低い摩擦の材料から作られてよい。
当業者は、いずれの材料が別の材料よりも低い摩擦であるかを判断する、多くの方法を認識するであろう。例えば、比較される材料は、平坦な表面を有するように形成されてよく、これらの表面の(それ自体または別の一般的な表面に対する)表面エネルギー、表面粗度、または静摩擦係数を、当業者によって確認され得るように測定してもよい。試験される材料の各々の平坦表面は、同じ処理(例えば電界紡糸、押し出し成形、フィルム成形、ディップ成形、回転成形、噴霧堆積、または蒸気堆積(換言すれば、蒸着)など)によって形成され得る。
【0016】
換言すると、第1の被覆層12および第2の被覆層13のうちの少なくとも一方は、内層11が作られる材料よりも低い表面粗度または静摩擦係数(それ自体または別の一般的な表面に対して測定)を呈する材料から作られる。
【0017】
内層11の剛性は、第1の被覆層12および第2の被覆層13の各々の剛性よりも高くてよい。
第1の被覆層12および/または第2の被覆層13の弾性は、内層11の弾性より高いか、または等しくてよい。このような場合、積層膜10は、恒久的に変形する恐れなく、より小さい径方向の外形を有する収縮送達構成を可能にし得る。なぜなら、積層膜10を曲げる間に、内層11よりも大きく伸長される第1の被覆層12および/または第2の被覆層13は、内層11よりも良好に伸縮できるからである。
【0018】
様々な材料が、内層11、第1の被覆層12、および第2の被覆層13に使用され得る。
例えば、内層11はポリウレタン(PU)で構成されてよく、第1の被覆層12および第2の被覆層13の各々は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されてよい。この場合、PUの内層11は、積層膜10に高い剛性をもたらし、その一方でPTFEの第1の被覆層12および第2の被覆層13は、低い摩擦を有する積層膜10の外表面となる。高い剛性は、積層膜10が確実に収縮送達構成から拡張展開構成へ移行するのを可能にして、その一方で低い摩擦面は、移動中の変形を軽減させ得る。
【0019】
この実施形態において、第1の被覆層厚Yおよび第2の被覆層厚Zは等しく、第1の被覆層厚Yおよび第2の被覆層厚Zは各々、内層厚Xよりも小さい。
内層厚Xは4~8μmであってよく、第1の被覆層厚Yおよび第2の被覆層厚Zは1~3μmであってよい。別の実施形態において、内層厚Xは6~10μmであってよく、第1の被覆層厚Yおよび第2の被覆層厚Zは1~4μmであってよい。
【0020】
積層膜10は、内層11を提供することによって、第1の被覆層12を内層11の一方の側に提供することによって、かつ第2の被覆層13を内層11の他方の側に提供することによって、製造され得る。内層11、第1の被覆層12、および第2の被覆層13の各々は、電界紡糸を用いて堆積させてよい。
【0021】
図2は、内層厚X’を有する内層21、第1の被覆層厚Y’を有する第1の被覆層22、および第2の被覆層厚Z’を有する第2の被覆層23を備える別の実施形態による、積層膜20の断面図である。第1の被覆層22は、内層21の一方の側に配設される。第2の被覆層23は、内層21の反対の側に配設される。
【0022】
内層厚X’は4~8μmであってよく、第1の被覆層厚Y’および第2の被覆層厚Z’は1~3μmであってよい。別の実施形態において、内層厚X’は6~10μmであってよく、第1の被覆層厚Y’および第2の被覆層厚Z’は1~4μmであってよい。
【0023】
積層膜20は、第1の被覆層22および第2の被覆層23が、内層11の外側縁端面も被覆することを除いて、
図1に示した積層膜10と類似する。詳細には、第1の被覆層22および第2の被覆層23は、内層11の湾曲した縁端面も被覆する。したがって、第1の被覆層22および第2の被覆層23は共に、内層21の全ての外表面を被覆する。
【0024】
図3は、本開示の一実施形態による閉塞形成装置30の図である。閉塞形成装置30は、長手方向に延びたコア31、およびコア31から外側に延びた複数の可撓性剛毛32を有する。可撓性剛毛32は、収縮送達構成と、可撓性剛毛32がコアから概ね径方向外側に延びて装置を身体の内腔に固定する拡張展開構成と、を有するよう構成される。可撓性剛毛32は、収縮送達構成から拡張展開構成へ付勢されるよう、弾力性があるように構成され得る。
【0025】
閉塞形成装置30は、コア31に配設された積層膜33も有する。積層膜33は、本明
細書で説明する任意の積層膜であってよい。積層膜31は、コア31が積層膜31を通過できる貫通穴を有し得る。積層膜33は、身体の内腔を通る流れを塞ぐよう構成される。
【0026】
積層膜30は、可撓性剛毛32の一部の中でコア31に位置付けられる。いくつかの可撓性剛毛32aは、積層膜33のうちの一方の側に隣接して近位に配設され、いくつかの可撓性剛毛32bは、積層膜33のうちの反対の側に隣接して遠位に配設される。
【0027】
図4は、身体の内腔40で拡張展開構成にある閉塞形成装置30を示す。ここで可撓性剛毛32および積層膜33は、拡張展開構成にある。この構成において、積層膜33は、身体の内腔40を通る流れを塞ぐ。可撓性剛毛33は、閉塞形成装置30を身体の内腔40の中に固定して、閉塞形成装置30の移動を防止する。
【0028】
拡張展開構成にある、拡張した積層膜33の向き、および拡張展開構成にある、拡張した可撓性剛毛32の向きは同じである。例えば、積層膜33および隣接する可撓性剛毛32の両方は、遠位または近位を指して展開され得る。
【0029】
図5は、送達カテーテル50の中で収縮送達構成にある閉塞形成装置30を示す。ここで可撓性剛毛32および積層膜33は、収縮送達構成にある。可撓性剛毛32および積層膜33が収縮送達構成にあるとき、積層膜31の少なくとも一部は、送達カテーテルと接触する。収縮送達構成において、閉塞形成装置30は送達カテーテル50を通して移動され得る。
【0030】
収縮送達構成にある、潰れた積層膜33の向き、および収縮送達構成にある、潰れた可撓性剛毛32の向きは同じである。例えば、積層膜33および隣接する可撓性剛毛32の両方は、遠位または近位を指して潰れてよい。
【0031】
本明細書で説明する任意の積層膜を使用することによって、送達カテーテル50を通した移動中の膜33の変形を最小限に抑える一方で、膜33および隣接する剛毛32を、拡張展開構成まで確実に拡張させることも可能にする、閉塞形成装置30を提供し得る。
【0032】
上記の説明は、本開示が、いかに当業者によって単純に実施され得るかを完全に明確化するよう考慮されるが、単に例示であると捉えるべきである。特に、当業者には理解され得るように、実現可能な多くの変形が存在する。
【0033】
例えば、上述の積層膜は円板形状であるが、矩形、方形、または円筒形など任意の形状であってもよい。
さらに、上記の積層膜は、コアおよび複数の可撓性剛毛を伴う閉塞形成装置に関して説明したが、本開示による積層体は、任意のタイプの閉塞形成装置にも適用可能である。
【0034】
具体的には、本開示の一態様によると、本明細書で説明する積層膜を備える閉塞形成装置が提供される。
一実施形態において、積層膜は、収縮送達構成および拡張展開構成を有するように構成される。閉塞形成装置は閉塞形成コイルを備えてもよい。積層膜は、この閉塞形成コイルの少なくとも一部の周りに配設され得る。積層膜の少なくとも一部は、閉塞形成コイルにおける隣接した巻きの間に配設され得る。
【0035】
さらに、上記の積層膜は、閉塞形成装置に関連して説明したが、本開示による積層膜は、任意のタイプの医療移植組織、特に収縮送達構成および拡張展開構成を伴う医療移植組織にも適用可能である。この医療移植組織は、収縮送達構成で身体の内腔に送達されるように構成される。例えば、本開示による積層膜は、拡張型ステントに特に好適である。本開示の積層膜を使用することにより、送達カテーテルを通した移動中における膜の変形を軽減させ得る一方で、膜が拡張展開構成まで確実に拡張することも可能にする。
【0036】
さらに、内層、第1の被覆層、および第2の被覆層の各々は、様々な材料から作られてよい。例えば内層は、ポリウレタンと、他の1つまたは複数の材料との複合材料から作られてよい。特に、内層は、ポリウレタンとポリテトラフルオロエチレンとの複合材料、または90重量%の55Dポリウレタンと10重量%のシリコーンとのコポリマーから作られてよい。他の実施形態において、内層11は、濃縮PTFEまたはフッ化エチレンプロピレン(FEP)を含むか、または濃縮PTFEまたはフッ化エチレンプロピレン(FEP)で構成され得る。
【0037】
第1の被覆層、および第2の被覆層の各々は、複合材料から作られてよい。第1の被覆層、および第2の被覆層は、互いに異なる材料から作られてよい。第1の被覆層は、ポリテトラフルオロエチレンおよび/もしくは超高分子量ポリエチレンなどの疎水性材料、親水性材料、ならびに/またはシリコーンから作られてよい。第2の被覆層は、ポリテトラフルオロエチレンおよび/もしくは超高分子量ポリエチレンなどの疎水性材料、親水性材料、ならびに/またはシリコーンから作られてよい。
【0038】
さらに、内層、第1の被覆層、および第2の被覆層の構造特性は、上記から変えてもよい。特に内層は、第1の被覆層および第2の被覆層のうちの少なくとも一方よりも高い弾性復元力、引裂き抵抗性、および/または透水性を有し得る。第1の被覆層および第2の被覆層のうちの少なくとも一方は、内層よりも低い表面エネルギーを有し得る。
【0039】
上記の実施形態において、内層、第1の被覆層、および第2の被覆層の各々は、単層である。しかし代替の実施形態において、内層、第1の被覆層および/または第2の被覆層の各々は、複数の副層から形成され得る。
【0040】
さらに、上記の積層膜は、内層と、第1の被覆層および第2の被覆層のうちの一方または両方との間に配設された、結合層をさらに備えてよい。このような結合層は、層間の接着性を増加させ得る。例として、このような結合層はDuPont(商標)Bynel(登録商標)であってよい。結合層は、変性エチレンビニルアセテートポリマー、酸変性エチレンアクリレート樹脂、無水変性エチレンアクリレート樹脂、または無水変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂から作られてよい。一般的に、結合層は、アセテートおよびそのアクリレートを含むエチレンから作られてよい。
図7は、結合層64、65を備える積層膜60の例示的な実施形態を示す。積層膜60は、内層61、第1の被覆層62、および第2の被覆層63を有する点で、積層膜10と類似する。しかし、積層膜60は、内層61と第1の被覆層62との間に配設された第1の結合層64、および内層61と第2の被覆層63との間に配設された第2の結合層65を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、内層、ならびに第1の被覆層および/または第2の被覆層は、化学的または静電気的に互いに接着し得る。
さらに、上記の製造方法は、層の各々を形成するために電界紡糸処理を用いるが、様々な他の製造方法が使用され得る。例えば層は、電界紡糸、押し出し成形、フィルム成形、ディップ成形、回転成形、噴霧堆積、または蒸気堆積によって形成され得る。さらに、異なる層は異なる方法で形成され得る。例えば、内層はディップ成形または噴霧成形から形成され得る。第1の被覆層、および第2の被覆層の各々は、内層の上に電界紡糸で形成され得る。
【0042】
上記の全ては完全に本開示の範囲内であり、上記で開示した特定の組み合わせに限定することなく、上記で説明した特徴の1つまたは複数の組み合わせが適用される、代替の実
施形態の基礎を形成するよう考慮される。
【0043】
この観点において、本開示の教示を実施する多くの代替が存在することになる。当業者は、当技術分野の一般的な知識に照らして、本開示の範囲内で、本開示のいくつかの、または全ての技術的効果を維持しながら、開示もしくは上記から導出可能に、上記の開示をそれ自体の環境および要求に適合させるよう、変更および適応させることができると考えられる。全てのこのような同等物、変更、または適応は、本開示の範囲内である。