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特許7137617リチウム-ガーネット固体電解質複合材料、テープ製品、及びそれらの方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】リチウム-ガーネット固体電解質複合材料、テープ製品、及びそれらの方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/50 20060101AFI20220907BHJP
   C04B 35/488 20060101ALI20220907BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220907BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C04B35/50
C04B35/488
H01B1/06 A
H01B1/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020506312
(86)(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018027863
(87)【国際公開番号】W WO2018195011
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】201710248253.4
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511112319
【氏名又は名称】シャンハイ インスティテュート オブ セラミクス チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF CERAMICS, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】バディング,マイケル エドワード
(72)【発明者】
【氏名】チェン,インホン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,シアオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シンユエン
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,イエンシア アン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ジャオイン
(72)【発明者】
【氏名】シウ,トンピン
(72)【発明者】
【氏名】ジンク,ネイサン マイケル
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/128759(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/038521(WO,A1)
【文献】特開2015-048280(JP,A)
【文献】特開2016-072210(JP,A)
【文献】特開2012-174659(JP,A)
【文献】特開2014-093454(JP,A)
【文献】JIANG, Yue et al.,Investigation of Mg2+, Sc3+, Zn2+ doping effects on densification and ionic conductivity of low-temperature sintered Li7La3Zr2O12 garnets,Solid State Ionics,2017年,Vol.300,PP.73-77,ISSN:0167-2738, DOI:10.1016/j.ssi.2016.12.005
【文献】GU, W. et al.,Effects of penta- and trivalent dopants on structure and conductivity of Li7La3Zr2O12,Solid State Ionics,2015年,Vol.274,PP.100-105,ISSN:0167-2738, DOI:10.1016/j.ssi.2015.03.019
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/50
C04B 35/488
H01B 1/06-1/08
H01M 10/0562
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合セラミックであって、
リチウムガーネット主相;及び
粒成長抑制剤副相
を含み、
前記リチウムガーネット主相がLi6.4LaZr1.4Ta0.612であり、かつ前記複合セラミックの91~99質量%を構成し、前記粒成長抑制剤副相がMgOであり、かつ前記複合セラミックの総重量に基づいて1~9質量%を構成する、
複合セラミック。
【請求項2】
前記複合セラミックが、
3~7μmの平均粒度
100~180MPaの機械的強度、又は
1×10-4S/cm~6×10-4S/cmのイオン伝導度
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の複合セラミック。
【請求項3】
前記複合セラミックの密度が、前記複合セラミックの理論最大密度の少なくとも95~98%である、請求項1又は2に記載の複合セラミック。
【請求項4】
少なくとも、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合セラミックを含む、セラミック電解質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の複合セラミックの製造方法であって、
無機原料物質を混合して、リチウム源化合物及び他の適切な無機原料物質を含む混合物を形成し、ガーネット組成物を製造する、第1混合工程;
前記混合物を粉砕して、前記混合物の粒径を小さくする、第1粉砕工程;
砕された前記混合物をか焼して、800~1200℃でガーネット酸化物を形成する工程;
前記粉砕及びか焼されたガーネット酸化物と第2の添加剤とを混合して、第2の混合物を提供する、第2混合工程;
前記第2の混合物を粉砕して前記第2の混合物の構成成分の粒径を小さくする、第2粉砕工程;
前記第2粉砕した第2の混合物を圧縮成形体へと圧縮する工程;及び
前記圧縮成形体を600~1300℃で焼結する工程
を含む、方法。
【請求項6】
前記リチウム源化合物が化学量論的に過剰に存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の添加剤が1~9質量%のMgOである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記焼結工程が、空気中、不活性雰囲気中、又は最初に空気中、次に不活性雰囲気中で行われる、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の粉砕の粒径が0.3~4μmであり、前記第2の粉砕の粒径が0.15~2μmである、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
負極;正極;及び、介在する固体電解質材料を含む電気化学デバイスであって、前記介在する固体電解質材料が、前記固体電解質の総質量に基づいて1~9質量%の量のマグネシアを含む少なくとも1つの粒成長抑制剤を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合セラミックを含む、電気化学デバイス。
【請求項11】
複合電解質であって、
リチウムガーネット主相及び粒成長抑制剤副相を有する、次式のリチウムガーネットセラミックを含み:
Li7-xLa(Zr2-x,M)O12-SA,
式中、
Mは、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Sc、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、W、及びそれらの混合物から構成される群から選択され;及び
「SA」は、前記リチウムガーネットセラミックの総量に基づいて1~9質量%で存在する、MgO、CaO、ZrO、HfO及びそれらの混合物から構成される群から選択される第2の添加酸化物を含み;xは0より大きく1未満であり、
前記リチウムガーネット主相がLi6.4LaZr1.4Ta0.612であり、かつ前記リチウムガーネットセラミックの91~99質量%を構成し、前記粒成長抑制剤副相がMgOであり、かつ前記リチウムガーネットセラミックの総重量に基づいて1~9質量%を構成する、
複合電解質。
【請求項12】
請求項11に記載の複合電解質のテープの製造方法であって、
酸化物前駆体を含むリチウムガーネットバッチを湿式又は乾式で完全に混合してバッチ混合粉末を形成する工程;
白金容器中で前記バッチ混合粉末をか焼して、か焼粉末を形成する工程;
前記か焼粉末を粉砕して、粉砕粉末を形成する工程;
前記粉砕粉末をテープキャスティングして未焼成のテープを形成する工程;及び
前記未焼成のテープを焼結して前記複合電解質のテープを形成する工程
を含み、
前記粉砕粉末が、0.3~0.7μmの粒径を有する単峰分布を有している、
方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2017年4月17日出願の中国特許出願第201710248253.4号に対する優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、リチウムイオン固体電解質セラミック組成物に関し、より詳細には、Li-ガーネット酸化物、並びにリチウムイオン固体電解質セラミック組成物の製造方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
実施形態では、本開示は、式Li7-xLa(Zr2-x,M)O12-SAの複合Li-ガーネットセラミック電解質を提供し、式中、Mは、例えば、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Sc、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、W、又はそれらの混合物であり;「SA」は、セラミックの総量に基づいて指定された質量%又はモル%で存在する、MgO、CaO、ZrO、HfO、又はそれらの混合物の群から選択される第2の添加剤(SA)酸化物を指し;xは0より大きく1未満である(すなわち、0<x<1)。例示的なLi-ガーネット複合酸化物セラミックは、第2の添加剤を、複合材料の総量に基づいて、例えば、1~9質量%など、最大で9質量%の量で含む。
【0004】
第2の添加剤は、立方晶Li-ガーネット酸化物との組み合わせで安定しており、形成プロセス中に個別の又は離散した副相として存在しうる。しかしながら、第2の添加剤の元素は、ガーネット酸化物中の成分でもありうる。理論に制限されるものではないが、第2の添加剤は、微細構造の均一性を改善し、ガーネット酸化物主相の粒度を低下させることにより、複合材料の機械的特性を高めると考えられる。理論に拘束されるわけではないが、第2の添加剤はセラミック中の異常な粒成長を抑制すると考えられる。
【0005】
実施形態では、開示されるLi-ガーネット複合セラミックは、例えばエネルギー貯蔵物品などにおける電解質として有用でありうる。
【0006】
実施形態では、本開示は、立方晶Li-ガーネット酸化物と第2の添加剤との混合物を湿式粉砕プロセスによって形成する工程;該混合物を低いか焼温度で予熱する工程;該混合物を乾式粉砕プロセスによって粉砕する工程;該混合物を圧縮する工程;及び、圧縮成形体を焼結温度で焼結する工程であって、結果的に得られる複合Li-ガーネット酸化物が、複合材料の総量に基づいて1~9質量%など、最大で9質量%の量で、第2の添加剤を含む、工程を含む、Li-ガーネット複合電解質の形成方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】対照例1及び実施例2~10のXRDパターンを示すグラフ
図2】それぞれ、対照例1及び実施例2~10に対応する、室温におけるACインピーダンスを示すグラフ
図3】それぞれ、対照例1及び実施例2~10に対応するアレニウスプロット及びフィッティングの結果を示すグラフ
図4】対照例1及び実施例2~10に対応する、質量パーセント(質量%)でのMgO含量と全伝導度との間、並びに、質量パーセントでのMgO含量と活性化エネルギー(E)との間の関係を示すグラフ
図5】対照例1及び実施例2~10における、開示されるセラミックのMgO含量(質量%)と、理論密度(左軸)、実用的密度又は真密度(左軸)、及び相対密度(右軸)との間の関係を示すグラフ
図6】それぞれ、対照例1及び実施例2~10に対応する、セラミックのMgO含量(質量%)と、破壊応力(すなわち、強度;左軸)及びビッカース硬さ(右軸)との間の関係を示すグラフ
図7】対照例1及び実施例2から10に対応するプリスチンな焼結試料の断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像
図8】対照例1及び実施例2から10に対応する化学腐食試料の断面のSEM画像
図9】実施例2から10に対応するプリスチンな試料のMgO分布のエネルギー分散分光法(EDS)画像
図10】対照例1及び実施例2から10に対応するプリスチンな試料の後方散乱電子(BSE)画像
図11A】式Li6.75La2.8Ga0.2Zr1.75Nb0.2512(「HF110」)のGa-Nbをドープしたガーネット組成物の体積%による粒径分布を示すグラフ
図11B】式Li6.5LaZr1.5Ta0.512(「HQ110」)のTaをドープしたガーネット組成物の体積%による粒径分布を示すグラフ
図12】空気中で焼結した後の例示的な開示された透明又は半透明のテープの画像
図13A】リチウムガーネットテープの表面の選択された微細構造の様相を示す画像
図13B】リチウムガーネットテープの研磨された表面の選択された微細構造の様相を示す画像
図13C】リチウムガーネットテープの破断面の選択された微細構造の様相を示す画像
図14】例示的な焼結装置の概略図
図15】平坦性、半透明の外観、及び均一な色特性を示す、空気中で焼結した後のTaドープガーネットテープの例示的なディスク形状の画像
図16】ガーネットテープが緻密に焼結され、小さい粒度を有することを実証する、SEM断面画像
図17】開示されたガーネットテープの代表的な焼結プロファイルのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のさまざまな実施形態は、もしあれば、図面を参照して詳細に説明される。さまざまな実施形態への言及は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。加えて、本明細書に記載された例は限定的ではなく、特許請求された発明の多くの可能な実施形態のうちの幾つかを単に記載するものである。
【0009】
実施形態では、開示された製造方法及び使用方法は、例えば以下で論じられるものを含む、1つ以上の有利な特徴又は態様を提供する。請求項のいずれかに記載される特徴又は態様は、概して、本発明のすべてのファセットに適用可能である。いずれか1つの請求項に列挙された単一又は複数の特徴又は態様は、任意の他の請求項に列挙された他の列挙された特徴又は態様と組み合わせるか、又は並べ替えることができる。
【0010】
定義
「主相」又は同様の用語又は句は、組成物中に、質量、体積、モル、又は同様の尺度で50%を超えるリチウムガーネットの物理的存在を指す。
【0011】
「副相」又は同様の用語又は句は、組成物中に、質量、体積、モル、又は同様の尺度で50%未満の粒成長抑制剤の物理的存在を指す。
【0012】
「SA」、「第2の添加剤」、「第2の相添加剤」、「第2の相添加酸化物」、「相添加酸化物」、「添加酸化物」、「添加剤」、又は同様の用語は、開示された組成物中に含まれる場合、主相(すなわち、第1の相)内に副相又は第2の副相を生成する添加酸化物を指す。
【0013】
「含む(include, includes)」、又は同様の用語は、網羅的であるが限定的ではない、すなわち包括的であって排他的ではないことを意味する。
【0014】
本開示の実施形態を説明する際に採用される、例えば、組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、粘度などの値、及びそれらの範囲、又は構成要素の寸法及び同様の値並びにそれらの範囲を変更する「約」は、例えば、材料、組成物、複合材料、濃縮物、構成部品、製造品、又は使用製剤の調製に使用される一般的な測定及び取り扱い手順を通じて;これらの手順における不注意によるエラーを通じて;方法を実行するために使用される出発材料又は原料の製造、供給源、又は純度の違いを通じて;及び同様の考慮事項を通じて発生する可能性のある数量の変動を指す。「約」という用語は、特定の初期濃度又は混合物を伴う組成物又は製剤の劣化に起因して異なる量、並びに特定の初期濃度又は混合物を伴う組成物又は製剤の混合又は加工に起因して異なる量も包含する。
【0015】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」とは、後に記載される事象又は状況が発生してもしなくてもよく、その記載にはその事象又は状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。
【0016】
本明細書で用いられる不定冠詞「a」又は「an」及びその対応する定冠詞「the」は、別段の指定がない限り、少なくとも1つ若しくは1つ以上を意味する。
【0017】
当業者によく知られている略語が用いられることがある(例えば、時間を「h」又は「hrs」、グラムを「g」又は「gm」、ミリリットルを「mL」、室温を「rt」、ナノメートルを「nm」、及び同様の略語)。
【0018】
成分、原料、添加剤、寸法、条件、時間、及び同様の特徴、並びにそれらの範囲について開示されている特定の好ましい値は、例示のみを目的としており、他の定義された値又は定義された範囲内の他の値を除外しない。本開示の組成物、物品、及び方法は、本明細書に記載されるいずれかの値、特定の値、さらに具体的な値、及び好ましい値のうちの任意の値又は任意の組合せを含みうる。
【0019】
高エネルギー密度のリチウムイオン電池(LIB)は、電気化学エネルギー貯蔵装置として有望である。LIBは、携帯電子機器、電気自動車、及び負荷平準化アプリケーションの開発において重要な役割を果たす。従来の商用LIBと比較して、より高いエネルギー密度を提供し、コストを削減するために、Li-空気電池及びLi-S電池(Ji X, et al., Advances in Li-S batteries, Journal of Materials Chemistry, 2010, 20(44):9821-9826参照)などの新しいLIBシステムが、次世代バッテリー用に開発されている。水系Li-空気電池では、リチウムアノードを空気陰極液から分離するために、構成には固体電解質膜が含まれる。Li-S電池では、有機電解質への長鎖ポリスルフィドの溶解度によって引き起こされる内部「シャトル」現象が、活物質の利用率(activity mass utilization)を低下させ、クーロン効率を低下させる可能性がある。固体電解質膜を使用する新しい構成は、これらの問題を解決し、容量フェージングなしにサイクルを大幅に延長できる可能性がある。固体電解質膜を使用した全固体リチウム二次電池も、安全性の向上に関する将来の候補となる可能性がある。さまざまな用途の構成において、固体電解質は、リチウムイオン伝導体、分離層、プロテクター、及び下層として機能する。上記の予測された新世代電池の開発にとって重要なことは、優れた高い相対密度、高いイオン伝導度、良好な化学的安定性、及び優れた機械的特性を有する固体電解質膜である。従来のセラミック経路によるこのような膜の形成における重要な課題は、必要な伝導度及び経済性をもたらしつつ、膜の形成に十分な強度まで、適切な出発材料を焼結することができないことである。
【0020】
最近、リチウムを詰めたガーネット酸化物の新しい種類は、高いイオン伝導度、リチウム金属に対する化学的安定性、及び広い電位窓に起因して、固体電解質として有望な性能を示している(Murugan, R., et al., Fast lithium ion conduction in garnet-type Li7La3Zr2O12, Angewandte Chemie-International Edition, 2007, 46(41):7778-7781を参照)。ガーネットの立方晶構造を安定化することによってイオン伝導度をさらに向上させるために、Al、Ga、Y、Si、Ge、Nb、Ta、及びTeなどの多くの元素がガーネットにドープされており、相当な進歩が達成された。例えば、TaをドープされたLiLaZr12(LLZO)は、ドープされていないLLZOよりも著しく高い、8×10-4S/cmのリチウムイオン伝導度を示す(Li, Y. T., et al., Optimizing Li+ conductivity in a garnet framework, Journal of Materials Chemistry, 2012, 22(30):15357-15361参照)。同時に、ガーネット型電解質を用いた、全固体リチウム電池の設計及び製造が検討されている(Ohta, S., et al., Electrochemical performance of an all-solid-state lithium ion battery with garnet-type oxide electrolyte, Journal of Power Sources, 2012, 202: 332-335; Kotobuki, M, et al., Compatibility of Li7La3Zr2O12 Solid Electrolyte to All-Solid-State Battery Using Li Metal Anode, Journal of the Electrochemical Society, 2010, 157(10): A1076-A1079; Ohta, S., et al., All-solid-state lithium ion battery using garnet-type oxide and Li3BO3 solid electrolytes fabricated by screen-printing, Journal of Power Sources, 2013, 238(0): 53-56; Ohta, S., et al., Co-sinterable lithium garnet-type oxide electrolyte with cathode for all-solid-state lithium ion battery, Journal of Power Sources, 2014, 265: 40-44参照)。立方晶Li-ガーネット酸化物は、新規LIBの膜材料として有望であることが示されている。しかしながら、ガーネット酸化物が実用化に必要とされる、必要な伝導度及び機械的強度を満たすことは不可能であった。
【0021】
セラミックの分野では、一般に、脆弱な多結晶材料の強度は、多孔率及び粒度などの要因によって影響を受ける可能性があると認識されている(Knudsen, F., Dependence of mechanical strength of brittle polycrystalline specimens on porosity and grain size, Journal of the American Ceramic Society, 1959, 42(8): 376-387参照)。異常な粒成長は、機械的特性を著しく低下させる可能性がある。粒成長を低減又は制限する1つの手法は、粒界を固定することができる相容性のある第2の相を加えることである(Lange, F.F., et al., Hindrance of Grain Growth In Al2O3 by ZrO2 Inclusions (1984), Journal of the American Ceramic Society, 67 (3), pp. 164-168参照)。しかしながら、ガーネット型の電解質では、このような手法は実施されていない。Furukawaは、ガーネット粒の成長を抑制するために、0.05~1質量%のAl添加剤及び0.05~1質量%のMg添加剤を添加している(Furukawa, M., Solid electrolyte ceramic material and production method therefor, 国際公開第2013/128759号参照)。Mg含有添加剤の添加は、Mg含有粉末又はMg含有るつぼによって達成することができる。Mg又はAlの添加は非常に少ないことから、ガーネット材料内に溶解する添加剤の大部分、並びに結果として、製品は、添加された酸化物とLi-ガーネット固体電解質との複合材料ではない。国際公開第2013/128759号の実施形態に記載されるガーネット酸化物の破壊強度は、本開示のLi-ガーネット固体電解質複合セラミックのものよりも低かった。
【0022】
実施形態では、本開示は、Li-ガーネット酸化物などのリチウムイオン固体電解質セラミック組成物を提供する。固体電解質組成物は、1つ以上の添加剤をさらに含むことができ、この添加剤は、セラミック微細構造の均一性を改善し、かつ、セラミックの機械的特性を向上させることができる。本明細書で用いられる「セラミック微細構造の均一性」とは、粒度の分布を指す。機械的特性に悪影響を与える可能性のある異常に大きな粒の発生を排除することができる。例えば、全ての粒の少なくとも5%を表す粒の集団に対して測定された最大粒度は、平均粒度を、20倍を超えて超過してはならない。
【0023】
実施形態では、本開示は、複合セラミックであって、
リチウムガーネット主相;及び
粒成長抑制剤副相
を含み、
リチウムガーネット主相がLi6.4LaZr1.4Ta0.612であり、かつ複合セラミックの91~99質量%を構成し、粒成長抑制剤副相がMgOであり、かつ複合セラミックの1~9質量%を構成する、
複合セラミックを提供する。
【0024】
実施形態では、本開示は、複合セラミックであって、
リチウムガーネット主相及び粒成長抑制剤副相を有する、次式のリチウムガーネットセラミックを含み:
Li7-xLa(Zr2-x、M)O12-SA,
式中、
Mは、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Sc、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、W、又はそれらの混合物の群から選択され;かつ
「SA」は、セラミックの総量に基づいて1~9質量%で存在する、MgO、CaO、ZrO、HfO、又はそれらの混合物の群から選択される第2の添加酸化物を含み;xは0より大きく1未満である、複合セラミックを提供する。実施形態では、リチウムガーネット主相は、例えば、Li6.4LaZr1.4Ta0.612であってよく、かつ複合セラミックの91~99質量%を構成することができ、粒成長抑制剤副相はMgOであり、かつ複合セラミックの総量に基づいて1~9質量%を構成することができる。
【0025】
実施形態では、セラミックは、例えば3~7μmの平均粒度を有しうる。
【0026】
実施形態では、セラミックは、中間の値及び範囲を含めて、例えば、125~145MPaなど、100~180MPaの機械的強度を有しうる。
【0027】
実施形態では、セラミックは、例えば、中間の値及び範囲を含めて、1×10-4S/cm~3×10-4S/cmなど、1×10-4S/cm~6×10-4S/cmのイオン伝導度を有する。例えば、表1を参照のこと。
【0028】
実施形態では、焼結は、例えば、中間の値及び範囲を含めて、1000~1250℃など、1000~1300℃の空気中で達成することができる。
【0029】
実施形態では、セラミックの密度は、セラミックの理論最大密度の少なくとも95~98%である。
【0030】
実施形態では、本開示は、少なくとも上述の複合セラミックを含むセラミック電解質を提供する。
【0031】
本開示は、例えば以下を含む、幾つかの態様において有利である:
実施形態では、第2の相(すなわち「添加剤」)が添加された膜の微細構造は、第2の相が添加されていない同様の膜と比較して、粒度の分布がより均一である。
【0032】
実施形態では、第2の添加剤相を有する開示されたガーネット電解質の粒度は、第2の添加剤を有しない同様の材料と比較して、より小さい。
【0033】
実施形態では、開示されたガーネット電解質の機械的強度は、上記膜微細構造の結果及びガーネット電解質の上記のより小さい粒度の結果として、添加剤を有することによって改善される。
【0034】
実施形態では、好ましい第2の添加剤を含む開示されたガーネット電解質は、第2の添加剤を有しない、又は第2の添加剤を含まない同じガーネットと比較して、伝導度の損失がないか、又は最小限である。
【0035】
実施形態では、本開示は、上述の複合セラミックの製造方法であって、
無機原料物質を混合して、リチウム源化合物及び他の適切な無機原料物質を含む混合物を形成し、所望のガーネット組成物を製造する、第1混合工程;
混合物を粉砕して、前駆体の本明細書に定められた粒径を小さくする、第1粉砕工程;
粉砕された混合物をか焼して、600~1200℃でガーネット酸化物を形成する工程;
第1粉砕され、か焼されたガーネット酸化物と第2の添加剤とを混合して、第2の混合物を提供する、第2混合工程;
第2の混合物を粉砕して、第2の混合物の構成成分の本明細書に定められた粒径を小さくする、第2粉砕工程;及び
第2粉砕された第2の混合物を圧縮成形体へと圧縮する工程;及び
圧縮成形体を850~1300℃で焼結する工程
を含む、上述の複合セラミックの製造方法を提供する。
【0036】
実施形態では、リチウム源化合物は、例えば、化学量論的に過剰に存在しうる。
【0037】
実施形態では、第2の添加剤は、例えば、複合材料の総量に基づいて1~9質量%のMgOでありうる。
【0038】
実施形態では、焼結は、例えば、空気中で、不活性雰囲気中で、又は最初に空気中、次に不活性雰囲気中で行うことができる。
【0039】
実施形態では、複合セラミック中にある特定量の第2の添加剤を導入することによって、高温焼結中の異常なガーネット粒の成長の抑制又は阻害を助け、この阻害により、ガーネットセラミックの微細構造の均一性を著しく改善する。
【0040】
実施形態では、ガーネット電解質の結晶粒度は、例えば、特定の量の第2の添加剤を導入することによって低下させることができる。
【0041】
実施形態では、Li-ガーネット酸化物を製造する方法は、Li-ガーネット酸化物生成物の相対密度を選択することができ、例えば、この相対密度は、特定の量のMgOなどの第2の添加剤を導入することによって増加させることができる。
【0042】
実施形態では、Li-ガーネット酸化物中に特定の量の第2の添加剤を導入することにより、複合セラミック電解質の高い総イオン伝導度及び低い活性化エネルギー(E)を維持しつつ、機械的特性を高めることができる。
【0043】
開示された複合セラミック電解質は、ガーネット相と個々の第2の添加物相とを含む。
【0044】
第2の添加剤を含む開示されたガーネット型酸化物は、固体イオン伝導体に依拠する用途での製造及び長期性能を改善することができる。
【0045】
実施形態では、本開示は、上述の複合電解質のテープの製造方法であって、
酸化物前駆体を含むリチウムガーネットバッチを湿式又は乾式で完全に混合してバッチ混合粉末を形成する工程;
白金容器中でバッチ混合粉末をか焼して、か焼粉末を形成する工程;
か焼粉末を粉砕して、粉砕粉末を形成する工程;
粉砕粉末をテープキャスティングして、未焼成のテープを形成する工程;及び
未焼成のテープを焼結して、複合電解質のテープを形成する工程
を含む、上述の複合電解質のテープの製造方法を提供する。
【0046】
実施形態では、本方法は、粉砕粉末を、0.3~0.7μmの粒径を有する単峰分布に分級する工程をさらに含みうる。
【0047】
実施形態では、リチウムガーネット膜は、テープキャスティング法及びその後の焼結によって製造された。水性スリップシステムは、リチウムガーネット粉末のテープを製造する方法を提供する。テープを積み重ねて積層し、薄いシートを形成することが可能である。焼結されたテープは、空気中で又は例えばAr又はNなどの不活性雰囲気中で製造することができる。実施形態では、テープは、20~300μmの厚さ、及び約95%の高い密度を有しうる。テープは、平坦、半透明、かつ気密性でありうる。テープのイオン伝導度は、空気中で焼結されても、不活性雰囲気中で焼結されても、例えば、10-4S/cmより高くなりうる。
【0048】
実施形態では、本開示は、水性スリップシステムからのテープキャスティングによって、リチウムガーネット電解質の薄膜を製造する方法を提供する。
【0049】
実施形態では、リチウムガーネット固体電解質は、テープキャスティングによって製造されている。テープキャスティングされた電解質は、例えば、80~300μmの厚さ、並びに例えば、1平方インチ(約6.45cm)を超える平面寸法又は直径1インチ(2.54cm)の円形を有しうる。
【0050】
実施形態では、本開示は、リチウムガーネット粉末製造、ガーネットセッター形成、テープキャスティングプロセス、非接触カバー粉末配置、白金保護、及び焼結の条件を含む、固体電解質としてリチウムガーネット固体膜を製造する方法を提供する。
【0051】
実施形態では、リチウムガーネット粉末は、固相反応によって生成することができる。化学量論的バッチは、焼成前に乾式混合又は湿式混合によって完全に混合することができる。最終的な組成は、公称のリチウムガーネット化学式Li7-xLa3-yZr2-x12を有し、A、B、又は両方のドーピングを伴っており、これは、例えば、Al、Nb酸化物、Ga酸化物、Ta酸化物、及び同様のドーパントでありうる。A又はBドーピングは、低温での又は用途調整中のリチウム立方晶ガーネット相の安定性を促進することができる。立方晶ガーネット相は、高いイオン伝導度をもたらすために必要とされる。リチウムガーネット粉末は、平均粒径D50が1.0μm未満のリチウムガーネット立方相を、90質量%を超えて含むことが望ましい。
【0052】
実施形態では、テープキャスティングプロセスは、水性ガーネットスリップを製造することから始まる。水性スリップは、DI水、水溶性有機バインダ、可塑剤、及びリチウムガーネット粉末を含んでいる。スリップ内の固体負荷量及びバインダ含量は、さまざまな高品質の未焼成テープを実現するために変動させてもよい。実質的にすべての水を除去した後、結果的に得られる乾燥テープ中のガーネット粉末は60体積%を超える。乾燥テープの厚さは、選択されたキャスティング装置及び条件に応じて、例えば10~150μmでありうる。その後の積層は、望ましい膜厚を作るために必要とされ、例えば、焼結後に20~300μmでありうる。積層条件は、典型的には、例えば、60~80℃及び1000psi(約6.89MPa)で、20分以上で達成される。
【0053】
実施形態では、テープは、特定のガーネットセッター上で焼結することができる。セッターには2つの機能がある:第1に、セッターは好ましくは非反応性の支持体であり;第2に、セッターは空気中での焼結中のリチウム損失を補うことができる。一部のガーネット組成物は、2番目のLi補償機能を必要としない場合がある。しかしながら、最初の機能は、電解質として、きれいなガーネットテープを焼結するために必要とされる。実施形態では、リチウム損失は、追加的に又は代替的に、焼結テープの近くに幾らかの母粉末を置くことによって補償することができる。セッター(及び、存在する場合は母粉末)と試料の両方を、例えば白金るつぼで覆うことによって、閉鎖環境に配置する。閉鎖環境は、空気中での焼結中のリチウム損失を防ぐために重要である。焼結温度は、例えば、組成、空気中の1050~1250℃の温度などに応じて決めることができ、最高温度での保持時間は、試料の大きさに応じて2~6時間で変動しうる。試料がAr条件(すなわち、無圧力)で焼結される場合、焼結温度は、空気中での焼結温度と比較して、例えば50~100℃低下させることができる。
【0054】
実施形態では、焼結後、結果的に得られるテープは、高密度、半透明、及び気密性であり、テープの厚さは、例えば、中間の値及び範囲を含めて、20~200μmでありうる。実施形態では、焼結されたテープのイオン伝導度は2.0×10-4S/cmを超えうる。
【0055】
本開示の方法は、例えば以下を含む、幾つかの態様において有利である:
プロセス:ガーネット粉末は、固相反応によって簡単に得ることができる。立方晶ガーネット相は、アルミナ、酸化ニオブ、酸化ガリウム、酸化タンタル又は他の元素をドーピングすることによって安定化することができる。ガーネットセッターは、一軸プレス、アイソプレス、カレンダー加工、又は押出成形などの従来のセラミック成形方法によって製造される。ガーネット膜は、単一の乾燥テープの厚さが10~150μmである、水性スリップシステムからのテープキャスティングによって形成される。2~6層の積層は、例えば、20~80℃の温度及び1000psi(約6.89MPa)の圧力で20分超の時間で、達成することができる。空気中での焼結では、1250℃未満の最高温度を有しうる。Ar又はNなどの不活性雰囲気での焼結では、母粉末は必要ではない場合があり、最高焼結温度は空気中での焼結に比べて低下されうる(すなわち、低くなりうる)。膜厚は、シングルキャスティング、ダブルキャスティング、多層キャスティング、及び積層によって調整することができる。
【0056】
実施形態では、本開示は、負極;正極;及び、介在する固体電解質材料を含む電気化学デバイスを提供し、この介在する固体電解質材料は、固体電解質の総量に基づいて1~9質量%の量のマグネシアを含む少なくとも1つの粒成長抑制剤を有する、上述の複合セラミックを含む。
【0057】
実施形態では、本開示の研究は、Li-ガーネット酸化物が、焼結プロセス中に、例えば10μm未満の平均粒度を有する微細構造において直径100μmを超える特大サイズの粒を容易に形成することを発見した。この特大サイズの粒は、複合セラミックの機械的特性を低下させる可能性がある。
【0058】
実施形態では、本開示は、必要な伝導度を維持しつつ、改善されたセラミック微細構造を製造し、かつ、セラミック微細構造の機械的特性を向上させる経済的なプロセスを提供する。実施形態では、本開示は、ガーネット型電解質の機械的特性を改善する第2の相添加剤を有する複合Liガーネット電解質を提供する。
【0059】
高伝導度の固体電解質は、次世代の高エネルギー密度リチウムイオン電池の新しい設計の機会を提供する。セラミック電解質は、アノードとカソードの化学物質の直接接触を防ぐ気密性バリアを提供することから、アノードとカソードの独立した設計を可能にする。次世代電池の重要な側面は、安全で不燃性であり、高い熱安定性及び信頼性、高いイオン伝導度を有し、かつ、Li-S電池のポリスルフィド形成を防ぐ、高リチウムイオン伝導性固体電解質を有することである。多くの固体電解質は、LAGP又はLATP固体電解質など、リチウム金属に対して高いイオン伝導度又は高い電気化学的安定性のいずれかをもたらすが、両方はもたらさない(C. J. Leo, et al., “Lithium conducting glass ceramic with Nasicon structure”, Materials Research Bulletin, 37 (2002) 1419-1430を参照)。リチウムガーネットは、金属リチウムに比べて高いリチウムイオン伝導性、並びに水分及び空気中での化学的安定性を有し、全固体充電式リチウム電池の固体電解質としての可能性があることから、魅力的である(V. Thangadurai, et al., J. Am. Ceram. Soc, 2003, 86, p437参照)。LiLa12(M=Ta、Nb)、LiLaZr12などのリチウム含有ガーネットは、[La125-の構成において、より高濃度のLiカチオンを調節でき、5つのリチウムカチオンは、これらの格子間位置:3つの四面体位置;6つの八面体位置;及び3つの三角柱位置のいずれかを占有することができる(E. J. Cuessen, “The structure of lithium garnet: cation disorder and clustering in a new family of fast Li+ conductors.”, Chem. Commun., 2006, 412-413参照)。高イオン伝導性リチウムガーネットを製造する際の重要なポイントは、Liの調節と移動性の特性を提供する立方晶ガーネット相を生成することである。幸いなことに、多くの研究者は、X線回折で特定された立方晶リチウムガーネット相を含む粉末又はペレットの製造方法を見出した(R. Murugan, et al., “Fast Lithium Ion Conduction in Garnet-Type Li7La3Zr2O12”, Angew. Chem. Inst. Ed, 2007, 46, p7778-7781; and Geiger, C., et. al., “Crystal Chemistry and Stability of “Li7La3Zr2O12” Garnet: A Fast Lithium-ion Conductor”, Inorg. Chem., 2011, 50, p1089-1097参照)。薄膜(すなわち、厚さ0.5mm未満)は、実験的に製造することは困難であるが、固体電解質として実用的であると報告されている。テープキャスティングによって製造された薄膜も報告されている(米国特許出願公開第2015/0099188号明細書、“Garnet materials for Li secondary batteries and methods of making and using Garnet materials”;及び、“Ion conducting batteries with solid state electrolyte materials”と題された米国特許出願公開第2014/0287305号明細書を参照のこと)。
【0060】
実施形態では、本開示は、複合Li-ガーネット酸化物セラミックを提供する。セラミックは、Li-ガーネット酸化物と第2の添加剤とを含む。セラミックの相は、立方晶ガーネット相と複合相とで構成されている。
【0061】
実施形態では、本開示は、式Li6.4LaZr1.4Ta0.612の既知のガーネット型酸化物のうちの少なくとも1つを含むか含有する、ガーネット酸化物をセラミックに提供し、例えば以下の他のガーネット型酸化物群に適用可能である:
(i)Li7-xLa(Zr2-x)O12の式におけるLiLaZr12のカチオン置換(式中、Mは、例えば、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Sc、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、及びWである);
(ii)ガーネット型の構造を有する他のリチウムイオン伝導体;及び
(iii)(i)及び(ii)に記載のガーネット酸化物の混合物。
【0062】
Jananiは、焼結助剤を加えることによって達成できる高密度化の改善について記載している。リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、及びケイ酸リチウムが、焼結助剤として、すべて1質量%の添加レベルで試験されており、焼結助剤で作られた組成物の密度及び伝導度が高いことが報告されている。これは、幾つかの点で本開示とは異なっている。最初に、本開示は、単にドープされたガーネットではなく、「複合材料」を製造するために、より多くの材料を添加する。1質量%の添加において、従来の用語では、結果として生じる材料は複合材料ではなく、ほぼ純粋なガーネットとして説明されるであろう。添加剤の役割は、焼結プロセス中に修正液相を導入して、必要な焼結温度を下げるか、所与の温度でより効果的に焼結することにより、密度を高めることである。より効果的な焼結とは、製品の密度が高いこと、又は細孔率が低いことを意味する。さらには、Jananiで使用される添加剤は、本開示におけるMgOのように、粒成長を抑制しない。粒度は含まれる添加剤とともに増加し、本開示で見出されたようには低下しないことは、Jananiの記事のSEMから明らかである(Janani, et al., RSC Adv., 2014, 4, 51228参照)。
【0063】
実施形態では、セラミック中の開示されたガーネット酸化物は、例えば、
【0064】
【化1】
【0065】
空間群の立方晶ガーネット結晶構造、若しくは、15%、好ましくは10%未満などの少量の正方晶ガーネット結晶構造(I4acd空間群を有する)と混合した立方晶ガーネット結晶構造を有しうる。開示されたガーネット酸化物の全伝導度は、好ましくは1×10-4S/cm以上でありうる。
【0066】
実施形態では、添加剤には、例えば、MgO、並びにCaO、ZrO、HfO、及び同様の酸化物、又はそれらの混合物も含めることができる。実施形態では、添加剤には、化学式中の他の元素とともに、例えば、炭酸塩、スルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、塩化物、フッ化物、水酸化物を含めることができる。添加材料の結果として得られる酸化物含有量は、ガーネット相材料と粒成長を抑制する第2の添加剤を含む複合材料の合計100質量%に基づいて、中間の値及び範囲を含めて、例えば、1~9質量%、1.25~8質量%、1.5~7質量%、1.75~6質量%、2~5質量%、2.25~4.5質量%、2.5~4質量%、2.75~3.5質量%などの量でありうる。
【0067】
第2の添加成分は、焼結されたガーネット電解質の微細構造の均一性を改善することができる。実施形態では、焼結されたガーネット酸化物セラミックの粒度分布は、例えば、平均10μm未満に低下させることができ、高い焼結温度でのガーネット粒の異常な成長を、例えば、著しく抑制することができる。
【0068】
加えて、開示されたLi-ガーネット複合焼結電解質の破壊強度は、例えば、100MPaよりも高くなりうる(三点曲げ技法による試験、幾何学形状:長方形、試料サイズ:3×4×30mm)。改善された強度を有する本明細書に開示されるLi-ガーネット複合電解質は、例えば、Li-S、Li-空気、及び全固体リチウム二次電池の製造を促進することができる。
【0069】
開示された複合ガーネット電解質を製造する例示的な方法によれば、Li-ガーネット複合焼結電解質の相対密度は、例えば、中間の値及び範囲を含めて、96~99%、97~98%など、95%超でありうる。電解質の高い相対密度は、例えば、リチウムの樹状突起形成と、開示されたガーネット複合電解質で構築されたLi-S、Li-空気、及び全固体リチウム二次電池への液体電解質の浸透とを抑制する。
【0070】
実施形態では、焼結された電解質のリチウムイオン伝導度は、例えば、1×10-4S/cmより高く維持することができ、活性化エネルギー(E)は、例えば、0.4eVより低くすることができる。Li-S、Li-空気、及び全固体リチウム二次電池にLi-ガーネット複合電解質を使用することにより、リチウムイオンがより容易に伝導できるようになり、それによって、内部抵抗を低減し、充放電の速度を増加させることができる。これらの電池に開示されたLi-ガーネット複合電解質を使用することにより、動作温度範囲も拡大する。
【0071】
実施形態では、少なくとも1つの第2の添加剤を有する開示されたガーネット酸化物を製造するための例示的な方法は、例えば、
無機出発バッチ材料を混合して、リチウム源化合物と他の無機前駆体又は原料物質とを含む、混合物を形成し、所望のガーネット組成物を製造する、第1の混合工程と、次に、混合物を粉砕して、前駆体の粒径を、例えば0.3~4.0μm(第1の粉砕プロセス後の1つのスラリー中の粒径)に低下させる工程;
粉砕された混合物をか焼して、例えば800~1200℃で、ガーネット酸化物を形成する工程;
ガーネット酸化物と第2の添加剤とを混合して第2の混合物を提供する、第2の混合工程と、次に、第2の混合物を粉砕して、第2の混合物の構成成分の粒径を、例えば、0.15~2.0μm(例えば、第2の粉砕プロセス後の1つのスラリー中の粒径)に低下させる、第2の粉砕工程;及び
粉砕された第2の混合物を圧縮成形体へと圧縮する工程;及び
圧縮成形体を、例えば1050~1280℃で焼結する工程
を含みうる。
【0072】
前述の各工程について、以下にさらに詳細に説明する。
【0073】
第1混合工程
第1混合工程では、化学量論量の無機材料をガーネット酸化物の配合で一緒に混合し、例えば微粉末へと粉砕する。無機材料は、例えば、炭酸塩、スルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、酸化物、又はそれらと化学式内の他の元素との混合物でありうる。
【0074】
実施形態では、1050~1280℃(例えば、1150℃)の高温焼結工程中のリチウムの損失を補償するために、出発無機バッチ材料に過剰のリチウム原料物質を含めることが望ましい場合がある。第1混合工程は、乾式粉砕プロセス、又は無機材料を溶解しない適切な液体(すなわち、非溶媒)を用いた湿式粉砕プロセスでありうる。数分から数時間などの混合時間は、例えば、観測された混合性能の規模又は程度に応じて調整することができる。粉砕は、例えば、遊星ミル、磨砕機、又は同様の混合又は粉砕装置によって達成することができる。
【0075】
か焼工程
か焼工程では、混合工程の後に、無機材料の混合物を、所定の温度、例えば、中間の値及び範囲を含めて800~1200℃でか焼して、反応させ、目的のLiガーネット酸化物を形成する。所定の温度は、ガーネット酸化物の種類に依存する。例えば3~12時間(例えば6時間)のか焼時間は、選択された無機出発材料又は原料バッチ材料の相対反応速度にも依存しうる。実施形態では、無機バッチ材料の予備混合物を粉砕し、次いで、必要に応じて、第1の工程で焼成又はか焼することができる。
【0076】
第2混合工程
か焼されたLi-ガーネット酸化物混合物及び第2の相添加剤は一緒に混合され、粉砕されて、均質な組成の混合物を形成する(例えば、未焼成のセラミックのペレット又はバー内のMgO分布によって決定される)。第2混合工程は、例えば、例えば、湿式粉砕;乾式粉砕;又はそれらの組合せのうちの1つ以上を含みうる。混合物の粉砕中に、吸着した水分又は溶媒を除去するために、例えば60~100℃(例えば70℃)の低温で混合物を任意選択的に加熱することができる。
【0077】
圧縮工程
均質な第2の混合組成物は、第2混合工程中に同時に粉砕され、圧縮されて圧縮成形体を形成した。圧縮成形体をか焼工程の温度よりも高い温度で焼結し、緻密なセラミックペレットを得た。圧縮成形体は、任意の適切な方法、例えば、冷間等方プレス、熱間等方プレス、熱プレス、又は同様の手法及び手段によって、任意の形状として形成されうる。
【0078】
焼結工程
焼結工程中、揮発成分の損失を防ぐために、圧縮成形体を、任意選択的に母粉末で覆った。焼結温度は、中間の値及び範囲を含めて、例えば1000~1300℃であった。
【実施例
【0079】
以下の実施例は、上記の一般的な手順に従って、開示されたセラミックの製造、使用、及び分析、並びに方法を示している。
【0080】
比較例1
比較例1は、質量%のMgOが0質量%であったこと、すなわち、Mg又はMgOを含めなかったことを除いて、実施例2~10に記載されたように達成された。
【0081】
実施例2~10
実施例2~10は、式「Li6.4LaTa0.6Zr1.412質量%MgO」のガーネット型酸化物の調製を実証しており(表1を参照)、ここで、Mg2+イオンはLLZTOの格子に入り込むことができず、La3+24c位置を占有する。ガーネット型酸化物は、次のように合成した:ガーネット型酸化物TaドープLiLaZr12は、式Li6.4LaTa0.6Zr1.412(LLTZO)を有する、従来の固相反応法によって調製した。LiOH・HO(ACS分析試薬グレード;「AR」)、ZrO(AR)、La(99.99%)、及びTa(99.99%)を、所望の実験式の化学量論比に従って、粉砕媒体としてジルコニアボールを使用する、イソプロパノールを用いた湿式粉砕プロセスで混合し、一方、2質量%過剰のリチウム源化合物を添加して、その後の高い焼結温度でのリチウム蒸発を補償した。合成粉末の均一性を改善するために、950℃で6時間、2回か焼することによって、反応物の混合物の反応を達成した。最後に、0~9質量%のMgOを添加した合成粉末を、粉砕媒体としてイソプロパノールとジルコニアボールを用いた湿式粉砕によって、微細粉末へと再び粉砕した。混合物を80℃で16時間乾燥し、次いで500℃で1時間加熱して、吸収された水分及び溶媒を除去した。次いで、乾燥した混合物を乾式粉砕して、均質な微粉末を生成した。第1粉砕工程の後、冷間等方法によって200MPaの圧力下、長方形のバー(約5×6×50mm)へと粉末をプレス(すなわち、圧縮)した。次いで、圧縮成形体を同じ母粉末組成物で覆い、最終的に白金るつぼ内で、1250℃で10時間、焼結した。焼結した試料をダイヤモンド紙で研磨した。研磨された試料試験片の最終寸法は約3×4×30mmであった。
【0082】
比較例1及び実施例2~10のガーネット型酸化物の測定された特性は以下の通りであった:
相解析
粉末X線回折(PXDR)(リガク社のUltima IV、ニッケルフィルタ処理されたCu-Kα放射線、λ=1.542Å)を使用して、0.1°/秒のステップで10から80°までの2θの範囲で、約25℃で合成粉末又はペレットの相形成を決定した。
【0083】
図面を参照すると、図1は、固相反応法によって合成された比較例1及び実施例2~10の焼結試料のXRDパターンを示している。明確に定義された回折ピークはすべて、参照構造に基づいた計算と一致する位置及び相対強度で、立方晶ガーネット型酸化物(LLZO)に対してインデックス付けすることができる(上記Geiger, C. A.を参照)。ピークの左肩のMgO立方相の結晶面(200)と一致する弱いピークを、立方晶ガーネット相の回折面(532)に対してインデックス付けした。このピークを除き、XRDパターンには他の不純物は見出されなかった。ピークの強度は、ガーネット中のMgO含有量とともに徐々に増加した。しかしながら、実施例10のパターンでも、MgOで焼結した後、ガーネットのピークはシフトせず、MgOがガーネット酸化物に対して安定であるか、又はごく少量のみ(すなわち、1質量%よりはるかに少ない、例えば01~0.1質量%)がガーネット構造内に入ることができることが示唆された。
【0084】
伝導度及び活性化エネルギー(E
イオン伝導度を、ACインピーダンス解析(Autolab社、Model PGSTAT302N)によって室温で測定した。周波数抵抗解析の定電位インピーダンスモデルを試験モデルとして選択し、一方、周波数は1Hz~1MHzの範囲、電気的摂動は20mVに設定した。測定前に、両方の平行な表面に、リチウムイオンブロッキング電極として金をスパッタリングした。測定結果は図2に示されており、全伝導度とMgO含量との関係は図4に示されている。図2は、それぞれ、対照例1及び実施例2~10に対応する、室温でのACインピーダンス測定値を示している。対照例1及び実施例2~10の各試料の全伝導度は、室温で1×10-4S/cmを超えていた。最高値は、実施例4~6の複合試料に対応し、室温で5×10-4S/cmを超えていた。図4は、質量パーセント(質量%)のMgO含量と全伝導度(下の曲線及び右軸)との関係を示すグラフであり、活性化エネルギー(E)(上の曲線及び左軸)は、それぞれ、対照例1及び実施例2~10のそれぞれに対応し、表1に列挙されている。
【0085】
活性化エネルギー(E)は、温度チャンバ内で298~388°Kで測定し、次式に従ってアレニウスプロットの勾配から計算した:
σT=Aexp(Ea/kT),
式中、σは伝導度であり、Aは周波数係数であり、Eaは活性化エネルギーであり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。対照例1及び実施例2~10の活性化エネルギーは0.36~0.38eVであり、図3に示されるアレニウスプロットの線形フィッティングから得た。活性化エネルギーとMgO含量との関係は図4に示されており、第2の添加剤がLi-ガーネット酸化物の活性化エネルギーに明らかな影響を与えなかったことが示唆された。
【0086】
相対密度
試験片の密度は、メトラー・トレド密度測定アタッチメントを使用してアルキメデス法によって試験した。理論密度は、図1のXRD結果から計算した。図1は、対照例1及び実施例2~10のXRDパターンを示すグラフである。底部の垂直線(例えば、211、321、400、420、422、521、532、640、800)は、参照データを表し(下記Geiger, C. A.参照)を表し、底部の垂直線(例えば、200)は標準カードからのMgOデータであった。比較例1及び実施例2~10の実用密度、理論密度、及び相対密度が図5に示されている。MgO含量が3質量%を超えたときには、焼結試料の相対密度は96%を超えていた。図5は、開示されたセラミックのMgO含量(質量%)と、それぞれ、対照例1及び実施例2~10に対応する、理論密度(左軸)、実用的密度又は真密度(左軸)、及び相対密度(右軸)との関係を示している。
【0087】
破壊強度及びビッカース硬さ
比較例1及び実施例2~10の機械的強度を3点曲げ技法(Instron 3366)によって決定した。底部スパンは20mmであり、負荷率は0.02mm/分であった。ビッカース硬さHは硬度計で測定した。比較例1及び実施例2~10の平均硬さは、5秒の負荷時間で4.9Nの負荷で研磨表面上、負荷ごとに5つのくぼみを使用して決定した。試験片のエッジ効果によって引き起こされる狭い間隔のくぼみ又は摂動の応力場間の干渉を回避するために、少なくとも500μmの分離距離が、隣接するくぼみ位置の間で維持された。破壊強度とビッカース硬さの測定結果が図6に示されている。MgO含量が3%を超えると、破壊強度は純粋なLi-ガーネット酸化物よりも高くなった。
【0088】
プリスチンな断面及び化学腐食断面の微細構造
対照例1及び実施例2~10の焼結試料のランダム断面微細構造形態を、SEM(日立社製、S-3400N)によって明らかにした。ランダム断面微細構造は、それぞれ、図7A~7Jに示されている。これらの試料を6MのHCl水溶液で3分間化学的にエッチングして、粒界を明らかにし、化学腐食の形態を、それぞれ図8A~8Jに示している(すなわち、画像:a)対照例1=0質量%、b)実施例2=1質量%、c)実施例3=2質量%、d)実施例4=3質量%、e)実施例5=4質量%、f)実施例6=5質量%、g)実施例7=6質量%、h)実施例8=7質量%、i)実施例9=8質量%、及びj)実施例10=9質量%)。MgO含量が3質量%を超えると、Li-ガーネット酸化物の粒度は10μm未満に著しく低下し、適切な高密度の微細構造が得られた。ガーネット粒の過成長は、MgO添加剤の添加によって顕著に抑制され、報告された粒度の増加傾向とは反対であった(上記のJaniniを参照)。
【0089】
第2の添加剤MgOの分布
比較例1及び実施例2~10の断面におけるMg分布を、エネルギー分散型検出器(日立社製、S-3400N)を備えた走査型電子顕微鏡によって調査した。ランダム断面のMg元素マッピング走査画像と後方散乱走査電子画像が、それぞれ、図9及び図10に示されている。
【0090】
図9A~9Iは、それぞれ、実施例2~10(対照例1の画像は示されていない)に対応するプリスチンな試料のMgO分布のエネルギー分散分光法(EDS)画像を示している。枠で囲まれた領域は、元素分析のための検出された領域を表しており、斜線の網掛け部分(元のカラー画像の赤は含まれていない)は、顕著な(しかし、すべてではない)Mgが豊富な領域の例を表している。図10A~10Jは、それぞれ、対照例1及び実施例2~10に対応するプリスチンな試料の後方散乱電子(BSE)画像を示している。
【0091】
複合セラミック電解質のすべてにMgO粒子が形成されたことに留意されたい。MgO含量が3質量%を超えると、MgO粒子がガーネット酸化物粒子の間に存在し、ガーネット粒子の成長が抑制された。MgO含量が3質量%を超えると、非常に少量のMgもガーネット構造に取り込まれたが、これはエネルギー分散型検出器では検出されなかった。表1には、比較例1及び実施例2~10のSEM解析が挙げられている。
【0092】
【表1】
【0093】
リチウムガーネットは、公称化学組成LiLaZr12を伴う、ガーネット様の構造及び主にイオン伝導性を有している(Cuessen, E. J., “The structure of lithium garnet: cation disorder and clustering in a new family of fast Li+ conductors”, Chem. Commun., 2006, p 412-413を参照)。この組成物は、リチウムイオン伝導度が高く、リチウム金属電極との反応に対する熱的及び化学的安定性が良好であることが報告されている。この組成物は、低コストの材料から簡単に調製され、1200℃前後の低温で容易に高密度化される。これらの特徴は、ジルコニア含有リチウムガーネットがリチウム電池用の固体電解質の有望な候補であることを示唆している。
【0094】
LiLaZr12のガーネット構造は、正方晶と立方晶の2つの結晶相を有しうる。正方相は周囲条件で安定な相であるが、100~150℃で立方相への相転移を被る場合がある(上記Geiger, C.を参照)。正方晶ガーネットは空間群対称性I4/acdを有し、立方晶ガーネットと比較して低いイオン伝導度を特徴とする(Awaka, J., et al., J. Solid State Chem., 2009, 182, 2046-2052参照)。イオン伝導度の差がより低い理由は理解されていないが、研究者らは、イオン伝導度を容易に最大化するであろう添加剤を探索することにより、安定した立方晶ガーネットを製造することに集中した。文献(R. Murugan, et al., “Fast Lithium Ion Conduction in Garnet-Type Li7La3Zr2O12”, Angew. Chem. Inst. Ed, 2007, 46, 7778-7781; C. Geiger, et al., “Crystal Chemistry and Stability of “Li7La3Zr2O12” Garnet: A Fast Lithium-ion Conductor”, Inorg. Chem., 2011, 50, 1089-1097を参照)に記載される典型的な添加剤には、例えば、Al3+、Nb5+、Ta5+、Ga3+、Sn5+、Sn3+、及び立方晶ガーネットの粉末又はペレットの製造に必要な同様のイオンが含まれる(米国特許第8986895号、“Garnet type lithium ion-conducting oxides and all solid state lithium ion secondary battery conducting the same,” S. Ohta, et. al.を参照)。しかしながら、幾つかの課題によってこの手法は制限されるため、テープキャストによるリチウムガーネット膜の製造に関する報告はほとんどない。第一に、テープキャスティングは溶剤とバインダが関係し、それにより、未焼成体の圧縮を下げることができる。第二に、テープキャスティングは無加圧成形法であり、未焼成の密度は、ほとんどの先行研究が報告している加圧成形法よりも低い
。第三に、リチウムガーネット膜は非常に薄いため、ほとんどの研究者がより厚いペレットで行ったように、母粉末でテープを覆うことは実用的ではない。第四に、リチウムガーネット又はその前駆体は、化学的に反応性であり、他の材料と容易に反応することができるため、適切なセッター材料を特定することは困難である。上記の課題を克服するために、新しい組成物及び改善されたプロセスが開発され、現在開示されている。
【0095】
実施形態では、本開示は、ガーネット粉末の製造から始まるリチウムガーネットの製造方法を提供する。酸化物前駆体を含むバッチが完全に混合される。か焼後の最終的な組成物は、次式を有する:Li7-xLa3-yZr2-xA12。均質性を確保するために、Turbula(登録商標)シェーカー混合、例えば少なくとも30分間の混合、少なくとも30分間の振動混合、及び2時間にわたるボールミル粉砕により、出発バッチ粉末を乾式混合することができる。湿式混合が推奨されるが、必須ではない。例えば、水中又はイソプロピルアルコール中で振動ミキサーを用いて2時間、湿式混合を行って、凝集体を破壊させ、次にローラ上で1~2時間ボールミル粉砕し、その後100℃で1~2日間乾燥させることができる。乾燥混合粉末を、例えば1000~1250℃で2~12時間、アルミナシートで覆われた白金容器内でか焼した。最適なか焼温度は、選択した特定のガーネット組成に応じて決まる。か焼後、粉末を、ボールミル粉砕又はジェットミル粉砕のいずれかによって粉砕し、上記のリチウムガーネット立方相は90質量%であった。ボールミル粉砕粉末はより粗く、1~5μmのD50を有する粒子を有しており、ジェット粉砕粉末はより細かく、0.5~0.9μmのD50を有していた。粗い粉末と細かい粉末の両方とも、ほぼ二峰性の粒径分布を有する。テープキャスティングには、単峰分布を有する、より細かい粉末が好ましい。例えば3μmの単峰性の微粉末は、ボールミル粉砕粉末の空気分級によって達成することができる。空気分級後に3つの粉末が生成され、それらの粒径分布が図11A及び11Bに示されている。超微粒子粉末(例えば、0.3~0.4μm)は、テープキャスティングにとって好ましいガーネット粉末である。「-3μm」(例えば、約0.7μm)タイプの粉末は、幾つかの組成物に適している。「+3μm」(例えば、4~5.5μm)の粉末は、気密性のテープとして製造することがより困難である。超微粒子粉末は、テープキャスティング後に高い未焼成圧縮を与える単峰分布と、未焼成のテープと焼結されたテープの平坦性を確保する均一な収縮とを有する。
【0096】
図11A及び11Bは、それぞれ、式Li6.75La2.8Ga0.2Zr1.75Nb0.2512(「HF110」)のGa-Nbをドープしたガーネット組成物、及び式Li6.5LaZr1.5Ta0.512(「HQ110」)のTaをドープしたガーネット組成物についての体積%による粒径分布を示している。いずれの場合も、ガーネット粉末はボールミル粉砕され、その後、3つの画分、すなわち、「超微粒子」、「-3μm」、及び「+3μm」へと空気分級された。HF110では、超微粒子画分のd50は0.4μmであり(1110);-3μm画分のd50は0.71μmであり(1120);「+3μm」画分のd50は4.0μmである(1130)。HQ110では、超微粒子画分のd50は0.4μmであり(1130);-3μm画分のd50は0.7μmであり(1140);「+3μm」画分のd50は5.3μmである。
【0097】
テープキャスティングプロセスには、例えば、スリップ製造、テープキャスティング、乾燥、及び積層が含まれる。本明細書では、ガーネットテープを製造するための水性スリップが配合されている。ガーネット粉末は、LTAPよりも酸及び塩基性水溶液中で安定していると報告されている(Y. Shimonishi, et. al, “Synthesis of garnet-type Li7-x La3Zr2O12-1/2x and its stability in aqueous solutions”, Solid State Ionics, 183 (2011) 48-53参照)。それらの試験は50℃で1週間、行われた。現在開示されている方法では、水中の粉末又はペレットの安定性試験も、室温でのガーネットと水との反応を示している。目的は、スリップの調製後、スリップのレオロジーの大幅な変更の前に、比較的短時間でテープキャスティングすることである。典型的な水性スリップ組成の配合が表2に示されている。支持体はMylar05270であり、アプリケータブレードのギャップ幅は14ミル(約355.6μm)であった。表3は、スリップに使用された水性バインダの情報を示している。スリップ製造は、次の工程を含む:ガーネット粉末を脱イオン水に分散させてガーネット懸濁液を形成する工程;ガーネット懸濁液にバインダを添加する工程;真空で高速混合し、5~10分間、冷却する工程;及び、6ミル(約152.4μm)から18ミル(約457.2μm)のブレードを使用してテープキャスティングする工程。テープは約24時間未満で90質量%乾燥され(例えば、10質量%の残留水)、その後、60~80℃、1000psi(約6.89MPa)で20分間、積層される。積層されたテープは、100~400μmの厚さと、例えば、1~3平方インチ(約6.45~58.1cm)以上の面積を有する。
【0098】
【表2】
【0099】
表2は、開示されているガーネット粉末との相容性について試験した、Polymer Innovations社(米国カリフォルニア州ビスタ所在)の3つの異なる独自の水系バインダ配合物を示している。
【0100】
【表3】
【0101】
バインダは、例えば、共重合された極性官能基を有する独自のアクリルポリマーの水溶液を含みうる(商用情報源:Polymer Innovations社による、polymerinnovations.comを参照)。アクリルポリマーは約40℃のTを有するが、一般的な強靭なキャストテープ特性を可能にするために、はるかに低いTへと可塑化することができる。ポリマーは、pHがアルカリ性の場合には水に可溶であり、例えば、わずかな割合(例えば、0.1~3質量%)の水酸化アンモニアの添加により達成することができる。
【0102】
可塑剤も含むWB4101及びWB40B-44バインダシステムは、スラリーのレオロジーに悪影響を与えたと判断された。これにより、凝集が生じ、一部の組成物では適切なテープをキャスティングできなくなった。可塑剤が添加されていないWB40B-53バインダは、混合直後にキャスティングした場合に、試料の調製用に薄い加工可能なテープにキャスティングできる、高粘度のスラリーを可能にした。実施形態では、WB40B-53は、現在開示されているガーネットテープを調製するための好ましいバインダである。
【0103】
空気中での積層されたテープの焼結には、幾つかの条件が必要である。第一に、テープをガーネットセッターに置く。各ガーネット組成物には、同じ又は類似した組成の独自のガーネットセッターが必要になる場合がある。セッターは、焼結中にテープがセッターに粘着しないように、テープよりも高い焼結温度を有することが好ましい。セッターはまた、リチウムが豊富な組成物であることが好ましく、これにより、必要に応じてテープに追加のLiが提供される。第二に、焼結中のテープ中のLiの損失を補償するために、テープをセッターの周囲又はテープの近くに配置する場合には、母粉末はガーネット粉末と同じ組成であることが好ましい。母粉末は、すべてのガーネット組成物に必要とされるわけではない。母粉末の必要性は、組成に応じて決めることができる。例えば、リチウムが豊富な組成物では、母粉末は必要ではない。リチウムが欠乏している組成物の場合、テープを母粉末に埋め込む必要がありうる。実験式組成物における好ましいLi含量は、例えば、6.4~6.8モル当量の化学量論(すなわち、Li6.4~6.8)を有しうる。第三に、図14に示される、倒立させた白金るつぼ焼成装置(1400)のように、テープ、セッター、及び母粉末粉を封入するには、閉鎖環境が必要である。底部支持体は白金シートであり、ガーネットセッターは母粉末とともにシートの上部に配置され、白金るつぼは底部の白金シートに接触する。低温では、るつぼとシートの間のギャップは、発生したガスを放出することができるが、高温(800℃を超える)では、白金るつぼの上部の重量(例えば、Al(1440))によってギャップが閉じる。このような閉鎖システムにより、ガーネットテープの焼結が非常に有効になる。第四に、空気中での焼結は、好ましくは通常の窯内で達成される。バインダが燃え尽きるため、60~90℃/時間など、400℃未満の遅い加熱速度が好ましい。400℃を超えると、加熱速度は、例えば、最高焼結温度になるまで、120℃/時間に設定されるなど、100℃/時間を超えることがある。最高焼結温度は組成に応じて決まり、例えば、1000~1250℃で変動しうる。焼結温度での滞留時間は、組成、試料の質量、及び粒度目標に応じて、例えば2~10時間でありうる。
【0104】
不活性ガス環境での焼結では、組成に応じて、未焼成のテープ(1410)を白金支持体(例えば、プレート(1420))に直接配置するか、あるいは、ガーネットセッター(1430)に配置することができる(図14を参照)。リチウムの損失を減らすために、倒立させた白金るつぼ(1440)でテープを覆ったが、空気中で焼結する場合のようにしっかりと封止する必要はない。目的は、空気中で焼成を開始し、通常800℃まで、バインダ又は他の有機物を燃やし尽くして、すべての炭素を除去し、その後、焼成の残りの期間、Ar又はNなどの不活性雰囲気に変えることである。不活性ガスの流れは、好ましくは、不活性ガス焼結段階全体にわたって、例えば40cfph(約1.13m/h)に維持される。最高焼結温度は、空気中で焼結された試料ではより低く、たとえば、不活性雰囲気で焼結された試料よりも少なくとも50℃低くすることができる。不活性雰囲気(すなわち、酸素を含まない)で焼結されたテープも高密度で、半透明で、気密性があり、空気中で焼結されたテープ試料と同じイオン伝導度を有する。図15は、不活性雰囲気中で焼結されたテープの一例を示している。
【0105】
実施例11
リチウムガーネットセッターの製造
リチウムガーネットセッターは、式LiLaZrAl12のアルミニウムをドープした組成物である。この組成物は、95質量%又は95体積%を超えるリチウムガーネット立方相を有する空気中で約1240℃の高い焼結温度を有しているため、このリチウムガーネットセッターは、リチウムガーネットテープの優れた焼成支持材料である。セッターは、約2000psi(約13.8MPa)の一軸プレス及び約8000psi(約55.2MPa)の等圧プレスを含む乾式プレスによって製造することができる。通常、直径2~3インチ(50.8mm~76.2mm)、高さ1~3インチ(25.4mm~76.2mm)の成形された未焼成のペレットを白金シート上に置き、反転させた白金るつぼで覆う。閉鎖環境は、焼結中のリチウムの損失を最小限に抑える。最高焼結温度は2~6時間で1230℃である。セッターは完全な緻密化には必要ないことから、保持時間を短くすると焼結条件を低くすることができる。焼結後、得られた焼結ペレットをセッターとして使用するために0.5~5mmの厚さを有するディスクへと切断することができる。セッターの表面は、平らで滑らかであることが好ましく、セッター領域は、セッター上に置かれたテープ試料の大きさよりも大きいことが好ましい。セッターは、開示された低温のガーネットテープの調製に繰り返し使用することができる。
【0106】
別の適切なセッターは、バッチに添加された10質量%のLiOを含む、式Li6.5LaZr1.5Ta0.512の組成を有するTaをドープしたガーネットである。このバッチは、上述のAlをドープしたセッターと同様に、Ptるつぼ内で4時間、1250℃の焼結温度を使用して焼結された。テープ焼結プロセスでは、セッターはガーネットテープの平坦で滑らかな支持体として機能するが、Ptプレートとテープとの副反応も防ぐ。また、セッターはガーネットテープに過剰なLiの供給源を提供して、LiOの蒸発によるテープからのLiの損失を補償する。
【0107】
実施例12
空気中で焼結されたガーネットテープ-Li6.75La2.8Ga0.2Zr1.75Nb0.2512
テープは、水性スリップシステムからのテープキャスティングによって形成される。粉末は、式Li6.75LaZr1.75GaNb0.25の化学量論的組成を有するガリウム及びニオブをドープされたリチウムガーネットである。スリップを製造する工程は、例えば、30gのDI水に15gのリチウムガーネット粉末(単峰性の粒径分布及びD50=0.4μmで空気分級されている)を分散させる工程;スパチュラで1~2分間攪拌する工程(水はガーネット粉末を分散させるための優れた液体である。粉末又は凝集体の大部分は急速に分散される。);次に、約8gの水溶性バインダWB04B-53を加える工程を含む。このバインダには可塑剤が含まれていなかったため、溶解に時間がかかる。すべてのバインダが溶解するまで、スパチュラによる撹拌を10~20分間続けた。次いで、容器を高速ミキサ(マゼルスターミキサ)に5分間入れた。ミキサーには真空機能と冷却機能が備わっていたため、スリップが誤って温められることはなく、ガーネットと他のスリップ成分との反応の可能性は低くなる。混合後、14ミル(約355.6μm)のギャップのブレードを使用して、スリップをすぐにマイラー表面にキャスティングした。
【0108】
テープを、ある程度のカバーを付けて空気中で約20時間乾燥し、乾燥テープの厚さは14ミル(約355.6μm)のブレードから約90μmであり、そのため、4本のテープが並列構成で積み重ねられ、つまり、テープの上面(空気に面する)とテープの下面がマイラーに接していたことを意味する。積み重ねを60℃の温度で、1000psi(約6.89MPa)で20分間、積層した。積層後、平坦で均一に薄い積層シートが生成し、焼結の準備が整った。
【0109】
積層シートを、実施例11で述べたリチウムガーネットセッター上に置いた。テープの組成に応じて、Al又はTaのいずれかをドープしたセッターを使用することができる。一般的な指針は、高温組成物をセッターとして使用することであり、目的とする組成物の焼結温度よりも50~100℃高いことが好ましい。少量の母粉末をセッターの周りに広げ、次に、倒立させた白金るつぼで覆った。アルミナ製のディスク又はプレートを、高温でるつぼとシートとの間のギャップを封止するための重りとして、白金るつぼの上に置いた。積層シートを1075℃で2時間、焼結した。テープの有機含有量の理由から、周囲温度から400℃までの加熱速度を、90℃/時間の遅い速度に設定した。バインダを燃やした後(すなわち、バインダを熱で除去した後)、加熱速度を120℃/時間に調整したが、合計サイクル時間は2~23時間など、24時間未満である。結果的に得られた焼結テープの外観は、図12にオーバーレイとして示されている。結果的に得られた焼結テープは、白色、半透明、及び密閉性(すなわち、気密性又は空気不透過性)であった。この焼結テープ組成物は、高い相対密度と優れたイオン伝導度を有していた。図13Aに示すテープの微細構造解析は、テープの表面が非常に密であることを示唆しており、テープが密閉される原因であると考えられる。図13Bは、テープの研磨された内面を示しており、開放された細孔を有していない。その代わり、すべての細孔が閉じられていた。暗いスポットの一部は細孔ではなく、Zrが豊富な相である二次相であった。図13Cは、焼結後のガーネットの粒度を示している。この組成物には、焼結を促進すると同時に粒の成長を促進する、中間液相が存在する。ほとんどの粒は5μm未満であるが、一部の粒子は最大20μmである。テープのイオン伝導度は1.3×10-4S/cmであった。
【0110】
実施例13
空気中で焼結されたガーネットテープ-Li6.5LaZr1.5Ta0.512
Taをドープしたガーネットテープは、水性スリップシステムからのテープキャスティングによって形成される。粉末は、0.5モル当量のタンタルをガーネット(LiLaZr12)にドープして、式Li6.5LaZr1.5Ta0.512の化学量論的組成物を形成することによって作られる。XRD解析は、立方相が95質量%を超えることを示している。スリップシステムを作るために、14gのガーネット粉末(ボールミル粉砕での空気分級後のD50はそれぞれ0.36μm及び0.7μmであり、ジェットミル粉砕後は0.61μmである)を18gのDI水に分散し、スパチュラで攪拌してよく混合した。次に、5.25gの水溶性バインダをスリップに加え、バインダのすべてが溶解するまで、磁気攪拌棒で1時間、攪拌した。バインダはWB4101(7%の可塑剤を含む)、WB04B-53、又はそれらの混合物であり、ガーネット/水/バインダの比率は異なりうる。真空ポンプを使用してスリップから気泡を除去し、次にスリップを真空マゼルスターミキサに入れて均質なスリップを形成し、気泡をさらに除去した。混合後、スリップを、例えば8~16ミルのギャップを有するブレードで、マイラー上に直ちにキャストした。乾燥後、未焼成のテープの幾つかの層を一緒に積層し、より厚いテープを形成することができる。より良好な積層のためには、熱間静水圧プレスが好ましい。テープ焼結プロセス中のエッジのカール及びしわを避けるために、テープのエッジをレーザで切断し、円形のテープを形成した。
【0111】
適切な焼結構成が図14に示されている。積層シートを、Taドープガーネットセッター(実施例11に記載、セッターとして過剰のLiを有する、Taをドープしたもの)及びPtプレート上に配置し、その後、Ptるつぼとプレートとの間のギャップを高温で封止するために上部にアルミナの重りを備えたPtるつぼで覆う。焼結プロファイルは次の通りであった:加熱速度は、周囲温度(例えば、25℃)から600℃まで100℃/時間であり、1時間保持して未焼成のテープ中の有機残留物を除去し、その後、温度は、同じ加熱速度で1200℃の焼結温度まで上昇し続け、その後、2~3時間保持してテープを焼結し、最後に300℃/時間の冷却速度で周囲温度又は約25℃までテープを冷却する。
【0112】
図14は、ガーネットテープ(1410)を焼結するための閉鎖環境(1400)を含む例示的な焼結装置の概略図を示しており、例えば、支持白金プレートベースシート(1420)、倒立させた白金るつぼ(1440)、白金るつぼの上にあるアルミナ製のディスクの重り(1450)を含みうる。倒立させた白金るつぼによって形成されたチャンバ内には、セッター(1430)の上にガーネットテープ(1410)、及び任意選択的にガーネットテープ(1410)を取り囲む又は埋める母粉(1450)(図示せず)が含まれている。
【0113】
図15は、空気中で焼結した後のテープの外観を示しており、テープは半透明であり、色が均一であり、非常に平坦である。背景面に印刷された大文字の「MET」は、ディスクを通して人間の目に、及び元の写真において、はっきりと見える。
【0114】
図16A~16Dは、ガーネットテープが緻密に焼結されており、粒度が小さい(7μm)ことを実証するSEM断面画像を示している。図16A~16Dは、Taをドープされたガーネットの破断断面の微細構造を示している。図16A~16B(スケールバーはそれぞれ、240μm及び60μmである)は、図11Bに示されるように、ボールミル粉砕及び空気分級したガーネット粉末(0.7μm)から作られ、可塑剤WB4101とともにバインダを使用したテープのSEM画像である。図16C~16D(スケールバーはそれぞれ、230μm及び60μmである)は、ジェットミル粉砕されたガーネット粉末から作られ、可塑剤WB40B-53なしでバインダを使用したテープの画像である。画像のスケールバーは、それぞれ、240μm(図16A)、60μm(図16B)、230μm(図16C)、及び60μm(図16D)である。図16A~16Dは、両方のテープが緻密に焼結されており、非常に均一な、15μm未満の粒度を有することを示している。EDX解析は、元素La、Zr、Ta、及びOの存在を示しており(LiはEDXでは検出できず、データは示されていない)、これはガーネット組成と一致している。テープは気密性であり、それらは、メチレンブルー漏れ試験の3か月後も損傷がないままである。焼結されたテープは、XRD分析により、ほぼ100質量%の立方相を有している。テープの導電率は高く、例えば、2~3×10-4S/cmの導電率を有している。
【0115】
実施例14
Ar又はNガス中で焼結されたガーネットテープ
Ar又はN中で焼結されたリチウムガーネットテープは、空気中で焼結されたものとは大きく異なっている。無酸素環境は、ガーネットと白金との間の反応を回避するだけでなく、焼結温度も低下させる。テープは同じ組成Li6.75LaZr1.75GaNb0.2512を有している。しかしながら、焼結温度は実施例13よりも低く、テープは、少なくとも40℃低い1030℃という低い温度で焼結することができる。図17は、最初に、空気雰囲気中、管状炉内で中間温度まで加熱し(1710)、次にプロファイルの残りの部分について残りの部分についてAr又はN雰囲気中、最高で最終焼結温度まで加熱し(1720)、周囲温度まで冷却した、開示されているガーネットテープの代表的な焼結プロファイルのグラフを示している。
【0116】
テープを、ガス環境の制御が可能な管状炉内で焼成した。焼成プロファイルは2つの段階に分けられた:室温から800℃までは、すべての有機物を排除するために空気中でテープを焼成した;800~1040℃及び残りの焼成では、Ar又はN環境でテープを焼成した。800℃では、2時間保持され、1時間保持後又は最後の30分でガスが切り替えられ、空気が流出し、チャンバがより高い温度に加熱される前にAr又はNガスで満たされることを確実にする。1040℃での焼結は、無酸素環境で達成されることが好ましい。焼結後、テープも半透明になった。実施例2と同様に、粒は、空気中で焼結したときに観察される成長レベルに類似した成長を有する。焼結した製品のイオン伝導度は、一貫して約5×10-4S/cmである。
【0117】
別の組成物Li6.5LaZr1.5Ta0.512もまた、Ar雰囲気で焼結した。空気中での焼結と比較して、焼結温度は少なくとも50℃低かった。この組成物は液体焼結なしのため、空気中の焼結温度は1200℃以上であり、Ar条件では焼結温度は1140℃まで下げることができる。温度プロファイルは、上部温度が高いことを除き、図17と同様である。焼結後、テープは非常に平坦で、半透明で、かつ気密性であるが、透明性は前述のAr焼結した例ほど良好ではなく、主に組成の違いに起因すると考えられている。イオン伝導度は3.2×10-4S/cmであった。
【0118】
実施例15(予測)
固体電解質、並びに固体を含むエネルギー貯蔵装置
フル充電池は、薄いリチウム金属アノードをガーネット固体電解質の片側に積層し、反対側に従来のコバルト酸リチウムなどのカソード層を印刷又はキャストすることによって製造される。好ましくは、カソード構造は、カソード内に含まれる電解質が移動しないようにゲル電解質を含む。薄い金属箔集電体が電流の分配のために電極層に追加されて、1つの「三層」構造が完成する。必要に応じて、セル容量を増やすために、複数の三層構造を一緒に統合(すなわち、結合)することができる。薄い固体電解質(厚さ20μm)、薄いリチウム金属アノード(厚さ10μm未満)、従来の集電体(厚さ15μmのAl/Cu)、及び、少なくとも3mAh/cmの容量のコバルト酸リチウム/ゲル電解質複合材料を用いて、600Wh/Lを超える体積エネルギー密度のセルが実現可能である。
【0119】
本開示は、さまざまな特定の実施形態及び技術を参照して説明されてきた。しかしながら、本開示の範囲内に留まりつつ、多くの変形及び修正が可能であることが理解されるべきである。
【0120】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0121】
実施形態1
複合セラミックであって、
リチウムガーネット主相;及び
粒成長抑制剤副相
を含み、
前記リチウムガーネット主相がLi6.4LaZr1.4Ta0.612であり、かつ前記複合セラミックの91~99質量%を構成し、前記粒成長抑制剤副相がMgOであり、かつ前記複合セラミックの総重量に基づいて1~9質量%を構成する、
複合セラミック。
【0122】
実施形態2
前記セラミックが3~7μmの平均粒度を有する、実施形態1に記載のセラミック。
【0123】
実施形態3
前記セラミックが100~180MPaの機械的強度を有する、実施形態1に記載のセラミック。
【0124】
実施形態4
前記セラミックが1×10-4S/cm~6×10-4S/cmのイオン伝導度を有する、実施形態1に記載のセラミック。
【0125】
実施形態5
前記セラミックの密度が、前記セラミックの理論最大密度の少なくとも95~98%である、実施形態1に記載のセラミック。
【0126】
実施形態6
少なくとも実施形態1に記載のセラミックを含む、セラミック電解質。
【0127】
実施形態7
実施形態1に記載の複合セラミックの製造方法であって、
無機原料物質を混合して、リチウム源化合物及び他の適切な無機原料物質を含む混合物を形成し、所望のガーネット組成物を製造する、第1混合工程;
前記混合物を粉砕して、前駆体の粒径を小さくする、第1粉砕工程;
前記粉砕された混合物をか焼して、800~1200℃でガーネット酸化物を形成する工程;
前記粉砕及びか焼されたガーネット酸化物と第2の添加剤とを混合して、第2の混合物を提供する、第2混合工程;
前記第2の混合物を粉砕して前記第2の混合物の構成成分の粒径を小さくする、第2粉砕工程;
前記第2の粉砕された第2の混合物を圧縮成形体へと圧縮する工程;及び
前記圧縮成形体を600~1300℃で焼結する工程
を含む、方法。
【0128】
実施形態8
前記リチウム源化合物が化学量論的に過剰に存在する、実施形態7に記載の方法。
【0129】
実施形態9
前記第2の添加剤が1~9質量%のMgOである、実施形態7に記載の方法。
【0130】
実施形態10
前記焼結工程が、空気中、不活性雰囲気中、又は最初に空気中、次に不活性雰囲気中で行われる、実施形態7に記載の方法。
【0131】
実施形態11
前記焼結が、空気中、1000~1300℃で行われる、実施形態7に記載の方法。
【0132】
実施形態12
前記焼結が、不活性雰囲気中、800~1200℃で行われる、実施形態7に記載の方法。
【0133】
実施形態13
前記第1の粉砕の粒径が0.3~4μmであり、前記第2の粉砕の粒径が0.15~2μmである、実施形態7に記載の方法。
【0134】
実施形態14
負極;正極;及び、介在する固体電解質材料を含む電気化学デバイスであって、前記介在する固体電解質材料が、前記固体電解質の総質量に基づいて1~9質量%の量のマグネシアを含む少なくとも1つの粒成長抑制剤を有する、実施形態1に記載の複合セラミックを含む、電気化学デバイス。
【0135】
実施形態15
複合電解質であって、
リチウムガーネット主相及び粒成長抑制剤副相を有する、次式のリチウムガーネットセラミックを含み:
Li7-xLa(Zr2-x,M)O12-SA,
式中、
Mは、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Sc、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、W、又はそれらの混合物の群から選択され;かつ
「SA」は、前記セラミックの総量に基づいて1~9質量%で存在する、MgO、CaO、ZrO、HfO、又はそれらの混合物の群から選択される第2の添加酸化物を含み;xは0より大きく1未満であり、
前記リチウムガーネット主相がLi6.4LaZr1.4Ta0.612であり、かつ前記複合セラミックの91~99質量%を構成し、前記粒成長抑制剤副相がMgOであり、かつ前記複合セラミックの総重量に基づいて1~9質量%を構成する、
複合電解質。
【0136】
実施形態16
実施形態15に記載の複合電解質のテープの製造方法であって、
酸化物前駆体を含むリチウムガーネットバッチを湿式又は乾式で完全に混合してバッチ混合粉末を形成する工程;
白金容器中で前記バッチ混合粉末をか焼して、か焼粉末を形成する工程;
前記か焼粉末を粉砕して、粉砕粉末を形成する工程;
前記粉砕粉末をテープキャスティングして未焼成のテープを形成する工程;及び
前記未焼成のテープを焼結して前記複合電解質のテープを形成する工程
を含む、方法。
【0137】
実施形態17
前記粉砕粉末を0.3~0.7μmの粒径を有する単峰分布へと分級する工程をさらに含む、実施形態16に記載の方法。
【符号の説明】
【0138】
1400 閉鎖環境
1410 ガーネットテープ
1420 支持白金プレートベースシート
1430 セッター
1440 倒立させた白金るつぼ
1450 ディスクの重り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A-13C】
図14
図15
図16
図17