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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20220907BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20220907BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/57
C08K5/56
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020543755
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2018083707
(87)【国際公開番号】W WO2019200579
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】ニエ、チエン
(72)【発明者】
【氏名】シー、ミンロン
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105295828(CN,A)
【文献】特表2009-542848(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107760257(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒドロキシル末端のポリオルガノシロキサンと、
(b)下記の一般式:
【化1】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、1~16個の炭素子を有するアルキル基である)
を有するジアセトキシシランと、
(c)メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、およびそれらの混合物からなる群から選択される多官能アルコキシシランと、
(d)充填剤と、
(e)触媒と
を含み、
成分(a)と成分(b)の重量比は(75~1400):1であり、
ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、成分(b)は0.03重量%~1.9重量%の量で使用される、ポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(a)ヒドロキシル末端のポリオルガノシロキサンと、
(b)下記の一般式:
【化2】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、1~16個の炭素子を有するアルコキシ基である)
を有するジアセトキシシランと、
(c)メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、およびそれらの混合物からなる群から選択される多官能アルコキシシランと、
(d)充填剤と、
(e)触媒と
を含み、
成分(a)と成分(b)の重量比は(20~1400):1であり、
ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、成分(b)は0.03重量%~1.9重量%の量で使用される、ポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、成分(a)は10重量%から85重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項4】
前記ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、成分(c)は0.5重量%から8重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項5】
成分(a)は、25℃における動粘性係数が20,000から100,000mm/sの範囲を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項6】
ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、成分(d)は20重量%から60重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。
【請求項7】
シリコン樹脂(f)をさらに含みうることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項8】
成分(f)は、25℃における粘性係数が10,000から500,000mPa・sの範囲であることを特徴とする、請求項7に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項9】
ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、前記組成物は可塑剤を20重量%未満含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項10】
前記触媒は有機スズまたは有機チタンであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のポリシロキサン組成物を硬化することにより得られることを特徴とする、エラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン組成物に関し、特に、室温で硬化して低弾性率のエラストマーを形成することができる実質的に非腐食性のポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
独特な応力-ひずみ挙動、すなわち低応力と高伸び、低弾性率、室温加硫(RTV)シリコーンゴムは、温度、湿度、応力による大きな変形に耐えることができるので、建物の伸縮継手やコンクリートパーツ間のシール継手に特に適している。既存の低弾性率RTVシリコーンゴムは、通常、オキシム硬化、アミド硬化またはアルコキシ硬化である。基本的に、それらの低弾性率特性は、鎖延長剤または大量の可塑剤を添加することによって達成される。
【0003】
例えば、オキシム硬化RTVシリコーンゴムは、典型的には、低弾性率を達成するために、鎖延長剤としてメチル-またはビニル-ビス(メチルエチルケトオキシム)シランを、架橋剤としてメチル-またはビニル-トリス(メチルエチルケトオキシム)シランを使用し、アミド硬化RTVシリコーンゴムは、典型的には、低弾性率を達成するために特殊な構造を有する高分子鎖伸長剤および架橋剤を使用し、アルコキシ硬化型RTVシリコーンゴムでは、低弾性率を達成するために、超高分子量(UHMW)ベースポリマーや大量の可塑剤を使用している。
【0004】
理論的には、鎖延長剤の添加は、ベースポリマー、通常はα、ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサンの分子鎖を、架橋しながら直線的に伸長させ、架橋点を減少させ、従って低弾性率を達成することを可能にする。しかしながら、この方法では、鎖伸長速度と架橋速度との間の関係を制御することは困難である。特に、アルコキシ硬化RTVシリコーンゴムについては、鎖延長剤を添加することにより低弾性率を達成できることを示唆する文献はほとんどない。その理由は、アルコキシベースの鎖延長剤が、減少した弾性率を達成するためにポリマーと反応するのに十分な反応性ではないからであろう。
【0005】
現在、低弾性率アルコキシ硬化型RTVシリコーンゴムは、通常、メチルシリコーンオイルやα、ω-ジメトキシポリジメチルシロキサンなどの可塑剤を添加することによって調製されるが、ポリシロキサン組成物が硬化すると可塑剤がブリードアウトし、周囲の基材の汚染を引き起こす。
【発明の概要】
【0006】
低弾性率オキシム硬化型RTVシリコーンゴムは機械的特性が悪く、環境汚染の原因となること、アミド硬化型RTVシリコーンゴムの原料が希少で高価であること、および低弾性率アルコキシ硬化型RTVポリシロキサン組成物中に添加された可塑剤が硬化後にブリードアウトし、建設汚染をもたらすことを考慮すると、本発明は実質的に非腐食性のポリシロキサン組成物を提供し、該組成物は、大量の可塑剤を必要とすることなく、硬化して低弾性率を有するエラストマーを形成することができる。
【0007】
本発明の第1の態様は、以下の成分:
(a)ヒドロキシル末端のポリオルガノシロキサンと、
(b)下記の一般式:
【化1】
(式中、RとRは、それぞれ独立して、1つ以上の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基である)
を有するジアセトキシシランと、
(c)多官能アルコキシシランと、
(d)充填剤と、
(e)触媒と
を含む、ポリシロキサン組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
成分(a)
本発明によれば、成分(a)はベースポリマーとして使用され、これはRTVシリコーンゴムを調製するために当技術分野で通常使用される種々のヒドロキシル末端ポリオルガノシロキサンまたはそれらの混合物であってよく、一般に、25℃での動粘性係数が通常1,000~350,000mm/s、好ましくは20,000から100,000mm/sの範囲であるα、ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサンである。本明細書で使用される用語「動粘性係数」は、特に明記しない限り、DIN 51562に従って測定される。
【0009】
本発明によれば、成分(a)は、通常、ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して10重量%~85重量%、好ましくは20重量%~50重量%の量で使用される。
【0010】
成分(b)
本発明によれば、成分(b)は、ヒドロキシル末端ポリオルガノシロキサンの分子鎖長を増加させる鎖延長剤として作用する。
【0011】
成分(b)の一般式中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、好ましくはC1~C16のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、t-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、ネオヘプチル等であり、または、1個以上の炭素原子、好ましくは炭素原子1~16個、より好ましくは炭素原子2~16個を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、t-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、イソヘキソキシ、t-ヘキソキシ、n-ヘプチロキシ、イソヘプチロキシ、およびネオヘプチロキシである。
【0012】
本発明によれば、成分(b)は、鎖延長剤の種類によって異なる量で、好適には、ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、0.03~1.9重量%、例えば、0.05重量%、0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.9重量%、1.1重量%、1.3重量%、1.5重量%、1.7重量%および1.9重量%の量で使用される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、成分(b)は一般式を有し、ここで、RおよびRはそれぞれ独立してC1~C16アルキル基であり、成分(a)と成分(b)の質量比は、(75~1400):1である。本発明の他の実施形態では、成分(b)は一般式を有し、ここで、RおよびRはそれぞれ独立して1~16個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、成分(a)と成分(b)の質量比は、(20~1400):1である。
【0014】
成分(c)
本発明によれば、成分(c)は架橋剤として用いられ、アルコキシ硬化型RTVシリコーンゴムを調製するために当該分野で従来用いられている3以上の官能性を有する種々の多官能アルコキシシラン架橋剤であり得る。好適な多官能アルコキシシランの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
成分(c)は、ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して0.5重量%~8重量%の量で好適に使用される。連鎖延長速度と架橋速度のバランスをとるために、ポリシロキサン組成物の出発原料の総重量に対して、成分(c)は0.5重量%~5重量%が好適に用いられる際に、成分(b)は0.03重量%~1.9重量%が好適に用いられる。成分(c)の量が対応する割合より少ないと、ポリシロキサン組成物の硬化が遅くなるか、または全く硬化せず、また、成分(c)の量がその割合を超えると、鎖延長効果がない。
【0016】
成分(d)
本発明によれば、成分(d)は、炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、および活性炭酸カルシウムを含む)、シリカ、珪藻土、ベントナイト(ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト等)、カオリン、タルク、ケイ素粉末、二酸化チタン、アルミナ、石英粉末および粘土鉱物などの、当技術分野で従来使用されている種々の充填剤であり得るが、これらに限定されない。
【0017】
成分(d)は、一般に、ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、70重量%未満、例えば、10重量%~50重量%の量で使用される。一般に、ポリシロキサン組成物中のフィラー含有量が高いほど、硬化エラストマーの弾性率を低下させることは困難である。本発明によれば、典型的には20重量%~60重量%、特に40重量%~60重量%の範囲の高い充填剤含有量を有するポリシロキサン組成物も硬化して、著しく低減された弾性率を有するエラストマーを形成することができる。
【0018】
成分(e)
本発明によれば、触媒は、当技術分野で従来使用されている種々の有機チタンまたは有機スズ触媒であり得る。適切な有機チタン触媒の例には、テトラ-n-ブチルチタネート(Tn-BT)、テトライソブチルチタネート(Ti-BT)、テトラ-t-ブチルチタネート(Tt-BT)、テトライソプロピルチタネート(Ti-PT)、テトライソオクチルチタネート(TOT)、ジイソブチルビス(アセチルアセトネート)チタネート(DIBAT)、ジイソプロピルビス(アセチルアセトネート)チタネート(DIPAT)、ジイソプロピルビス(エチルアセトアセテート)チタネート、ジブチルビス(エチルアセトアセテート)チタネートが含まれるが、これらに限定されるものではない。適切な有機スズ触媒の例には、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズオキシドおよびジオクチルスズオキシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明によれば、成分(e)の量は、そのタイプおよび予想される硬化速度に応じて当業者によって特定することができ、ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、一般に0.01重量%~5重量%の範囲である。
【0020】
成分(f)
本発明によれば、ポリシロキサン組成物は、硬化エラストマーの弾性率をさらに低下させるために、シリコーン樹脂(f)をさらに含むことができ、シリコーン樹脂(f)は、下記一般式を有する当技術分野で公知のいかなる有機シリコーン樹脂であってよい。
(M)(D)(T)(Q)
ここで、Mは単官能シロキサン単位RSiO1/2を表し、Dは二官能性シロキサンユニットRSiO2/2を表し、Tは三官能性シロキサン単位RSiO3/2を表し、Qは四官能性シロキサンユニットSiO4/2を表し、a、b、c、dのうちの少なくとも1つがゼロではない。
【0021】
シリコーン樹脂としては、構造単位M、D、T、Qのいずれか1種またはその組み合わせが挙げられ、例えば、MD、MT、MQ、T、DT、MDT樹脂などが挙げられ、25℃における粘性係数は500,0000mPa・s未満、例えば10,0000~500,0000mPa・sが好適である。
【0022】
本発明によれば、成分(f)の量は、当業者によって必要に応じて特定することができ、ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、一般に10重量%未満であり、例えば、1重量%~5重量%である。
【0023】
成分(g)
本発明によれば、ポリシロキサン組成物は、可塑剤(g)を含まなくても弾性率を低下させることができるが、弾性率をさらに低下させるために、適宜量の可塑剤を含んでもよい。好適な可塑剤の例には、25℃で10~5,000mPa・sの粘性係数を有するジメチルシリコーンオイル及び25℃で10~100mPa・sの粘性係数を有する鉱油が含まれるが、これらに限定されない。成分(g)は、ポリシロキサン組成物の出発材料の総重量に対して、20重量%未満、例えば、0重量%~15重量%、好ましくは0重量%~10重量%の量で好適に使用される。
【0024】
他の任意成分
本発明のポリシロキサン組成物は、任意に、UV吸収剤(例えば、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、置換アクリロニトリルおよびトリアジンUV吸収剤)およびUV安定剤(例えばヒンダードアミン光紫外線安定剤)などの他の従来の助剤および添加剤を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0025】
本発明のポリシロキサン組成物は、成分(b)100重量部に対して、4重量部未満、例えば3重量部未満、2重量部未満、1重量部未満、0.5重量部未満、好ましくは0.1重量部未満の、3以上の官能性を有する多官能アセトキシシランを含む。ポリシロキサン組成物は、硬化プロセス中に副産物としてアルコールおよび酢酸を放出する。アセトキシシラン(ジアセトキシシランと多官能アセトキシシランを含む)は少量で使用され、組成物中の充填剤が放出された酢酸を吸着することがあるため、硬化中には、放出されたアルコールの量よりも著しく少ない微量の酢酸が放出される。したがって、本発明のポリシロキサン組成物は、依然として「アルコキシ硬化RTVシリコーンゴム」の利点を提供し、実質的に非腐食性であり、建設、エレクトロニクス、電気および自動車分野における用途のためのシーラント、接着剤またはコーティング材料として使用することができる。
【0026】
本発明のポリシロキサン組成物は、1パッケージである。
【0027】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係るポリシロキサン組成物を硬化して得られるエラストマーを提供する。
【実施例
【0028】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、その範囲に限定されるものではない。なお、以下の実施例で条件を規定していない実験方法は、従来の方法及び条件又は製品仕様に基づいて選択する。
【0029】
検査方法
1.ショアA硬度の決定
本発明の硬化シリコーン組成物(以下、「エラストマー」という)のショアA硬度は、ISO 868-2003(または中国規格GB/T 2411-2008)に従って決定される。
2.引張強さ、破断伸び及び100%弾性率の測定
本発明のエラストマーの引張強さ、破断伸びおよび100%弾性率は、ISO 37-2011(または中国規格GB/T 528-2009)に従って測定される。
【0030】
実施例1~8および比較例1~4:ポリシロキサン組成物
組成物は、表1に示されたそれぞれの量の成分を混合することによって得られる。
【0031】
表1は、実施例および比較例の成分およびその量を示す。表1中の量は、別段の定めがない限り、重量部である。
表1に示した成分に関する情報は以下の通りである。
ワッカー(登録商標)ポリマー FD 80:ワッカーケミカルズから入手したDIN 53019に準拠して23℃で測定した粘性係数が約75,000mPa・sであるα、ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン。
DBS:ジ-tert-ブトキシジアセトキシシラン。
DMDAS:ジメチルジアセトキシシラン。
ワッカー(登録商標)AK 100:ワッカーケミカルズから入手したDIN 53019に準拠して25℃で測定した粘性係数が95~105mPa・sであるポリジメチルシロキサン。
ワッカー(登録商標)シリコーン樹脂 B 1100:ワッカーケミカルズから入手したDIN 53019に準拠して25℃で測定した粘性係数が10,000~500,000mPa・sであるMQ系シリコーン樹脂。
GENIOSIL(登録商標)XL 10:ワッカーケミーAGから入手したビニルトリメトキシシラン。
ワッカーケミカルズから入手した、DIN 51562に準拠して25℃で測定した粘性係数が約7mPa・sであるエトキシ末端3-アミノプロピルメチルシルセスキオキサン。
PFLEX:U.S.Specialty Minerals Inc.から入手した沈降炭酸カルシウム。
Hydrocarb 95 T:Omyaから入手した粉砕した炭酸カルシウム。
他の出発材料も市販されている。
【0032】
表2に実施例及び比較例のポリシロキサン組成物を硬化して得られたエラストマーのショアA硬度、引張強度、破断伸び及び100%弾性率の性能試験結果を示す。表2から分かるように、実施例1~8のエラストマーは弾性率が低く、100%弾性率は0.7MPa未満である。実施例1と比較例1、実施例5と比較例2をさらに比較すると、フィラー含有量の多い(40重量%またはさらに55重量%)ポリシロキサン組成物であっても、DBSを少量添加することにより、エラストマーの弾性率を顕著に低下させることができることがわかる。比較例3および4の組成物は硬化しなかったことから、DBSが多すぎると硬化に影響を及ぼすことが示唆される。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】