(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】長期耐圧特性が優秀なエチレン系重合体及びそれを利用したパイプ
(51)【国際特許分類】
C08F 210/02 20060101AFI20220907BHJP
C08F 4/76 20060101ALI20220907BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20220907BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C08F210/02
C08F4/76
C08L23/08
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2020546250
(86)(22)【出願日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 KR2018011985
(87)【国際公開番号】W WO2019117443
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2017-0171987
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ウィ ガブ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヘ ラン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ソン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】イム、ユ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、テ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ク、イル ホェ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン オク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ドン ウク
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-517616(JP,A)
【文献】特表2019-507821(JP,A)
【文献】特表2019-515097(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209372(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/002842(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/00 - 210/18
C08F 110/00 - 110/14
C08F 10/00 - 10/14
C08F 4/44 - 4/82
C08L 23/00 - 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-オレフィン系単量体からなる群より選択される少なくともいずれか一つ以上の単量体及びエチレンの重合で製造される高密度エチレン系重合体であって;
密度が0.910乃至0.960g/cm
3で;
MIが0.1乃至10g/10minで;
重量平均分子量(g/mol)は60,000乃至250,000で、
分子量分布(Mw/Mn)が4乃至6で、
ラメラの平均厚さが1乃至15nmで、ラメラの厚さの分布(Lw/Ln)が1.1以上であって、
更に、前記高密度エチレン系重合体は、ラメラの50%以上が1nm乃至10nm未満の厚さであると共に、ラメラの40%乃至50%未満が10nm乃至15nmの厚さであり、
また、前記高密度エチレン系重合体は、
第1メタロセン化合物、第2メタロセン化合物、少なくとも一種以上の助触媒化合物、及び担体からなる混成担持メタロセン触媒を用いて重合され、
前記第1メタロセン化合物は[インデニル(シクロペンタジエニル)]ZrCl
2を含み、 前記第2メタロセン化合物はMe
2Si{2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニル}
2ZrCl
2を含む
ことを特徴とする高密度エチレン系重合体。
【請求項2】
前記高密度エチレン系重合体は、長鎖分枝(Long Chain Branch、LCB)を含む
請求項1に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項3】
前記α-オレフィン系単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、及び1-アイトセンからなる群より選択される少なくともいずれか一つ以上を含む
請求項1に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項4】
前記高密度エチレン系重合体が前記エチレン及び前記α-オレフィン系単量体の共重合体であれば、前記α-オレフィン系単量体の含量が0.1乃至10重量%である
請求項1に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項5】
前記高密度エチレン系重合体は、射出、圧出、圧縮、または回転成形材料である
請求項1に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項6】
前記助触媒化合物は、下記化学式3乃至6:
化学式3
【化5】
(前記化学式3において、
ALはアルミニウムであり;
R
27、R
28、及びR
29はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、または炭素数1乃至20のハロゲンに置換された炭化水素基であり;
aは2以上の整数であり、)
化学式4
【化6】
(前記化学式4において、
A1はアルミニウムまたはボロンであり;
R
30、R
31、及びR
32はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、炭素数1乃至20のハロゲンに置換された炭化水素基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、)
化学式5
【化7】
化学式6
【化8】
(化学式5及び6において、
L1及びL2はそれぞれ独立して中性または正イオン性ルイス酸であり;
Z1及びZ2はそれぞれ独立して元素周期表の13族元素であり;
A2及びA3はそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数6乃至20のアリール基、
または置換または非置換の炭素数1乃至20のアルキル基である)
で表される化合物のうちいずれか一つ以上を含む
請求項1に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項7】
前記化学式3で表される助触媒化合物は、
メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、及びブチルアルミノキサンからなる群より選択される少なくとも一つ以上を含む
請求項6に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項8】
前記化学式4で表される助触媒化合物は、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロン、及びトリペンタフルオロフェニルボロンからなる群より選択される少なくとも一つ以上の化合物を含む
請求項6に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項9】
前記化学式5または6で表される助触媒化合物は、
それぞれ独立して、メチルジオクタデジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリブチルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボラート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボラート、トリブチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボラート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリメチルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(フェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボラート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリエチルアンモニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリブチルアンモニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)アルミネート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(p-トリル)アルミネート、トリエチルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)アルミネート、トリブチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミネート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミネート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ジエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、及びトリメチルホスホニウムテトラキス(フェニル)アルミネートからなる群より選択される少なくとも一つ以上を含む
請求項6に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項10】
前記第1メタロセン化合物及び前記第2メタロセン化合物の遷移金属の総質量と前記担体の質量比は1:1乃至1:1000であり、
前記第1メタロセン化合物対前記第2メタロセン化合物の質量比は1:100乃至100:1である
請求項1に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項11】
前記化学式3及び4で表される助触媒化合物対前記担体の質量比は1:100乃至100:1であり、
前記化学式5及び6で表される助触媒化合物対前記担体の質量比は1:20乃至20:1である
請求項6に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項12】
前記担体は、
シリカ、アルミナ、酸化チタン、ゼオライト、酸化亜鉛、及びデンプンからなる群より
選択される少なくとも一つ以上を含み;
平均粒度が10乃至250ミクロンであり;
微細気孔体積は0.1乃至10cc/gであり;
比表面積は1乃至1000m
2/gである
請求項1に記載の高密度エチレン系重合体。
【請求項13】
(a)第1メタロセン化合物、第2メタロセン化合物、及び少なくとも一種以上の助触媒化合物を用意するステップと;
(b)それぞれ用意された前記第1メタロセン化合物、前記第2メタロセン化合物、及び前記助触媒化合物を0乃至100℃で5分乃至24時間攪拌して触媒混合物を製造するステップと、
(c)担体及び溶媒が存在する反応器に前記触媒混合物を加え、0乃至100℃で3分乃至48時間攪拌して、混成担持された触媒組成物を製造するステップと、
(d)オートクレーブ反応器または気相重合反応器に前記混成担持された触媒組成物、α-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一つ以上のα-オレフィン単量体、及びエチレンを投入し、温度は60乃至100℃、圧力は10乃至20barの環境で請求項1に記載の高密度エチレン系重合体を重合するステップと、を含み、
ラメラの平均厚さが1乃至15nmであり、ラメラの厚さの分布(Lw/Ln)が1.1以上であり、また、ラメラの50%以上が1nm乃至10nm未満の厚さであると共に、ラメラの40%乃至50%未満が10nm乃至15nmの厚さであり、
前記第1メタロセン化合物は[インデニル(シクロペンタジエニル)]ZrCl
2を含み、 前記第2メタロセン化合物はMe
2Si{2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニル}
2ZrCl
2を含む
ことを特徴とする高密度エチレン系重合体の製造方法。
【請求項14】
前記助触媒化合物は、下記化学式3乃至6:
化学式3
【化11】
(前記化学式3において、
ALはアルミニウムであり;
R
27、R
28、及びR
29はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、または炭素数1乃至20のハロゲンに置換された炭化水素基であり;
aは2以上の整数であり、)
化学式4
【化12】
(前記化学式4において、
A1はアルミニウムまたはボロンであり;
R
30、R
31、及びR
32はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、炭素数1乃至20のハロゲンに置換された炭化水素基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、)
化学式5
【化13】
化学式6
【化14】
(化学式5及び6において、
L1及びL2はそれぞれ独立して中性または正イオン性ルイス酸であり;
Z1及びZ2はそれぞれ独立して元素周期表の13族元素であり;
A2及びA3はそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数6乃至20のアリール基、
または置換または非置換の炭素数1乃至20のアルキル基である)
で表される化合物のうち少なくともいずれか一つ以上を含む
請求項13に記載の高密度エチレン系重合体の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(c)は、
前記混成担持された触媒組成物を沈殿反応させて上澄液を分離するステップと、
分離された上澄液を除去し、残りの触媒組成物沈殿を溶媒で洗浄するステップと、
洗浄された触媒組成物沈殿を20乃至200℃で1時間乃至48時間真空乾燥するステップと、を更に含む
請求項13に記載の高密度エチレン系重合体の製造方法。
【請求項16】
前記α-オレフィン単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、及び1-アイトセンからなる群より選択される一種以上を含む
請求項13に記載の高密度エチレン系重合体の製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至12のうちいずれか一項に記載の高密度エチレン系重合体を利用したパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長期耐圧特性が優秀なエチレン系重合体及びそれを利用したパイプに関し、より詳しくは、従来のエチレン系重合体より優秀な機械的特性と優秀な成形加工性の均衡を満足するエチレン系重合体及びそれを利用したパイプに関する。
【0002】
本発明のエチレン系重合体は、分子量分布が広く、長鎖分枝を有してラメラ厚が薄くて、それによるタイ分子(Tie molcule)が増加して長期耐圧特性が優秀なエチレン系重合体及びそれを利用したパイプに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレンのような高分子材料の物性は成形条件や保管及び運輸時の温度、時間、環境などによって敏感な影響を受け、現在も長時間の物性変化は正確な予測が難しく、予期せぬ破損を引き起こすことがある。特に、高分子材料の場合、化学溶剤と接する場合は極めて低い応力または歪率の状態でも割れが発生する恐れがある。このように外部の刺激によって発生する環境応力割れ(environmental stress cracking、ESC)現象は、溶剤の吸収及び浸透、混合物の熱力学、空洞現象(cavitation)、及び部分的な材料の降伏現象などを含む複雑な現象である。特に、高分子材料を利用した製品の破損の原因のうち、環境応力割れによる割合が15乃至20%に至ると報告されており、耐環境応力割れ性(environmental stress cracking resistance、ESCR)が高分子材料の重要な数値として台頭している。
【0004】
環境応力割れ(ESC)は非結晶領域におけるタイ分子と鎖の絡み合い(chain entanglement)が解けることによって起こる破壊現象であって、それに対する抵抗性を示す耐環境応力割れ性は、分子量分布及共単量体分布のような分子構造パラメータによって影響を受けるようになる。耐環境応力割れ性は、分子量が大きいほどタイ分子と鎖の絡み合いが増加するため高くなる。よって、短鎖分枝(short chain branch、SCB)を取り入れてその含量を上げるか分布を高くするほど耐環境応力割れ性は増加し、分子量分布が広いか長鎖分枝(long chain branch、LCB)を含めば耐環境応力割れ性が増加するようになる。
【0005】
一般に、高分子鎖は直線に展開せず、短い距離で折られる。折られた鎖は、束を形成してラメラ(lamellar)を形成し、核を中心に3次元に成長して球晶(spherulite)が形成される。
【0006】
部分結晶性高分子は結晶性部分と無晶形部分からなり、結晶性部分とはラメラの内部を言い、無晶性部分とはラメラの外の部分をいう。このうち結晶性部分が機械的物性に影響を及ぼし、無晶形部分が弾性特性に影響を及ぼす。
【0007】
ポリエチレンの無晶性部分には、3つの類型の結晶間材料(inter-crystalline materials)がある。第一類型はシリカ(cilia)で、結晶質部分から鎖が始まって非結晶性部分で鎖が終わる。第二類型は緩いループ(loose loop)で、ラメラから始まってラメラで終わり、無晶形部分とラメラとの間に存在する。第三類型は隣接する2つのラメラを連結するラメラ間リンク(inter-lamellar links)で、タイ分子と物理的な鎖の絡み合い(physical chain entanglements)が存在するが、同時に2つまたはそれ以上のラメラが結晶を成してタイ分子を形成する。
【0008】
一方、パイプは地中に埋設された後、長時間にわたって使用されるため、外部圧力による歪や破壊から長期間安定性を有すると共に、優秀な加工性を有する材料で製造される必要がある。このようなパイプの長期耐圧特性に影響を及ぼす核心因子は、タイチェーン(Tie Chain)である。PEは固相で半結晶(Semi-crystalline)構造であって、結晶部位(Crystalline)と非結晶部位(Amorphous)を同時に有し、結晶部位はサンドイッチ状のようなラメラ構造を形成している。ラメラ構造はPE高分子鎖が結晶を成して成長しながら生成されるが、共単量体(comonomer)を取り入れることでPEの主鎖にSCBが形成されれば、ラメラ結晶構造の中に含まれるには大きいため、主鎖の円滑なラメラ結晶構造の成長を妨げ、結晶構造の外に逸脱するようにする役割をする。そして、ラメラの外にねじれた(kinked)PE主鎖は他のラメラ結晶構造に成長するようになり、ラメラとラメラを連結するタイチェーンが生成される。タイチェーンは高分子主鎖の長さが長いほど生成される可能性が高く、様々なラメラの間を連結しているため、靭性(Toughness)とESCR(または長時間クリープ(Long Term Creep))の特性を強化する。また、タイチェーンは伸び特性と流動特性を有するため、外部のエネルギーを吸収し消滅させる機能をする。
【0009】
高密度ポリエチレン重合体を利用したパイプを製造する際、射出及び圧出などの成形方法があるが、これらの方法の共通点は、高密度ポリエチレン重合体を先に加熱することで溶融状態にし、これを成形するという点である。よって、高密度ポリエチレン重合体の加熱、溶融の際の挙動、つまり、溶融特性は、高密度ポリエチレン系重合体を成形加工するに当たって極めて重要な物性であって、一般にMI、MFI、MFRが大きいほど溶融流動性に優れるといえる。
【0010】
従来、圧出、圧縮、射出、または回転成形などに使用される高密度ポリエチレン重合体は、チタン系のチーグラー・ナッタ触媒またはクローム系触媒を使用して製造することが一般的であった。しかし、このような触媒を使用して製造された高密度ポリエチレン重合体は分子量分布が広く溶融流動性を向上させることはできるが、低い分子量の成分が混入されているため耐衝撃性などの機械的物性が著しく低下され、共単量体の分布が低分子量体に集中的に分布するようになって耐化学性が低下する短所がある。このため、良好な機械的物性を維持しながら射出成形における高速化を図ることができない問題点があった。
【0011】
このような問題点を解決するために、メタロセン触媒に関する研究が活発に行われてきた。特許文献1は、メタロセンの均一な活性点を利用して分子量分布が狭く、また、共重合体の場合は共単量体の分布が均一な樹脂を製造することができるメタロセン触媒を提示している。しかし、これは分子量分布が狭いため機械的強度は優秀であるが、成形加工性が低いという問題点がある。
【0012】
上述したように、通常単一メタロセン触媒の場合、均一な活性点で分子量分布が狭いため成形加工性が悪く、機械的物性と成形性の均衡が重視される高密度ポリエチレン重合体の分野ではメタロセン触媒の応用開発が盛んに行われていない状況である。このような問題点を解決するために、複数の反応基を使用するか、多種のメタロセン触媒を混合する方法によって分子量分布を広くすることが多く提案されていた。しかし、このような分子量分布を広くする方法を使用する場合、成形性は向上されるが、他の物性の低下が不可避であるため、分子量分布を狭くすることで得られた機械的強度などの優秀な物性を有する高密度ポリエチレン重合体を得ることができなかった。
【0013】
前記メタロセン触媒の問題点を解決するために、重合体の主鎖に側枝でLCB(長鎖分枝)を取り入れる触媒を利用して重合体を溶融流動性を改善させているが、耐衝撃性など機械的物性が通常のメタロセン触媒を使用した場合より著しく低い問題点がある。
【0014】
メタロセン触媒を利用して製造された高密度ポリエチレン重合体の機械的特性と溶融流動性を改善するために多くの方法が提示されているが、その殆どが線状の低密度ポリオレフィンに対する解決方法のみである。また、メタロセンは共単量体の濃度が減少するほど活性が減少する傾向を示す特性があり、高密度ポリオレフィンを製造する際の活性が低く、経済的ではない問題点がある。
【0015】
前記のような問題点を解決し、優秀な機械的特性と成形加工性の均衡を満足しながら、長期耐圧特性が優秀な高密度ポリオレフィン重合体に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述した問題点を全て解決することを目的とする。
【0018】
本発明は、従来のエチレン系重合体より優秀な機械的特性と成形加工性の均衡を満足する高密度エチレン系重合体及びそれを利用したパイプを提供するものである。
【0019】
本発明のエチレン系重合体は、分子量分布が広く、ラメラ厚が薄くて、それによりタイ分子が増加して長期耐圧特性が優秀なエチレン系重合体及びそれを利用したパイプを提供するものである。
【0020】
本発明の他の目的は、メタロセン触媒を利用して長鎖分枝を含むことで、圧出、圧縮、射出、回転成形などの加工の際に負荷が少なくて生産性が優秀な高密度エチレン系重合体及びそれを利用したパイプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のようである。
【0022】
本発明はα-オレフィン系単量体からなる群より選択される少なくともいずれか一つ以上の単量体及びエチレンの重合で製造され、密度が0.910乃至0.960g/cm3で、MIが0.1乃至10g/10minで、重量平均分子量(g/mol)は60,000乃至250,000で、分子量分布(Mw/Mn)が4乃至6で、ラメラの平均厚さが1乃至15nmで、ラメラ分布(Lw/Ln)が1.1以上の高密度エチレン系重合体であることを特徴とする。
【0023】
前記高密度エチレン系重合体は、ラメラの50%以上が1nm乃至10nm未満の厚さを有し、ラメラの40%乃至50%未満が10nm乃至15nm範囲内の厚さを有することを特徴とする。
【0024】
前記高密度エチレン系重合体は、長鎖分枝(LCB)を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のエチレン系重合体は、分子量分布が広く、ラメラ厚が薄くて、それによりタイ分子が増加して長期耐圧特性が優秀なエチレン系重合体及びそれを利用したパイプを提供することができる。
【0026】
本発明によるエチレン系重合体は、メタロセン触媒を利用して長鎖分枝を含むことで、圧出、圧縮、射出、回転成形などの加工の際に負荷が少なくて生産性が優秀な高密度エチレン系重合体及びそれを利用したパイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1及び比較例1乃至2のラメラ厚の分布を示すグラフ
【
図3】実施例及び比較例のファンガープ-パルメン(van Gurp-Palmen)グラフ
【発明を実施するための形態】
【0028】
後述する本発明に関する説明は、本発明が実施され得る特定実施例を例示として参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を十分に実施し得るように詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的な必要はないことを理解すべきである。例えば、ここに記載されている特定の形状、構造及び特性は、一実施例に関して本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しないながらも他の実施例に具現されてもよい。
【0029】
よって、後述する詳細な説明は限定的な意味で取られるものではなく、本発明の範囲は、適切に説明されるのであれば、その請求項が主張するものと均等な全ての範囲と共に添付した請求項によってのみ限られる。
【0030】
また、本発明において、たとえ第1、第2などが多様な構成要素を述べるために使用されるとしても、これらの構成要素がこれらの用語によって制限されないことはもちろんである。これらの用語は単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用するものである。
【0031】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施し得るようにするために、本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。
【0032】
本発明は、混成担持メタロセン触媒の存在下で重合される高密度エチレン系重合体を含む。
【0033】
ここで重合体(polymer)は、共重合体(copolymer)を含む概念である。
【0034】
本発明の混成担持メタロセン触媒は、それぞれ独立して少なくとも一種以上の第1及び第2メタロセン化合物と、少なくとも一種以上の助触媒化合物を含む。
【0035】
本発明による遷移金属化合物である第1メタロセン化合物は、下記化学式1のように表される。第1メタロセン化合物は混成担持触媒で高い活性を示す役割をし、製造された重合体の溶融流動性を向上させる役割をする。前記第1メタロセン化合物は共単量体の混入度が低く、低分子量体を形成する特徴を有するため、重合体の加工の際に加工性を向上させる。また、共単量体の混入が低いことにより高密度が形成され、高密度製造の際にも高い活性を示す。前記第1メタロセン化合物は互いに異なるリガンドを有する非対称構造と非架橋構造を有することにより、共単量体が触媒活性点に接近しにくい立体障害を形成して共単量体の混入を低くする役割をして、混成担持メタロセンを製造する際に加工性と高い触媒活性を示すようにする。
【0036】
【0037】
前記化学式1において、M1は元素周期表の4族遷移金属であり、X1、X2はそれぞれ独立してハロゲン原子のうちいずれか一つであり、R1乃至R12はそれぞれ独立して水素原子、置換または非置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または非置換の炭素数6乃至20のアリール基、または置換または非置換の炭素数7乃至40のアルキルアリール基であり、互いに連結されて環を形成し、R1乃至R5と結合するシクロペンタジエンとR6乃至R12と結合するインデンば互いに異なる構造を有する非対称構造であり、前記シクロペンタジエンと前記インデンが互いに連結されていないため非架橋構造を形成する。
【0038】
本発明において、前記化学式1のR1乃至R5と結合するシクロペンタジエンとR6乃至R12と結合するインデン、及び下記化学式2のR13乃至R18と結合するインデンとR21乃至R26と結合するインデンのように、遷移金属(化学式1及び2のM1及びM2)と配位結合しているイオンまたは分子をリガンド(ligand)という。
【0039】
本発明において、前記「置換」は特別な言及がない限り、水素原子がハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、炭素数1乃至20のアルコキシ基、炭素数6乃至20のアリールオキシ基などの置換基に置換されることを意味する。
【0040】
また、前記「炭化水素基」は特別な言及がない限り、線状、分枝状、または環状の飽和または不飽和炭化水素基を意味し、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などは線状、分枝状、または環状である。
【0041】
具体例において、前記化学式1で表される遷移金属化合物の例としては、下記構造の遷移金属化合物、これらの混合物などが例示されるが、これに限らない。
【0042】
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【化1-4】
【0043】
【化1-5】
【化1-6】
【化1-7】
【化1-8】
【0044】
【化1-9】
【化1-10】
【化1-11】
【化1-12】
【0045】
【化1-13】
【化1-14】
【化1-15】
【化1-16】
【0046】
【0047】
前記遷移金属化合物において、Mは元素周期表の4族遷移金属、例えば、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などであり、Meはメチル基である。
【0048】
本発明による遷移金属化合物である第2メタロセン化合物は、下記化学式2のように表される。
【0049】
第2メタロセン化合物は混成担持触媒で高い共単量体の混入度を示す役割をし、製造された重合体の機械的物性を向上させる役割をする。
【0050】
前記第2メタロセン化合物は、共単量体の混入度が高く、高分子量体を形成し、高分子量体に共単量体の分布を集中させる特徴を有するため、衝撃強度、屈曲強度、耐環境応力割れ性、溶融張力を向上させる。また、第2メタロセン化合物は長鎖分枝構造を形成し、高い分子量の高密度ポリエチレン樹脂の溶融流動性を向上させる。
【0051】
前記第2メタロセン化合物は様々なリガンドを有する対象構造または非対称構造と架橋構造を有することで、共単量体が触媒活性点に接近しやすいように立体障害を形成し、共単量体の混入を増加させる役割をする。
【0052】
【0053】
前記化学式2において、M2は元素周期表の4族遷移金属であり、X3、X4はそれぞれ独立してハロゲン原子のうちいずれか一つであり、R13乃至R18はそれぞれ独立して水素原子、置換または非置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または非置換の炭素数6乃至20のアリール基、または置換または非置換の炭素数7乃至40のアルキルアリール基であり、互いに連結されて環を形成し、R21乃至R26はそれぞれ独立して水素原子、置換または非置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または非置換の炭素数6乃至20のアリール基、または置換または非置換の炭素数7乃至40のアルキルアリール基であり、互いに連結されて環を形成し、R19、R20はそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数1乃至20のアルキル基であり、互いに連結されて環を形成し、R13乃至R18と結合するインデンとR21乃至R26と結合するインデンは互いに同じ構造であるか異なる構造であってもよく、前記R13乃至R18と結合するインデンとR21乃至R26と結合するインデンは互いにSiと連結されているため架橋構造を形成する。
【0054】
本発明において、前記「置換」は特別な言及がない限り、水素原子がハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、炭素数1乃至20のアルコキシ基、炭素数6乃至20のアリールオキシ基などの置換基に置換されることを意味する。また、前記「炭化水素基」は特別な言及がない限り、線状、分枝状、または環状の飽和または不飽和炭化水素基を意味し、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などは線状、分枝状、または環状である。
【0055】
具体例において、前記化学式2で表される遷移金属化合物の例としては、下記構造の遷移金属化合物、これらの混合物などが例示されるが、これに限らない。
【0056】
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【化2-4】
【0057】
【化2-5】
【化2-6】
【化2-7】
【化2-8】
【0058】
【化2-9】
【化2-10】
【化2-11】
【化2-12】
【0059】
【化2-13】
【化2-14】
【化2-15】
【化2-16】
【0060】
【化2-17】
【化2-18】
【化2-19】
【化2-20】
【0061】
【化2-21】
【化2-22】
【化2-23】
【化2-24】
【0062】
【0063】
前記遷移金属化合物において、Mは元素周期表の4族遷移金属、例えば、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などであり、Meはメチル基、Phはフェニル基である。
【0064】
本発明による触媒組成物は、前記遷移金属化合物、及び下記化学式3乃至6で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種以上の化合物を含む助触媒化合物を含む。
【0065】
【0066】
前記化学式3において、ALはアルミニウムであり、R27、R28、及びR29はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、または炭素数1乃至20のハロゲンに置換された炭化水素基であり、aは2以上の整数で、前記化学式3は繰り返し単位構造を有する化合物である。
【0067】
【0068】
前記化学式4において、A1はアルミニウムまたはボロンであり、R30、R31、及びR32はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、炭素数1乃至20のハロゲンに置換された炭化水素基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基である。
【0069】
【0070】
【0071】
前記化学式5及び6において、L1及びL2は中性または正イオン性ルイス酸であり、Z1及びZ2は元素周期表の13族元素であり、A2及びA3は置換または非置換の炭素数6乃至20のアリール基、または置換または非置換の炭素数1乃至20のアルキル基である。
【0072】
前記化学式3で表される化合物はアルミノキサンであり、通常のアルキルアルミノキサンであれば特に限らない。例えば、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどを使用することができるが、詳しくはメチルアルミノキサンを使用してもよい。前記アルキルアルミノキサンはトリアルキルアルミニウムに適量の水を加えるか、水を含む炭化水素化合物または無機水和物塩とトリアルキルアルミニウムを反応させるなどの通常の方法で製造され、一般に線状と管状のアルミノキサンが混合された形態で得られる。
【0073】
前記化学式4で表される化合物としては、例えば、通常のアルキル金属化合物を使用してもよい。詳しくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロン、トリペンタフルオロフェニルボロンなどを使用することができるが、より詳しくは、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリペンタフルオロフェニルホロンなどを使用してもよい。
【0074】
前記化学式5または6で表される化合物の例としては、メチルジオクタデジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリブチルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボラート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボラート、トリブチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボラート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボラート、トリメチルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(フェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボラート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリエチルアンモニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリブチルアンモニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)アルミネート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(p-トリル)アルミネート、トリエチルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)アルミネート、トリブチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミネート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミネート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ジエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)アルミネート、トリメチルホスホニウムテトラキス(フェニル)アルミネートなどが例示されるが、これに限らない。詳しくは、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート([HNMe(C18H37)2]+[B(C6F5)4]-)、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートなどを使用することができる。
【0075】
本発明による混成担持メタロセン触媒の製造において、前記第1及び第2メタロセン化合物の遷移金属(前記化学式1のM1及び前記化学式2のM2)対担体の質量比は1:1乃至1:1000であることが好ましい。好ましくは、1:100乃至1:500である。前記質量比で担体及びメタロセン化合物を含めば、適切な担持触媒活性を示して触媒の活性維持及び経済性の面で有利である。
【0076】
また、化学式5、6に代表される助触媒化合物対担体の質量比は1:20乃至20:1であることが好ましく、化学式3、4の助触媒化合物対担体の質量比は1:100乃至100:1であることが好ましい。
【0077】
前記第1メタロセン化合物対前記第2メタロセン化合物の質量比は1:100乃至100:1であることが好ましい。前記質量比で助触媒及びメタロセン化合物を含めば、触媒の活性維持及び経済性の面で有利である。
【0078】
本発明による混成担持メタロセン触媒の製造に適合した担体は、広い表面積を有する多孔性物質を使用する。
【0079】
前記第1乃至第2メタロセン化合物及び助触媒化合物は、担体に混成担持して触媒として利用する担持触媒である。担持触媒とは、触媒活性の向上と安定性を維持するために、分散が容易で安定的に維持するために担体に担持した触媒を意味する。
【0080】
混成担持することは第1及び第2メタロセン化合物をそれぞれ担体に担持することではなく、一度の過程で担体に触媒化合物を担持させることを意味する。混成担持は製造時間の短縮と溶媒使用料の減少により、それぞれ担持することに比べ非常に経済的であるといえる。この際、担体は触媒機能を有する物質を分散させて、安定的に受けて維持する個体であり、触媒機能物質の露出表面積が大きくなるよう高度に分散させて担持するために、一般に多孔性か面積が大きい物質である。担体は機械的、熱的、化学的に安定しているべきであり、その例として担体の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ゼオライト、酸化亜鉛、デンプン、合成ポリマーなどを含むが、これに限らない。
【0081】
また、担体の平均粒度は10乃至250ミクロン、好ましくは平均粒度が10乃至150ミクロン、より好ましくは20乃至100ミクロンである。そして、担体の微細気孔の体積は0.1乃至10cc/gであり、好ましくは0.5乃至5cc/g、より好ましくは1.0乃至3.0cc/gである。また、担体の比表面積は1乃至100m2/gであり、好ましくは100乃至800m2/g、より好ましくは200乃至600m2/gである。
【0082】
また、担体がシリカであれば、シリカは乾燥温度は200乃至900℃である。好ましくは300乃至800℃、より好ましくは400乃至700℃である。200℃未満であれば水分が多すぎて表面の水分と助触媒が反応するようになり、900℃を超過すれば担体の構造崩壊が起こる。そして、乾燥されたシリカ内のヒドロキシ基の濃度は0.1乃至5mmol/gであり、好ましくは0.7乃至4mmol/gであり、より好ましくは1.0乃至2mmol/gである。0.5mmol/g未満であれば助触媒の担持量が低くなり、5mmol/gを超過すれば触媒成分が不活性化するため好ましくない。
【0083】
本発明による混成担持メタロセン触媒は、メタロセン触媒を活性化するステップと、活性化されたメタロセン触媒を担体に担持するステップとで製造される。混成担持メタロセンの製造において、助触媒を担体に先に担持する。メタロセン触媒の活性化はそれぞれ行ってもよいが、状況によって異なり得る。つまり、第1メタロセン化合物と第2メタロセン化合物を混合して活性化した後で担体に担持してもよく、担体に助触媒を先に担持し、第1、2メタロセン化合物を後に担持してもよい。
【0084】
混成担持メタロセン触媒を製造する際、反応の溶媒はヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子に置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒、アセトン、エチルアセテートなどの殆どの溶媒が使用されるが、好ましくはトルエン、ヘキサンであるが、これに限らない。
【0085】
触媒を製造する際の反応温度は0乃至100℃であり、好ましくは25乃至70℃であるが、これに限らない。また、触媒を製造する際の反応時間は3分乃至48時間であり、好ましくは5分乃至24時間であるが、これに限らない。
【0086】
第1及び第2メタロセン化合物の活性化は、助触媒化合物を混合(接触)して製造する。この際、混合は、通常窒素またはアルゴンの不活性雰囲気下、溶媒を使用しないか、炭化水素溶媒の存在下で行われる。
【0087】
また、第1及び第2メタロセン化合物の活性化の際の温度は0乃至100℃、好ましくは10乃至30℃である。
【0088】
そして、第1及び第2メタロセン化合物を助触媒化合物で活性化する際の撹拌時間は5分乃至24時間であり、好ましくは30分乃至3時間である。
【0089】
この第1及び第2メタロセン化合物は炭化水素溶媒などに均一に溶解された溶液状態の触媒組成物をそのまま使用するか、沈殿反応を利用して溶媒を除去し、20乃至200℃で1時間乃至48時間真空乾燥して個体粉末状で使用しもよいが、これに限らない。
【0090】
本発明による高密度エチレン系重合体の製造方法は、混成担持メタロセン触媒と一つ以上のオレフィン単量体を接触させてポリオレフィン単一重合体またはエチレン系共重合体を製造するステップを含む。
【0091】
本発明の高密度エチレン系重合体の製造方法(重合方法)は、オートクレーブ反応器を利用するスラリー状態、または気相重合反応器を利用する気相状態で重合反応する。また、それぞれの重合反応条件は、重合方法(スラリー重合、気相重合)、目的とする重合結果、または重合体の形態に応じて多様に変形し得る。その変形程度は当業者によって容易に行われる。
【0092】
この際、重合が液相またはスラリー相で行われる場合、溶媒またはオレフィン自体を媒質として使用することができる。溶媒としてはプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、クロロベンゼンなどが例示され、これらの溶媒を一定割合に混ぜて使用してもよいが、これに限らない。
【0093】
具体例において、オレフィン単量体としては、エチレン、α-オレフィン類、環状オレフィン類、ジエン類、トリエン(trienes)類、スチレン(styrenes)類などが例示されるが、これに限らない。
【0094】
前記α-オレフィン類としては、炭素数3乃至12、例えば3乃至8の脂肪族オレフィンを含み、詳しくは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-へプテン、1-オクテン、1-デセン(1-decene)、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-アイトセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジエチル-1-ヘキセン、及び3,4-ジメチル-1-ヘキセンなどが例示される。
【0095】
前記α-オレフィン類は単独重合されるか、2種以上のオレフィンが交互(alternating)、ランダム(random)、またはブロック(block)共重合されてもよい。前記α-オレフィン類の共重合は、エチレンと炭素数3乃至12、例えば、3乃至8のα-オレフィンの共重合(詳しくは、エチレンとプロピレン、エチレンと1-ブテン、エチレンと1-ヘキセン、エチレンと4-メチル-1-ペンテン、エチレンと1-オクテンなど)、及びプロピレンと炭素数4乃至12、例えば、炭素数4乃至8のα-オレフィンの共重合(詳しくは、プロピレンと1-ブテン、プロピレンと4-メチル-1-ペンテン、プロピレンと4-メチル-1-ブテン、プロピレンと1-ヘキセン、プロピレンと1-オクテンなど)を含む。エチレンまたはプロピレンと他のα-オレフィンの共重合において、他のα-オレフィンの量は全体モノマーの99モル%以下であり、好ましくはエチレン共重合体の場合、80モル%以下である。
【0096】
この際、オレフィン単量体の好ましい例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、これらを混合物が例示されるが、これに限らない。
【0097】
本発明の高密度エチレン系重合体の製造方法において、触媒組成物の使用量は特に限らないが、例えば、重合される反応系内において、化学式1と2で表される遷移金属化合物の中心金属(M、4族遷移金属)の濃度が1×10-5乃至9×10-5mol/lである。
【0098】
中心金属濃度は、触媒の活性と高密度エチレン系重合体の物性に影響を及ぼす。第1メタロセン化合物が上述した中心金属濃度の数値範囲を超過すれば活性は増加するが樹脂の機械的物性が低下し、この数値より低ければ活性が減少し加工性も減少するため、機械的物性は増加するが活性など他の物性が低くなって非経済的であり、気相反応器で静電気の発生が増加して安定的な操業が不可能になる。
【0099】
また、第2メタロセン化合物の中心金属濃度が前記数値範囲を超過すれば活性が減少し、機械的物性は増加するが加工性が落ちる恐れがあり、前記数値範囲未満であれば活性は増加するが、機械的物性が減少する問題点がある。
【0100】
更に、重合の際の温度及び圧力は反応物質、反応条件などによって異なり得るため特に限らないが、重合温度は、溶液重合の場合は0乃至200℃、好ましくは100乃至180℃であり、スラリーまたは気相重合の場合は0乃至120℃、好ましくは80乃至100℃である。
【0101】
なお、重合圧力は1乃至150bar、好ましくは30乃至90barであり、より好ましくは10乃至20barである。圧力は、オレフィン単量体ガス(例えば、エチレンガス)の注入によることである。
【0102】
例えば、重合はバッチ式(例として、オートクレーブ反応器)、半連続式または連続式(例として、気相重合反応器)で行われ、異なる反応条件を有する2つ以上のステップで行われてもよいが、最終重合体の分子量は重合温度を変化させるか、反応器内に水素を注入する方法で調節する。
【0103】
本発明による高密度エチレン系重合体は、混成担持メタロセン化合物を触媒として使用することで、エチレン単一重合またはエチレンとα-オレフィンとの共重合で得られるが、単峰の分子量分布(unimodal distribution)を有する。
【0104】
以下、本発明による高密度エチレン系重合体について詳しく説明する。
【0105】
本発明の高密度エチレン系重合体は、0.910乃至0.960g/cm3の密度を有し、より好ましくは0.930乃至0.955g/cm3である。重合体の密度が0.930g/cm3未満であれば、十分に高い強靭性を示すことができない。重合体の密度が0.955g/cm3のを超過すれば結晶化度が過度に大きくなり、成形体が脆性破壊しやすくなるため好ましくない。
【0106】
一般に、MI(溶融指数)が大きくなると成形性は向上されるが、耐衝撃性は悪化する。逆に、MIを低くすると耐衝撃性及び耐化学性は向上されるが、溶融流動性が悪化して成形性が大きく低下する。このような理由のため、成形性を向上させるためにMIを大きくする場合は、通常の共重合を介して短鎖分枝構造を形成(密度低下)するようにして耐衝撃性の弱化を防止する方法を使用する。しかし、このようなエチレン系重合体の密度低下は重合体の強靭性の弱化をもたらすため、密度低下による耐衝撃性の補完方法には限界がある。
【0107】
本発明でいう溶融流動性とは、主に溶融樹脂を圧出機から圧出する際の圧出負荷に対応するものであって、射出流動性(成形加工性)と密接な関係(比例)がある。このような溶融流動性の標準になる指標として、MI、MFI、MFRなどが使用される。本発明において、MI(溶融指数)とは190℃で2.16kg荷重での流れ性を示し、MFIとは190℃で21.6kg荷重での流れ性を示す。MFRはMIとMFIの比、つまり、MFI/MIを示す。
【0108】
本発明の高密度エチレン系重合体のMIは0.1乃至10g/10minであり、好ましくは0.5乃至10g/10minである。MIが0.1g/10min未満であれば射出成形の材料と使用される際に成形加工性が大きく低下し、射出製品の外観が不良になる。MIが10g/10minより過度に大きければ耐衝撃性が非常に低くなる。
【0109】
本発明の高密度エチレン系重合体は、従来の高密度ポリエチレン重合体とは異なって、前記のように低いMIを有することで優秀な耐衝撃性及び耐化学性を示すと共に、広い分子量分布と長鎖分枝を有するため、優秀な射出成形性を共に示すことにその特徴がある。
【0110】
本発明の高密度エチレン系重合体の重量平均分子量(g/mol)は60,000乃至250,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は4乃至6である。
【0111】
本発明の高密度エチレン系重合体のMFRは35乃至100であり、より好ましくは37乃至80である。MFRが35未満であれば射出成形の材料としてい使用される際に成形加工性が大きく低下し、MFRが100を超過すれば機械的物性が低下する。
【0112】
一般に、高い耐環境応力割れ性(ESCR)を確保するためにポリエチレン樹脂を高分子量化すれば溶融流量(melt flow rate、MFR)が低下し、それにより流動性が低下するため生産性が落ちる。
【0113】
本発明の高密度エチレン系重合体は低いMIを有することで機械的強度が優秀なだけでなく、長鎖分枝を含んでMFRを増加させることで加工性が優秀な特徴がある。
【0114】
この際、ESCRは上述したように応力割れを起こす外部の力に対する耐性を意味し、分子量分布が広いか長鎖分枝(LCB)と単鎖分枝(SCB)を大きく含むほど非結晶領域における絡み合いが増加するため高くなる。
【0115】
本発明の混成担持触媒は、上述したように、第2メタロセン化合物を含むことで製造される高密度エチレン系重合体で長鎖分枝の生成を誘導することができ、これによって主鎖に炭素数6以上の側鎖を有する長鎖分枝(LCB)を含む高密度エチレン系重合体を製造することができる。
【0116】
長鎖分枝(LCB)は高分子の間の空き空間を埋める物理的効果を引き起こすため、一般に溶融高分子の粘度と弾性に影響を及ぼすと知られている。高分子鎖内で長鎖分枝が増加して高分子鎖の絡み合いが強くなる場合、同一分子量における固有粘度(intrinsic viscosity)が低くなって、圧出、射出の際にスクリューに負荷が低く形成されて加工性が高くなる。本発明の高密度ポリエチレン樹脂は低いMIを有するが、長鎖分枝を多く含むことでMFRを増加させ、それにより加工性が従来のポリエチレン樹脂より優秀である。
【0117】
ラメラ構造はPE高分子鎖が結晶を成して成長しながら形成されるが、共単量体を取り入れることでPEの主鎖にSCBが形成されれば、ラメラ結晶構造の中に含まれるには大きいため、主鎖の円滑なラメラ結晶構造の成長を妨げるようになり、結晶構造の外に逸脱するようにする役割をする。この際、ラメラの外にねじれたPE主鎖は他のラメラ結晶構造に成長するようになり、ラメラとラメラとの間を連結するタイチェーンが生成される。
【0118】
C2/α-オレフィン共重合体で同一密度、分子量を有する場合、α-オレフィンの鎖長が短いほどラメラ厚は厚くなり、厚さの割合の分布が広いと知られている(Polym.J.,24,9,1992)。つまり、SCBが多く含まれるほどラメラ厚が厚くなり、厚さ分布が広くなる。
【0119】
図1は、本発明によって製造された実施例1及び比較例1乃至2のラメラ厚の分布を示すグラフである。
図1を参照すると、本発明によるエチレン系重合体は、ラメラの平均厚さが1nm乃至15nmであり、ラメラ分布(Lw/Ln)が1.1以上であることを特徴とする。好ましくは厚さが9乃至11nm、より好ましくは9.2乃至10.7nmであることを特徴とする。
【0120】
前記高密度エチレン系重合体は、ラメラの50%以上が1nm乃至10nm未満の厚さを有し、ラメラの40%乃至50%未満が10nm乃至15nm範囲内の厚さを有することを特徴とする。
【0121】
C2/1-オクテンの共重合体である比較例2は、ラメラ圧が実施例1と比較例1より薄く分布が狭いことを確認した。
【0122】
C2/1-ヘキセンの共重合体である実施例1と比較例1において、ラメラ厚の分布度は類似しているが、比較例1に比べ実施例1でラメラ厚が薄いことを確認した。これは本発明によって製造された実施例1で長鎖分枝を含んでいるため、同一組成のポリエチレンである比較例1に比べラメラ厚が実施例1でより薄く、LCBの存在のためタイ分子の形成率が高いことで、長期耐圧特性が著しく優秀であることを示す。
【0123】
また、本発明によるエチレン系重合体は、高い分子量分布と長鎖分枝のため低いMIを有するにもかかわらず、溶融張力が増加されて引張強度、屈曲強度、屈曲弾性率、及びスクラッチ性を向上させることができる。これは、圧出工程において従来のポリエチレン樹脂パイプに比べ安定的な生産のための重要な因子として作用する。
【0124】
図2は実施例1及び比較例1の複素粘度を示すグラフであって、x軸の周波数(frequency,rad/s)によるy軸の複素粘度(complex viscosity、Poise)グラフは流動性に関し、低い周波数では高い複素粘度を有し、高い周波数では高い複素粘度を有するほど流動性が高いが、これをせん断薄化(shear thinning)現象が大きいと表現する。本発明のエチレン系重合体は比較例1に比べ低いMIを有するにもかかわらず、高いせん断薄化現象によって著しく優秀な溶融流動性を示す。これによって、本発明におけるMIの範囲、好ましくは0.1乃至10g/10minで類似したMIを有する高密度エチレン系重合体よりせん断薄化効果に非常に優れ、優秀な流動性及び加工性を示すことが分かる。
【0125】
エチレン系重合体において、長鎖分枝の有無は流変物性測定装置(Rheometer)を利用して測定されたファンガープ-パルメングラフにおける変曲点の有無、または複合モジュラス(complex modulus、G*)が小さくなるほど発散する傾向を有するのか否かなどで判断する。
【0126】
図3に示した実施例1及び比較例1のファンガープ-パルメングラフを見ると、x時である複合モジュラス値が低くなるほどy軸の位相差(phase angle)が発散し、複合モジュラス値が増加するほど変曲点を有する特徴を示す。比較例1ではこのような長鎖分枝の挙動が現れておらず、実施例1では現れていることを確認することで、エチレン系重合体に長鎖分枝が多く含まれていることを確認することができる。
【0127】
本発明の高密度エチレン系重合体は射出、圧出、圧縮、回転成形材料として利用される。
【0128】
実施例
【0129】
以下、本発明の好ましい実施例を介して本発明の構成及び作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示であって、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されるようには解釈できない。
【0130】
ここに記載されていない内容は、この技術分野で熟練した者であれば技術的に十分に類推できるものであるためその説明を省略する。
【0131】
1.第1メタロセン化合物の製造例
【0132】
インデン(5g、0.043mol)をヘキサン(150mL)に溶かし、十分に混ぜて-30℃まで冷却させた後、ヘキサン溶液に2.5M n-ブチルリチウム(n-BuLi)ヘキサン溶液(17ml、0.043mol)をゆっくり落とし、常温で12時間撹拌した。白色懸濁液をガラスフィルタでろ過し、白色個体を十分に乾燥させた後、インデンリチウム塩(収率:99%収率)を得た。
【0133】
インデンリチウム塩(1.05g、8.53mmol)スラリー溶液にCpZrCl3(2.24g、8.53mmol)をエーテル(30mL)にゆっくりと溶かした後、-30℃まで冷却させた。このエーテル溶液にエーテル(15mL)に溶かしたインデンリチウム塩をゆっくり落とした後、24時間撹拌して[インデニル(シクロペンタジエニル)]ZrCl2(収率97%)を得た。ここで、Cpはシクロペンタジエニルを意味する。
【0134】
2.第2メタロセン化合物の製造例
【0135】
-リガンド化合物の製造例
【0136】
2-メチル-4-ブロモインデン(2g、1eq)、Pd(PPh3)4(553mg、0.05eq)、1-NaphB(OH)2(2.14g、1.3eq)をTHF、MeOH溶液(4:1、40ml)に入れた後、ガス抜きした(degassing)K2CO3水溶液(2.0M、3.3eq)を常温で注入し、80℃で12時間還流撹拌して、2-メチル-4-(1-ナフチル)インデンを得た。2-メチル-4-(1-ナフチル)インデンをトルエン50mlに入れ、n-BuLi(7.8mL、1.1eq、1.6M inヘキサン)を-30℃でゆっくり加えた後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌する。生成された個体をろ過しヘキサンで洗浄した後、真空下で乾燥して、2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニルリチウムを得た。
【0137】
2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニルリチウム(1.88g、2eq)トルエン13mL、THF、3mLにSiMe2Cl2(462mg、1eq)を-30℃でゆっくり加えた後、温度を徐々に上げて55℃で12時間撹拌して、ジメチルビス{2-メチル-4(1-ナフチル)インデニル)}シラン1.97g(97%)を得た。
【0138】
-第2メタロセン化合物の製造例
【0139】
リガンド製造例化合物(0.4g、1eq)をTHF(テトラヒドロフラン)15mlに入れ、n-BuLi(1.32mL、2.2eq、1.6M inヘキサン)を-30℃でゆっくり加えた後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌して、ジリチウム塩(Dilithium salt)を製造し、ジリチウム塩スラリー溶液にZrCl4(435mg、1eq)をゆっくり加えた後、12時間撹拌する。真空で溶媒を除去し、THF、MCで洗浄してMeg2Si{2-メチル-4-(1-ナフチル)}2ZrCl2を得た(収率94%)得た。
【0140】
3.混成担持メタロセン触媒の製造例
【0141】
第1及び第2メタロセン化合物と助触媒であるメチルアルミニウムオキサン(MAO)は空気中の水分または酸素と反応すると活性を失うため、全ての実験はグローブボックス、シュレンクテクニックを利用して窒素条件下で行った。10Lの担持触媒反応器は洗浄して異物を除去し、110℃で3時間以上乾燥しながら反応器を密閉した後、真空を利用して水分などを完全に除去した状態で使用した。
【0142】
第1メタロセン製造例化合物2.862g、第2メタロセン製造例化合物3.469gに10wt%メチルアルミニウムオキサン(MAO)溶液(メチルアルミニウムオキサン:1188g)を加え、1時間常温で撹拌した。シリカ(XPO2402)300gを反応器に投入した後、精製されたトルエン900mLを反応器に加えて撹拌した。1時間の撹拌ステップが完了した後、反応器を撹拌しながら第1メタロセン化合物、第2メタロセン化合物、及びメチルアルミニウムオキサン混合溶液を投入した。反応器を60℃まで昇温した後、2時間撹拌する。
【0143】
沈殿反応の後、上澄液を除去し、トルエン1Lで洗浄した後、60℃で12時間真空乾燥した。
【0144】
実施例1
【0145】
前記製造によって得られた混成担持メタロセン触媒を流動層ガス工程(fludized bed gas process)連続重合機に投入し、オレフィン重合体を製造した。共単量体としては1-ヘキセンを使用しており、1-ヘキセン/エチレンのモル比は0.299%、反応器のエチレン圧力は15bar、水素/エチレンのモル比は0.166%、重合温度は80~90℃に維持した。
【0146】
比較例1
【0147】
市販のHDPE SP988(LG化学)を使用した。
【0148】
比較例1はASTM D1505による密度が0.9426g/cm3であり、ASTM D1238による溶融指数(MI)は0.7g/10minである。
【0149】
比較例2
【0150】
市販のHDPE DX900(SK総合化学)を使用した。
【0151】
比較例2はASTM D1505による密度が0.9384g/cm3であり、ASTM D1238による溶融指数(MI)は0.64g/10minである。
【0152】
<物性の測定方法>
【0153】
1)密度はASTM D1505によって測定された。
【0154】
2)MI及びMFR
【0155】
溶融流動性MIは2.16kgの荷重での10分間の圧出量であり、測定温度190℃でASTM 1238によって測定された。MFRはMIとMFIの比、つまり、MFI/MIを示し、MFIは21.6kgの荷重での10分間の圧出量であり、測定温度190℃でASTM 1238によって測定された。
【0156】
3)多分散指数(polydispersity、PDI)はMnとMwの比、つまり、Mw/Mnを示す。
【0157】
4)長期耐圧の評価:PERT規格ISO 22391の測定方法に従って実施した。
【0158】
5)ラメラ厚及び厚さ分布(Lw/Ln)の測定:示差走査熱量測定法(DSC)を使用しており、段階的な冷却が適用される多段結晶化(Step crystallization、SC)と一連の加熱及び冷却サイクルが利用されるSSA(successive self-nucleation and annealing)法を使用した。
【0159】
SSAの部分的容量は最も安定した結晶のみをそのまま残すため、次のステップでアニーリング(annealing)されるが、それに対し溶融された鎖は冷却の際に自己核生成(self-nucleation)と結晶化を経て分離される。つまり、SSA処理の連続的なサイクルステップごとに加熱スキャン(heating scans)によって不完全な結晶を溶かす熱エネルギーが供給される一方、予め形成されたラメラではアニーリングと結晶成長の完結が起こる。よって、標準DSCの作動中に起こる全ての溶融及び結晶化過程はそれぞれの部分的ステップの加熱スキャンで促され、SSA処理後に残っている結晶は更に平衡に近くなる。そこで、SSA熱的分離方法では、主なパラメータを以下のように選定した。
【0160】
分別ウィンドウ(fractionation window)または自己核生成温度(Ts)の間の間隔は5で、Tsで維持時間は5分で、熱処理ステップにおける加熱及び冷却スキャン率(scan rate)は10/minであった。
【0161】
SSA-DSC吸熱曲線のそれぞれのピーク(peak)は類似したMSL(methylene sequence length)を有する一端の鎖セグメント(segment)を示す。DSC測定の信号強度である熱流(heat flow)が特定温度で溶融される結晶質高分子の質量と溶融熱量をかけた値であるため、DSCデータは定量化することが難しい。よって、溶融温度をSCBに変換するための検量線以外に、熱流を質量分率に変換するために他の検量線が求められる。しかし、そのような検量線は高分子の性質によって異なるため、短所を解消するために、選択的に溶融温度に対する溶融熱量の依存性は無視されてもよいと仮定し、正規化された熱流を定量分析のために使用した。
【0162】
特定温度で溶融される物質の量を測定するために、温度軸はラメラ厚やMSLに変換される。第一はトムソン-ギブス方程式(Thomson-Gibbs equation)を使用することであり、第二は文献上で適当な検量線(下記式(2)を参考)を使用することで得られる。まず、以下のようなトムソン-ギブス方程式(下記式(1)を参考)を、温度とラメラ厚との間の関係を成立させるのに使用した。
【0163】
【0164】
前記式1において、lはラメラ厚(nm)で、ΔHvは無限な厚さのラメラに対する融合エンタルピー(ここでは288×106J/m2を代入)で、σはラメラ表面自由エネルギー(ここでは70×10-3J/m2を代入)で、Tmは溶融温度で、Tomは無限な厚さの線状PEに対する平衡溶融温度(ここではT0mの値、418.7Kを代入)である。
【0165】
次に、下記フローリー方程式(Flory’s equation)(下記式(2)を参考)を利用して、ランダム共重合体に対する平衡溶融温度、つまり、ランダム共重合体での無限な厚さの結晶に対する熱力学的溶融温度(Tcm)を計算した。
【0166】
【0167】
前記式2において、Tomは線状PEにおける無限な厚さのラメラの平衡溶融温度で、Rは理想気体定数で、ΔHuは結晶内の繰り返し単位のモーラー(molar)溶融熱量で、xは実験的に決定された重量平均SCBを使用したランダム共重合体内の結晶質単位のモル分率(mole fraction)である。
【0168】
ラメラ厚さ分布は、下記式(3)乃至式(5)を利用して測定した。
【0169】
【0170】
前記式(3)において、LwはESL(Ethylene sequence length)の加重平均(weighted average)であり、LnはESLの算術平均(artihmetic mean)である。
【0171】
【0172】
前記式(4)において、niは最終DSCスキャンの正規化された部分面積であり、Liはラメラ厚である。
【0173】
【0174】
前記式(5)において、niは最終DSCスキャンの正規化された部分面積であり、Liはラメラ厚である。
【0175】
表1は、実施例1の重合条件を示す。
【0176】
【0177】
下記表2は、上述した物性測定データを示す。
【0178】
【0179】
下記表3は、ラメラの平均厚さと分布を示す。
【0180】
【0181】
本発明によるエチレン系重合体は、ラメラの平均厚さが1nm乃至15nmであり、好ましくは9乃至11nm、より好ましくは9.2乃至10.7であることを特徴とする。本発明によって製造された実施例1は、同一組成のポリエチレンである比較例1に比べ、ラメラ分布(Lw/Ln)が1.1で類似しているが、ラメラ厚が9.9nmでより薄いことを確認した。
【0182】
下記表4は、ラメラ厚別の割合(%)を示す。
【0183】
【0184】
本発明によって製造された実施例1は、ラメラの50%以上が1nm乃至10nm未満の厚さを有し、ラメラの40%乃至50%未満が10nm乃至15nm範囲内の厚さを有することを特徴とする。また、ラメラ厚が12乃至13nmは48%以上50%以下の範囲内にあり、8乃至9nmは15乃至17%、7乃至8nmは7乃至9%、5乃至6nmは11乃至13%、4乃至6nmは6乃至8%、3乃至4nmは4乃至6%、2乃至3nmは1乃至3%の範囲内にあることを確認した。
【0185】
下記表5は、長期耐圧を評価するためのITP想定結果を示す。
【0186】
【0187】
表5のように、所内長期耐圧評価(IPT測定結果)において、20℃、95℃で比較例1及び2に比べ実施例1の破壊時間がより遅く起こっていることを確認した。これは、比較例1及び2に比べ、本発明によって製造された実施例1の長期耐圧特性が優秀であることを示す。
【0188】
下記表6は、KCL測定結果を示す。
【0189】
【0190】
表6に示すように、本発明によって製造された実施例1は、KCL測定方法による長期耐圧評価において、95℃で比較例1に比べ優秀な伸び特性を示した。これは、比較例1に比べ、実施例1でLCBの素材によりタイ分子の形成がよりうまく行われ、靭性とESCR特性を強化させていることを示す。つまり、比較例1に比べ、実施例1がより優秀な長期耐圧特性を示すことを確認した。
【0191】
本発明は従来のエチレン系重合体より優秀な機械的特性と成形加工性の均衡を満足するポリエチレン重合体及びそれを利用したパイプを提供することができる。
本発明のエチレン系重合体は、分子量分布が広く、ラメラ厚が薄くて、それによりタイ分子が増加して長期耐圧特性が優秀なエチレン系重合体及びそれを利用したパイプを提供することができる。
【0192】
本発明の他の目的は、メタロセン触媒を利用して長鎖分枝を含むことで、圧出、圧縮、射出、回転成形などの加工の際に負荷が少なくて生産性が優秀な高密度エチレン系重合体及びそれを利用したパイプを提供することができる。
【0193】
混成担持メタロセンの製造において、本発明の化学式1の第1メタロセンの非対称構造は、リガンドで中心金属に電子を与える電子供与減少が同一ではないため、中心金属とリガンドとの間の結合長が互いに異なるようになり、単量体が触媒活性点に接近する際に受ける立体障害が低い。
【0194】
化学式2で表される第2メタロセン化合物は架橋構造を有するため、触媒活性点を保護し、共単量体の触媒活性点への接近を容易にして、共単量体の侵入が優秀な特性を有する特性を有する。また、リガンドが互いに連結されていない構造である非架橋構造に比べ触媒活性点が安定化しており、高分子量を形成する特性を有する。
【0195】
これまで本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は上述した特定の好ましい実施例に限らず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱せずに該当発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも変形実施が可能であることはもちろん、そのような変更は特許請求の範囲内にある。