(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】文字盤取付装置を備えた計時器
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
G04B19/06 Z
(21)【出願番号】P 2020552116
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018084210
(87)【国際公開番号】W WO2019121116
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-17
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】バルメ,ラファエル
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-96818(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第315646(CH,A)
【文献】仏国特許発明第1491555(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モジュール(10)と、中央開口(13)を有する文字盤(12)と、前記文字盤(12)の前記中央開口(13)に貫通するとともに前記駆動モジュール(10)によって回転駆動される時筒(14)と、前記文字盤を取り付けるための装置と、を備えた計時器であって、前記取付装置は、
前記時筒(14)の周りに配置される保持筒(15)と、
前記保持筒(15)と、前記文字盤(12)および前記文字盤が取り付けられた文字盤支持体(17)との内の少なくとも一つと、の間に配置された保持部材(20a,20b,20c)と、を有し、
前記保持筒(15)は、一方で、前記駆動モジュール(10)に機械的に連結されるとともに内周にネジ部を有する第1の筒(16a)と、他方で、前記第1の筒(16a)の前記ネジ部に螺入されるネジの形態の第2の筒(16b)と、を含むことを特徴とする、計時器。
【請求項2】
前記保持部材(20a,20b,20c)は、前記文字盤(12)の前記中央開口(13)に隣接した前記文字盤の部分および/または前記文字盤支持体(17)に対して当接しつつ、前記保持筒(15)と、前記文字盤(12)および前記文字盤支持体(17)との内の少なくとも一つと、の間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の計時器。
【請求項3】
前記文字盤(12)の前記中央開口(13)に隣接した前記文字盤部分は、前記文字盤(12)の表面に対してセットバックした環状支持領域を画成しており、これにより、前記保持筒(15)の上部の表面は、前記文字盤(12)の前記表面と同じ高さになる、ことを特徴とする、請求項1に記載の計時器。
【請求項4】
前記第2の筒(16b)は、円形座面(24a)を形成するための径方向拡張部(24)を有する、ことと、
前記保持部材は、Oリング型のガスケット(20c)の形態のものであり、前記文字盤(12)または前記文字盤支持体(17)に軸方向の力を付与するように、前記Oリング型のガスケットの保持部材は、前記第2の筒(16b)の前記円形座面(24a)および前記文字盤(12)の環状領域に当接して配置されるか、または前記文字盤支持体(17)に当接して配置されること、を特徴とする、請求項1に記載の計時器。
【請求項5】
前記第2の筒(16b)は、前記文字盤(12)の前記中央開口(13)に埋め込まれることを特徴とする、請求項
4に記載の計時器。
【請求項6】
前記第2の筒(16b)は、前記文字盤に対して立ち上がった部分(32)であって、前記文字盤(12)の前記中央開口(13)を覆うように径方向に延出した部分(32)を有することを特徴とする、請求項
4に記載の計時器。
【請求項7】
当該計時器は、前記文字盤支持体(17)と前記駆動モジュール(10)との間に配置されたムーブメント支持体(26)および回路支持体(28)をさらに備え、それぞれの前記支持体(17,26,28)を積み重ねることによって、軸方向の衝撃が発生した場合に前記文字盤(12)が変形するのを防ぐリジッド基材を形成している、請求項1に記載の計時器。
【請求項8】
それぞれの前記支持体(17,26,28)は、その内部に前記保持筒(15)が少なくとも部分的に嵌合する凹部を形成するための中央開口を有することを特徴とする、請求項
7に記載の計時器。
【請求項9】
前記文字盤は、少なくとも1つの太陽電池セルを有するか、または少なくとも1つの太陽電池セルで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計製作の分野に関し、より具体的には、従来のタイプまたは太陽電池を有するタイプの文字盤を取り付けるための装置を備えた計時器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、計時器の文字盤は、下面側すなわちムーブメント側に、ムーブメントの地板に加工された孔に部分的に打ち込まれるように配置された金属脚を備える。これらの金属脚は、時計の組み立て時に、特に、時計のムーブメントに対して文字盤を所定位置に保持するために使用される。上記の方法によるムーブメントの地板への文字盤の取り付けは、比較的複雑な機械加工作業を伴うという欠点があり、金属脚の装着前の文字盤に正確に数回穿孔しなければならない。さらに、大きな衝撃が発生した場合に、文字盤の脚が破損する危険性がそれでもなおある。また、スケルトンタイプの時計でこのような文字盤を使用すると、美的外観があまりよくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の目的は、上記の様々な欠点を克服することである。より具体的には、本発明の1つの目的は、実現が簡単であるとともに、特に指針の軸に沿った衝撃が発生した場合の機械的強度を確保しつつ、文字盤を所定位置に堅固に保持することが保証される文字盤取付装置を備えた、計時器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のため、本発明は、駆動モジュールと、中央開口を有する文字盤と、文字盤の中央開口に貫通するとともに駆動モジュールによって回転駆動される時筒と、文字盤取付装置と、を備えた計時器を提案する。取付装置は、
- 時筒の周りに配置されるとともに駆動モジュールに機械的に連結/統合された保持筒と、
- 保持筒と、文字盤および/または文字盤が取り付けられた文字盤支持体と、の間に配置された保持部材と、を有する。
【0005】
一実施形態によれば、保持部材は、文字盤の中央開口に隣接した文字盤部分および/または文字盤支持体に対して当接しつつ、保持筒と、文字盤および/または文字盤支持体と、の間に配置/配備/位置付けされる。好ましくは、保持部材は、文字盤の中央開口に対して同心状に隣接する文字盤の環状領域もしくは文字盤支持体の環状領域のいずれかに、当接するように、または分散させた軸方向応力を付与するように、構成される。
【0006】
一実施形態によれば、文字盤の中央開口に隣接した文字盤部分は、好ましくは文字盤の表面に対してセットバックした環状領域を画成しており、これにより、保持筒の上部の表面は、文字盤と同じ高さになる。
【0007】
一実施形態によれば、保持筒は、第1の直径を有する第1の円筒部と、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する第2の円筒部と、を含む。保持部材は、第2の円筒部の周囲に配置されたワッシャであり、文字盤または文字盤支持体に軸方向の力を付与するように、文字盤の環状領域または文字盤支持体に対して当接している。
【0008】
一実施形態によれば、保持部材は、好ましくはサークリップ型の弾性リングであり、弾性リングは、文字盤の環状領域または文字盤支持体に当接するように、保持筒の外周の少なくとも一部に形成された溝内に配置される。
【0009】
一実施形態によれば、保持筒は、一方で、駆動モジュールに機械的に連結されるとともに内周にネジ部を有する第1の筒と、他方で、第1の筒のネジ部に螺入されるネジの形態の第2の筒と、を含む。ネジは、円形座面を形成するための径方向拡張部を有する。保持部材は、好ましくはOリング型のガスケットの形態のものであり、文字盤または文字盤支持体に軸方向の力を付与するように、ネジの円形座面および文字盤の環状領域または文字盤支持体に当接して配置される。
【0010】
一実施形態によれば、ネジは、文字盤の中央開口に埋め込まれる。
【0011】
一実施形態によれば、ネジは、文字盤に対して立ち上がった部分であって、文字盤の中央開口を覆うように径方向に延出した部分を有する。
【0012】
一実施形態によれば、計時器は、文字盤支持体と駆動モジュールとの間に配置されたムーブメント支持体および回路支持体をさらに備える。それぞれの支持体を積み重ねることによって、軸方向の衝撃が発生した場合に文字盤が変形するのを防ぐリジッド基材を形成している。
【0013】
一実施形態によれば、それぞれの支持体は、その内部に保持筒が少なくとも部分的に嵌合する凹部を形成するための中央開口を有する。
【0014】
一実施形態によれば、文字盤は、少なくとも1つの太陽電池セルを有するか、または少なくとも1つの太陽電池セルで構成される。
【0015】
本発明の他の特徴および効果は、単なる非限定的な例として、添付の図面を参照して提示されるいくつかの実施形態を読解することで、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による文字盤取付装置を示す、計時器の部分断面図を示している。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態による文字盤取付装置を示す、計時器の部分断面図を示している。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態による文字盤取付装置を示す、計時器の部分断面図を示している。
【
図4】
図4は、本発明の第4の実施形態による文字盤取付装置を示す、計時器の部分断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般的に、以下で説明する本発明による文字盤取付装置は、様々な実施形態により、従来の/典型的なタイプの文字盤を備えた、すなわち、例えば、文字盤の周囲に一定間隔で分布するインデックスと、例えば文字盤に取り付けられたアップリケの形態で時間を表す数字と、キャリバに応じて例えば日付または他の情報を示す1つ以上の窓と、を有する文字盤を備えた、機械式またはクォーツ式の時計において実現することができる。また、本発明による文字盤取付装置は、非従来型の文字盤を備えた時計において実現することもできる。例えば、本発明による取付装置は、例えばバッテリおよび/またはいわゆるスマートウォッチの電子モジュールに電力を供給するための太陽電池セルを有する文字盤、または太陽電池セルで構成された文字盤を取り付けるのに、特によく適している。
【0018】
図1~4に示す様々な実施形態において、文字盤12を取り付けるための装置は、時筒14bの周りに配置された保持筒15を有し、例えば径方向拡張部18による引っ掛けによって駆動モジュール10に機械的に連結されている。加えて、この取付装置は、保持部材20a~20cをさらに有する。この保持部材20a~20cは、好ましくはインサートである。このような保持部材20a~20cは、保持筒15の第2の円筒部15bと時計の文字盤12または文字盤支持体17との間に配置されるための、好ましくは可撓性かつ/または変形可能な部品である。より具体的には、この第2の円筒部15bの作用によって、この保持部材20a~20cは、この文字盤12の中央開口13に隣接した文字盤部分および/または文字盤支持体17に対して当接することが可能である。
【0019】
本発明の第1の実施形態を示す
図1を参照して、計時器は、特に、駆動モジュール10と、中央開口13が設けられた文字盤12と、文字盤12の中央開口13に貫通するとともに駆動モジュール10によって回転駆動される筒カナ14aおよび時筒14bと、を備える。文字盤12は、例えば両面接着材30aを用いて、文字盤支持体17に取り付けられている。文字盤支持体17の形状は、文字盤12の形状と略同じである。文字盤支持体17は、例えば両面接着材30bを用いて好ましくはプリント回路支持体28である回路支持体に取り付けられたムーブメント支持体26上に、搭載されている。様々な支持体17、26、28を積み重ねることによって、文字盤12が載置されるリジッド基材を形成しており、これは、軸方向の衝撃が発生した場合に文字盤12が変形するのを防ぐという利点がある。
【0020】
このリジッド基材は、特に太陽電池セルによって形成された文字盤12において、大きな軸方向の衝撃が発生した場合にセルのガラス基板が破損する可能性を回避するのに、特によく適している。
【0021】
計時器は、文字盤12を取り付けるための装置を備え、これは、保持部材20aと、時筒14bの周りに配置されるとともに駆動モジュール10に機械的に連結された保持筒15と、を有する。保持筒15は、第1の直径D1を有する第1の円筒部15aと、第1の直径D1よりも小さい第2の直径D2を有する第2の円筒部15bと、を含む。第1の円筒部15aは、文字盤支持体17、ムーブメント支持体26、およびプリント回路支持体28の中央開口の積み重ねによって形成される筒状部に収容される。この保持部材20aは、保持ワッシャ20aを含み、第2の円筒部15bの周囲に配置される。この保持ワッシャ20aは、その周囲が文字盤支持体17に当接するように、径方向に延出しており、これにより、文字盤支持体17に軸方向の力を付与する。第1の円筒部15aの一端は、駆動モジュール10のブリッジ10aに取り付けまたは機械的に連結された、例えば環状形状の径方向拡張部18を有する。
【0022】
本発明の第2の実施形態を示す
図2を参照して、保持部材20bは、弾性リング20bを含む。この弾性リング20bは、保持筒15の外周に形成された溝22内に配置されて、これにより、弾性リング20bは文字盤支持体17に当接する。弾性リングは、この取付装置の取り外しを容易とするために、例えばサークリップ型のものとすることができる。第1の実施形態と同様に、太陽電池セルを有する文字盤12または太陽電池セルで構成された文字盤12に適したリジッド基材を形成するために様々な支持体17、26、28を積み重ねることによって形成される筒状部に、保持筒15は収容される。保持筒15の一端は、駆動モジュール10のブリッジ10aに取り付けられた、例えば環状形状の径方向拡張部18を有する。
【0023】
本発明の第3の実施形態を示す
図3によれば、保持筒15は、第1の筒16aを含み、これは、一方で、駆動モジュール10のブリッジ10aに取り付けられる径方向拡張部を有し、他方で、その内周にネジ部を有する。第1の筒16aは、リジッド基材を形成するように様々な支持体17、26、28を積み重ねることによって形成される筒状部に、収容される。保持筒15は、第1の筒16aのネジ部に螺入されるネジの形態の第2の筒16bをさらに含む。ネジ16bは、一端に、円形座面24aを形成するための径方向拡張部24を有する。この取付装置では、保持部材20cは、例えばOリング型のガスケット20cを含む。このガスケット20cは、文字盤支持体17に軸方向の力を付与するように、ネジ16bの円形座面24aおよび文字盤支持体17に当接して配置される。ネジ16bは、文字盤12の中央開口13に埋め込まれる。従来の文字盤を取り付けるためには、径方向拡張部24の直径は、有利な美的外観を得るために、文字盤の中央開口13の直径と略同じであることが好ましい。
【0024】
変形例では、取付装置の保持部材20cは、ネジ16bの円形座面24aおよび文字盤支持体17に当接して配置されるガスケット20cを含む。これらの条件下では、ネジ16bの端に規定される円形座面24aを形成する径方向拡張部24は、従って、保持部材20cを介して、文字盤支持体17に軸方向の力を直接付与することが可能である。
【0025】
本発明の第4の実施形態を示す
図4によれば、文字盤取付装置は、第3の実施形態と同様の構成の保持筒を有し、違いは、ネジ16bが、文字盤12に対して立ち上がった部分32を有することであり、この部分は、文字盤12の中央開口13を覆うように径方向に延出している。この実施形態は、立ち上がり部分32が太陽電池セルの切断不良を隠すという利点があるので、太陽電池セルを有する文字盤または太陽電池セルで構成された文字盤に、特に適している。
【0026】
図1による保持ワッシャ20a、
図2によるサークリップ20b、
図3および4による第1の筒16aのネジ部に螺入されるネジの形態の第2の筒16bは、いずれも、大きな軸方向の衝撃が発生したときに指針が外れることを防ぐという利点がある。
【0027】
当然のことながら、本発明は、図面を参照して説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、変形例を実施することができる。例えば、上記の実施形態のいずれかによる保持筒15は、文字盤支持体17にではなく文字盤12自体に直接、さらには文字盤支持体17と文字盤12の両方に直接、当接または軸方向応力を付与するように適合させることができる。この目的のため、文字盤12は、例えば、文字盤の中央開口13に隣接した文字盤部分を有することができ、この部分に対して、上述の実施形態から選択された実施形態に応じて保持ワッシャ20a、サークリップ20b、またはガスケット20cのような保持部材が当接する。中央開口13に隣接した文字盤部分は、文字盤の表面のより大部分に対してセットバックした環状領域を画成することができ、これにより、保持筒の上部の表面は、文字盤と同じ高さになる。
【0028】
本発明による取付装置は、脚を有する文字盤の製造には適合しない様々な材料で文字盤を形成することが可能になるという利点がある。これらの文字盤は、特に、プラスチック、金属、またはガラスの射出成形法によって得ることができる。