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特許7137655金属基材を処理するためのシステム及び方法
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  • 特許-金属基材を処理するためのシステム及び方法 図1
  • 特許-金属基材を処理するためのシステム及び方法 図2A
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  • 特許-金属基材を処理するためのシステム及び方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】金属基材を処理するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/18 20060101AFI20220907BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20220907BHJP
   C23C 22/66 20060101ALI20220907BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20220907BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20220907BHJP
   C25D 11/20 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C25D11/18 301E
C22C21/00 C
C23C22/66
C23C28/00 C
C25D11/04 308
C25D11/18 312
C25D11/20 304Z
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021045349
(22)【出願日】2021-03-19
(62)【分割の表示】P 2019507253の分割
【原出願日】2017-08-14
(65)【公開番号】P2021107579
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】62/374,188
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー-デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレグニー、アナイス モーリセット クリスティアナ
(72)【発明者】
【氏名】モリス、エリック エル.
(72)【発明者】
【氏名】ポスト、ゴードン エル.
(72)【発明者】
【氏名】サッター、ザ セカンド、ジョン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】メーヨー、マイケル エイ.
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-123051(JP,A)
【文献】特開2015-189986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極酸化層を含む基材であって、リチウムが当該陽極酸化層中に空気/基材界面下の400nmまでの深さで0.1原子%~1.5原子%の量で存在する、基材。
【請求項2】
前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記基材が、1重量%~10重量%の量で銅を含むアルミニウム合金を含む、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項4】
ASTMB117に従って操作される中性塩スプレーキャビネット内での3日間の暴露の後で、前記陽極酸化層中にリチウムを含む前記基材は、陽極酸化層中にリチウムを含まない基材と比較して、基材表面上のピットの数が少なくとも50%減少している、請求項1~3のいずれか一項に記載の基材。
【請求項5】
プライマー層、電着層、粉末コート層、又はそれらの組合せをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「シーリング組成物」という発明の名称で2016年8月12日に出願された米国仮出願第62/374,188号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、金属基材を処理するためのシステム及び方法に関する。本発明は、コーティングされた金属基材にも関する。
【背景技術】
【0003】
航空宇宙産業、商業産業、及びび民間産業で用いられる金属の酸化及び劣化は、深刻で費用のかかる問題である。これらの用途に用いられる金属の酸化と劣化を防ぐために、無機保護コーティングを金属表面に適用することができる。化成コーティングとも呼ばれるこの無機保護コーティングは、金属表面に適用される唯一のコーティングであってもよく、又は、その後のコーティングが適用される中間コーティングであってもよい。陽極酸化された基材の腐食防止には、特に問題がある。水封工程は、陽極酸化された基材を腐食から適切に保護しない。クロメート系シーリング組成物及びそれを用いるプロセスは、優れた腐食防止を提供する。しかしながら、環境中のクロム系化合物に対する環境上の懸念のために、クロメート系化成コーティングのための環境的により安全な代替品が必要とされている。下方の陽極酸化された金属表面に腐食耐性を提供することができる、環境的により安全な組組成物及び方法もまた必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されているのは、基材表面の少なくとも一部を、pH9.5~12.5を有し且つリチウム金属カチオンを含むシーリング組成物と接触させる工程を含み、基材表面の少なくとも一部は陽極酸化される、基材を処理する方法である。
【0005】
また、本明細書に開示されているのは、pH9.5~12.5を有し且つリチウム金属カチオンを含むシーリング組成物を含む金属基材を処理するためのシステム;及びコンディショナーを含む水性組成物である。
【0006】
また、前記の開示された処理のシステム及び/又は処理の方法で処理された基材も開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、炭酸リチウム(0.15%炭酸リチウム塩)に2分間浸漬し、続いて脱イオン水(100℃)に60分間浸漬した、陽極酸化されたパネルのTEM画像を示す。
【0008】
図2A図2Aは、図1に示される基材の表面のXPSサーベイスキャンを示す。スキャンは、「Li 1S」と記された位置にピークがないことによって示されるように、基材の表面上にリチウムが検出されないことを示している。
【0009】
図2B図2Bは、図1に示されるリチウム用基材のXPS深さプロファイルを示す-深さプロファイルは、400~800nmの深さプロファイル(52eVまで低下傾向にある比較的平坦な線)に重ね合わされた0~400nmの深さプロファイル(54eVの結合エネルギーで高いピークを有する線)を示す。2つのプロットは、表面全体にわたって50nm毎に測定された平均である。データは、0~400nmの深さ範囲にリチウムが存在し、400~800nmの深さ範囲にリチウムが存在しないことを示している。
【0010】
図2C図2Cは、図2Bに示されるデータのXPS深さプロファイルの合計したリチウム1sスペクトルを示す。データは、0~400nmの深さ範囲にリチウムが存在すること、及び400~800nmの深さ範囲にリチウムが存在しないことを示している。
【0011】
図3図3は、基材表面上のシーリング組成物の層の厚さを説明する概略図を示す。
【0012】
図4図4は、中性塩スプレーに216時間さらした後、本発明のシーリング組成物を浸漬した、陽極酸化されたパネルの腐食性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記のように、本発明は、基材を処理する方法であって、基材表面の少なくとも一部を、pH9.5~12.5を有し且つリチウム金属カチオンを含む、又は場合によっては、から本質的になる、又は場合によっては、からなる、シーリング組成物と接触させる工程を含み、又は場合によっては、から本質的になり、又は場合によっては、からなり、基材表面の少なくとも一部が陽極酸化される、基材を処理する方法に関する。本発明はまた、金属基材を処理するためのシステムに関し、このシステムは、pH9.5~12.5を有し且つリチウム金属カチオンを含む、又は場合によっては、から本質的になる、又は場合によっては、からなる、シーリング組成物と、コンディショナーを含む水性組成物を含む、又は場合によっては、から本質的になる、又は場合によっては、からなる、水性組成物とを含み、又は場合によっては、から本質的になり、又は場合によっては、からなり、基材表面の少なくとも一部が陽極酸化される。本発明によれば、以下により詳細に記載されるように、そのシステムは、クロム又はクロム含有化合物(以下に定義)及び/又はリン酸イオン及び/又はリン酸含有化合物(以下に定義)及び/又はフッ化物を、実質的に含まない、又は場合によっては本質的に含まない、又は場合によっては完全に含まなくてもよい。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「陽極酸化(anodized)」又は「陽極酸化(anodizing)」は、基材表面を処理する方法に関して使用される場合、電解質中で基材表面上に酸化膜(すなわち、基材表面から成長する多孔質構造)を形成する電気化学的化成プロセスを意味する。ここで、基材は陽極として機能し、電流は陽極と陰極との間を流れる。本明細書で使用するとき、「陽極酸化された(anodized)」とは、基材表面に関して使用される場合、陽極酸化プロセスによって基材表面上に形成された酸化膜を有する基材を意味する。実施例において、本発明によれば、陽極酸化(anodization)は、リン酸、硫酸、クロム酸、ホウ酸、酒石酸、及び/又はシュウ酸を含むがこれらに限定されない単純な酸又は酸の混合物によるものであってもよく、任意選択的に二重の工程であってもよい。実施例では、陽極酸化プロセスは、15~60℃で、5V~60Vで、10~30分間行われてもよい。
【0015】
本発明において使用され得る適切な基材は、金属基材、金属合金基材、及び/又はニッケルメッキされたプラスチックなどの金属化された基材を含む。本発明によれば、金属又は金属合金は、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、マグネシウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム及び/又はハフニウムであるか、又はそれらを含むことができる。1XXX、2XXX、3XXX、4XXX、5XXX、6XXX、又は7XXXシリーズのアルミニウム合金及びクラッドアルミニウム合金もまた、基材として使用することができる。アルミニウム合金は、0.01重量%~10重量%の銅を含んでもよい。処理されるアルミニウム合金はまた、1XX.X、2XX.X、3XX.X、4XX.X、5XX.X、6XX.X、7XX.X、8XX.X、又は9XX.X(例えば、A356.0)のような鋳物を含んでもよい。AZ31B、AZ91C、AM60B、又はEV31Aシリーズのマグネシウム合金もまた、基材として使用することができる。本発明において使用される基材はまた、チタン及び/又はチタン合金、亜鉛及び/又は亜鉛合金、並びに/又は、ジルコニウム及び/又はジルコニウム合金を含んでもよい。本発明によれば、基材は、乗り物のボディ(例えば、限定するものではないが、ドア、ボディパネル、トランクデッキリッド、ルーフパネル、フード、ルーフ及び/若しくはストリンガー、リベット、着陸装置部品、及び/又は航空機上で用いられる外板)並びに/又は乗り物のフレームなどの乗り物の一部を構成することができる。本明細書で使用されるとき、「乗り物」又はその変形は、民間、商用及び軍用の航空機、並びに/又は自動車、オートバイ、及び/又はトラックなどの陸上の乗り物を含むがこれらに限定されない。
【0016】
上記のように、本発明のシーリング組成物は、リチウム金属カチオンを含んでもよい。
本発明のシーリング組成物はまた、リチウム以外のIA族金属の金属カチオン、VB族金属カチオン、VIB族金属カチオン、又はそれらの組合せをさらに含んでもよい。
【0017】
リチウム金属カチオン、リチウム金属カチオン以外のIA族金属カチオン、VB族金属カチオン、及び/又はVIB族金属カチオンは、塩の形態であってもよい。前述の金属カチオンのいずれかと塩を形成するのに適したアニオンの非限定的な例には、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、ハロゲン、硫酸塩、リン酸塩及びケイ酸塩(例えば、オルトケイ酸塩及びメタケイ酸塩)が含まれ、金属塩は、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩(例えば、オルトケイ酸塩及びメタケイ酸塩)、過マンガン酸塩、クロム酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、及び/又は過塩素酸塩を含んでもよい。
【0018】
本発明によれば、金属塩シーリング組成物(すなわち、リチウムの塩、リチウム以外のIA族金属の塩、VB族金属の塩、及び/又はVIB族金属の塩)はそれぞれ、シーリング組成物の総重量に基づいて、少なくとも25ppm、例えば少なくとも150ppm、例えば少なくとも500ppm(総化合物として計算)の量でシーリング組成物中に存在してもよく、場合によっては、シーリング組成物の総重量に基づいて、30000ppm以下、例えば2000ppm以下、例えば1500ppm以下(総化合物として計算)の量でシーリング組成物中に存在してもよい。本発明によれば、シーリング組成物の金属塩(すなわち、リチウムの塩、リチウム以外のIA族金属の塩、VB族金属の塩、及び/又はVIB族金属の塩)は、シーリング組成物の総重量に基づいて、25ppm~30000ppm、例えば150ppm~2000ppm、例えば500ppm~1500ppm(総化合物として計算)の量でシーリング組成物中に存在してもよい。
【0019】
本発明によれば、リチウム金属カチオン、リチウム以外のIA族金属カチオン、VB族金属カチオン、及びVIB族金属カチオンはそれぞれ、シーリング組成物の総重量に基づいて、少なくとも5ppm、例えば少なくとも50ppm、例えば少なくとも150ppm、例えば少なくとも250ppm(金属カチオンとして計算)の量でシーリング組成物中に存在してもよく、場合によっては、シーリング組成物の総重量に基づいて、5500ppm以下、例えば1200ppm以下、例えば1000ppm以下、例えば500ppm以下(金属カチオンとして計算)の量でシーリング組成物中に存在してもよい。場合によっては、本発明によれば、リチウム金属カチオン、リチウム以外のIA族金属カチオン、VB族金属カチオン、及びVIB族金属カチオンはそれぞれ、シーリング組成物の総重量に基づいて、少なくとも5ppm~5500ppm、例えば少なくとも50ppm~1000ppm、例えば少なくとも150ppm~500ppm(金属カチオンとして計算)の量でシーリング組成物中に存在してもよい。
【0020】
本発明によれば、本発明のリチウム塩は、無機リチウム塩、有機リチウム塩、又はそれらの組合せを含んでもよい。本発明によれば、リチウム塩のアニオン及びカチオンは、両方とも水溶性であり得る。本発明によれば、例えば、リチウム塩は、25℃(K;25℃)の温度で、少なくとも1×10-11、例えば少なくとも1×10-4の、水中での溶解度定数を有してもよく、場合によっては、5×10+2以下であってもよい。本発明によれば、リチウム塩は、25℃(K;25℃)の温度で、1×10-11~5×10+2、例えば1×10-4~5×10+2の水中での溶解度定数を有してもよい。本明細書で使用されるとき、「溶解度定数」は、それぞれのリチウム塩の飽和水溶液中のイオンの平衡濃度の積を意味する。各濃度は、平衡式におけるそれぞれのイオン係数のべき乗になる。様々な塩に対する溶解度定数は、Handbook of Chemistry and Physicsにおいて見出すことができる。
【0021】
本発明によれば、本発明のシーリング組成物は、過酸化水素、過硫酸塩、過塩素酸塩、スパージした散布酸素、臭素酸塩、過酸化安息香酸塩、オゾンなどの酸化剤、又はそれらの組合せを含むことができる。例えば、シーリング組成物は、シーリング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば6重量%~8重量%の酸化剤を含んでもよい。
【0022】
あるいは、本発明によれば、シーリング組成物は、酸化剤を実質的に含まない、又は場合によっては本質的に含まない、又は場合によっては完全に含まなくてもよい。
【0023】
本発明によれば、シーリング組成物は、IIA族金属カチオン又はIIA族金属含有化合物(カルシウムを含むがこれに限定されない)を除外することができる。そのような材料の非限定的な例には、IIA族金属水酸化物、IIA族金属硝酸塩、IIA族金属ハロゲン化物、IIA族金属スルファミン酸塩、IIA族金属硫酸塩、IIA族炭酸塩及び/又はIIA族金属カルボン酸塩が挙げられる。シーリング組成物及び/又はそれから形成されるコーティング又は層が、それぞれ、IIA族金属カチオンを実質的に含まない、本質的に含まない、又は完全に含まない場合、これには、任意の形態のIIA族金属カチオン(上記に列挙されたIIA族金属含有化合物などが挙げられるがこれらに限定されない)が含まれる。
【0024】
本発明によれば、シーリング組成物は、クロム又はクロム含有化合物を除外することができる。本明細書で使用されるとき、用語「クロム含有化合物」は、六価クロムを含む材料を指す。そのような材料の非限定的な例には、クロム酸、三酸化クロム、無水クロム酸、二クロム酸塩(例えば、二クロム酸アンモニウム、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、二クロム酸カルシウム、二クロム酸バリウム、二クロム酸マグネシウム、二クロム酸亜鉛、二クロム酸カドミウム、及び二クロム酸ストロンチウム)が含まれる。シーリング組成物及び/又はそれから形成されるコーティング又は層が、それぞれ実質的にクロムを含まない、本質的に含まない、又は完全に含まない場合、これには、任意の形態のクロム(上記に列挙された六価クロム含有化合物などが挙げられるがこれらに限定されない)が含まれる。
【0025】
それゆえ、任意選択で、本発明によれば、本発明のシーリング組成物及び/又はそれから堆積されるコーティング又は層は、先の段落に列挙された元素又は化合物のうちの1つ以上を実質的に含まない、本質的に含まない、及び/又は完全に含まなくてもよい。実質的にクロム又はその誘導体を含まないシーリング組成物及び/又はそれから形成されるコーティング又は層とは、クロム又はその誘導体が、意図的には添加されていないが、不純物又は環境からの不可避の汚染などのために微量で存在し得る、ことを意味する。換言すると、クロムの場合、材料の量は非常に少ないので、シーリング組成物の特性に影響を及ぼさない。これはさらに、その元素又はその化合物が、シーリング組成物及び/又はそれから形成されるコーティング又は層中に環境に負担をかけるほどのレベルで存在しないということを含み得る。「実質的に含まない」という用語は、シーリング組成物及び/又はそれから形成されるコーティング又は層が、それぞれ、組成物又は組成物の総重量に基づいて、仮にあるとしても、先の段落に列挙した元素又は化合物のいずれか又は全てを10ppm未満含有することを意味する。「本質的に含まない」という用語は、シーリング組成物及び/又はそれから形成されるコーティング又は層が、仮にあるとしても、先の段落に列挙した元素又は化合物のいずれか又は全てを1ppm未満含有することを意味する。「完全に含まない」という用語は、シーリング組成物及び/又はそれから形成されるコーティング又は層が、仮にあるとしても、先の段落に列挙した元素又は化合物のいずれか又は全てを1ppb未満含有することを意味する。
【0026】
本発明によれば、シーリング組成物は、場合によっては、例えば、リン酸アルミニウム、リン酸鉄、及び/又はリン酸亜鉛(リン酸亜鉛系の処理剤を用いる場合に形成される)などのリン酸イオン又はリン塩酸含有化合物及び/又はスラッジ形成を排除し得る。本明細書で使用されるとき、「リン酸塩含有化合物」は、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、メタリン酸塩、トリポリリン酸塩、有機ホスホネートなどのリン元素を含有する化合物を含み、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ニッケル、マンガン、アルミニウム及び/又は鉄などの一価、二価、又は三価カチオンを含み得るがこれらに限定されない。組成物及び/又はそれを含む層又はコーティングが、リン酸塩を実質的に含まない、本質的に含まない、又は完全に含まない場合、これは、任意の形態のリン酸イオン又はリン酸塩を含む化合物を含む。
【0027】
それゆえ、本発明によれば、シーリング組成物及び/又はそれから堆積される層は、先の段落に列挙されたイオン又は化合物のうちの1つ以上を実質的に含まない、又は場合によっては本質的に含まない、又は場合によっては完全に含まなくてもよい。実質的にリン酸塩を含まないシーリング組成物及び/又はそれから堆積されるコーティング又は層とは、リン酸イオン又はリン酸塩を含有する化合物が、意図的には添加されていないが、不純物又は環境からの不可避の汚染などのために微量で存在し得る、ことを意味する。換言すると、材料の量は非常に少ないので、組成物の特性に影響を及ぼさない。これはさらに、リン酸塩が、シーリング組成物及び/又はそれから堆積されるコーティング又は層中に環境に負担をかけるほどのレベルで存在しないということを含み得る。「実質的に含まない」という用語は、シーリング組成物及び/又はそれから堆積されるコーティング又は層が、組成物及び/又はコーティング又は層の総重量に基づいて、仮にあるとしても、先の段落に列挙したリン酸アニオン又は化合物のいずれか又は全てを5ppm未満含有することを意味する。「本質的に含まない」という用語は、シーリング組成物及び/又はそれを含むコーティング又は層が、先の段落に列挙したリン酸アニオン又は化合物のいずれか又は全てを1ppm未満含有することを意味する。「完全に含まない」という用語は、シーリング組成物及び/又はそれを含むコーティング又は層が、仮にあるとしても、先の段落に列挙したリン酸アニオン又は化合物のいずれか又は全てを1ppb未満含有することを意味する。
【0028】
本発明によれば、シーリング組成物は、場合によっては、フッ化物又はフッ化物源を除外することができる。本明細書で使用されるとき、「フッ化物源」は、フッ化物イオンを生成することが知られている一フッ化物、二フッ化物、フッ化物錯体、及びそれらの混合物を含む。組成物及び/又はそれを含む層又はコーティングが、フッ化物を実質的に含まない、本質的に含まない、又は完全に含まない場合、これは、任意の形態のフッ化物イオン又はフッ化物源を含むが、意図しないフッ化物(例えば、処理ライン、都市水源(例えば、虫歯を防ぐために給水に添加されるフッ化物)、前処理された基材からのフッ化物などにおける前処理浴からの持ち越しの結果として存在し得るもの)を含まない。すなわち、フッ化物を実質的に含まない、本質的に含まない、又は完全に含まない浴は、たとえ処理ラインで使用する前に浴を作るために使用された組成物がフッ化物を実質的に含まない、本質的に含まない、又は完全に含まなかったとしても、浴は、これらの外部源から由来し得る意図しないフッ化物を含み得る。
【0029】
例えば、シーリング組成物は、アンモニウム及びアルカリ金属フッ化物、酸フッ化物、フルオロホウ酸、フルオロケイ酸、フルオロチタン酸、及びフルオロジルコニウム酸、並びにそれらのアンモニウム及びアルカリ金属塩、並びに他の無機フッ化物などの任意のフッ化物源を実質的に含まなくてもよい。その非限定的な例は、フッ化亜鉛、フッ化亜鉛アルミニウム、フッ化チタン、フッ化ジルコニウム、フッ化ニッケル、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、及びフッ化水素酸、並びに当業者に公知の他の同様の材料である。
【0030】
シーリング組成物中に存在し、本明細書で「遊離フッ化物」と定義される、金属イオン(IVB族金属イオンなど)又は水素イオンに結合していないフッ化物は、シーリング組成物中の操作上のパラメータとして測定することができる。測定は、例えば、サーモサイエンティフィック社から入手可能なフッ化物イオン選択性電極(「ISE」)を備えたOrion Dual Star Dual Channel Benchtop Meter、VWR Internationalから供給されるsymphony(登録商標)フッ化物イオン選択的組合せ電極、又は同様の電極を用いて行うことができる。例えば、Light and Cappccino、イオン選択性電極を用いた練り歯磨き中のフッ化物の測定、J.Chem.Educ.,52:4,247-250,1975年4月を参照のこと。フッ化物ISEは、電極を既知のフッ化物濃度の溶液に浸し、読みをミリボルトで記録し、次いでこれらのミリボルトの読みを対数グラフにプロットすることによって、標準化することができる。未知のサンプルのミリボルト測定値は、この校正グラフと比較され、フッ化物濃度が決定される。あるいは、フッ化物ISEは、内部で較正計算を実行する計器と共に使用することができ、これにより、較正後に未知の試料の濃度を直接読み取ることができる。
【0031】
フッ化物イオンは、高い電荷密度を有する小さな負イオンであるため、水溶液中では、高い正電荷密度を有する金属イオン(IVB族金属イオンなど)又は水素イオンと錯体を形成することが多い。金属カチオン又は水素イオンにイオン的又は共有結合的に結合している、溶液中のフッ化物アニオンは、本明細書において「結合フッ化物」として定義される。このように錯化したフッ化物イオンは、それらが存在する溶液が、そのような錯体からフッ化物イオンを放出するイオン強度調整緩衝液(例えば、クエン酸アニオン又はEDTA)と混合されない限り、フッ化物ISEで測定できない。その時点で(すべての)フッ化物イオンはフッ化物ISEによって測定可能であり、測定は「全フッ化物」として知られている。あるいは、全フッ化物は、シーラー組成物中に供給されたフッ化物の重量を組成物の全重量と比較することによって計算することができる。
【0032】
本発明によれば、処理組成物は、コバルトイオン又はコバルト含有化合物を、場合によっては、実質的に含まない、又は場合によっては、本質的に含まない、又は場合によっては、完全に含まなくてもよい。本明細書で使用されるとき、「コバルト含有化合物」は、例えば、硫酸コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト及び酢酸コバルトなどのコバルト元素を含有する化合物、錯体又は塩を含む。組成物及び/又はそれを含む層又はコーティングが、コバルトを実質的に含まない、本質的に含まない、又は完全に含まない場合、これは任意の形態のコバルトイオン又はコバルト含有化合物を含む。
【0033】
本発明によれば、処理組成物は、バナジウムイオン又はバナジウム含有化合物を、場合によっては、実質的に含まない、又は場合によっては、本質的に含まない、又は場合によっては、完全に含まなくてもよい。本明細書で使用されるとき、「バナジウム含有化合物」は、例えば、アルカリ金属の対イオン又はアンモニウムカチオンを含むバナジウム酸塩及びデカバナジウム酸塩などのバナジウム元素を含有する化合物、錯体又は塩を含む(例えば、デカバナジウム酸アンモニウムナトリウムを含む))。組成物及び/又はそれを含む層又はコーティングが、バナジウムを実質的に含まない、本質的に含まない、又は完全に含まない場合、これは任意の形態のバナジウムイオン又はCa2+を含まないバナジウム含有化合物を含む。
【0034】
本発明によれば、シーリング組成物は、任意選択的にインジケータ化合物をさらに含有してもよく、そのように命名されるのは、例えば、金属イオンのような化学種の存在、組成物のpHなどを示すからである。本明細書で使用される「インジケータ」、「インジケータ化合物」、及び類似の用語は、何らかの外部刺激、パラメータ、又は状態(金属イオンの存在など)に応じて、あるいは特定のpH又はpH範囲に応じて、色が変わる化合物を指す。
【0035】
本発明に従って使用されるインジケータ化合物は、種の存在、特定のpHなどを示す、当技術分野において公知の任意のインジケータであってもよい。例えば、適切なインジケータは、特定の金属イオンと金属イオン錯体を形成した後に色を変えるものであってもよい。金属イオンインジケータは一般に高度に共役した有機化合物である。本明細書で使用される「共役化合物」は、且つ当業者によって理解されるように、単結合によって分離された2つの二重結合、例えば単一の炭素-炭素結合を有する2つの炭素-炭素二重結合を有する化合物を指す。任意の共役化合物を、本発明に従って使用することができる。
【0036】
同様に、インジケータ化合物は、pHが変化すると色が変化するものであってもよい。例えば、その化合物は、酸性又は中性のpHである色であってアルカリ性のpHで色を変えることができ、あるいはその逆であってもよい。そのようなインジケータはよく知られており、広く市販されている。したがって、「第1のpHから第2のpHへの移行時に色が変化する」インジケータ(すなわち、第1のpHから、多かれ少なかれ酸性又はアルカリ性である第2のpHへ移行時に色が変化するインジケータ)は、第1のpHに曝されると第1の色を有し(又は無色であり)、第2のpHに移行すると第2の色に変化する(又は無色から有色に変わる)。例えば、「よりアルカリ性のpH(又はより低酸性のpH)への移行時に色が変化する」インジケータは、pHが酸性/中性からアルカリ性に移行すると、第1の色/無色から第2の色/色に変わる。例えば、「より酸性のpH(又はより低アルカリ性のpH)への移行時に色が変化する」インジケータは、pHがアルカリ性/中性から酸性に移行すると、第1の色/無色から第2の色/色に変わる。
【0037】
そのようなインジケータ化合物の非限定的な例としては、メチルオレンジ、キシレノールオレンジ、カテコールバイオレット、ブロモフェノールブルー、グリーン及びパープル、エリクロームブラックT、セレスティンブルー、ヘマトキシリン、カルマガイト、ガロシアニン、及びそれらの組合せが挙げられる。任意選択的に、インジケータ化合物は、金属イオンインジケータである有機インジケータ化合物を含んでもよい。インジケータ化合物の非限定的な例には、表1に見られるものが含まれる。特定の条件で光を発する蛍光インジケータもまた、本発明に従って使用することができるが、蛍光インジケータの使用もまた特に除外してもよい。すなわち、代替的には、蛍光を示す共役化合物は特に除外される。本明細書で使用されるとき、「蛍光インジケータ」及び同様の用語は、紫外線又は可視光線にさらされると蛍光を発するか、そうでなければ色を示す化合物、分子、顔料、及び/又は染料を指す。「蛍光を発する」とは、より短い波長の光又は他の電磁放射線の吸収後に光を放出すると理解されるであろう。しばしば「タグ」と呼ばれるそのようなインジケータの例としては、アクリジン、アントラキノン、クマリン、ジフェニルメタン、ジフェニルナフチルメタン、キノリン、スチルベン、トリフェニルメタン、アントラシン及び/又はこれらの部分のいずれかを含む分子及び/又はこれらの誘導体、例えば、ローダミン、フェナントリジン、オキサジン、フルオロン、シアニン及び/又はアクリジンが挙げられる。
【表1】
【0038】
本発明によれば、インジケータとして有用な共役化合物は、表1に示すように、例えばカテコールバイオレットを含むことができる。カテコールバイオレット(CV)は、2モルのピロカテコールを1モルのo-スルホ安息香酸無水物と縮合させることで作製されたスルホンフタレイン染料である。CVはインジケータ特性(指示薬特性)を有することが見出され、金属イオンを有する組成物中に組み入れられると、それは錯体を形成し、錯滴定試薬として有用になる。CVを含有する組成物が、金属基材に由来する金属イオン(すなわち、2価以上の価数を有するもの)をキレート化するにつれて、一般に青色から青紫色が観察される。
【0039】
表1に示されるように、キシレノールオレンジも同様に、本発明による組成物に使用することができる。キシレノールオレンジは、金属イオン(すなわち、2価以上の価数を有するもの)インジケータ特性を有することが見出され、金属イオンを有する組成物中に組み入れられると、それは錯体を形成し、錯滴定試薬として有用になる。キシレノールオレンジを含有する組成物が、金属イオンをキレート化するにつれて、キシレノールオレンジの溶液は赤色からほぼ青色に変わる。
【0040】
本発明によれば、インジケータ化合物は、少なくとも0.01g/1000g、例えば少なくとも0.05g/1000gの量でシーリング組成物中に存在してもよく、場合によっては、3g/1000g以下、例えば0.3g/1000g以下の量でシーリング組成物中に存在してもよい。本発明によれば、インジケータ化合物は、0.01g/1000gから3g/1000gの量でシーリング組成物中に存在してもよく、例えば0.05g/1000gから0.3g/1000gの量でシーリング組成物中に存在してもよい。
【0041】
本発明によれば、特定の外部刺激に応答して色が変化するインジケータ化合物は、シーリング組成物を使用する場合に、例えば、基材が組成物で処理されたことの視覚的表示として役立ち得るという点で、利点をもたらす。例えば、基材中に存在する金属イオンにさらされると色が変わるインジケータを含むシーリング組成物は、その基材中の金属イオンと錯化すると色が変わり、これにより、使用者は、基材が組成物と接触したことを確認することができる。アルカリ層又は酸性層を基材上に堆積させ、その基材と、アルカリ性又は酸性のpHにさらされると色が変化する本発明の組成物とを接触させることによって、同様の利点を実現することができる。
【0042】
任意選択的に、本発明のシーリング組成物は、窒素含有複素環式化合物をさらに含んでもよい。含窒素複素環式化合物としては、ピロールなどの1個の窒素原子を有する環式化合物、並びに、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール及びペンタゾールなどの2個以上の窒素原子を有するアゾール化合物、オキサゾール及びイソオキサゾールなどの1個の窒素原子及び1個の酸素原子を有するアゾール化合物、又はチアゾール及びイソチアゾールなどの1個の窒素原子及び1個の硫黄原子を有するアゾール化合物が挙げられる。適切なアゾール化合物の非限定的な例には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(CAS:1072-71-5)、1H-ベンゾトリアゾール(CAS:95-14-7)、1H-1,2,3-トリアゾール(CAS:288-36-8)、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオールとも呼ばれる2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール(CAS:2349-67-9)、及び2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール(CAS:4005-51-0)が挙げられる。本発明によれば、例えば、アゾール化合物は、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールを含む。さらに、本発明によれば、窒素含有複素環式化合物は、ナトリウム塩などの塩の形態であってもよい。
【0043】
窒素含有複素環式化合物は、シーリング組成物中に、組成物1リットル当たり少なくとも0.0005g、例えば組成物1リットル当たり少なくとも0.0008g、例えば組成物1リットル当たり少なくとも0.002gの濃度で存在してもよく、場合によっては、シーリング組成物中に、組成物1リットル当たり3g以下、例えば組成物1リットル当たり0.2g以下、例えば組成物1リットル当たり0.1g以下の量で存在してもよい。本発明によれば、窒素含有複素環式化合物は、シーリング組成物中に(存在する場合)、組成物1リットル当たり0.0005gから組成物1リットル当たり3gまで、例えば、組成物1リットル当たり0.0008gから組成物1リットル当たり0.2gまで、例えば、組成物1リットル当たり0.002gから組成物1リットル当たり0.1gまで存在してもよい。
【0044】
上記のように、本発明のシーリング組成物は担体として水性媒体を含む。水性担体は、少なくとも1種の有機溶媒のような他の物質を任意に含んでもよい。適切な溶媒の非限定的な例としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、低分子量アルコール(すなわち、C1~C12アルコール)などが挙げられる。存在する場合、有機溶媒は、シーリング組成物中に、シーリング組成物1リットル当たり少なくとも1gの溶媒、例えばシーリング組成物1リットル当たり少なくとも約2gの溶媒の量で存在してもよく、場合によっては、シーリング組成物中に、シーリング組成物1リットル当たり40g以下の溶媒、例えばシーリング組成物1リットル当たり20g以下の溶媒の量で存在してもよい。本発明によれば、有機溶媒は、シーリング組成物中に、存在する場合、シーリング組成物1リットル当たり溶媒1gからシーリング組成物1リットル当たり溶媒40gまで、例えば、シーリング組成物1リットル当たり溶媒2gからシーリング組成物1リットル当たり溶媒20gまでの量で存在してもよい。
【0045】
本発明によれば、シーリング組成物のpHは、少なくとも9.5、例えば少なくとも10、例えば少なくとも11であってもよく、場合によっては、12.5以下、例えば11.5以下、例えば11.5であってもよい。本発明によれば、シーリング組成物のpHは、9.5~12.5、例えば10~12、例えば11~11.5であってもよい。シーリング組成物のpHは、必要に応じて、例えば、任意の酸及び/又は塩基を使用して調整することができる。本発明によれば、シーリング組成物のpHは、二酸化炭素、水溶性及び/又は水分散性の酸(例えば硝酸、硫酸、及び/又はリン酸)を含む酸性物質を含めることによって維持することができる。本発明によれば、シーリング組成物のpHは、水溶性及び/又は水分散性の塩基を含み、炭酸塩(I族炭酸塩、II族炭酸塩など)、水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化アンモニウムなど)、アンモニア、及び/又はアミン(トリエチルアミン、メチルエチルアミンなど)、又はそれらの混合物を含む塩基性材料を含めることによって維持することができる。
【0046】
上記のように、シーリング組成物は、担体、多くの場合は水性媒体を含んでもよく、その結果、組成物は、担体中のリチウム金属カチオンの溶液又は分散液の形態である。本発明によれば、溶液又は分散液は、任意の様々な既知の技術(例えば、ディッピング又は浸漬、噴霧、間欠噴霧、ディッピングしてから噴霧、噴霧してからディッピング、ブラッシング、又はロールコーティングなど)のいずれかを用いて基材と接触させることができる。本発明によれば、溶液又は分散液は、金属基材に適用されるとき、40°Fから約160°F、例えば60°Fから110°Fの範囲の温度であってもよい。例えば、金属材料をシーリング組成物と接触させるプロセスは、周囲温度又は室温で実施することができる。接触時間は、1秒~2時間、例えば5分~60分であることが多い。
【0047】
本発明によれば、化成組成物との接触に続いて、基材を、任意に室温で風乾してもよく、又は熱風で乾燥してもよい。例えば、エアナイフを用いることにより、水を飛ばすことにより、基材を高温に短時間さらすことにより(例えば、オーブン中で15℃~100℃、例えば20℃~90℃で、又は赤外線熱などを用いるヒータアセンブリ中で例えば70℃で10分間、基材を乾燥させることにより)、あるいは、スキージロールの間に基材を通過させることにより、乾燥してもよい。本発明によれば、基材表面を任意の水、溶液、組成物などとその後に接触させる前に、基材表面を部分的に、又は場合によっては完全に乾燥させることができる。基材表面に関して本明細書で使用されるとき、「完全に乾燥」又は「完全に乾燥させる」は、基材表面に、人間の目に見える水分がないことを意味する。
【0048】
任意選択で、本発明によれば、シーリング組成物との接触に続いて、基材表面の少なくとも一部を次の処理組成物と接触させてその上にフィルム、層、及び/又はコーティングを形成する前に(後述)、任意選択で基材をすすいだり、任意の水溶液と接触させたりしない。
【0049】
任意選択で、本発明によれば、シーリング組成物との接触に続いて、基材を任意に水性組成物と接触させてもよく、水性組成物には、水道水、脱イオン水、逆浸透(RO)水、及び/又は基材処理の当業者に知られている任意の他の水性組成物が含まれるが、これらに限定されない。本発明によれば、上記のように、任意選択で、水性組成物とのそのような接触を、シーリング組成物との接触の直後に行ってもよく(すなわち、水性組成物と接触するとき、基材は「湿潤(wet)」している)、あるいは、任意選択で、上記のように、水性組成物と接触させる前に、基材を上記の方法のいずれかに従って乾燥させてもよい。任意選択で、上記のように、シーリング組成物との接触後、且つ水性組成物との接触前に、基材を、水道水、脱イオン水などの水ですすいでもよく、その場合、基材は上記のように乾燥してもしなくてもよい。本発明によれば、そのような水又は水性組成物が、基材と接触させるために用いられる場合、室温(60°F)からその沸点、例えば176°Fから212°Fの温度であってもよい。水性組成物は、5~7のpH、例えば5.5~6.5のpHを有してもよい。本発明によれば、水性組成物は20μS/cm未満の導電率を有してもよい。本発明によれば、水性組成物はコンディショナーを含んでもよく、コンディショナーには、例えば、デキストリン、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらから誘導される水溶性ポリマー、リグニンスルホネート(例えば、1分子当たり4~6個のカルボン酸基を有する脂環式若しくは芳香族ポリカルボン酸のような酸)又はその水溶性塩、ヒドロキシカルボン酸、水溶性ホスホン酸、又はそのような酸の1つ以上の水溶性塩、あるいはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。そのようなコンディショナーはまた、当業者に公知の市販品を含んでもよく、コンディショナーには、例えば、Anodal(登録商標)SH-1及びSH-2(スイスのClariant International Ltd.から市販されている)、Sandoz Sealing Salt A/S(ノースカロライナ州シャーロットのSanoz Chemicalsから市販されている)、Henkel VR/6252/1、Henkel VR/6253/1(Henkel Ag&Co.KGaAから市販されている)、Dowfax 2A1(ミシガン州ミッドランドのDow Chemicalsから市販されている)、又はそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。本発明によれば、そのようなコンディショナーは、存在する場合、水性組成物のpHを5~7、例えば5.4~5.6に維持するのに十分な量で、水性組成物中に存在してもよい。
【0050】
水性組成物と接触させた後、仮にその場合、基材表面を任意の水、溶液、組成物などとその後に接触させる前に、基材表面を部分的に、又は場合によっては完全に乾燥させるようにして、基材を任意に乾燥させることができ、例えば、先の段落に記載したように風乾してもよく、又は熱風で乾燥してもよい。
【0051】
図1に示される透過型電子顕微鏡(TEM)画像は、「その場リフトオフ」技術を用いてFEI Helios Nanolab 660デュアルビ-ム集束イオンビ-ム(FIB)を使用して調製されたパネルからキャプチャされた(R.M Langford、「FIB-SEMシステムを用いたその場リフトアウト」、Micron v.35、607~611頁、2004年)。その後のGaイオンビ-ムミリング中の損傷を防ぐために、FIBを用いて試料の表面上に金(Au)の層、次いで炭素(C)の層を堆積させた。幅約5ミクロン、深さ5ミクロンの薄い切片を、30kVのイオンビ-ムを使用してサンプルの表面から削り取り、マイクロマニピュレ-タを使用してその場でTEMグリッドに取り付けた。次に、この部分を最終厚さが約100nmになるまでイオンビ-ムでさらに薄くした。表面の最終洗浄のために、2kVのイオンビ-ムエネルギ-を使用した。
200kVの加速電圧でFEI Talos F200X電界放出TEMを用いて、TEM及び走査型透過電子顕微鏡法(STEM)を行った。顕微鏡の倍率は、Agar Scientificからのクロスグレ-ティングレプリカ標準を使用して較正した。(クロスグレ-ティングレプリカ、AGS106、回折線格子間隔462.9nm、http://www.agarscientific.com/diffraction-integrating-replicas.html)。試料からHAADF-STEM(高角度環状暗視野)画像を収集したところ、存在する元素の原子番号の二乗にほぼ比例する質量コントラストを主に示す画像が得られた。
【0052】
図2Aは、図1に示された基材の表面のXPSサーベイスキャンを示し、リチウムが基材表面に検出されなかったことを確認する。基材は、(TEMによって決定されるように)アルミニウム-銅合金上に、約2.2μm厚の酸化アルミニウムを有していた。リチウムは、陽極酸化層の外側400nmにおいて低濃度で存在し、表面下約100nm~150nmにおいて最大濃度(1.5原子%)で存在した。したがって、本発明によれば、シーリング組成物によって形成される層の厚さは、5nm~550nm、例えば10nm~400nm、例えば90nm~175nm、例えば100nm~150nmであってもよい。本明細書で使用するとき、「厚さ」は、シーリング組成物によって形成される層に関して使用される場合、図3に示すように、(a)元の空気/基材界面の上に形成された層、(b)元の空気/基材界面の下に形成された改質層、又は(a)と(b)との組合せのいずれかを指す。本明細書で使用されるとき、「厚さ」は、本発明の処理組成物によって形成された層に関して使用される場合、図3に示すように、(a)元の空気/基材界面の上に形成された層、(b)前処理/基材界面の下に形成された改質層、又は(a)と(b)との組合せのいずれかを指す。図3では改質層(b)が前処理/基材界面まで延びているように示されているが、改質層(b)と前処理/基材界面との間に介在層が存在してもよい。同様に、(a)と(b)の組み合わせである(c)は連続層に限定されず、その間に介在層を有する多層を含んでもよく、層(c)の厚さの測定は介在層を除外してもよい。
【0053】
図2Bは、図1に示す基材のXPS深さプロファイルを示す。XPSデータは、単色AlkαX線源(hν=1,486.7eV)及び同心半球型分析器を備えたPhysical Electronics VersaProbe II機器を使用して生成した。低エネルギー電子(<5eV)とアルゴンイオンの両方を用いて電荷中和を行った。結合エネルギー軸は、スパッタ洗浄したCu箔(Cu 2P3/2=932.7eV、Cu2P3/2=75.1eV)を用いて較正した。ピークは、284.8eVでの炭素1sスペクトルにおけるCHxバンドを基準にして電荷基準化された。測定は、試料表面平面に対して45°の取り出し角で行われた。これは、3~6nmの典型的なサンプリング深度をもたらした(信号の95%がこの深度又はより浅いところから生じた)。分析サイズは直径約500μmであった。定量化は、電子のX線断面積及び非弾性平均自由行程を説明する機器相対感度係数(RSF)を用いて行った。深さプロファイリングは、2mm×2mmの面積にわたってラスターされた4kVのArビームを用いて行われた。粉砕中の粗面化を最小限にするために試料回転を用いた。測定された厚さ(TEMに基づく)2200nmに基づいて、Al層中のスパッタリング速度は20nm/分であった。1回目の分析での深さプロファイルは、約116nmの増分で、総スパッタ深さは、約2.2ミクロンであった。2回目の分析での深さプロファイルは、約50nmの増分で、総深さは1000nmであった。これらのデータは、最高濃度(1.5原子%)が基材表面下の約100nmから約400nmで発生することを確認している。
【0054】
図2Cは、図2Bに示されるデータのXPS深さプロファイルの合計リチウム1sスペクトルを示す。上の線は、空気/基材界面からその界面の400nm下までのリチウム1sスペクトルの合計であり、図2Bの左側のボックスに対応する。このピークはリチウムスペクトルに典型的なものである。下の線は400nmより下の合計リチウムスペクトルであり、400nmより下ではリチウムが存在しなかったことを確認している。この下の線は、図2Bの右側のボックスに示されるデータ(すなわち400nmから800nm)に対応する。
【0055】
TEM画像及びXPS深さプロファイリングは、本発明の方法に従って陽極酸化パネルを処理すると、空気/基材表面界面と陽極酸化層との間に100nm~450nm(例えば120nmから250nm)のリチウム修飾陽極酸化層が形成されることを実証している(図2参照)。
【0056】
本発明によれば、基材を陽極酸化する前に、グリース、汚れ、及び/又は他の異物を除去するために、基材表面の少なくとも一部を洗浄及び/又は脱酸素してもよい。基材の表面の少なくとも一部を、例えば、表面を機械的に研磨すること、及び/又は当業者に周知の市販のアルカリ性又は酸性の洗浄剤で表面を洗浄/脱脂すること、などの物理的及び/又は化学的手段によって洗浄することができる。本発明での使用に適したアルカリ洗浄剤の例として、それぞれ、PPG Industries、Inc.(Cleveland,OH)から市販されているChemkleen(商標)166tlP、166m/c、177、490MX、2010LP、及びSurface Prep 1(SP1)、Ultrax 32、Ultrax 97、Ultrax 29及び92D、並びに、PRC-Desoto International(Sylmar,CA)から市販されているDFMシリーズ、RECC 1001、及び88X1002洗浄剤のいずれか、並びに、Turco 4215-NCLT及びRidolene(Madison Heights,MIのHenkel Technologiesから市販されている)が挙げられる。そのような洗浄剤は、水道水、蒸留水、又はそれらの組合わなどによる水洗の前又は後にしばしば用いられる。
【0057】
上記のように、本発明によれば、基材を陽極酸化する前に、洗浄した基材表面の少なくとも一部を機械的及び/又は化学的に脱酸素することができる。本明細書で使用されるとき、用語「脱酸素する(deoxidize)」は、シーリング組成物の均一な堆積を促進するために、及びシーリング組成物コーティングの基材表面への接着を促進するために、基材の表面に見られる酸化物層の除去を意味する。適切な脱酸素剤は当業者によく知られているであろう。典型的な機械的脱酸素剤は、例えば、研磨パッド又はクリーニングパッドを用いることによる、基材表面の均一な粗面化であってもよい。典型的な化学的脱酸素剤としては、例えば、リン酸、硝酸、フルオロホウ酸、硫酸、クロム酸、フッ化水素酸、及び二フッ化アンモニウムなどの酸系脱酸素剤、あるいは、Amchem 7/17脱酸素剤(ヘンケルテクノロジーズ、マディソンハイツ、ミシガン州から入手可能)、OAKITE DEOXIDIZER LNC(Chemetallから市販されている)、TURCO DEOXIDIZER 6(Henkelから市販されている)、又はそれらの組合せ、が挙げられる。多くの場合、化学的脱酸素剤は担体、多くの場合は水性媒体を含むので、脱酸素剤が担体中の溶液又は分散液の形態であってもよく、この場合、溶液又は分散液は、様々な既知の技術、例えば、ディッピング又は浸漬、噴霧、間欠噴霧、ディッピングしてから噴霧、噴霧してからディッピング、ブラッシング、又はロールコーティングなどのいずれかを用いて基材と接触させることができる。本発明によれば、当業者は、エッチング速度に基づいて、金属基材に適用する場合、例えば、50°Fから150°Fまで(10°C~66°C)、例えば、70°Fから130°Fまで(21°C~54°C)、例えば、80°Fから120°Fまで(27°C~49°C)の範囲の温度で、溶液又は分散液の温度範囲を選択するであろう。接触時間は、30分から20分、例えば1分から15分、例えば90秒から12分、例えば3分から9分であってもよい。
【0058】
洗浄及び/又は脱酸素工程に続いて、残留物を除去するために、基材を任意に水道水、脱イオン水、及び/又はすすぎ剤の水溶液ですすいでもよい。本発明によれば、湿潤基材表面を本発明のシーリング組成物(上記)で処理してもよく、又は基材表面を処理する前に基材を乾燥してもよい。例えば、エアナイフを用いることにより、水を飛ばすことにより、基材を高温に短時間さらすことにより(例えば、オーブン中で15℃~100℃、例えば20℃~90℃で、又は赤外線熱などを用いるヒータアセンブリ中で例えば70℃で10分間、基材を乾燥させることにより)、あるいは、スキージロールの間に基材を通過させることにより、風乾するなどして、乾燥してもよい。
【0059】
驚くべきことに、本発明のシーリング組成物を使用すると、優れた品質のシーリングされた陽極酸化アルミニウム表面が作製されることが発見された。具体的には、陽極酸化された基材を本発明のリチウム含有シーリング組成物と接触させると、リチウムシーリング組成物で処理された非陽極酸化基材と比較して、且つ熱水浸漬で処理された陽極酸化パネルと比較して、著しく改善された腐食性能を有する処理基材が得られた。これらの結果は予想外であった。
【0060】
さらに、驚くべきことに、陽極酸化された基材を本発明のリチウム含有シーリング組成物と接触させ、続いて基材を熱水中に浸漬すると、優れた品質の処理基材が得られることも発見された。
【0061】
本発明によれば、基材を本発明のシーリング組成物と接触させた後、フィルム形成樹脂を含むコーティング組成物を、シーリング組成物と接触している基材の表面の少なくとも一部の上に堆積させることができる。そのようなコーティング組成物を基材上に堆積させるためには、例えば、ブラッシング、ディッピング、流し塗り、噴霧などの任意の適切な技術を使用することができる。しかしながら、いくつかの例では、以下により詳細に記載されるように、そのようなコーティング組成物の堆積は、電着によって金属基材上に電着可能組成物が堆積される電着工程を含んでもよい。他の特定の例では、以下により詳細に記載されるように、そのようなコーティング組成物の堆積は粉末コーティング工程を含む。さらに他の例では、コーティング組成物は液体コーティング組成物であってもよい。
【0062】
本発明によれば、コーティング組成物は、熱硬化性フィルム形成樹脂又は熱可塑性フィルム形成樹脂を含んでもよい。本明細書で使用されるとき、用語「フィルム形成樹脂」は、組成物中に存在する任意の希釈剤若しくは担体の除去時、又は周囲温度若しくは高温での硬化時に、基材の少なくとも水平面上に自立連続フィルムを形成し得る樹脂を指す。使用され得る従来のフィルム形成樹脂としては、特に限定されないが、とりわけ自動車OEMコーティング組成物、自動車補修コーティング組成物、工業用コーティング組成物、建築用コーティング組成物、コイルコーティング組成物、及び航空宇宙用コーティング組成物に使用されるものが挙げられる。本明細書で使用されるとき、用語「熱硬化性」は、硬化又は架橋の際に不可逆的に「硬化」する樹脂を指し、ポリマー成分のポリマー鎖は共有結合によって互いに結合される。この性質は通常、例えば熱又は放射線によってしばしば誘発される組成物成分の架橋反応と関連している。硬化又は架橋反応も周囲条件下で実施することができる。一旦硬化又は架橋すると、熱硬化性樹脂は熱を加えても溶融せず、溶媒に不溶である。本明細書で使用されるとき、用語「熱可塑性」は、共有結合によって結合されておらず、それによって加熱時に液体流動を受けることができ、溶媒に可溶であるポリマー成分を含む樹脂を指す。
【0063】
前述のように、本発明によれば、電着工程によって基材上に堆積させることができる水分散性イオン性塩基含有フィルム形成樹脂を含む電着可能コーティング組成物は、電着によって金属基材上に堆積される。イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、カチオン性電着可能コーティング組成物に使用するためのカチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを含んでもよい。本明細書で使用されるとき、用語「カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマー」は、正電荷を付与する、スルホニウム基及びアンモニウム基などの少なくとも部分的に中和されたカチオン性基を含むポリマーを指す。カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、例えば、ヒドロキシル基、一級又は二級アミン基、及びチオール基を含む活性水素官能基を含んでもよい。活性水素官能基を含むカチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、活性水素含有カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーと呼ぶことができる。カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーとしての使用に適したポリマーの例としては、とりわけ、アルキドポリマー、アクリル、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、及びポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。カチオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、カチオン性電着可能コーティング組成物中に、電着可能コーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、40重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば60重量%~75重量%の量で存在してもよい。本明細書で使用されるとき、「樹脂固形分」は、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマー、硬化剤、及び電着可能コーティング組成物中に存在する任意のさらなる水分散性非着色成分を含む。
【0064】
あるいは、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、アニオン性電着可能コーティング組成物に使用するためのアニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーを含んでもよい。本明細書で使用されるとき、用語「アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマー」は、負電荷を付与する、カルボン酸基及びリン酸基などの少なくとも部分的に中和されたアニオン性基を含むポリマーを指す。アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、活性水素官能基を含んでもよい。活性水素官能基を含むアニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、活性水素含有アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーと呼ぶことができる。アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、塩基可溶化カルボン酸基含有フィルム形成ポリマーを含んでもよく、例えば、乾燥油若しくは半乾燥脂肪酸エステルとジカルボン酸若しくは無水物との生成物又は付加物;ポリオールとさらに反応する、脂肪酸エステル、不飽和酸、又は無水物及び任意の追加の不飽和改質材料の反応生成物を含んでもよい。また、不飽和カルボン酸のヒドロキシ-アルキルエステルの少なくとも部分的に中和されたインターポリマー、不飽和カルボン酸、及び少なくとも1種の他のエチレン性不飽和モノマーも適切である。さらに別の適切なアニオン性電着可能樹脂は、アルキド-アミノプラストビヒクル、すなわちアルキド樹脂及びアミン-アルデヒド樹脂を含有するビヒクルを含む。他の好適なアニオン性電着可能樹脂組成物は、樹脂ポリオールの混合エステルを含む。リン酸化ポリエポキシド又はリン酸化アクリルポリマーのような他の酸官能性ポリマーもまた、使用され得る。例示的なリン酸化ポリエポキシドは、米国特許出願公開第2009-0045071号明細書の[0004]~[0015]、及び米国特許出願第13/232,093号の[0014]~[0040]に開示されており、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。アニオン性塩基含有フィルム形成ポリマーは、アニオン性電着可能コーティング組成物中に、電着可能コーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、50%~90%、例えば55%~80%、例えば60%~75%の量で存在してもよい。
【0065】
電着可能コーティング組成物は、硬化剤をさらに含んでもよい。硬化剤は、イオン性塩基含有フィルム形成ポリマーの活性水素基などの反応性基と反応して、コーティング組成物の硬化を達成してコーティングを形成し得る。適切な硬化剤の非限定的な例は、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネート、アミノプラスト樹脂及びフェノプラスト樹脂、例えばそれらのアリルエーテル誘導体を含むフェノールホルムアルデヒド縮合物である。硬化剤は、カチオン性電着可能コーティング組成物中に、電着可能コーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、10重量%~60重量%、例えば20重量~50重量%、例えば25重量%~40重量%の量で存在してもよい。あるいは、硬化剤は、アニオン性電着可能コーティング組成物中に、電着可能コーティング組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、10重量%~50重量%、例えば20重量%~45重量%、例えば25重量%~40重量%の量で存在してもよい。
【0066】
電着可能コーティング組成物は、顔料組成物のような他の任意成分、並びに所望により様々な添加剤、例えば、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、殺生物剤、紫外線吸収剤及び安定剤、ヒンダードアミン光安定剤、消泡剤、殺菌剤、分散助剤、流動制御剤、界面活性剤、湿潤剤、又はそれらの組合せ、をさらに含んでもよい。
【0067】
電着可能コーティング組成物は、水及び/又は1つ以上の有機溶媒を含んでもよい。水は、電着可能コーティング組成物の総重量に基づいて、例えば、40重量%~90重量%、例えば50重量%~75重量%の量で存在してもよい。使用される場合、有機溶媒は、電着可能コーティング組成物の総重量に基づいて、典型的には、10重量%未満、例えば5重量%未満の量で存在してもよい。電着可能コーティング組成物は、特に水性分散液の形態で提供されてもよい。電着可能コーティング組成物の全固形分は、電着可能コーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%~50重量%、例えば5重量%~40重量%、例えば5重量%~20重量%であってもよい。本明細書で使用するとき、「全固形分」とは、電着可能コーティング組成物の不揮発分、すなわち、110℃に15分間加熱しても揮発しない材料を指す。
【0068】
カチオン性電着可能コーティング組成物は、組成物を導電性カソード及び導電性アノードと接触させることによって導電性基材上に堆積させることができ、コーティングされる表面はカソードである。あるいは、アニオン性電着可能コーティング組成物は、組成物を導電性カソード及び導電性アノードと接触させることによって導電性基材上に堆積させることができ、コーティングされる表面はアノードである。十分な電圧が電極間に印加されると、電着可能コーティング組成物の接着性フィルムが、それぞれカソード又はアノード上に実質的に連続的に堆積される。印加電圧は変化させることができ、例えば、1ボルト程度の低いものから数千ボルト程度の高いもの(例えば、50ボルトと500ボルトの間)とすることができる。電流密度は、通常1平方フィート当たり1.0アンペアから15アンペア(1平方メートル当たり10.8から161.5アンペア)の間であって、電着プロセス中に急速に減少する傾向があり、連続的な自己絶縁膜の形成を示す。
【0069】
一旦、カチオン性又はアニオン性電着可能コーティング組成物が導電性基材の少なくとも一部の上に電着されると、コーティングされた基材を、基材上の電着コーティングを硬化させるのに十分な温度と時間で加熱してもよい。カチオン性電着では、コーティング基材を250°F~450°F(121.1℃~232.2℃)、例えば275°F~400°F(135℃~204.4℃)、例えば300°F~360°F(149℃~180℃)の範囲の温度に加熱することができる。アニオン性電着では、コーティング基材を200°F~450°F(93℃~232.2℃)、例えば275°F~400°F(135℃~204.4℃)、例えば300°F~360°F(149℃~180℃)、例えば200°F~210.2°F(93℃~99℃)の範囲の温度に加熱することができる。硬化時間は、硬化温度並びに他の変数、例えば電着コーティングの膜厚、組成物中に存在する触媒の量及び種類などに依存し得る。例えば、硬化時間は10分~60分、例えば20~40分の範囲であってもよい。得られる硬化電着コーティングの厚さは、2~50ミクロンの範囲であってもよい。
【0070】
あるいは、上記のように、本発明によれば、基材を本発明のシーリング組成物と接触させた後、次いで粉末コーティング組成物を基材の表面の少なくとも一部の上に堆積させることができる。本明細書で使用されるとき、「粉末コーティング組成物」は、水及び/又は溶媒を完全に含まないコーティング組成物を指す。したがって、本明細書に開示されている粉末コーティング組成物は、当技術分野で公知の水性及び/又は溶媒型コーティング組成物と同義ではない。本発明によれば、粉末コーティング組成物は、例えば、(a)反応性官能基を有するフィルム形成ポリマー;及び(b)前記官能基と反応する硬化剤、を含んでもよい。本発明で使用することができる粉末コーティング組成物の例には、ENVIROCRON(登録商標)ラインのポリエステル系の粉末コーティング組成物(PPG Industries、Inc.から市販されている)又はエポキシ-ポリエステルハイブリッド粉末コーティング組成物が含まれる。本発明において使用され得る粉末コーティング組成物の代替例としては、低温硬化熱硬化性粉末コーティング組成物;硬化性粉末コーティング組成物、並びに少なくとも30℃のTgを有する反応性基含有ポリマーの固体微粒子混合物を含むもの(例えば、PPG Industries、Inc.に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,797,387号に記載されているものなど)が挙げられる。当該低温硬化熱硬化性粉末コーティング組成物には、(a)少なくとも1種の第三級アミノ尿素化合物、少なくとも1種の第三級アミノウレタン化合物、又はそれらの混合物、及び(b)少なくとも1種のフィルム形成性エポキシ含有樹脂及び/又は少なくとも1種のシロキサン含有樹脂(例えば、PPG Industries、Inc.に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,470,752号に記載されているものなど)が含まれ;当該硬化性粉末コーティング組成物には、(a)少なくとも1種の第三級アミノ尿素化合物を含む硬化性粉末コーティング組成物、少なくとも1つの第三級アミノウレタン化合物、又はそれらの混合物、及び(b)少なくとも1種のフィルム形成性エポキシ含有樹脂及び/又は少なくとも1種のシロキサン含有樹脂(例えば、PPG Industries、Inc.に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,432,333号に記載されているものなど)が含まれる。粉末コーティング組成物を堆積した後、堆積した組成物を硬化させるためにコーティングを加熱することが多い。加熱又は硬化の操作は、150℃~200℃の範囲、例えば170℃~190℃の範囲の温度で、10分~20分の範囲の期間にわたって行われることが多い。本発明によれば、得られるフィルムの厚さは、50ミクロンから125ミクロンである。
【0071】
上記のように、本発明によれば、コーティング組成物は液体コーティング組成物であってもよい。本明細書で使用されるとき、「液体コーティング組成物」は、水及び/又は溶媒の一部を含有するコーティング組成物を指す。したがって、本明細書に開示されている液体コーティング組成物は、当技術分野で公知の水性及び/又は溶媒型コーティング組成物と同義である。本発明によれば、液体コーティング組成物は、例えば、(a)反応性官能基を有するフィルム形成ポリマー;及び(b)前記官能基と反応する硬化剤、を含んでもよい。他の例では、液体コーティングは、空気中の酸素と反応し得るか、あるいは水及び/又は溶媒の蒸発を伴って合体してフィルムになり得るフィルム形成ポリマーを含んでもよい。これらのフィルム形成メカニズムは、熱、又は紫外線若しくは赤外線のようなある種の放射線の適用を必要とするか、あるいはこれらの適用によって加速され得る。本発明で使用することができる液体コーティング組成物の例には、SPECTRACRON(登録商標)ラインの溶媒系のコーティング組成物、AQUACRON(登録商標)ラインの水性硬化性コーティング組成物、及びRAYCRON(登録商標)ラインのUV硬化コーティングが含まれる(全てPPG Industries、Inc.から市販されている)。本発明の液体コーティング組成物に使用することができる適切なフィルム形成ポリマーは、(ポリ)エステル、アルキド、(ポリ)ウレタン、イソシアヌレート、(ポリ)尿素、(ポリ)エポキシ、無水物、アクリル、(ポリ)エーテル、(ポリ)スルフィド、(ポリ)アミン、(ポリ)アミド、(ポリ)塩化ビニル、(ポリ)オレフィン、(ポリ)フッ化ビニリデン、(ポリ)シロキサン、又はそれらの組合せ、を含んでもよい。
【0072】
本発明によれば、シーリング組成物と接触させた基材はまた、プライマー組成物及び/又はトップコート組成物と接触させてもよい。プライマーコートは、例えば、クロメート系プライマー及び高性能トップコートであってもよい。本発明によれば、プライマーコートは、従来のクロメート系プライマーコート(例えばPPG Industries、Inc.から入手可能なもの、製品コード44GN072)、又はクロムフリープライマー(例えばPPGから入手可能なもの、DESOPRIME CA7502、DESOPRIME CA7521、Deft 02GN083、Deft 02GN084)であってもよい。あるいは、プライマーコートは、クロメートフリーのプライマーコート(例えば、米国特許出願第10/758,973号、発明の名称「CORROSION RESISTANT COATINGS CONTAINING CARBON」、並びに米国特許出願第10/758,972号、及び米国特許出願第10/758,972号、両方とも発明の名称「CORROSION RESISTANT COATINGS」に記載されたコーティング組成物であり、それらの全ては参照により本明細書に組み込まれる)、及び当技術分野で公知のクロムフリープライマーであってもよく、また、MIL-PRF-85582クラスN又はMIL-PRF-23377クラスNの軍事的要件を満たすことができるものも、本発明と共に使用することができる。
【0073】
上記のように、本発明の基材はトップコートも含み得る。本明細書で使用されるとき、用語「トップコート」はバインダーの混合物を指し、当該バインダーの混合物は、有機系若しくは無機系のポリマー又はポリマーのブレンド、典型的には少なくとも1つの顔料であることができ、少なくとも1つの溶媒又は溶媒の混合物を任意に含むことができ、少なくとも1つの硬化剤を任意に含むことができる。トップコートは、典型的には、その外面が大気又は環境にさらされ且つその内面が他のコーティング層又はポリマー基材と接触している、単層又は多層コーティングシステムにおけるコーティング層である。適切なトップコートの例としては、MIL-PRF-85285Dに準拠するもの(例えばPPGから入手可能なもの、Deft 03W127A及びDeft 03GY292)が挙げられる。本発明によれば、トップコートは、高性能トップコート(例えばPPGから入手可能なもの、Defthane(登録商標)ELT(商標)99GY001及び99W009)であってもよい。しかしながら、本開示を参照して当業者には理解されるように、他のトップコート及び高性能トップコートを本発明に使用することができる。
【0074】
本発明によれば、金属基材はまた、自己下塗りトップコート、又は強化された自己下塗りトップコートを含んでもよい。「基材への直接」コーティング又は「金属への直接」コーティングとも呼ばれる用語「自己下塗りトップコート」は、バインダーの混合物を指し、当該バインダーの混合物は、有機系若しくは無機系のポリマー又はポリマーのブレンド、典型的には少なくとも1つの顔料であることができ、少なくとも1つの溶媒又は溶媒の混合物を任意に含むことができ、少なくとも1つの硬化剤を任意に含むことができる。「強化された基材への直接」コーティング」とも呼ばれる用語「強化された自己下塗りトップコート」は、フルオロエチレン-アルキルビニルなどの官能化フッ素化バインダーの全部又は一部と他のバインダーとの混合物を指し、当該バインダーの混合物は、有機系若しくは無機系のポリマー又はポリマーのブレンド、典型的には少なくとも1つの顔料であることができ、少なくとも1つの溶媒又は溶媒の混合物を任意に含むことができ、少なくとも1つの硬化剤を任意に含むことができる。自己下塗りトップコートの例としては、TT-P-2756Aに準拠したものが挙げられる。自己下塗りトップコートの例としては、PPGから入手可能なもの(03W169及び03GY369)が挙げられ、強化された自己下塗りトップコートの例としては、PPGから入手可能な、Defthane(登録商標)ELT(商標)/ESPT及び製品コード番号97GY121が挙げられる。しかしながら、本開示を参照して当業者には理解されるように、他の自己下塗りトップコート及び強化された自己下塗りトップコートを本発明によるコーティングシステムに使用することができる。
【0075】
本発明によれば、自己下塗りトップコート及び強化された自己下塗りトップコートは、シールされた基材に直接適用することができる。自己下塗りトップコート及び強化された自己下塗りトップコートは、プライマー又はペイントフィルムなどの有機又は無機ポリマーコーティングに任意に適用することができる。自己下塗りトップコート層及び強化された自己下塗りトップコートは、典型的には、コーティングの外面が大気又は環境にさらされ且つコーティングの内面が典型的には基材又は任意のポリマーコーティング若しくはプライマーと接触している、単層又は多層のコーティングシステムにおけるコーティング層である。
【0076】
本発明によれば、トップコート、自己下塗りトップコート、及び強化された自己下塗りトップコートは、経時的に乾燥若しくは硬化する湿潤状態又は「完全に硬化していない」状態のいずれか(すなわち溶媒が蒸発し、及び/又は化学反応が起きる状態)で、シールした基材に適用することができる。コーティングは、自然に又は促進手段(例えば紫外線硬化系)のいずれかによって乾燥又は硬化して、フィルム又は「硬化」塗料を形成することができる。コーティングはまた、接着剤などの半硬化状態又は完全硬化状態で適用することもできる。
【0077】
さらに、着色剤、及び必要に応じて界面活性剤、湿潤剤又は触媒などの様々な添加剤をコーティング組成物(電着可能、粉末又は液体)に含めることができる。本明細書で使用されるとき、用語「着色剤」は、色及び/又は他の不透明性及び/又は他の視覚効果を組成物に付与する任意の材料を意味する。着色剤の例としては、塗料業界で使用されている、及び/又はドライカラー製造業者協会(DCMA)に記載されているものなどの顔料、染料及び色合い(tints)、並びに特殊効果組成物が挙げられる。一般に、着色剤は、所望の視覚的効果及び/又は色彩効果を付与するのに十分な任意の量で、コーティング組成物中に存在することができる。着色剤は、組成物の全重量を基準にした重量パーセントで、1~65重量パーセント、例えば3~40重量パーセント又は5~35重量パーセント含んでもよい。
【0078】
以下の詳細な説明の目的のために、本発明は、明確に反対のことが示されている場合を除き、様々な代替の変更形態及び工程シーケンスを想定し得ることを理解されたい。さらに、任意の例以外、又は他に指示がある場合以外、値、量、百分率、範囲、部分範囲及び分数などを表すすべての数は、たとえその用語が明示的に現れていなくても、「約」という語が頭に付いているかのように読むことができる。したがって、そうでないと示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。各数値パラメータは、少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の原則の適用を制限しようとするものではなく、報告された有効桁数を考慮して通常の四捨五入技術を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。本明細書にクローズド又はオープンエンドの数値範囲が記載されている場合、その数値範囲内の、又はその範囲に含まれる全ての数、値、量、百分率、部分範囲及び分数は、あたかもこれらの数、値、量、百分率、部分範囲及び端数がそれらの全体で明白に記載されていたかのように本出願の最初の開示に具体的に含まれ且つそれに属するものとして、考慮されるべきである。
【0079】
本発明の広範な範囲を記載する数値範囲及びパラメータは、近似値であるにもかかわらず、具体例に記載される数値は、可能な限り正確に記録されている。しかし、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0080】
本明細書で使用されるとき、他に示さない限り、複数形の用語はその単数形の対応物を包含することができ、他に示さない限り、逆もまた同様である。例えば、本明細書では、「単数の(a)」陽極酸化組成物、「単数の(a)」シーリング組成物、及び「単数の(a)」リチウム塩を参照しているが、これらの成分の組合せ(すなわち複数)を使用することができる。さらに、本出願において、「又は」の使用は、「及び/又は」がある特定の場合において明示的に使用され得るとしても、特に明記しない限り「及び/又は」を意味する。
【0081】
本明細書で使用されるとき、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、本出願の文脈において、「含む(comprising)」と同義であると理解され、したがって無制限であり、記載されていない及び/又は記述されていない追加の要素、材料、成分及び/又は方法の工程の存在を排除するものではない。本明細書で使用されるとき、「からなる(consisting of)」は、本出願の文脈において、いかなる特定されていない要素、成分及び/又は方法の工程の存在も排除すると理解される。本明細書で使用されるとき、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、本出願の文脈において、特定の要素、材料、成分及び/又は方法の工程、並びに記載されている「基本的及び新規の特性に実質的に影響を及ぼさないもの」を含むと理解される。
【0082】
本明細書で使用されるとき、用語「上に(on)」、「上に(onto)」、「に適用された(applied on)」、「に適用された(applied onto)」、「に形成された(formed on)」、「に堆積された(deposited on)」、「に堆積された(deposited onto)」は、表面上に形成され、オーバーレイされ、堆積され、及び/又は提供されることを意味するが、必ずしも表面と接触していることを意味しない。例えば、基材「上方に形成された(formed over)」コーティング層は、形成されたコーティング層と基材との間に配置された同一又は異なる組成の1つ以上の他の介在コーティング層の存在を排除しない。
【0083】
本明細書で他に開示されない限り、用語「実質的に含まない」は、特定の材料が存在しないことに関して使用される場合、そのような材料が、組成物、組成物含有浴、及び/又は組成物から形成されこれを含む層中に存在するならば、場合によっては、組成物、浴及び/又は層の総重量に基づいて、5ppm以下の微量で存在するだけである。本明細書で他に開示されない限り、用語「本質的に含まない」は、特定の材料が存在しないことに関して使用される場合、そのような材料が、組成物、組成物含有浴、及び/又は組成物から形成されこれを含む層中に存在するならば、場合によっては、組成物、浴及び/又は層の総重量に基づいて、1ppm以下の微量で存在するだけである。本明細書で他に開示されない限り、用語「完全に含まない」は、特定の材料が存在しないことに関して使用される場合、そのような材料が、組成物、組成物含有浴、及び/又は組成物から形成されこれを含む層中に存在するならば、組成物、組成物含有浴、及び/又は組成物から形成されこれを含む層には、存在しない(すなわち、組成物、組成物含有浴、及び/又は組成物から形成されこれを含む層は、そのような材料を0ppm含有する)。組成物、組成物含有浴、及び/又は組成物から形成されこれを含む層が、特定の材料を実質的に含まない、本質的に含まない、又は完全に含まない場合、これは、そのような材料がそこから除外されていることを意味する(ただし、例えば、処理ライン、都市水源、基材、及び装置の溶解における前処理浴からの持ち越しの結果としてその材料が存在し得ることを除く)。
【0084】
本明細書で使用されるとき、「塩」は、金属カチオン及び非金属アニオンからなり、全体の電荷がゼロであるイオン性化合物を指す。塩は水和されていてもよく、又は無水であってもよい。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「水性組成物」は、主に水を含む媒体の溶液又は分散液を指す。例えば、水性媒体は、媒体の総重量に基づいて、50重量%を超える、又は70重量%を超える、又は80重量%を超える、又は90重量%を超える、又は95重量%を超える量の水を含んでもよい。水性媒体は、例えば実質的に水からなってもよい。
【0086】
本明細書で使用されるとき、「シーリング組成物」は、基材表面の物理的及び/又は化学的性質を変化させるように、基材表面又は基材表面上に堆積された材料に影響を及ぼす組成物(例えば、溶液又は分散液であって、例えば、その組成物は腐食防止をもたらす)を指す。
【0087】
本明細書で使用されるとき、「酸化剤」という用語は、シーリング組成物の成分に関して用いられるとき、シーリング組成物及び/又はシーリング組成物中に存在する金属錯化剤のうちの少なくとも1つを酸化することができる化学物質を指す。「酸化剤」に関して本明細書で使用されるとき、「酸化することができる」という語句は、基材又はシーリング組成物中に存在する原子又は分子から電子を除去することができ、場合によっては、それによって電子の数を減らすことができることを意味する。
【0088】
本明細書で使用されるとき、用語「IA族金属」は、例えば、Handbook of Chemistry and Physics 第63版(1983年)に示されているように、元素周期表のCAS版の第IA族にある元素を指し、実際のIUPAC番号付けの1族に対応する。
【0089】
本明細書で使用されるとき、用語「IA族金属化合物」は、元素周期律表のCAS版のIA族にある少なくとも1つの元素を含む化合物を指す。
【0090】
本明細書で使用されるとき、用語「VB族金属」は、例えば、Handbook of Chemistry and Physics 第63版(1983年)に示されているように、元素周期表のCAS版の第VB族にある元素を指し、実際のIUPAC番号付けの5族に対応する。
【0091】
本明細書で使用されるとき、用語「VB族金属化合物」は、元素周期表のCAS版の第VB族にある少なくとも1つの元素を含む化合物を指す。
【0092】
本明細書で使用されるとき、用語「VIB族金属」は、例えば、Handbook of Chemistry and Physics 第63版(1983年)に示されているように、元素周期表のCAS版の第VIB族にある元素を指し、実際のIUPAC番号付けの6族に対応する。
【0093】
本明細書で使用されるとき、用語「VIB族金属化合物」は、元素周期表のCAS版の第VIB族にある少なくとも1つの元素を含む化合物を指す。
【0094】
本明細書で使用されるとき、用語「ハロゲン化物」は、少なくとも1つのハロゲンを含む化合物を指す。
【0095】
本明細書で使用されるとき、用語「ハロゲン化物」は、少なくとも1つのハロゲンを含む化合物を指す。
【0096】
本明細書で使用されるとき、用語「アルミニウム」は、基材に関して使用される場合、アルミニウム及び/若しくはアルミニウム合金からなる、又はそれを含む基材、並びにクラッドアルミニウム基材を指す。
【0097】
孔食(pitting corrosion)は、局部的な腐食の形成であり、それによって空洞又は穴が基材に生成される。本明細書で使用される「ピット」という用語は、孔食に起因するそのような空洞又は穴を指し、(1)試験パネル表面に対して垂直に見たときの丸みを帯びた、細長い又は不規則な外観、(2)ピッティング空洞から発生する「コメットテール」、線、又は「ハロー」(すなわち、表面変色)、及び(3)ピットの内部又はピットのすぐ周囲の腐食副生成物(例えば、白色、灰色又は黒色の粒状、粉末状又は非晶質の物質)の存在、によって特徴づけられる。観察された表面の空洞又は穴が腐食ピットとみなされるためには、上記の特性のうち少なくとも2つを示さなければならない。これらの特性のうち1つのみを示す表面空洞又は穴は、腐食ピットとして分類される前に追加の分析を必要とする可能性がある。10倍の倍率の顕微鏡を用いた目視検査は、腐食副生成物が肉眼で見えない場合に腐食副生成物の存在を決定するために使用される。本明細書で使用されるとき、「暗い領域」(“dark area”)の腐食は、基材表面の所与の領域にわたって生じる均一な腐食を指す。
【0098】
本明細書で他に開示されない限り、本明細書で使用されるとき、用語「総組成物重量」、「組成物の総重量」又は類似の用語は、任意の担体及び溶媒を含むそれぞれの組成物中に存在する全成分の総重量をいう。
【0099】
前述の説明に鑑みて、本発明は、特に、それに限定されるものではないが、以下の態様1~22に関する。
【0100】
<態様>
1.基材を処理する方法であって、基材表面の少なくとも一部を、pH9.5~12.5を有し且つリチウム金属カチオンを含むシーリング組成物と接触させる工程を含み、当該接触工程の前に、基材表面の少なくとも一部が陽極酸化される、基材を処理する方法。
【0101】
2.リチウム金属カチオンが、リチウム塩として存在する、態様1に記載の方法。
【0102】
3.リチウム金属カチオンが、シーリング組成物の総重量に基づいて(金属カチオンとして)、5ppm~5500ppmの量でシーリング組成物中に存在する、態様1又は2に記載の方法。
【0103】
4.シーリング組成物が、炭酸アニオン、水酸化アニオン、又はそれらの組合せをさらに含む、前記態様のいずれかに記載の方法。
【0104】
5.シーリング組成物が、リチウム以外のIA族金属カチオン、VB族金属カチオン、VIB族金属カチオン、腐食防止剤、インジケータ化合物、又はそれらの組合せをさらに含む、前記態様のいずれかにに記載の方法。
【0105】
6.シーリング組成物が、フッ化物、コバルト、バナジウム、及び/又はカルシウムを実質的に含まない、前記態様のいずれかに記載の方法。
【0106】
7.前記態様のいずれかに記載の方法であって、基材表面の少なくとも一部を、90℃超の温度を有する水性組成物と接触させる工程をさらに含み、当該水性組成物との接触工程がシーリング組成物との接触工程の後に起こる、方法。
【0107】
8.水性溶液を接触させる工程が、5分~45分間である、態様7に記載の方法。
【0108】
9.水性組成物が、pH5~7を有する、態様7又は8に記載の方法。
【0109】
10.水性組成物が、20μS/cm未満の導電率を有する、態様7~9のいずれかに記載の方法。
【0110】
11.シーリング組成物と接触させる工程の後で、次の組成物と接触させる工程の前に、基材表面を乾燥させない、前記態様のいずれかに記載の方法。
【0111】
12.シーリング組成物と接触させる工程の後で、次の組成物と接触させる工程の前に、基材表面を乾燥させる、態様1~10のいずれかに記載の方法。
【0112】
13.基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、又はそれらの組合せを含む、前記態様のいずれかに記載の方法。
【0113】
14.基材が、1重量%~10重量%の量の銅を含むアルミニウム合金を含む、前記態様のいずれかに記載の方法。
【0114】
15.前記態様のいずれかに記載の方法により得られる基材。
【0115】
16.金属基材を処理するシステムであって、
pH9.5~12.5を有し、且つリチウム金属カチオンを含むシーリング組成物と、コンディショナーを含む水性組成物とを含み、
当該基材の表面の少なくとも一部は陽極酸化されている、
システム。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
17.水性組成物が、シーリング組成物と接触した後に表面の少なくとも一部と接触するためのものである、態様16に記載のシステム。
【0120】
18.態様16又は17のシステムで処理することによって得られる基材。
【0121】
19.ASTMB117に従って操作される中性塩スプレーキャビネット内での3日間の暴露の後で、前記シーリング組成物で処理された基材は、シーリング組成物で処理されなかった基材と比較して、基材表面上のピットの数が少なくとも50%減少している、態様15又は18に記載の基材。
【0122】
20.シーリング組成物で処理された基材が、暗い領域を欠いている、態様15又は18に記載の基材。
【0123】
21.プライマー層をさらに含む、態様15又は18~20のいずれかに記載の基材。
【0124】
22.トップコート層をさらに含む、態様15又は18~21のいずれかに記載の基材。
【0125】
本発明の特定の特徴は例示の目的で上記に記載されているが、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示されるコーティング組成物、コーティング、及び方法の詳細の多数の変形がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。
【0126】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明をそれらの詳細に限定するものとみなすべきではない。実施例中及び本明細書全体を通して、すべての部及び百分率は、他に指示がない限り重量による。
【実施例
【0127】
[例1]
例A-洗浄剤組成物:
洗浄剤例Aの溶液を調製するために使用した成分を表2に示す。水酸化ナトリウム及びリン酸ナトリウムを、撹拌プレート(VWR、7×7 CER HOT/STIR)を用いて穏やかに機械的に撹拌しながら脱イオン水中に完全に溶解させた。溶解したら、次に、PVPを溶解するまで撹拌し、次いでアラントインを添加し、溶解するまで撹拌し、次いでDMTDを添加し、溶解するまで撹拌した。DMTDが完全に溶解した後、Carbowet GA100を上記のように穏やかな機械的撹拌下で撹拌した。
【表2】
【0128】
例B-リチウムシーリング組成物:
例Bのシーリング溶液を、3.07gの炭酸リチウムを1,996.93gの脱イオン水中に穏やかに撹拌しながら上記のような撹拌プレートを用いて溶解することによって調製した。その結果、組成物の全重量に基づいて0.15重量%の炭酸リチウム濃度であり、11.2~11.3のpHを有する溶液が得られた。
【0129】
[比較例(リチウムシール組成物のみ)]:
3インチ×5インチ×0.032インチの大きさのアルミニウム2024T3裸基材をメチルエチルケトン(100%)及び使い捨て布で手拭きし、化学洗浄の前に風乾した。パネルを、例Aの洗浄剤溶液に、周囲温度で3.5分間断続的に撹拌しながら浸漬した。次いで、パネルを、2回続けて脱イオン水のリンスに、各2分間、両方とも周囲温度で断続的に撹拌しながら、浸漬した。2回目のリンスの後、パネルはカスケード脱イオン水リンスを10秒間受けた。次いで、パネルを、例Bのシーリング組成物に周囲温度で2分間断続的に攪拌しながら浸漬した。試験前に、パネルを周囲条件で一晩風乾した。
【0130】
パネルを、ASTM B117に従って操作した中性塩スプレーキャビネット内に7日間暴露した。腐食性能を、パネル上の肉眼で見えるピットの数を数えることによって評価した。データを表3に報告する。
【0131】
[実験例(陽極酸化パネル+リチウムシール組成物)]:
3インチ×10インチ×0.032インチのAl 2024-T3のパネルの両面を、毛羽立ちのないペーパータオルを用いて、表面にグリース及び油が付着しなくなるまで、メチルエチルケトンで溶媒拭き取りした。次いで、パネルを、Turco 4215 NCLT洗浄剤(製造者の指示に従って調製した)(Telco Industries、西オーストラリア州Keaddelから入手可能)を含む浴に10分間浸漬した。次に、パネルを、脱イオン水のスプレーリンスを用いて2分間すすぎ、続いて脱イオン水の浸漬リンスを用いて2分間すすいだ。次いで、パネルを、Amchem 7/17脱酸素剤(製造元の指示に従って調製)(Henkel Technologies、Madison Heights、MIから入手可能)を用いて5分間脱酸素した。次に、パネルを、スプレーリンスを用いて2分間リンスし、続いて2回目の浸漬リンスを2分間行った。次いで、パネルを独自の陽極酸化タンクに浸し、30分間陽極酸化した。次に、パネルを脱イオン水中に2分間浸漬し、続いて2回目の脱イオン水で2分間すすいだ。次いで、撹拌プレートを用いて穏やかに撹拌しながら炭酸リチウムを脱イオン水中に溶解することにより調製した例Bのシーリング組成物に金属基材を浸漬した。シーリング組成物を10分間110°Fに加熱した。試験前に、パネルを周囲条件で風乾させた。
【0132】
パネルを、ASTM B117に従って操作した中性塩スプレーキャビネット内に7日間暴露した。腐食性能を、表3に示された評価尺度を用いて評価した。データを表4に報告する。
【表3】

【表4】
【0133】
表4に示すデータは、陽極酸化基材を、本発明のリチウム含有シーリング組成物と接触させることにより、処理された基材を、ASTM B117に従って操作した中性塩スプレーキャビネット内に7日間暴露した後の塩スプレー評価が8であったこと、を実証している。リチウム含有シールを有する陽極酸化基材は、リチウムシール組成物で処理された陽極酸化していないパネルと比較して、著しく改善された耐食性を示した。
【0134】
[例2]
76枚の120×80×0.8 mmの2024T3のパネルを、15g/LのChemkleen 190及び1g/LのChemkleen 171(フランス国、MarlyのPPGから入手可能)を含有するアルカリ水溶液中に、60℃の温度で5分間浸漬することによって洗浄した。次に、パネルを、35℃の脱イオン水で5分間すすいだ。次いで、パネルを、溶液(60%体積のSOCOSURF A1858及び10%体積のAl806(テキサス州フォートワースのSocomoreから入手可能)を含み、残部は脱イオン水である)に浸漬することによって、50℃で約10分間エッチングした。
パネルを、室温(25℃)の脱イオン水で5分間すすいだ。
【0135】
次いで、洗浄したパネルを、80g/Lの硫酸と40g/Lの酒石酸とを含む陽極酸化浴(浴の温度は37℃、電圧は14±1V、電流密度は0.6~0.8A/dm2の範囲内)に25分間浸漬し、2~5ミクロンの厚さを有する酸化物層を達成した。
【0136】
次に、パネルのいくつかを、アルカリ性シーリング組成物浴(LiCOを脱イオン水に添加し、溶解するまで撹拌することによって調製された、シーリング組成物の総重量に基づいて0.1~1重量%のLiCOを含有する)に浸漬した(以下の表5~表8に詳述されるように)。浴の温度は10℃から70℃まで変化させ、浸漬時間は20から60分まで変化させた(以下の表5~表8を参照)。次いで、パネルを、清浄な環境中において室温(23℃)で10分間乾燥させた。
【0137】
一旦乾燥したら、次いで、パネルのいくつかを、80℃から沸点までの温度を有する水性浴中に10~60分間浸漬した(以下の表5、7、及び8に詳述されるように)。その沸騰水は、90℃を超える温度、5.5~6.5のpH、及び20μS/cm未満の導電率を有していた。
【0138】
比較パネルを上記のようにして洗浄し、次いで、先の段落に記載の水性浴中に浸漬した。
【0139】
腐食性能は、ISO9227に従って評価した。ピットを数え、1回のランにつき4枚のパネルの平均として報告する。
【表5】
【0140】
表5に示される結果は、基材表面を本発明のリチウム含有シーリング組成物で処理することと、シーリングされた基材を沸騰水で処理することとの組合せによって、シーリング組成物で処理されていない基材、又はシーリング組成物の適用後に沸騰水で処理されていない基材と比較して、基材表面上のピットの数が減少したことを実証している。
【表6】
【0141】
表6に報告されたパネルは、シーリング組成物による処理後に水性媒体中への浸漬を受けなかった。表6に示す結果は、腐食性能の改善が、リチウムシーリング組成物中への浸漬時間及びリチウムシーリング組成物の温度に依存すること、を実証している。具体的には、50℃~70℃の温度で30分~60分間、リチウムシール組成物中に浸漬したパネル上において、最小数のピットが見られた。
【表7】
【0142】
これらのデータは、浸漬時間、浴温、及びリチウム含有シーリング組成物の濃度の相互関係を実証している。表7に示す結果は、10℃~50℃の温度に維持された本発明のシーリング組成物中へのパネルの浸漬により、その後、90℃の水にさらされても腐食性能に影響を及ぼさなかったこと、を実証している。25℃では、腐食性能のためにシーリング組成物中に最低20分の浸漬が必要とされた。1%リチウムシーリング組成物は許容できないレベルの孔食(pitting)をもたらしたが、0.1%及び0.5%リチウムシーリング組成物は許容可能であった。
【表8】
【0143】
表8に示す結果は、水性リンスを少なくとも90℃の温度に維持してパネルを20分以上浸漬したときに、最適な結果が達成されたことを実証している。30分では、浸漬時間及び水性浴の温度は、性能に影響を及ぼさなかった。
【0144】
[例3]
最初に、2024T3圧延アルミニウムパネルに、米国カリフォルニア州ガーデンカリフォルニアのValence-Coast Platingで、Airbus AIPS 02-01-003規格に従って、TSA加工を施した。試験パネルは10インチ×4インチであった。
【0145】
次に、陽極酸化パネルを、1500ppmのLiCO+176ppmのNaMoO・2HO、又は1500ppmのLiCO+176ppmのNaVOを含有する、アルカリ性溶液又はアルカリ性遷移金属溶液のいずれかに浸漬した。浴の温度は120°Fであり、浸漬時間は10分であった。そのパネルを、清浄な環境において室温で10分間乾燥させた。
【0146】
図4に示す結果は、シーリング組成物中にVB族又はVIB族金属カチオンのいずれかを含ませることが、VB族又はVIB族金属カチオンを含まないシーリング組成物と比較して、腐食性能の改善をもたらしたことを実証している。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4