(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ロータリエンコーダのキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20220907BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G01D5/245 110J
G01D5/244 B
(21)【出願番号】P 2021076456
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2018502802の分割
【原出願日】2016-07-22
【審査請求日】2021-05-26
(32)【優先日】2015-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516263638
【氏名又は名称】シーエムアール サージカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CMR SURGICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,キース
(72)【発明者】
【氏名】ローチ,クリストファー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ポール クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ランドル,スティーブン ジェイムズ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-038921(JP,A)
【文献】特開2011-169699(JP,A)
【文献】特開昭64-015610(JP,A)
【文献】特開昭48-042781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0174499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式エンコーダの設備および相対的位置測定システムを備え、回転軸回りの第1部と第2部の相対回転位置を感知するための装置のキャリブレーション方法であって、
前記方法が、処理ユニットで前記機械式エンコーダの設備の出力を受信する工程を含み、前記機械式エンコーダの設備は前記第1部に固定された第1トラック上および前記第2部に固定された第2トラック上を移動するよう制約を受けた従動子を含んでおり、前記第1トラックが直線状である一方、前記第2トラックが複数の円弧および前記円弧のひとつを別のひとつに連結する少なくともひとつの移行部を含んでおり、該第1トラックおよび該第2トラックが、該第1部および該第2部の相対回転を前記従動子の直線的移動に変換するように配置されており、前記第1トラックにおいて前記従動子の位置を感知するための第一のセンサを更に有しており、
前記機械式エンコーダの設備の出力が、前記従動子が前記複数の円弧のどこにあるかを示し、
前記処理ユニットが前記第1部を前記機械
式エンコーダの設備の出力に合わせて選択された方向に回転させることにより前記少なくともひとつの移行部を前記従動子に向かって移動させる工程と、
前記処理ユニットが前記機械式エンコーダの設備の出力の変化を感知すると前記相対的位置測定システムによって感知された変化の数
のカウントを再設定する工程を含み、前記相対的位置測定システムは、前記第1部に固定された円盤またはホイールおよび前記第2部に固定された第二のセンサからなり、該第二のセンサは、前記円盤またはホイールが該第二のセンサを通り過ぎる時の該円盤またはホイールの
変化を感知するようになっている
ことを特徴とする該方法。
【請求項2】
前記機械
式エンコーダの設備の出力が、前記従動子が前記複数の円弧の第一の円弧にあることを示すと、前記処理ユニットは前記第1部を第一方向に回転させ、前記機械
式エンコーダの設備の出力が、前記従動子が前記複数の円弧の第二の円弧にあることを示すと、前記処理ユニットは前記第1部を第二方向に回転させ、前記第一方向,第二方向はそれぞれ時計回りと反時計回りの何れかである請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された方向が前記第一方向,第二方向の具体的な一方である時、前記機械式エンコーダの設備の出力で第一の
変化を探知したことに応じて前記第1部を前記前記第一方向,第二方向の他方に回転させ、
前記カウントの再設定が、前記機械式エンコーダの設備の出力で第二の
変化を探知したことに応じて行われる請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一のセンサがシングルビット出力のスイッチである請求項1~
3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第二のセンサが
変化を探知したとき、前記カウントが増減する請求項1~
4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記円盤またはホイールが、互い違いに並べられた磁極の一組が周囲に設けられているリングからなり、前記第二のセンサは、磁極が該第二のセンサを通り過ぎる時の磁極的変化を感知するようになっている磁気センサである請求項1~
5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1部を前記選択された方向に回転させることが、前記第1部を駆動するための駆動ユニットに前記第1部を前記選択された方向に回転させる信号を送ることによって行われる請求項1~
6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1部を前記選択された方向に回転させることが、前記カウントを再設定するための信号に応えて行われる請求項1~
7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2トラックは略うずまき状であり、各前記円弧が前記回転軸回りで一定の半径を有しており、前記第1トラックが該回転軸に直交する請求項1~
8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記円弧がそれぞれ互いに異なる半径を有しており、および/または、すべての前記円弧が前記回転軸に直交するひとつの平面内に存在する請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2トラックが略螺旋状であり、各前記円弧が前記回転軸に対して直交するひとつの平面内に存在し、前記第1トラックが該回転軸に対して平行である請求項1~
8の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
すべての前記円弧が同じ半径を有し、および/または、各前記円弧が前記回転軸に直交する互いに異なる平面内に存在する請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
各前記円弧が円の270°より大きい範囲に亘る請求項1~1
2の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1トラックおよび前記第2トラックが溝によって形成されており、前記従動子が両方の溝に配置される硬質の直線状エレメントを含む請求項1~1
3の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記装置がロボットアームのジョイント回りの回転を感知するために配置されており、前記ジョイントが、該ジョイントの両側にある前記ロボットアームの肢部に対して縦方向に回転軸が延びるように配置されている回転ジョイントである請求項1~1
4の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロボットジョイントにおける回転位置を感知するためのロータリエンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリエンコーダは、シャフト等の回転可能エレメントの位置を感知するために広く用いられている。適用例は、ロボットアームジョイント、自動車の駆動シャフト、および操縦ハンドルもしくは操作つまみを含む。
【0003】
位置センサの一般に知られている型のひとつは、ホール効果磁気センサである。このセンサはリングを有し、リングの周囲には互い違いに並べられた磁極の一組が設けられている。センサはリングと作用し合うようになっており、感知したい回転が起こる時に磁極がセンサを通り過ぎるように、センサが配置されている。例えば、リングはシャフト周りに取り付けられてもよいし、センサは回転するシャフトを収めるハウジングに取り付けられてもよい。磁極がセンサを通り過ぎる時の磁極的変化を、センサは探知する。磁極的変化の回数をカウントすることによって、基準位置を始点とする回転量が感知され得る。回転方向を感知するために、上記のようなリングとセンサが二対設けられ得る。そして、一方のセンサがリングの磁性変化を探知する位置から外れた回転位置において、他方のセンサがリングの磁性変化を探知するように、それら二対のリングとセンサは配置され得る。各センサによって探知される変化の相対的タイミングを検討することによって、回転方向が感知され得る。
【0004】
同じ特性を他の形態の二状態回転感知装置から得ることができる。例えば、回転する円盤上の黒から白への変化を感知する光学性センサや、センサを通り過ぎて回転する歯付きホイールの歯の有無を探知する渦電流センサであってもよい。
【0005】
上記方法を改良して、センサに対する磁極の相対的位置をマルチビット精度まで計測する。また、360°の範囲内のシャフトの各位置がセンサからの出力の特有の組み合わせに関連付けられるように、磁極のリングを配置する。これは、リング毎に異なる数の磁極を設け、リングの磁極数を互いに素にすることによって実現できる。この性質のセンサの問題点は、相対的位置しか探知できず、あるいは、もし絶対的位置を探知できる場合でも、360°の範囲内に限られる点である。センサによって探知される状態は、シャフトの完全回転数とは関わりがない。これはいくつかの用途には重要でないが、他の用途については、絶対的位置の測定を行うために段階を追加する必要がある。絶対的位置が重要である場合の用途の一例はロボット工学における適用である。一部のロボットジョイントは、360°を越えて回転することが可能であり、ロボットの作動時に、基準位置を始点として何回転したかを知ることは重要である。その情報は、ジョイントをひとつの方向に動かし過ぎた結果生じる内ケーブルの過度の捩れを防ぎ、また、もしロボットが手順の途中で再設定された場合、再設定時点でロボットが保持している部分が、初期状態に復元され得ることを再保証するために必要になる可能性がある。いくつかの用途において、動作を感知されているシャフトは、所定の回数の回転後のシャフトの動作を制限する別の機構に連結される。この状況において、限界に達するまでシャフトを回転させてから、エンコーダのカウントを再設定することによって、エンコーダのキャリブレーションを行うのが一般的である。そして、シャフトが限界にある時から探知される変化のネットワーク番号のカウントが維持され得る。そのカウントは、回転方向によって増減される。シャフトが限界にある時からの完全回転数は、そのカウントを完全回転において予測される変化の数で割ることによって、確定され得る。これについてのひとつの問題点は、キャリブレーションを行うためには、シャフトが限界まで回転させられなければならないことである。例えば、器具の大量の回転によって損傷するかもしれない物体に挿入された器具をシャフトが保持している場合など、状況によっては、これは望ましくない可能性がある。
【0006】
回転物体の位置の感知を可能にする、改善された方法、もしくは別の方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、機械式エンコーダの設備および相対的位置測定システムを備え、回転軸回り
の第1部と第2部の相対回転位置を感知するための装置のキャリブレーション方法であっ
て、前記方法が、処理ユニットで前記機械式エンコーダの設備の出力を受信する工程を含
み、前記機械式エンコーダの設備は前記第1部に固定された第1トラック上および前記第
2部に固定された第2トラック上を移動するよう制約を受けた従動子を含んでおり、前記
第1トラックが直線状である一方、前記第2トラックが複数の円弧および前記円弧のひと
つを別のひとつに連結する少なくともひとつの移行部を含んでおり、該第1トラックおよ
び該第2トラックが、該第1部および該第2部の相対回転を前記従動子の直線的移動に変
換するように配置されており、前記第1トラックにおいて前記従動子の位置を感知するた
めの第一のセンサを更に有しており、前記処理ユニットが前記第1部を前記機械式位置エ
ンコーダの設備の出力に合わせて選択された方向に回転させることにより前記少なくとも
ひとつの移行部を前記従動子に向かって移動させる工程と、前記処理ユニットが前記機械
式エンコーダの設備の出力の変化を感知すると前記相対的位置測定システムによって感知
された変化の数を再設定する工程を含み、前記相対的位置測定システムは、前記第1部に
固定された円盤またはホイールおよび前記第2部に固定された第二のセンサからなり、該
第二のセンサは、前記円盤またはホイールが該第二のセンサを通り過ぎる時の該円盤また
はホイールの移行を感知するようになっていることを特徴とする該方法である。
【0008】
前記第2トラックは略うずまき状になっていてもよい。各前記円弧が前記回転軸回りで一定の半径を有してもよい。前記第1トラックが該回転軸に直交するようになっていてもよい。
【0009】
前記円弧がそれぞれ互いに異なる半径を有してもよい。
【0010】
前記円弧がすべて、前記回転軸に直交するひとつの平面内に存在してもよい。
【0011】
前記第2トラックが略螺旋状になっていてもよい。各前記円弧が前記回転軸に対して直交するひとつの平面内に存在してもよい。前記第1トラックが該回転軸に対して平行になっていてもよい。
【0012】
すべての前記円弧が同じ半径を有していてもよい。
【0013】
前記回転軸に直交する、互いに異なる平面内に各前記円弧が存在してもよい。
【0014】
各前記円弧が円の270°より大きい範囲に亘っていてもよい。
【0015】
前記装置が、前記第1トラックにおいて前記従動子の位置を感知するためのセンサを更に有してもよい。
【0016】
前記センサがシングルビット出力のスイッチであってもよい。
【0017】
前記装置が、前記回転軸回りで、360°未満の範囲に亘る前記第1部および前記第2部の絶対的あるいは相対的回転位置を感知するための第2の感知機構を含んでもよい。
【0018】
前記第2の感知機構が磁気感知機構であってもよい。
【0019】
前記第1トラックおよび前記第2トラックが溝によって形成されてもよい。前記従動子が両方の溝に配置されてもよい。
【0020】
前記従動子が、前記両方の溝に配置される硬質の直線状エレメントを含んでもよい。
【0021】
前記第2トラックが、径方向外側に開口していて、前記円弧のうち最外周の円弧に連通している通路を有していてもよい。その通路によって従動子が該第2トラックの前記最外周の円弧に導かれ得るようになっている。
【0022】
本発明の第二の態様は、上記の装置を含むロボットアームである。前記装置が前記アームのジョイント回りの回転を感知するために配置されていてもよい。前記ジョイントが、該ジョイントの両側にある該アームの肢部に対して縦方向に回転軸が延びるように配置されている回転ジョイントであってもよい。
【0023】
以下、本発明を、例示としての図面を参照しつつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】位置エンコーダ機構を備えたシャフトの全体図。
【
図2】
図1の円盤5の周辺部の部分図であり、位置エンコーダの略うずまき状トラックを詳細に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
下記の設備において、2つの物体の相対的回転位置のためのエンコーダは、全回転における相対的回転位置を絶対判定することができる。(絶対判定とは、例えば、相対的回転位置が基準配置内にあった時から動作量を計上する必要性なしに、位置がセンサの出力から直接判定できることを意味する)。絶対判定は、好適には360°を超える範囲に及ぶ。これは、(a)回転軸周りの略うずまき状または略螺旋状通路、および、(b)回転軸に沿っている、または回転軸を横断する直線状通路を通るという制約を受けた従動子によって実現される。うずまき状または螺旋状の通路の大部分は円形である。それゆえ、2つの物体の相対的回転移動の大部分に関して、直線状通路に沿う従動子の動きはない。
【0026】
図1において、位置エンコーダを備えたシャフト1が示されている。位置エンコーダは、シャフトの移動、その移動方向、および限界位置を始点とするシャフト回転の絶対数を探知することができる。
【0027】
シャフト1は、回転軸2回りを回転するようになっている。3つの円盤3,4,5がシャフト1に対して一緒に回転するように取り付けられている。なお、円盤3および4は回転位置の磁気的エンコーディングを可能にする。円盤5は回転位置の機械式エンコーディングを可能にする。
【0028】
円盤3および4は、複数の磁極6を形成する一定数の永久磁石を保持している。各円盤3,4上において、シャフト1の回転軸2を軸とする円上に磁極6が配置されている。各円盤3,4上では、磁極6が形成する円の周りで、磁極6は、N極とS極が交互に感知表面7,8に露出するように配置されている。磁気センサ9,10は、感知表面7,8に隣接して配置されており、磁極6のリングに沿っている。磁気センサ9,10は、例えばシャフト1のハウジングに固定されることによって、シャフト1が回転する対象のボデーに固定されている。結果として、シャフト1が回転すると、円盤3,4も回転し、磁極6のリングがセンサ9,10を通り過ぎて回転する。センサ9,10は、磁極6のリングにおけるN極とS極の間の切替わり部分がセンサ9,10を通り過ぎる時に、その切替わりを探知することができる。センサ9,10は例えばホール効果センサや、リードセンサ、磁気抵抗センサ、誘導性センサであってもよい。相対的位置を感知するために、N極からS極への切替わり部分がセンサ9,10を通り過ぎる時に、センサ9,10の出力がハイからローになるように、そして、S極からN極への切替わり部分がセンサ9,10を通り過ぎる時に、センサ9,10の出力がローからハイになるように各センサ9,10が配置されている。360°の範囲内で絶対的位置を感知するために、各センサ9,10は、それに対して隣り合っている磁極6の相対的位置を表すマルチビット出力を提供するように配置されている。そして、360°の範囲内のシャフト1の各位置が、センサ9,10からの出力の特有の組み合わせと関連付けられるように、磁極6のリングが配置されている。これは、各リングに異なる数の磁極6を設け、それらリングにおける磁極6の数が互いに素になるようにすることによって、達成可能である。センサ9,10からの出力は処理ユニット11に伝達される。
【0029】
センサ9によって感知される円盤3上の磁極6間の切替わりが、センサ10によって感知される円盤4上の磁極6間の切替わりとは別のシャフト回転位置で起こるように、センサ9,10の周方向位置および軸2回りの円盤3,4の回転位置が選択されている。これによって、各センサ9,10により感知される相対的ハイ/ローの順序およびハイ/ローの変化から、シャフト1の回転方向が推測され得る。リングとセンサ9,10によって、シャフト1の相対的位置が決定され得る。
【0030】
円盤3,4周りの磁極6の数は、用途に合わせて選択され得るが、例えば、約30~40組のN極とS極の対であってもよい。上記の技術を利用して360°の範囲内において絶対的位置を感知するために、リング上の組数は互いに素であるべきである。
【0031】
円盤5を含む機械式エンコーダについて説明する。
【0032】
円盤5はシャフト1に固定され、シャフト1とともに回転する。円盤5は、シャフト1の方向に沿って幅を持つ一連の構造体20を含む。これら構造体20は、円盤5の平面において、即ちシャフト1の軸に直交する平面において、略うずまき状通路21を形成する。従動子30は、構造体20によって径方向(シャフト1の軸に直交する方向)に導かれ、シャフト1の回転によって従動子30が径方向に移動できる。下記に示すように、従動子30の径方向位置を探知することが可能であり、基準位置を始点とする完全回転におけるシャフト1の絶対的位置が確定される。
【0033】
詳細には、円盤5は、軸方向に、即ちシャフト1の軸2に沿って延びる突条構造体20を有する。突条20は、それらの間に略うずまき状溝部21を形成するように構成されている。その通路の大部分について、例えば
図2において22と23で示されるように、うずまき状溝部21は、回転軸2回りで一定の半径を有する。領域22は第1の半径を有し、領域22の内にある領域23は、第1の半径より小さい第2の半径を有する。移行領域24において、突条20は25に示されるように、第1の半径と第2の半径の間の溝部21の半径の滑らかな変化を実現するように構成されている。溝部21の内側トラック23は境界壁26において終端する。溝部21の外側トラック22は、径方向外側に延びて円盤5の外周に開口する径方向通路27において終端する。
【0034】
機械式感知装置28は、円盤5の近くに配置される。機械式感知装置28は、例えばシャフト1のハウジングに固定されることによって、シャフト1が回転する対象のボデーに固定されている。結果として、シャフト1が回転すると、シャフト1に固定されている円盤5も、感知装置28を通り過ぎて回転する。感知装置28はトラック29を有し、従動子30はトラック29の中で移動する制約を受けている。トラック29は軸2に直交するように方向づけられている。従動子30は軸2に沿って延びるピンである。ピンは、溝部21およびトラック29の中でぴったり沿って動く。ピンの向きの軸2に対する平衡状態が、例えば(
図2においてD字形で示されている)ピンの平頭部31を拘束して、軸2に直交する軸回りの頭部31の回転を防ぐことによって維持されるように、機械式感知装置28が配置される。
【0035】
円盤5の回転時に、溝部21内の従動子30の径方向位置が溝部21内の移動によって制限されるように、トラック29、溝部21、および従動子30が相互作用している。一定の断面を有する溝部22,23の領域の一方がトラック29に沿うように配置されている時、従動子30がトラック29内で移動しなくても、円盤5は回転可能である。従動子30は、溝部22に沿うように配置されている径方向外側の位置と、溝部23に沿うように配置されている径方向内側の位置のいずれかに留まるだろう。移行領域24がトラック29を通過して回転するようにシャフト1が回転する時、従動子30は、(
図2の視点でシャフト1が反時計回り回転の場合)径方向内側の位置から径方向外側の位置に、あるいは(
図2の視点でシャフト1が時計回り回転の場合)径方向外側の位置から径方向内側の位置に押しやられる。
【0036】
マイクロスイッチ32は、従動子30が径方向外側の位置にある時に探知するように、即ち溝部22に沿うように配置されている。マイクロスイッチ32の出力は、機械式感知装置28の出力を形成し、処理ユニット11に送られる。トラック29における従動子30の径方向位置は、他の方法によって探知できる。例えば、その存在は径方向外側の位置ではなく、径方向内側の位置で探知され得る。そして、探知器は、シングルビット(オン/オフ)スイッチ(例えば、機械式スイッチや、磁気スイッチ、光学性スイッチ)であってもよいし、トラック29の長さに沿った位置をより詳細に示すものであってもよい。センサ28の出力は、基準点を始点とするシャフトの回転数を示す絶対的位置信号である。
【0037】
センサ9,10,28の出力は処理ユニット11に送られる。処理ユニット11はプロセッサ装置40を含む。プロセッサ装置40は、ハードコードされてセンサ9,10,28からの信号を解釈するものでもよいし、メモリ41に非過渡的に保存されたソフトウェアコードを実行するように構成されているメインプロセッサであってもよい。プロセッサ装置40は、センサからの信号を組み合わせて、42にて一体化された出力信号を形成する。
【0038】
センサからのデータは、多数の方法でプロセッサ装置40によって使用されてもよい。
【0039】
1.機械式エンコーダの設備5,28は、(単体もしくは、円盤およびセンサ3,4,9,10を備える他の位置エンコーダと組み合わせて)実行可能であり、基準位置を始点とするシャフト1の完全回転数を表す単純な出力を提供する。基準位置を通路21の端部26に設定すると、マイクロスイッチ32によって従動子30の回転が探知されないと0回転が示され、探知されると1回転が示される。
【0040】
2.機械式エンコーダの設備5,28は、基準位置を示し、相対的位置のカウントを相対的位置測定システムと関連付けて再設定するために使用され得る。そのカウントを再設定することが望まれる時は、機械式位置エンコーダの出力を把握する。その時、シャフト1はその出力に合わせて選択された方向に回転し、移行領域24が従動子30に向かって移動する。
図2に関して、機械式位置エンコーダの出力が、従動子30が外側トラック領域22内にあることを示すと、シャフト1は時計回りに回転する。機械式位置エンコーダの出力が、従動子30が内側トラック領域23内にあることを示すと、シャフト1は反時計回りに回転する。カウントを再設定するための信号に応えて、この判定が処理ユニット11によって行われ、シャフト1を適切な方向に駆動する駆動ユニット(例えばモータ)に対して信号が送られる。処理ユニット11が次に機械式位置エンコーダの出力の変化を探知する時、移行領域24とセンサ28の位置が揃っていることがわかる。この点でカウントは再設定され得る。この方法には、シャフト1を末端位置に移動させる必要性がなくなり、カウントが、先に決定された基準位置を始点とするシャフト1の回転位置と回転数の両方がわかる位置に再設定されるという利点がある。従動子30が移行領域24内にある場合に機械式スイッチの出力が変化する時の、シャフト1の正確な回転位置は、シャフト1の回転方向次第で異なる可能性がある。この場合、上記と同じ手順に従うことができるが、センサ28からの出力の変化が探知された場合のシャフトの一方向において、シャフトはそれから反対方向に回転させられる。それに続く変化は、カウントの再設定を示すために利用される。
【0041】
3.上述の例において、円盤とセンサ3,4,9,10は、相対的位置を感知できる。他の設備において、それらは、シャフトの360°回転内の絶対的位置を感知することができてもよい。これは、多数の方法によって実現され得る。例えば、センサ9,10は、磁極6間のそれらの相対的位置を感知し、相対的位置のアナログまたはマルチビット表示を出力することができる。そして、組み合わされて、360°回転内のシャフト位置を独自に表現する値をセンサ9,10が生じるように、円盤3,4上の磁極数が選択され得る。他の例において、磁極6は円盤上に二進コード化した方法で配置されることができる。したがって、組み合わされて、360°回転内のシャフト位置を独自に表現するデジタル出力を、センサ9,10が生じる。機械式エンコーディングの設備5,28と組み合されたこの方法によって、360°回転内および限界点を始点とする全体回転におけるシャフト1の絶対的位置が、シャフト1の運動を必要とせずに迅速に判定され得る。それによってシャフト位置をシステムが立ち上がってすぐに、上記2で述べられているキャリブレーション段階を必要とすることなく、十分に決定することができるので、これは便利である。
【0042】
上記で述べられている例において、溝部21の軸2周りの半径は変化する。そして、従動子30の径方向位置は、シャフト1の絶対的位置を示す。別の設備において、溝部は略螺旋状溝であってもよく、従動子が溝部の中を軸方向に移動してシャフトの絶対的位置を示してもよい。この場合、長さの大部分にわたって、そのような螺旋状溝は軸2に沿って一定の位置に置かれ、軸方向位置がシャフトの径方向位置に伴って変化する移行領域が設けられる。トラック29は軸方向に配置され、センサ32は、従動子の軸方向移動を感知する。
【0043】
部分円弧22,23あるいは螺旋状の相当物は、好適に半円を超えて、さらに好適には270°を超えて、さらに好適には300°を超えて延びる。移行領域25は、
図2に示すように、連結先の円弧に至るまで好適には50°以下の角度で延びる。移行領域は好適には直線状通路部分を含む。
【0044】
溝部21/29内を移動する代わりに、従動子30は、別の方法で導かれてもよい。例えば、いずれかの側に重なる、位置を高くされたトラックに載ってもよい。
【0045】
円盤5の外周まで延びる孔27は、機械式位置エンコーダの組立の補助をするために使用され得る。
図1および2の例において、組立時に、センサ28は円盤5まで径方向に導入されることが可能であり、従動子30は孔27を通じてうずまき状溝部21内まで挿入されることが可能である。
【0046】
図1および2の例において、機械式センサは端部26を始点とする完全な回転が0回か1回かのみ判別できる。うずまき状溝部は、より多くの回転に対応するように延びていてもよい。詳細には、溝部が対応している各回転のための一定半径の領域、および、隣り合う2つの一定半径領域ごとに、その間に移行領域を有していてもよい。移行領域は、回転軸2回りの共通の周方向位置に配置されるだろう。同様に、うずまき状溝部の場合、溝部はより多くの回転に対応するように延びてもよい。詳細には、溝部が対応している各回転のための一定軸方向位置を有する領域を有し、かつ、隣り合う一定軸方向位置領域ごとに、その間に移行領域を有していてもよい。この場合、複数の移行領域はまた、回転軸2回りの共通周方向位置に配置されるだろう。従動子30が一定径方向位置領域と一定軸方向位置領域のいずれに沿うように配置されるかを決定できるように、センサ装置28は適合させられるだろう。例えば、センサ装置は多数のマイクロスイッチを有してもよいし、一定径方向位置領域と一定軸方向位置領域のそれぞれにひとつが沿うように配置されてもよいし、それらの領域のうちひとつだけを除いてすべてに沿うように配置されてもよい。
【0047】
上記の例において、円盤およびセンサ3,4,9,10は、それら円盤およびセンサ3,4,9,10の間の磁気交流によって、相対的位置を感知し、別の方法で移動を感知する。例えばセンサは、回転する円盤上の、ある色もしくは反射率から別の色もしくは反射率への変化を感知する光学性センサであってもよい。センサはまた、センサを通り過ぎて回転する歯付きホイールの歯の有無を探知する渦電流や他の電気的センサであってもよい。センサ9,10が磁気センサであれば、どのような相応しい型のものであってもよい。例えば、ホール効果センサやリードスイッチセンサであってもよい。
【0048】
シャフトの制御機構は、処理ユニット11による位置データ出力に依存する、端部26,27を通り過ぎるシャフトの過回転の防止が自動的に行われるように配置されてもよい。
【0049】
シャフトに取り付けられるかわりに、円盤は他の一部に対して回転する他の部分に対して取り付けられてもよい。シャフトの場合、円盤のひとつ以上がシャフトのハウジングに取り付け可能であり、センサはシャフトとともに回転可能である。円盤は、同じ機能を持つが異なる形状を有する部材によって代替されてもよい。例えば、円盤ではなく円筒や円環、直方体の形状であってもよい。
【0050】
この設備の適用には以下のものが含まれる。この設備は、アームの肢部を形成する硬質部材が回転ジョイントによって連結されているロボットアームに使用されてもよい。シャフトがアームのひとつの肢部に固定され、ハウジングがアームの近接する肢部によって形成され、そのハウジングに対するシャフトの回転が2つの肢部の相対回転を表してもよい。そして、位置エンコーディング設備は、アームの相対的位置を確定するために使用され得る。他の例において、シャフトは自動車のステアリングホイールから延び出すシャフトであってもよいし、ハウジングは、自動車本体の一部であるシャフトのハウジングであってもよい。ステアリングシャフトの移動が感知され、電力ステアリングシステムを制御したり、単純にステアリングの要求(例えば自動車の安定性制御システム制御の補助)を確立したりしてもよい。
【0051】
出願人はこれによって、ここに記載の各個別の特徴および2つ以上のそのような特徴の任意の組み合わせを別々に開示しており、そのような特徴または特徴の組み合わせが当業者の共通の一般的な知識に照らして全体として本明細書に基づいて実施されることが可能な程度に開示している。なお、そのような特徴または特徴の組み合わせが本明細書に開示される問題を解決するかどうかは関係がなく、またかかる具体的記載が特許請求の範囲を限定するものでもない。出願人は、本発明の態様は、このような個々の特徴または特徴の組み合わせから成ってもよいことを示している。以上の説明に鑑みて、種々の改変が本発明の範囲内でなされ得ることは当業者にとって明らかであろう。