(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】付着物除去装置、及び付着物除去方法
(51)【国際特許分類】
F22B 37/48 20060101AFI20220907BHJP
F23J 3/00 20060101ALI20220907BHJP
F28G 7/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F22B37/48 Z
F23J3/00 Z
F28G7/00 A
(21)【出願番号】P 2021081533
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】田井 宏
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/225984(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/48
F23J 3/00
F28G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に付着した付着物を圧力波を利用して除去する付着物除去装置であって、
開口部を有する容器と、
前記開口部に対応して設けられ、前記容器内に通じる複数の噴射口部を有する蓋体と、
前記噴射口部を塞ぐ封止体と、
前記封止体を
前記蓋体に着脱可能に固定する固定手段と、
を備え、
前記容器内の圧力を高めることで前記封止体を破壊して前記圧力波を発生させるように構成され
、
前記蓋体は、対向配置される第一蓋体部、及び第二蓋体部を含み、
前記第一蓋体部と前記第二蓋体部とによって前記封止体を挟むように構成される付着物除去装置。
【請求項2】
前記噴射口部を通して前記容器内に通じるノズル体をさらに備える
請求項1に記載の付着物除去装置。
【請求項3】
前記封止体は、シール層と形態維持層とを含む可燃性の積層体から構成される
請求項1又は2に記載の付着物除去装置。
【請求項4】
前記噴射口部の開口面積(S
1)と前記開口部の開口面積(S
2)との比(S
1/S
2)が、0.3~0.7である
請求項1~3の何れか一項に記載の付着物除去装置。
【請求項5】
対象物に付着した付着物を圧力波を利用して除去する付着物除去方法であって、
請求項1~4の何れか一項に記載の付着物除去装置を、対象物に対し圧力波を放出可能な状態に設置する設置工程と、
前記容器内に可燃性ガス、及び酸化剤ガスを充填するガス充填工程と、
前記容器内に充填された可燃性ガス、及び酸化剤ガスの混合ガスに着火する着火工程と、
を包含する付着物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に付着した付着物を圧力波を利用して除去する付着物除去装置、及び付着物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電設備が併設された、廃棄物等の燃焼施設での発電量向上が重要となっている。燃焼施設での発電は、燃焼炉での廃棄物等の燃焼に伴い発生した高温の排ガスからボイラにて熱回収を行い、所定の温度、圧力の蒸気を生成してタービン発電機に導入することにより行われている。
【0003】
ボイラは、放射室と対流伝熱室とを有している。放射室には、放射伝熱管が放射伝熱面として配設され、対流伝熱室には、過熱器が対流伝熱面として配設されている。過熱器は、水平方向に伝熱管(過熱管)が複数配設された伝熱管群が高さ方向に複数段配設されて構成されている。
【0004】
燃焼炉からの排ガスには、腐食成分や、重金属類等を含むダストが含まれている。このため、運転経過に伴い、ボイラの放射伝熱面や、対流伝熱面における伝熱管に徐々にダストが付着、堆積し、熱回収性能の低下や、ガス流路の閉塞、伝熱管の腐食といった障害を招き、正常な運転の継続が困難な状態に陥ることがある。
【0005】
そこで、圧力波を利用して付着物を除去する付着物除去装置を用いて、伝熱管に付着したダストを除去することにより、ボイラの正常な運転を継続的に行うことを可能としている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
特許文献1に係る付着物除去装置は、開口部を有する耐圧容器と、開口部を塞ぐ閉鎖体とを備え、供給ラインを介して耐圧容器内に供給された酸化剤を含むガス状の燃料の爆発によって圧力波を発生させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る付着物除去装置において、耐圧容器内への燃料の供給に伴って耐圧容器内の圧力が大きくなる。このとき、閉鎖体における耐圧容器の開口部に対応する部分の全体に耐圧容器内の圧力が作用する。このため、閉鎖体(封止体)の構成材料として、引張強度が低い材料を使用した場合、耐圧容器内への燃料の充填が完了する前に、封止体が破断してしまい、燃料を爆発させるまでに至らない虞がある。このような事態を回避するためには、封止体の構成材料として、一般的に引張強度が高い材料を使用する必要があるが、この場合、封止体の構成材料の選択の幅が狭くなる。
【0009】
なお、例えば、封止体の厚みを増すことによって封止体に作用する応力を抑えるようにすれば、封止体の構成材料として、一般的に引張強度が低い材料でも使用可能になる場合がある。しかしながら、封止体の厚みを増すと、耐圧容器に対し封止体を配設した状態を保持する手段が大型化し、引いては装置全体の大型化を招くことになる。
【0010】
この種の付着物除去装置では、装置全体が大型化した場合、装置の持ち運び時や、装置の取付作業時、封止体の交換作業時等におけるハンドリングが悪くなるため、付着物除去が必要なタイミングにおいて、付着物除去が必要な箇所に対し圧力波を放出可能な状態にすることが困難になる。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、封止体の構成材料として使用可能な材料の選択の幅を広げることができるとともに、付着物除去が必要なタイミングにおいて、付着物除去が必要な箇所に対し圧力波を放出可能な状態に容易にすることができる付着物除去装置、及び付着物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係る付着物除去装置の特徴構成は、
対象物に付着した付着物を圧力波を利用して除去する付着物除去装置であって、
開口部を有する容器と、
前記開口部に対応して設けられ、前記容器内に通じる複数の噴射口部を有する蓋体と、
前記噴射口部を塞ぐ封止体と、
前記封止体を着脱可能に固定する固定手段と、
を備え、
前記容器内の圧力を高めることで前記封止体を破壊して前記圧力波を発生させるように構成されることにある。
【0013】
本構成の付着物除去装置によれば、開口部を有する容器と、容器の開口部に対応する蓋体とを備えている。蓋体は、容器内に通じる複数の噴射口部を有している。圧力波を発生させる前において、複数の噴射口部は、封止体によって塞がれている。本構成の付着物除去装置において、圧力波を発生させるにあたって、例えば、容器内に燃焼用ガスを供給したり、圧縮ガスを供給したりすると、容器内への燃焼用ガス等の供給に伴って容器内の圧力が大きくなる。このとき、封止体は、蓋体における複数の噴射口部の周りの部分に支持される。このため、封止体に対し圧力が作用する面積が小さくなり、封止体に作用する応力を抑制することができる。従って、封止体の構成材料として、一般的に引張強度が高い金属材料が使用可能であるのは勿論のこと、一般的に引張強度が低い非金属材料でも使用可能となり、封止体の構成材料として使用可能な材料の選択の幅を広げることができる。また、本構成の付着物除去装置によれば、上述したように、封止体に作用する応力を抑制することができるため、封止体の厚みが小さくて済み、封止体を固定する固定手段を小型化することができて、装置全体の小型化を図ることができる。さらに、封止体は、固定手段に対する所定の操作により、着脱可能である。このため、封止体を容易に交換することができる。このように、装置全体の小型化により可搬性に優れ、しかも封止体を容易に交換できるので、付着物除去が必要なタイミングにおいて、付着物除去が必要な箇所に対し圧力波を放出可能な状態に容易にすることができる。
【0014】
本発明に係る付着物除去装置において、
前記蓋体は、対向配置される第一蓋体部、及び第二蓋体部を含み、
前記第一蓋体部と前記第二蓋体部とによって前記封止体を挟むように構成されることが好ましい。
【0015】
本構成の付着物除去装置によれば、第一蓋体部における複数の噴射口部の周りの部分と、第二蓋体部における複数の噴射口部の周りの部分とによって封止体が挟まれる。これにより、第一蓋体部と第二蓋体部とによって封止体がより安定的に支持されることになる。従って、容器内への燃焼用ガス等の供給時において、封止体の局所的な変形をより確実に抑制することができ、封止体の構成材料として使用可能な材料の選択の幅をより広げることができるとともに、封止体の厚みをより小さくすることができる。
【0016】
本発明に係る付着物除去装置において、
前記噴射口部を通して前記容器内に通じるノズル体をさらに備えることが好ましい。
【0017】
本構成の付着物除去装置によれば、複数の噴射口部を通して容器内に通じるノズル体により、複数の噴射口部を通して放出される圧力波の放出方向を、ノズル体の開口方向に確実に定めることができる。従って、付着物除去の対象物に対し、ノズル体の照準を合わせることによって、付着物をより確実に除去することができる。
【0018】
本発明に係る付着物除去装置において、
前記封止体は、シール層と形態維持層とを含む可燃性の積層体から構成されることが好ましい。
【0019】
本構成の付着物除去装置によれば、封止体は、シール層と形態維持層とを含む積層体から構成される。このような構成により、容器内への燃焼用ガス等の供給に伴って容器内の圧力が大きくなっても、シール層によって燃焼用ガス等の漏れを確実に防ぐことができるとともに、シール層の変形を形態維持層によって抑えてシール層としての機能を維持することができる。従って、容器内への燃焼用ガス等の充填時に複数の噴射口部を封止体によって漏れなく確実に塞ぐことができる。また、上記の積層体は、可燃性の材料から構成されている。これにより、例えば、付着物除去装置がボイラに付設されている場合、圧力波の発生時に破壊された封止体の破片は、ボイラ内の熱によって燃焼される。従って、破壊された封止体の破片からボイラの伝熱管群を保護するプロテクタ等が不要になるとともに、圧力波によってボイラの伝熱管群から除去された付着物の回収ラインに、破壊された封止体の破片が混入するのを未然に防ぐことができる。
【0020】
本発明に係る付着物除去装置において、
前記噴射口部の開口面積(S1)と前記開口部の開口面積(S2)との比(S1/S2)が、0.3~0.7であることが好ましい。
【0021】
本構成の付着物除去装置によれば、蓋体に設けられた複数の噴射口部の開口面積(S1)と、容器に設けられた開口部の開口面積(S2)との比(S1/S2)が、0.3~0.7とされている。これにより、付着物を除去するのに必要な圧力波の威力を確保しつつ、封止体に作用する応力を確実に抑制することができる。
【0022】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る付着物除去方法の特徴構成は、
対象物に付着した付着物を圧力波を利用して除去する付着物除去方法であって、
上記の何れか一つの付着物除去装置を、対象物に対し圧力波を放出可能な状態に設置する設置工程と、
前記容器内に可燃性ガス、及び酸化剤ガスを充填するガス充填工程と、
前記容器内に充填された可燃性ガス、及び酸化剤ガスの混合ガスに着火する着火工程と、
を包含することにある。
【0023】
本構成の付着物除去方法によれば、対象物に対し圧力波を放出可能な状態に設置され(設置工程)、容器内に可燃性ガス、及び酸化剤ガスが充填され(ガス充填工程)、容器内に充填された可燃性ガス、及び酸化剤ガスの混合ガスに着火される(着火工程)。着火工程により容器内の混合ガスが発火すると、容器の内部で燃焼・爆発が起こり、容器の内部の圧力が急激に高まり、圧力に耐えきれなくなった封止体が破壊される。封止体が破壊されると、蓋体の複数の噴射口部から一気に高圧の気体が噴出することによって圧力が急激に開放される。圧力の急激な開放の結果、圧力波が発生し、圧力波による風圧、振動により、対象物に付着した付着物が除去される。本構成の付着物除去方法において用いられる付着物除去装置は、装置全体の小型化により可搬性に優れ、しかも封止体を容易に交換できる。従って、本構成の付着物除去方法によれば、付着物除去が必要なタイミングにおいて、付着物除去が必要な箇所に対し圧力波を放出可能な状態に設置する設置工程を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る付着物除去装置が伝熱管に対し圧力波を放出可能な状態でボイラに設置された状態図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2(a)のA-A線矢視図であり、
図3(b)は、
図2(a)のB-B線矢視図であり、
図3(c)は、
図2(a)のC-C線矢視図であり、
図3(d)は、
図2のD-D線矢視図である。
【
図4】
図4は、第一蓋体部、及び第二蓋体部に設けられる複数の噴射口の配置説明図である。
【
図5】
図5は、封止体を示し、(a)は
図2(a)のE-E線矢視から見た正面図、(b)は(a)のF-F線断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る付着物除去装置に装備されるガス供給手段、及び制御系の概略構成を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、付着物除去装置を用いた付着物除去方法の設置工程における圧力砲の取付動作の説明図である。
【
図8】
図8は、付着物除去装置を用いた付着物除去方法における充填工程の説明図である。
【
図9】
図9は、付着物除去装置を用いた付着物除去方法における着火工程の説明図である。
【
図10】
図10は、付着物除去装置を用いた付着物除去方法の設置工程における圧力砲の取付動作の別態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、付着物除去の対象物が、ボイラの伝熱管であり、伝熱管に付着したダストを除去する装置、及び方法を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0026】
<全体説明>
図1は、本発明の一実施形態に係る付着物除去装置20が伝熱管4に対し圧力波を放出可能な状態でボイラ1に設置された状態図である。
図1に示すように、付着物除去装置20は、ボイラ1の排ガス流路2を構成する側壁3の外側に配置されている。排ガス流路2には、水平方向に配列される複数の伝熱管4をボイラ1の上下方向に複数段設けてなる複数の伝熱管群5,6が配設されている(
図1では2つの伝熱管群5,6のみ図示する。)。伝熱管群5,6を構成する伝熱管4が、付着物(ダスト)が付着した対象物となる。上側の伝熱管群5と下側の伝熱管群6との間には、所定広さの空間が設けられ、この空間に連通状態で側壁3に接続される導管としての接続ダクト15が側壁3から外側に突設されている。接続ダクト15は、側壁3から外側に突出する筒状の本体部15aと、本体部15aの突出側端部に一体的に設けられた外向きのダクトフランジ部15bとにより構成されている。
【0027】
<圧力砲の構成>
付着物除去装置20は、圧力砲25を備えている。圧力砲25は、主として、容器30、及びノズル体50、並びに容器30とノズル体50との間に介在される封止体80により構成されている。
【0028】
<容器>
図2(a)は、
図1のX部拡大縦断面図である。
図2(a)に示すように、容器30は、小径円筒状部31と、側壁3に向かう方向(前方)に進むに従って徐々に縮径するような円錐台筒状部32と、小径円筒状部31よりも口径が大きい大径円筒状部33とを有している。容器30においては、前方(
図2(a)の右側から左側に向う方向)に向かって大径円筒状部33、円錐台筒状部32、及び小径円筒状部31がこの記載順に配されている。これら筒状部31,32,33は、互いの軸線(管軸)を一致させた状態で一体的に連設されている。ここで、小径円筒状部31の前端側には、円板状の容器側端板部35が一体的に設けられている。なお、以下の説明において、管軸方向とは、特に断りのない限り、容器30の軸線(管軸)が延びる方向のことである。
【0029】
図2(b)は、
図1のY部拡大縦断面図である。大径円筒状部33の後端側は、端壁部40によって閉鎖されている。端壁部40には、プラグ保護部材41を介してグロープラグ42が取り付けられている。このような構成において、グロープラグ42に通電することにより、容器30の内部に供給・充填された後述する燃焼用ガス(メタンガスと酸素ガスとの混合ガス)を発火させることができる。また、燃焼用ガスの燃焼・爆発に伴い生じた圧力波の殆どは、プラグ保護部材41によって遮られるので、グロープラグ42を保護することができ、グロープラグ42の寿命を大幅に延ばすことができる。さらに、端壁部40には、管接続具43が容器30の内部に連通状態で取り付けられている。
【0030】
<ノズル体>
図2(a)に示すように、ノズル体50は、小径円筒状部51と、前方に進むに従って徐々に拡径するような逆円錐台筒状部52と、小径円筒状部51よりも口径が大きい大径円筒状部53とを有している。ノズル体50においては、前方に向かって小径円筒状部51、逆円錐台筒状部52、及び大径円筒状部53がこの記載順に配されている。これら筒状部51,52,53は、互いの軸線(管軸)を一致させた状態で一体的に連設されている。
【0031】
ノズル体50において、小径円筒状部51の後端側には、容器側端板部35と略同じ面積を有する大きさの円板状のノズル側端板部55が一体的に設けられている。小径円筒状部51には、その外周面から外向きに張り出すような中間フランジ部65が逆円錐台筒状部52の近傍に位置するように一体的に設けられている。ノズル側端板部55と中間フランジ部65との間には、複数(本例では4枚)の板状の補強リブ71が、小径円筒状部51の周方向に等角度毎(本例では90°毎)に配されている。補強リブ71は、小径円筒状部51の外周面、ノズル側端板部55、及び中間フランジ部65に一体的に接合されている。
【0032】
小径円筒状部51の外周面側には、小径円筒状部51の管軸と直交する方向に延在する円筒状部材から構成される吹出管63が、小径円筒状部51の内部に連通状態で付設されている。吹出管63は、小径円筒状部51の前後方向中間位置において、一端側が小径円筒状部51の外周面に接合されている。吹出管63の他端部には、図示されない配管や、流量制御弁等を介して圧縮ガス供給源と接続されている。吹出管63は、圧力波放出口である後述する複数の噴射口部37,57に向かって飛来するダスト等を含む飛来物に対して、圧縮ガス供給源からのパージガス(例えば、圧縮空気等)を吹き出してその飛来物をバージするバージ手段として機能する。
【0033】
図3(a)は、
図2(a)のA-A線矢視図であり、
図3(b)は、
図2(a)のB-B線矢視図であり、
図3(c)は、
図2(a)のC-C線矢視図であり、
図3(d)は、
図2(a)のD-D線矢視図である。
図3(a)に示すように、容器側端板部35は、中央の所定直径の円領域内に形成される蓋体部35a(以下、「第一蓋体部35a」と称する。)と、第一蓋体部35aの外周側に一体的に形成される容器側フランジ部35bとを有している。
図3(b)に示すように、ノズル側端板部55は、中央の所定直径の円領域内に形成される蓋体部55a(以下、「第二蓋体部55a」と称する。)と、第二蓋体部55aの外周側に一体的に形成されるノズル側フランジ部55bとを有している。
【0034】
<蓋体>
図2(a)に示すように、付着物除去装置20においては、容器30の実質的な開口部である小径円筒状部31の開口部31aに対応して設けられる蓋体75が、第一蓋体部35aと第二蓋体部55aとにより構成されている。
【0035】
<第一蓋体部>
図2(a)及び
図3(a)に示すように、第一蓋体部35aは、容器30の小径円筒状部31の開口端を塞ぐように、小径円筒状部31の開口部31aに対応して設けられている。第一蓋体部35aは、容器30内に通じる複数(本例では19個)の噴射口部37を有している。複数の噴射口部37のそれぞれは、第一蓋体部35aを貫通する断面円形の丸孔状に形成されている。
【0036】
図3(a)に示すように、第一蓋体部35aの前面には、複数の噴射口部37の全てを円環状に取り囲むように形成されるOリング溝38が形成されている。Oリング溝38には、Oリング45が嵌着されている。
【0037】
<第二蓋体部>
図2(a)及び
図3(b)に示すように、第二蓋体部55aは、ノズル体50の小径円筒状部51の開口端を塞ぐように、小径円筒状部51の開口部51aに対応して設けられている。第二蓋体部55aは、第一蓋体部35aと同様に、複数(本例では19個)の噴射口部57を有している。第一蓋体部35aに設けられる複数の噴射口部37と第二蓋体部55aに設けられる複数の噴射口部57とは、管軸方向(前後方向)で見たときに互いに重なるように配置されている。従って、第一蓋体部35a、及び第二蓋体部55aにそれぞれ設けられる複数の噴射口部37,57は、容器30の内部に通じている。
【0038】
本実施形態の付着物除去装置20においては、第一蓋体部35aにおける複数の噴射口部37の周りの部分と、第二蓋体部55aにおける複数の噴射口部57の周りの部分とによって封止体80が挟まれる。これにより、封止体80がより安定的に支持されることになる。従って、容器30内への燃焼用ガスの供給時において、封止体80の局所的な変形をより確実に抑制することができる。こうして、封止体80の構成材料として使用可能な材料の選択の幅をより広げることができるとともに、封止体80の厚みをより小さくすることができる。
【0039】
<複数の噴射口部の配置>
図4は、第一蓋体部35a、及び第二蓋体部55aに設けられる複数の噴射口部37,57の配置説明図である。
図4に示すように、複数の噴射口部37は、同心円状に規則的に並ぶように配置されている。すなわち、第一蓋体部35aには、中央に1個の噴射口部37が配置され、この中央に配置された噴射口部37の周りに、6個の噴射口部37が等角度毎(60°毎)に各々の噴射口部37の中心をその中央に配置された噴射口部37の中心を基準とする第一ピッチ円直径D
1の円周CR
1上に一致させるように配置され、さらに、それら6個の噴射口部37の周りに、12個の噴射口部37が等角度毎(30°毎)に各々の噴射口部37の中心をその中央に配置された噴射口部37の中心を基準とする第二ピッチ円直径D
2(D
1<D
2)の円周CR
2上に一致させるように配置されている。第二蓋体部55aに設けられる複数の噴射口部57の配置についても、第一蓋体部35aに設けられる複数の噴射口部37の配置と同様である。
【0040】
<複数の噴射口部と容器の開口部との開口面積比>
本実施形態において、複数(19個)の噴射口部37の全ての開口面積を合計した開口面積(S1)と、容器30の小径円筒状部31の開口部31aの開口面積(S2)との比(S1/S2)は、0.3~0.7であることが好ましく、より好ましくは、0.4~0.6である。これにより、付着物を除去するのに必要な圧力波の威力を確保しつつ、封止体80に作用する応力を確実に抑制することができる。なお、比(S1/S2)が0.3未満である場合、付着物を除去するのに必要な圧力波の威力を確保するのが難しくなる。比(S1/S2)が0.7を超える場合、封止体80に作用する応力を十分に抑制することができず、容器30内への燃焼用ガスの充填が完了する前に封止体80が破断する虞がある。なお、複数(19個)の噴射口部57の全ての開口面積を合計した開口面積(S11)と、ノズル体50の小径円筒状部51の開口部51aの開口面積(S12)との比(S11/S12)とについても、前記の比(S1/S2)と同様に、0.3~0.7であることが好ましく、より好ましくは、0.4~0.6である。
【0041】
図3(a)に示すように、容器側端板部35における容器側フランジ部35bには、複数(本例では8個)のボルト挿通孔47が周方向に等角度毎(45°毎)に配置されるように形成されている。
図3(b)に示すように、ノズル側端板部55におけるノズル側フランジ部55bには、容器側フランジ部35bに形成されたそれぞれのボルト挿通孔47に対応するように、ボルト挿通孔67が形成されている。
図3(c)に示すように、接続ダクト15におけるダクトフランジ部15bには、複数(本例では8個)のボルト挿通孔17が周方向に等角度毎(45°毎)に配置されるように形成されている。
図3(d)に示すように、中間フランジ部65には、ダクトフランジ部15bに形成されたそれぞれのボルト挿通孔17に対応するように、ボルト挿通孔77が形成されている。
【0042】
<封止体>
図5は、封止体80を示し、(a)は
図2(a)のE-E線矢視から見た正面図、(b)は(a)のF-F線断面図である。
図5(a)及び(b)に示すように、封止体80は、容器側端板部35、及びノズル側端板部55と略同じ面積を有する大きさで所定厚みに成形された円板状体からなるものであり、第一蓋体部35aに設けられた複数の噴射口部37、及び第二蓋体部55aに設けられた複数の噴射口部57を塞ぐことができる。封止体80の外周縁近傍には、容器側フランジ部35b(ノズル側フランジ部55b)に形成されたそれぞれのボルト挿通孔47(ボルト挿通孔67)に対応するように、ボルト挿通孔87が形成されている。
【0043】
図5(b)における部分拡大図に示すように、封止体80は、シール層80aと形態維持層80bとを有し、これらシール層80a、及び形態維持層80bが当該封止体80の厚み方向に積層されて構成されている。シール層80aは、容器30内への燃焼用ガスの供給に伴って容器30内の圧力が大きくなっても、燃焼用ガスが漏れないように気密性を持たせるための層であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料により製造されたシートからなる。形態維持層80bは、シール層80aに隣接する位置に、当該シール層80aの形態を維持するために設けられる層であり、例えば、紙や不織布等により製造されたシートからなる。封止体80は、例えば、紙や不織布等よりなるシートと、熱可塑性樹脂によりなるシートとを、一対のピンチロールで熱を加えながら挟み付けて一体的に接合して製造される。
【0044】
封止体は、シール層80a側を第一蓋体部35aに接触させ、形態維持層80b側を第二蓋体部55aに接触させるように、第一蓋体部35aと第二蓋体部55aとの間に、管軸方向に板面を向けた状態で配されている。こうして、容器30内への燃焼用ガスの供給に伴って容器30内の圧力が大きくなっても、シール層80aによって燃焼用ガスの漏れを確実に防ぐことができるとともに、シール層80aの変形を形態維持層80bによって抑えてシール層80aとしての機能を維持することができる。従って、容器30内への燃焼用ガスの充填時に複数の噴射口部37,57を封止体によって確実に塞ぐことができる。また、封止体80は、可燃性の材料から構成されている。これにより、圧力波の発生時に破壊されてボイラ1内に向って吹き飛ばされた封止体80の破片は、ボイラ1内の熱によって燃焼される。従って、圧力波の発生時に破壊されてボイラ1内に向って吹き飛ばされた封止体80の破片からボイラ1の伝熱管群5,6を保護するプロテクタ等が不要になるとともに、圧力波によってボイラの伝熱管群5,6から除去された付着物の回収ラインに、封止体80の破片が混入するのを未然に防ぐことができる。
【0045】
図2(a)に示すように、封止体80は、容器側端板部35とノズル側端板部55との間に介在されている。容器側端板部35、ノズル側端板部55、及び封止体80は、相互のボルト挿通孔47,67,87(
図3(a)及び(b)、並びに
図5参照)の前後方向視の位置が一致された状態とされている。そして、容器側端板部35、ノズル側端板部55、及び封止体80は、相互のボルト挿通孔47,67,87に挿通されるボルト91と、ボルト91の螺子軸に螺合されるナット92との締め付けによって締結されている。ボルト91、及びナット92は、容器30とノズル体50とを封止体80を挟んだ状態で締結する締結手段として機能する。
【0046】
<固定手段>
図2(a)において、ボルト91、及びナット92を締め付けた場合、その締付力に応じた挟持力で封止体80を容器側端板部35(第一蓋体部35a)とノズル側端板部55(第二蓋体部3b)とによって挟んだ状態に固定することができる。ボルト91、及びナット92の締め付けを解除して容器側端板部35とノズル側端板部55とからボルトを取り外した場合、容器側端板部35とノズル側端板部55との間から封止体80を離脱させることができる。従って、容器側端板部35、ノズル側端板部55、ボルト91、及びナット92は、封止体80を着脱可能に固定する固定手段として機能する。
【0047】
図2(a)においては、接続ダクト15、及び中間フランジ部65が、相互のボルト挿通孔17,77(
図3(c)及び(d)参照)の前後方向視の位置が一致された状態で、相互のボルト挿通孔17,77に挿通されるボルト93と、ボルト93の螺子軸に螺合されるナット94との締め付けによって締結されている。ボルト93、及びナット94は、ノズル体50と接続ダクト15とを締結する締結手段として機能する。
【0048】
<ガス供給手段>
図6は、本発明の一実施形態に係る付着物除去装置20に装備されるガス供給手段100、及び制御系の概略構成を説明する模式図である。
図6に示すように、付着物除去装置20は、燃焼に必要な可燃性ガスや酸化剤ガス等の燃焼用ガスを容器30に対し供給・充填するガス供給手段100をさらに備えている。ガス供給手段100は、高圧可燃性ガスボンベ110、高圧酸化剤ガスボンベ120、及びバルブユニット130を備えている。
【0049】
図6に示す高圧可燃性ガスボンベ110は、例えば、耐圧容器内に可燃性ガスを高圧(例えば、14.7MPa)で封入してなるガスボンベが挙げられ、可燃性ガス供給源として機能する。高圧可燃性ガスボンベ110には、減圧弁111が付設されている。高圧可燃性ガスボンベ110内に封入されている可燃性ガスは、減圧弁111により、例えば、0.9MPaに減圧される。高圧可燃性ガスボンベ110に封入される可燃性ガスとしては、例えば、メタンガス、水素ガス等が挙げられる(本例ではメタンガス)。以下においては、高圧可燃性ガスボンベ110を、「メタンボンベ110」と称する。
【0050】
図6に示す高圧酸化剤ガスボンベ120は、例えば、耐圧容器内に酸化剤ガスを高圧(例えば、14.7MPa)で封入してなるガスボンベが挙げられ、酸化剤ガス供給源として機能する。高圧酸化剤ガスボンベ120には、減圧弁121が付設されている。高圧酸化剤ガスボンベ120内に封入されている酸化剤ガスは、減圧弁121により、例えば、0.9MPaに減圧される。高圧酸化剤ガスボンベ120に封入される酸化剤ガスとしては、例えば、酸素ガス、空気等が挙げられる(本例では酸素ガス)。以下においては、高圧酸化剤ガスボンベ120を、「酸素ボンベ120」と称する。
【0051】
なお、メタンボンベ110、及び酸素ボンベ120は、並立した状態でボンベ運搬台車300に載置されており(
図1参照)、ボンベ運搬台車300により、容易に移動させることができる。
【0052】
図6に示すバルブユニット130は、メタンガス供給弁131、酸素ガス供給弁132、ガス主塞止弁133、三方継手134、及び圧力計135を備えている。ここで、三方継手134は、相互に連通状態で三方に突出形成される第一継手部134a、第二継手部134b、及び第三継手部134cを有している。バルブユニット130は、持ち運び可能な収納ケース310内に収納されている(
図1参照)。
【0053】
図6において、メタンボンベ110に付設される減圧弁111とメタンガス供給弁131とは、第一メタンガス供給管141によって接続されている。メタンガス供給弁131と三方継手134の第一継手部134aとは、第二メタンガス供給管142によって接続されている。一方、酸素ボンベ120に付設される減圧弁121と酸素ガス供給弁132とは、第一酸素ガス供給管151によって接続されている。酸素ガス供給弁132と三方継手134の第二継手部134bとは、第二酸素ガス供給管152によって接続されている。
【0054】
三方継手134の第三継手部134cとガス主塞止弁133とは、第一供給主管161によって接続されている。第一供給主管161には、圧力計135が圧力検出可能に接続されている。ガス主塞止弁133と容器30に取り付けられた管接続具43とは、第二供給主管162によって接続されている。
【0055】
<制御装置>
図6に示すように、付着物除去装置20は、装置全体を制御可能なマイクロコンピュータを主体に構成される制御装置200をさらに備えている。制御装置200は、圧力計135からの計測値を読み込み、所定プログラムを実行することにより、メタンガス供給弁131、酸素ガス供給弁132、及びガス主塞止弁133の開閉動作、及び弁開度を制御したり、グロープラグ42への通電を制御したりする。制御装置200は、持ち運び可能な収納ケース320内に収納されている(
図1参照)。
【0056】
図1に示すように、制御装置200とバルブユニット130とは、ケーブル210によって接続されている。制御装置200とグロープラグ42とは、ケーブル220によって接続されている。
【0057】
図6に示すように、付着物除去装置20において、ガス供給手段100は、燃焼用ガス(メタンガス、酸素ガス)を容器30に供給するための燃焼用ガス供給管路(供給管141,142,151,152、供給主管161,162)と、この燃焼用ガス供給管路におけるガス流れの上流側及び下流側にそれぞれ介設される上流側開閉弁(メタンガス供給弁131、酸素ガス供給弁132)、及び下流側開閉弁(ガス主塞止弁133)と、その燃焼用ガス供給管路における上流側開閉弁と下流側開閉弁との間に接続される圧力計135とを備える。
【0058】
そして、メタンガス供給弁131、酸素ガス供給弁132、及びガス主塞止弁133を制御する制御装置200は、下流側開閉弁(ガス主塞止弁133)を開いた状態として、上流側開閉弁(メタンガス供給弁131、酸素ガス供給弁132)が閉じている状態のときの圧力計135により計測される圧力値が目標値に近づくように、上流側開閉弁を開閉し、容器30内に供給された燃焼用ガスの燃焼時に、下流側開閉弁を閉じた状態とするようにメタンガス供給弁131、酸素ガス供給弁132、及びガス主塞止弁133を制御する。
【0059】
<設置工程>
図7は、付着物除去装置20を用いた付着物除去方法の設置工程における圧力砲25の取付動作の説明図である。
図7(a)~(d)を用いて圧力砲25の取付動作について説明する。
【0060】
図7(a)は、ボイラ1の近傍に圧力砲25を運んだ状態図である。伝熱管4に付着したダストの除去が必要なタイミングにおいて、
図7(a)に示すように、ボイラ1におけるダスト除去が必要な箇所に対応して設けられた接続ダクト15の近傍位置に、予め組み立てた圧力砲25を、例えば、台車400を用いて運ぶ。
【0061】
図7(b)は、ボイラ1に圧力砲25を差し込む直前の状態図である。また、
図7(c)は、ボイラ1に圧力砲25を差し込んだ状態図である。
図7(a)において接続ダクト15の開口を塞いでいる閉塞板16を取り外した後、
図7(b)~(c)に示すように、接続ダクト15の内部に、ノズル体50の大径円筒状部53を差し込み、ノズル体50の中間フランジ部65が接続ダクト15のダクトフランジ部15bに突き当たるまで、圧力砲25を前方に押し進める。
【0062】
図7(d)は、ボイラ1に圧力砲25を締結した状態図である。
図7(d)に示すように、ダクトフランジ部15bに中間フランジ部65を突き合せ、且つダクトフランジ部15b、及び中間フランジ部65における相互のボルト挿通孔17,77(
図3(c)及び(d)参照)の前後方向視の位置を一致させた後、相互のボルト挿通孔17,77にボルト93を挿通し、ボルト93の螺子軸に螺合させたナット94を締め付けて、接続ダクトと圧力砲25とを締結する。こうして、ボイラ1におけるダスト除去が必要な箇所に圧力砲25を取り付けることができる。
【0063】
なお、上記の圧力砲25の取付作業においては、必要に応じて、ボイラ1に備え付けられた天井クレーン等を利用してもよい。これにより、圧力砲25の取付作業を容易に行うことができ、作業負荷を軽減することができる。
【0064】
そして、
図1に示すように、ボイラ1に取り付けられた圧力砲25の付近の適所に置かれたテーブル500上に、バルブユニット130が収納された収納ケース310、及び制御装置200が収納された収納ケース320を、それぞれ載置する。また、バルブユニット130と制御装置200とをケーブル210によって接続するとともに、制御装置200とグロープラグ42とをケーブル220によって接続する。
【0065】
さらに、ボンベ運搬台車300により、メタンボンベ110、及び酸素ボンベ120を、テーブル500の近傍位置に運ぶ。そして、メタンボンベ110に付設される減圧弁111とメタンガス供給弁131(
図6参照)とを、第一メタンガス供給管141によって接続し、酸素ボンベ120に付設される減圧弁121と酸素ガス供給弁132(
図6参照)とを、第一酸素ガス供給管151によって接続し、ガス主塞止弁133(
図6参照)と容器30に取り付けられた管接続具43とを、第二供給主管162によって接続する。
【0066】
こうして、ボイラ1の伝熱管4に対し圧力波を放出可能な状態に付着物除去装置20を設置する設置工程が完了する。
【0067】
<ガス充填工程>
次に、上記の設置工程によって設置された付着物除去装置20(圧力砲25)の容器30内に可燃性ガス、及び酸化剤ガスを充填するガス充填工程について、
図8を用いて説明する。
図8は、付着物除去装置20を用いた付着物除去方法における充填工程の説明図である。ガス充填工程は、メタンガス供給工程と、酸素ガス供給工程とを含む。なお、
図8(a)~(e)に示す減圧弁111,121、メタンガス供給弁131、酸素ガス供給弁132、及びガス主塞止弁133を模式的に示した図形において、白抜き状態は弁開状態を示し、塗り潰し状態は弁閉状態を示す。また、減圧弁111,121は、常に開いた状態とされる。
【0068】
[メタンガス供給工程]
図8(a)は、ガス主塞止弁133、及びメタンガス供給弁131が開かれる一方で、酸素ガス供給弁132が閉じられた状態図である。制御装置200は、ガス主塞止弁133、及びメタンガス供給弁131のそれぞれに対し弁開信号を送信する一方で、酸素ガス供給弁132に対し弁閉信号を送信する。これにより、
図8(a)に示すように、ガス主塞止弁133、及びメタンガス供給弁131のそれぞれの弁が開かれる一方で、酸素ガス供給弁132が閉じられる。この場合、メタンボンベ110から減圧弁111で減圧(例えば、0.9MPa)されたメタンガスが、第一メタンガス供給管141、メタンガス供給弁131、第二メタンガス供給管142、三方継手134、第一供給主管161、ガス主塞止弁133、及び第二供給主管162を介して容器30内に供給される。
【0069】
図8(b)は、ガス主塞止弁133が開かれる一方で、メタンガス供給弁131、及び酸素ガス供給弁132が閉じられた状態図である。制御装置200は、所定時間経過後に、
図8(a)に示すメタンガス供給弁131に対し弁閉信号を送信する。これにより、
図8(b)に示すように、メタンガス供給弁131が閉じられる。このように、ガス主塞止弁133が開いた状態で、且つメタンガス供給弁131、及び酸素ガス供給弁132がそれぞれ閉じた状態では、ガス主塞止弁133が開いていることによる容器30側からの圧力のみが圧力計135に作用することになり、容器30内の圧力を正確に計測することが可能な状態となる。
【0070】
制御装置200は、圧力計135の計測値に基づいて、容器30内の圧力が目標値(例えば、0.2MPa)に達したか否かを判断する。圧力計135の計測値が目標値に達していなければ、メタンガス供給弁131を開いて、メタンガスを容器30内に供給し、その後、メタンガス供給弁131を閉じて、圧力計135により圧力を計測し、このときの計測値が未だ目標値に達していなければ、メタンガス供給弁131を開いて、メタンガスを容器30内に供給するといった動作を繰り返す。容器30内の実際の圧力値が目標値以上で、且つ許容される上限値以下である場合、メタンガス供給工程に続いて、次の酸素ガス供給工程を実施する。
【0071】
[酸素ガス供給工程]
図8(c)は、ガス主塞止弁133、及び酸素ガス供給弁132が開かれる一方で、メタンガス供給弁131が閉じられた状態図である。制御装置200は、ガス主塞止弁133、及び酸素ガス供給弁132のそれぞれに対し弁開信号を送信する一方で、メタンガス供給弁131に対し弁閉信号を送信する。これにより、
図8(c)に示すように、ガス主塞止弁133、及び酸素ガス供給弁132のそれぞれの弁が開かれる一方で、メタンガス供給弁131が閉じられる。この場合、酸素ボンベ120から減圧弁121で減圧(例えば、0.9MPa)された酸素ガスが第一酸素ガス供給管151、酸素ガス供給弁132、第二酸素ガス供給管152、三方継手134、第一供給主管161、ガス主塞止弁133、及び第二供給主管162を介して容器30内に供給される。
【0072】
図8(d)は、ガス主塞止弁133が開かれる一方で、メタンガス供給弁131、及び酸素ガス供給弁132が閉じられた状態図である。制御装置200は、所定時間経過後に、
図8(c)に示す酸素ガス供給弁132に対し弁閉信号を送信する。これにより、酸素ガス供給弁132が閉じられる。このように、ガス主塞止弁133が開いた状態で、且つメタンガス供給弁131、及び酸素ガス供給弁132が閉じている状態では、ガス主塞止弁133が開いていることによる容器30側からの圧力のみが圧力計135に作用することになり、容器30内の圧力を正確に計測することが可能な状態となる。
【0073】
制御装置200は、圧力計135の計測値に基づいて、容器30内の圧力が目標値(例えば、0.6MPa)に達したか否かを判断する。圧力計135の計測値が目標値に達していなければ、酸素ガス供給弁132を開いて、酸素ガスを容器30内に供給し、その後、酸素ガス供給弁132を閉じて、圧力計135により圧力を計測し、このときの計測値が未だ目標値に達していなければ、酸素ガス供給弁132を開いて、酸素ガスを容器30内に供給するといった動作を繰り返す。容器30内の実際の圧力値が目標値以上で、且つ許容される上限値以下である場合、酸素ガス供給工程を終了する。
【0074】
上記のメタンガス供給工程の実施により、容器30内には、約0.2MPaの圧力が生じる量のメタンガスが容器30内に充填される。また、上記の酸素ガス供給工程の実施により、先のメタンガス供給工程の実施で約0.2MPaとなっている容器30内の圧力が約0.6MPaにまで上昇するその差分の約0.4MPaの圧力が生じる量の酸素ガスが容器30内に充填される。こうして、容器30内には、メタンガスと酸素ガスとが、所定の混合比(本例では、1:2)で混合された状態で充填される。こうして、ガス主塞止弁133が開いた状態で、且つメタンガス供給弁131及び酸素ガス供給弁132が閉じている状態での圧力計135の計測値に基づいて、メタンガス及び酸素ガスを容器30内に導入することにより、メタンガス及び酸素ガスの供給量を正確に制御することができる。こうして、メタンガス及び酸素ガスの供給量を正確に制御することができるので、メタンガスと酸素ガスとの混合比を正確に調節することができ、これによって圧力波の威力を正確に調節することができる。
【0075】
図8(e)は、ガス主塞止弁133、メタンガス供給弁131、及び酸素ガス供給弁132が全て閉じられた状態図である。制御装置200は、酸素ガス供給工程の終了後に、
図8(d)に示すガス主塞止弁133に対し弁閉信号を送信する。これにより、ガス主塞止弁133が閉じられる。このように、ガス主塞止弁133、メタンガス供給弁131、及び酸素ガス供給弁132の全てが閉じられることでガス充填工程が完了し、次の着火工程を行う準備が整った状態となる。後述する着火工程において、容器30内の混合ガスの燃焼時には、
図8(e)に示すように、ガス主塞止弁133が閉じた状態とされている。これにより、容器30内の混合ガスの燃焼時に、容器30内の圧力が第二供給主管162を介して圧力計135に作用しようとしても、ガス主塞止弁133が閉じていることによって阻止されるので、圧力計135を保護することができる。
【0076】
<着火工程>
上記の充填工程によって容器内に充填された可燃性ガス、及び酸化剤ガスの混合ガスに着火する着火工程について、
図9を用いて説明する。
図9は、付着物除去装置20を用いた付着物除去方法における着火工程の説明図である。
【0077】
図9(a)は、容器30内の混合ガスが発火した状態図である。
図9(a)に示すように、グロープラグ42による混合ガスの温度上昇により、容器30内の混合ガスが発火すると、容器30の内部で火炎が急速に伝播するような燃焼・爆発が起こる。容器30の内部の気体は、燃焼によって引き起こされる温度上昇によって一気に膨張しようとする。
【0078】
図9(b)は、容器30内の圧力によって封止体80が破壊された状態図である。
図9(b)に示すように、閉鎖空間である容器30の内部の圧力は、急激に高まり、圧力に耐えきれなくなった封止体80における複数の噴射口部37,57に対応する部分が、粉々に破壊される。封止体80における複数の噴射口部37,57に対応する部分が破壊されると、蓋体75の複数の噴射口部37,57から一気に高圧の気体が噴出することによって圧力が急激に開放される。圧力の急激な開放の結果、圧力波が発生する。発生した圧力波は、ノズル体50を介してボイラ1の排ガス流路2に向って進む。
【0079】
図9(c)は、ボイラ1の排ガス流路2内に圧力波が放出された状態図である。
図9(c)に示すように、ノズル体50からボイラ1の排ガス流路2内に圧力波が放出されると、圧力波による風圧、振動により、伝熱管4に付着したダストが剥離して除去される。
【0080】
本実施形態の付着物除去装置20において、圧力波を発生するにあたり、メタンガス供給工程、及び酸素ガス供給工程を実施すると、容器30内への燃焼用ガス(メタンガス、酸素ガス)の供給に伴って容器30内の圧力が大きくなる。このとき、封止体80は、蓋体75における複数の噴射口部37,57の周りの部分に支持される。このため、封止体80に対し圧力が作用する面積が小さくなり、封止体80に作用する応力を抑制することができる。従って、封止体80の構成材料として、一般的に引張強度が高い金属材料が使用可能であるのは勿論のこと、一般的に引張強度が低い非金属材料でも使用可能となり、封止体80の構成材料として使用可能な材料の選択の幅を広げることができる。また、本実施形態の付着物除去装置20によれば、封止体80に作用する応力を抑制することができるため、封止体80の厚みが小さくて済み、封止体80を固定する固定手段(容器側端板部35、ノズル側端板部55、ボルト91、及びナット92)を小型化することができて、装置全体の小型化を図ることができる。さらに、封止体80は、ボルト91、及びナット92に対する締付、及び締付解除操作、並びに容器側端板部35、及びノズル側端板部55による封止体80の挟持、非挟持操作により、着脱可能である。このため、封止体80を容易に交換することができる。このように、装置全体の小型化により可搬性に優れ、しかも封止体80を容易に交換できるので、付着物除去が必要なタイミングにおいて、上記の設置工程を容易に行うことができる。
【0081】
以上、本発明の付着物除去装置、及び付着物除去方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0082】
(別実施形態1)
上記実施形態では、設置工程において、予め容器側端板部35(第一蓋体部35a)とノズル側端板部55(第二蓋体部55a)との間に封止体80が介在された状態で容器30とノズル体50とがボルト91、及びナット92によって締結されて一体化された組立状態の圧力砲25を、ボイラ1におけるダスト除去が必要な箇所に取り付ける例を示したが、これに限定されるものではない。
【0083】
図10は、付着物除去装置20を用いた付着物除去方法の設置工程における圧力砲25の取付動作の別態様の説明図である。
図10(a)~(d)を用いて圧力砲25の取付動作の別態様について説明する。
【0084】
図10(a)は、ボイラ1の近傍に圧力砲25を分解状態で運んだ状態図である。伝熱管4に付着したダストの除去が必要なタイミングにおいて、
図10(a)に示すように、ボイラ1におけるダスト除去が必要な箇所に対応して設けられた接続ダクト15の近傍位置に、分解状態の圧力砲25を、例えば、台車400を用いて運ぶ。
【0085】
図10(b)は、ボイラ1にノズル体50を差し込む直前の状態図である。また、
図10(c)は、ボイラ1に差し込んだノズル体50を締結した状態図である。
図10(a)において接続ダクト15の開口を塞いでいる閉塞板16を取り外した後、
図10(b)~(c)に示すように、接続ダクト15の内部に、ノズル体50の大径円筒状部53を差し込み、ノズル体50の中間フランジ部65が接続ダクト15のダクトフランジ部15bに突き当たるまで、ノズル体50を前方に押し進める。そして、ダクトフランジ部15b、及び中間フランジ部65における相互のボルト挿通孔17,77(
図3(c)及び(d))の前後方向視の位置を一致させた後、相互のボルト挿通孔17,77にボルト93を挿通し、ボルト93の螺子軸に螺合させたナット94を締め付けて、ノズル体50と接続ダクト15とを締結する。
【0086】
図10(d)は、ボイラ1に締結されたノズル体50に封止体80を介在させた状態で容器30を締結した状態図である。
図10(d)に示すように、容器側端板部35とノズル側端板部55との間に封止体80を介在させ、容器側端板部35、及びノズル側端板部55における相互のボルト挿通孔47,67(
図3(a)及び(b)参照)と、封止体80のボルト挿通孔87(
図5(a)参照)との前後方向視の位置が一致された状態とし、相互のボルト挿通孔47,67,87に挿通されるボルト91と、ボルト91の螺子軸に螺合されるナット92とを締め付けて、圧力砲25を組み立てる。こうして、ボイラ1におけるダスト除去が必要な箇所に圧力砲25を組み立てながら取り付けることができる。
図10(a)~(d)に示す圧力砲25の取付動作の別態様によれば、ノズル体50、封止体80、及び容器30を順次に組み付けて圧力砲25を組み立てながらボイラ1に圧力砲25を取り付けるようにされているので、
図7(a)~(d)に示す圧力砲25の取付動作と比べて、作業工数は増えるものの、作業負荷をより軽減することができる。
【0087】
(別実施形態2)
上記実施形態では、燃焼用ガス(メタンガス及び酸素ガスの混合ガス)に着火する電気的着火手段として、通電により燃焼用ガスの温度を上昇させて着火するグロープラグ42を用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、電気火花により燃焼用ガスに着火爆発を起こす点火プラグを用いてもよい。
【0088】
(別実施形態3)
上記実施形態において、複数基の圧力砲25を予め準備しておき、圧力波を発生させる毎に順次交換するようにすれば、圧力波を繰り返し発生させることができ、付着物を継続的に除去することができる。
【0089】
(別実施形態4)
上記実施形態では、容器30の内部に可燃性ガスと酸化剤ガスとを供給し、これらの混合ガスを容器30の内部で急激に燃焼することによって容器30の内部の圧力を高めて封止体80を破壊し、圧力波を発生させるようにしたが、これに限定されるものではなく、容器30の内部に圧縮ガス(例えば、圧縮空気)を供給することで容器30の内部の圧力を高めて封止体80を破壊し、圧力波を発生させるようにしてもよい。このような態様の付着物除去装置の場合、着火源とはならないので、伝熱管4に可燃性のダストが付着する場合でも、適用可能である。
【0090】
(別実施形態5)
上記実施形態では、噴射口部37,57が、断面円形の丸孔状に形成される例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、断面楕円形や、断面多角形等の貫通孔に形成する態様もある。上記実施形態では、蓋体部35a,55aに19個の噴射口部37,57を設ける例を示したが、個数に限定されるものではく、2個以上であれば封止体80に作用する応力を抑えることができる。上記実施形態では、蓋体部35a,55aの中央に設けられる一つの噴射口部37,57を基準に、二つのピッチ円直径D1,D2の円周CR1,CR2上に同心円状に規則的に並ぶように配置されている例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、蓋体部35a,55aの中央に噴射口部37,57を設けない態様や、一つのピッチ円直径の円周上、又は三つ以上のピッチ円直径の各円周上に複数の噴射口部37,57を規則的に並ぶように配置する態様がある。また、複数の噴射口部37,57をランダムに配置する態様もある。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の付着物除去装置は、可搬性に優れる圧力波を利用した可搬式付着物除去装置であることから、付着物除去が必要なタイミングにおいて、例えば、燃焼炉に併設されるボイラ等の熱交換装置における伝熱管に付着したダストを除去したり、集塵装置のケーシング等に付着・堆積したダストを除去したりする用途において利用可能である。特に、ダスト等の付着物除去を実施する頻度が少なく、設備コストを低く抑えたいという要望が強い、例えば、比較的小規模のごみ燃焼処理施設において、伝熱管等の付着物を除去する用途に適している。
【符号の説明】
【0092】
1 ボイラ
4 伝熱管(対象物)
20 付着物除去装置
30 容器
35 容器側端板部(固定手段)
35a 第一蓋体部
37 噴射口部
50 ノズル体
55 ノズル側端板部(固定手段)
55a 第二蓋体部
57 噴射口部
75 蓋体
80 封止体
80a シール層
80b 形態維持層
91 ボルト(固定手段)
92 ナット(固定手段)
【要約】
【課題】封止体の構成材料として使用可能な材料の選択の幅を広げることができるとともに、付着物除去が必要なタイミングにおいて、付着物除去が必要な箇所に対し圧力波を放出可能な状態に容易にすることができる付着物除去装置を提供する。
【解決手段】伝熱管4に付着したダストを圧力波を利用して除去する付着物除去装置20であって、開口部を有する容器30と、開口部に対応して設けられ、容器30内に通じる複数の噴射口部を有する蓋体と、噴射口部を塞ぐ封止体80と、封止体80を着脱可能に固定する固定手段とを備え、容器30内の圧力を高めることで封止体80を破壊して圧力波を発生させるように構成される。
【選択図】
図1